(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119098
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】タービン
(51)【国際特許分類】
F01D 5/22 20060101AFI20230821BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20230821BHJP
F01D 5/16 20060101ALI20230821BHJP
F01D 5/26 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
F01D5/22
F01D5/18
F01D5/16
F01D5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021744
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】武居 宗太朗
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202BA02
3G202BB03
3G202CA07
3G202CB01
3G202DA01
3G202DA07
3G202JJ02
3G202JJ21
(57)【要約】
【課題】翼の振動に対して高い減衰効果を得ることができる。
【解決手段】タービンは、ロータと、ロータの周方向に沿って配置される複数のタービン翼と、を備え、複数のタービン翼は、第1動翼および第1動翼の先端部に設けられる第1シュラウドを含む第1タービン翼と、第1動翼に対してロータの周方向の一方側に隣接して配置される第2動翼および第2動翼の先端部に設けられる第2シュラウドを含む第2タービン翼と、を含み、第1シュラウドの周方向の一方側の一方側側面の少なくとも一部と、第2シュラウドの周方向の他方側の他方側側面の少なくとも一部とが、周方向において重複する重複領域において、一方側側面は他方側側面に対して径方向の外側に位置しており、第2シュラウドは、第1シュラウドより重い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
前記ロータの周方向に沿って配置される複数のタービン翼と、を備え、
前記複数のタービン翼は、第1動翼および前記第1動翼の先端部に設けられる第1シュラウドを含む第1タービン翼と、前記第1動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第2動翼および前記第2動翼の先端部に設けられる第2シュラウドを含む第2タービン翼と、を含み、
前記第1シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面の少なくとも一部と、前記第2シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面の少なくとも一部とが、前記周方向において重複する重複領域において、前記一方側側面は前記他方側側面に対して径方向の外側に位置しており、
前記第2シュラウドは、前記第1シュラウドより重い、
タービン。
【請求項2】
前記周方向における前記第1シュラウドの長さは、前記周方向における前記第2シュラウドの長さより短い、
請求項1に記載のタービン。
【請求項3】
前記一方側側面及び前記他方側側面のそれぞれは、前記第1シュラウドと前記第2シュラウドとが一体構成された一体型シュラウドを切断した切断面からなる、
請求項1又は2に記載のタービン。
【請求項4】
前記一方側側面及び前記他方側側面のそれぞれは全体が平坦面からなる平面形状を有している、
請求項1から3の何れか一項に記載のタービン。
【請求項5】
前記一方側側面は、前記径方向の内側に面する内向段差面を含み、
前記他方側側面は、前記径方向の外側に面する外向段差面を含む、
請求項1から3の何れか一項に記載のタービン。
【請求項6】
前記複数のタービン翼は、前記第2動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第3動翼および前記第3動翼の先端部に設けられる第3シュラウドを含む第3タービン翼をさらに含み、
前記第2シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面の少なくとも一部と、前記第3シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面の少なくとも一部とが、前記周方向において重複する第2重複領域において、前記第3シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面は前記第2シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面に対して径方向の外側に位置しており、
前記第2シュラウドは、前記第3シュラウドより重い、
請求項1から5の何れか一項に記載のタービン。
【請求項7】
前記第1動翼の内部には、前記第1動翼を冷却するための冷媒が流通する第1冷却流路が形成されており、
前記第2動翼の内部には、前記第2動翼を冷却するための冷媒が流通する第2冷却流路が形成されており、
前記第1冷却流路を画定する第1冷却面は、前記第2冷却流路を画定する第2冷却面よりも面積が大きい、
請求項1から6の何れか一項に記載のタービン。
【請求項8】
ロータと、
前記ロータの周方向に沿って配置される複数のタービン翼と、を備え、
前記複数のタービン翼は、第1動翼および前記第1動翼の先端部に設けられる第1シュラウドを含む第1タービン翼と、前記第1動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第2動翼および前記第2動翼の先端部に設けられる第2シュラウドを含む第2タービン翼と、を含み、
前記第1シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面の少なくとも一部と、前記第2シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面の少なくとも一部とが、前記周方向において重複する重複領域において、前記一方側側面は前記他方側側面に対して径方向の外側に位置しており、
前記第1動翼の内部には、前記第1動翼を冷却するための冷媒が流通する第1冷却流路が形成されており、
前記第2動翼の内部には、前記第2動翼を冷却するための冷媒が流通する第2冷却流路が形成されており、
前記第1冷却流路を画定する第1冷却面は、前記第2冷却流路を画定する第2冷却面よりも面積が大きい、
タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンやガスタービンなどのタービンは、運転中における翼の振動を抑制するために幾つかの対策案が採用されている。例えば、特許文献1には、複数の翼のそれぞれにシュラウドが設けられており、隣り合うシュラウドは互いに分割されるとともに、ピンがガタを有するように挿入されるピン係合孔を形成する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、ピン係合孔にピンが摺接することによって翼の励振を抑制するものであり、ピンの摺接部分が限定的であるため、翼の振動を抑制する減衰効果が小さい。
【0005】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、翼の振動に対して高い減衰効果を得ることができるタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係るタービンは、ロータと、前記ロータの周方向に沿って配置される複数のタービン翼と、を備え、前記複数のタービン翼は、第1動翼および前記第1動翼の先端部に設けられる第1シュラウドを含む第1タービン翼と、前記第1動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第2動翼および前記第2動翼の先端部に設けられる第2シュラウドを含む第2タービン翼と、を含み、前記第1シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面の少なくとも一部と、前記第2シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面の少なくとも一部とが、前記周方向において重複する重複領域において、前記一方側側面は前記他方側側面に対して径方向の外側に位置しており、前記第2シュラウドは、前記第1シュラウドより重い。
【発明の効果】
【0007】
本開示のタービンによれば、翼の振動に対して高い減衰効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】幾つかの実施形態に係るタービンを備えるガスタービンの構成例を概略的に示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るタービンの構成を概略的に示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るタービンの形成方法の一例を説明するための図である。
【
図4】
図2に示す第1シュラウドの一方側側面の周辺を拡大した図である。
【
図5】
図2に示す第2シュラウドの一方側側面の周辺を拡大した図である。
【
図6】第2実施形態に係る第1シュラウドの一方側側面の周辺を拡大した図である。
【
図7】第3実施形態に係る第1動翼の内部構成と第2動翼の内部構成とを概略的に示す図である。
【
図8】第4実施形態に係るタービンの構成を概略的に示す図である。
【
図9】第4実施形態に係る第4動翼の内部構成と第5動翼の内部構成とを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態によるタービンについて、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0010】
(ガスタービン)
図1は、幾つかの実施形態に係るタービン1を備えるガスタービン100の構成例を概略的に示す図である。
図1に例示するように、ガスタービン100は、圧縮空気G2を生成するための圧縮機102と、圧縮空気G2及び燃料を用いて燃焼ガスG3を発生させるための燃焼器104と、燃焼ガスG3によって回転駆動されるように構成されたタービン1と、を備える。ガスタービン100は、例えば、航空機の推進力を得るための航空機用エンジンとして適用されている。尚、ガスタービン100は、発電などの別の目的のために用いられてもよい。
【0011】
圧縮機102は、圧縮機ロータ106と、圧縮機ケーシング108と、複数の圧縮機静翼列110と、複数の圧縮機動翼列112と、を含む。
【0012】
圧縮機ロータ106は、軸線Oを中心として回転可能に構成されている。圧縮機ロータ106は、棒形状を有しており、軸線Oが延在する軸線方向D1に沿って長手方向を有する。圧縮機ケーシング108は、筒形状を有しており、圧縮機ロータ106を圧縮機ロータ106の径方向の外側から覆っている。
【0013】
複数の圧縮機静翼列110は、軸線方向D1に沿って互いに間隔を空けて圧縮機ケーシング108に固定されている。複数の圧縮機静翼列110のそれぞれは、圧縮機ケーシング108の内周面に圧縮機ロータ106の周方向に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の圧縮機静翼111を含む。
【0014】
複数の圧縮機動翼列112は、圧縮機静翼列110に対して交互に配列されるように、軸線方向D1に沿って互いに間隔を空けて圧縮機ロータ106に植設されている。複数の圧縮機動翼列112のそれぞれは、圧縮機ロータ106の外周面に圧縮機ロータ106の周方向に沿って互いに間隔を空けて配置された複数の圧縮機動翼113を含む。
【0015】
図1に例示する圧縮機102は、外部から空気G1を取り込むための空気取入口114が形成されている。圧縮機102内に取り込まれた空気G1は、複数の圧縮機静翼列110及び複数の圧縮機動翼列112を通過して圧縮されることで高温高圧の圧縮空気G2となる。
【0016】
燃焼器104は、燃料と圧縮機102で生成された圧縮空気G2とが供給されるようになっており、燃料と圧縮空気G2とを混合して燃焼することで、タービン1の作動流体である燃焼ガスG3を生成する。
図1に例示する形態では、ガスタービン100は、軸線方向D1において、圧縮機ケーシング108と後述するタービンケーシング6との間に配置される燃焼器ケーシング116を含む。燃焼器ケーシング116内には、複数の燃焼器104が配置されている。
【0017】
タービン1は、タービンロータ3と、タービンケーシング6と、複数のタービン静翼列8と、複数のタービン動翼列10と、を含む。
【0018】
タービンロータ3は、軸線Oを中心として回転可能に構成されている。タービンロータ3は、棒形状を有しており、軸線方向D1に沿って長手方向を有する。
図1に例示する形態では、タービンロータ3と圧縮機ロータ106とは軸線方向D1に一体に連結されている。言い換えると、ガスタービン100は、タービンロータ3と圧縮機ロータ106とで構成されるガスタービンロータ101を含む。
【0019】
以下、タービンロータ3の径方向を単に「径方向D2」と記載し、タービンロータ3の周方向を単に「周方向D3」と記載する。径方向D2は、軸線Oと直交している。径方向D2のうち軸線Oに近づく方向を径方向D2の内側に向かう方向とし、軸線Oから離れる方向を径方向D2の外側に向かう方向とする。
【0020】
タービンケーシング6は、筒形状を有しており、タービンロータ3を径方向D2の外側から覆っている。
【0021】
複数のタービン静翼列8は、軸線方向D1に沿って互いに間隔を空けてタービンケーシング6に固定されている。複数のタービン静翼列8のそれぞれは、タービンケーシング6の内周面に周方向D3に沿って互いに間隔を空けて配置された複数のタービン静翼12を含む。
【0022】
複数のタービン動翼列10は、タービン静翼列8に対して交互に配列されるように、軸線方向D1に沿って互いに間隔を空けてタービンロータ3に植設されている。複数のタービン動翼列10のそれぞれは、タービンロータ3の外周面に周方向D3に沿って配置された複数のタービン動翼2を含む。
【0023】
図1に例示するタービン1は、燃焼器104で生成された燃焼ガスG3が供給されるようになっており、この燃焼ガスG3が複数のタービン静翼列8及び複数のタービン動翼列10を通過することで、タービンロータ3を回転駆動させる。圧縮機102は、タービンロータ3を介してタービン1の回転力が伝達されて、圧縮機102内を流通する空気G1を圧縮する。タービン1は、複数のタービン静翼列8及び複数のタービン動翼列10を通過した燃焼ガスG3(排ガスG4)を航空機の推進力として排気する。
【0024】
不図示であるが、幾つかの実施形態では、ガスタービン100は、圧縮機102内に取り込まれる空気G1の量を増やすために、軸線方向D1において圧縮機102を挟んでタービン1とは反対側に配置されるファンをさらに備える。このファンは、圧縮機ロータ106を介してタービンロータ3に接続されており、タービン1の回転力によって回転駆動する。
【0025】
以下、本開示に係るタービン1の具体的な構成について説明する。
【0026】
<第1実施形態>
(構成)
図2は、第1実施形態に係るタービン1の構成を概略的に示す図である。
図2には、
図1のタービン動翼列10の一部を軸線方向D1から視た概略図が示されている。
【0027】
第1実施形態では、
図2に例示するように、タービン1は、タービンロータ3に固定されるロータディスク14を含む。ロータディスク14は、例えば、タービンロータ3の外周面に形成された穴に嵌め込まれることでタービンロータ3に固定される。幾つかの実施形態では、ロータディスク14は、ボルトのような締結具によって、タービンロータ3に固定される。
【0028】
第1実施形態では、
図2に例示するように、ロータディスク14は、タービンロータ3に接続され、タービンロータ3から径方向D2の外側に延びる径方向延在部16と、径方向延在部16の先端部から周方向D3の両側に延び、板形状を有する周方向延在部18と、を含む。
【0029】
複数のタービン動翼2は、第1タービン動翼2A(2)と、第2タービン動翼2B(2)と、第3タービン動翼2C(2)と、を含む。
【0030】
第1タービン動翼2Aは、第1動翼20および第1動翼20の先端部22に設けられる第1シュラウド24を含む。第1動翼20は、周方向延在部18の外周面に取り付けられ、周方向延在部18の外周面から径方向D2の外側に延びる。第1シュラウド24は、板形状を有しており、第1動翼20の先端部22から周方向D3の両側に延びている。
【0031】
第1実施形態では、第1シュラウド24の周方向D3の一方側の一方側側面24aは、径方向D2の外側の外側端e1が径方向D2の内側の内側端e2よりも周方向D3の一方側に位置している。第1シュラウド24の周方向D3の他方側の他方側側面24bは、径方向D2の外側の外側端e3が径方向D2の内側の内側端e4よりも周方向D3の他方側に位置している。第1シュラウド24の一方側側面24a及び他方側側面24bのそれぞれは、径方向D2におけるロータディスク14側(内側)に向いている。第1シュラウド24は、軸線方向D1視において、対称形状を有している。第1動翼20の先端部22は、第1シュラウド24の周方向D3の中央部に位置している。
【0032】
第2タービン動翼2Bは、第2動翼40および第2動翼40の先端部42に設けられる第2シュラウド44を含む。第2動翼40は、第1動翼20に対して周方向D3の一方側に隣接して配置される。周方向D3において、第1動翼20と第2動翼40との間には燃焼ガスG3が流通する空間が形成されている。第2動翼40は、周方向延在部18の外周面に取り付けられ、この周方向延在部18の外周面から径方向D2の外側に延びる。第2シュラウド44は、板形状を有しており、第2動翼40の先端部42から周方向D3の両側に延びている。
【0033】
第1実施形態では、第2シュラウド44の周方向D3の一方側の一方側側面44aは、径方向D2の外側の外側端e5が径方向D2の内側の内側端e6よりも周方向D3の他方側に位置している。第2シュラウド44の周方向D3の他方側の他方側側面44bは、径方向D2の外側の外側端e7が径方向D2の内側の内側端e8よりも周方向D3の一方側に位置している。第2シュラウド44の一方側側面44a及び他方側側面44bのそれぞれは、径方向D2におけるロータディスク14側とは反対側(外側)に向いている。第2シュラウド44は、軸線方向D1視において、対称形状を有している。第2動翼40の先端部42は、第2シュラウド44の周方向D3の中央部に位置している。
【0034】
第3タービン動翼2Cは、第3動翼60および第3動翼60の先端部62に設けられる第3シュラウド64を含む。第3動翼60は、第2動翼40に対して周方向D3の一方側に隣接して配置される。周方向D3において、第2動翼40と第3動翼60との間には燃焼ガスG3が流通する空間が形成されている。第3動翼60は、周方向延在部18の外周面に取り付けられ、この周方向延在部18の外周面から径方向D2の外側に延びる。第3シュラウド64は、板形状を有しており、第3動翼60の先端部62から周方向D3の両側に延びている。
【0035】
第1実施形態では、第3シュラウド64の周方向D3の一方側の一方側側面64aは、径方向D2の外側の外側端e9が径方向D2の内側の内側端e10よりも周方向D3の一方側に位置している。第3シュラウド64の周方向D3の他方側の他方側側面64bは、径方向D2の外側の外側端e11が径方向D2の内側の内側端e12よりも周方向D3の他方側に位置している。第3シュラウド64の一方側側面64a及び他方側側面64bのそれぞれは、径方向D2におけるロータディスク14側(内側)に向いている。第3シュラウド64は、軸線方向D1視において、対称形状を有している。第3動翼60の先端部62は、第3シュラウド64の周方向D3の中央部に位置している。
【0036】
第1実施形態では、第1動翼20、第2動翼40、及び第3動翼60のそれぞれは、互いに同一の形状を有するように構成されている。さらに、第1動翼20、第2動翼40、及び第3動翼60のそれぞれは、同一の材料で構成されている。
【0037】
第1実施形態に係る第1シュラウド24の一方側側面24a、第2シュラウド44の他方側側面44b、第2シュラウド44の一方側側面44a及び第3シュラウド64の他方側側面64bのそれぞれの形成方法の一例について説明する。
図3は、第1実施形態に係るタービン1の形成方法の一例を説明するための図である。
【0038】
第1実施形態では、タービン1は、第1タービン動翼2A、第2タービン動翼2B、第3タービン動翼2C、及びロータディスク14を、例えば鋳造によって一体に構成するブリスク構造を適用している。この場合、
図3に例示するように、第1シュラウド24、第2シュラウド44、及び第3シュラウド64は、全体で一部品(一体型シュラウド70)として一体構成される。
【0039】
第1シュラウド24の一方側側面24a及び第2シュラウド44の他方側側面44bのそれぞれは、一体型シュラウド70の第1切断ラインC1を切断した第1切断面72からなる。この切断によって、第1シュラウド24の一方側側面24aと第2シュラウド44の他方側側面44bとの間には隙間が形成されてもよいし、第1シュラウド24の一方側側面24aと第2シュラウド44の他方側側面44bとは互いに接触している状態であってもよい。
【0040】
第1切断ラインC1は、直線状に延びており、一体型シュラウド70の第1動翼20の先端部22が接続される部分(第1シュラウド24の中央部)と第2動翼40の先端部42が接続される部分(第2シュラウド44の中央部)との間を通過している。第1切断ラインC1は、周方向D3において、第2シュラウド44の中央部よりも第1シュラウド24の中央部に近い。つまり、周方向D3における第1シュラウド24の長さは、周方向D3における第2シュラウド44の長さより短い。よって、第2シュラウド44は第1シュラウド24よりも大きな体積を有し、第1シュラウド24よりも重い。
【0041】
第2シュラウド44の一方側側面44a及び第3シュラウド64の他方側側面64bのそれぞれは、一体型シュラウド70の第2切断ラインC2を切断した第2切断面74からなる。この切断によって、第2シュラウド44の一方側側面44aと第3シュラウド64の他方側側面64bとの間には隙間が形成されてもよいし、第2シュラウド44の一方側側面44aと第3シュラウド64の他方側側面64bとは互いに接触している状態であってもよい。
【0042】
第2切断ラインC2は、直線状に延びており、一体型シュラウド70の第2動翼40の先端部42が接続される部分(第2シュラウド44の中央部)と第3動翼60の先端部62が接続される部分(第3シュラウド64の中央部)との間を通過している。第2切断ラインC2は、周方向D3において、第2シュラウド44の中央部よりも第3シュラウド64の中央部に近い。つまり、周方向D3における第3シュラウド64の長さは、周方向D3における第2シュラウド44の長さより短い。よって、第2シュラウド44は第3シュラウド64よりも大きな体積を有し、第3シュラウド64よりも重い。
【0043】
尚、第1シュラウド24の他方側側面24b、及び第3シュラウド64の一方側側面64aは、一体型シュラウド70の切断によって形成されてもよい。この場合、一体型シュラウド70は、第1シュラウド24の他方側側面24bの形成部分よりも周方向D3の他方側に延び、且つ、第3シュラウド64の一方側側面64aよりも周方向D3の一方側に延びている。幾つかの実施形態では、第1シュラウド24の他方側側面24b、及び第3シュラウド64の他方側側面64bは、一体型シュラウド70の作成(鋳造)と同時に形成されてもよい。
【0044】
図4は、
図2に示す第1シュラウド24の一方側側面24aの周辺を拡大した図である。
図5は、
図2に示す第2シュラウド44の一方側側面44aの周辺を拡大した図である。
【0045】
第1実施形態では、
図4に例示するように、第1シュラウド24の一方側側面24a及び第2シュラウド44の他方側側面44bのそれぞれは、全体が平坦面からなる平面形状を有している。
【0046】
第1シュラウド24の一方側側面24aの一部24a1と、第2シュラウド44の他方側側面44bの一部44b1とが、周方向D3において互いに重複する領域を第1重複領域R1とする。
図4に例示するように、第1重複領域R1において、第1シュラウド24の一方側側面24aは第2シュラウド44の他方側側面44bに対して径方向D2の外側に位置している。
【0047】
第1実施形態では、
図5に例示するように、第2シュラウド44の一方側側面44a及び第3シュラウド64の他方側側面64bのそれぞれは、全体が平坦面からなる平面形状を有している。
【0048】
第2シュラウド44の一方側側面44aの一部44a1と、第3シュラウド64の他方側側面64bの一部64b1とが、周方向D3において互いに重複する領域を第2重複領域R2とする。
図5に例示するように、第2重複領域R2において、第2シュラウド44の一方側側面44aは第3シュラウド64の他方側側面64bに対して径方向D2の外側に位置している。
【0049】
(作用・効果)
第1実施形態に係るタービン1の作用・効果について説明する。第1実施形態によれば、第2シュラウド44は第1シュラウド24より重いので、タービン1の運転中において、第2動翼40に作用する遠心力は、第1動翼20に作用する遠心力よりも大きい。このため、第2動翼40は第1動翼20よりも径方向D2に沿って長く伸びる。そして、第1重複領域R1において、第1シュラウド24の一方側側面24aは第2シュラウド44の他方側側面44bに対して径方向D2の外側に位置しているので、第2シュラウド44の他方側側面の一部44b1が第1シュラウド24の一方側側面24aの一部24a1に接触する状態、又は押圧する状態となる。よって、第1タービン動翼2A又は第2タービン動翼2Bのうちの一方又は両方が振動する際に、第2シュラウド44の他方側側面44bの一部44b1を第1シュラウド24の一方側側面24aの一部24a1に摺動させ、摩擦による高い減衰効果を得ることができる。
【0050】
第1実施形態によれば、第1シュラウド24と第2シュラウド44とは互いに異なる形状を有することになるので、タービン1の運転中における第1タービン動翼2Aの静的な変形性状と第2タービン動翼2Bの静的な変形性状とは互いに異なる。このため、第1タービン動翼2Aと第2タービン動翼2Bとは固有振動数が互いに不均一になり、タービン1に対して、いわゆるミスチューン構造を採用し、タービン1の振動を抑制することができる。
【0051】
第1実施形態によれば、第2シュラウド44は第3シュラウド64より重いので、タービン1の運転中において、第2動翼40に作用する遠心力は、第3動翼60に作用する遠心力よりも大きい。このため、第2動翼40は第3動翼60よりも径方向D2に沿って長く伸びる。そして、第2重複領域R2において、第3シュラウド64の他方側側面64bは第2シュラウド44の一方側側面44aに対して径方向D2の外側に位置しているので、第2シュラウド44の一方側側面44aの一部44a1が第3シュラウド64の他方側側面64bの一部64b1に接触する状態、又は押圧する状態となる。よって、第2タービン動翼2B又は第3タービン動翼2Cのうちの一方又は両方が振動する際に、第2シュラウド44の一方側側面44aの一部44a1を第3シュラウド64の他方側側面64bの一部64b1に摺動させ、摩擦による高い減衰効果を得ることができる。
【0052】
第1実施形態によれば、一体型シュラウド70を第1切断ラインC1に沿って切断するだけで、第1シュラウド24の一方側側面24a及び第2シュラウド44の他方側側面44bのそれぞれを同時に形成することができる。同様に、一体型シュラウド70を第2切断ラインC2に沿って切断するだけで、第2シュラウド44の一方側側面44a及び第3シュラウド64の他方側側面64bのそれぞれを同時に形成することができる。このため、特許文献1に記載のような別部品(ピン)の作成を必要とする場合と比較して、タービン1の加工の手間を削減することができる。さらに、ピン係合孔にピンを摺動させる特許文献1と比較して摺動面積を大きくすることができるので、特許文献1よりも高い減衰効果を得ることができる。
【0053】
尚、第1実施形態では、複数のタービン動翼2が3枚である場合を例にして説明したが、本開示はこの形態に限定されない。タービン1は、2枚のタービン動翼2、又は4枚以上のタービン動翼2を備えていてもよい。
【0054】
尚、第1実施形態では、共通のロータディスク14に第1タービン動翼2A、第2タービン動翼2B、及び第3タービン動翼2Cが取り付けられている場合を例示したが、本開示はこの形態に限定されない。第1タービン動翼2Aが取り付けられるロータディスク14と第2タービン動翼2Bが取り付けられるロータディスク14とは互いに別体であってもよい。第2タービン動翼2Bが取り付けられるロータディスク14と第3タービン動翼2Cが取り付けられるロータディスク14とは互いに別体であってもよい。
【0055】
尚、第1実施形態では、タービン1は、タービン動翼2とロータディスク14とが一体に構成されるブリスク構造を適用する場合を例にして説明したが、本開示はこの形態に限定されない。タービン動翼2とロータディスク14とは別体に構成されてもよい。
【0056】
尚、第1実施形態では、第1シュラウド24、第2シュラウド44及び第3シュラウドのそれぞれは、軸線方向D1視において対称形状を有しているが、本開示はこの形態に限定されない。第1シュラウド24、第2シュラウド44及び第3シュラウドの何れか1つは、軸線方向D1視において非対称形状を有していてもよい。
【0057】
尚、第1実施形態では、第1シュラウドの一方側側面24aの一部24a1と、第2シュラウドの他方側側面44bの一部44b1とが第1重複領域R1において互いに重複していたが、本開示はこの形態に限定されない。幾つかの実施形態では、第1シュラウドの一方側側面24aの全部と、第2シュラウドの他方側側面44bの全部とが第1重複領域R1において互いに重複している。幾つかの実施形態では、第1シュラウドの一方側側面24aの一部24a1と第2シュラウドの他方側側面44bの全部とが第1重複領域R1において互いに重複している。
【0058】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態に係るタービン1について説明する。第2実施形態に係るタービン1は、第1シュラウド24の一方側側面24aの形状が第1実施形態に係るタービン1とは異なっている。第2実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
(構成)
図6は、第2実施形態に係る第1シュラウド24の一方側側面24aの周辺を拡大した図である。第2実施形態では、
図6に例示するように、第1シュラウド24の一方側側面24aは、径方向D2の内側に面する内向段差面80を含む。第2シュラウド44の他方側側面44bは、径方向D2の外側に面する外向段差面82を含む。
【0060】
第2実施形態では、第1シュラウド24の一方側側面24aは、内向段差面80と、第1内側面81と、第1外側面83と、を含んでいる。第1内側面81は、第1シュラウド24の一方側側面24aの内側端e2から径方向D2の外側に向かって延びている。第1外側面83は、第1シュラウド24の一方側側面24aの外側端e1から径方向D2の内側に向かって延びている。内向段差面80は、周方向D3に沿って延びており、第1内側面81と第1外側面83とを接続している。
【0061】
第2シュラウド44の他方側側面44bは、外向段差面82と、第2内側面85と、第2外側面87と、を含んでいる。第2内側面85は、第2シュラウド44の他方側側面44bの内側端e8から径方向D2の外側に向かって延びている。第2外側面87は、第2シュラウド44の他方側側面44bの外側端e7から径方向D2の内側に向かって延びている。外向段差面82は、周方向D3に沿って延びており、第2内側面85と第2外側面87とを接続している。
【0062】
内向段差面80及び外向段差面82のそれぞれは、全体が平坦面からなる平面形状を有している。内向段差面80及び外向段差面82は、軸線方向D1に沿って互いに平行に延びている。内向段差面80は、第1重複領域R1に含まれる一方側側面24aの一部24a1を含んでいる。外向段差面82は、第1重複領域R1に含まれる他方側側面44bの一部44b1を含んでいる。
【0063】
(作用・効果)
第2実施形態に係るタービン1の作用・効果について説明する。第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して、タービン1の運転中における第2シュラウド44の他方側側面44bが第1シュラウド24の一方側側面24aに接触する面積、又は押圧する面積の制御が容易となる。よって、タービン1の振動を意図通りに抑制することができる。
【0064】
尚、第2実施形態では、第1シュラウド24の一方側側面24aが段差状になっている場合について説明したが、第2シュラウド44の一方側側面44aが段差状になっていてもよい。
【0065】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態に係るタービン1について説明する。第3実施形態に係るタービン1は、第1実施形態に係るタービン1の構成をさらに限定したものである。第3実施形態において、第1実施形態の構成要件と同じものは同じ参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
(構成)
図7は、第3実施形態に係る第1動翼20の内部構成と第2動翼40の内部構成とを概略的に示す図である。
【0067】
第3実施形態では、
図7に例示するように、第1動翼20の内部には、第1動翼20を冷却するための第1冷媒F1が流通する第1冷却流路90が形成されている。第1冷却流路90の入口及び出口は、径方向D2において第1動翼20の先端部22とは反対側の第1動翼20の翼根部23に形成されている。第2動翼40の内部には、第2動翼40を冷却するための第2冷媒F2が流通する第2冷却流路92が形成されている。第2冷却流路92の入口及び出口は、径方向D2において第1動翼20の先端部22とは反対側の第2動翼40の翼根部43に形成されている。第2冷媒F2は、第1冷媒F1と同じ冷媒である。
【0068】
第1冷却流路90を画定する第1冷却面91は、第2冷却流路92を画定する第2冷却面93よりも面積が大きい。第3実施形態では、第1冷却流路90が第2冷却流路92より長くなっている。幾つかの実施形態では、第1冷却流路90は、第2冷却流路92より流路断面が大きくなっている。
【0069】
(作用・効果)
第3実施形態に係るタービン1の作用・効果について説明する。第3実施形態によれば、第1冷却面91は第2冷却面93よりも面積が大きいので、第2動翼40に作用する熱膨張は第1動翼20に作用する熱膨張よりも大きい。つまり、第2動翼40は、第1動翼20よりも熱膨張によって径方向D2に沿って長く延びる。このため、第2動翼40に作用する遠心力と第1動翼20に作用する遠心力の大きさの違いだけでなく、第2動翼40に作用する熱膨張と第1動翼20に作用する熱膨張の大きさの違いも利用して、タービン1の運転中に第2シュラウド44の他方側側面44bの一部44b1を第1シュラウド24の一方側側面24aの一部24a1に摺動させることになる。よって、摩擦によるさらに高い減衰効果を得ることができる。
【0070】
尚、
図7に例示して説明した第3実施形態に係る第1動翼20及び第2動翼40の構成は、第2実施形態に係るタービン1に適用されてもよい。
【0071】
<第4実施形態>
(構成)
本開示の第4実施形態に係るタービン1について説明する。
図8は、第4実施形態に係るタービン1の構成を概略的に示す図である。
図8には、
図1のタービン動翼列10に含まれる2枚のタービン動翼2が図示されている。
【0072】
第4実施形態では、
図8に例示するように、タービン1は、タービンロータ3に固定されるロータディスク14を含む。ロータディスク14は、例えば、タービンロータ3の外周面に形成された穴に嵌め込まれることでタービンロータ3に固定される。幾つかの実施形態では、ロータディスク14は、ボルトのような締結具によって、タービンロータ3に固定される。
【0073】
複数のタービン動翼2は、第4タービン動翼2D(2)と、第5タービン動翼2E(2)と、を含む。
【0074】
第4タービン動翼2Dは、第4動翼200および第4動翼200の先端部202に設けられる第4シュラウド204を含む。第4動翼200は、ロータディスク14から径方向D2の外側に延びる。第4シュラウド204は、板形状を有しており、第4動翼200の先端部202から周方向D3の両側に延びている。
【0075】
第5タービン動翼2Eは、第5動翼210および第5動翼210の先端部212に設けられる第5シュラウド214を含む。第5動翼210は、第4動翼200に対して周方向D3の一方側に隣接して配置される。第5動翼210は、ロータディスク14から径方向D2の外側に延びる。周方向D3において、第4動翼200と第5動翼210との間には燃焼ガスG3が流通する空間が形成されている。第5シュラウド214は、板形状を有しており、第5動翼210の先端部212から周方向D3の両側に延びている。
【0076】
第4実施形態では、第4動翼200、第5動翼210のそれぞれは、互いに同一の形状を有するように構成されている。さらに、第4動翼200、第5動翼210のそれぞれは、同一の材料で構成されている。
【0077】
第4実施形態では、タービン1は、第4タービン動翼2D、第5タービン動翼2E、及びロータディスク14を、互いに別体とする構成を採用している。ロータディスク14は、嵌合などの機械的な接続方法によって第4タービン動翼2Dや第5タービン動翼2Eが取り付けられるようになっている。
【0078】
第4シュラウド204の一方側側面204aと、第5シュラウド214の他方側側面214bとが、周方向D3において互いに重複する領域を第3重複領域R3とする。
図8に例示するように、第3重複領域R3において、第4シュラウド204の一方側側面204aは第5シュラウド214の他方側側面214bに対して径方向D2の外側に位置している。
【0079】
図9は、第4実施形態に係る第4動翼200の内部構成と第5動翼210の内部構成とを概略的に示す図である。
【0080】
第4実施形態では、
図9に例示するように、第4動翼200の内部には、第4動翼200を冷却するための第4冷媒F4が流通する第4冷却流路206が形成されている。第4冷却流路206の入口及び出口は、径方向D2において第4動翼200の先端部202とは反対側の第4動翼200の翼根部203に形成されている。第5動翼210の内部には、第5動翼210を冷却するための第5冷媒F5が流通する第5冷却流路216が形成されている。第5冷却流路216の入口及び出口は、径方向D2において第5動翼210の先端部212とは反対側の第5動翼210の翼根部213に形成されている。第5冷媒F5は、第4冷媒F4と同じ冷媒である。
【0081】
第4冷却流路206を画定する第4冷却面207は、第5冷却流路216を画定する第5冷却面217よりも面積が大きい。第4実施形態では、第4冷却流路206が第5冷却流路216より長くなっている。幾つかの実施形態では、第4冷却流路206は、第5冷却流路216より流路断面が大きくなっている。
【0082】
(作用・効果)
第4実施形態に係るタービン1の作用・効果について説明する。第4実施形態によれば、第4冷却面207は第5冷却面217よりも面積が大きいので、タービン1の運転中において、第5動翼210に作用する熱膨張による第5動翼210の伸びは、第4動翼200に作用する熱膨張による第4動翼200の伸びよりも大きい。そして、第3重複領域R3において、第4シュラウド204の一方側側面204aは第5シュラウド214の他方側側面214bに対して径方向D2の外側に位置しているので、第5シュラウド214の他方側側面214bが第4シュラウド204の一方側側面204aに接触する状態、又は押圧する状態となる。よって、第4タービン動翼2D又は第5タービン動翼2Eのうちの一方又は両方が振動する際に、第5シュラウド214の他方側側面214bを第4シュラウド204の一方側側面204aに摺動させ、摩擦による高い減衰効果を得ることができる。
【0083】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0084】
[1]本開示に係るタービン(1)は、
ロータ(3)と、
前記ロータの周方向(D3)に沿って配置される複数のタービン翼(2)と、を備え、
前記複数のタービン翼は、第1動翼(20)および前記第1動翼の先端部(22)に設けられる第1シュラウド(24)を含む第1タービン翼(2A)と、前記第1動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第2動翼(40)および前記第2動翼の先端部(42)に設けられる第2シュラウド(44)を含む第2タービン翼(2B)と、を含み、
前記第1シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面(24a)の少なくとも一部(24a1)と、前記第2シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面(44b)の少なくとも一部(44b1)とが、前記周方向において重複する重複領域(R1)において、前記一方側側面は前記他方側側面に対して径方向(D2)の外側に位置しており、
前記第2シュラウドは、前記第1シュラウドより重い。
【0085】
上記[1]に記載の構成によれば、第2シュラウドは第1シュラウドより重いので、タービンの運転中において、第2動翼に作用する遠心力は、第1動翼に作用する遠心力よりも大きい。このため、第2動翼は第1動翼よりも径方向に沿って長く伸びる。そして、重複領域において、第1シュラウドの一方側側面は第2シュラウドの他方側側面に対して径方向の外側に位置しているので、第2シュラウドの他方側側面の少なくとも一部が第1シュラウドの一方側側面の少なくとも一部に接触する状態、又は押圧する状態となる。よって、第1タービン翼又は第2タービン翼のうちの一方又は両方が振動する際に、第2シュラウドの他方側側面の少なくとも一部を第1シュラウドの一方側側面の少なくとも一部に摺動させ、摩擦による高い減衰効果を得ることができる。
【0086】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]に記載の構成において、
前記周方向における前記第1シュラウドの長さは、前記周方向における前記第2シュラウドの長さより短い。
【0087】
上記[2]に記載の構成によれば、第1シュラウドと第2シュラウドとは互いに異なる形状を有することになるので、タービンの運転中における第1タービン翼の静的な変形性状と第2タービン翼の静的な変形性状とは互いに異なる。このため、第1タービン翼と第2タービン翼とは固有振動数が互いに不均一になり、タービンに対して、いわゆるミスチューン構造を採用し、タービンの振動を抑制することができる。
【0088】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]に記載の構成において、
前記一方側側面及び前記他方側側面のそれぞれは、前記第1シュラウドと前記第2シュラウドとが一体構成された一体型シュラウド(70)を切断した切断面(72)からなる。
【0089】
上記[3]に記載の構成によれば、一体型シュラウドを切断するだけで、一方側側面及び他方側側面のそれぞれを同時に形成することができるので、特許文献1に記載のような別部品(ピン)の作成を必要とする場合と比較して、タービンの加工の手間を削減することができる。
【0090】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記一方側側面及び前記他方側側面のそれぞれは全体が平坦面からなる平面形状を有している。
【0091】
上記[4]に記載の構成によれば、シンプルな構成で重複領域を形成するとともに、一方側側面を他方側側面に対して径方向の外側に位置させることができる。
【0092】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]から[3]の何れか1つに記載の構成において、
前記一方側側面は、前記径方向の内側に面する内向段差面(80)を含み、
前記他方側側面は、前記径方向の外側に面する外向段差面(82)を含む。
【0093】
上記[5]に記載の構成によれば、上記[4]に記載の構成と比較して、タービンの運転中における他方側側面が一方側側面に接触する面積、又は押圧する面積の制御が容易となる。
【0094】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]から[5]の何れか1つに記載の構成において、
前記複数のタービン翼は、前記第2動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第3動翼(60)および前記第3動翼の先端部(62)に設けられる第3シュラウド(64)を含む第3タービン翼(2C)をさらに含み、
前記第2シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面(44a)の少なくとも一部(44a1)と、前記第3シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面(64b)の少なくとも一部(64b1)とが、前記周方向において重複する第2重複領域(R2)において、前記第3シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面は前記第2シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面に対して径方向の外側に位置しており、
前記第2シュラウドは、前記第3シュラウドより重い。
【0095】
上記[6]に記載の構成によれば、第2シュラウドは第3シュラウドより重いので、タービンの運転中において、第2動翼に作用する遠心力は、第3動翼に作用する遠心力よりも大きい。このため、第2動翼は第3動翼よりも径方向に沿って長く伸びる。そして、第2重複領域において、第3シュラウドの他方側側面は第2シュラウドの一方側側面に対して径方向の外側に位置しているので、第2シュラウドの一方側側面の少なくとも一部が第3シュラウドの他方側側面の少なくとも一部に接触する状態、又は押圧する状態となる。よって、第2タービン翼又は第3タービン翼のうちの一方又は両方が振動する際に、第2シュラウドの一方側側面の少なくとも一部を第3シュラウドの他方側側面の少なくとも一部に摺動させ、摩擦による高い減衰効果を得ることができる。
【0096】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]から[6]の何れか1つに記載の構成において、
前記第1動翼の内部には、前記第1動翼を冷却するための冷媒(F1)が流通する第1冷却流路(90)が形成されており、
前記第2動翼の内部には、前記第2動翼を冷却するための冷媒(F2)が流通する第2冷却流路(92)が形成されており、
前記第1冷却流路を画定する第1冷却面(91)は、前記第2冷却流路を画定する第2冷却面(93)よりも面積が大きい。
【0097】
上記[7]に記載の構成によれば、第2動翼に作用する遠心力と第1動翼に作用する遠心力の大きさの違いだけでなく、第2動翼に作用する熱膨張と第1動翼に作用する熱膨張の大きさの違いも利用して、タービンの運転中に第2シュラウドの他方側側面の少なくとも一部を第1シュラウドの一方側側面の少なくとも一部に摺動させる。このため、摩擦によるさらに高い減衰効果を得ることができる。
【0098】
[8]本開示に係るタービンは、
ロータ(3)と、
前記ロータの周方向(D3)に沿って配置される複数のタービン翼(2)と、を備え、
前記複数のタービン翼は、第1動翼(200)および前記第1動翼の先端部(202)に設けられる第1シュラウド(204)を含む第1タービン翼(2D)と、前記第1動翼に対して前記ロータの周方向の一方側に隣接して配置される第2動翼(210)および前記第2動翼の先端部(212)に設けられる第2シュラウド(214)を含む第2タービン翼(2E)と、を含み、
前記第1シュラウドの前記周方向の前記一方側の一方側側面(204a)の少なくとも一部と、前記第2シュラウドの前記周方向の他方側の他方側側面(214b)の少なくとも一部とが、前記周方向において重複する重複領域(R3)において、前記一方側側面は前記他方側側面に対して径方向(D2)の外側に位置しており、
前記第1動翼の内部には、前記第1動翼を冷却するための冷媒(F4)が流通する第1冷却流路(206)が形成されており、
前記第2動翼の内部には、前記第2動翼を冷却するための冷媒(F5)が流通する第2冷却流路(216)が形成されており、
前記第1冷却流路を画定する第1冷却面(207)は、前記第2冷却流路を画定する第2冷却面(217)よりも面積が大きい。
【0099】
上記[8]に記載の構成によれば、第1冷却面は第2冷却面よりも面積が大きいので、タービンの運転中において、第2動翼に作用する熱膨張による第2動翼の伸びは、第1動翼に作用する熱膨張による第1動翼の伸びよりも大きい。そして、重複領域において、第1シュラウドの一方側側面は第2シュラウドの他方側側面に対して径方向の外側に位置しているので、第2シュラウドの他方側側面の少なくとも一部が第1シュラウドの一方側側面の少なくとも一部に接触する状態、又は押圧する状態となる。よって、第1タービン翼又は第2タービン翼のうちの一方又は両方が振動する際に、第2シュラウドの他方側側面の少なくとも一部を第1シュラウドの一方側側面の少なくとも一部に摺動させ、摩擦による高い減衰効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0100】
1 タービン
2 タービン動翼
2A 第1タービン動翼
2B 第2タービン動翼
2C 第3タービン動翼
2D 第4タービン動翼
2E 第5タービン動翼
3 タービンロータ
14 ロータディスク
20 第1動翼
22 第1動翼の先端部
24 第1シュラウド
24a 第1シュラウドの一方側側面
24a1 第1シュラウドの一方側側面の一部
40 第2動翼
42 第2動翼の先端部
44 第2シュラウド
44a 第2シュラウドの一方側側面
44a1 第2シュラウドの一方側側面の一部
44b 第2シュラウドの他方側側面
44b1 第2シュラウドの他方側側面の一部
60 第3動翼
62 第3動翼の先端部
64 第3シュラウド
64b 第3シュラウドの他方側側面
64b1 第3シュラウドの他方側側面の一部
70 一体型シュラウド
72 第1切断面
74 第2切断面
80 内向段差面
82 外向段差面
90 第1冷却流路
91 第1冷却面
92 第2冷却流路
93 第2冷却面
200 第4動翼
202 第4動翼の先端部
204 第4シュラウド
204a 第4シュラウドの一方側側面
206 第4冷却流路
207 第4冷却面
210 第5動翼
212 第5動翼の先端部
214 第5シュラウド
214b 第5シュラウドの他方側側面
216 第5冷却流路
217 第5冷却面
C1 第1切断ライン
C2 第2切断ライン
D1 軸線方向
D2 径方向
D3 周方向
F1 第1冷媒
F2 第2冷媒
F4 第4冷媒
F5 第5冷媒
O 軸線
R1 第1重複領域
R2 第2重複領域
R3 第3重複領域