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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119097
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 69/00 20060101AFI20230821BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20230821BHJP
   B60W 20/40 20160101ALI20230821BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20230821BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20230821BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20230821BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20230821BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20230821BHJP
   B60L 58/18 20190101ALI20230821BHJP
   B60L 53/80 20190101ALI20230821BHJP
【FI】
A01D69/00
B60W10/26 900
B60W20/40 ZHV
B60W10/06 900
B60K6/48
B60K1/04
B60L50/16
B60L50/61
B60L58/18
B60L53/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021741
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】高木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 英明
(72)【発明者】
【氏名】二宮 浩二
(72)【発明者】
【氏名】弓達 武志
(72)【発明者】
【氏名】後田 達哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大翔
(72)【発明者】
【氏名】北川 智志
【テーマコード(参考)】
2B076
3D202
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
2B076AA07
2B076DA02
2B076DA04
2B076DA19
2B076DB06
3D202AA08
3D202BB05
3D202BB06
3D202BB37
3D202CC33
3D202CC35
3D202DD38
3D202EE16
3D202FF14
3D235AA12
3D235BB21
3D235CC07
3D235CC15
5H125AA20
5H125AC08
5H125AC12
5H125BD17
5H125EE41
5H125EE68
5H125FF06
(57)【要約】
【課題】排気ガスを発生させることなく、騒音や振動を抑制した状態で農作業を進めることができ、また、必要なときに高出力が必要な作業や高速走行を行うことができる農作業機を提供する。
【解決手段】
農作業機1,4は、圃場を走行する走行装置2と、農作業を行う作業装置3と、走行装置2に動力を伝達する走行伝動系と、作業装置3に動力を伝達する作業伝動系と、走行装置2および作業装置3の動力源としてのエンジン6及び電動機7を備え、電動機7の出力軸7aには走行伝動系と作業伝動系に動力を供給する動力伝達手段10,20が取り付けられ、エンジン6の出力軸6aと電動機7の出力軸7aとの間に介装された動力切換クラッチ34が入状態のとき、エンジンの動力が動力伝達手段10,20から走行伝動系と作業伝動系へ供給され、動力切換クラッチ34が切断状態のとき、電動機7の動力が動力伝達手段10,20から走行伝動系と作業伝動系へ供給される。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行装置と、
前記走行装置に取り付けられ、農作業を行う作業装置と、
前記走行装置に動力を伝達する走行伝動系と、
前記作業装置に動力を伝達する作業伝動系と、
動力源としてエンジン及び電動機を備えた農作業機であって、
前記エンジンの出力軸は、前記電動機の出力軸と連結され、前記電動機の出力軸を連動して回転させるように構成され、
前記電動機の出力軸には、該出力軸の回転動力を前記走行伝動系と前記作業伝動系へ供給する動力伝達手段が取り付けられており、
前記エンジンの出力軸と前記電動機の出力軸との間に動力切換クラッチが介装され、
前記動力切換クラッチが入状態のとき、前記エンジンの出力軸及び前記電動機の出力軸が連動して回転し、前記エンジンの動力が、前記動力伝達手段から前記走行伝動系及び前記作業伝動系へ供給され、
前記動力切換クラッチが切断状態のとき、前記エンジンの出力軸及び前記電動機の出力軸の連結が解除されて、前記電動機の動力が、前記動力伝達手段から前記走行伝動系及び前記作業伝動系へ供給されるよう構成されたことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記電動機に電力を供給するバッテリーと、
前記バッテリーの充放電を切り換える充放電切換装置と、
前記動力切換クラッチが入状態にあるのか切断状態にあるのかを検出する検出手段とを備え、
前記エンジンの出力軸と、前記電動機の出力軸とが同軸上に配置され、
前記電動機はモータジェネレータにより構成されており、
前記動力切換クラッチが切断状態で、かつ前記走行装置及び前記作業装置が前記電動機により駆動されるときに、前記検出手段により前記動力切換クラッチの入状態が検出されると、前記充放電切換装置によって、前記バッテリーから前記電動機に電力が供給可能な放電状態から、前記電動機で発電された電力が前記バッテリーに充電される充電状態に切り換えられ、
前記動力切換クラッチが入状態で、かつ前記走行装置及び前記作業装置が前記エンジンにより駆動されるときに、前記検出手段により前記動力切換クラッチの切断状態が検出されると、前記充放電切換装置によって、前記電動機で発電された電力が前記バッテリーに充電される充電状態から、前記バッテリーから前記電動機に電力が供給可能な放電状態に切り換えられるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
農作業機の操縦席の近傍に、前記動力切換クラッチを入状態と切断状態との間で切り換える操作具が配置され、
前記動力切換クラッチが入状態にあり、前記走行装置及び前記作業装置が前記エンジンにより駆動される状態で、前記操作具により、前記動力切換クラッチを切断状態に切り換える操作が行われると、前記エンジンが自動的に停止するよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
農作業機の操縦席の近傍に、前記動力切換クラッチを入状態と切断状態との間で切り換える操作具が配置され、
前記動力切換クラッチが切断状態にあり、前記走行装置及び前記作業装置が前記電動機により駆動される状態で、前記操作具により、前記動力切換クラッチを入状態に切り換える操作が行われると、前記エンジンが自動的に始動するよう構成されたことを特徴とする請求項2に記載の農作業機。
【請求項5】
前記検出手段により前記動力切換クラッチの切断状態が検出されている間は、前記エンジンの始動が規制されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項に記載の農作業機。
【請求項6】
農作業機は、機体の後方で作業者が歩行しながら操作する歩行型として構成され、
農作業機を操作する操作部を機体の後部に備え、
前記バッテリーとして、直列に接続された複数のバッテリーを有し、複数の該バッテリーは各々、バッテリーボックスに収容されており、前記バッテリーボックスの1つは前記操作部の下方に配置され、前記バッテリーボックスの他の1つは機体の前部に配置され、
各前記バッテリーボックスの後ろ側から該バッテリーを取り出し可能に構成されたことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項に記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置と作業装置の駆動源として、エンジン及び電動機を備えた農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業を行う作業装置と走行装置を備えた農作業機の動力源として、エンジンと電動機(いわゆるモータ)が設けられた農作業機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業装置をエンジンから出力される動力で駆動するとともに、バッテリーに蓄電された電力を用いて電動機で走行装置を駆動して走行する農作業機が開示されている。この従来の農作業機は、作業装置をエンジンで、走行装置を電動機で各々駆動するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-175945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の、作業装置をエンジンで、走行装置を電動機で各々駆動する構成によれば、農作業を進めるにあたってエンジンの作動が不可欠であり、ビニルハウスなどの閉鎖された栽培施設で農作業を行う場合、排気ガスが施設内に溜まってしまうという問題があった。加えて、エンジンの作動時に農作業機から発生する騒音と振動が大き過ぎるという問題もあった。
【0006】
また、農作業機にエンジンを設けず、電動機のみを搭載した場合には、エンジンに比べて出力が小さいため、高出力が必要な作業や、高速走行が行えないという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、排気ガスを発生させることなく、騒音や振動を抑制した状態で農作業を進めることができ、また、必要なときに高出力が必要な作業や高速走行を行うことができる農作業機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のかかる目的は、
圃場を走行する走行装置と、
前記走行装置に取り付けられ、農作業を行う作業装置と、
前記走行装置に動力を伝達する走行伝動系と、
前記作業装置に動力を伝達する作業伝動系と、
動力源としてエンジン及び電動機を備えた農作業機であって、
前記エンジンの出力軸は、前記電動機の出力軸と連結され、前記電動機の出力軸を連動して回転させるように構成され、
前記電動機の出力軸には、該出力軸の回転動力を前記走行伝動系と前記作業伝動系へ供給する動力伝達手段が取り付けられており、
前記エンジンの出力軸と前記電動機の出力軸との間に動力切換クラッチが介装され、
前記動力切換クラッチが入状態のとき、前記エンジンの出力軸及び前記電動機の出力軸が連動して回転し、前記エンジンの動力が、前記動力伝達手段から前記走行伝動系及び前記作業伝動系へ供給され、
前記動力切換クラッチが切断状態のとき、前記エンジンの出力軸及び前記電動機の出力軸の連結が解除されて、前記電動機の動力が、前記動力伝達手段から前記走行伝動系及び前記作業伝動系へ供給されるよう構成されたことを特徴とする農作業機によって達成される。
【0009】
本発明によれば、走行装置および作業装置の動力源の一つである電動機の出力軸に、走行伝動系と作業伝動系に伝動する動力伝達手段が取り付けられているから、エンジンの出力軸と電動機の出力軸の断接を切り換える動力切換クラッチが切状態で、電動機を駆動させることにより、電動機から出力される動力で走行装置と作業装置を駆動でき、したがって、排気ガスを発生させることなく、且つ騒音や振動を抑制した状態で農作業を進めることができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、エンジンの作動時に、動力切換クラッチが接続されると、エンジンの出力軸から電動機の出力軸へ回転動力が伝達(供給)されるよう構成されているから、必要なときに、エンジンを動力源として走行装置と作業装置を駆動することもでき、高出力が必要な作業や高速走行が可能になる。
【0011】
加えて、本発明によれば、動力切換クラッチを断接することで、走行装置と作業装置の動力源を、エンジンと電動機との間で容易に切り換えることができるから、動力源の切換え機構を簡素化でき、エンジンと電動機を備えながらも、農作業機を小型化・軽量化することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記電動機に電力を供給するバッテリーと、
前記バッテリーの充放電を切り換える充放電切換装置と、
前記動力切換クラッチが入状態にあるのか切断状態にあるのかを検出する検出手段とを備え、
前記エンジンの出力軸と、前記電動機の出力軸とが同軸上に配置され、
前記電動機はモータジェネレータにより構成されており、
前記動力切換クラッチが切断状態で、かつ前記走行装置及び前記作業装置が前記電動機により駆動されるときに、前記検出手段により前記動力切換クラッチの入状態が検出されると、前記充放電切換装置によって、前記バッテリーから前記電動機に電力が供給可能な放電状態から、前記電動機で発電された電力が前記バッテリーに充電される充電状態に切り換えられ、
前記動力切換クラッチが入状態で、かつ前記走行装置及び前記作業装置が前記エンジンにより駆動されるときに、前記検出手段により前記動力切換クラッチの切断状態が検出されると、前記充放電切換装置によって、前記電動機で発電された電力が前記バッテリーに充電される充電状態から、前記バッテリーから前記電動機に電力が供給可能な放電状態に切り換えられるよう構成されている。
【0013】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、エンジンの出力軸と電動機の出力軸とが同軸上に配置されているから、出力軸間での動力の伝達を入切する動力切換クラッチを容易に構成することができる。
【0014】
加えて、本発明のこの好ましい実施形態によれば、電動機がモータジェネレータにより構成されているから、エンジンの出力軸と電動モータの出力軸との連結状態を切り換える動力切換クラッチが接続されたときに、エンジンの駆動により出力軸が回転されるのに伴って、電動機が回転(回生駆動)されることで、発電が行われるとともに、動力切換クラッチの接続(入状態)が検出されたときに、充放電切換装置によって、発電された電力がバッテリーに充電される充電状態に切り換えられるよう構成されているから、エンジンによる走行装置と作業装置の駆動と、バッテリーの充電とを同時に行うことができる。
【0015】
また、このように、エンジンにより走行装置と作業装置を駆動させることで、バッテリーを充電することができ、作業者がバッテリーを取り外して充電を行う必要がなく、利便性が高い。
【0016】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、動力切換クラッチが切断状態に切り換えられる(切断される)と、検出手段により動力切換クラッチの切断が検出され、充放電切換装置によって、バッテリーに充電された電力が電動機に供給可能な放電状態に切り換えられるよう構成されているから、動力切換クラッチが切断状態に切り換えられた際に、バッテリーの電力を用いたモータ駆動にスムーズに移行することができる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
農作業機の操縦席の近傍に、前記動力切換クラッチを入状態と切断状態との間で切り換える操作具が配置され、
前記動力切換クラッチが入状態にあり、前記走行装置及び前記作業装置が前記エンジンにより駆動される状態で、前記操作具により、前記動力切換クラッチを切断状態に切り換える操作が行われると、前記エンジンが自動的に停止するよう構成されている。
【0018】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、エンジンの出力軸と電動機の出力軸とを連結させる動力切換クラッチが入状態にあり、且つ、エンジン駆動の状態で、動力切換クラッチを切断状態に切り換える操作が行われると、エンジンが自動的に停止するよう構成されているから、一度の操作でエンジン駆動からモータ駆動にスムーズに移行することができるとともに、エネルギー消費を抑えることができる。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
農作業機の操縦席の近傍に、前記動力切換クラッチを入状態と切断状態との間で切り換える操作具が配置され、
前記動力切換クラッチが切断状態にあり、前記走行装置及び前記作業装置が前記電動機により駆動される状態で、前記操作具により、前記動力切換クラッチを入状態に切り換える操作が行われると、前記エンジンが自動的に始動するよう構成されている。
【0020】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、エンジンの出力軸と電動機の出力軸とを連結させる動力切換クラッチが切断状態にあり、且つ、モータ駆動の状態で、動力切換クラッチを入状態に切り換える操作が行われると、エンジンが自動的に始動するよう構成されているから、一度の操作でモータ駆動からエンジン駆動にスムーズに移行することができる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記検出手段により前記動力切換クラッチの切断状態が検出されている間は、前記エンジンの始動が規制される。
【0022】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、動力切換クラッチの切断状態(遮断)が検出されている間、すなわち、モータ駆動の状態では、エンジンの始動が規制されるよう構成されているから、モータ駆動の状態で、万一エンジン始動操作が行われても、無駄なエンジンの駆動が防止できるとともに、エンジンハーネスの焼損や無用な電力消費を防止することができる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
農作業機は、機体の後方で作業者が歩行しながら操作する歩行型として構成され、
農作業機を操作する操作部を機体の後部に備え、
前記バッテリーとして、直列に接続された複数のバッテリーを有し、複数の該バッテリーは各々、バッテリーボックスに収容されており、前記バッテリーボックスの1つは前記操作部の下方に配置され、前記バッテリーボックスの他の1つは機体の前部に配置され、
各前記バッテリーボックスの後ろ側から該バッテリーを取り出し可能に構成されている。
【0024】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、走行装置及び作業装置の動力源としての電動機に電力を供給するバッテリーとして、直列に接続された複数のバッテリーが設けられており、これらのバッテリーを収容するバッテリーボックスの1つが機体の後部に設けられた操作部の下方に配置され、他の1つが機体の前部に配置されているから、電力容量を確保できるとともに、機体の前後の重量バランスを安定させることができる。
【0025】
また、本発明のこの好ましい実施形態によれば、各バッテリーボックスの後ろ側からバッテリーを取り出し可能に構成されているから、前方へ向けて走行している間に、土や塵埃等がバッテリーボックス内へ浸入してしまう事態を抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、排気ガスを発生させることなく、騒音や振動を抑制した状態で農作業を進めることができ、また、必要なときに高出力が必要な作業や高速走行を行うことができる農作業機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる動力機構を示す図面である。
図2図2は、図1に示された充放電切換装置を含むバッテリーの充放電機構を示す模式的回路ブロック図である。
図3図3は、図1に示された動力機構を備えた根菜類収穫機の略平面図である。
図4図4は、図3に示された根菜類収穫機の略左側面図である。
図5図5は、図3に示された根菜類収穫機の動力機構の近傍の略拡大平面図である。
図6図6は、図3に示された根菜類収穫機のブロック図である。
図7図7は、図3に示されたエンジンを始動させるメインスイッチを示す略平面図である。
図8図8は、図1に示された動力機構を備えた作物引抜機の略平面図である。
図9図9は、図8に示された作物引抜機の略左側面図である。
図10図10は、図8に示された作物引抜機の略正面図である。
図11図11は、図8に示された各バッテリーボックスの模式的縦断面図である。
図12図12は、第一の伝動機構から走行伝動系及び作業伝動系へ伝動するよう構成された根菜類収穫機の動力機構の近傍の略拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0029】
まず、図1及び図2に基づき、走行装置と作業装置とを備えた種々の農作業機に搭載されるエンジン及び電動モータ(電動機)を含む動力機構について詳述する。
<動力機構>
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる動力機構8を示す図面であり、図1(a)は、本発明の好ましい実施形態にかかる動力機構8の略平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示された動力機構8の略左側面図であり、図1(c)は、図1(a)に示された動力機構8の略正面図である。
【0030】
図1に示される「前」「後」の方向は、動力機構8が搭載された図4以降の各農作業機1,4の進行方向を前とした場合の前後の方向に同じであり、図1に示される「左」「右」の方向は、図4以降に示される各農作業機1,4の進行方向に向かったときの左右と同一の方向である。
【0031】
しかしながら、農作業機に対する動力機構の向きは、これに限定されるものではなく、走行装置への伝動機構(以下、「走行伝動系」という。)と作業装置への伝動機構(以下、「作業伝動系」という。)の配置位置や向きに応じて、適宜変更することが可能である。
【0032】
図1においては、図1(a)と図1(b)との間で前後方向の位置が互いに対応し、図1(b)と図1(c)との間で上下方向の位置が互いに対応している。
【0033】
動力機構8は、クランクシャフト等により構成される出力軸6aを有するエンジン6と、出力軸(回転軸)7aを有する電動モータ7と、出力軸7aに取り付けられた第一の伝動機構10および第二の伝動機構20と、電動モータ7の電力源であるバッテリー30と、電動モータ7の回転数を調整するインバータ31と、バッテリー30への充電を行う充電装置33と、バッテリー30の充放電を切り換える充放電切換装置32を備えている。第一の伝動機構10と第二の伝動機構20は、各々、本発明の「動力伝達手段」の一例である。
【0034】
エンジン6と電動モータ7は、農作業機の走行装置と作業装置を駆動させる動力源であり、後に詳述するように、走行装置と作業装置がエンジン6によって駆動される間、電動モータ7から走行装置及び作業装置への伝動は行われず、走行装置と作業装置が電動モータ7によって駆動される間、エンジン6から走行装置及び作業装置への伝動は行われない。
【0035】
以下において、走行装置と作業装置がエンジン6によって駆動される状態を「エンジン駆動」といい、走行装置と作業装置が電動モータ7によって駆動される状態を「モータ駆動」という。
【0036】
エンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aは同軸上((換言すれば同一軸心上)に配置され、エンジンクラッチ34を介して互いに連結(接続)されている。換言すれば、同軸上に配置されたエンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aは連結されており、エンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aとの間にエンジンクラッチ34が介装されている。エンジンクラッチ34が接続された状態でエンジン6が作動したときに、エンジン6の出力軸6aの回転に連動して、電動モータ7の出力軸7aが回転される。換言すれば、エンジンクラッチ34が接続された状態でエンジン6が作動したときに、エンジン6の出力軸6aから電動モータ7の出力軸7aへ回転動力が伝達(供給)される。エンジンクラッチ34は、本発明の「動力切換クラッチ」に相当するものである。なお、本明細書においては、エンジンクラッチ34が接続された状態を「入状態」、エンジンクラッチ34が切断された状態を「切断状態」ともいう。
【0037】
第一の伝動機構10は、図1(b)に示されるように、第一ないし第三のプーリ11ないし13と、第一のプーリ11および第三のプーリ13に巻き掛けられた無端ベルト14を備えている。第二のプーリ12は無端ベルト14にテンションを与えるテンションプーリである。
【0038】
電動モータ7が駆動されて電動モータ7の出力軸7aが回転され、又はエンジンクラッチ34が接続された状態(入状態)でエンジン6が作動して出力軸6aの回転に伴い電動モータ7の出力軸7aが回転されると、第一の伝動機構10の第一のプーリ11、無端ベルト14、及び第三のプーリ13が各々回転される。
【0039】
第三のプーリ13は、走行伝動系又は/及び作業伝動系へ動力を伝達するプーリであり、たとえば走行伝動系又は/及び作業伝動系に属する伝動ロッド等が第三のプーリ13に一体的に回転可能に取り付けられることにより、走行伝動系又は/及び作業伝動系へ動力を伝達することができる。
【0040】
第二の伝動機構20は、第四ないし第六のプーリ21ないし23と、第四のプーリ21および第六のプーリ23に巻き掛けられた無端ベルト24を備えている。第五のプーリ22は無端ベルト24にテンションを与えるプーリである。
【0041】
電動モータ7の駆動、又はエンジンクラッチ34が接続された状態(入状態)でのエンジン6の作動により、電動モータ7の出力軸7aが回転されると、第二の伝動機構20の第四のプーリ21、無端ベルト24、及び第六のプーリ23が各々回転される。第六のプーリ23は、第三のプーリ13と同様に、走行伝動系又は/及び作業伝動系へ動力を伝達するプーリである。
【0042】
このように、エンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aとが同軸上に配置されて接続され、出力軸7aに第一、第二の伝動機構10,20が設けられているため、エンジン6駆動の場合と、電動モータ駆動の場合で、走行伝動系と作業伝動系への動力伝達手段を共用できる。
【0043】
したがって、エンジンのみにより走行装置及び作業装置を駆動させる従来の農作業機のレイアウトからの変更点が少なくて済み、製造コストを省くことができる。
【0044】
エンジンクラッチ34は、エンジン駆動のときに接続され、モータ駆動のときに切断されており、後に詳述するように、エンジン駆動とモータ駆動との間で切り換えられる際に作業者によりエンジンクラッチ34の断接操作が行われる。エンジンクラッチ34が切断されているとき、エンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aとは連結されていない(連結が解除されている)。
【0045】
エンジンクラッチ34の近傍には、エンジンクラッチ34の断接を切り換えるクラッチ作動シリンダ35と、エンジンクラッチ34の断接を検出するクラッチ位置検出装置36が設けられており、エンジンクラッチ34の断接は、作業者の操作に基づき、クラッチ作動シリンダ35が伸縮されることで切り換えられる。
【0046】
図2は、図1に示された充放電切換装置32を含むバッテリー30の充放電機構を示す模式的回路ブロック図である。
【0047】
電動モータ7は、発電機としても用いることができるモータジェネレータにより構成されており、エンジン6の作動時に、エンジンクラッチ34が接続されていることを条件としてエンジン6の出力軸6aから電動モータ7の出力軸7aに伝動されるとともに、電動モータ7(の回転子)が回転され、電気が発生する。
【0048】
図2において一点鎖線で示された充放電切換装置32は、3か所に設けられたスイッチ41ないし43と、後述するBCU46(図6参照)の制御信号に基づき、これらのスイッチ41ないし43を制御するバッテリーマネジメントシステム(以下「BMS」という。)38を備えている。
【0049】
クラッチ位置検出装置36によりエンジンクラッチ34の接続が検出されると、BMS38は、スイッチ41をインバータ31側から充電装置33を制御する充電制御部39側に切り換えるとともに、スイッチ43をオフし、スイッチ42をオンする。
【0050】
したがって、エンジン6の出力軸6aが回転し、エンジンクラッチ34が接続されている間、すなわちエンジン駆動の間は、電動モータ7で発生した電気が充電装置33を通じてバッテリー30に供給され、バッテリー30内に蓄電される。
【0051】
充電装置33は、電動モータ7から発生した電力を、バッテリー30を充電するのに適した直流電流に変換した上でバッテリー30に供給する。
【0052】
バッテリー30には、残量(電圧値)を検出する電圧装置(図示せず)が配されており、バッテリー30へ延びる電流路には、この電流路を開閉する保護スイッチ40と電流を検出するカレントトランス44が設けられている。
【0053】
電圧装置とカレントトランス44の検出結果は、バッテリー30の状態を監視する電池コントロールユニット(以下、「BCU」という。)46に出力される。過充電防止のため、保護スイッチ40はBCU46により制御されるとともに、BCU46からBMS38に制御信号が送られる。
【0054】
一方、クラッチ位置検出装置36によりエンジンクラッチ34の切断が検出されると、BMS38は、スイッチ41を充電制御部39側からインバータ31側へ切り換えるとともに、スイッチ42をオフし、スイッチ43をオンする。
【0055】
その結果、バッテリー30からインバータ31を介して供給される電力により、電動モータ7を駆動することが可能になる。
【0056】
このように、充放電切換装置32はエンジンクラッチ34の断接状態に従ってスイッチ41ないし43を制御し、バッテリー30から電動モータ7へ電力を供給可能な放電状態と、電動モータ7で発電される電力がバッテリー30へ充電される充電状態との間で切り換えることができる。
【0057】
また、上述のようにエンジン駆動時にはエンジンクラッチ34は接続されており、モータ駆動時にはエンジンクラッチ34は切断されているため、エンジン駆動時は、電動モータ7で発電される電力がバッテリー30へ充電される充電状態にあり、モータ駆動時は、バッテリー30から電動モータ7へ電力を供給可能な放電状態にある。
【0058】
インバータ31は、直流電圧を交流電圧に変換するとともに、インバータ駆動回路49から出力される駆動信号に基づき、電動モータ7へ供給する電力を調整することで電動モータ7の駆動のオンオフと回転数の変更を行うことができる。インバータ駆動回路49は、農作業機の制御装置47(図6参照)のインバータ制御部48から入力される制御信号に従ってインバータ31に駆動信号を出力する。
【0059】
なお、バッテリー30は図8ないし図11に示される作物引抜機4のように、複数のバッテリーを直列で繋いで形成することで、電動モータ7を長時間にわたって駆動することが可能になる。
【0060】
以上のように構成された動力機構8は、トラクター、田植機、コンバイン、作物収穫機、並びに芝刈り機、作物引抜機、トラクター等の歩行型作業機を含む様々な農作業機に採用することができる。
<乗用の根菜類収穫機>
上述の動力機構8を備えた農作業機の一例として、以下に、乗用の根菜類収穫機について説明を加える。
【0061】
図3は、図1に示された動力機構8を備えた根菜類収穫機1の略平面図であり、図4は、図3に示された根菜類収穫機1の略左側面図である。
【0062】
図3及び図4においては、図1に示された動力機構8の近傍が露出して描かれている。
【0063】
また、図5は、図3に示された根菜類収穫機1の動力機構8の近傍の略拡大平面図である。
【0064】
根菜類収穫機1は、図4に示されるように、走行装置として走行クローラ2を備えている。
【0065】
また、根菜類収穫機1は、作業装置として、人参等の根菜類の茎葉を起こす引起し装置3aと、振動により根菜類に付着した土をほぐすソイラ3bと、根菜類を圃場から引き抜いて収穫し、後ろ上方へ搬送する引抜搬送装置3cと、引抜搬送装置3cから根菜類を引継ぎ、後方へ搬送しつつ、根菜類の茎葉を切断するタッピング装置3dと、根菜類に残る残葉を取り除く残葉処理コンベア3eと、茎葉が切断された根菜類を機体上で右方へ搬送する搬送コンベア3fを備えている。
【0066】
さらに、根菜類収穫機1は、走行装置である走行クローラ2へ伝動する走行伝動系として、静油圧式無段変速機(以下、「HST」という。)50(図3参照)と、走行ミッション装置53(図4参照)を備えている。
【0067】
また、根菜類収穫機1は、各作業装置3aないし3fへ伝動する作業伝動系として、第二の伝動機構20から動力を受ける伝動ロッド55(図5参照)と、中間繋ぎ部57(図5参照)と、中間繋ぎ部57から動力が分配される2つの伝動ロッド58,59(図5参照)と、伝動ロッド59から動力を受ける作業ミッション61(図4及び図5参照)と、作業ミッション61から延びる出力軸62(以下、図4参照)と、出力軸62から動力を受ける伝動ケース63と、伝動ケース63から動力を出力する伝動ロッド64を備えている。
【0068】
図5に示されるように、第一の伝動機構10の第三のプーリ13にはHST50の入力軸51が一体的に回転可能に取り付けられており、エンジン6又は電動モータ7が駆動して第三のプーリ13が回転すると、HST50に回転動力が入力される。
【0069】
HST50内で変速された動力は、HST50の出力軸52を通じて図4に示される走行ミッション装置53に伝達された後に、走行ミッション装置53から左右に延びる走行軸(図示せず)に取付けられた駆動スプロケット54に伝達される。その結果、走行クローラ2が駆動され、根菜類収穫機1が走行する。
【0070】
一方、第二の伝動機構20の第六のプーリ23には伝動ロッド55がクラッチ(図示せず)を介して取り付けられている。エンジン6又は電動モータ7の駆動により第六のプーリ23及び伝動ロッド55が回転すると、中間繋ぎ部57にて伝動ロッド55の動力が2つの伝動ロッド58,59に分配される。
【0071】
伝動ロッド58に分配された動力は図3に示される残葉処理コンベア3e及び搬送コンベア3f並びにソイラ3bに伝達される。伝動ロッド58により出力される回転動力の回転速度は電動モータ7の出力軸7aの回転速度に依拠する。
【0072】
これに対して、伝動ロッド59に分配された動力は、図4及び図5に示される作業ミッション61に入力された後に、作業ミッション61の出力軸62を通じて伝動ケース63に伝達される。
【0073】
伝動ケース63に伝動された動力は、伝動ロッド64を介してタッピング装置3d及び引抜搬送装置3cに伝達され、さらに引抜搬送装置3cの前部から引起し装置3aへ伝達される。
【0074】
このように、タッピング装置3d、引抜搬送装置3c及び引起し装置3aに伝達される動力は作業ミッション61を介して伝達される。したがって、動力伝達において作業ミッション61より下流側の回転動力の回転速度は電動モータ7の出力軸7aの回転速度に必ずしも依拠せず、走行速度等に応じてこれらの作業装置の駆動速度を調整することができる。
【0075】
なお、タッピング装置3d及び引抜搬送装置3cは、各々、前後に配置されたプーリに巻きかけられた左右一対の無端ベルト(図示せず)を有し、伝動ロッド64から伝達される動力により、当該プーリとともに各無端ベルトが回転されることで、一対の無端ベルトにより作物の茎葉を挟持しつつ、後方へ搬送することができる。
【0076】
図6は、図3に示された根菜類収穫機1のブロック図であり、図7は、図3に示されたエンジン6を始動させるメインスイッチ5を示す略平面図である。
【0077】
根菜類収穫機1の制御装置47は、ソレノイド駆動手段45と、BMS38に図2に示されたスイッチ41ないし43の切換え信号を含む制御信号を送信するBCU46と、インバータ駆動回路49に制御信号を送信するインバータ制御部48を備えている(図6参照)。
【0078】
ソレノイド駆動手段45は、図5に示されるクラッチ作動シリンダ35を伸縮させてエンジンクラッチ34を断接させるソレノイド35aと、第六のプーリ23と伝動ロッド55との間に設けられたクラッチを断接させるソレノイド71を駆動する。
【0079】
また、制御装置47は、図5に示される主変速レバー68の操作位置に応じて、HSTサーボモータ70を制御し、HST開度(トラニオン開度)を調整することにより、根菜類収穫機1の車速の調整、前後進の切り換え、及び停車を行うことができる。
【0080】
さらに、制御装置47は、図7に示されるメインスイッチ5の操作に基づき、エンジン始動用モータ72を駆動し、エンジン6を始動できることに加え、エンジン6への燃料噴射装置(図示せず)を制御して、必要時にエンジン6を停止させることができる。
【0081】
一方、エンジン6を始動させるメインスイッチ5は、図7に示される「切」「入」「始動」の各位置に操作可能に構成されている。
【0082】
メインスイッチ5が「切」の位置に操作されると、エンジン6及び制御装置47を含む根菜類収穫機1のすべての機器が停止される。
【0083】
メインスイッチ5が「入」の位置に操作されると、エンジン6以外の各機器が作動する。
【0084】
メインスイッチ5が「始動」の位置に操作されると、エンジン6が始動する。エンジン6が始動した後、メインスイッチ5は自動的に「入」の位置まで戻される。なお、メインスイッチ5は、根菜類収穫機1のキーとは別体として構成されているが、キーシリンダーに挿入されるキースイッチにより構成されてもよい。
【0085】
走行クローラ2及び各作業装置3aないし3fがエンジン6によって駆動されるエンジン駆動の状態から、走行クローラ2及び各作業装置3aないし3fが電動モータ7によって駆動されるモータ駆動の状態に切り換えられる際には、まず、図4及び図6に示されるクラッチスイッチ67が操作される。
【0086】
本実施形態においては、クラッチスイッチ67は根菜類収穫機1を操縦する操縦席65の近傍(より具体的には操縦席65のすぐ前方)に設けられた操作部66に配置されており、作業者により操作されることで、エンジンクラッチ34の断接が電子制御により切り換えられる。すなわち、クラッチスイッチ67は、操縦席65の近傍に配置されている。
【0087】
エンジン駆動時には、上述のようにエンジンクラッチ34は接続されており、エンジン駆動の状態で、クラッチスイッチ67が操作されると、クラッチスイッチ67から出力される操作信号に基づき、ソレノイド駆動手段45がエンジンクラッチ34を切断する。
【0088】
こうして、エンジンクラッチ34が切断されると、クラッチ位置検出装置36によって実際のエンジンクラッチ34の切断が検出され、BCU46の制御信号に基づき、上述のように、充放電切換装置32によってバッテリー30から電動モータ7へ電力が供給可能な放電状態に切り換えられる。
【0089】
次いで、作業者により、メインスイッチ5が「切」の位置に操作され、エンジン6が停止される。
【0090】
最後に、メインスイッチ5が「入」の位置へ操作される。
【0091】
これらの順に操作が行われることで、エンジン6が作動しておらず、且つ、インバータ制御部48を含む制御装置47が作動している状態となり、はじめて、モータ駆動により作業を行うことが可能になる。
【0092】
すなわち、本実施形態においては、エンジンクラッチ34が切断された状態であっても、エンジン6が作動している状態ではモータ駆動が許容されていない(モータ駆動を行うことが出来ない)。このように構成することで従来と同じ構成のまま電動化できる。
【0093】
また、本実施形態においては、モータ駆動の状態でメインスイッチ5が「始動」の位置に操作されても、制御装置47はエンジン始動用モータ(いわゆるスタータ)72を駆動させず、エンジン6の始動を規制するよう構成されている。
【0094】
したがって、万一、モータ駆動の状態でメインスイッチ5が「始動」の位置に誤操作された場合でも、エンジン6が始動せず、電動モータ7により農作業が進められているにも拘わらずエンジン6が作動し続けてしまうという無用な事態・燃料消費を防止できるとともに、エンジンハーネスの焼損や無用な電力消費を防止することができる。
【0095】
なお、モータ駆動の状態か否かはクラッチ位置検出装置36(図5参照)の検出信号に基づき判定され、エンジンクラッチ34の切断が検出されている間は、エンジン始動用モータ72(いわゆるスタータ)が作動されない。このように構成することで、モータ駆動の状態であるかエンジン駆動の状態であるかを容易に検知できる。
【0096】
実際にモータ駆動による根菜類収穫機1の走行が開始される際には、図4に示される副変速レバー69が「走行」位置(不図示)に操作された状態で、主変速レバー68が前方または後方に操作される。
【0097】
その結果、電動モータ7がインバータ31により駆動され、電動モータ7の出力軸7aから第一の伝動機構10に伝動された後に、HST50等の走行伝動系を介して走行クローラ2に伝動され、主変速レバー68の操作位置に基づきHST50内で変速された車速で根菜類収穫機1の前進又は後進が開始される。このとき、第六のプーリ23と伝動ロッド55との間に設けられたクラッチは切断されている。
【0098】
また、モータ駆動により、農作業を伴う走行が開始される際には、図4に示される副変速レバー69が「掘取」位置に操作された状態で、主変速レバー68が前方または後方に操作される。
【0099】
その結果、電動モータ7がインバータ31により駆動され、電動モータ7の出力軸7aから第一、第二の伝動機構10,20に伝動される。
【0100】
その後に、第一、第二の伝動機構10,20から、HST50等の走行伝動系又は伝動ロッド55等の作業伝動系を介して走行クローラ2及び各作業装置3aないし3fに伝動され、各作業装置3aないし3fによる農作業を伴う根菜類収穫機1の前進又は後進が開始される。このとき、第六のプーリ23と伝動ロッド55との間に設けられたクラッチは接続されている。
【0101】
一方、モータ駆動からエンジン駆動に切り換えられる際には、まず、図7に示されるメインスイッチ5が「入」の位置から「始動」の位置へ操作され、エンジン6が始動される。
【0102】
次いで、エンジン6が始動されてから所定時間内にクラッチスイッチ67(図4参照)が操作されてエンジンクラッチ34が接続されることで、エンジン駆動による作業を行うことが可能になる。
【0103】
なお、クラッチスイッチ67に代えて、操作部66に別途クラッチペダルを設け、クラッチペダルの踏み込み操作に基づき、エンジンクラッチの断接が電子制御により切り換えられるよう構成してもよい。クラッチスイッチ67やクラッチペダルは、本発明の「操作具」に相当する。
【0104】
エンジン駆動により、実際に根菜類収穫機1の走行が開始される際には、図4に示される副変速レバー69が「走行」位置(不図示)に操作された状態で、主変速レバー68が前方または後方に操作される。
【0105】
その結果、エンジン6の出力軸6aから電動モータ7の出力軸7aを介して第一の伝動機構10に伝動された後に、HST50等の走行伝動系を介して走行クローラ2に伝動され、主変速レバー68の操作位置に基づきHST50内で変速された車速で根菜類収穫機1の前進又は後進が開始される。このとき、第六のプーリ23と伝動ロッド55との間に設けられたクラッチは切断されている。
【0106】
また、エンジン駆動により、農作業を伴う走行が開始される際には、図4に示される副変速レバー69が「掘取」位置に操作された状態で、主変速レバー68が前方または後方に操作される。
【0107】
その結果、エンジン6の出力軸6aから電動モータ7の出力軸7aを介して第一、第二の伝動機構10,20に伝動される。
【0108】
その後、第一、第二の伝動機構10,20から、HST50等の走行伝動系又は伝動ロッド55等の作業伝動系を介して走行クローラ2及び各作業装置3aないし3fに伝動され、各作業装置3aないし3fによる農作業を伴う根菜類収穫機1の前進又は後進が開始される。このとき、第六のプーリ23と伝動ロッド55との間に設けられたクラッチは接続されている。
<本実施形態の技術的意義>
図1ないし図7に示された本実施形態によれば、走行装置の一例である走行クローラ2および各作業装置3aないし3fの動力源の一つである電動モータ7の出力軸7aに、走行伝動系と作業伝動系に伝動する動力伝達手段としての第一、第二の伝動機構10,20が取り付けられているから、電動モータ7が駆動されることにより、電動モータ7から出力される動力で走行クローラ2および各作業装置3aないし3fを駆動でき、したがってエンジン6を作動させることなく、農作業を進めることができる。
【0109】
加えて、このようにエンジン6を作動させることなく、農作業を進めることができるから、排気ガスの排出が許容されない屋内やハウス内での作業に、農作業機を用いることが可能になる。
【0110】
さらに、本実施形態によれば、エンジン6の作動時に、エンジンクラッチ34が接続された際に(換言すれば、エンジンクラッチ34が接続されていることを条件として)、エンジン6の出力軸6aから電動モータ7の出力軸7aへ動力が伝達されるよう構成されているから、エンジン6を動力源として走行クローラ2と各作業装置3aないし3fを駆動でき、高出力が必要な作業や高速走行が可能になる。
【0111】
また、本実施形態においては、ハイブリッド車のように変速用差動回転機構等を用いてエンジンと電動モータの動力を合流させるのではなく、走行クローラ2と各作業装置3aないし3fの動力源を、エンジン6と電動モータ7のいずれかに限定(換言すれば、エンジン6の動力と電動モータ7の動力を合流させずに一方のみを伝達)している。
【0112】
そのため、動力源の処理をエンジンクラッチ34の断接により行うことができ、エンジン6と電動モータ7を含む動力機構8を備えた農作業機の一例である根菜類収穫機1を小型化・軽量化することができる。
【0113】
さらに、本実施形態によれば、エンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aとがエンジンクラッチ34を介して接続されているから、モータ駆動時にエンジンクラッチ34を切ることにより、エンジン6の破損を防止できる。
【0114】
また、本実施形態によれば、エンジン6の出力軸6aと電動モータ7の出力軸7aとが同軸上に配置されているから、出力軸6a,7a間での動力の伝達を入切するクラッチを容易に構成することができる。
【0115】
加えて、本実施形態によれば、電動モータ7がモータジェネレータにより構成されているから、エンジン6の出力軸6aと電動モータの出力軸7aとを接続するエンジンクラッチ34が接続されたときに、エンジン6の駆動により出力軸7aが回転されるのに伴って、電動モータ7が回転(回生駆動)されることで、発電を行うことができるとともに、エンジンクラッチ34が接続されたときに、本発明の「検出手段」に相当するクラッチ位置検出装置36によりその接続が検出されて、充放電切換装置32によって、発電された電力がバッテリー30に充電される充電状態に自動的に切り換えられるよう構成されているから、エンジン6による走行クローラ2と各作業装置3aないし3fの駆動と、バッテリー30の充電とを同時に行うことができる。
【0116】
さらに、このようにエンジン6により走行クローラ2と各作業装置3aないし3fを駆動させることで、バッテリー30を充電することができるから、作業者が敢えてバッテリー30を取り外して充電を行う必要がなく、利便性が高い。
【0117】
また、本実施形態によれば、エンジンクラッチ34の切断が検出されている間、すなわち、モータ駆動の状態では、エンジン6の始動が規制されるよう構成されているから、モータ駆動の状態で、万一メインスイッチ5によるエンジン始動操作が行われても、エンジン6の無駄な駆動と燃料消費が防止できるとともに、エンジン始動用モータ72の駆動に伴うエンジンハーネスの焼損や無用な電力消費を防止することができる。
<歩行型の作物引抜機>
以上、乗用の根菜類収穫機1について説明を加えたが、図1及び図2に示された動力機構8を備えた農作業機の2例目として、以下に、機体の後方で作業者が歩行しながら操作(運転)する作物引抜機について説明を加える。
【0118】
なお、歩行型の作物引抜機の動力機構8と制御装置47は、図3ないし図7に示された根菜類収穫機1の場合と同様に構成されており、したがってメインスイッチ5及びクラッチスイッチ67を用いて根菜類収穫機1と同様の手順でエンジン駆動とモータ駆動との間で切り換えることができる。また、以下に述べる歩行型の作物引抜機においては、上述の根菜類収穫機1と同様に構成される各部には、同符号を用いて説明を省略する。
【0119】
図8は、図1に示された動力機構8を備えた作物引抜機4の略平面図であり、図9は、図8に示された作物引抜機4の略左側面図であり、図10は、図8に示された作物引抜機4の略正面図である。
【0120】
作物引抜機4は、動力機構8と、機体の走行装置としての左右一対の駆動輪2’と、作業装置としての引起し装置3g及び引抜装置3hと、駆動輪2’へ動力を伝達する走行伝動系としての伝動ロッド80、ギアボックス86、出力軸87及びチェーンケース81と、引起し装置3g及び引抜装置3hへ動力を伝達する作業伝動系としての伝動ロッド55、中間繋ぎ部57、ギアボックス84(図4参照)、ユニバーサルジョイント82、チェーンケース83及びユニバーサルジョイント89を備えている。
【0121】
図1及び図8に示される第三のプーリ13には、図8ないし図10に示される伝動ロッド80が一体的に回転可能に取り付けられており、エンジン駆動又はモータ駆動により電動モータ7の出力軸7aが回転されると、第三のプーリ13が回転されるのに伴って伝動ロッド80が回転される。
【0122】
伝動ロッド80に伝達された動力はギアボックス86に伝達された後に、ギアボックス86により支持される左右の伝動ケース88内を機体幅方向外側に延びる出力軸87(図9図10参照)を通じて、図10に示される左右一対のチェーンケース81に入力される。
【0123】
その後に、各チェーンケース81内を下方へ伝達された後に、各駆動輪2’へ伝達され、その結果、作物引抜機4が前進する。なお、図9に示される車輪85は従動輪である。
【0124】
一方、エンジン駆動又はモータ駆動により、第二の伝動機構20を通じて伝動ロッド55に伝達された動力は、中間繋ぎ部57から前方へ延びる伝動ロッド59(図8参照)を通じて図9に示されるギアボックス84へ伝達される。
【0125】
ギアボックス84内において、前方へ延びる動力と上方へ延びる動力とに分配された後に、前方へ延びる動力はチェーンケース83を通じて引起し装置3gへ伝達され、上方へ延びる動力はユニバーサルジョイント82を通じて引抜装置3hへ伝達される。
【0126】
その結果、引起し装置3gにて引き起こされた大根等の作物の茎葉が、引起し装置3gにおいて図示しないプーリの回転駆動により左右一対の無端状の搬送ベルト100(図8参照)に挟まれた状態で搬送領域99内を後ろ上方へ引っ張られ、作物が圃場から引き抜かれる。
【0127】
駆動輪2’と各作業装置3g、3hは、制御装置47のインバータ制御部48(図6参照)により回転数が制御される電動モータ7によるモータ駆動時に無段変速で駆動され、電動モータ7の回転数、すなわち、走行速度と作業速度は、作物引抜機4を操作する操作部93に配置された速度調整ダイアル92の操作位置に従って調整される。速度調整ダイアル92は、図6に示される主変速レバー68に代わるものである。
【0128】
速度調整ダイアル92は、従来の作物引抜機の変速レバーと同様に操作部93の右部に配置されており、作業者により速度調整ダイアル92が変速用の操作具であると認識され易い。
【0129】
図9に示される操作部93は、速度調整ダイアル92の他、エンジン6を始動させるメインスイッチ5(図7参照)と、図10に示されるエンジンクラッチ34を断接するクラッチスイッチ67を備えている。
【0130】
動力機構8のバッテリー30は、図8に示されるように、後側バッテリー30aと前側バッテリー30aを備え、これら(30a、30b)が直列に接続されて構成されている。各バッテリー30a,30bは、1つ以上のバッテリーセルにより構成される。
【0131】
後側バッテリー30aは、図8に示されるエンジン6の燃料タンク98及び引抜装置3hの搬送領域99よりも左側に配置され、前側バッテリー30bは機体4の右前部に配置されている。
【0132】
図1に示されたバッテリー30を、直列に接続された2つのバッテリー30a,30bにより構成し、機体4の前後(より具体的には右前部と左後部)に分散して配置することにより、バッテリー30の容量を保持しつつも、それぞれのバッテリー30a,30bを小型化できるとともに、機体4の前後の重量バランスをとることができる。
【0133】
ここで、従来の作物引抜機の右前部には、機体の重量バランスを確保するためにおもりが取り付けられているが、本実施形態においてはバッテリー30の分散配置により重量バランスが良好であるため、当該おもりを省くことができる。
【0134】
各バッテリー30a,30bはバッテリーボックス90又は91に収容されており、バッテリーの保護が図られているとともに、作業者の感電を防止することができる。
【0135】
また、各バッテリー30a,30bは着脱式で、機体4から取り外して充電することができ、万一、エンジン駆動に伴う充電では不十分な場合やバッテリー30a、30bが劣化した場合に、バッテリー30a,30bを各々、予備のものに交換することで作業を継続できる。後側バッテリー30aを収容するバッテリーボックス90は、図9に示されるように、操作部93の下方に配置されているため、作業者は作業を中断して容易に交換することができる。
【0136】
図11は、図8に示された各バッテリーボックス90,91の模式的縦断面図である。
【0137】
各バッテリーボックス90,91は、ボックス本体94と、軸96を中心に揺動可能にボックス本体94に取り付けられた蓋体95を備えている。
【0138】
蓋体95の下部は図示しないマグネットによりボックス本体94の下部後面に着脱可能に取り付けられ、軸96の左右両端部は、ボックス本体94の後ろ上部に固定されている。
【0139】
蓋体95により形成されたバッテリーボックス90,91の開閉部(開閉面)97は進行方向と反対側、すなわち後ろ側に設けられており、バッテリーボックス90,91内に収容されたバッテリー30a,30bを後ろ側から取り出せるとともに、作物引抜機4が前進する間に、バッテリーボックス90,91への土や塵埃類の侵入を抑制できる。
【0140】
バッテリーボックス90とインバータ31は互いに接触するように前後に並べて配置され、当該接触面が金属により構成されており、バッテリーボックス90内の後側バッテリー30aとインバータ31とが導通されている。そのため、バッテリーボックス90とインバータ31とを結ぶ配線が省かれており、断線のリスクがない。
【0141】
電動モータ7とインバータ31は図示しない複数の配線により繋がれており、これらの配線はコルゲートにより1本にまとめて配策されているため、断線のリスクが低減されている。
<本実施形態の技術的意義>
図1図2及び図8ないし図11に示された本実施形態によれば、駆動輪2’及び各作業装置3g、3hの動力源としての電動モータ7に電力を供給するバッテリー30が、直列に接続された複数のバッテリー30a、30bを有し、これらのバッテリー30a、30bを収容するバッテリーボックスの1つであるバッテリーボックス90が機体4の後部に設けられた操作部93の下方に配置され(図9参照)、他の1つが機体4の前部に配置されているから、複数のバッテリー30a、30bにより電力容量を確保できるとともに、機体4の前後の重量バランスを安定させることができる。
【0142】
また、本実施形態によれば、各バッテリーボックス90,91の後ろ側からバッテリー30a又は30bを取り出し可能に構成されているから、前方へ向けて走行中に、土や塵埃等が各バッテリーボックス90,91内へ浸入してしまう事態を抑制できる。
【0143】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0144】
例えば、図1ないし図11に示された各実施形態においては、電動モータ7はモータジェネレータにより構成されているが、電動モータが発電機の機能を有することは必ずしも必要でない。
【0145】
また、図1ないし図11に示された各実施形態においては、エンジンクラッチ34の断接をクラッチ位置検出装置36により検出し、充放電を切り換えるよう構成されているが、クラッチ位置検出装置によりエンジンクラッチの断接を検出することは必ずしも必要でない。エンジンの出力を受けてモータジェネレータである電動モータが回転している場合には、バッテリーの電力で電動モータが駆動している場合に比して、電動モータの回転数が高回転となっていることが予想される。したがって、たとえば、電動モータ7の回転数を検出する手段によりエンジンクラッチの断接を検出するよう構成することも可能である。この場合には、電動モータ7の回転数が所定値以上であるとき、エンジンクラッチが接続されていることが認められるため、充放電切換装置により、バッテリーへの充電が開始されるよう構成することが望ましい。
【0146】
さらに、図1ないし図11に示された各実施形態においては、図1に示される第一のプーリ11と第四のプーリ21とは別体に構成されているが、一体的に構成された二連プーリを用いてもよい。また、第一のプーリ11と第四のプーリ21は直接出力軸7aに取り付けられているが、出力軸7aとの間にクラッチを設け、第一、第二の伝動機構への伝動を当該クラッチにより切断可能に構成してもよい。
【0147】
また、図1ないし図11に示された各実施形態においては、エンジン駆動の状態(エンジンクラッチ34は入)で、図4及び図9に示されるクラッチスイッチ67が操作され、エンジンクラッチ34が切断されると、クラッチ位置検出装置36によりエンジンクラッチ34の切断が検出されて、充放電切換装置32によって、バッテリー30に充電された電力が電動モータ7に供給可能な放電状態に切り換えられるよう構成されているが、エンジン駆動の状態でクラッチスイッチを用いたエンジンクラッチの切断操作が行われたときに、制御装置の制御信号に基づき、充放電切換装置が自動的に放電状態へ切り換えるとともに、制御装置が自動的にエンジンを停止させるよう構成してもよい。
【0148】
この場合には、エンジン駆動からモータ駆動に切り換える際に、エンジンを入切するメインスイッチを操作する手間と時間を省け、バッテリーを用いたモータ駆動にスムーズに移行することができる。
【0149】
同様に、図1ないし図11に示された各実施形態においては、モータ駆動(エンジンクラッチ34は切)の状態でクラッチスイッチ67が操作され、エンジンクラッチ34が接続されると、クラッチ位置検出装置36によりエンジンクラッチ34の接続が検出されて、充放電切換装置32によって、電動モータ7により発電された電力がバッテリー30に供給される充電状態に切り換えられるよう構成されているが、モータ駆動の状態でエンジンクラッチ34の接続操作が行われると、制御装置の制御信号に基づき、充放電切換装置が自動的に充電状態に切り換えるとともに、制御装置が自動的にエンジンを始動させるよう構成してもよい。
【0150】
この場合には、モータ駆動からエンジン駆動に切り換える際に、クラッチスイッチの操作に先立ってメインスイッチを操作する手間と時間を省け、エンジン駆動にスムーズに移行することができるとともに、エネルギー消費を抑えることができる。
【0151】
加えて、この場合には、自動的にエンジンを始動させるとともに、HSTをHSTサーボモータにより自動的に中立側に調整し、農作業機を減速させ、又は一時的に停車させるよう構成することで、安全性を高めることができる。
【0152】
また、図1ないし図5に示された根菜類収穫機1に係る実施形態においては、第一の伝動機構10は走行伝動系に、第二の伝動機構20は作業伝動系に各々伝動するよう構成されているが、上述のように、第一、第二の伝動機構10、20の第三のプーリ13、第六のプーリ23はいずれも、走行伝動系又は/及び作業伝動系へ動力を伝達するよう構成することができる。
【0153】
したがって、たとえば、図12に示されるように、第一の伝動機構10の第三のプーリ13から入力軸51によりHST50へ入力した後に、HST50の1つの出力軸52から走行伝動系に、HST50の他の1つの出力軸60から作業伝動系に各々出力するよう構成することも可能である。なお、この場合には入力軸51及びHST50は走行伝動系と作業伝動系の両方に属することとなる。
【0154】
HST50から作業伝動系に出力された動力は、出力軸60に取り付けられたプーリ101とプーリ102に巻きかけられた無端ベルト103の駆動により伝動ロッド104に伝達された後に、同様に2組のプーリ105,106と無端ベルト107を用いた伝動機構により、中間繋ぎ部108へ伝動される。
【0155】
こうして中間繋ぎ部108へ伝達された動力は、伝動ロッド109を通じて、作業ミッション61に入力された後に、作業ミッション61から図4に示される出力軸62、伝動ケース63及び伝動ロッド64を介してタッピング装置3d、引抜搬送装置3c及び引起し装置3aに伝達される。
【0156】
すなわち、HST50や伝動ロッド104、伝動ロッド109等を含む作業ミッション61までの伝動機構は、図4及び図5に示される出力軸59を用いた伝動機構に代替するものであり、HST50を介することで、各作業装置3a,3c及び3dへ伝達される回転動力について、走行速度に合わせてきめ細やかな変速が可能になる。加えて、HST50を介することにより、出力軸52,60ごとに動力出力の入切が可能であるため、別途クラッチを用いることなく、走行装置と作業装置の一方のみを駆動可能に構成できる。
【0157】
さらに、図1図2及び図8ないし図11に示された作物引抜機4に係る実施形態においては、図9に示されるように、バッテリー30aを収容するバッテリーボックス90が、電動モータ7の駆動を制御するインバータ31の後方に配置されているが、バッテリーボックスをインバータの直ぐ上方に配置した場合には、インバータに直射日光が当たることを防ぎ、インバータの急激な温度上昇を防止することができる。
【0158】
また、図1図2及び図8ないし図11に示された作物引抜機4に係る実施形態においては、作物引抜機4が有するすべての作業装置3g、3hが電動モータ7により駆動可能に構成されているが、一部の作業装置を、別途用意した電動モータにより駆動可能に構成してもよく、たとえば引抜装置を別途用意した電動モータにより駆動する場合には、各電動モータに電力を供給する各バッテリーの下方に電動モータの回転数を制御するインバータを配置することにより、インバータに直射日光が当たらず、したがってインバータの温度が急激に上昇してしまう事態を防止できる。
【0159】
さらに、この場合には2つのバッテリーを図8に示されるバッテリー30a、30bの位置に配置することで、機体の前後の重量バランスをとることができるとともに、従来の作物引抜機に設けられていた重りを省くことができる。加えて、この場合には別途用意した電動モータの回転数を、走行速度、すなわち速度調整ダイアルの操作位置に合わせて、制御装置とインバータにより自動的に調整するよう構成することで、作業者が都度、走行速度を調整する手間を省くことができる。
【0160】
また、図1図2及び図8ないし図11に示された作物引抜機4に係る実施形態においては、走行装置の一例である一対の駆動輪2’がいずれも電動モータ7の駆動力により回転されるが、走行装置の一部、たとえば、左右一方の駆動輪を駆動するため、別途電動モータを設けてもよい。この場合には、電動モータは走行用のギアボックスへの入力部の回転方向とモータ軸の回転方向とが一致する向きで配置されることが望ましく、このように構成することにより、ギアボックスへの伝動時の動力の損失を低減できる。
【符号の説明】
【0161】
1 農作業機(根菜類収穫機)
2 走行装置
3 作業装置
4 農作業機(作物引抜機)
5 メインスイッチ
6 エンジン
6a 出力軸
6b フライホイール
7 電動モータ
7a 出力軸
8 動力機構
10 第一の伝動機構
11 第一のプーリ
12 第二のプーリ
13 第三のプーリ
14 無端ベルト
20 第二の伝動機構
21 第四のプーリ
22 第五のプーリ
23 第六のプーリ
24 無端ベルト
30 バッテリー
31 インバータ
32 充放電切換装置
33 充電装置
34 エンジンクラッチ
35 クラッチ作動シリンダ
35a ソレノイド
36 クラッチ位置検出装置
37 充放電切換部
38 BMS
39 充電制御部
40 保護スイッチ
41 スイッチ
42 スイッチ
43 スイッチ
44 カレントトランス
45 ソレノイド駆動手段
46 電池コントロールユニット(BCU)
47 制御装置
48 インバータ制御部
49 インバータ駆動回路
50 静油圧式無段変速機(HST)
51 HSTの入力軸
52 HSTの出力軸(走行伝動系)
53 走行ミッション装置
54 駆動スプロケット
55 伝動ロッド
57 中間繋ぎ部
58 伝動ロッド
59 伝動ロッド
60 HSTの出力軸(作業伝動系)
61 作業ミッション
62 作業ミッションの出力軸
63 伝動ケース
64 伝動ロッド
65 操縦席
66 操作部
67 クラッチスイッチ
68 主変速レバー
69 副変速レバー
70 HSTサーボモータ
71 ソレノイド
72 エンジン始動用モータ
80 伝動ロッド
81 チェーンケース
82 ユニバーサルジョイント
83 チェーンケース
84 ギアボックス
85 従動輪
86 ギアボックス
87 出力軸
88 伝動ケース
89 ユニバーサルジョイント
90 バッテリーボックス
91 バッテリーボックス
92 速度調整ダイアル
93 操作部
94 ボックス本体
95 蓋体
96 軸
97 開閉部
98 燃料タンク
99 搬送領域
100 搬送ベルト
101 プーリ
102 プーリ
103 無端ベルト
104 伝動ロッド
105 プーリ
106 プーリ
107 無端ベルト
108 中間繋ぎ部
109 伝動ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12