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特開2023-119070ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及び物流用緩衝材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119070
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及び物流用緩衝材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
C08J9/18 CES
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017426
(22)【出願日】2022-02-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 貴史
(72)【発明者】
【氏名】太田 肇
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA18
4F074AA20
4F074AA21A
4F074AA24A
4F074AB03
4F074AB05
4F074AD13
4F074AG11
4F074BA32
4F074BC12
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074CC04Y
4F074CC04Z
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA12
4F074DA24
4F074DA33
(57)【要約】
【課題】優れた剛性を有し、例えば物流用緩衝材として使用した際、輸送時における被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損を抑制できる発泡粒子成形体を成形可能な発泡粒子及びその製造方法並びに物流用緩衝材を提供する。
【解決手段】発泡芯層と被覆層との質量比が97:3~88:12であり、嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、被覆層がPE-LLDから構成され、PE-LLDの融点が105℃以上130℃以下であり、PE-LLDの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下である発泡粒子。発泡粒子成形体からなり、成形体倍率が5倍以上45倍以下であり、最大曲げ強さが0.3MPa以上であり、引張強さと引張伸びとの積が18MPa・%以上であり、ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が0.4以上0.7未満かつポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が1.0未満である物流用緩衝材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、
前記発泡芯層と前記被覆層との質量比が、前記発泡芯層:前記被覆層=97:3~88:12であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、
前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、
前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が105℃以上130℃以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下である、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記直鎖状低密度ポリエチレンが、メタロセン系重合触媒により重合された樹脂である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcが550MPa以上1600MPa以下である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcに対する、前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msの比Ms/Mcが0.2以上0.6以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
前記発泡粒子の平均気泡径が50μm以上200μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
前記発泡粒子のアスペクト比L/Dが0.8以上1.3以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
前記直鎖状低密度ポリエチレンの190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレイトが、2.5g/10min以上12g/10min以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項8】
前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが250MPaを超え500MPa以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、
前記発泡芯層と前記被覆層との質量比が、前記発泡芯層:前記被覆層=97:3~88:12であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、
前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、
前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が105℃以上130℃以下であり、
前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下であり、
以下の工程(A)~(C)を含む、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。
工程(A):ポリプロピレン系樹脂から構成され、かつ非発泡状態の芯層と、ポリエチレン系樹脂から構成され、かつ該芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を密閉容器内で分散媒に分散させる分散工程、
工程(B):多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び
工程(C):発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に分散媒とともに放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造する発泡工程。
【請求項10】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が相互に融着してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体からなる物流用緩衝材であって、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有し、
前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体倍率が5倍以上45倍以下であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の最大曲げ強さが0.3MPa以上であり、
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の引張強さS[MPa]と引張伸びE[%]との積が18MPa・%以上であり、
ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が0.4以上0.7未満、かつポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が1.0未満である、物流用緩衝材。
【請求項11】
鋼板に対する動摩擦係数が0.3以上0.6未満であり、かつ鋼板に対する静摩擦係数が0.5以下である、請求項10に記載の物流用緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法及び物流用緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、剛性やエネルギー吸収性能に優れているため、衝撃吸収材、断熱材及び各種包装材等として、食品容器、電気・電子部品、自動車部材等の包装・緩衝材、自動車バンパー、自動車内装材等の車両用部材、住宅用断熱材等の建築部材、雑貨等の広い分野で利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂で形成される芯層と被覆層とからなり前記芯層と被覆層の重量比率が特定の範囲である多層樹脂粒子を、発泡してなる多層発泡粒子であって、前記芯層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点、部分融解熱量、及び曲げ弾性率と、前記被覆層を形成しているポリプロピレン系樹脂の樹脂融点、部分融解熱量、及び曲げ弾性率とが、それぞれ特定の関係を満足する、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-16914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、ポリエチレン系樹脂発泡粒子成形体と比較して、より軽量で剛性に優れるものとなるため、例えば梱包容器等の物流用緩衝材として使用されることがある。
【0006】
しかしながら、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を梱包容器として、被梱包物を梱包した状態で運搬する際に、運搬時の振動等によって被梱包物が破損してしまう場合があった。また、発泡粒子成形体自体が破損してしまう場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、優れた剛性を有し、例えば物流用緩衝材として使用した際に、輸送時における被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる発泡粒子成形体を型内成形可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、並びに物流用緩衝材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に示す構成を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
<1> ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、前記発泡芯層と前記被覆層との質量比が、前記発泡芯層:前記被覆層=97:3~88:12であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が105℃以上130℃以下であり、前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下である、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<2> 前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が、メタロセン系重合触媒により重合された樹脂である、<1>に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<3> 前記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcが550MPa以上1600MPa以下である、<1>又は<2>に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<4> 前記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcに対する、前記直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率Msの比Ms/Mcが0.2以上0.6以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<5> 前記発泡粒子の平均気泡径が50μm以上200μm以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<6> 前記発泡粒子のアスペクト比L/Dが0.8以上1.3以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<7> 前記直鎖状低密度ポリエチレンの190℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレイトが、2.5g/10min以上12g/10min以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<8> 前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが250MPaを超え500MPa以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
<9> ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、前記発泡芯層と前記被覆層との質量比が、前記発泡芯層:前記被覆層=97:3~88:12であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が105℃以上130℃以下であり、前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下であり、以下の工程(A)~(C)を含む、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法。工程(A):ポリプロピレン系樹脂から構成され、かつ非発泡状態の芯層と、ポリエチレン系樹脂から構成され、かつ該芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を密閉容器内で分散媒に分散させる分散工程、工程(B):多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び工程(C):発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に分散媒とともに放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造する発泡工程。
<10> ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が相互に融着してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体からなる物流用緩衝材であって、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有し、前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体倍率が5倍以上45倍以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の最大曲げ強さが0.3MPa以上であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の引張強さS[MPa]と引張伸びE[%]との積が18MPa・%以上であり、ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が0.4以上0.7未満、かつポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が1.0未満である、物流用緩衝材。
<11> 鋼板に対する動摩擦係数が0.3以上0.6未満であり、かつ鋼板に対する静摩擦係数が0.5以下である、<10>に記載の物流用緩衝材。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた剛性を有し、例えば物流用緩衝材として使用した際に、輸送時における被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる発泡粒子成形体を型内成形可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法、並びに物流用緩衝材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子]
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、単にポリプロピレン系樹脂発泡粒子又は発泡粒子ともいう)は、ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、前記発泡芯層と前記被覆層との質量比が、前記発泡芯層:前記被覆層=97:3~88:12であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が105℃以上130℃以下であり、前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下である。前記発泡粒子は、特に限定されないが、たとえば柱状形状を有する。
【0011】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、上記構成を有することにより、剛性に優れる発泡粒子成形体を型内成形可能となる。また、得られる発泡粒子成形体は靭性に優れているため、発泡粒子成形体を例えば物流用緩衝材として使用した際に、輸送時における発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる。さらに、得られる発泡粒子成形体は適度なグリップ性と摺動性とを備えているため、輸送時において被梱包物が破損されてしまうことを防止することができる。上記物流用緩衝材は、例えば、自動車のバッテリーやトランスファーといった重量の大きな部材を被梱包物とする場合であっても上記効果を発揮することができる。
【0012】
<発泡芯層と被覆層との質量比>
発泡芯層と被覆層との質量比は、発泡芯層:被覆層=97:3~88:12である。被覆層の質量比が大きすぎると、得られる発泡粒子成形体の靭性及びグリップ性が低下するおそれがある。一方、被覆層の質量比が小さすぎると、得られる発泡粒子成形体の靭性及び摺動性が低下するおそれがある。これらの観点から、発泡芯層と被覆層との質量比は、好ましくは96:4~89:11であり、より好ましくは95:5~90:10である。
【0013】
<嵩倍率>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率は、5倍以上45倍以下である。発泡粒子の嵩倍率が高すぎると、得られる発泡粒子成形体の靭性及び摺動性が著しく低下するおそれがある。また、例えば、発泡粒子成形体を、自動車のバッテリーやトランスファーといった重量物を運搬する際の梱包材として使用する場合、剛性が不足するおそれがある。かかる観点から、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率は、好ましくは35倍以下、より好ましくは30倍以下、更に好ましくは25倍以下である。一方、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率は、軽量性及び成形体の成形性の観点から、好ましくは7倍以上、より好ましくは10倍以上である。
発泡粒子の嵩倍率は、以下のように求められる。発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W1[g]を収容体積V1(1[L])で除し(W1/V1)、単位換算して発泡粒子の嵩密度[kg/m]を求める。そして、該発泡粒子の発泡芯層を構成する樹脂の密度[kg/m]を、先に求めた発泡粒子の嵩密度[g/cm]で除すことにより、求められる。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、50μm以上200μm以下であることが好ましい。発泡粒子の成形性をより高める観点からは、平均気泡径は好ましくは70μm以上、より好ましくは80μm以上、更に好ましくは90μm以上である。一方、得られる発泡粒子成形体の表面平滑性をより高める観点からは、平均気泡径は好ましくは180μm以下、より好ましくは165μm以下、更に好ましくは150μm以下、より更に好ましくは140μm以下である。
発泡粒子の平均気泡径は、次のように測定される。発泡粒子群から無作為に20個以上の発泡粒子を選択する。発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割し、走査型電子顕微鏡等の顕微鏡を用いてその断面全体の拡大写真をそれぞれ撮影する。各断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度(45°)で4本の線分を引く。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除して各発泡粒子の気泡径を求める。これらの値を算術平均することにより求められる値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のアスペクト比L/Dは、発泡粒子の充填性を向上し、成形体の剛性を向上する観点から、0.8以上1.4以下であることが好ましい。また、アスペクト比L/Dは、0.9以上1.3以下であることがより好ましく、0.9を超え1.3未満であることが更に好ましい。
発泡粒子のアスペクト比L/Dは、無作為に選択した100個の発泡粒子について、発泡粒子の軸方向の最大長(L)と、該最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)とをノギスで測定し、比(L/D)を算出し、その値を算術平均することにより求められる。
【0016】
<独立気泡率>
発泡粒子の独立気泡率は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上である。この場合には、発泡粒子の成形性や得られる発泡粒子成形体の剛性等をより向上させることができる。発泡粒子の独立気泡率は、ASTM D2856-70に基づき空気比較式比重計を用いて測定することができる。
【0017】
<高温ピーク>
発泡粒子は、発泡粒子を、熱流束示差走査熱量測定(DSC)によって23℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温して得られるDSC曲線において、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂固有の吸熱ピーク(以下、「固有ピーク」という。)の頂点よりも高温側に、1つ以上の吸熱ピーク(以下、「高温ピーク」という。)が現れる結晶構造を有していることが好ましい。この場合には、発泡粒子の成形性をより向上させることができ、また、得られる発泡粒子成形体の剛性をより高めることができる。かかる観点からは、高温ピークの融解熱量は、5~50J/gであることが好ましく、8~40J/gであることがより好ましく、10~30J/gであることが更に好ましい。
【0018】
<被覆層>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の被覆層(以下、単に被覆層ともいう)は、ポリエチレン系樹脂から構成され、ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層を被覆するものである。発泡粒子が上記被覆層を有していない場合や、被覆層を構成する樹脂を例えばポリプロピレン系樹脂とした場合には、得られる発泡粒子成形体の靭性が低下したり、摺動性が著しく低下したりするおそれがある。
本発明の目的効果を確実に奏する観点から、被覆層中のポリエチレン系樹脂の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上であり、100質量%、つまり被覆層は重合体として実質的にポリエチレン系樹脂のみを含むことが最も好ましい。
発泡粒子の全表面積において被覆層が占める割合(被覆層による発泡芯層の被覆率)は、被覆層による効果を十分に得る観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。
被覆層は、成形体のグリップ性や摺動性がより向上する観点から、非発泡状態であることが好ましい。ここで、非発泡状態とは、被覆層中に気泡が全く存在しない状態のみならず、ごく微小な気泡が僅かに存在する実質的に非発泡状態である場合も包含する。また、被覆層中に気泡が全く存在しない状態は、一旦形成された気泡が破泡して気泡が消滅した状態も包含する。
【0019】
(ポリエチレン系樹脂)
被覆層は、直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)から構成される。直鎖状低密度ポリエチレンとは、直鎖状を呈する、エチレンとα-オレフィンとの共重合体である。共重合体を構成するα-オレフィンの炭素数は通常4~10である。被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成されることにより、該被覆層を有する発泡粒子を型内成形してなる発泡粒子成形体は、靭性に優れるとともに、適度なグリップ性及び摺動性を兼ね備えるものとなる。その結果、発泡粒子成形体をたとえば物流用緩衝材として使用した際に、輸送時における被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる。
【0020】
被覆層を構成する直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン系重合触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。この場合には、チーグラー・ナッタ系重合触媒等により重合されたものと比較して上記被覆層による効果をより安定して得られやすい。
【0021】
≪直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)≫
-密度-
被覆層を構成する直鎖状低密度ポリエチレン(PE-LLD)の密度は、より容易に靭性、グリップ性及び摺動性を兼ね備える発泡粒子成形体を得る観点から、好ましくは0.905g/cm以上、より好ましくは0.910g/cm以上、更に好ましくは0.920g/cm以上であり、そして、好ましくは0.950g/cm以下、より好ましくは0.940g/cm以下、更に好ましくは0.930g/cm以下である。
PE-LLDの密度は、例えば、JIS K 7112:1999に記載のB法(ピクノメーター法)に準拠して測定される。
【0022】
-融点Tms-
被覆層を構成するPE-LLDの融点Tmsは、105℃以上130℃以下である。被覆層を構成するPE-LLDの融点が低すぎる場合には、靭性及び摺動性に優れる成形体を得ることが難しなるおそれがある。かかる観点から、被覆層を構成するPE-LLDの融点Tmsは、好ましくは108℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは115℃以上である。一方、被覆層を構成するPE-LLDの融点が高すぎる場合には、靭性に優れる成形体を得ることが難しなるおそれがある。かかる観点から、被覆層を構成するPE-LLDの融点Tmsは、好ましくは128℃以下、より好ましくは125℃以下である。
PE-LLDの融点Tmsは、JIS K 7121:1987に基づき、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節後の試験片を、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度として求められる。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0023】
-曲げ弾性率Ms-
被覆層を構成するPE-LLDの曲げ弾性率Msは、120MPa以上600MPa以下である。被覆層を構成するPE-LLDの曲げ弾性率が低すぎると、成形体の摺動性及び靭性が低下するおそれがある。かかる観点から、被覆層を構成するPE-LLDの曲げ弾性率Msは、好ましくは140MPa以上、より好ましくは200MPa以上、更に好ましくは250MPa超えである。一方、被覆層を構成するPE-LLDの曲げ弾性率が高すぎると、成形体の靭性が低下するおそれがある。かかる観点から、被覆層を構成するPE-LLDの曲げ弾性率Msは、好ましくは550MPa以下、より好ましくは500MPa以下、更に好ましくは450MPa以下である。
PE-LLDの曲げ弾性率Msは、JIS K 7171:2016に基づき、求められる。
【0024】
-メルトフローレイト-
被覆層を構成するPE-LLDのメルトフローレイト(MFR)は、たとえばアスペクト比が0.8以上1.3以下の発泡粒子をより容易に製造する観点及び被覆層による発泡芯層の被覆率を向上させて本願の目的効果をより安定して発現する観点から、好ましくは2.5g/10min以上、より好ましくは3.0g/10min以上、更に好ましくは3.5g/10min以上であり、そして、好ましくは12g/10min以下である。
PE-LLDのMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0025】
被覆層を構成するポリエチレン系樹脂には、直鎖状低密度ポリエチレン以外の他のポリエチレン系樹脂、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が含まれていてもよい。ただし、上記直鎖状低密度ポリエチレンによる作用効果をより向上させる観点から、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂中の直鎖状低密度ポリエチレンの比率は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%、つまり、ポリエチレン系樹脂が重合体として直鎖状低密度ポリエチレンのみを含むことが更に好ましい。
【0026】
被覆層には、本発明の効果を阻害しない程度であればポリエチレン系樹脂以外の他の重合体や添加剤が適宜添加されていてもよい。前記他の重合体としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂や、エラストマー等が挙げられる。被覆層中の前記他の重合体の含有量は、被覆層の全質量に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましく、0質量%、つまり、被覆層が重合体としてポリエチレン系樹脂のみを含むことが特に好ましい。添加剤としては、例えば、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤などが挙げられる。
【0027】
<発泡芯層>
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡芯層(以下、単に発泡芯層ともいう)は、ポリプロピレン系樹脂から構成され、かつ発泡した状態である。ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単量体の単独重合体及びプロピレンに由来する構造単位を50質量%以上含むプロピレン系共重合体をいう。
【0028】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン系共重合体又はその混合物が挙げられる。これらの中でも、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、及びそれらの共重合体とポリプロピレン単独重合体との混合物であることが好ましく、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体であることがより好ましく、エチレン-プロピレン共重合体であることが更に好ましい。
【0029】
≪曲げ弾性率Mc≫
発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcは、成形体の剛性及び摺動性をより向上する観点から、好ましくは550MPa以上、より好ましくは600MPa以上、更に好ましくは800MPa以上であり、そして、好ましくは1600MPa以下、より好ましくは1300MPa以下、更に好ましくは1200MPa以下である。
ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcは、JIS K 7171:2016に基づき、求められる。
【0030】
≪Ms/Mc及びMc-Ms≫
発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcに対する、被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Msの比Ms/Mcは、成形体の摺動性及び靭性をより向上する観点から、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下である。
また、同様の観点から、発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Mcと、被覆層を構成するポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率Msとの差[Mc-Ms]は、好ましくは300MPa以上、より好ましくは400MPa以上、更に好ましくは500MPa超え、より更に好ましくは600MPa以上であり、そして、好ましくは1000MPa以下である。
【0031】
≪融点Tmc≫
発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmcは、成形体の剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは135℃以上であり、そして、好ましくは165℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは155℃以下である。
ポリプロピレン系樹脂の融点は、JIS K 7121:1987に基づき、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節後の試験片を、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度として求められる。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とする。
【0032】
被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点Tmsが、前記発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点Tmcよりも低いことが好ましい。つまり、Tms<Tmcであることが好ましい。この場合には、発泡粒子の成形性が向上するとともに、靭性に優れる成形体をより容易に得ることができる。かかる観点から、Tmc-Tms≧5であることが好ましく、Tmc-Tms≧10であることがより好ましく、Tmc-Tms≧15であることが更に好ましい。一方、発泡芯層と被覆層との剥離や、発泡粒子製造時の発泡粒子間の互着等を抑制する観点からは、Tmc-Tms≦35であることが好ましい。
【0033】
≪MFR≫
発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFRは、発泡性を向上する観点から、好ましくは2g/10min以上、より好ましくは4g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上であり、そして、好ましくは15g/10min以下、より好ましくは12g/10min以下、更に好ましくは10g/10min以下である。
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0034】
発泡芯層には、本発明の目的効果を阻害しない範囲内で、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂またはエラストマー等の他の重合体を含んでいてもよい。ただし、発泡芯層中の前記他の重合体の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下であり、0質量%であってもよい。
【0035】
発泡芯層には、本発明の効果を阻害しない程度であれば添加剤が適宜添加されていてもよい。発泡芯層に添加する添加剤としては、被覆層の添加剤に例示したものが挙げられる。
【0036】
[ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法]
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造方法であって、前記発泡芯層と前記被覆層との質量比が、前記発泡芯層:前記被覆層=97:3~88:12であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の嵩倍率が5倍以上45倍以下であり、前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、前記直鎖状低密度ポリエチレンの融点が105℃以上130℃以下であり、前記直鎖状低密度ポリエチレンの曲げ弾性率Msが120MPa以上600MPa以下であり、以下の工程(A)~(C)を含む。
工程(A):ポリプロピレン系樹脂から構成され、かつ非発泡状態の芯層と、ポリエチレン系樹脂から構成され、かつ該芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を密閉容器内で分散媒に分散させる分散工程、
工程(B):多層樹脂粒子に発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程、及び
工程(C):発泡剤を含浸させた発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に分散媒とともに放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造する発泡工程。
工程(A)と工程(B)の順序は問わず、また、同時に行っても良い。ただし、効率的な生産を行う観点からは工程(A)の後に工程(B)を行うことが好ましい。
【0037】
<多層樹脂粒子の製造方法>
多層樹脂粒子の製造方法は、例えば、芯層形成用押出機と、被覆層形成用押出機と、これらの押出機の出口側に設置される多層ストランド形成用ダイとを有する押出機を用いることができる。芯層形成用押出機には、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂と必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して芯層形成溶融混練物とし、被覆層形成用押出機には、被覆層を構成するポリエチレン系樹脂と必要に応じて添加される添加剤とを供給して溶融混練して被覆層形成溶融混練物とする。芯層形成溶融混練物と被覆層形成溶融混練物とを多層ストランド形成用ダイに導入して合流させ、非発泡状態の芯層及び該芯層を被覆する非発泡状態の被覆層からなり、芯鞘構造を有する複合体を形成する。そして、当該複合体を押出機先端に付設されたダイの小孔からストランド状に押出し、水中で冷却した後、ペレタイザーで所定の質量となるように切断すること(ストランドカット法)により、非発泡状態の芯層と芯層を被覆する被覆層とを有する多層樹脂粒子を得ることができる。押出された複合体を切断する方法としては、上記方法のほか、複合体を水中に押出して切断するアンダーウォーターカット法、複合体を空気中に押出した直後に切断するホットカット法等を採用することもできる。
【0038】
(多層樹脂粒子の粒子径)
多層樹脂粒子の粒子径は、0.1~5.0mmであることが好ましく、0.5~3.0mmであることがより好ましい。
【0039】
(多層樹脂粒子の質量)
多層樹脂粒子の質量の平均値は、0.1~20mgとなるように調整されることが好ましく、0.2~10mgであることがより好ましく、0.3~5mgであることが更に好ましく、0.4~2mgであることがより更に好ましい。
【0040】
(芯層と被覆層との質量比)
発泡粒子の発泡芯層と被覆層との質量比は、多層樹脂粒子の非発泡状態の芯層と被覆層との質量比により調整することができる。かかる観点から、多層樹脂粒子の芯層と被覆層との質量比は、芯層:被覆層=97:3~88:12であることが好ましく、96:4~89:11であることがより好ましく、95:5~90:10であることが更に好ましい。
【0041】
(多層樹脂粒子のアスペクト比L/D)
多層樹脂粒子のアスペクト比L/Dは、充填性に優れる発泡粒子を得る観点から、0.5~5.0であることが好ましく、1.0~4.0であることがより好ましい。多層樹脂粒子のアスペクト比は、多層樹脂粒子の軸方向(つまり、押出方向)の最大長(L)と、該最大長の長さ方向と直交する方向における当該樹脂粒子の断面の断面最大径(D)とをノギスで測定し、比(L/D)を算出し、その値を算術平均することにより求められる。
【0042】
(添加剤)
非発泡状態の芯層と被覆層とを有する多層樹脂粒子に、必要に応じて、気泡調整剤、難燃剤、難燃助剤、気泡核剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、導電性フィラー、抗菌剤等の添加剤を添加できる。添加剤を添加する場合、工程(A)において添加することができる。気泡調整剤としては、タルク、マイカ、ホウ酸亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機粉体;リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤、ポリフッ化エチレン系樹脂粉末等の有機粉体が挙げられる。気泡調整剤を添加する場合、多層樹脂粒子中の気泡調整剤の含有量は、多層樹脂粒子100質量部に対して、0.01~1質量部であることが好ましい。
【0043】
なお、多層樹脂粒子の粒子径、アスペクト比や平均質量の調整は、上記ストランドカット法において樹脂の吐出速度、引き取り速度、カッタースピードなどを適宜変えて切断することにより行うことができる。
【0044】
<工程(A)>
工程(A)では、例えば、オートクレーブ等の密閉可能であり加熱及び加圧に耐えられる容器内において、分散媒に、例えば撹拌機を用いて上記多層樹脂粒子を分散させることができる。
【0045】
分散媒は、多層樹脂粒子を溶解しない分散媒であれば、特に限定されず、例えば、水、エチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられ、中でも水が好ましい。
【0046】
工程(A)において、多層樹脂粒子同士の融着を防止するために、分散剤を分散媒に更に添加することが好ましい。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース等の有機系分散剤;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、カオリン、マイカ、リン酸マグネシウム、リン酸三カルシウム等の難溶性無機塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも、取り扱いの容易さから、好ましくは難溶性無機塩であり、より好ましくはカオリンである。分散剤を添加する場合、分散剤は、多層樹脂粒子100質量部に対して、0.001~5質量部程度添加することが好ましい。
【0047】
分散媒には、界面活性剤を更に添加することもできる。界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、その他懸濁重合で一般的に使用されるアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を添加する場合、界面活性剤は、多層樹脂粒子100質量部に対して、0.001~1質量部程度添加することが好ましい。
【0048】
<工程(B)>
工程(B)では、例えば、芯層を構成するポリプロピレン系樹脂が軟化する温度以上に加熱し、発泡剤を含浸させて発泡性多層樹脂粒子を得ることができる。
【0049】
発泡剤は、多層樹脂粒子を発泡させることができるものであれば、特に限定されない。発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、酸素、ネオン等の無機物理発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素、クロロフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等の有機物理発泡剤等が挙げられる。これらの中でも、オゾン層の破壊がなく、かつ安価な無機物理発泡剤が好ましく、窒素、空気、二酸化炭素がより好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。これらは、単独で又は2種類以上組み合わせて使用される。
【0050】
発泡剤の添加量は、所望の発泡粒子の嵩密度、ポリプロピレン系樹脂の種類、発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、多層樹脂粒子100質量部に対して、有機物理発泡剤で、5~50質量部であることが好ましく、無機物理発泡剤で、0.1~30質量部であることが好ましく、0.5~15質量部であることがより好ましい。
【0051】
工程(B)における加熱温度は、好ましくはポリプロピレン系樹脂の融点以上、該融点+80℃以下であり、具体的には、100℃~230℃であることが好ましい。該加熱温度で保持する時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは20分間以上、そして、好ましくは100分間以下、より好ましくは60分間以下である。
【0052】
<工程(C)>
工程(C)では、例えば、工程(B)により発泡剤を含浸しており、加熱されている発泡性多層樹脂粒子を、密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低い圧力の雰囲気下に放出して、少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とし、発泡粒子を製造することができる。
具体的には、密閉容器内の圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら、密閉容器内の水面下の一端を開放し、発泡剤が含浸されている発泡性多層樹脂粒子を分散媒とともに密閉容器内から密閉容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下、通常は大気圧下に放出し、発泡性多層樹脂粒子の少なくとも芯層を発泡させて発泡芯層とすることにより、発泡芯層と当該発泡芯層を被覆する被覆層とを有する多層構造の発泡粒子を作製することができる。また、工程(B)を経た発泡性多層樹脂粒子を冷却して取り出した後、該発泡性多層樹脂粒子を温風、スチーム等の加熱媒体により加熱して発泡させることにより発泡粒子を作製することもできる。
【0053】
工程(C)において、発泡時の温度は、通常、110℃~170℃であることが好ましい。また、密閉容器内の圧力は、好ましくは0.5MPa(G)以上5MPa(G)以下である。なお、「0.5MPa(G)」は、ゲージ圧で0.5MPaであることを意味する。
【0054】
上記の工程(A)~(C)は、単一の密閉容器における一連の工程として行うことが好ましいが、それぞれの工程毎に多層樹脂粒子等を取り出し、再度密閉容器内に投入して、次の工程を行うなど別工程とすることもできる。
【0055】
また、上記工程において、密閉容器内での加熱時に、(芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融点-20℃)以上、(芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の融解終了温度)未満の温度で十分な時間、好ましくは10~60分間程度保持する一段保持工程を行うことが好ましい。さらに、その後、(ポリプロピレン系樹脂の融点-15℃)から(ポリプロピレン系樹脂の融解終了温度+10℃)の温度に調節し、そして、必要により、その温度でさらに十分な時間、好ましくは10~60分間程度保持する二段保持工程を行うことが好ましい。その後、発泡剤を含む発泡性樹脂粒子を密閉容器内から低圧下に放出して発泡させることにより、上述の高温ピークを示す結晶構造を有する発泡粒子を得ることができる。
【0056】
上記のようにして得られる発泡粒子は、空気等の無機ガスにより加圧処理して内圧を高めた後、スチーム等で加熱して発泡させ(二段発泡)、さらに発泡倍率の高い(見掛け密度の低い)発泡粒子とすることもできる。
【0057】
[物流用緩衝材]
本発明の物流用緩衝材(以下、単に物流用緩衝材ともいう)は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子が相互に融着してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(以下、単にポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体、発泡粒子成形体、又は成形体ともいう)からなるものであって、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂から構成される発泡芯層と、前記発泡芯層を被覆する被覆層とを有し、前記被覆層が直鎖状低密度ポリエチレンから構成され、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体倍率が5倍以上45倍以下であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の最大曲げ強さが0.3MPa以上であり、前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の引張強さS[MPa]と引張伸びE[%]との積が18MPa・%以上であり、ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が0.4以上0.7未満、かつポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が1.0未満である。
【0058】
本発明の物流用緩衝材は、上記構成を備えることにより、優れた剛性を有し、輸送時における被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる。
【0059】
<ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体>
(成形体倍率)
本発明の物流用緩衝材を構成するポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体倍率は、5倍以上45倍以下である。発泡粒子成形体の成形体倍率が高すぎると、靭性及び摺動性が著しく低下するおそれがある。また、重量物を被梱包物として運搬する場合、剛性が不足するおそれがある。かかる観点から、物流用緩衝材を構成するポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体倍率は、好ましくは35倍以下、より好ましくは30倍以下、更に好ましくは25倍以下である。一方、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の成形体倍率は、軽量性の観点から、好ましくは8倍以上、より好ましくは10倍以上である。
【0060】
(最大曲げ強さ)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の最大曲げ強さは、0.3MPa以上である。発泡粒子成形体の最大曲げ強さが低すぎると、例えば、重量物の物流用緩衝材として使用する場合、発泡粒子成形体が破損するおそれがある。同様の観点から、発泡粒子成形体の最大曲げ強さは、好ましくは0.4MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。発泡粒子成形体の最大曲げ強さの上限は特に限定されないが、4.5MPa以下である。
発泡粒子成形体の最大曲げ強さは、 JIS K 7221-2:2006に準拠して測定される。
【0061】
(引張強さSと引張伸びEとの積)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の引張強さS[MPa]と引張伸びE[%]との積は、18MPa・%以上である。引張強さSと引張伸びEとの積が上記値以上であると、物流用緩衝材として適当な引張強さと引張伸びとを両立し、破断しにくいものとなる。したがって、輸送時における発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる。同様の観点から、発泡粒子成形体の引張強さSと引張伸びEとの積は、好ましくは20MPa・%以上、より好ましくは21MPa・%以上、更に好ましくは25MPa・%以上である。その上限は、特に限定されないが、40MPa・%以下である。なお、本明細書において上記引張強さS[MPa]と引張伸びE[%]との積は、靭性の指標として用いられる。
【0062】
上記と同様の観点から、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の引張強さSは、好ましくは0.5MPa以上、より好ましくは0.6MPa以上、更に好ましくは0.7MPa以上である。また、引張伸びEは、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、更に好ましくは28%以上である。
【0063】
発泡粒子成形体の引張強さ及び引張伸びは、JIS K 6767:1999に準拠して、バーチカルスライサーを用いて発泡粒子成形体から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出し、該切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製し、該試験片を500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより求められる。測定される引張り時の最大引張り応力及び破断時の伸びを、それぞれ、引張強さ及び引張伸びとする。
【0064】
(ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が、0.4以上0.7未満であり、かつポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が1.0未満である。発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が小さすぎると、グリップ性が不足して輸送時に被梱包物が破損するおそれがある。一方、発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が大きすぎると、摺動性が損なわれて輸送時に被梱包物が破損するおそれがある。かかる観点から、ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数は、好ましくは0.6以下である。
また、発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が大きすぎると、輸送時に被梱包物が破損するおそれがある。かかる観点から、発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数は、好ましくは0.9以下である。その下限は、輸送時の被梱包物及び成形体の破損をより確実に抑制する観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上である。
発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数は、JIS K 7125:1999に準拠し、相手材料としてPVC板(軟質塩化ビニル樹脂シート、厚み:3mm)を用い、試験片として発泡粒子成形体を用い、発泡粒子成形体のスキン面(カットしない面)について測定を行うことにより求められる。
【0065】
(鋼板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は、鋼板に対する動摩擦係数が、好ましくは0.3以上であり、そして、好ましくは0.6未満である。この場合には輸送時における被梱包物の破損をより確実に抑制することができる。また、同様の観点から、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の鋼板に対する静摩擦係数は、好ましくは0.2以上であり、そして、好ましくは0.5以下である。
発泡粒子成形体の鋼板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数は、JIS K 7125:1999に準拠し、相手材料として鋼板(日新製鋼(株)製、商品名:月星GLカラーSELiOS/GLエナメルクリーン/ストロークリーム、厚み:0.27mm)を用い、試験片として発泡粒子成形体を用い、発泡粒子成形体のスキン面(カットしない面)について測定を行うことにより求められる。
【0066】
(50%圧縮応力)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、剛性の観点から、好ましくは0.30MPa以上、より好ましくは0.32MPa以上、更に好ましくは0.35MPa以上である。成形体の50%圧縮応力が上記範囲内であると、重量物を被梱包物として使用する場合における発泡粒子成形体自体の破損をより容易に抑制することができる。一方、被梱包物の表面保護性を高める観点からは、成形体の50%圧縮応力は好ましくは1.00MPa以下、より好ましくは0.80MPa以下、更に好ましくは0.5MPa以下である。
発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、JIS K 6767:1999に基づき測定される。
【0067】
<物流用緩衝材の製造方法>
本発明の物流用緩衝材は、発泡粒子成形体からなる。発泡粒子成形体は、例えば、上記発泡粒子を型内成形してなる。
【0068】
発泡粒子の型内成形は、発泡粒子を成形型内に充填し、スチーム等の加熱媒体を用いて加熱成形することにより行うことができる。具体的には、発泡粒子を成形型内に充填した後、成形型内にスチーム等の加熱媒体を導入することにより、発泡粒子を加熱して発泡させるとともに、相互に融着させて成形空間の形状が賦形された発泡粒子成形体を得ることができる。また、発泡粒子を空気等の加圧気体により予め加圧処理して発泡粒子の気泡内の圧力を高めて、発泡粒子内の圧力を大気圧よりも0.01~0.3MPa高い圧力に調整した後、大気圧下又は減圧下で該発泡粒子を成形型内に充填し、次いで型内にスチーム等の加熱媒体を供給して発泡粒子を加熱融着させる加圧成形法(例えば、特公昭51-22951号公報)により成形することが好ましい。また、圧縮ガスにより大気圧以上に加圧した成形型内に、当該圧力以上に加圧した発泡粒子を充填した後、キャビティ内にスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる圧縮充填成形法(特公平4-46217号公報)により成形することもできる。その他に、特殊な条件にて得られる二次発泡力の高い発泡粒子を、大気圧下又は減圧下で成形型のキャビティ内に充填した後、次いでスチーム等の加熱媒体を供給して加熱を行い、発泡粒子を加熱融着させる常圧充填成形法(特公平6-49795号公報)又は上記の方法を組み合わせた方法(特公平6-22919号公報)などによっても成形することができる。
【実施例0069】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの例によりなんら限定されるものではない。
【0070】
実施例及び比較例に使用した樹脂、発泡粒子及び発泡粒子成形体について、以下の測定又は評価を行った。なお、発泡粒子の物性測定は、相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて24時間静置して状態調節した発泡粒子を用いて行った。また、発泡粒子成形体の物性測定及び評価は、離型後の発泡粒子成形体を相対湿度50%、80℃、1atmの条件にて12時間静置して状態調節した成形体を用いて行った。
【0071】
[測定]
<原料樹脂>
(密度)
樹脂の密度は、JIS K 7112:1999に記載のB法(ピクノメーター法)に準拠して測定した。
【0072】
(融点)
樹脂の融点は、JIS K 7121:1987に基づき、試験片の状態調節としては「(2)一定の熱処理を行なった後、融解温度を測定する場合」を採用し、状態調節後の試験片を、10℃/minの加熱速度で30℃から200℃まで昇温することによりDSC曲線を取得し、該DSC曲線上の樹脂の融解に伴う融解ピークの頂点温度として求めた。なお、DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も面積の大きな融解ピークの頂点温度を融点とした。なお、測定装置は、熱流束示差走査熱量測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)社製、型番:DSC7020)を用いた。
【0073】
(曲げ弾性率)
樹脂の曲げ弾性率は、以下の方法により測定した。まず、樹脂を230℃でヒートプレスして4mmのシートを作製し、このシートから長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を切り出した。この試験片の曲げ弾性率を、JIS K 7171:2016に準拠して求めた。なお、圧子の半径R1及び支持台の半径R2はともに5mmであり、支点間距離は64mmであり、試験速度は2mm/minとした。
【0074】
(MFR)
樹脂のMFRは、JIS K 7210-1:2014に準拠して、温度190℃又は230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。ポリプロピレン系樹脂のMFRを測定する場合には温度230℃、ポリエチレン系樹脂のMFRを測定する場合には温度190℃の条件を採用した。
【0075】
<発泡粒子>
(嵩倍率)
発泡粒子の嵩倍率は、以下のように求めた。発泡粒子群から発泡粒子を無作為に取り出して容積1Lのメスシリンダーに入れ、自然堆積状態となるように多数の発泡粒子を1Lの目盛まで収容し、収容された発泡粒子の質量W1[g]を収容体積V1(1[L])で除して(W1/V1)単位換算し、発泡粒子の嵩密度[kg/m]を求めた。そして、該発泡粒子の基材樹脂の密度[kg/m]を、先に求めた発泡粒子の嵩密度[g/cm]で除すことにより、求めた。
【0076】
(平均気泡径)
発泡粒子の平均気泡径は、次のように測定した。発泡粒子群から無作為に20個の発泡粒子を選択した。発泡粒子をその中心部を通るように切断して2分割し、走査型電子顕微鏡を用いてその断面全体の拡大写真をそれぞれ撮影した。各断面写真において、発泡粒子の最表面から中心部を通って反対側の最表面まで、等角度(45°)で4本の線分を引いた。各線分と交差する気泡数をそれぞれ計測し、4本の線分の合計長さを線分と交差する全気泡数で除して各発泡粒子の気泡径を求めた。これらの値を算術平均することにより求められる値を発泡粒子の平均気泡径とした。
【0077】
(アスペクト比)
発泡粒子のアスペクト比L/Dは、無作為に選択した100個の発泡粒子について、軸方向の最大長(L)と、該最大長の長さ方向と直交する方向における当該粒子の断面の断面最大径(D)とをノギスで測定し、比(L/D)を算出し、その値を算術平均することにより求めた。
【0078】
(独立気泡率)
発泡粒子の独立気泡率は、ASTM D2856-70に基づき空気比較式比重計を用いて測定した。具体的には、まず、状態調節後の発泡粒子から嵩体積、つまり、メスシリンダー内に自然に堆積させたときの標線の値が約20cmとなるように測定用サンプルを採取した後、測定用サンプルの見掛け体積を測定した。なお、測定用サンプルの見掛け体積は、具体的には、温度23℃のエタノールが入ったメスシリンダーに測定用サンプルを沈めた際の液面の上昇量に相当する体積である。見掛けの体積を測定した測定用サンプルを十分に乾燥させた後、ASTM-D2856-70に記載されている手順Cに準じ、(株)島津製作所製アキュピックII1340により測定される測定用サンプルの真の体積の値を測定した。そして、これらの体積の値を用い、下記式(1)に基づいて測定用サンプルの独立気泡率を計算した。以上の操作を異なる測定用サンプルを用いて5回行い、これら5回の測定により得られる独立気泡率の算術平均値を発泡粒子の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ) (1)
ただし、上記式(1)におけるVx(単位:cm)は発泡粒子の真の体積(つまり、発泡粒子を構成する樹脂の容積と、発泡粒子内の独立気泡部分の気泡全容積との和)であり、Va(単位:cm)は発泡粒子の見掛けの体積(つまり、発泡粒子をエタノールの入ったメスシリンダーに沈めた際の液面の上昇分から測定される体積)であり、W(単位:g)は測定用サンプルの質量であり、ρ(単位:g/cm)は発泡芯層を構成するポリプロピレン系樹脂の密度である。
【0079】
(高温ピークの融解熱量)
発泡粒子の高温ピークの融解熱量は、以下のように求めた。発泡粒子約3mgを採取し、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製DSC Q1000)によって23℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温し、ポリプロピレン系樹脂固有の融解による吸熱ピーク(樹脂固有ピーク)と、その高温側に1つ以上の融解ピーク(高温ピーク)を有するDSC曲線を得た。次の説明における樹脂固有ピークをA、それより高温側に現れる高温ピークをBとする。該DSC曲線上の80℃に相当する点αと、発泡粒子の融解終了温度Tに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α-β)を引いた。なお、上記融解終了温度Tとは、高温ピークBの高温側におけるDSC曲線と高温側ベースラインとの交点をいう。次に上記の樹脂固有ピークAと高温ピークBとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α-β)と交わる点をδとした。高温ピークBの面積は、DSC曲線の高温ピークB部分の曲線と、線分(δ-β)と、線分(γ-δ)とによって囲まれる部分の面積であり、これを高温ピークの融解熱量とした。
【0080】
<発泡粒子成形体>
(最大曲げ強さ)
発泡粒子成形体の最大曲げ強さは、JIS K 7221-2:2006に準拠し、発泡粒子成形体の曲げ強さの最大点を最大曲げ強さとして測定した。具体的には、発泡粒子成形体から長さ120mm、幅25mm、厚み20mmの試験片を表面のスキン層を除いて切り出した。この試験片を使用して、加圧くさびの降下速度10mm/分、支点間距離100mm、支持台先端部の半径5mm、加圧くさび先端部の半径5mmとした以外はJIS K 7221-2:2006に基づいて、最大曲げ強さを測定した。最大曲げ強さは、発泡粒子成形体の長さ方向中心部付近からスキン層を除いて5個の試験片を切り出して上記測定を行い、その算術平均値とした。なお、発泡粒子成形体のスキンとは、型内成形時に成形型の内表面に接していた成形体の表面をいい、スキン層とは、成形体の表面から深さ10mmまでの部分をいう。
【0081】
(引張強さ及び引張伸び)
発泡粒子成形体の引張強さ及び引張伸びは、JIS K 6767:1999に準拠して、バーチカルスライサーを用いて発泡粒子成形体の中心部から全ての面が切り出し面となるように、120mm×25mm×10mmの切り出し片を切り出し、該切り出し片から糸鋸を用いてダンベル状1号形状の試験片を作製し、該試験片を500mm/分の引張速度で引張試験を行うことにより求めた。測定される引張り時の最大引張り応力及び破断時の伸びを、それぞれ、引張強さ及び引張伸びとした。引張強さ及び引張伸びは、発泡粒子成形体の長さ方向中心部付近からスキン層を除いて5個の試験片を切り出して上記測定を行い、その算術平均値とした。
【0082】
(50%圧縮応力)
発泡粒子成形体の50%圧縮応力は、発泡粒子成形体からスキン層を除いて、縦50mm×横50mm×厚み25mmの直方体状となるように試験片を切り出し、この試験片に対し、(株)エー・アンド・デイ製のRTF‐1350を用いて、JIS K 6767:1999に基づいて、10mm/分の速度で圧縮した際の50%ひずみ時の荷重を求め、これを試験片の受圧面積で除して算出することにより、50%圧縮応力[kPa]を求めた。50%圧縮応力は、発泡粒子成形体の長さ方向中心部付近からスキン層を除いて3個の試験片を切り出して上記測定を行い、その算術平均値とした。
【0083】
(PVC板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数)
発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数は、JIS K 7125:1999に準拠し、相手材料としてPVC板(軟質塩化ビニル樹脂シート、厚み:3mm、表面硬度:20)を用い、試験片として発泡粒子成形体を用い、発泡粒子成形体のスキン面(カットしない面)について測定を行うことにより求めた。
具体的には、実施例及び比較例で得られた発泡粒子成形体から縦63mm×横63mm×厚さ10mmの片面スキンのサンプルを3個切り出し、試験片とした。なお、試験サンプルの発泡粒子成形体は、平滑な表面を有する金型により型内成形が行われたものである。水平面上に上記PVC板を置き、その上に前記サンプルをスキン面(面積:40cm)が下(PVC板側)になるように置き、更にその上に9.8Nの法線力となるように錘を置いた。なお、サンプルの上側を、均一な圧力分布をかけられるように厚み1mmのフェルトで覆った。
測定はテンシロン万能材料試験機を用いた。前記サンプルを、PVC板を水平方向に速度100mm/分で70mm移動させ、その際の荷重(単位:N)と移動距離を記録し、荷重変位曲線を得た。
静摩擦係数は、前記荷重変位曲線において、最初の極大荷重値(静荷重)(F)を法線力(9.8N)で除して求めた。具体的には次式で表される。なお、極大値は、例えば、荷重変位曲線の拡大図を得ることにより、判別することができる。
静摩擦係数=F/9.8
本発明における動摩擦係数は、前記荷重変位曲線において、変位(移動距離)10mmから60mmまでの、検出された測定変位における動荷重の平均値を動荷重(F)とし、これを法線力(9.8N)で除して求めた。具体的には次式で表される。
動摩擦係数=F/9.8
なお、本発明においては、サンプルが発泡体であることに起因して、相対ずれ運動を開始した直後の動摩擦力の値が安定しないことがあることから、変位10mmからの値を採用する。
発泡粒子成形体のポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数は、上記3個のサンプルの算術平均値とした。
【0084】
なお、上記PVC板の表面硬度は次のようにして求めた値である。軟質塩化ビニルシートを重ねて厚み10mmとして試験片とした。この試験片を温度23℃、相対湿度50%の環境下に1日静置した。この試験片のスキン面に、JIS K 7312:1996に準拠したタイプCデュロメータ(アスカーゴム硬度計C型)を接触させ、接触した時点から3秒経過後の目盛りの値を記録した。この操作を、表面上で無作為に選択した5点について行い、得られた目盛りの値の相加平均をPVC板の表面硬度とした。
【0085】
(鋼板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数)
発泡粒子成形体の鋼板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数は、JIS K 7125:1999に準拠し、相手材料として鋼板(日新製鋼(株)製、商品名:月星GLカラーSELiOS/GLエナメルクリーン/ストロークリーム、厚み:0.27mm)を用いた以外は上記PCV板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数の測定と同様の方法により求めた。
【0086】
(振動試験)
後述の<発泡粒子成形体の作製>において、成形型の形状を変更し、箱型形状の発泡粒子成形体を作製した。箱型形状の成形体は、外寸が縦150mm、横150mm、高さ120mm、側壁部及び底面部の厚み15mm、つまり、内寸が縦120mm、横120mm、高さ105mmである。この箱型形状の成形体を、回転式篩装置((株)徳寿工作所社製、製品名:ジャイロシフターGS-A1P型)中の網上に動かないよう固定して設置し、被梱包物として重さ1kgの四角形状の金属片(鉄鋼、密度7.85g/cm、縦110mm、横110mm、高さ10mm)を箱型の成形体の内部中央付近に固定せずに静置させて設置した。振動試験は260回転/分の条件で回転振動を与えることにより実施した。振動開始から1分後に振動を停止させた。
その後、発泡粒子成形体及び被梱包物を観察し、欠けや割れ等の破損が見られない場合を「A」、欠けや割れ等の破損が見られた場合を「B」とした。
【0087】
[原料]
実施例、比較例において使用した樹脂を表1及び表2に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
実施例1
<多層樹脂粒子の作製>
表3に示すポリプロピレン系樹脂を押出機内で最高設定温度240℃にて溶融混練し、芯層用の樹脂溶融物を得た。同時に、表3に示すポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を押出機内で最高設定温度240℃にて溶融混練し、被覆層用の樹脂溶融物を得た。
次に芯層用の樹脂溶融物と被覆層用の樹脂溶融物を共押出ダイに供給し、該ダイ内において、被覆層用の樹脂溶融物が芯層用の樹脂溶融物の周囲を覆うように積層し、ストランド状に押出して水冷し、ペレタイザーで質量が約1.0mgとなるように切断、乾燥して多層樹脂粒子(粒子径:2.2mm、アスペクト比L/D:3.4)を得た。
このときの芯層用の樹脂溶融物と被覆層用の樹脂溶融物の吐出量の質量比は、芯層:被覆層=90:10とした。なお、多層樹脂粒子製造に際し、芯層用の樹脂溶融物に対して、気泡核剤としてホウ酸亜鉛、を押出機に供給し、被覆層用の樹脂溶融物に対して、滑剤(エルカ酸アミド1000ppm(基材ポリマー100質量部に対して0.1質量部))を押出機に供給し、多層樹脂粒子を得た。この時、気泡核剤はマスターバッチで供給し、芯層のポリプロピレン系樹脂中のみに気泡核剤としてホウ酸亜鉛は1000質量ppmを含有させ、被覆層のポリマーには気泡核剤を含有させなかった。
【0091】
<発泡粒子の作製>
前記多層樹脂粒子50kgを、分散媒としての水280Lとともに400Lの密閉容器内に仕込み、更に多層樹脂粒子100質量部に対し、分散剤としてカオリン0.008質量部、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.004質量部、分散助剤として硫酸アルミニウム0.0002質量部を密閉容器内に添加し、発泡剤として二酸化炭素を容器内圧力が1.5MPa(二酸化炭素圧力)となるように密閉容器内に添加し、撹拌下に150.6℃(発泡温度)まで加熱昇温して同温度で6分間保持した後、容器内容物を大気圧下に放出して発泡粒子1を得た。前記発泡粒子における被覆層は、非発泡状態であった。
【0092】
<発泡粒子成形体の作製>
発泡粒子1を空気で加圧し、0.18MPa(G)の内圧を付与した後、縦300mm×横250mm×厚さ60mmの平板成形型に発泡粒子1を充填した。発泡粒子を充填する際のクラッキング量は10%(つまり、6mm)とした。次に、金型両面からスチームを5秒間供給して予備加熱(排気工程)を行った後、表3に記載された成形圧0.26MPa(G)より0.08MPa(G)低い圧力のスチームに達するまで金型の一方の面側から一方加熱を行い、次いで、表3に記載された成形圧より0.04MPa(G)低い圧力のスチームに達するまで金型の他方の面側より一方加熱を行った後、表3に記載された成形圧0.26MPa(G)に達するまで加熱を行った(本加熱)。加熱終了後、放圧し、成形体の発泡力による表面圧力が0.04MPa(G)になるまで水冷した後、型を開放して成形体を取り出した。得られた成形体を80℃のオーブン中で12時間養生し、表3に記載された成形体倍率の発泡粒子成形体を得た。
【0093】
実施例2~6及び比較例1~7
表3に示す原料及び条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、発泡粒子及び発泡粒子成形体を得た。
【0094】
【表3】
【0095】
実施例の発泡粒子成形体は、最大曲げ強さ及び50%圧縮応力が高く、剛性に優れることがわかった。実施例の発泡粒子成形体の引張強さと引張伸びとの積が高いため、靭性に優れることがわかった。また、実施例の発泡粒子成形体は、ポリ塩化ビニル板に対する動摩擦係数が特定の範囲であり、かつポリ塩化ビニル板に対する静摩擦係数が特定値以下であるため、適度なグリップ性と摺動性とを両立していた。そして、実施例の発泡粒子成形体は振動試験において被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損が抑制されていることわかった。
このことから、実施例の発泡粒子成形体をたとえば物流用緩衝材として使用した際に、輸送時における被梱包物及び発泡粒子成形体自体の破損を抑制することができる。
【0096】
発泡粒子の被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の曲げ弾性率が低い比較例1は、成形体の引張強さと引張伸びとの積が低く靭性に劣り、また、成形体のPVC板に対する静摩擦係数が大きすぎるため、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
発泡粒子の被覆層を構成するポリエチレン系樹脂の融点及び曲げ弾性率が低い比較例2は、成形体の引張強さと引張伸びとの積が低く靭性に劣り、成形体のPVC板に対する動摩擦係数が大きすぎるため摺動性が損なわれ、また、成形体のPVC板に対する静摩擦係数が大きすぎるため、その結果として、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
発泡粒子の被覆層を構成するポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレンであり、かつ曲げ弾性率が高い比較例3は、成形体の引張強さと引張伸びとの積が低く靭性に劣り、また、成形体のPVC板に対する動摩擦係数が小さすぎるためグリップ性が不足し、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
発泡粒子の被覆層を構成するポリエチレン系樹脂が、低密度ポリエチレンである比較例4は、曲げ弾性率及び融点が本願発明の所望の範囲内であっても、成形体の引張強さと引張伸びとの積が低く靭性に劣り、また、成形体のPVC板に対する静摩擦係数が大きすぎるため、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
発泡粒子の被覆層を構成する樹脂が、ポリプロピレン系樹脂である比較例5は、成形体の引張強さと引張伸びとの積が低く靭性に劣り、成形体のPVC板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数が大きすぎるため、その結果として、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
発泡粒子の嵩倍率が高い比較例6は、剛性が著しく劣っていた。また、成形体の引張強さと引張伸びとの積が著しく低く靭性に劣り、成形体のPVC板に対する動摩擦係数及び静摩擦係数が大きすぎるため、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
被覆層の質量比が大きい比較例7は、成形体の引張強さと引張伸びとの積が低く靭性に劣り、また、成形体のPVC板に対する動摩擦係数が小さすぎるためグリップ性が不足し、発泡粒子成形体の振動試験において、発泡粒子成形体又は被梱包物に欠けや割れ等の破損が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の発泡粒子は、優れた剛性を有しつつ、靭性、グリップ性及び摺動性を向上した発泡粒子成形体を製造可能であり、該発泡粒子成形体は、種々の部材で構成される被梱包物の物流用緩衝材として好適に用いられる。