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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119107
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230821BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230821BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230821BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230821BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20230821BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08L15/00
C08L33/04
C08L45/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021769
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】喜夛 裕
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA12
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC034
4J002AC112
4J002BB073
4J002BK004
4J002DJ016
4J002FA083
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】氷上性能と耐摩耗性能とを高度に両立することを可能にしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対し、白色充填剤を30質量部以上、ガラス転移温度が-70℃~0℃である粒子を0.5~30質量部配合し、粒子として、単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマー80質量%~99.5質量%、ジエン系モノマー0.1質量%~5質量%、および多官能ビニル系モノマー0.4質量%~15質量%を含むモノマー混合物の重合体からなるものを使用する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、白色充填剤を30質量部以上、ガラス転移温度が-70℃~0℃である粒子を0.5~30質量部配合してなるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物であって、
前記粒子が、モノマー(A)、モノマー(B)、およびモノマー(C)を含むモノマー混合物の重合体からなり、
前記モノマー(A)は、単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであり、
前記モノマー(B)は、ジエン系モノマーであり、
前記モノマー(C)は、前記モノマー(B)以外の多官能ビニル系モノマーであり、
前記モノマー混合物に占める前記モノマー(A)の質量割合が80質量%~99.5質量%であり、前記モノマー混合物に占める前記モノマー(B)の質量割合が0.1質量%~5質量%であり、前記モノマー混合物に占める前記モノマー(C)の質量割合が0.4質量%~15質量%であることを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエン系ゴムがポリブタジエンゴムおよび天然ゴムを含み、前記ポリブタジエンゴムの含有量100質量%に対して天然ゴムの含有量が30質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記モノマー(B)が、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ有し、重量平均分子量500~50000であり、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1または2に記載のスタットレスタイヤ用ゴム組成物。
1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3は(メタ)アクリロイル基であり、R2はジエンを構成単位として有する重合体鎖を含む構造である。)
【請求項4】
前記粒子の平均粒子径が3μm~70μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
ガラス転移温度が-60℃以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
重量平均分子量1000~100000の液状ポリマーを更に含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ジエン系ゴムが更に末端変性ジエン系ゴムを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
芳香族変性テルペン樹脂を更に含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を成形したことを特徴とするスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてスタッドレスタイヤのトレッド部に使用することを意図したタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤの氷上性能を向上させるため、トレッドゴムの表面粗さ(凹凸)を大きくすることが知られている。トレッドゴムの表面粗さを大きくすると、凹部が氷上に存在する水膜を取り込み、凸部が氷上面と接触することで、平滑な表面を備えたトレッドゴムより氷上面との接触面積を大きくする効果があると考えられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、トレッドゴムを構成するゴム組成物に、特定の性状を有する樹脂粒子(アクリル樹脂)を配合することを提案している。この提案では、樹脂粒子が配合されていることでトレッドゴム表面に微細な凹凸が形成され、氷上性能を向上することができる。しかしながら、単純に樹脂粒子を配合しただけでは、走行中にトレッドゴムから樹脂粒子が脱落し、所望の氷上性能が得られなかったり、耐摩耗性を確保できなくなる虞がある。そのため、ゴム組成物に樹脂粒子を配合して氷上性能を確保するにあたって、優れた氷上性能を発揮しながら、耐摩耗性を確保する対策が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018‐123209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、氷上性能と耐摩耗性能とを高度に両立することを可能にしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、白色充填剤を30質量部以上、ガラス転移温度が-70℃~0℃である粒子を0.5~30質量部配合してなるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物であって、前記粒子が、モノマー(A)、モノマー(B)、およびモノマー(C)を含むモノマー混合物の重合体からなり、前記モノマー(A)は、単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーであり、前記モノマー(B)は、ジエン系モノマーであり、前記モノマー(C)は、前記モノマー(B)以外の多官能ビニル系モノマーであり、前記モノマー混合物に占める前記モノマー(A)の質量割合が80質量%~99.5質量%であり、前記モノマー混合物に占める前記モノマー(B)の質量割合が0.1質量%~5質量%であり、前記モノマー混合物に占める前記モノマー(C)の質量割合が0.4質量%~15質量%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、上述のモノマー混合物の重合体からなり、ガラス転移温度が-70℃~0℃である粒子が配合されているので、氷上性能および耐摩耗性能を従来レベル以上に向上することができる。特に、この粒子が単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーおよび多官能ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の重合体からなるものであることで、粒子の柔軟性や潰れにくさを確保することができ、タイヤに使用したときに氷上性能を効果的に発揮することができると考えられる。更に、モノマー混合物は単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーおよび多官能ビニル系モノマーだけでなく、ジエン系モノマーを含むため、得られる粒子はゴム組成物の主成分となるジエン系ゴムに対して親和性が良好になり、粒子はゴム組成物中から脱落しにくくなり、氷上性能を確実に発揮し、且つ、耐摩耗性能を向上することができると考えられる。尚、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
【0008】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物においては、ジエン系ゴムがブタジエンゴムおよび天然ゴムを含み、ブタジエンゴムの含有量100質量部に対して天然ゴムの含有量が30質量部以上であることが好ましい。このようにブタジエンゴムに対して十分な量の天然ゴムを含むことで、氷上性能および耐摩耗性能を両立するには有利になる。
【0009】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物においては、モノマー(B)が、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ有し、重量平均分子量500~50000であり、下記一般式(1)で示されるものであると好ましい。下記一般式(1)で示される化合物は、分子中にポリブタジエン骨格のような反応性炭素-炭素二重結合を有するためゴム組成物の主成分となるジエン系ゴムに対する親和性を高めるには有利である。その一方で、より反応性の高い官能基である(メタ)アクリロイル基を有することで前述の反応性炭素-炭素二重結合が粒子作製時の重合反応で反応に使用されないので、ゴム組成物において効果的にジエン系ゴムに対する親和性を高めることができる。
1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3は(メタ)アクリロイル基であり、R2はジエンを構成単位として有する重合体鎖を含む構造である。)
【0010】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物においては、粒子の平均粒子径が3μm~70μmであることが好ましい。これにより、氷上性能および耐摩耗性能を両立するには有利になる。
【0011】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が-60℃以下であることが好ましい。これにより、氷上性能および耐摩耗性能を両立するには有利になる。
【0012】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、重量平均分子量が1000~100000である液状ポリマーをさらに含むことが好ましい。また、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、末端変性ジエン系ゴムをさらに含むことが好ましい。更に、本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂をさらに含むことが好ましい。このような配合にすることで、氷上性能および耐摩耗性能を両立するには有利になる。
【0013】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッド部に用いることができる。本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を成型したスタッドレスタイヤは、前述のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の物性によって、氷上性能および耐摩耗性能を効果的に発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムであり、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴム、スチレン‐イソプレンゴム、スチレン‐イソプレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム等を用いることができる。なかでも、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン‐ブタジエンゴムが好ましく、天然ゴム、ブタジエンゴムが特に好ましい。
【0015】
天然ゴムおよびブタジエンゴムを用いる場合、天然ゴムおよびブタジエンゴムの合計100質量部中に、ブタジエンゴムを好ましくは20質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~70質量%含むとよい。また、天然ゴムおよびブタジエンゴムの合計100質量部中に、天然ゴムを好ましくは20質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~70質量%含むとよい。このとき、ブタジエンゴムの含有量100質量%に対して天然ゴムの含有量が好ましくは30質量%以上、より好ましくは60質量%~300質量%であるとよい。このようにゴム成分を天然ゴムおよびブタジエンゴムで構成し、これらを所定の配合で含有させることで、氷上性能と耐摩耗性を両立させることができる。ブタジエンゴムの含有量100質量部に対する天然ゴムの含有量が30質量%未満であると耐摩耗性が低下する。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ジエン系ゴムは、分子鎖の片末端または両末端が官能基を有する有機化合物で変性された末端変性ジエン系ゴムを含んでいてもよい。末端変性ジエン系ゴムとしては、末端変性ブタジエンゴムまたは末端変性スチレンブタジエンゴムを例示することができる。また、分子鎖の末端を変性する官能基としては、例えばアルコキシシリル基、ヒドロキシル基(水酸基)、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イミノ基、アルコキシル基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基、シロキサン結合基を挙げることができる。なかでもシロキサン、アルコキシシリル、ヒドロキシル基(水酸基)を好適に用いることができる。尚、前述のシロキサン結合基とは、-O-Si-O-構造を有する官能基である。
【0017】
上述したジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は-50℃以下であることが好ましく、更に好ましくは-100℃~-60℃であると良い。ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度を-50℃以下にすることにより、低温下でのゴムコンパウンドのしなやかさを維持し、氷面に対する凝着力を高くするので、スタッドレスタイヤのトレッド部に好適に使用することができる。なおガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。また、ジエン系ゴムが油展品であるときは、油展成分(オイル)を含まない状態におけるジエン系ゴムのガラス転移温度とする。また、平均ガラス転移温度とは、各ジエン系ゴムのガラス転移温度に各ジエン系ゴムの質量分率を乗じた合計(ガラス転移温度の加重平均値)である。なお、すべてのジエン系ゴムの質量分率の合計を1とする。
【0018】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は白色充填剤を必ず含有する。白色充填剤として、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムを挙げることができる。これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。なかでもシリカが好ましく氷上性能をより優れたものにすることができる。シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0019】
白色充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し30質量部以上、好ましくは35質量部~80質量部である。白色充填剤の配合量を30質量部以上にすることによりゴム組成物の機械的特性を改良し耐摩耗性を向上することができる。また白色充填剤の配合量を35質量部~80質量部にすることにより、ゴム組成物の機械的特性を改良し耐摩耗性を向上するだけでなく、ゴム組成物のしなやかさを維持し氷上性能を効果的に確保することができる。白色充填剤の配合量が30質量部未満であると、ゴム組成物の機械的特性を十分に確保することが難しくなる。
【0020】
シリカのCTAB吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは80m2 /g~260m2 /g、より好ましくは140m2 /g~200m2 /gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積を80m2 /g以上にすることにより、ゴム組成物の耐摩耗性を確保することができる。またシリカのCTAB吸着比表面積を200m2 /g以下にすることにより、ウェット性能および低転がり抵抗性を良好にすることができる。本明細書において、シリカのCTAB比表面積は、ISO 5794により測定された値とする。
【0021】
本発明では、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましい。シランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を向上し、耐摩耗性および氷上性能のバランスをより高くすることができる。
【0022】
シランカップリング剤の種類は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ビス‐(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3‐トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ‐メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3‐オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤を例示することができる。
【0023】
シランカップリング剤を配合する場合、その配合量は、シリカの質量に対し、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5~10質量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量がシリカの質量の3質量%未満であるとシリカの分散を十分に改良することができない。シランカップリング剤の配合量がシリカの質量の15質量%を超えるとシランカップリング剤どうしが縮合し、ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることができない。
【0024】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述の白色充填剤に加えて、更にカーボンブラックを配合してもよい。カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、HMF、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。カーボンブラックの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは3質量部~70質量部、より好ましくは5質量部~60質量部である。カーボンブラックの配合量を3質量部以上にすることによりゴム組成物の機械的特性を改良し耐摩耗性を向上することができる。またカーボンブラックの配合量を70質量部以下にすることにより、ゴム組成物のしなやかさを維持し氷上性能を確保することができる。またタイヤにしたとき質量の増加を抑制することができる。
【0025】
白色充填剤に加えてカーボンブラックも配合する場合、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、好ましくは70m2 /g~240m2 /g、より好ましくは90m2 /g~200m2 /gであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積を70m2 /g以上にすることにより、ゴム組成物の機械的特性および耐摩耗性を確保することができる。またカーボンブラックの窒素吸着比表面積を240m2 /g以下にすることにより、氷上性能を良好にすることができる。本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217‐2に準拠して測定するものとする。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、液状ポリマーを配合することが好ましい。液状ポリマーを配合することで、低温状態のゴム硬度をよりしなやかにし、氷上性能をより優れたものにすることができる。液状ポリマーとして、例えば、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα‐オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα‐オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。液状ポリマーは、上述した液状ポリマーの各種変性物(マレイン酸変性、末端イソシアネート変性、エポキシ変性等)であってもよい。本発明で使用される液状ポリマーは、室温(23℃)で液体である。従って、この温度では固体である前述のジエン系ゴムとは区別される。
【0027】
液状ポリマーを配合する場合、特に、重量平均分子量が好ましくは1000~100000、より好ましくは2000~90000の液状ポリマーを用いるとよい。液状ポリマーの重量平均分子量が1000未満であると老化後の氷上性能が十分に得られない。液状ポリマーの重量平均分子量が100000を超えると氷上性能の向上が十分に得られない。液状ポリマーの配合量は特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは3質量部~80質量部、より好ましくは5質量部~60質量部にするとよい。液状ポリマーの配合量が3質量部未満であると、氷雪上性能を改良する効果が十分に得られない。液状ポリマーの配合量が80質量部を超えると、引張り破断強度が悪化する虞がある。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0028】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂を配合することが好ましい。芳香族変性テルペン樹脂を配合することで、ウェット性能をより向上することができる。これは芳香族変性テルペン樹脂が、シリカ、カーボンブラック等のフィラーの分散性を良好にすると共に、フィラーとゴム成分との相溶性を改良するためと考えられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、α‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテン、リモネンなどのテルペンとスチレン、α‐メチルスチレン、ビニルトルエンのうち少なくとも一つの芳香族化合物とを重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂が例示することができる。
【0029】
芳香族変性テルペン樹脂としては、その軟化点が好ましくは60℃~150℃、好ましくは80℃~130℃である芳香族変性テルペン樹脂を好適に用いることができる。芳香族変性テルペン樹脂の軟化点が60℃未満であると、ウェット性能を改良する効果が十分に得られない。芳香族変性テルペン樹脂の軟化点が150℃を超えると、混合中に溶け残ることが懸念される。芳香族変性テルペン樹脂の軟化点は、JIS K6220‐1(環球法)に基づき測定するものとする。芳香族変性テルペン樹脂の配合量は特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは2質量部~40質量部、より好ましくは3質量部~35質量部にするとよい。芳香族変性テルペン樹脂の配合量が2質量部未満であると、ウェット性能を改良する効果が十分に得られない。芳香族変性テルペン樹脂の配合量が40質量部を超えると、氷雪性能が悪化する虞がある。
【0030】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、後述の粒子を配合することにより、氷上性能および耐摩耗性能を改良する。特定の性状を有する粒子は、例えば架橋性モノマーの存在下、非架橋性モノマーを懸濁重合、シード重合または分散重合により重合させて調製することができる。また、後述の粒子は、ジエン系ゴムに相溶しない粒子であることが好ましい。ここで、「ジエン系ゴムに相溶しない」とは、ジエン系ゴムに包含される全ての種類のゴム成分に対し非相溶という意味ではなく、タイヤ用ゴム組成物に含有された具体的なジエン系ゴムに対し非相溶であればよい。ジエン系ゴムに相溶しない特定の粒子が、ジエン系ゴムと相分離構造を形成することにより、氷上性能を優れたものにすることができる。
【0031】
本発明において用いられる粒子を構成する樹脂は、後述のモノマー(A)、モノマー(B)、およびモノマー(C)を含むモノマー混合物の重合体からなる。
【0032】
本発明において、モノマー(A)は、単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである。単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとは、エチレン性不飽和基を1分子中に1つ有する(メタ)アクリル酸エステルを意味する。単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸アルキルエステルがさらに好ましく、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。尚、(メタ)アクリルとは、アクリル及び/又はメタクリルを意味する。
【0033】
モノマー(A)、即ち、単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは、モノマー混合物中、80質量%~99.5質量%の割合で使用される。このようにモノマー(A)を含むことで、粒子の柔軟性や潰れにくさを確保することができ、タイヤに使用したときに氷上性能を効果的に発揮することができる。モノマー混合物に占める単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの質量割合が80質量%未満であると、ゴム組成物に粒子を添加した際、ソフトな触感を維持しつつ、表面のベト付いた触感をなくすことができない。モノマー混合物に占める単官能(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの質量割合が99.5質量%を超えると、乾燥時、粒子同士が凝集しハンドリング性が悪化する。モノマー(A)の質量割合は、モノマー混合物中、好ましくは85質量%~99質量%、より好ましくは92.5質量%~98質量%である。
【0034】
本発明において、モノマー(B)は、ジエン系モノマーである。ジエン系モノマーとしては、特に、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ有し、重量平均分子量500~50000であり、下記一般式(1)で示されるものを好適に用いることができる。下記一般式(1)で示される化合物は、分子中にポリブタジエン骨格のような反応性炭素-炭素二重結合を有するためゴム組成物の主成分となるジエン系ゴムに対する親和性を高めるには有利である。その一方で、より反応性の高い官能基である(メタ)アクリロイル基を有することで前述の反応性炭素-炭素二重結合が粒子作製時の重合反応で反応に使用されないので、ゴム組成物において効果的にジエン系ゴムに対する親和性を高めることができる。
1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3は(メタ)アクリロイル基であり、R2はジエンを構成単位として有する重合体鎖を含む構造である。)
【0035】
一般式(1)で示されるジエン系モノマーにおいて、(メタ)アクリロイル基が1つ以下であると、粒子の強度が低下する。一般式(1)で示されるジエン系モノマーにおいて、重量平均分子量が500未満であるジエン系ゴムとの親和性を改善することができない。一般式(1)で示されるジエン系モノマーにおいて、重量平均分子量が50000を超えると、ジエン系モノマーの反応性が低下する。尚、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析されるポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。一般式(1)で示されるジエン系モノマーにおいて、その重量平均分子量はより好ましくは600~35000、さらに好ましくは1000~30000、特に好ましくは1500~25000である。
【0036】
一般式(1)で示されるジエン系モノマーにおいて、式中R2が含む重合体鎖が有する構成単位であるジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン;1,4-ヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等の非共役ジエンを例示することができる。これらのジエンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、共役ジエンが好ましく、ブタジエンが特に好ましい。また、一般式(1)で示されるジエン系モノマーとしては、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリイソプレンを主鎖骨格に有するジ(メタ)アクリレートを例示することができる。これらのジエン系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレートが好ましい。尚、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
【0037】
モノマー(B)、即ち、ジエン系モノマーは、モノマー混合物中、0.1質量%~5質量%の割合で使用される。このようにジエン系モノマーを含んでいるため、ゴム組成物の主成分となるジエン系ゴムに対する粒子の親和性が良好になり、粒子はゴム組成物中から脱落しにくくなり、氷上性能を確実に発揮し、且つ、耐摩耗性能を向上することができる。モノマー混合物に占めるジエンモノマーの質量割合が0.1質量%未満であると、ジエン系ゴムに対する親和性を改善することができない。モノマー混合物に占めるジエンモノマーの質量割合が5質量%を超えると、粒子の柔軟性が悪化する。ジエンモノマーの質量割合は、モノマー混合物中、好ましくは0.3質量%~3質量%、より好ましくは0.5質量%~1.5質量%である。
【0038】
本発明において、モノマー(C)は、前述のモノマー(B)以外の多官能ビニル系モノマーである。多官能ビニル系モノマーとは、エチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも2つ以上有するモノマー(架橋剤)を意味する。多官能ビニル系モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル系モノマー;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。これらの多官能ビニル系モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレートが好ましく、エチレングリコールジメタクリレートが特に好ましい。
【0039】
モノマー(C)、即ち、多官能ビニル系モノマーは、モノマー混合物中、0.4質量%~15質量%の割合で使用される。モノマー混合物に占める多官能ビニル系モノマーの質量割合が0.4質量%未満であると、粒子を乾燥させる際、粒子の架橋度が低いことで粒子が凝集しやすくなりハンドリング性が悪化する。モノマー混合物に占める多官能ビニル系モノマーの質量割合が15質量%を超えると、粒子が硬くなり、ゴム組成物に添加した際、ソフトな触感が損なわれる。多官能ビニル系モノマーの質量割合は、モノマー混合物中、好ましくは0.7質量%~12質量%、より好ましくは1質量%~7.5質量%である。
【0040】
本発明において用いられる粒子は、平均粒子径が好ましくは3μm~70μm、より好ましくは5μm~60μmである。粒子の平均粒子径が3μm以上であると氷上面の微小な凹凸に対応するようにトレッドゴムの表面を変形させ氷上性能を改良することができる。粒子の平均粒子径が70μmを超えると、粒子がトレッドゴムの表面から抜け落ちやすくなり耐摩耗性が悪化することがある。本明細書において、粒子の平均粒子径は、1000倍~5000倍で撮像した顕微鏡観察画像から、少なくとも100個の粒子の粒子径を測定した平均値である。尚、粒子の画像が円形でないとき、その投影面積から求められる円相当径を粒子径にすることができる。
【0041】
本発明において用いられる粒子のガラス転移温度は-70℃~0℃、好ましくは-65℃~-10℃、より好ましくは-60℃~-15℃である。粒子のガラス転移温度を0℃以下にすることにより、低温下でのゴムコンパウンドのしなやかさを維持し、氷面に対する凝着力を高くすることができ、スタッドレスタイヤのトレッド部に好適に使用することが可能となる。粒子のガラス転移温度が-70℃未満であると、操安性が悪化する。粒子のガラス転移温度は0℃を超えると、氷上性能が悪化する。尚、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
【0042】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫または架橋するのに使用することができる。これらの配合剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。タイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混練、混合することによって製造することができる。調製されたゴム組成物を通常の方法により、スタッドタイヤのトレッド部に使用して加硫成形することができる。
【0043】
上記のように構成された本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が好ましくは-60℃以下、より好ましくは-100℃~-65℃である。このようなガラス転移温度を有することで、氷上性能を向上するには有利になる。タイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度が-60℃を超えると氷上性能が悪化する。尚、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
【0044】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述のように優れた氷上性能と耐摩耗性能を高度に両立することができる。そのため、スタッドレスタイヤのトレッド部に好適に用いることができる。本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を成型したスタッドレスタイヤは、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物の上述の物性によって、氷上性能および耐摩耗性能を効果的に発揮することができる。
【0045】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0046】
表1,2に記載の組成からなる16種類のタイヤ用ゴム組成物(標準例1、実施例1~11、比較例1~4)を調製するにあたり、硫黄、加硫促進剤、粒子を除く成分を1.7Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、145℃に達したとき放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤、粒子を加えて70℃のオープンロールで混練することにより、16種類のタイヤ用ゴム組成物を得た。
【0047】
得られたタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型(内寸;長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。表1、2には、得られた加硫ゴム試験片を用いて測定した平均ガラス転移温度(平均Tg)および硬度を併記した。尚、平均ガラス転移温度は、各加硫ゴム試験片について、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度として求めた値である。また、硬度は、JIS K6253に準拠して測定した値である。
【0048】
得られた加硫ゴム試験片を使用して、以下に示す試験方法で氷上性能および耐摩耗性能の評価を行った。
【0049】
氷上性能
得られた加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用いて、測定温度-1.5℃、荷重5.5kg/cm2 、ドラム回転速度25km/hの条件で氷上摩擦係数を測定した。得られた氷上摩擦係数を、標準例の値を100とする指数にして、「氷上性能」の欄に示した。この指数値が大きいほど氷上摩擦係数が大きく氷上性能が優れることを意味する。
【0050】
耐摩耗性能
得られた加硫ゴム試験片をJIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、温度20℃、荷重39N、スリップ率30%、時間4分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は標準例の逆数を100にする指数とし、「耐摩耗性」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1~2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、TSR20
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol BR1220
・変性BR:変性ブタジエンゴム、日本ゼオン社製 Nipol BR1250H
・CB:カーボンブラック、キャボットジャパン社製 ショウブラックN339
・白色充填剤:シリカ、ローディア社製 Zeosil 1165MP(CTAB比表面積:159m2/g)
・粒子1:後述の調製方法により得た粒子
・粒子2:後述の調製方法により得た粒子
・粒子3:後述の調製方法により得た粒子
・粒子4:後述の調製方法により得た粒子
・シランカップリング剤:Evonik Degussa社製 Si69
・オイル:昭和シェル石油社製 エキストラクト4号S
・液状ポリマー1:液状ポリブタジエン、クラレ社製 LBR302(重量平均分子量:5500)
・液状ポリマー2:液状SBR、クラレ社製 LSBR841(重量平均分子量:10000)
・オレンジオイル:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製 YSレジンTO125
・老化防止剤:Solutia Europe社製 SANTOFLEX 6PPD
・ワックス:大内新興化学工業社製 パラフィンワックス
・硫黄:鶴見化学工業社製 金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製 ノクセラーCZ‐G
【0054】
粒子1の調製方法
イオン交換水200質量部に、塩化ナトリウム50質量部、シリカ有効成分20質量%であるコロイダルシリカ20質量部および有効濃度50%であるアジピン酸-ジエタノールアミン縮合物の水溶液0.5質量部を加えて混合した後、pHを2.8~3.2に調整することで水性分散媒を調製した。これとは別にn-ブチルアクリレート95質量部、エチレングリコールジメタクリレート3質量部、PEG♯400ジアクリレート1質量部、重量平均分子量が10000であるポリブタジエンジアクリレート1質量部、有効成分70%のジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート3質量部を混合、溶解し油性混合物とした。上記で得られた水性分散媒および油性混合物をTKホモミキサー2.5型(プライミクス社製)で攪拌(8000rpm×1min)して懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度65℃で15時間重合を行い、粒子を含む水性分散液を得た。得られた粒子を含む水性分散液を濾過、乾燥して、粒子1を得た。得られた粒子1は、真球状の粒子であり、平均粒径25μm、ガラス転移温度-39℃であった。
【0055】
粒子2の調製方法
シリカ有効成分20質量%であるコロイダルシリカを30質量部に変更し、n-ブチルアクリレート91質量部、重量平均分子量が10000であるポリブタジエンジアクリレート5質量部に変更する以外は粒子1と同様に調整して、粒子2を得た。得られた粒子2は、真球状の粒子であり、平均粒径12μm、ガラス転移温度-35℃であった。
【0056】
粒子3の調製方法
n-ブチルアクリレート96質量部、重量平均分子量が10000であるポリブタジエンジアクリレートを0質量部に変更する以外は、粒子1と同様に調整して、粒子3を得た。得られた粒子3は、真球状の粒子であり、平均粒径28μm、ガラス転移温度-40℃であった。
【0057】
粒子4の調製方法
n-ブチルアクリレート96質量部、PEG♯400ジアクリレートを0質量部に変更する以外は、粒子1と同様に調整して、粒子4を得た。得られた粒子4は、真球状の粒子であり、平均粒径35μm、ガラス転移温度-41℃であった。
【0058】
尚、得られた粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。また、得られた粒子の平均粒子径は、1000倍~5000倍で撮像した顕微鏡観察画像から、少なくとも100個の粒子の粒子径を測定した平均値である。
【0059】
表1,2から明らかなように、実施例1~11のタイヤ用ゴム組成物は、標準例1よりも良好な氷上性能を発揮しながら、粒子を含まない標準例1と同等以上の優れた耐摩耗性能を発揮し、これら性能を高度に両立した。一方、比較例1~2は、モノマー(B)、即ち、ジエン系モノマーを含まない粒子3を用いているため、耐摩耗性能が悪化した。比較例3は、白色充填剤の配合量が少ないため、耐摩耗性能が悪化した。比較例4は、粒子の配合量が多すぎるため、耐摩耗性能が悪化した。