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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119108
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】スタッドレスタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230821BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20230821BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230821BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20230821BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230821BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K9/10
C08L15/00
C08L45/00
C08L7/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021770
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】喜夛 裕
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA07
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
3D131BC33
4J002AC011
4J002AC032
4J002AC112
4J002BG103
4J002BK004
4J002DD016
4J002FA103
4J002FB286
4J002FD326
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】 氷上性能および耐摩耗性を改良するスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】 ジエン系ゴム100質量部に、熱膨張性マイクロカプセルを10~30質量部配合し、前記熱膨張性マイクロカプセルを構成する外殻が、単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)を含む重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂からなり、前記単官能モノマー(A)がニトリル系モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーを含み、多官能モノマー(B)が2以上の(メタ)アクリロイル基および前記(メタ)アクリロイル基以外の反応性炭素-炭素二重結合を有し、一般式:R-O-R-O-R(式中、RおよびRは(メタ)アクリロイル基、Rは反応性炭素-炭素二重結合を有する重合体鎖を含む構造である。)で表され、重量平均分子量が500~50000である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に、熱膨張性マイクロカプセルを0.3~30質量部配合したスタッドレスタイヤ用ゴム組成物であって、
前記熱膨張性マイクロカプセルを構成する外殻が、単官能モノマー(A)、および多官能モノマー(B)を含む重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂からなり、
前記単官能モノマー(A)がニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有モノマーを含み、
前記多官能モノマー(B)が少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基および前記(メタ)アクリロイル基以外の反応性炭素-炭素二重結合を有し、下記一般式(1)で表され、かつその重量平均分子量が500~50000であることを特徴とする
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
-O-R-O-R (1)
(式中、RおよびRは(メタ)アクリロイル基であり、Rは前記反応性炭素-炭素二重結合を有する重合体鎖を含む構造である。)
【請求項2】
前記重合体鎖が構成単位としてジエンを含み、前記ジエンがブタジエンおよび/またはイソプレンであることを特徴とする請求項1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)の合計100質量%中、前記多官能モノマー(B)が0.1~10.0質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径が20~30μmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
JIS K6253、デュロメータのタイプA、23℃のゴム硬度が60以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
ガラス転移温度が-60℃以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ジエン系ゴムが変性ブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
更に芳香族変性テルペン樹脂を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を成形したことを特徴とするスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、氷上性能および耐摩耗性を改良するスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤの氷上性能を向上させるため、トレッドゴムの表面粗さ(凹凸)を大きくすることが知られている。表面粗さを大きくすると、凹部が氷上に存在する水膜を取り込み、凸部が氷上面と接触することで、平滑な表面を備えたトレッドゴムより氷上面との接触面積を大きくする効果があると考えられる。このためトレッドゴムに発泡剤や熱膨張性マイクロカプセルなどを配合することでゴムの表面粗さを増加させる手法がある(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、従来の発泡剤や熱膨張性マイクロカプセルなどを配合すると、トレッドゴムの破断強度の低下により耐摩耗性が低下することが懸念される。特に、熱膨張性マイクロカプセルを膨張させた殻材がトレッドゴムから抜け落ちたときや、トレッドゴム中の熱膨張性マイクロカプセルの分散性が低いと、破断強度の低下を招き、耐摩耗性が更に悪化することが懸念される。
【0004】
近年、スタッドレスタイヤにおける氷上性能および耐摩耗性の向上に求められる要求はより高度のものとなっており、氷上性能および耐摩耗性のバランスの更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-123209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、氷上性能および耐摩耗性を従来レベル以上に改良するスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に、熱膨張性マイクロカプセルを0.3~30質量部配合したスタッドレスタイヤ用ゴム組成物であって、前記熱膨張性マイクロカプセルを構成する外殻が、単官能モノマー(A)、および多官能モノマー(B)を含む重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂からなり、前記単官能モノマー(A)がニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有モノマーを含み、前記多官能モノマー(B)が少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基および前記(メタ)アクリロイル基以外の反応性炭素-炭素二重結合を有し、下記一般式(1)で表され、かつその重量平均分子量が500~50000であることを特徴とする。
-O-R-O-R (1)
(式中、RおよびRは(メタ)アクリロイル基であり、Rは前記反応性炭素-炭素二重結合を有する重合体鎖を含む構造である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルの殻材を、ニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有モノマーを含む単官能モノマー(A)、および(メタ)アクリロイル基と反応性炭素-炭素二重結合を有する多官能モノマー(B)の共重合体にしたので、熱膨張性マイクロカプセルのジエン系ゴム中への分散性を改良すると共に、ゴムから抜け落ち難くしたので、ゴム強度の低下を抑制し、氷上性能および耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
【0009】
前記重合体鎖は、構成単位としてジエンを含み、前記ジエンがブタジエンおよび/またはイソプレンであるとよい。また、前記単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)の合計100質量%中、前記多官能モノマー(B)が0.1~10.0質量%であるとよい。前記熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径が、20~30μmであるとよい。
【0010】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、JIS K6253、デュロメータのタイプA、23℃のゴム硬度が60以下、および/または、ガラス転移温度が-60℃以下であるとよく、氷上性能をより優れたものにすることができる。前記ジエン系ゴムが変性ブタジエンゴムを含むことが好ましく、更にスタッドレスタイヤ用ゴム組成物が芳香族変性テルペン樹脂を含むことが好ましい。
【0011】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物でトレッド部を成形したスタッドレスタイヤは、氷上性能および耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を組成するジエン系ゴムは、好ましくはポリブタジエンおよび天然ゴムを含む。ポリブタジエンを含むことにより、低温時の柔軟性を確保できる。ポリブタジエンは、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは30質量%以上含有され、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは35~65質量%である。ポリブタジエンを30質量%以上にすると、低温での柔軟性が確保され好ましい。ポリブタジエンは、未変性のポリブタジエン、変性されたポリブタジエン(変性ブタジエンゴム)から選ばれる少なくとも1つであり、未変性のポリブタジエンおよび変性ブタジエンゴムの両方をふくむとき、両者の合計が30質量%以上であればよい。
【0013】
変性ブタジエンゴムは、特に限定されるものではなく、熱膨張性マイクロカプセルの殻材との親和性があればよい。変性ブタジエンゴムが有する変性基として、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、アルコキシ基、シリル基、アミド基、オルガノシロキサン基、等を挙げることができる。なかでもオルガノシロキサン基、カルボキシル基、が好ましい。
【0014】
天然ゴムは、特に限定されるものではなく、通常、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物に用いられるものを含有することができる。天然ゴムは、ジエン系ゴム100質量%中、好ましくは30~70質量%、より好ましくは35~65質量%含有するとよい。天然ゴムを30質量%以上含有することにより、耐摩耗性が優れ好ましい。また、天然ゴムを70質量%以下含有することにより、低温での柔軟性に優れ好ましい。
【0015】
ジエン系ゴムは、ポリブタジエン、天然ゴム以外の他のジエン系ゴムを含有することができる。他のジエン系ゴムとして、例えばイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム等が挙げられる。なかでもスチレン-ブタジエンゴムが好ましい。これら他のジエン系ゴムは、未変性でもよいが、その分子鎖の末端および/または側鎖がエポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アミド基等により、変性された変性ジエン系ゴムでもよい。
【0016】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、白色充填剤を含有するとよい。白色充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは30質量部以上、より好ましくは30~100質量部、さらに好ましくは40~90質量部、特に好ましくは45~80質量部である。白色充填剤の配合量を30質量部以上にすることによりスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の機械的特性を改良し耐摩耗性を向上することができ好ましい。また白色充填剤の配合量を100質量部以下にすることにより、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物のしなやかさを維持し氷上性能を確保することができ好ましい。またスタッドレスタイヤにしたとき重量の増加を抑制することができる。
【0017】
白色充填剤として、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウムを挙げることができる。これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。なかでもシリカが好ましく氷上性能をより優れたものにすることができる。
【0018】
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。シリカのCTAB吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは80~260m/g、より好ましくは140~200m/gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積を80m/g以上にすることにより、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性を確保することができる。またシリカのCTAB吸着比表面積を200m/g以下にすることにより、ウェット性能および低転がり抵抗性を良好にすることができる。本明細書において、シリカのCTAB比表面積は、ISO 5794により測定された値とする。
【0019】
本発明では、シリカと共にシランカップリング剤を配合するとよい。シランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を向上し、耐摩耗性および氷上性能のバランスをより高くすることができる。
【0020】
シランカップリング剤の種類は、シリカ配合のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤を例示することができる。
【0021】
シランカップリング剤の配合量は、シリカの重量に対し、好ましくは3~15質量%を配合すると良く、より好ましくは5~10質量%にすると良い。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の3質量%未満であるとシリカの分散を十分に改良することができない虞がある。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の15質量%を超えるとシランカップリング剤同士が縮合し、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることができない。
【0022】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックを配合することが好ましい。カーボンブラックを配合するとき、白色充填剤およびカーボンブラックの配合量の合計が、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは30質量部を超え100質量部以下、より好ましくは40~90質量部、さらに好ましくは45~80質量部であるとよい。カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、HMF、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは70~240m/g、より好ましくは90~200m/gであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積を70m/g以上にすることにより、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物の機械的特性および耐摩耗性を確保することができる。またカーボンブラックの窒素吸着比表面積を240m/g以下にすることにより、氷上性能を良好にすることができる。本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2に準拠して、測定するものとする。
【0023】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、特定の殻材を有する熱膨張性マイクロカプセルを配合することにより、従来の熱膨張性マイクロカプセルを配合したときと比べ、氷上性能および耐摩耗性を改良することができる。熱膨張性マイクロカプセルを構成する外殻は、単官能モノマー(A)、および多官能モノマー(B)を含む重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂からなり、単官能モノマー(A)がニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有モノマーを含み、多官能モノマー(B)が少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイル基以外の反応性炭素-炭素二重結合を有し、下記一般式(1)で表され、かつその重量平均分子量が500~50000である。
-O-R-O-R (1)
(式中、RおよびRは(メタ)アクリロイル基であり、Rは前記反応性炭素-炭素二重結合を有する重合体鎖を含む構造である。)
【0024】
熱膨張性マイクロカプセルを構成する外殻は、ニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有モノマーを含む単官能モノマー(A)、および多官能モノマー(B)を含む重合性成分の重合体である熱可塑性樹脂からなる。重合性成分は、分子内に少なくとも1つ以上の重合性基を有する単量体を意味し、重合することによって熱膨張性マイクロカプセルの外殻を形成する熱可塑性樹脂となる成分である。重合性成分は、反応性炭素-炭素二重結合を1個有する単官能モノマー、および反応性炭素-炭素二重結合を2個以上有する多官能モノマーを含むものである。多官能モノマーにより橋架け構造を重合体に導入することができる。ここでいう反応性炭素-炭素二重結合は、ラジカル反応性を示す炭素-炭素二重結合を意味し、芳香環内にある炭素-炭素二重結合ではなく、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニレン基等に含まれる炭素-炭素二重結合が挙げられる。
【0025】
単官能モノマー(A)は、ニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有モノマーを含む。重合性成分がこのような単官能モノマー(A)を含むことで、外殻を構成する熱可塑性樹脂のガスバリア性が高くなるため、内包される発泡剤が気化した際に漏えいしにくくなり、効率的に膨張させることができるだけでなく、熱可塑性樹脂の強度が高くなるため、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物作成時の潰れや変形を抑制することができる。
【0026】
ニトリル系モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられる。ニトリル系モノマーとしてはアクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルであると好ましい。
【0027】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸(MAA)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0028】
単官能モノマー(A)において、ニトリル系モノマーとカルボキシル基含有モノマーの合計100質量%中、ニトリル系モノマーは、好ましくは40~95質量%、より好ましくは50~90質量%であるとよい。ニトリル系モノマーを40質量%以上にすることで、氷上性能を向上させることができ、95質量%以下にすることで、熱膨張性マイクロカプセルの強度を向上させることができる。
【0029】
単官能モノマー(A)は、ニトリル系モノマー、およびカルボキシル基含有単量体以外のモノマーを含んでもよい。該モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;塩化ビニリデン;酢酸ビニル;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリルアミド、置換(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー等が挙げられる。
【0030】
多官能モノマー(B)は、その重量平均分子量が500~50000、好ましくは600~35000、より好ましくは1000~30000、さらに好ましくは1500~25000である。多官能モノマー(B)の重量平均分子量が500以上であると、ジエン系ゴム中においての熱膨張性マイクロカプセルとの相溶性を向上させることができる。重量分子量を50000以下にすることにより、ジエン系ゴム中で均一に分散させることができ、熱膨張性マイクロカプセルを均一に膨張させることができる。
【0031】
多官能モノマー(B)は、少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基および(メタ)アクリロイル基以外の反応性炭素-炭素二重結合を有し、下記一般式(1)で表される。
-O-R-O-R (1)
(式中、RおよびRは(メタ)アクリロイル基であり、Rは反応性炭素-炭素二重結合を有する重合体鎖を含む構造である。)
【0032】
多官能モノマー(B)は、(メタ)アクリロイル基を少なくとも2つ有し、これら2つの以上の(メタ)アクリロイル基は、同一であってもよく、異なっていてもよい。(メタ)アクリロイル基は反応性炭素-炭素二重結合と極性を持った炭素-酸素二重結合を有した構造であるため、非常に高いラジカル反応性を持つ。このため、重合体の橋架け構造は、主に(メタ)アクリロイル基が寄与し、さらに、重合体はその分子中に反応性炭素-炭素二重結合を有した状態となり、ジエン系ゴムと熱膨張性マイクロカプセルとの相溶性が向上する。
【0033】
およびRは(メタ)アクリロイル基である。
は、反応性炭素-炭素二重結合を有する重合体鎖を含む構造である。Rは、重合体鎖以外の構造部に反応性炭素-炭素二重結合を有していてもよい。Rは、直鎖状の構造または枝分かれの構造となることがある。
【0034】
は、重合体鎖のみで構成された構造でもよく、重合体鎖と重合体鎖以外の有機基および/または無機基とが結合した構造でもよい。有機基は、炭素元素を含む機能性基と定義する。有機基としては、特に限定はないが、アルキル基;アルキレン基;アルケニル基;アルキニル基;アルコキシ基;オキシアルキレン基;カルボキシル基;無水カルボキシル基;エステル基;カルボニル基;アミド基;ウレタン基;フェニル基;フェニレン基;反応性炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基等が挙げられる。有機基は1種が重合体鎖に結合、または2種以上が重合体鎖に結合していてもよい。また、無機基は、炭素元素を含まない機能性基と定義する。無機基としては、特に限定はないが、ヒドロキシル基;エーテル基;アミノ基;スルホ基;フルオロ基やクロロ基等のハロゲン基;シラノール基等が挙げられる。無機基は、有機基と同様に、1種が重合体鎖に結合、または2種以上が重合体鎖に結合していてもよい。
【0035】
重合体鎖が、構成単位としてジエンを含むと、多官能モノマー(B)に含まれる反応性炭素-炭素二重結合の数が多くなるため、外殻の熱可塑性樹脂に弾性を与えることができ、好ましい。ジエンとして、1,3-ブタジエン(本明細書では、単にブタジエンともいう);1,3-ペンタジエン;1,3-ヘキサジエン;2,4-ヘキサジエン;1,3-ヘプタジエン;1,3-オクタジエン;イソプレン;クロロプレン;2-メチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-ブチル-1,3-ブタジエン、2-ペンチル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2-ヘプチル-1,3-ブタジエン、2-オクチル-1,3-ブタジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン等の2-アルキル-1,3-ブタジエン;2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン等の2,3-ジアルキル-1,3-ブタジエン;1-フェニル-1,3-ブタジエン;2-フェニル-1,3-ブタジエン等のアリール-1,3-ブタジエン;1-フェニル-2,4-ペンタジエン;2-クロロ-1,3-ブタジエン;2-シアノ-1,3-ブタジエン;3-メチル-1,3-ペンタジエン等の共役ジエン、1,4-ヘキサジエン;3-メチル-1,4-ヘキサジエン;4-メチル-1,4-ヘキサジエン;5-メチル-1,4-ヘキサジエン;4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン;7-メチル-1,6-オクタジエン;8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエンおよび4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン;メチルテトラヒドロインデン;5-エチリデン-2-ノルボルネン;5-メチレン-2-ノルボルネン;5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン;5-ビニリデン-2-ノルボルネン;6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン;5-ビニル-2-ノルボルネン;5-イソプロペニル-2-ノルボルネン;5-イソブテニル-2-ノルボルネン;シクロペンタジエン;ノルボルナジエン等の非共役ジエンが挙げられる。
【0036】
ジエンの中でも、本発明の効果をより奏する点で、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンが好ましく、ブタジエン、イソプレンがさらに好ましい。ジエンは1種または2種以上含んでも良い。重合体鎖が、構成単位として2種以上のジエンを含む場合、重合体鎖はランダム共重合体のようにランダムに各ジエンの構成単位が重合した重合体でもよく、ブロック共重合体のように各ジエンの構成単位が各々纏まりをもって重合した重合体でもよい。
【0037】
重合体鎖は、本発明の効果を阻害しない範囲で、構成単位としてジエン以外を含んでも良い。ジエン以外の構成単位としては、1,3,5-ヘキサトリエン等の構成単位中に反応性炭素-炭素二重結合を3つ以上有しているポリエン系構成単位;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系構成単位;スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等の芳香族系ビニル構成単位;エチレン、ポリプロピレン、イソブチレン等のオレフィン系構成単位等が挙げられる。ジエン以外の構成単位は1種または2種以上含んでも良い。重合体鎖にジエン以外の構成単位を含む場合は、重合体鎖はランダム共重合体のようにランダムにジエンとそれ以外の構成単位が重合した重合体でもよく、ブロック共重合体のようにジエンとそれ以外の構成単位が各々纏まりをもって重合した重合体でもよい。
【0038】
多官能モノマー(B)は、単官能モノマー(A)および多官能モノマー(B)の合計100質量%中、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.2~7.0質量%、さらに好ましくは0.3~5.0質量%である。多官能モノマー(B)が0.1質量%以上であると、ジエン系ゴムと熱膨張性マイクロカプセルの相溶性を向上させることができ好ましい。また、多官能モノマー(B)が10.0質量%以下であると、熱膨張性マイクロカプセルの膨張性能を向上させることができ好ましい。
【0039】
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂からなる外殻に、加熱することで気化する成分である発泡剤を内包することにより、熱膨張性(マイクロカプセル全体が加熱により膨らむ性質)を有するようになる。発泡剤としては、特に限定されないが、たとえば、メタン、エタン、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3~13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150~260℃および/または蒸留範囲70~360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等の炭素数1~12の炭化水素のハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラメチルシラン、トリメチルエチルシラン、トリメチルイソプロピルシラン、トリメチル-n-プロピルシラン等の炭素数1~5のアルキル基を有するシラン類;アゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等の加熱により熱分解してガスを生成する化合物等が挙げられる。発泡剤は、1種の化合物から構成されていてもよく、2種以上の化合物の混合物から構成されていてもよい。発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
【0040】
熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張温度(Tmax)は、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物の加熱成形温度に対して±20℃の範囲内であるとよい。最大膨張温度(Tmax)をスタッドレスタイヤ用ゴム組成物の加熱成形温度に対して±20℃の範囲内にすることにより、スタッドレスタイヤ中に導入する空孔の形状を均一にすることができ好ましい。
【0041】
熱膨張性マイクロカプセルの体積平均粒子径(以下、「平均粒子径」ということもある。)(D50)は、特に限定されないが、好ましくは20~30μmである。熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径が前述の範囲であると、スタッドレスタイヤ中に十分な大きさの空孔を導入することができ、好ましい。
【0042】
熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張倍率は、特に限定はないが、好ましくは10~200倍である。熱膨張性マイクロカプセルの最大膨張倍率が前述の範囲内であると、スタッドレスタイヤ中に十分な大きさの空孔を導入することができ、好ましい。
【0043】
熱膨張性マイクロカプセルの殻材を構成する熱可塑性樹脂は、従来公知の方法を用いて製造することができ、例えば懸濁重合法によれば、モノマー混合物を水性分散媒中に分散させて重合させることにより簡便に熱膨張性マイクロカプセルの殻材を製造することができる。懸濁重合の際、必要に応じて、重合開始剤、電解質、分散剤、界面活性剤等が使用される。
【0044】
重合開始剤としては、油溶性の過酸化物またはアゾ化合物が好ましく、具体的には、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキサイド等の油溶性過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の油溶性アゾ化合物が挙げられる。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。分散剤としては、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機化合物、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子が挙げられる。界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アジピン酸-ジエタノールアミン縮合物等のノニオン界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤を挙げることができる。上記の重合開始剤、電解質、分散剤および界面活性剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組合わせて使用することができる。
【0045】
重合反応は、所定粒子径の球状油滴が調製されるようにモノマー混合物を水性分散媒中に分散させた後、攪拌しながら昇温して行われる。モノマー混合物を水性分散媒中に分散させる方法としては、例えばホモミキサー、スタティックミキサー等の乳化分散機を使用して分散させる方法、超音波分散機を用いて分散させる方法、膜乳化法を利用する方法等が挙げられる。重合温度は40~100℃が好ましく、重合時間は1~20時間が好ましい。
【0046】
熱膨張性マイクロカプセルは、ジエン系ゴム100質量部に対し、0.3~30質量部、好ましくは1~20質量部、より好ましくは3~15質量部配合する。熱膨張性マイクロカプセルが0.3質量部未満であると、氷上性能を十分に改良することができない。また、熱膨張性マイクロカプセルが30質量部を超えると、耐摩耗性が低下する。
【0047】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルの殻材とともに、重量平均分子量が1,000~100,000である液状ゴムを配合することにより、ジエン系ゴム中の熱膨張性マイクロカプセルの殻材の分散性を改良し、耐摩耗性を改良する。液状ゴムの重量平均分子量は1,000~100,000、好ましくは2,000~90,000、より好ましくは3,000~80,000である。液状ゴムの重量平均分子量が1,000未満であると、他の部材への移行が起こりやすくなる。また液状ゴムの重量平均分子量が100,000を超えると、樹脂の分散効果が低下する。なお、液状ゴムの重量平均分子量は、溶媒がテトラヒドロフランで、RI検出器を用いた、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる標準ポリスチレン換算値とする。
【0048】
液状ゴムとして、特に制限されるものではないが、例えば液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴム、液状エチレンプロピレン系ゴム、液状ニトリルゴム、液状クロロプレンゴム、液状アクリルゴム、液状エピクロルヒドリンゴム等を挙げることができる。好ましくは、液状イソプレンゴム、液状ブタジエンゴム、液状スチレンブタジエンゴムがよい。
【0049】
液状ゴムは、ジエン系ゴム100質量部に対し、10質量部以上、好ましくは12~50質量部、より好ましくは14~40質量部配合する。液状ゴムが10質量部未満であると、熱膨張性マイクロカプセルの殻材の分散性を改良し、耐摩耗性を改良することができない。また、熱膨張性マイクロカプセルの殻材の配合量に対する液状ゴムの配合量の質量比(液状ゴムの配合量/熱膨張性マイクロカプセルの殻材の配合量)は、好ましくは1~100、より好ましくは2~50であるとよい。質量比(液状ゴムの配合量/熱膨張性マイクロカプセルの殻材の配合量)が1未満であると、熱膨張性マイクロカプセルの殻材の分散性を改良し、耐摩耗性を改良することができない。また、質量比(液状ゴムの配合量/熱膨張性マイクロカプセルの殻材の配合量)が50を超えると、他の部材への移行が起こりやすくなる。
【0050】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂を配合することにより、熱膨張性マイクロカプセルの殻材の分散性を改良し、耐摩耗性を改良することができる。芳香族変性テルペン樹脂は、ジエン系ゴム100質量部に対し、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~15質量部配合するとよい。芳香族変性テルペン樹脂が1質量部未満であると、熱膨張性マイクロカプセルの殻材の分散性を改良し、耐摩耗性を改良する効果が十分には得られない。芳香族変性テルペン樹脂が20質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する。
【0051】
芳香族変性テルペン樹脂は、テルペンと芳香族化合物とを重合することにより得られる。テルペンとしては、例えばα-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネンなどが例示される。芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどが例示される。なかでも芳香族変性テルペン樹脂としてスチレン変性テルペン樹脂が好ましい。
【0052】
スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、JIS K6253、デュロメータのタイプA、23℃のゴム硬度が、好ましくは60以下、より好ましくは40~57であるとよい。ゴム硬度を60以下にすることにより、高い氷上摩擦力を得ることができる。
【0053】
また、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が好ましくは-60℃以下、より好ましくは-100~-62℃であるとよい。スタッドレスタイヤ用ゴム組成物のガラス転移温度を-60℃以下にすることにより、低温下でのゴムコンパウンドのしなやかさを維持し、氷面に対する凝着力を高くするので、スタッドレスタイヤのトレッド部に好適に使用することができる。なおガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。
【0054】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、加硫または架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、熱硬化性樹脂などのスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができる。またかかる添加剤は一般的な方法で混練してスタッドレスタイヤ用ゴム組成物とし、加硫または架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。スタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0055】
本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッド部を形成するのに好適である。本発明のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物でトレッドゴムを構成したスタッドレスタイヤは、氷上性能および耐摩耗性を従来レベル以上に向上することができる。
【0056】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0057】
表2に記載の共通組成を有し、表1に記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物(実施例1~7、標準例、比較例1~4)を調製するにあたり、硫黄、加硫促進剤および熱膨張性マイクロカプセルを除く成分を1.7Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、145℃に達したとき放出しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤および熱膨張性マイクロカプセルを加えて70℃のオープンロールで混練することにより、11種類のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を得た。なお、表2に記載の標準処方の配合量は、表1に記載のジエン系ゴム100質量部に対する質量部として表されている。
【0058】
得られたスタッドレスタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型(内寸;長さ150mm、幅150mm、厚さ2mm)を用いて170℃、10分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。得られた加硫ゴム試験片を使用して、以下に示す試験方法で引張破断強度および氷上摩擦性能を測定した。
【0059】
引張破断強度
得られた加硫ゴム試験片をJIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片を切り出した。JIS K6251に準拠し引張破断強度を測定し、得られた結果は、標準例の値を100とする指数として表1の「破断強度」の欄に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0060】
氷上摩擦性能
得られた加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムに貼り付け、インサイドドラム型氷上摩擦試験機を用いて、測定温度-1.5℃、荷重5.5kg/cm、ドラム回転速度25km/hの条件で氷上摩擦係数を測定した。得られた氷上摩擦係数を、標準例の値を100とする指数にして、「氷上性能」の欄に示した。この指数値が大きいほど氷上摩擦係数が大きく氷上性能が優れることを意味する。
【0061】
熱膨張性マイクロカプセルの特性は以下の方法により求めた。
熱膨張性マイクロカプセルの平均粒子径の測定
測定装置として、日機装株式会社製のマイクロトラック粒度分布計(型式9320-HRA)を使用し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0062】
【表1】
【0063】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・天然ゴム:RSS#3
・ポリブタジエン:日本ゼオン(株)製ポリブタジエンゴムNipol BR1220
・変性ブタジエンゴム:JSR社製BR54
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製カーボンブラックシースト6、窒素吸着比表面積が115m/g
・シリカ:日本シリカ工業(株)製Nipsil AQ
・カップリング剤:硫黄含有シランカップリング剤、デクサ社製Si69
・熱膨張性マイクロカプセル-A~C:以下の製造方法により得たもの。
・液状ゴム:重量平均分子量が30000の液状ブタジエンゴム、日本ゼオン社製
・変性テルペン樹脂:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製TO-125
【0064】
熱膨脹性マイクロカプセル-Aの製造方法
イオン交換水500質量部に、塩化ナトリウム126質量部を溶解させ、ポリビニルピロリドン0.25質量部、カルボキシメチル化ポリエチレンイミン・Na塩0.1質量部およびシリカ有効成分20質量%であるコロイダルシリカ68質量部を添加し、pHを3.0に調整して水性分散媒を調製した。
一方、アクリロニトリル100質量部、メタクリロニトリル35質量部、メタクリル酸96質量部、メチルメタクリレート9質量部、重量平均分子量が10000であるポリブタジエンジアクリレート0.5質量部、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート3質量部、イソブタン30質量部、イソオクタン10質量部を混合、溶解し油性混合物とした。
水性分散媒と油性混合物を混合し、得られた混合液をホモミキサー(プラミクス社製、TKホモミキサー)により回転数10000rpmで1分間分散して、懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応容器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.35MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度60℃で20時間重合反応した。重合後、生成物を濾過、乾燥し、熱膨張性マイクロカプセル-Aを得た。得られた熱膨張性マイクロカプセル-Aの平均粒子径は22μmであった。
【0065】
熱膨脹性マイクロカプセル-Bの製造方法
シリカ有効成分20質量%であるコロイダルシリカを45質量部に変更し、重量平均分子量が10000であるポリブタジエンジアクリレート2質量部に変更する以外は熱膨脹性マイクロカプセル-Aの製造方法と同様にして、熱膨脹性マイクロカプセル-Bを得た。得られた熱膨脹性マイクロカプセル-Bの平均粒子径は29μmであった。
【0066】
熱膨脹性マイクロカプセル-Cの製造方法
重量平均分子量が10000であるポリブタジエンジアクリレート0質量部に変更する以外は熱膨張性マイクロカプセルAの製造方法と同様に調整して、熱膨脹性マイクロカプセル-Cを得た。得られた熱膨脹性マイクロカプセル-Cの平均粒子径は21μmであった。
【0067】
【表2】
【0068】
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:NOF社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:フレキシス社製6PPD
・アロマオイル:富士興産(株)製アロマオイル
・ワックス:大内新興化学工業(株)社製サンノック
・硫黄:鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製ノクセラー CZ-G
【0069】
表1から明らかなように実施例1~6のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、引張破断強度および氷上性能を従来レベル以上に改良することが確認された。
【0070】
比較例1,2のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、多官能モノマー(B)を有しないので、耐摩耗性(引張破断強度)を改良することができない。
比較例3のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルが0.3質量部未満なので、引張破断強度および氷上性能を従来レベル以上に改良することができない。
比較例4のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物は、熱膨張性マイクロカプセルが30質量部を超えるので、耐摩耗性(引張破断強度)が劣る。