(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119092
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20230821BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230821BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230821BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/34
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021730
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 聡子
(72)【発明者】
【氏名】米村 博貴
(72)【発明者】
【氏名】樋口 智則
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB212
4C083AB242
4C083AC011
4C083AC022
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC331
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC512
4C083AC552
4C083AC852
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD282
4C083AD352
4C083BB11
4C083BB36
4C083BB46
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】本発明は、安定性に優れ且つべたつきの少ない水中油型乳化組成物、及び該組成物を含有する化粧料を提供することに関する。
【解決手段】下記成分(A)~(F)を含有し、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、水中油型乳化組成物。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(F)を含有し、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、水中油型乳化組成物。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
【請求項2】
下記成分(G)を更に含有する、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
成分(G):増粘剤
【請求項3】
成分(G)の含有量が、0.001~1質量%である、請求項2に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
成分(D)が、エステル油、炭化水素油、及びアシルグリセロールからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1~3いずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項5】
乳化粒子の平均粒子径が2μm以下である、請求項1~4いずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項6】
成分(C)中のUV-A波吸収剤の含有量が10質量%以上である、請求項1~5いずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【請求項7】
請求項1~6いずれかに記載の水中油型乳化組成物を含む、化粧料。
【請求項8】
下記成分(A)~(F)を含有させる工程を含む化粧料の製造方法であって、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、化粧料の製造方法。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
【請求項9】
下記成分(A)~(F)を含有させる工程を含む化粧料のべたつきを抑制する方法であって、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、べたつきの抑制方法。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化組成物及び該組成物を含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中油型乳化組成物を用いた日焼け止め化粧料が種々提案されている。例えば、特許文献1では、経時的に安定でかつ高い紫外線防御能を発揮させることを目的として、水中油型乳化組成物の製造方法であって、HLBが6~16のポリグリセリン脂肪酸エステルと水相成分とを混合して液晶又はD相を形成させる液晶/D相化工程、前記液晶又はD相に、紫外線吸収剤を組成物全量に対して3~30質量%含む油相成分を加えてゲルを形成させるゲル化工程、及び前記ゲルに、水を加えてエマルションを形成させる乳化工程を含む、製造方法、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される製造方法により得られた水中油型乳化組成物については、20℃1ヶ月後の安定性しか確認されておらず、より高温下での安定性や、使用感については、十分に満足できるものではない場合があることが分かった。また、特許文献1では、上記のように、液晶/D相化工程やゲル化工程を行う必要があり、製造方法としても煩雑であった。
【0005】
本発明は、安定性に優れ且つべたつきの少ない水中油型乳化組成物、及び該組成物を含有する化粧料を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]~[4]に関する。
[1]下記成分(A)~(F)を含有し、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、水中油型乳化組成物。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
[2][1]に記載の水中油型乳化組成物を含む、化粧料。
[3]下記成分(A)~(F)を含有させる工程を含む化粧料の製造方法であって、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、化粧料の製造方法。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
[4]下記成分(A)~(F)を含有させる工程を含む化粧料のべたつきを抑制する方法であって、成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))が0.05~9.5であり、成分(E)の含有量が4~32質量%である、べたつきの抑制方法。
成分(A):炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上
成分(B):炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上
成分(C):紫外線吸収剤
成分(D):油剤
成分(E):多価アルコール
成分(F):水
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、安定性に優れ且つべたつきの少ない水中油型乳化組成物、及び該組成物を含有する化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らが上記課題について鋭意検討したところ、意外にも、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン脂肪酸エステルの組み合せと、紫外線吸収剤とを併用することで、安定性に優れ且つべたつきの少ない水中油型乳化組成物が得られることを新たに見出した。本発明がかかる優れた効果を奏する理由は不明であるが、ポリグリセリン脂肪酸エステル又はグリセリン脂肪酸エステルが、油溶性物質である紫外線吸収剤に単分散溶解せずに、紫外線吸収剤を含む油と水の界面に容易に配向することによるものと考えられる。
【0010】
本発明の水中油型乳化組成物は、下記成分(A)~(F)を含有する。
【0011】
成分(A)は、炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14、好ましくは6~12のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸ジエステル、及び炭素数14~18の脂肪酸と平均重合度が6~14、好ましくは6~12のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸トリエステルからなる群より選択される1種以上の成分であり、好ましくはHLB8~13のものを使用することができる。例えば、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、ジミリスチン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-6、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-7、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-13などが挙げられ、好ましくはジオレイン酸ポリグリセリル-10、ジミリスチン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-6であり、更に好ましくはジオレイン酸ポリグリセリル-10、ジミリスチン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10であり、更に好ましくはジオレイン酸ポリグリセリル-10である。
【0012】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(A)の含有量は、紫外線防御能及び安定性の観点から、好ましくは0.3~6.0質量%、より好ましくは0.3~5.0質量%、更に好ましくは0.3~3.0質量%、更に好ましくは0.3~2.0質量%、更に好ましくは0.4~1.6質量%、更に好ましくは0.5~1.4質量%、更に好ましくは0.6~1.2質量%である。成分(A)を2種以上使用する場合の含有量は、その合計量を指す。
【0013】
成分(B)は、炭素数8~12の脂肪酸と平均重合度が2~6のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステル、及び炭素数10~22の脂肪酸とグリセリンからなるグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される1種以上の成分であり、好ましくはHLB3~15のものを使用することができる。例えば、カプリン酸ポリグリセリル-2、ラウリン酸ポリグリセリル-2、ジカプリル酸ポリグリセリル-6、ジカプリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)、ベヘン酸グリセリルなどが挙げられ、好ましくはカプリン酸ポリグリセリル-2、ジカプリル酸ポリグリセリル-6であり、より好ましくはカプリン酸ポリグリセリル-2である。
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(B)の含有量は、紫外線防御能及び安定性の観点から、好ましくは0.1~6.0質量%、より好ましくは0.1~5.0質量%、更に好ましくは0.1~3.0質量%、更に好ましくは0.6~2.7質量%、更に好ましくは1.0~2.4質量%、更に好ましくは1.2~2.0質量%である。成分(B)を2種以上使用する場合の含有量は、その合計量を指す。
【0015】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(A)及び(B)の合計含有量は、紫外線防御能及び安定性の観点から、好ましくは0.4~12.0質量%、より好ましくは0.4~10.0質量%、更に好ましくは0.4~6.0質量%、更に好ましくは0.5~5.0質量%、更に好ましくは1.0~4.0質量%、更に好ましくは1.5~3.5質量%、更に好ましくは1.8~3.2質量%である。
【0016】
成分(A)と成分(B)の混合HLBは、安定性の観点から、好ましくは6~14、より好ましくは9~12、更に好ましくは10~11である。本明細書において、HLBは以下のGriffinの算出法により測定された値を指し、成分(A)と成分(B)の混合HLBは加成性を利用し算出される。即ち、本明細書における混合HLBは、成分(A)と成分(B)の加重平均値である。本明細書におけるポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBを算出する際は以下の式を用いる。
HLB=20(1-S/A)
S:ポリグリセリン脂肪酸エステルのけん化価
A:原料脂肪酸の中和価
【0017】
成分(A)、(B)におけるポリグリセリンの平均重合度の算出方法は、以下の式に基づいて、水酸基価より決定される。また、ポリグリセリンのモル数の決定方法は、平均重合度から分子量を求め、モル数を算出する。
OHV=56110(n+2)/(74n+18)
OHV:ポリグリセリンの水酸基価
n:ポリグリセリンの平均重合度
【0018】
成分(A)、(B)のポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とを常法によるエステル化や、脂肪酸とグリシドールを付加重合することにより容易に得られる。ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化は、特に限定されないが、例えば、ポリグリセリンと脂肪酸を、酸触媒(リン酸、p-トルエンスルホン酸等)もしくはアルカリ触媒(苛性ソーダ等)存在下、または無触媒で水を除去しながら、好ましくは100~300℃、より好ましくは120~260℃の範囲で加熱することにより行うことができる。また、反応は不活性ガスの存在下で行ってもよい。このようにして得られたエステルは目的に応じて精製してもよい。精製には減圧下での蒸留、分子蒸留、水蒸気蒸留といった蒸留技術の他、有機溶剤による抽出、分画や合成吸着剤、ゲル濾過剤を充填したカラムによるクロマト分離も利用できる。なお、脂肪酸のかわりに、脂肪酸のエステルを用い、ポリグリセリンとエステル交換を行うことにより、目的のポリグリセリン脂肪酸エステルを得てもよい。
【0019】
成分(C)は紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤としては、320~400nm波長の紫外線を吸収するUV-A波吸収剤、及び290~320nm波長の紫外線を吸収するUV-B波吸収剤が挙げられる。
【0020】
UV-A波吸収剤としては、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルなどの安息香酸系紫外線吸収剤、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどのトリアジン系紫外線吸収剤、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどのジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0021】
UV-B波吸収剤としては、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレンなどの桂皮酸系紫外線吸収剤、サリチル酸エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチルなどのサリチル酸系紫外線吸収剤、ポリシリコーン-15などが挙げられる。
【0022】
成分(C)としては、上記の紫外線吸収剤を単独で、又は任意に組み合わせて使用することができる。成分(C)中のUV-A波吸収剤の含有量は、紫外線防御能及び安定性の観点から、好ましくは1~100質量%、より好ましくは5~80質量%、更に好ましくは10~60質量%、更に好ましくは15~45質量%である。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(C)の含有量は、紫外線防御能及び安定性の観点から、好ましくは0.1~25質量%、より好ましくは4~22質量%、更に好ましくは6~20質量%、更に好ましくは8~18質量%である。成分(C)を2種以上使用する場合の含有量は、その合計量を指す。
【0024】
成分(D)は油剤である。油剤としては、炭化水素油、エステル油、アシルグリセロール、エーテル油、動植物油、シリコーン油などが挙げられ、好ましくは炭化水素油、エステル油、アシルグリセロールである。
【0025】
炭化水素油としては、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、ウンデカン、トリデカン、イソドデカンなどが挙げられる。
【0026】
エステル油としては、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、カプリル酸プロピルヘプチル、(カプリル酸/カプリン酸)カプリリル、(カプリル酸/カプリン酸)ヤシアルキル、炭酸ジカプリリルなどが挙げられる。
【0027】
アシルグリセロールとしては、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トリエチルヘキサノイン、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリルなどが挙げられる。
【0028】
エーテル油としては、ジカプリリルエーテルなどが挙げられる。
【0029】
動植物油としては、ミツロウ、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ラノリンなどが挙げられる。
【0030】
シリコーン油としては、ジメチコン、フェニルトリメチコン、シクロメチコン、シクロペンタシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンなどが挙げられる。
【0031】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(D)の含有量は、安定性、使用性の観点から、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1.0~15質量%、更に好ましくは1.5~12質量%、更に好ましくは2.5~9質量%、更に好ましくは3~7質量%である。成分(D)を2種以上使用する場合の含有量は、その合計量を指す。
【0032】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(C)及び(D)の合計含有量は、安定性、使用性の観点から、好ましくは0.2~45質量%、より好ましくは0.5~35質量%、更に好ましくは1~30質量%、更に好ましくは5~25質量%、更に好ましくは10~20質量%である。
【0033】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(A)及び(B)の合計含有量に対する成分(C)及び(D)の合計含有量の質量比((C+D)/(A+B))は、0.05~9.5であり安定性、使用性の観点から、好ましくは0.5~9.3、より好ましくは1.0~9.0、更に好ましくは4.5~8.5である。
【0034】
成分(E)は多価アルコールである。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、エチルヘキシルグリセリン、1,3-ブチレングリコール(BG)、プロピレングリコール(PG)、プロパンジオール、ジプロピレングリコール(DPG)、ペンチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、カプリリルグリコール、1,10-デカンジオール、イソペンチルジオール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトールなどが挙げられ、好ましくはグリセリン、BG、プロパンジオール、カプリリルグリコールである。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(E)の含有量は、安定性、使用性の観点から、4~32質量%、好ましくは7~30質量%、より好ましくは10~25質量%、更に好ましくは12~20質量%である。成分(E)を2種以上使用する場合の含有量は、その合計量を指す。
【0036】
成分(F)は水である。本発明の水中油型乳化組成物における成分(F)の含有量は、好ましくは20~90質量%、より好ましくは40~80質量%である。
【0037】
本発明の水中油型乳化組成物は、安定性、使用性の観点から、下記成分(G)を更に含有することが好ましい。
成分(G):増粘剤
【0038】
成分(G)の増粘剤としては、アラビアガム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、ローカストビーンガム、ガラクトマンナンなどの植物系高分子;キサンタンガム、ジェランガム、フコゲル、デキストラン、プルランなどの微生物系高分子;キトサン、カゼイン、ゼラチンなどの動物系高分子;デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプンなどのデンプン系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末などのセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどのアルギン酸系高分子;ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーなどのビニル系高分子;ポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミドなどのアクリル系高分子;ポリエチレンイミンなどのカチオンポリマー;ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライトなどの無機系水溶性高分子;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの皮膜形成剤などが挙げられ、好ましくはカルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマーである。
【0039】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(G)の含有量は、使用性の観点から、好ましくは0.001~1質量%、より好ましくは0.01~0.5質量%、更に好ましくは0.1~0.4質量%である。
【0040】
本発明の水中油型乳化組成物は、通常化粧料に用いられる成分を任意に配合することができる。例えば、界面活性剤、水性ゲル化剤、油性ゲル化剤、粉体、抗酸化剤、防腐剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、植物抽出液、ビタミン類、中和剤、保湿剤、抗炎症剤、pH調整剤、アミノ酸などが挙げられる。
【0041】
本発明の水中油型乳化組成物の調製時における乳化粒子の平均粒子径は、安定性、使用性の観点から、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、更に好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.9μm以下、更に好ましくは0.8μm以下、更に好ましくは0.7μm以下である。下限値としては、例えば、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上などとすることができる。本明細書において、乳化粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300(島津製作所社製)により測定する。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は、特許文献1のような液晶/D相化工程やゲル化工程を行う必要がなく、上記の成分を混合することにより簡単に調製することができる。
【0043】
本発明の水中油型乳化組成物は、紫外線吸収剤を配合しつつも、安定性に優れ且つべたつきの少ないものであるため、日焼け止め機能が求められる各種化粧料に好適に使用することができる。即ち、本発明の化粧料は、本発明の水中油型乳化組成物を含有する。このような化粧料としては、日焼け止め、ファンデーション、スキンケアミルク、クリーム、ジェル、ローションなどが挙げられる。
【0044】
本発明の化粧料は、本発明の水中油型乳化組成物に加え、通常化粧料に用いられる成分を適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。例えば、界面活性剤、水性ゲル化剤、油性ゲル化剤、粉体、抗酸化剤、防腐剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、増粘剤、植物抽出液、ビタミン類、中和剤、保湿剤、抗炎症剤、pH調整剤、アミノ酸などが挙げられる。
【0045】
本発明の化粧料の製造方法としては、上記各成分を含有させる工程を含む製造方法が挙げられる。また、本発明では、上記各成分を含有させる工程を含む化粧料のべたつきを抑制する方法についても開示するものである。ここで、「上記各成分を含有させる工程」とは、予め調製された本発明の水中油型乳化組成物を添加する態様の他、化粧料中に上記各成分を個別に配合して調製する態様も含まれる。なお、各成分の種類、含有量、比率等の詳細は、上記と同様である。
【実施例0046】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。なお、表中の成分量はいずれも「質量%」である。また、特に記載のない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
<水中油型乳化組成物の調製>
実施例1~73及び比較例1~37
表1~10に記載された成分(A)、(A’)、(B)、(B’)、(C)、(D)、(E)を混合し、70~80℃にて加熱溶解して油相を得た。つづいて、水相として成分(F)、(G)を70℃に加熱し、これに油相を徐々に添加し、ホモミキサーを用いて攪拌混合し、室温に戻して水中油型乳化組成物を調製した。なおKOHを配合する場合はホモミキサー攪拌後に混合した。また、調製時における乳化粒子の平均粒子径を、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300(島津製作所社製)により測定した。結果を表1~10に示す。なお、成分A’とB’は成分Aと成分Bに該当しないポリグリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリン脂肪酸エステルである。
【0048】
なお、上記の調製例では油相、水相共に加熱して調製したが、加熱した油相に常温の水相を攪拌しながら加え均一に乳化混合して水中油型乳化組成物を調製することもできる。また、上記調製方法に基づき、成分(G)を除き少量の成分(F)であらかじめ水中油型乳化組成物を調製し、それを水や増粘剤などで希釈することでも安定な乳化物を調製することができる。
【0049】
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-7、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-13の調製
所定の成分となるようにポリグリセリンと脂肪酸を混合し、不活性ガス中、酸触媒(リン酸等)、又はアルカリ触媒(苛性ソーダ等)の存在下又は、触媒を用いずに120~260℃で加熱し反応水を系外に除去することによってポリグリセリンと脂肪酸を反応させ、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-7、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-13を調製した。これらを表中の成分として用いた。
【0050】
表1~10で用いた成分の詳細を以下に示す。
ジミリスチン酸ポリグリセリル-10:サンソフト Q-142Y-C (太陽化学(株)製)
ジオレイン酸ポリグリセリル-10:サンソフト Q-172Y-C (太陽化学(株)製)
ジステアリン酸ポリグリセリル-10:サンソフト Q-182Y-C (太陽化学(株)製)
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10:サンソフト Q-192Y-C (太陽化学(株)製)
カプリン酸ポリグリセリル-2:サンソフト Q-10D-C (太陽化学(株)製)
ラウリン酸ポリグリセリル-2:サンソフト Q-12D-C (太陽化学(株)製)
ジカプリル酸ポリグリセリル-6:サンソフト Q-8H-C (太陽化学(株)製)
ジカプリン酸ポリグリセリル-6:サンソフト Q-102H-C (太陽化学(株)製)
ラウリン酸グリセリル:サンソフト No.750-C (太陽化学(株)製)
ステアリン酸グリセリル:サンソフト No. 8000V (太陽化学株式会社製)
ステアリン酸グリセリル(SE):サンソフト No.30-C (太陽化学(株)製)
ベヘン酸グリセリル:サンソフト No.8100-C (太陽化学(株)製)
メトキシケイ皮酸エチルヘキシル:Uvinul MC 80 (BASFジャパン(株)製)
オクトクリレン:パルソール 340 (DSM(株)製)
ポリシリコーン-15:パルソール SLX (DSM(株)製)
ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル:Uvinul A Plus Granular (BASFジャパン(株)製)
エチルヘキサン酸セチル:エキセパールHO (花王(株)製)
パルミチン酸エチルヘキシル:サラコス P-8 (日清オイリオグループ(株)製)
イソノナン酸イソノニル:サラコス 99 (日清オイリオグループ(株)製)
トリエチルヘキサノイン:T.I.O (日清オイリオグループ(株)製)
スクワラン:フィトスクワラン (SOPHIM製)
グリセリン:化粧品用濃グリセリン (花王(株)製)
ソルビトール(70%):ソルビトールS 物産フードサイエンス(株)
プロパンジオール:Zemea Selectプロパンジオール (DuPont Tate & Lyle Bio Products製
カルボマー:Carbopol 980 Polymer (Lubrizol製)
KOH:水酸化カリウム (富士フイルム和光純薬(株)製)
キサンタンガム:KELTROL CG-T (CP Kelco Inc.製)
【0051】
<安定性>
各実施例・比較例の水中油型乳化組成物を25℃及び50℃で1ヶ月保管し、以下の基準で目視により評価した。また、50℃で1ヶ月保管した後の乳化粒子の平均粒子径を、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-2300(島津製作所社製)により測定した。結果を表1~10に示す。なお、50℃で1ヶ月保存後に油相が分離していたもの(評価:×のもの)については、粒子径を測定できなかったため、表中では「-」と記載した。
(評価基準)
○ 均一な乳化状態
△ やや油浮きが見られる
× 油相が分離している
【0052】
<使用性>
各実施例・比較例の水中油型乳化組成物を健常女性パネラー5名に使用させ、馴染み後の べたつき感について官能評価を行い、以下の基準で評価した。結果を表1~10に示す。
(評価基準)
○ みずみずしい
△ ややみずみずしい
× べたつく
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
表1~10に示すように、各実施例の水中油型乳化組成物は、安定性に優れ且つべたつきの少ないものであった。
【0064】
<紫外線防御能評価>
実施例68及び比較例36、37の水中油型乳化組成物についての紫外線防御能をSPFアナライザー(Labsphere社、UV-2000S)にて測定した。結果を
図1に示す。
図1に示すように、実施例68の水中油型乳化組成物は、紫外線防御能に優れるものであることが確認できた。同様の紫外線吸収剤を用いた比較例36、37と比べても実施例68の方が紫外線吸収能に優れていたことが分かる。また、一般的にUV-A波吸収剤の配合量が多いと紫外線防御能が向上する事が知られているが、UV-A波吸収剤は結晶性が高く乳化状態が不安定化するため、UV-A波吸収剤を多く配合する事は技術常識として困難である事が知られている。しかし、本発明ではUV-A波吸収剤を多く配合しても安定な水中油型乳化組成物を得る事ができ、紫外線防御能に優れた水中油型乳化組成物を調製できる事を確認した。
【0065】
実施例74
実施例71の水中油型乳化組成物に2倍量の水をホモミキサーで攪拌しながら混合し実施例74の水中油型乳化組成物を得た。表には示していないが、上記と同様の基準で評価を行った結果、得られた実施例74の水中油型乳化組成物は安定性に優れ且つべたつきの少ないものであった。
【0066】
実施例75
実施例72の水中油型乳化組成物に3倍量の水をホモミキサーで攪拌しながら混合し実施例75の水中油型乳化組成物を得た。表には示していないが、上記と同様の基準で評価を行った結果、得られた実施例75の水中油型乳化組成物は安定性に優れ且つべたつきの少ないものであった。
【0067】
実施例71、72、74、75の結果から、本発明に係る水中油型乳化組成物は濃縮状態、希釈状態のいずれにおいても安定性及び使用感に優れるものであったことが分かる。
【0068】
(処方例)
以下に、本発明の化粧料の処方例を挙げる。本発明はこの処方例によって何ら限定されるものではない。なお、配合量は全て製品全量に対する質量%で表している。
【0069】
【0070】
【0071】