(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119062
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】トレーニング器具
(51)【国際特許分類】
A63B 21/062 20060101AFI20230818BHJP
A63B 23/035 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
A63B21/062
A63B23/035 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113307
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2020219701の分割
【原出願日】2020-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】503059301
【氏名又は名称】株式会社ワールドウィングエンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】小山 裕史
(57)【要約】
【課題】複数の異なる運動をすることができ、なるべくコンパクトとなるトレーニング器具を提供する。
【解決手段】本発明に係るトレーニング器具は、ユーザが着座するための着座部と、着座部から遠ざかる方向に延伸するスライドレールと、スライドレールに対して摺動する摺動部と、摺動部に設けられた把持部と、負荷を付与するための負荷付与部と、一端が摺動部に接続され他端が負荷付与部に接続され、摺動部に対し負荷付与部の負荷を着座部側に付与する引張部材とを備え、ユーザは摺動部の摺動方向に対して側面を向けた状態で着座部に着座し把持部を一方の手で把持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが着座するための着座部と、
前記着座部から遠ざかる方向に延伸するスライドレールと、
前記スライドレールに対して摺動する摺動部と、
前記摺動部に設けられた把持部と、
負荷を付与するための負荷付与部と、
一端が前記摺動部に接続され他端が前記負荷付与部に接続され、前記摺動部に対し前記負荷付与部の負荷を前記着座部側に付与する引張部材と、を備え、
前記ユーザは、前記摺動部の摺動方向に対して側面を向けた状態で前記着座部に着座し、前記把持部を一方の手で把持するトレーニング器具。
【請求項2】
前記摺動部は、
前記スライドレールに対して摺動する摺動部本体と、
前記摺動部本体に対して、回動自在に設けられる第1回動軸と、
前記第1回動軸と垂直に接続する接続板と、
前記接続板の両端に対して垂直に接続する2枚の側板と、
前記2枚の側板を接続する第2回動軸と、
前記第2回動軸を回動中心に回動自在に接続されユーザの前腕を載置するための載置部と、を備え、
前記載置部は、前記把持部を備えることを特徴とする請求項1に記載のトレーニング器具。
【請求項3】
前記引張部材は、滑車を介して前記摺動部と前記負荷付与部とを接続することを特徴とする請求項1又は2に記載のトレーニング器具。
【請求項4】
前記スライドレールは、前記着座部に着座した前記ユーザの胴体の側方に遠ざかる方向に対して延伸し、
前記引張部材は、前記スライドレールが延伸する方向であって、前記摺動部に対して前記着座部側に牽引する側へ前記負荷付与部による負荷を与える
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項5】
前記スライドレールはスライド支柱に固定され、
前記スライド支柱はスライド支軸部により案内支柱に回動自在に接続され、かつ、前記スライド支柱は可動支柱により固定梁部に接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【請求項6】
前記摺動部は、前記摺動部の前記第1回動軸を中心とする回動運動を伝達する伝達部と、
前記伝達部と前記引張部材とを接続する接続部と、を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のトレーニング器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーニング器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種のトレーニング器具が存在する。例えば、特許文献1には、両腕の運動をすることができるトレーニング器具が開示されている。特許文献1に記載のトレーニング器具によれば、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負担少なく、柔軟で弾力性の富んだ肩部や背部の筋肉等を得ることができるトレーニング器具が開示されています。
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載のトレーニング器具によれば主として、肩部や背部の筋肉等を鍛えることができるが、トレーニングは、バランスよく行うことが望ましい。そのため、上述した部位以外の部位についても、筋肉の硬化を伴うことなく、筋肉痛や疲労など身体への負担少なく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉等を得るためのトレーニング器具の提供が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記要望に鑑みてなされたものであり、肩部や背部以外の部位についても鍛えることができ、筋肉痛や疲労など身体への負担が少ないトレーニング器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るトレーニング器具は、ユーザが着座するための着座部と、着座部から遠ざかる方向に延伸するスライドレールと、スライドレールに対して摺動する摺動部と、摺動部に設けられた把持部と、負荷を付与するための負荷付与部と、一端が摺動部に接続され他端が負荷付与部に接続され、摺動部に対し負荷付与部の負荷を着座部側に付与する引張部材と、を備え、ユーザは、摺動部の摺動方向に対して側面を向けた状態で着座部に着座し、把持部を一方の手で把持する。
【0007】
上記トレーニング器具において、摺動部は、スライドレールに対して摺動する摺動部本体と、摺動部本体に対して、回動自在に設けられる第1回動軸と、第1回動軸に垂直に接続する接続板と、接続板の両端に対して垂直に接続する2枚の側板と、2枚の側板を接続する第2回動軸と、第2回動軸第2回動軸を回動中心に回動自在に接続されユーザの前腕を載置するための載置部と、を備え、載置部は把持部を備えることとしてもよい。
【0008】
上記トレーニング器具において、引張部材は、滑車を介して摺動部と負荷付与部とを接続することとしてもよい。
【0009】
上記トレーニング器具において、スライドレールは、着座部に着座したユーザの胴体の側方に遠ざかる方向に対して延伸し、引張部材は、スライドレールが延伸する方向であって、摺動部に対して着座部側に牽引する側へ負荷付与部による負荷を与えることとしてもよい。
【0010】
上記トレーニング器具において、スライドレールはスライド支柱に固定され、スライド支柱はスライド支軸部により案内支柱に回動自在に接続され、かつ、スライド支柱は可動支柱により固定梁部に接続されていることとしてもよい。
【0011】
上記トレーニング器具において、摺動部は、当該摺動部の第1回動軸を中心とする回動運動を伝達する伝達部と、伝達部と引張部材とを接続する接続部と、を備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るトレーニング器具は、本発明の一態様に係るトレーニング器具は、ユーザが着座するための着座部と、着座部から遠ざかる方向に延伸するスライドレールと、スライドレールに対して摺動する摺動部と、摺動部に設けられた把持部と、負荷を付与するための負荷付与部と、一端が摺動部に接続され他端が負荷付与部に接続され、摺動部に対し負荷付与部の負荷を着座部側に付与する引張部材と、を備え、ユーザは、摺動部の摺動方向に対して側面を向けた状態で着座部に着座し、把持部を一方の手で把持するため、把持部を把持して負荷の加わった状態で摺動部を押すことで、右腕または左腕に関する運動を行うことができる。したがって、一つの器具で右腕または左腕を兼用して運動を行うことができる。
【0013】
また、摺動部は一つずつしか備えないので、それぞれ、両手、両腕のために二つずつ備えるよりも、トレーニング器具をコンパクトなサイズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】トレーニング器具の可動態様を示す斜視図である。
【
図6】トレーニング器具の第1使用形態における(a)第1正面図と(b)第2正面図である。
【
図7】トレーニング器具の第2使用形態における(a)第1正面図と(b)第2正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施態様に係るトレーニング器具について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
<実施の形態>
<構成>
図1は、トレーニング器具1の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、トレーニング器具1は、ユーザが着座するための着座部10と、着座部10から遠ざかる方向に延伸するスライドレール22,22(図示は2本備える。)と、スライドレール22,22に対して摺動する摺動部70と、摺動部70に設けられた把持部60と、ユーザの運動動作に負荷を付与する負荷付与部30を備える。さらに、トレーニング器具1は、摺動部70に設けられた摺動部70と、一端が摺動部70に接続され他端が負荷付与部30に接続され、摺動部70に対し負荷付与部30の負荷を着座部10側に付与する引張部材80を備える。ユーザ(
図6参照)は、摺動部70の摺動方向(
図2参照)に対して当該ユーザの側面(いわゆる脇腹)を向けた状態でユーザは着座部10に着座する。そして、ユーザは一方の手(片手)で把持部60を把持する。
【0017】
以下、トレーニング器具1について図面を用いて詳細に説明する。まず、
図1~
図4を用いて、トレーニング器具1の構造を説明する。
図1は前述の通り、トレーニング器具1の斜視図であり、
図2はトレーニング器具1の可動態様を含む斜視図であり、
図3はトレーニング器具1の上面図であり、
図4はトレーニング器具1の正面図である。本実施形態の説明に際し、
図3の上面図及び
図4の正面図においてスライドレール22,22の示される側を右とし、その逆側を左と定義する。
【0018】
図1に示されるように、トレーニング器具1において、着座部10は座席支柱12により第1梁部27(固定梁部)の一端側に垂直に接続され、第1梁部27の他端側にウェイト枠組20が接続される。矩形のウェイト枠組20の内に個数調整可能な錘(ウェイト)からなる負荷付与部30が上下動可能に収容される。また、ウェイト枠組20にはユーザ(
図5,6参照)が腕を押し当てるための体支え15が備えられる。体支え15は体支え接続部16によりウェイト枠組20に接続される。体支え15は、ユーザが腕を押し当てる他に加えて抱きかかえるようにしてもよい。
【0019】
実施形態のスライドレール22,22は、摺動部70の摺動の安定性から2本の平行な棒状体としている。むろん、スライドレール自体の本数、形状は摺動部70の摺動が確保される限り適宜である。スライドレール22,22はスライド支柱42に接続される。スライド支柱42の着座部10近傍の一端側はスライド支軸部41により回動自在に案内支柱40に接続される。
図3,4,6から理解されるように、トレーニング器具1におけるスライドレール22,22は、着座部10に着座したユーザに胴体の側方に遠ざかる方向、すなわちユーザの脇腹から横に腕を伸ばす方向に延伸して設置される。
【0020】
スライドレール22,22を備えるスライド支柱42の動作は矢印221(
図2参照)により示される回動である。第1梁部27と対向する第2梁部23(固定梁部)の一端側に案内支柱40が立設される。スライド支柱42には当該スライド支柱42を支持するスライド軸部26が備えられ、第2梁部23の他端側に設けられた固定支軸部25と可動支柱24を介して接続される。
【0021】
第1梁部27と第2梁部23は、ユーザの体格(男女差、身長等)に応じて隣接距離が調整可能である。スライドレール22,22を備えるスライド支柱42では、スライド軸部26の位置をスライド支軸部41の側へ接近または離隔することにより、スライドレール22,22上の摺動部70の位置調整、さらには、引張部材80の引張距離の調整が可能となる。固定支軸部25を中心とするスライド軸部26及び可動支柱24の動作は矢印241(
図2参照)により示される回動である。また、摺動部70のスライドレール22,22上の動作は矢印271(
図2参照)により示される直線状の進退動作である。
【0022】
図示の実施形態において、第1梁部27と第2梁部23(ともに固定梁部)はトレーニング器具1全体の骨格となり、トレーニング器具1を床面に安定させて設置させる機能を担う。そこで、トレーニング器具1全体の強度確保の観点から、第1梁部27、座席支柱12、ウェイト枠組20、第2梁部23、スライドレール22,22、スライド支柱42、案内支柱40、スライド支柱42等は、ステンレス鋼材等によりボルト締結、溶接等により形成される。着座部10にはユーザが着座するためのクッション性を備えた座席11が設けられる。着座部10はトレーニング器具1の正面及び背面に延びる長尺の矩形状(長方形)である(
図3参照)。着座部10の形状は、ユーザがトレーニング器具1の正面向きの座り方(
図5,6参照)と、これとは逆にユーザがトレーニング器具1の背面向きの座り方(図示せず)の双方に対応するため、正面及び背面に延びる長尺状である。このように、トレーニング器具1は1台においてユーザが向きを変えて使用する構成であるため、全体の大きさを小さくすることができる。
【0023】
引張部材80は摺動部70と負荷付与部30との間に架設され、負荷付与部30の自重による下向きに加わる負荷を摺動部70側へ伝達するための部材である。引張部材80は公知のワイヤーまたはチェーン、ロープ等である。摺動部70と負荷付与部30との間の引張部材80の誘導経路には、負荷付与部30側から順に滑車85c、滑車85a、滑車85d、滑車85e、滑車85bが設置される(
図4参照)。
【0024】
具体的には、
図4から理解されるように、引張部材80の末端はウェイト枠組20に接続され、途中の滑車85cは負荷付与部30に接続される動滑車である。滑車85aはウェイト枠組20の上部に接続され引張方向を下向きに変換する。滑車85dは第1梁部27に接続され引張方向を横向きに、滑車85eは第1梁部27に接続され引張方向を上向きに変換する。そして、滑車85bは案内支柱40の上端に接続されスライドレール22,22の延伸の向きに引張方向を変換する。
【0025】
実施形態のトレーニング器具1では、案内支柱40の上端の滑車85b及び引張部材80を保護するカバー部21が備えられる。滑車85bは、着座部10に着座したユーザの腕、脇腹の位置に相当する。そこで、滑車85bと引張部材80によるユーザの着衣、皮膚の巻き込みを防ぐ目的からカバー部21が備えられる。実施形態のトレーニング器具1のように、各所に滑車を配置することにより、着座部10に着座したユーザに対し引張部材80は邪魔になりにくい配置として負荷付与部30の負荷を摺動部70へ付与可能となる。滑車85eは着座部10の下方であり、滑車85dも体支え15の下方であり、着座したユーザから隠れる位置である。なお、引張部材80がワイヤーであれば滑車はプーリーであり、チェーンであれば滑車はスプロケットである。
【0026】
図5は摺動部70の拡大斜視図である。摺動部70はスライドレール22,22上を摺動する(
図2の矢印271参照)。摺動部70は、載置部71と摺動部本体77を備え、摺動部本体77の下方にスライドレール22,22との円滑な摺動のためのレールブロック78が備えられる。
図5のとおり、レールブロック78に2本のスライドレール22,22が挿通される。
【0027】
摺動部本体77に対し回動自在に第1回動軸76が設けられる。第1回動軸76の回動は
図5紙面の手前及び奥手の前後の揺動である。第1回動軸76の端部には当該第1回動軸76と垂直に接続する接続板75が設けられる。接続板75の両端に2枚の側板74a,74bが垂直に接続される。2枚の側板74a,74bに抱えられるようにして第2回動軸73が接続される。載置部71はユーザの前腕を載置する部材であり(
図6,7参照)、上方にユーザが握る棒状の把持部60が載置部71から垂直に備えられる。また、ユーザの上腕の中央部分と肘を保持するための3枚の上腕保持部72が載置部71から垂直に備えられる。載置部71は第2回動軸73を回動の中心として
図5紙面の左右方向に揺動する。
【0028】
ここで、位置関係を整理すると、第1回動軸76、側板74a,74b、及び把持部60は平行であり、接続板75と第2回動軸73は平行である。したがって、ユーザは上腕を載置部71に載置した際、第1回動軸76と第2回動軸73の回動から、ユーザは上腕を身体の側方及び前後のいずれの向きにも動かすことができる。ユーザは自身の望む形(角度や力)によりトレーニング器具1を用い、腕を含む自身に対して負荷を与えることができる。
【0029】
引張部材80は接続部79により、摺動部70の摺動部本体77に接続される。負荷付与部30の自重による引張力は摺動部70に伝達される。よって、引張部材80はスライドレール22,22の延伸する方向であって、摺動部70に対して着座部10側に牽引する側へ負荷付与部30の負荷が与えられる。
【0030】
ユーザは摺動部70の載置部71に上腕を押し当てて把持部60を片手で握る。摺動部本体77の内部には、第1回動軸76に加わる回動の負荷を付与するための適宜の機構が設けられる。具体的には、巻きばね、板ばね、油圧シリンダ等の第1回動軸76の回動に荷重を加える機構である。
【0031】
さらに、第1回動軸76を中心とする回動運動を、接続部79を介して引張部材80に伝達する伝達部90(
図8参照)が摺動部本体77の内部に備えられてもよい。第1回動軸76を中心とする回動運動は、伝達部90を通じて接続部79につながる引張部材80の引張動作(
図5の紙面左右方向)へ変換される。伝達部90は公知の歯車、チェーン、クランク等の組み合わせから構成される。摺動部本体77の内部に伝達部90を備える構成の場合、引張部材80に接続された負荷付与部30の負荷を直接第1回動軸76の回動時の負荷(荷重)に変換できる。したがって、ユーザが把持部60及び載置部71を通じて第1回動軸76を揺動させるときの負荷の調整は、負荷付与部30の錘(ウェイト)の個数、種類の交換で容易となる。
【0032】
ここで、摺動部70の主要部分である摺動部本体77の構成とその機能について、
図8の概略斜視図を用い説明する。第1回動軸76は摺動部本体77の上方に挿通され、載置部71側から伝わる動作を摺動部本体77の内部の伝達部90に最初に伝達する。
【0033】
摺動部本体77内に設けられる伝達部90は、引張部材80の接続部79と連結して負荷付与部30により第1回動軸76を中心とする回転に負荷を与えるように設けられている。伝達部90は、
図8から理解されるように、第1回動軸76を中心とする回転運動を伝達する回転伝達部91(図中の符号91a,91b,91c,91d,91e)と、この回転伝達部91により伝達された回転運動を引張部材80の接続部79側と連結している摺動軸57の上下動に変換するクランク機構部92(図中の符号92a,92b)とを具備している。載置部71を通じた第1回動軸76の軸回転により、回転伝達部91及びクランク機構部92を介して摺動軸57が上下動することに伴い、クランプにより連結された負荷付与部30(ウェイト)が上下動する。
【0034】
さらに詳しく述べると、回転伝達部91は、摺動部本体77内の第1回動軸76に設けられたスプロケット91aと、枠体53に左右端を軸支された軸に設けられたスプロケット91bと、スプロケット91a及びスプロケット91bに掛架されたチェーン91cと、スプロケット91bを設けた軸に設けられた傘歯車91dと、該傘歯車91dと噛合する傘歯車(冠歯車)91eと、を備える。傘歯車91eは、枠体53に垂直に軸支されたクランク軸92aの把持部60側の自由端に設けられている。これにより、第1回動軸76の垂直方向の回転によってクランク軸92aが回転する。
【0035】
クランク機構部92は、クランク軸92aと、該クランク軸92aの中央部から突出する突起に一端側が回転自在に連結され、接続部79側が摺動軸57の端部に回転自在に連結された連結片92bを備えている。これにより、クランク軸92aの回転によって摺動軸57が左右動する。このようにして、載置部71(把持部60)は負荷付与部30の負荷に比例する力によって回転付勢されている。そして、載置部71(把持部60)を摺動部70の摺動部本体77に対して回転付勢力に抗して軸回転することにより、摺動軸57が摺動部本体77に対して進入する方向に摺動(即ち、摺動軸57及び摺動軸57に接続している引張部材80を昇降部50内に引き込む)し、クランプにより連結された負荷付与部30が引き上げられる。
【0036】
<第1使用形態>
図6はトレーニング器具1の第1使用形態による運動の例を示す図である。
図6の第1使用形態は、ユーザの腕の運動の例であり、例えば、僧帽筋、三角筋等の背中、肩の筋肉、上腕二頭筋、上腕三頭筋、上腕筋の上腕の筋肉を鍛えることができる。
【0037】
まず、使用者の筋力、目的等に適した負荷に合わせて適切な重量に負荷付与部30の錘(ウェイト)の個数、種類が交換される。そして、
図6(a)の状態では、ユーザは、正面を向いて着座部10の座席11に着座し、足裏が床面に接地するように座席11を適切な高さに調整して固定し、トレーニングを行う。
【0038】
ユーザは、左腕の肘から先を載置部71に載せるとともに、左手で把持部60を握持している。そして、紙面奥側、ユーザの背面側に左腕を倒した状態である。
図6(a)では、ユーザは左手で把持部60を握持して肘からL字状に曲げ、後方(背中側)に下腕を肘から倒している(左の手首は頭部よりも後方にある)状態である。そして、
図6(b)のとおり、ユーザは、負荷付与部30の負荷に比例した力によって載置部71の把持部60がユーザの背面側に向くように回転付勢される力に抗して左下腕を体の正面側に倒し、載置部71に対してユーザの正面向きに額の側面位置(こめかみの辺り)まで軸回転させる。この動作により、屈筋と伸筋がともに「弛緩」して肩、腕がリラックスした状態になる。また、負荷付与部30の負荷により載置部71の回動動作に付勢されており、肩甲帯付近等の筋肉が適度に「伸張」される。
【0039】
ユーザは、適度に「伸張」された肩甲帯付近等の筋肉が「反射」を引き起こすように、負荷付与部30の負荷に抗して左腕を正面向きに倒すことにより筋肉を「短縮」させて載置部71を回動させる(
図6(b)参照)。このとき、左腕に生じる「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら、背中、肩、及び腕を連動させて載置部71を軸回転することにより、負荷付与部30は引き上げられことになり、初動作における負荷は減少する。このように、左腕を載置部71に載置してユーザの背面側に倒して筋肉を「短縮」させて左腕を後ろ向きに捻ることによって、「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングが出現し、各筋肉群は「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができる。
【0040】
前述の
図6(a)及び(b)の流れでは、左腕をユーザの身体の背面から額の側面位置まで動かす身体トレーニングとして説明した。むろん、右腕の場合も同様に身体トレーニングは実施される。右腕の場合、
図6(a)及び(b)と着座する向きを逆にすることで、ユーザは右腕も運動をすることもできる(図示省略)。したがって、左右対称に、ユーザは、両腕を鍛えつつ、腕から背中の運動を行うことができ、自身の可動域を広げることができる。
【0041】
さらに、ユーザの左腕の当初の位置を
図6(b)のように額の側面位置として、額の側面位置から、
図6(a)のとおりユーザの背面向きに左腕を倒す動き、または、ユーザの身体の正面向きに左腕を倒す動き(図示省略)にも、トレーニング器具1は対応する。トレーニング器具1を用いることにより、各筋肉群における「弛緩-伸張-短縮…の循環」は絶えず実行される。そこで、ユーザの体調、強化したい筋肉の箇所、リハビリテーションの内容等により、どの位置から開始することもできる。
【0042】
トレーニング器具1の構成のとおり、両腕ではなく片腕ずつ鍛える構造とすることで、一度に両方を鍛えるための摺動部70とスライドレール22,22等を用意する必要はなく、両腕に対応する形でトレーニング器具1を構成するよりもサイズをコンパクトにすることができる(スライドレールを両腕のために二つ備えるよりも幅を狭くすることができる)ので、トレーニング器具1の設置スペースとして用意するべきスペースの面積を小さくすることができる。
【0043】
<第2使用形態>
第1使用形態では腕の運動をする例を示した。第2使用形態では、ユーザがトレーニング器具1を用いて、腹部、胸部の運動をする例を説明する。
図7は、第2使用形態による運動の例であって、腹部、胸部の運動をする例を示す正面図である。
【0044】
まず、使用者の筋力、目的等に適した負荷に合わせて適切な重量に負荷付与部30の錘(ウェイト)の個数、種類が交換される。そして、
図7(a)では、ユーザは、正面を向いて着座部10の座席11に着座し、足裏が床面に接地するように座席11を適切な高さに調整して固定し、トレーニングを行う。
【0045】
図7(a)では、ユーザは、左腕を身体の左方に突き出して肘から先の下腕を上方に持ち上げ下腕を摺動部70の載置部71に載置し、ユーザは左手で把持部60を握持して肘からL字状に曲げ、ひざを屈曲させた状態をとる。負荷付与部30の負荷に比例した力によって載置部71はユーザに近い位置にある。そして、
図7(b)のとおり、ユーザは、負荷付与部30の負荷による載置部71が引張される力に抗してユーザの上半身を腰から体の左側面に向けて押すように曲げる。この動作により、屈筋と伸筋がともに「弛緩」して腹、腰がリラックスした状態になる。また、負荷付与部30の負荷により載置部71の引張動作に付勢されており、腹部、腰部等の筋肉が適度に「伸張」される。
【0046】
その後、ユーザは、適度に「伸張」された腹部、腰部の筋肉が「反射」を引き起こすように、負荷付与部30の負荷に従って左側面に向けて曲げられた上半身を元の位置にもどす(
図7(b)から(a)への動き)。このとき、腹部、腰部の筋肉に生じる「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら、腹部、腰部を連動させて載置部71を当初の位置に復帰させる際にも負荷付与部30の負荷は加わり続けることになり、初動作における負荷は減少する。このように、ユーザの腹部、腰部の筋肉を「短縮」させて「弛緩」と「伸張」の動作を加えながら適切な「短縮」のタイミングが出現し、各筋肉群は「弛緩-伸張-短縮」のタイミングを得て、連動性よく動作を行うことができる。
【0047】
さらに、ユーザの上半身の当初の位置を
図7(b)のように体の左側面に押し出した位置から、
図7(a)の上半身を正面に向けて真っ直ぐの位置にする動きにも、トレーニング器具1は対応する。トレーニング器具1を用いることにより、腹部、腰部、その体幹の各筋肉群における「弛緩-伸張-短縮…の循環」は絶えず実行される。そこで、ユーザの体調、強化したい筋肉の箇所、リハビリテーションの内容等により、どの位置から開始することもできる。
【0048】
トレーニング器具1の構成のとおり、上半身の片側ずつ鍛える構造とすることで、一度に両方を鍛えるための摺動部70とスライドレール22,22等を用意する必要はなく、左右の上半身に対応する形でトレーニング器具1を構成するよりもサイズをコンパクトにすることができる(スライドレールを両腕のために二つ備えるよりも幅を狭くすることができる)ので、トレーニング器具1の設置スペースとして用意するべきスペースの面積を小さくすることができる。
【0049】
ここで、第1使用形態(
図6(a)と(b))と第2使用形態(
図7(a)と(b))の双方の同時に実施することにより、敢えて複雑な動きのトレーニングをさせるようにしても良い。例えば、
図6(a)のとおり、ユーザは左手で把持部60を握持して肘からL字状に曲げ、後方(背中側)に下腕を肘から倒している。次に、
図7(b)のように、ユーザは左側に上半身を押し出す。そして、
図6(b)のとおり、ユーザは左の手首を頭部の横の位置(左耳)まで戻し、
図7(a)のように、上半身を真っ直ぐに戻す。むろん、順番、組み合わせは自在に組み換えられる。第2使用形態の最中に第1使用状態のようにユーザが載置部71を摺動部70に対して回転させることで、内部のクランク機構により接続部79が摺動部70内に引き込まれて、腕にかかる負荷付与部30による負荷が軽減される。したがって、摺動部70を回転させる状態では、ユーザの腕に、「弛緩」状態を生じさせることができる。
【0050】
図示の実施形態の器具は、主に腕及び胴の上半身のトレーニングを対象としている。さらに、発展形として、
図6と
図7に開示の動きを下肢に適用してふくらはぎ、くるぶし等のトレーニングへも適用可能である。
【0051】
図示し詳述のトレーニング器具1を用いる初動負荷トレーニング(登録商標)は、当該トレーニング器具1の負荷を利用して筋肉に反射を起こし、本来働かなければならない筋肉がうまく働き、筋肉と神経の機能を高めるトレーニングであり、弛緩した筋肉にタイミングの良い伸縮、短縮を促すための触媒として負荷を用いている。そして、このようなトレーニングによって、弛緩-伸張-短縮の一連動作の促進が図られ、さらに共縮が防止されることにより、神経と筋肉の機能や協調性を高め、筋肉痛や疲労など身体への負担が少なく、筋肉の硬化を伴うことなく、柔軟で弾力性の富んだ筋肉が得られることからことができる。又、強制的な心拍数や血圧の上昇が少なく有酸素的に代謝を促進させることにより、糖尿病、高血圧等の生活習慣病の予防や靭帯損傷、骨折等の治癒促進に有効であるとともに、神経・筋肉・関節のストレスの解除、老廃物の除去等、身体に有益な状態を作り出すことができる。
【0052】
なお、本発明に係るトレーニング器具は、開示の実施形態に限定されるものではない。例えば、負荷付与部30は、ウェイトの重量により負荷を付与することに加え、電磁力、油圧、空気圧等を用い負荷を付与するものであってもよい。また、トレーニング器具1はユーザが着座部10に着座してトレーニングを行うものであるが、ユーザが立った状態でトレーニングを行うものであってもよい。ただし、ユーザが着座部10に着座してトレーニングを行うようにすることにより、トレーニング器具1の全高が低くなり、天井高の低いトレーニング室等にも設置することができるとともに、使用者の身長よりばらつきの少ない使用者の座高等に基づいてトレーニング器具1を設計することができる。
【0053】
従前のトレーニング器具、方法によると、「肩のインナーマッスルを鍛える」として、ゴムチューブを引く、ダンベルを持つ等、90度に屈曲した肘関節を側腹部に付けたまま、または両肩と水平な位置に維持したまま、上腕部の内旋、外旋動作を繰り返す運動が行われることがある。これらの運動は平面的な動作となりやすく、インナーマッスルの緊張が抜けないまま反復しやすい傾向にある。これに対し、本発明として図示の実施形態に開示のトレーニング器具1では、上記の動作を立体的な動作として誘発して、筋の弛緩状態を作りながら行うことができる器具として提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 トレーニング器具
10 着座部
22 スライドレール
30 負荷付与部
40 案内支柱
50 昇降部
60 把持部
70 摺動部
71 載置部
73 第2回動軸
76 第1回動軸
77 摺動部本体
80 引張部材
90 伝達部