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特開2023-119115アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119115
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびアクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/08 20060101AFI20230821BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20230821BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G02B26/08 D
H04N5/74 A
H02K33/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021780
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】新井 努
(72)【発明者】
【氏名】須江 猛
【テーマコード(参考)】
2H141
5C058
5H633
【Fターム(参考)】
2H141MA12
2H141MB23
2H141MB24
2H141MB39
2H141MC05
2H141MD12
2H141MD16
2H141MD20
2H141MD23
2H141MD24
2H141MD38
2H141MD40
2H141MF21
2H141MG03
2H141MG10
5C058BA25
5C058BA35
5C058EA11
5H633BB08
5H633BB15
5H633GG02
5H633HH03
5H633HH25
5H633JA04
(57)【要約】
【課題】光学要素を保持する可動体を固定体に対して回動させる磁気駆動機構を備えるアクチュエータにおいて、磁気駆動機構の駆動用コイルが非通電状態であるときに、固定体に対する可動体の回動方向において可動体を一定位置で保持することが可能であっても、コストを低減することが可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】アクチュエータ1では、平板状に形成される磁性板8と保持用磁石7との間に、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を一定位置で保持するための磁気的吸引力が生じている。固定体4には、磁性板8が配置されて固定される磁性板配置穴4eが形成されており、磁性板配置穴4eの、保持用磁石7側の面は、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力によって磁性板8が接触する接触面4fとなっている。接触面4fには、保持用磁石7側に向かって窪む凹部4gが形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学要素を保持する可動体と、前記可動体が内周側に配置される枠状に形成されるとともに前記可動体を回動可能に保持する固定体と、前記固定体に対して前記可動体が傾く方向に前記可動体を回動させる磁気駆動機構と、前記固定体に対する前記可動体の回動方向である可動体回動方向において前記固定体に対して前記可動体を一定位置で保持するための保持用磁石および磁性板とを備え、
前記磁気駆動機構は、駆動用磁石と、前記駆動用磁石に対向配置される駆動用コイルとを備え、
前記保持用磁石は、前記可動体および前記固定体のいずれか一方に固定され、
前記磁性板は、平板状に形成されるとともに前記磁性板の厚さ方向において前記保持用磁石の一方側に配置され、
前記可動体および前記固定体のいずれか他方は、非磁性材料で形成され、
前記可動体および前記固定体のいずれか他方には、前記磁性板が配置されて固定される磁性板配置穴が形成され、
前記保持用磁石は、前記磁性板の厚さ方向に直交する第1方向で分極された2個の着磁部によって構成され、
前記駆動用コイルが非通電状態であるときに前記可動体回動方向において前記可動体を一定位置で保持するための磁気的吸引力が前記磁性板と前記保持用磁石との間に生じるとともに、前記第1方向における前記磁性板の位置によって前記駆動用コイルが非通電状態であるときの前記可動体回動方向における前記可動体の位置が規定され、
前記第1方向の一方側を第1方向一方側とし、前記第1方向の他方側を第1方向他方側とすると、
前記磁性板配置穴は、前記可動体および前記固定体のいずれか他方の少なくとも前記第1方向一方側端で開口し、
前記磁性板配置穴の、前記保持用磁石側の面は、前記磁性板と前記保持用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって前記磁性板が接触する接触面となっており、
前記接触面には、前記保持用磁石側に向かって窪む凹部が形成され、
前記凹部は、前記磁性板配置穴の前記第1方向一方側端から前記第1方向他方側に向かって直線状に形成されるとともに、少なくとも前記磁性板の前記第1方向一方側端まで形成されていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記凹部は、前記磁性板の厚さ方向と前記第1方向とに直交する第2方向において間隔をあけた状態で複数箇所に形成されていることを特徴とする請求項1記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記磁性板配置穴は、前記第1方向において前記可動体および前記固定体のいずれか他方を貫通する貫通穴であり、
前記凹部は、前記第1方向における前記磁性板配置穴の全域に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記磁性板の厚さ方向の一方側を厚さ方向一方側とし、前記磁性板の厚さ方向の他方側を厚さ方向他方側とすると、
前記磁性板配置穴の前記厚さ方向他方側の面は、前記接触面となっており、
前記磁性板配置穴の前記厚さ方向一方側の面には、前記厚さ方向一方側に向かって窪む第2凹部が形成され、
前記第2凹部は、前記磁性板の厚さ方向と前記第1方向とに直交する第2方向において前記凹部と同じ位置に形成されるとともに、前記第1方向において前記凹部と同じ範囲に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記可動体回動方向において前記固定体に対して前記可動体を一定位置で保持するための平板状の第2磁性板を備え、
前記駆動用磁石および前記保持用磁石は、前記可動体に固定され、
前記駆動用コイル、前記磁性板および前記第2磁性板は、前記固定体に固定され、
前記駆動用磁石は、前記第1方向で分極された2個の着磁部によって構成され、
前記駆動用コイルが非通電状態であるときに前記可動体回動方向において前記可動体を一定位置で保持するための磁気的吸引力が前記駆動用磁石と前記第2磁性板との間に生じ、
前記固定体には、前記第1方向において前記第2磁性板を位置決めするための位置決め部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のアクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のアクチュエータの製造方法であって、
前記凹部に一部が配置される棒状の治具を前記第1方向一方側から前記磁性板配置穴に挿入するとともに、前記磁性板配置穴の中に配置される固定前の前記磁性板の前記第1方向一方側の端面に前記治具の先端面を接触させて前記磁性板を前記第1方向他方側に移動させ、前記第1方向における前記磁性板の位置を調整する磁性板位置調整工程と、前記磁性板位置調整工程後に前記磁性板配置穴に前記磁性板を固定する磁性板固定工程とを備えることを特徴とするアクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学要素を回動させるためのアクチュエータに関する。また、本発明は、かかるアクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、投射光が透過するガラス板(光学ガラス)を振動させるための画像ずらし装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の画像ずらし装置は、プロジェクタに搭載されている。この画像ずらし装置は、ガラス板が固定されるガラスフレームと、ガラスフレームを回動可能に保持するベースと、ベースに対してガラスフレームを回動させる駆動部とを備えている。駆動部は、ガラスフレームに固定される駆動用磁石と、駆動用磁石に対向配置されるとともにベースに固定される駆動用コイルとを備えている。
【0003】
また、特許文献1に記載の画像ずらし装置は、駆動用コイルが非通電状態であるときに、ベースに対するガラスフレームの回動方向においてガラスフレームを一定位置で保持するための(すなわち、ベースに対してガラスフレームを一定の姿勢で保持するための)制動部を備えている。制動部は、ガラスフレームに固定される1個のフレーム側制動用磁石と、ベースに固定される2個のベース側制動用磁石とを備えている。フレーム側制動用磁石は、2個のベース側制動用磁石に挟まれている。駆動用コイルが非通電状態であるときには、フレーム側制動用磁石と2個のベース側制動用磁石との間に生じる磁気的反発力によって、ベースに対するガラスフレームの回動方向においてガラスフレームが一定位置で保持されている。
【0004】
また、特許文献1に記載の画像ずらし装置では、セットスクリューによって、ベース側制動用磁石の位置を調整することが可能になっており、フレーム側制動用磁石とベース側制動用磁石との距離を調整することが可能になっている。すなわち、この画像ずらし装置では、セットスクリューによって、フレーム側制動用磁石とベース側制動用磁石との間に生じる磁気的反発力を調整することが可能になっている。そのため、この画像ずらし装置では、駆動用コイルが非通電状態であるときのベースに対するガラスフレームの回動方向におけるガラスフレームの位置を調整することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-215466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の画像ずらし装置は、制動部を備えているため、この画像ずらし装置では、駆動用コイルが非通電状態であるときにベースに対するガラスフレームの回動方向においてガラスフレームを一定位置で保持することが可能になっている。しかしながら、この画像ずらし装置では、駆動用コイルが非通電状態であるときにベースに対するガラスフレームの回動方向においてガラスフレームを一定位置で保持するために、3個の制動用磁石が必要になるため、画像ずらし装置のコストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明の課題は、光学要素を保持する可動体と、可動体を回動可能に保持する固定体と、固定体に対して可動体を回動させる磁気駆動機構とを備えるアクチュエータにおいて、磁気駆動機構の駆動用コイルが非通電状態であるときに、固定体に対する可動体の回動方向において可動体を一定位置で保持することが可能であっても、コストを低減することが可能なアクチュエータを提供することにある。また、本発明の課題は、かかるアクチュエータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のアクチュエータは、光学要素を保持する可動体と、可動体が内周側に配置される枠状に形成されるとともに可動体を回動可能に保持する固定体と、固定体に対して可動体が傾く方向に可動体を回動させる磁気駆動機構と、固定体に対する可動体の回動方向である可動体回動方向において固定体に対して可動体を一定位置で保持するための保持用磁石および磁性板とを備え、磁気駆動機構は、駆動用磁石と、駆動用磁石に対向配置される駆動用コイルとを備え、保持用磁石は、可動体および固定体のいずれか一方に固定され、磁性板は、平板状に形成されるとともに磁性板の厚さ方向において保持用磁石の一方側に配置され、可動体および固定体のいずれか他方は、非磁性材料で形成され、可動体および固定体のいずれか他方には、磁性板が配置されて固定される磁性板配置穴が形成され、保持用磁石は、磁性板の厚さ方向に直交する第1方向で分極された2個の着磁部によって構成され、駆動用コイルが非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体を一定位置で保持するための磁気的吸引力が磁性板と保持用磁石との間に生じるとともに、第1方向における磁性板の位置によって駆動用コイルが非通電状態であるときの可動体回動方向における可動体の位置が規定され、第1方向の一方側を第1方向一方側とし、第1方向の他方側を第1方向他方側とすると、磁性板配置穴は、可動体および固定体のいずれか他方の少なくとも第1方向一方側端で開口し、磁性板配置穴の、保持用磁石側の面は、磁性板と保持用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって磁性板が接触する接触面となっており、接触面には、保持用磁石側に向かって窪む凹部が形成され、凹部は、磁性板配置穴の第1方向一方側端から第1方向他方側に向かって直線状に形成されるとともに、少なくとも磁性板の第1方向一方側端まで形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のアクチュエータは、固定体に対する可動体の回動方向である可動体回動方向において固定体に対して可動体を一定位置で保持するための保持用磁石および磁性板を備えており、平板状に形成される磁性板と保持用磁石との間に、駆動用コイルが非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体を一定位置で保持するための磁気的吸引力が生じている。そのため、本発明では、平板状に形成される磁性板と保持用磁石とによって、駆動用コイルが非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体を一定位置で保持することが可能になる。したがって、本発明では、駆動用コイルが非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体を一定位置で保持することが可能であっても、3個の制動用磁石を有する特許文献1に記載の画像ずらし装置と比較して、アクチュエータのコストを低減することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、磁性板の厚さ方向に直交する第1方向における磁性板の位置によって駆動用コイルが非通電状態であるときの可動体回動方向における可動体の位置が規定されているため、アクチュエータの製造時に第1方向における磁性板の位置を調整することで、駆動用コイルが非通電状態であるときの可動体回動方向における可動体の位置を調整することが可能になる。
【0011】
また、本発明では、磁性板が配置されて固定される磁性板配置穴が可動体および固定体のいずれか他方の少なくとも第1方向一方側で開口しているため、アクチュエータの製造時に、磁性板配置穴の第1方向一方側から磁性板配置穴に棒状の治具を挿入するとともに、磁性板配置穴の中に配置される固定前の磁性板の第1方向一方側の端面に治具の先端面を接触させて磁性板を第1方向他方側に移動させることで第1方向における磁性板の位置を調整することが可能になる。
【0012】
さらに、本発明では、磁性板配置穴の、保持用磁石側の面は、磁性板と保持用磁石との間に生じる磁気的吸引力によって磁性板が接触する接触面となっており、接触面には、保持用磁石側に向かって窪む凹部が形成されている。また、本発明では、凹部は、磁性板配置穴の第1方向一方側端から第1方向他方側に向かって直線状に形成されるとともに、少なくとも磁性板の第1方向一方側端まで形成されている。
【0013】
そのため、本発明では、たとえば、磁性板の厚さが非常に薄くなっていても、また、棒状に形成される治具の先端面の縁に面取り加工が施されていても、アクチュエータの製造時に、一部が凹部の中に配置される治具の先端面を磁性板の第1方向一方側の端面に確実に接触させることが可能になる。したがって、本発明では、磁性板の厚さが非常に薄くなっていても、また、棒状に形成される治具の先端面の縁に面取り加工が施されていても、アクチュエータの製造時に治具を用いて第1方向における磁性板の位置を容易に調整することが可能になる。
【0014】
本発明において、凹部は、磁性板の厚さ方向と第1方向とに直交する第2方向において間隔をあけた状態で複数箇所に形成されていることが好ましい。このように構成すると、アクチュエータの製造時に、第2方向において間隔をあけた状態で配置される複数本の棒状の治具を用いて、磁性板を第1方向他方側に移動させやすくなる。したがって、アクチュエータの製造時に、第1方向における磁性板の位置をより容易に調整することが可能になる。
【0015】
本発明において、磁性板配置穴は、第1方向において可動体および固定体のいずれか他方を貫通する貫通穴であり、凹部は、第1方向における磁性板配置穴の全域に形成されていることが好ましい。このように構成すると、磁性板の第1方向一方側の端面に治具の先端面を接触させて磁性板を第1方向他方側に移動させるときに、磁性板を第1方向他方側に移動させ過ぎてしまっても、磁性板配置穴の第1方向他方側から磁性板配置穴に治具を挿入するとともに、一部が凹部の中に配置される治具の先端面を磁性板の第1方向他方側の端面に確実に接触させて磁性板を第1方向一方側に戻すことが可能になる。
【0016】
本発明において、磁性板の厚さ方向の一方側を厚さ方向一方側とし、磁性板の厚さ方向の他方側を厚さ方向他方側とすると、磁性板配置穴の厚さ方向他方側の面は、接触面となっており、磁性板配置穴の厚さ方向一方側の面には、厚さ方向一方側に向かって窪む第2凹部が形成され、第2凹部は、磁性板の厚さ方向と第1方向とに直交する第2方向において凹部と同じ位置に形成されるとともに、第1方向において凹部と同じ範囲に形成されていることが好ましい。このように構成すると、磁性板の厚さ方向における磁性板配置穴の幅が狭くても、凹部および第2凹部を利用して、磁性板配置穴に治具を挿入して、第1方向一方側に磁性板を移動させることが可能になる。
【0017】
本発明において、たとえば、アクチュエータは、可動体回動方向において固定体に対して可動体を一定位置で保持するための平板状の第2磁性板を備え、駆動用磁石および保持用磁石は、可動体に固定され、駆動用コイル、磁性板および第2磁性板は、固定体に固定され、駆動用磁石は、第1方向で分極された2個の着磁部によって構成され、駆動用コイルが非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体を一定位置で保持するための磁気的吸引力が駆動用磁石と第2磁性板との間に生じ、固定体には、第1方向において第2磁性板を位置決めするための位置決め部が形成されている。この場合には、第1方向における第2磁性板の位置の調整が行われないため、アクチュエータの製造工程を簡素化することが可能になる。
【0018】
本発明のアクチュエータは、たとえば、凹部に一部が配置される棒状の治具を第1方向一方側から磁性板配置穴に挿入するとともに、磁性板配置穴の中に配置される固定前の磁性板の第1方向一方側の端面に治具の先端面を接触させて磁性板を第1方向他方側に移動させ、第1方向における磁性板の位置を調整する磁性板位置調整工程と、磁性板位置調整工程後に磁性板配置穴に磁性板を固定する磁性板固定工程とを備えるアクチュエータの製造方法で製造される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、光学要素を保持する可動体と、可動体を回動可能に保持する固定体と、固定体に対して可動体を回動させる磁気駆動機構とを備えるアクチュエータにおいて、磁気駆動機構の駆動用コイルが非通電状態であるときに、固定体に対する可動体の回動方向において可動体を一定位置で保持することが可能であっても、アクチュエータのコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかるアクチュエータの斜視図である。
図2図1に示すアクチュエータの平面図である。
図3図1に示すアクチュエータの分解斜視図である。
図4】(A)は、図2のE-E断面の断面図であり、(B)は、図2のF-F断面の断面図である。
図5図2のG部の拡大図である。
図6図4(B)に示す磁性板の上下方向の位置の調整方法を説明するための図である。
図7】本発明の他の実施の形態に係る磁性板配置穴の構成を説明するための図である。
図8】本発明の他の実施の形態に係る磁性板配置穴の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(アクチュエータの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるアクチュエータ1の斜視図である。図2は、図1に示すアクチュエータ1の平面図である。図3は、図1に示すアクチュエータ1の分解斜視図である。図4(A)は、図2のE-E断面の断面図であり、図4(B)は、図2のF-F断面の断面図である。
【0023】
以下の説明では、図1等に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とし、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向とする。また、左右方向の一方側である図1等のX1方向側を「右」側とし、その反対側である図1等のX2方向側を「左」側とし、前後方向の一方側である図1等のY1方向側を「前」側とし、その反対側である図1等のY2方向側を「後ろ」側とし、上下方向の一方側である図1等のZ1方向側を「上」側とし、その反対側である図1等のZ2方向側を「下」側とする。
【0024】
本形態のアクチュエータ1は、光学要素としての光学ガラス2を振動させるための装置であり、プロジェクタに搭載されて使用される。光学ガラス2は、光の透過性を有するガラス板であり、正方形の平板状に形成されている。光学ガラス2は、プロジェクタの投射光学系の一部を構成している。アクチュエータ1は、プロジェクタが投影する映像を高画質化するために、光学ガラス2を所定の周波数で一定角度振動させて光学ガラス2の姿勢を周期的に変える。たとえば、アクチュエータ1は、光学ガラス2を60Hzで振動させる。
【0025】
アクチュエータ1は、全体として上下方向の厚さが薄い扁平な直方体状に形成されている。アクチュエータ1は、光学ガラス2を保持する可動体3と、可動体3を回動可能に保持する固定体4とを備えている。可動体3および固定体4は、枠状に形成されている。光学ガラス2は、可動体3の内周側に配置されている。可動体3は、固定体4の内周側に配置されている。また、アクチュエータ1は、固定体4に対して可動体3が傾く方向に可動体3を回動させて光学ガラス2を振動させる磁気駆動機構5と、固定体4に対する可動体3の回動の支点となる支点部6と、固定体4に対する可動体3の回動方向である可動体回動方向において固定体4に対して可動体3を一定位置で保持するための保持用磁石7および磁性板8、9とを備えている。本形態の磁性板9は、第2磁性板である。
【0026】
本形態では、磁気駆動機構5の一部を構成する後述の駆動用コイル16に電流が供給されていないときに(すなわち、駆動用コイル16が非通電状態であるときに)、可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が所定の基準位置に配置されている。可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、光学ガラス2の厚さ方向と上下方向とが一致している。
【0027】
また、可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、プロジェクタに搭載されたアクチュエータ1では、光学ガラス2の厚さ方向とプロジェクタの投射光学系の光軸方向とが一致しているとともに、プロジェクタの投射光学系の光軸が光学ガラス2の中心を通過する。なお、光学ガラス2が振動するときの固定体4に対する可動体3の回動角度は、たとえば、0.5°未満であって非常に小さい。そのため、光学ガラス2が振動しているのか否かにかかわらず、光学ガラス2の厚さ方向は、上下方向とほぼ一致している。
【0028】
可動体3は、固定体4の外周側から見たときに固定体4に対して可動体3が傾く方向に回動可能となっている。また、可動体3は、光学ガラス2の厚さ方向に直交する第1直交方向(図2のV方向)を回動の軸方向として固定体4に対して回動可能となっている。すなわち、可動体3は、第1直交方向を軸線方向とする軸線L1(図2参照)を回動中心にして固定体4に対して回動可能となっている。第1直交方向は、上下方向に直交している。また、第1直交方向は、上側から見たときに、前後方向に対して図2の時計回りの方向へ45°ずれた方向となっている。光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、軸線L1は、光学ガラス2の中心を通過している。支点部6は、第1直交方向における可動体3の両端側に配置されている。
【0029】
可動体3は、光学ガラス2を保持するガラスホルダである。可動体3は、非磁性材料で形成されている。また、可動体3は、樹脂材料で形成されている。可動体3は、上述のように枠状に形成されている。具体的には、可動体3は、正方形または長方形の枠状に形成されている。可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、外形が正方形状または長方形状をなす可動体3の外周面を構成する4辺のうちの2辺は、左右方向と平行になっており、残りの2辺は、前後方向と平行になっている。
【0030】
可動体3には、磁気駆動機構5の一部を構成する後述の駆動用磁石15が配置される磁石配置凹部3aと、保持用磁石7が配置される磁石配置凹部3bとが形成されている。磁石配置凹部3aは、可動体3の右端から左側に向かって窪んでいる。磁石配置凹部3bは、可動体3の左端から右側に向かって窪んでいる。磁石配置凹部3a、3bは、光学ガラス2の厚さ方向における可動体3の全域に形成されている。また、図3に示すように、可動体3には、第1直交方向の両側に向かって突出する突起部3cが形成されている。突起部3cは、円柱状に形成されている。円柱状に形成される突起部3cの軸方向は、第1直交方向と一致している。
【0031】
上述のように、光学ガラス2は、可動体3の内周側に配置されている。光学ガラス2は、可動体3に固定されている。可動体回動方向において固定体4に対して可動体3が基準位置に配置されているときには、外形が正方形状をなす光学ガラス2の外周面のうちの4辺のうちの2辺は、左右方向と平行になっており、残りの2辺は、前後方向と平行になっている。
【0032】
固定体4は、非磁性材料で形成されている。また、固定体4は、樹脂材料で形成されている。固定体4は、上述のように枠状に形成されている。具体的には、固定体4は、正方形または長方形の枠状に形成されている。外形が正方形状または長方形状をなす固定体4の外周面を構成する4辺のうちの2辺は、左右方向と平行になっており、残りの2辺は、前後方向と平行になっている。固定体4には、磁気駆動機構5の一部を構成する後述の駆動用コイル16が配置されるコイル配置凹部4aと、磁性板9が配置される磁性板配置凹部4bとが形成されている。
【0033】
コイル配置凹部4aおよび磁性板配置凹部4bは、固定体4の右辺部に形成されている。コイル配置凹部4aは、固定体4の右辺部の左端から右側に向かって窪んでいる。コイル配置凹部4aは、固定体4の上下方向の全域に形成されている。磁性板配置凹部4bは、コイル配置凹部4aの右側に形成されている。磁性板配置凹部4bは、コイル配置凹部4aよりも右側に窪んでいる。磁性板配置凹部4bは、固定体4の上下方向の全域には形成されておらず、固定体4の右辺部の下端側には、磁性板9が載置される磁性板載置部4cが形成されている。磁性板載置部4cの上面は、上下方向に直交する平面となっている。
【0034】
また、固定体4には、支点部6の一部を構成する後述の板バネ13が配置されるバネ配置部4dと、磁性板8が配置されて固定される磁性板配置穴4eとが形成されている。バネ配置部4dは、正方形の枠状に形成される固定体4の、一方の対角線上の2個の角部に形成されている。具体的には、バネ配置部4dは、固定体4の右後端の角部と左前端の角部とに形成されている。磁性板配置穴4eは、固定体4の左辺部に形成されている。磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通する貫通穴である。また、磁性板配置穴4eは、前後方向に細長い長方形の角穴である。磁性板配置穴4eの具体的な構成については後述する。
【0035】
支点部6は、球状に形成される球体(ボール)11と、球体11を保持するための球体保持部材12と、球体11の一部に所定の接触圧で接触する凹曲面状の接触面13a(図3参照)が形成される板バネ13とを備えている。球体11は、セラミックスで形成されている。球体保持部材12は、金属材料で形成されている。球体保持部材12は、筒状に形成される円筒部と筒部の一端に繋がる底部とを有する有底の円筒状に形成されている。球体保持部材12の内径は、球体11の外径よりも大きくなっている。
【0036】
球体保持部材12は、可動体3の突起部3cに固定されている。突起部3cは、第1直交方向の内側から球体保持部材12の内周側に軽圧入されている。球体保持部材12は、接着剤によって突起部3cに固定されている。球体11は、球体保持部材12の内周側に配置されている。球体保持部材12の底部は、突起部3cの先端面よりも第1直交方向の外側に配置されている。突起部3cの先端面と球体保持部材12の底部との間には、球体11を配置するための隙間が形成されている。
【0037】
球体保持部材12の底部には、球体保持部材12の内周側に配置される球体11の一部を球体保持部材12の外部に配置させるための貫通穴が形成されている。この貫通穴の内径は、球体11の外径よりも小さくなっている。球体11は、突起部3cの先端面に形成される凹部の底面に接触するとともに、貫通穴の縁に接触している。球体11の一部は、球体保持部材12の底部よりも第1直交方向の外側に配置されており、球体保持部材12の外部に配置されている。球体11は、突起部3cと球体保持部材12とによって可動体3に保持されている。
【0038】
板バネ13は、バネ性を有するステンレス鋼板等の金属板を所定形状に折り曲げることで形成されている。板バネ13は、U形状に形成されている。板バネ13は、上下方向から見たときの板バネ13の形状がU形状となるようにバネ配置部4dに配置されている。光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、右後端に配置される板バネ13と左前端に配置される板バネ13とは、光学ガラス2の中心に対して点対称に配置されている。板バネ13は、位置決めされた状態でバネ配置部4dに固定されている。板バネ13の接触面13aは、球体保持部材12の外部に配置される球体11の一部に第1直交方向の外側から所定の接触圧で接触している。板バネ13は、第1直交方向の内側に向かって球体11を付勢している。
【0039】
磁気駆動機構5は、駆動用磁石15と、駆動用磁石15に対向配置される駆動用コイル16とを備えている。駆動用磁石15は、可動体3に固定されている。具体的には、駆動用磁石15は、磁石配置凹部3aの中に配置されており、可動体3の右面側に固定されている。駆動用磁石15は、前後方向に細長い直方体状に形成されている。駆動用磁石15は、上下方向において分極された2個の着磁部15aによって構成されている。より具体的には、駆動用磁石15は、光学ガラス2の厚さ方向において分極された2個の着磁部15aによって構成されている。
【0040】
駆動用コイル16は、たとえば、導線が空芯状に巻回されることで形成された空芯コイルである。駆動用コイル16は、フレキシブルプリント基板17に実装されている。また、駆動用コイル16は、コイル配置凹部4aの中に配置されている。フレキシブルプリント基板17は、固定体4に固定されている。駆動用コイル16は、フレキシブルプリント基板17を介して固定体4に固定されている。駆動用磁石15と駆動用コイル16とは左右方向で対向している。
【0041】
磁気駆動機構5は、第1直交方向を回動の軸方向として固定体4に対して可動体3を回動させる。なお、フレキシブルプリント基板17には、固定体4に対する可動体3の回動位置を検知するためのホールセンサ(図示省略)が実装されている。ホールセンサは、駆動用磁石15に対向配置されている。駆動用コイル16には、ホールセンサの検知結果に基づいて電流が供給される。
【0042】
保持用磁石7は、可動体3に固定されている。具体的には、保持用磁石7は、磁石配置凹部3bの中に配置されており、可動体3の左面側に固定されている。保持用磁石7は、前後方向に細長い直方体状に形成されている。また、保持用磁石7は、駆動用磁石15と同様に構成されており、上下方向において分極された2個の着磁部7aによって構成されている。より具体的には、保持用磁石7は、光学ガラス2の厚さ方向において分極された2個の着磁部7aによって構成されている。
【0043】
図2に示すように、保持用磁石7の前後方向の中心と駆動用磁石15の前後方向の中心とは、前後方向においてずれている。具体的には、保持用磁石7の前後方向の中心は、駆動用磁石15の前後方向の中心よりも後ろ側に配置されている。本形態では、光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、保持用磁石7と駆動用磁石15とは、可動体3の中心に対して点対称に配置されている。また、光学ガラス2の厚さ方向から見たときに、保持用磁石7と駆動用磁石15とは、光学ガラス2の中心に対して点対称に配置されている。
【0044】
磁性板8は、磁性を有する金属材料によって形成されている。磁性板8は、平板状に形成されている。具体的には、磁性板8は、細長い長方形状の平板状に形成されている。磁性板8の厚さは薄くなっている。たとえば、磁性板8の厚さは、0.1~0.2(mm)程度となっており、非常に薄くなっている。磁性板8は、磁性板8の厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。すなわち、本形態の左右方向(X方向)は、磁性板8の厚さ方向となっている。また、磁性板8は、長方形状の平板状に形成される磁性板8の長辺方向と前後方向とが一致するように配置されている。
【0045】
磁性板8は、磁性板配置穴4eの中に配置されており、磁性板配置穴4eの中で固定されている。すなわち、磁性板8は、固定体4に固定されている。磁性板8は、接着剤によって固定体4に固定されている。たとえば、磁性板8は、熱硬化性の接着剤によって固定体4に固定されている。また、磁性板8は、保持用磁石7の左側に配置されている。すなわち、磁性板8は、磁性板8の厚さ方向において保持用磁石7の一方側に配置されている。保持用磁石7の左側面は、左右方向に略直交する平面となっており、上下方向において2極に着磁されている。駆動用コイル16が非通電状態であるときに、保持用磁石7の左側面の上下方向の中心と磁性板8の上下方向の中心とは、設計上、上下方向において一致している。本形態では、後述のように、固定体4に磁性板8を固定する前に上下方向における磁性板8の位置が調整される。
【0046】
本形態の左側(X2方向側)は、磁性板8の厚さ方向の一方側である厚さ方向一方側となっており、右側(X1方向側)は、磁性板8の厚さ方向の他方側である厚さ方向他方側となっている。また、本形態の上下方向(Z方向)は、磁性板8の厚さ方向に直交する第1方向となっており、前後方向(Y方向)は、磁性板8の厚さ方向と第1方向とに直交する第2方向となっている。さらに、本形態の下側(Z2方向側)は、第1方向の一方側である第1方向一方側となっており、上側(Z1方向側)は、第1方向の他方側である第1方向他方側となっている。
【0047】
磁性板9は、磁性板8と同様に構成されており、平板状に形成されている。磁性板9は、磁性板9の厚さ方向と左右方向とが一致するように配置されている。また、磁性板9は、長方形状の平板状に形成される磁性板9の長辺方向と前後方向とが一致するように配置されている。磁性板9は、磁性板配置凹部4bの中に配置されている。図4(A)に示すように、磁性板9は、磁性板載置部4cに載置されており、磁性板9の下端面は、磁性板載置部4cの上面に接触している。すなわち、磁性板9は、上下方向において位置決めされている。
【0048】
本形態の磁性板載置部4cは、第1方向である上下方向において磁性板9を位置決めするための位置決め部となっている。すなわち、固定体4には、第1方向において磁性板9を位置決めするための位置決め部である磁性板載置部4cが形成されている。また、磁性板9は、フレキシブルプリント基板17に固定されており、フレキシブルプリント基板17を介して固定体4に固定されている。磁性板9は、駆動用磁石15の右側に配置されている。駆動用磁石15の右側面は、左右方向に略直交する平面となっており、上下方向において2極に着磁されている。駆動用コイル16が非通電状態であるときに、駆動用磁石15の右側面の上下方向の中心と磁性板9の上下方向の中心とは、設計上、上下方向において一致している。
【0049】
本形態では、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を一定位置で保持するための(すなわち、固定体4に対して可動体3を一定の姿勢で保持するための)磁気的吸引力が、磁性板8と保持用磁石7との間、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じている。具体的には、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を基準位置で保持するための磁気的吸引力が、磁性板8と保持用磁石7との間、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じている。
【0050】
また、本形態では、上下方向における磁性板8の位置を調整することで、駆動用コイル16が非通電状態であるときの可動体回動方向における可動体3の位置を調整することが可能になっている。すなわち、本形態では、磁性板8の上下方向の位置によって駆動用コイル16が非通電状態であるときの可動体回動方向における可動体3の位置が規定されている。なお、本形態では、磁性板8、9の大きさを変えれば、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じる磁気的吸引力が変わる。また、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じる磁気的吸引力を変えることで、光学ガラス2を振動させるときのアクチュエータ1の共振周波数を変えることが可能になっている。
【0051】
(磁性板配置穴の構成)
図5は、図2のG部の拡大図である。
【0052】
上述のように、磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通する貫通穴である。すなわち、磁性板配置穴4eは、固定体4の上端および固定体4の下端で開口している。また、上述のように、磁性板配置穴4eは、前後方向に細長い長方形の角穴である。磁性板配置穴4eの左右方向の幅は、磁性板8の厚さよりも広くなっており、磁性板配置穴4eの前後方向の長さは、磁性板8の前後方向の長さ(長辺方向の長さ)よりも長くなっている。磁性板配置穴4eの右側の面は、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力によって磁性板8が接触する接触面4fとなっている。すなわち、磁性板配置穴4eの、保持用磁石7側の面は接触面4fとなっている。接触面4fは、左右方向に直交する平面である。
【0053】
接触面4fには、右側に向かって(すなわち、保持用磁石7側に向かって)窪む凹部4gが形成されている。凹部4gは、磁性板配置穴4eの下端から上側に向かって直線状に形成されている。すなわち、凹部4gは、上下方向に平行な直線状に形成されている。本形態の凹部4gは、磁性板配置穴4eの上下方向の全域に形成されており、磁性板配置穴4eの下端から磁性板配置穴4eの上端まで形成されている。また、凹部4gは、前後方向において間隔をあけた状態で複数箇所に形成されている。本形態では、接触面4fの前端部と後端部との2箇所に凹部4gが形成されている。上下方向から見たときの凹部4gの側面は、円弧状の凹曲面になっている。
【0054】
磁性板配置穴4eの左側の面である左側面4hは、左右方向に直交する平面となっている。左側面4hには、左側に向かって窪む第2凹部としての凹部4jが形成されている。凹部4jは、磁性板配置穴4eの下端から磁性板配置穴4eの上端まで直線状に形成されている。すなわち、凹部4jは、上下方向に平行な直線状に形成されている。凹部4jは、前後方向において凹部4gと同じ位置に形成されている。すなわち、凹部4jは、2箇所に形成されている。また、上述のように、凹部4jは、磁性板配置穴4eの下端から磁性板配置穴4eの上端まで形成されており、上下方向において凹部4gと同じ範囲に形成されている。
【0055】
上下方向から見たときの凹部4jの側面は、円弧状の凹曲面になっている。凹部4jの側面の曲率半径は、凹部4gの側面の曲率半径と等しくなっている。また、上下方向から見たときに、凹部4jの側面の曲率中心は、凹部4gの側面の曲率中心と一致している。
【0056】
(アクチュエータの製造方法)
図6は、図4(B)に示す磁性板8の上下方向の位置の調整方法を説明するための図である。
【0057】
本形態では、アクチュエータ1を構成する各部品のばらつきやアクチュエータ1の製造上のばらつきが生じても、駆動用コイル16が非通電状態であるときの光学ガラス2の厚さ方向と上下方向とが一致するように、アクチュエータ1の製造工程の最終段階において、固定体4に対する磁性板8の上下方向の位置が調整される。磁性板8の上下方向の位置が調整されるときには、光学ガラス2、保持用磁石7および駆動用磁石15が固定された可動体3と支点部6とが固定体4に取り付けられるとともに、磁性板9、駆動用コイル16およびフレキシブルプリント基板17が固定体4に取り付けられている。
【0058】
磁性板8の上下方向の位置調整には、棒状の治具20が使用される。治具20は、円柱状に形成されている。治具20の半径(外径の半分)は、凹部4g、4jの側面の曲率半径とほぼ等しくなっている。本形態では、磁性板8の上下方向の位置調整に2本の治具20が使用される。2本の治具20は、治具20の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、2本の治具20は、前後方向に間隔をあけた状態で配置されている。2本の治具20の前後方向のピッチは、2個の凹部4gの前後方向のピッチと等しくなっている。2本の治具20は、治具20を昇降させる昇降機構(図示省略)に連結されている。治具20は、磁性板配置穴4eの、凹部4g、4jが形成された箇所に挿入される。なお、治具20の先端面の縁には、面取り加工が施されている。
【0059】
また、磁性板8の上下方向の位置が調整されるときには、磁性板8は、磁性板配置穴4eの中に配置されている。磁性板8は、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力によって接触面4fに接触している。磁性板8は、磁性板配置穴4eの中で接着固定されていない状態においても、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力によって、上下方向の一定位置で保持されている。
【0060】
上下方向の位置調整が行われる前の磁性板8は、設計上の磁性板8の上下方向の位置よりも下側に配置されている。この状態で、図6(A)に示すように、凹部4g、4jに一部が配置される治具20を下側から磁性板配置穴4eに挿入するとともに(すなわち、先端面が上側を向いている治具20を、磁性板配置穴4eの凹部4g、4jが形成されている部分に下側から挿入するとともに)、磁性板配置穴4eの中に配置される固定前の磁性板8の下端面に治具20の先端面を接触させて磁性板8を上側に移動させ、上下方向における磁性板8の位置を調整する(磁性板位置調整工程)。
【0061】
磁性板位置調整工程では、たとえば、レーザ変位計によって光学ガラス2の傾きを確認しながら、磁性板8を徐々に上側に移動させていく。光学ガラス2の厚さ方向と上下方向とが一致すると、上下方向における磁性板8の位置調整が終わる。上下方向における磁性板8の位置調整が終わると、磁性板配置穴4eに磁性板8を固定する(磁性板固定工程)。すなわち、磁性板位置調整工程後には、磁性板配置穴4eに磁性板8を固定する。具体的には、接着剤によって磁性板配置穴4eに磁性板8を固定する。
【0062】
また、磁性板位置調整工程において、磁性板8を上側に移動させ過ぎてしまった場合には、磁性板配置穴4eに磁性板8を固定する前に、図6(B)に示すように、凹部4g、4jに一部が配置される治具20を上側から磁性板配置穴4eに挿入するとともに(すなわち、先端面が下側を向いている治具20を、磁性板配置穴4eの凹部4g、4jが形成されている部分に上側から挿入するとともに)、磁性板配置穴4eの中に配置される固定前の磁性板8の上端面に治具20の先端面を接触させて磁性板8を下側に移動させ、上下方向における磁性板8の位置を調整する。上下方向における磁性板8の位置調整が終わると、磁性板配置穴4eに磁性板8を固定する。
【0063】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を基準位置で保持するための磁気的吸引力が、磁性板8と保持用磁石7との間、および、磁性板9と駆動用磁石15との間に生じている。そのため、本形態では、薄い平板状の2枚の磁性板8、9と、1個の保持用磁石7と、磁気駆動機構5の一部を構成する駆動用磁石15とによって、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を基準位置で保持することが可能になる。したがって、本形態では、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を一定位置で保持することが可能であっても、3個の制動用磁石および駆動用磁石を有する特許文献1に記載の画像ずらし装置と比較して、アクチュエータ1のコストを低減することが可能になる。
【0064】
本形態では、磁性板8の上下方向の位置によって駆動用コイル16が非通電状態であるときの可動体回動方向における可動体3の位置が規定されている。また、本形態では、アクチュエータ1の製造時に、凹部4g、4jに一部が配置される治具20を下側から磁性板配置穴4eに挿入するとともに、磁性板配置穴4eの中に配置される固定前の磁性板8の下端面に治具20の先端面を接触させて磁性板8を上側に移動させ、上下方向における磁性板8の位置を調整している。そのため、本形態では、駆動用コイル16が非通電状態であるときの光学ガラス2の厚さ方向と上下方向とが一致するように可動体回動方向における可動体3の位置を調整することが可能になる。
【0065】
また、本形態では、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる磁気的吸引力によって磁性板8が接触する接触面4fに左側に向かって窪む凹部4gが形成されており、凹部4gは、磁性板配置穴4eの下端から上端まで直線状に形成されている。そのため、本形態では、磁性板8の厚さが非常に薄くなっていても、また、棒状に形成される治具20の先端面の縁に面取り加工が施されていても、一部が凹部4gの中に配置される治具20の先端面を磁性板8の下端面に確実に接触させることが可能になる。したがって、本形態では、磁性板8の厚さが非常に薄くなっていても、また、治具20の先端面の縁に面取り加工が施されていても、治具20を用いて磁性板8の上下方向の位置を容易に調整することが可能になる。
【0066】
本形態では、凹部4gは、前後方向において間隔をあけた状態で2箇所に形成されている。そのため、本形態では、前後方向に間隔をあけた状態で配置される2本の治具20を用いて、磁性板8を上下方向に移動させやすくなる。したがって、本形態では、磁性板8の上下方向の位置をより容易に調整することが可能になる。
【0067】
本形態では、磁性板配置穴4eは、上下方向で固定体4を貫通する貫通穴であり、凹部4gは、上下方向における磁性板配置穴4eの全域に形成されている。そのため、本形態では、上述のように、磁性板位置調整工程において磁性板8を上側に移動させ過ぎてしまっても、先端面が下側を向いている治具20を、磁性板配置穴4eの凹部4g、4jが形成されている部分に上側から挿入するとともに、磁性板配置穴4eの中に配置される固定前の磁性板8の上端面に治具20の先端面を確実に接触させて磁性板8を下側に戻すことが可能になる。
【0068】
本形態では、磁性板配置穴4eの左側面4hに、左側に向かって窪む凹部4jが形成されており、凹部4jは、前後方向において凹部4gと同じ位置に形成されるとともに、上下方向における磁性板配置穴4eの全域に形成されている。そのため、本形態では、磁性板配置穴4eの左右方向の幅が狭くても、凹部4g、4jを利用して、磁性板配置穴4eに治具20を挿入して、上下方向に磁性板8を移動させることが可能になる。
【0069】
本形態では、磁性板9は、固定体4の磁性板載置部4cに載置されていて、上下方向で位置決めされており、磁性板9の上下方向の位置調整は行われない。そのため、本形態では、磁性板9の上下方向の位置調整が行われる場合と比較して、アクチュエータ1の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0070】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0071】
上述した形態では、凹部4gは、磁性板配置穴4eの上下方向の全域に形成されているが、凹部4gは、少なくとも、磁性板配置穴4eの下端から、磁性板配置穴4eの中で固定されている状態の磁性板8の下端までの範囲と、磁性板配置穴4eの上端から、磁性板配置穴4eの中で固定されている状態の磁性板8の上端までの範囲とに形成されていれば良い。
【0072】
上述した形態では、磁性板配置穴4eの全体が上下方向で固定体4を貫通しているが、磁性板配置穴4eの一部のみが上下方向で固定体4を貫通していても良い。たとえば、図7に示すように、磁性板配置穴4eの、凹部4g、4jが形成されている部分のみが上下方向で固定体4を貫通していても良い。この場合には、たとえば、磁性板配置穴4eの、上下方向で貫通している部分の上端部は、丸穴となっており、磁性板配置穴4eの、上下方向で貫通している部分に固定体4の上側から治具20を挿入して、磁性板8を下側に移動させることが可能になっている。なお、図7(B)は、図7(A)のH-H断面の断面図であり、図7(C)は、図7(A)のJ-J断面の断面図である。
【0073】
また、磁性板配置穴4eの一部のみが上下方向で固定体4を貫通している場合には、たとえば、図8に示すように、磁性板配置穴4eの、凹部4g、4jが形成されていない一部分のみが上下方向で固定体4を貫通していても良い。この場合には、たとえば、磁性板配置穴4eの、上下方向で貫通している部分の上端部は、丸穴となっており、この部分には、接触面4fよりも右側に窪む凹部4pと左側面4hよりも左側に窪む凹部4rとが形成されている。
【0074】
また、この場合でも、磁性板配置穴4eの、上下方向で貫通している部分に固定体4の上側から治具20を挿入して、磁性板8を下側に移動させることが可能になっている。また、この場合には、凹部4gは、磁性板配置穴4eの上下方向の全域に形成されていても良いが、少なくとも、磁性板配置穴4eの下端から、磁性板配置穴4eの中で固定されている状態の磁性板8の下端までの範囲に形成されていれば良い。なお、図8(B)は、図8(A)のK-K断面の断面図である。
【0075】
上述した形態において、磁性板配置穴4eは、上下方向において固定体4を貫通していなくても良い。この場合には、磁性板配置穴4eは、たとえば、固定体4の下端から上側に向かって窪むように形成されており、固定体4の下端のみで開口している。また、この場合には、凹部4gは、たとえば、磁性板配置穴4eの上下方向の全域に形成されていても良いが、凹部4gは、少なくとも、磁性板配置穴4eの下端から、磁性板配置穴4eの中で固定されている状態の磁性板8の下端までの範囲に形成されていれば良い。
【0076】
また、磁性板配置穴4eが上下方向において固定体4を貫通していない場合には、磁性板配置穴4eは、固定体4の上端から下側に向かって窪むように形成されていて、固定体4の上端のみで開口していても良い。この場合には、上側(Z1方向側)が第1方向一方側となっており、下側(Z2方向側)が第1方向他方側となっている。
【0077】
上述した形態において、治具20は、円柱状に形成されていなくても良い。たとえば、治具20は、角柱状に形成されていても良い。この場合には、上下方向から見たときの凹部4g、4jの側面の形状は、治具20の形状に応じた形状になっている。また、上述した形態において、凹部4g、4jは、前後方向において間隔をあけた状態で3箇所以上に形成されていても良い。また、凹部4g、4jは、1箇所のみに形成されていても良い。
【0078】
上述した形態において、磁性板配置穴4eの左右方向の幅が広くなっていて、左側面4hに凹部4jが形成されていなくても、磁性板配置穴4eに治具20を挿入することができるのであれば、左側面4hに凹部4jが形成されていなくても良い。また、磁性板配置穴4eは、固定体4の左端において開口していても良い。また、上述した形態において、アクチュエータ1は、磁性板9を備えていなくても良い。この場合には、駆動用コイル16が非通電状態であるときに可動体回動方向において可動体3を一定位置で保持するための磁気的吸引力が、磁性板8と保持用磁石7との間に生じる。
【0079】
上述した形態において、保持用磁石7が固定体4に固定され、磁性板8が可動体3に固定されていても良い。この場合には、磁性板8が配置されて固定される磁性板配置穴が可動体3に形成されている。また、上述した形態において、駆動用磁石15が固定体4に固定され、駆動用コイル16および磁性板9が可動体3に固定されていても良い。さらに、上述した形態において、磁気駆動機構5は、駆動用コイル16に加えて、保持用磁石7に対向配置される駆動用コイルを備えていても良い。この場合には、保持用磁石7は、磁気駆動機構5の一部を構成しており、駆動用磁石としての機能を果たす。
【0080】
上述した形態において、アクチュエータ1は、プロジェクタ以外の装置に搭載されて使用されても良い。この場合には、光学ガラス2以外の光学要素が可動体3に保持されていても良い。たとえば、レンズ、プリズム、反射板または光学フィルタ等の光学素子が可動体3に保持されていても良い。また、撮像素子が可動体3に保持されていても良い。可動体3に撮像素子が保持されている場合には、アクチュエータ1は、たとえば、カメラに搭載されている。本明細書における「光学要素」には、撮像素子も含まれている。
【符号の説明】
【0081】
1 アクチュエータ
2 光学ガラス(光学要素)
3 可動体
4 固定体
4c 磁性板載置部(位置決め部)
4e 磁性板配置穴
4f 接触面
4g 凹部
4h 左側面(磁性板配置穴の厚さ方向一方側の面)
4j 凹部(第2凹部)
5 磁気駆動機構
7 保持用磁石
7a 着磁部
8 磁性板
9 磁性板(第2磁性板)
15 駆動用磁石
15a 着磁部
16 駆動用コイル
20 治具
X 磁性板の厚さ方向
X1 厚さ方向他方側
X2 厚さ方向一方側
Y 第2方向
Z 第1方向
Z1 第1方向他方側
Z2 第1方向一方側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8