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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119153
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】バケット昇降機の監視システム
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021848
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】宮野 崇
(72)【発明者】
【氏名】舟木 俊貴
【テーマコード(参考)】
3F027
【Fターム(参考)】
3F027AA02
3F027CA07
3F027DA23
3F027FA01
(57)【要約】
【課題】無端ベルトの裏面側の点検を簡単に行うことができるバケット昇降機の監視システムを提供する。
【解決手段】バケット昇降機1の監視システム20は、表面にバケット8が取り付けられたバケットベルト7を周回移動させることにより、バケット8に入れた被搬送物Cを上方へと搬送するよう構成されている。該監視システム20は、バケットベルト7の裏面を撮影可能な撮影部12と、撮影部12が撮影した画像に基づいて、バケットベルト7の裏面の状態を監視する監視部21と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にバケットが取り付けられた無端ベルトを周回移動させることにより、前記バケットに入れた被搬送物を上方へと搬送するよう構成されたバケット昇降機の監視システムであって、
前記無端ベルトの裏面を撮影可能な撮影部と、
該撮影部が撮影した画像に基づいて、前記無端ベルトの裏面の状態を監視する監視部と、を有することを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載のバケット昇降機の監視システムにおいて、
前記監視部は、前記無端ベルトの裏面における劣化部分の面積に基づいて、前記無端ベルトの交換が必要な状態であるか否かを判断することを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバケット昇降機の監視システムにおいて、
前記監視部は、前記無端ベルトにおける搬送方向に直交する方向のずれ面積に基づいて、前記無端ベルトが蛇行状態であるか否かを判断することを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載のバケット昇降機の監視システムにおいて、
前記バケット昇降機は、被搬送物を前記バケット昇降機の内部に投入可能な投入部と、該被搬送物を前記バケット昇降機の外部に排出可能な排出部と、を備え、
前記無端ベルトは、前記投入部に対応する位置から前記排出部に対応する位置まで前記被搬送物を搬送する搬送領域と、当該搬送領域を除く非搬送領域と、を有しており、
前記撮影部は、前記非搬送領域における前記無端ベルトの裏面を撮影可能であることを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載のバケット昇降機の監視システムにおいて、
前記バケット昇降機は、前記無端ベルトの上端側が巻き掛けられた第1プーリーと、該第1プーリーの下側に配設され、かつ、前記無端ベルトの下端側が巻き掛けられた第2プーリーと、を備え、
前記撮影部は、前記無端ベルトの内側で、且つ、前記第1プーリーと前記第2プーリーとの間に形成された空間に配設されていることを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【請求項6】
請求項5に記載のバケット昇降機の監視システムにおいて、
前記撮影部は、上下方向において前記第1プーリーよりも前記第2プーリーに近接した位置に配設されていることを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のバケット昇降機の監視システムにおいて、
前記撮影部は、レンズ部が撮影方向前端に取り付けられた本体ケースと、該本体ケースの上方を覆うカバーとを備え、
該カバーの上面は、前記レンズ部に対応する位置まで延びる下り傾斜面になっていることを特徴とするバケット昇降機の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物等を上方に搬送するバケット昇降機の監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、米などの穀物を上方に搬送するバケット昇降機が知られている。例えば、特許文献1に開示されているバケット昇降機は、上下に離間して配置された上側プーリー及び下側プーリーと、当該上側プーリー及び下側プーリーに巻き掛けられた無端ベルトと、該無端ベルトの表面側において当該無端ベルトの周方向に等間隔に取り付けられた複数のバケットと、を備え、無端ベルトが各プーリーの回転動作により周回移動して各バケットに入れた穀物を上方へと順次搬送するようになっている。そして、無端ベルトにおいて下方に移動する側には、当該無端ベルトの表面を撮影可能なカメラが配設されていて、該カメラで撮影した無端ベルトの表面の画像に基づいて、無端ベルトの表面が劣化しているかどうかを判断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-17334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バケット昇降機の無端ベルトは、周回移動する際、回転する各プーリーに直接接触する裏面側の方が表面側よりも劣化しやすいことが一般的に知られている。
【0005】
しかし、特許文献1では、カメラが無端ベルトの表面側に配設されていて、当該無端ベルトをその表面側からしか撮影できない。したがって、設備を止めたり、或いは、設備に予め設けられた点検用窓を利用して無端ベルトの裏面側の状態を周期的に目視で監視しなければならず、作業が煩雑であるという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無端ベルトの裏面側の点検を簡単に行うことができるバケット昇降機の監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、無端ベルトの裏面の撮影画像に基づいて、無端ベルトの裏面の状態を監視するようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、表面にバケットが取り付けられた無端ベルトを周回移動させることにより、前記バケットに入れた被搬送物を上方へと搬送するよう構成されたバケット昇降機の監視システムを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明では、前記無端ベルトの裏面を撮影可能な撮影部と、該撮影部が撮影した画像に基づいて、前記無端ベルトの裏面の状態を監視する監視部と、を有することを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、前記監視部は、前記無端ベルトの裏面における劣化部分の面積に基づいて、前記無端ベルトの交換が必要な状態であるか否かを判断することを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、前記監視部は、前記無端ベルトにおける搬送方向に直交する方向のずれ面積に基づいて、前記無端ベルトが蛇行状態であるか否かを判断することを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、前記バケット昇降機は、被搬送物を前記バケット昇降機の内部に投入可能な投入部と、該被搬送物を前記バケット昇降機の外部に排出可能な排出部と、を備え、前記無端ベルトは、前記投入部に対応する位置から前記排出部に対応する位置まで前記被搬送物を搬送する搬送領域と、当該搬送領域を除く非搬送領域と、を有しており、前記撮影部は、前記非搬送領域における前記無端ベルトの裏面を撮影可能であることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、前記バケット昇降機は、前記無端ベルトの上端側が巻き掛けられた第1プーリーと、該第1プーリーの下側に配設され、かつ、前記無端ベルトの下端側が巻き掛けられた第2プーリーと、を備え、前記撮影部は、前記無端ベルトの内側で、且つ、前記第1プーリーと前記第2プーリーとの間に形成された空間に配設されていることを特徴とする。
【0014】
第6の発明では、第5の発明において、前記撮影部は、上下方向において前記第1プーリーよりも前記第2プーリーに近接した位置に配設されていることを特徴とする。
【0015】
第7の発明では、第5又は第6の発明において、レンズ部が撮影方向前端に取り付けられた本体ケースと、該本体ケースの上方を覆うカバーとを備え、前記カバーの上面は、前記レンズ部に対応する位置まで延びる下り傾斜面になっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、無端ベルトの裏面における欠け、キズ等の劣化の有無について撮影画像を用いて監視することが可能となる。したがって、作業者が、周期的に設備を止めたり、或いは、点検用窓を覗いて無端ベルトの裏面側の状態を確認するといった手間のかかる作業をする必要が無くなり、簡単に無端ベルトの裏面側の状態を確認することができる。
【0017】
第2の発明では、無端ベルトの裏面における劣化部分の割合が定量的に分かるようになって無端ベルトの交換時期を適切に判断できるようになる。これにより、例えば、作業員等の目視により無端ベルトの裏面の状態を監視することで、その交換時期がばらついてしまうのを抑制することができる。したがって、交換を要するほど劣化していないにもかかわらず無端ベルトの交換が行われることで、その交換にかかるコスト上昇を招くこと、或いは、無端ベルトの交換が遅れることで、ベルト切れが発生するのを防ぐことができる。
【0018】
第3の発明では、無端ベルトの周回動作時における周回移動方向に対する直交方向への移動量が分かるようになるので、蛇行量を定量的に判断可能になり、無端ベルトが蛇行状態であるか否かを正確に判断することができる。
【0019】
第4の発明では、被搬送物が排出された後の非搬送領域においては、搬送領域に比べて無端ベルト周りに飛散する被搬送物が少ないので、無端ベルトの裏面に被搬送物が付着し難くなる。したがって、無端ベルトの裏面の撮影画像を用いて該無端ベルトの裏面の状態を監視する際において、非搬送領域において無端ベルトの裏面を撮影することにより、無端ベルトの裏面に付着して撮影画像に映り込んだ被搬送物を無端ベルトの劣化部分であると誤判断してしまうといったことを防止することができる。
【0020】
第5の発明では、第1プーリーと第2プーリーとの間のデットスペースを利用して、撮影部を配設することができる。これにより、バケット昇降機が大型化するのを防止することができる。
【0021】
第6の発明では、撮影部が地上から比較的近い位置に配設されるようになるので、例えば、作業者等が脚立を用いずに撮影部の角度調整等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0022】
第7の発明では、もし仮に、バケットから溢れ出た被搬送物が撮影部に向かって上方から降りかかってきた場合であっても、被搬送物がカバーの上面の下り傾斜面に接触した後、当該下り傾斜面に沿って滑り落ちてレンズ部の上側部分を越えて下方に落下するようになる。したがって、撮影部に被搬送物が堆積するのを抑制して、当該被搬送物が無端ベルトの裏面の撮影、つまり、該裏面の状態の監視に影響を及ぼすといったことを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る監視システムを備えたバケット昇降機を正面から視た概略断面図である。
図2】下部ケーシングを正面から視た概略断面図である。
図3図2の矢視Aから視た点検用窓周辺の拡大図である。
図4】本発明の実施形態に係る監視システムを示すブロック図である。
図5】監視部による処理を示すフローチャートである。
図6図2の矢視Bから点検用窓を介してバケットベルトの裏面側を視た図であって、バケットベルトの裏面が劣化している状態を示す図である。
図7図2の矢視Bから点検用窓を介してバケットベルトの裏面側を視た図であって、バケットベルトの裏面が劣化していない状態及びバケットベルトが蛇行していない状態を示す図である。
図8図2の矢視Bから点検用窓を介してバケットベルトの裏面側を視た図であって、バケットベルトが蛇行している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る監視システムを備えたバケット昇降機1を示す。該バケット昇降機1は、上部ケーシング2、中間ケーシング3、及び、下部ケーシング4が上から順に配設された縦長な形状になっており、下部ケーシング4内に投入された被搬送物C(例えば、米などの穀物)を当該下部ケーシング4から中間ケーシング3内を通って上部ケーシング2まで上方に搬送するように構成されている。
【0026】
上部ケーシング2の内部には、当該上部ケーシング2に軸支された第1プーリー5が収容され、該第1プーリー5は、プーリー駆動モーター5a(図4参照)により回転駆動されるようになっている。
【0027】
中間ケーシング3は、平面視で四角筒形状をなすとともに上下方向に略直線状に延びる第1通路部3a及び第2通路部3bがバケット昇降機1の幅方向に所定の間隔をあけて配設されている。
【0028】
下部ケーシング4の内部には、当該下部ケーシング4に軸支された第2プーリー6が収容され、該第2プーリー6は、第1プーリー5の真下に位置している。
【0029】
第1プーリー5と第2プーリー6とには、無端状の環状をなす所謂平ベルトであるバケットベルト7(無端ベルト)の上端領域と下端領域とがそれぞれ巻き掛けられ、該バケットベルト7の表面側には、正面視で略三角形状をなす複数のバケット8が周方向に所定の間隔をあけて等間隔に取り付けられている。
【0030】
バケットベルト7の裏面には、第1プーリー5及び第2プーリー6が直接接触していて、バケットベルト7は、第1プーリー5及び第2プーリー6の周りを正面視で反時計周りに周回移動するようになっている。
【0031】
下部ケーシング4の幅方向一側の外側面には、内部通路が下部ケーシング4の内部に連通する投入ホッパ9が取り付けられている。そして、投入ホッパ9に被搬送物Cを投入すると、投入ホッパ9の内部通路によって案内される被搬送物Cが下部ケーシング4の内部に導入され、下部ケーシング4内に位置するバケット8の開口部8aから当該バケット8内に入り込むようになっている。
【0032】
該バケット8内に入り込んだ被搬送物Cは、バケットベルト7の周回動作により、下部ケーシング4から第1通路部3aを通過して上部ケーシング2にまで上方に搬送されるようになっている。
【0033】
被搬送物Cを積んだバケット8が第1プーリー5にまで達すると、バケットベルト7による周回動作によってバケット8が第1プーリー5の外周面に沿って折り返して下方に進むようになっている。このとき、バケット8は、第1プーリー5の周りを反時計周りに移動するので、この際に発生する遠心力によりバケット8内に入れられた被搬送物Cが幅方向他側に向けて放出されるようになっている。そして、上部ケーシング2の幅方向他側には、内部通路が上部ケーシング2の内部に連通する排出ホッパ10が取り付けられていて、バケット8から放出された被搬送物Cは、排出ホッパ10の内部通路に案内されてバケット昇降機1の外部へと排出されるようになっている。
【0034】
被搬送物Cを放出して空になったバケット8は、下方に移動して上部ケーシング2と第2通路部3bとを順に通過した後、下部ケーシング4の第2プーリー6に到達するようになっている。そして、第2プーリー6に達したバケット8は、バケットベルト7の周回動作により第2プーリー6の外周面に沿って反時計回りに移動するようになっていて、その際、投入ホッパ9から導入されて下部ケーシング4内に満たされた状態の被搬送物Cをすくい上げてバケット8内に被搬送物Cを入れ込むようになっている。そして、被搬送物Cが入ったバケット8は、バケットベルト7の周回動作により、再び上部ケーシング2に向けて上方に移動するようになっている。
【0035】
本実施形態では、バケットベルト7における投入ホッパ9に対応する位置から排出ホッパ10に対応する位置まで被搬送物Cを搬送している領域を搬送領域とし、該搬送領域を除く領域、つまり、被搬送物Cを搬送していない領域を非搬送領域とする。より詳細には、搬送領域は、被搬送物Cが入れられたバケット8が第2プーリー6周辺から第1プーリー5周辺に向けて上方に移動した後、排出ホッパ10に向けて被搬送物Cを排出するまでの領域、つまり、バケット8の開口部8aが上方を向いている領域及びバケット8が第1プーリー5の周りを反時計周りに動いている領域を指すものとする。さらに、非搬送領域は、排出ホッパ10に向けて被搬送物Cを放出した後のバケット8内が空になった状態において、バケット8が第1プーリー5周辺から第2プーリー6周辺に向けて下方に移動した後、下部ケーシング4においてバケット8内に被搬送物Cを入れる前までの領域、つまり、バケット8の開口部8aが下方を向いている領域を指すものとする。
【0036】
次に、下部ケーシング4の内部構造について、図2を用いて詳述する。なお、便宜上、図2では、一部のバケット8を省略している。
【0037】
下部ケーシング4の内部には、図2に示すように、バケットベルト7の内側で、且つ、第1プーリー5と第2プーリー6との間、つまり、下部ケーシング4内における第2プーリー6の上方に空間Sが形成されている。該空間Sは、上方に開口しており、上下方向に延びかつ幅方向に間隔を空けて配設された第1隔壁11a及び第2隔壁11bと、水平方向に延びて第1隔壁11aの下部と第2隔壁11bの下部とを連結する第3隔壁11cとにより形成されている。
【0038】
空間Sには、撮影部12と照明部13とが上から順に配設されている。つまり、本実施形態では、撮影部12は、上下方向において第1プーリー5よりも第2プーリー6に近接した位置に配設されている。
【0039】
撮影部12は、画像を連続して撮影可能なカメラであり、撮影方向が第2隔壁11b側の斜め下方に向いている。撮影部12は、ブラケット11dを介して第1隔壁11aに固定された本体ケース12aを備え、該本体ケース12aにおける撮影方向の前端には、レンズ部12bが取り付けられている。
【0040】
また、撮影部12には、本体ケース12aの上方を覆うカバー12cが備えられていて、該カバー12cの上面には、本体ケース12aにおけるレンズ部12bに対応する位置まで延びる下り傾斜面12dが形成されている。
【0041】
第2隔壁11bの下部には、点検用窓14が設けられている。該点検用窓14は、撮影部12の撮影方向において、撮影部12とバケットベルト7の裏面とを結ぶ位置に設けられ、撮影部12は、点検用窓14を介してバケットベルト7の裏面を撮影可能となっている。
【0042】
照明部13は、例えば、LED照明であり、点検用窓14の幅方向一側に配設されている。該照明部13から照明光が照射されると、点検用窓14を透過する照明光によってバケットベルト7の裏面及びその周辺が照らされるようになっている。
【0043】
点検用窓14の幅方向他側には、エアレーション15が設けられている。該エアレーション15は、図3に示すように、バケットベルト7の幅方向両側にそれぞれ設けられており、点検用窓14における幅方向他側の面、つまり、バケットベルト7の裏面に対向する面に付着した搬送物や塵埃等を除去するようにエアを噴風可能に構成されている。
【0044】
次に、本発明の実施形態に係る監視システム20について、図4を用いて説明する。
【0045】
監視システム20は、バケット昇降機1に備えられた監視部21、中央コントローラ22及びディスプレイ23により構成され、監視部21と中央コントローラ22との間、及び、中央コントローラ22とディスプレイ23との間、において各種信号が送受信可能に接続されている。
【0046】
監視部21は、当該監視部21に設けられた図示しないプロセッサーを用いて、プーリー駆動モーター5a、撮影部12、照明部13、及び、エアレーション15を制御することにより、バケットベルト7の裏面の状態を監視するように構成されている。そして、監視部21は、バケットベルト7の裏面に劣化等が発生している場合、中央コントローラ22に向けてバケットベルト7の劣化状態を示す信号を送信するようになっている。該信号を受信した中央コントローラ22は、ディスプレイ23に向けて上記受信した信号に対応する所定の制御信号を送信する。そして、ディスプレイ23が該所定の制御信号を受信すると、該所定の制御信号に対応する表示を行うようになっていて、これにより、ディスプレイ23を視認した作業者等にバケットベルト7の交換等を促すことが可能となっている。
【0047】
次に、監視部21の処理について、図5を用いて説明する。なお、図5に示す処理は、バケット昇降機1の電源がOFF状態からON状態にされた際にスタートする。
【0048】
ステップS1では、エアレーション15を起動させる。すなわち、ステップS1では、点検用窓14に向けてエアを噴風するようにエアレーション15に駆動信号を送信する。該駆動信号を受信したエアレーション15が点検用窓14に向けてエアを噴風すると、点検用窓14のバケットベルト7側の面に付着した異物が除去される。
【0049】
ステップS1にてエアレーション15を起動させた後、ステップS2に進んで照明部13を起動させる。すなわち、ステップS2では、バケットベルト7の裏面側に向けて照明光を照射するように照明部13に駆動信号を送信する。該駆動信号を受信した照明部13が照明光を照射すると、該照明光が点検用窓14を介してバケットベルト7に到達し、該バケットベルト7の裏面及びその周辺が照明光により照らされる。
【0050】
ステップS2にて照明部13を起動させた後、ステップS3に進んでプーリー駆動モーター5aを起動させる。すなわち、ステップS3では、所定回転数で回転するように、プーリー駆動モーター5aに駆動信号を送信する。該駆動信号を受信したプーリー駆動モーター5aが回転すると、当該プーリー駆動モーター5aに連結された第1プーリー5が回転し、該第1プーリー5に巻き掛けられているバケットベルト7が周回移動する。
【0051】
ステップS3にてバケットベルト7を周回移動させた後、ステップS4に進んで撮影部12において撮影を開始させる。すなわち、ステップS4では、周回移動しているバケットベルト7の裏面側の撮影を開始するように撮影部12に駆動信号を送信する。該撮影部12は、該駆動信号を受信すると、バケットベルト7の裏面の撮影を開始し、その撮影した画像を監視部21に向けて送信する。
【0052】
ステップS4にて撮影した画像を監視部21に向けて送信すると、ステップS5に進んで撮影部12におけるバケットベルト7の裏面側の撮影時間Tのカウントを開始し、その後、ステップS6に進む。
【0053】
ステップS6では、撮影時間Tが所定時間を経過したか否かを判断する。該判断がYesの場合は、ステップS7へ進む一方、上記判断がNoの場合は、撮影時間Tが所定時間を経過するまでステップS6の判断を繰り返し行う。本実施形態では、所定時間は、周回移動するバケットベルト7が第1プーリー5及び第2プーリー6の周りを1周するのに必要な時間が予め設定されている。
【0054】
ステップS7では、撮影部12が撮影した画像からバケットベルト7裏面の総劣化面積を算出した後、ステップS8に進む。つまり、ステップS7では、図6及び7に示すように、バケットベルト7の幅に対応して設定された所定の検出範囲R毎にバケットベルト7の劣化部分の面積(劣化面積)を算出し、該算出した劣化面積をバケットベルト7の1周分積算することにより、総劣化面積が算出される。なお、本実施形態では、黒色のバケットベルト7がキズ等の劣化により黒色以外の色(例えば、白色)となっている部分を劣化面積として算出する。
【0055】
ステップS8では、ステップS7において算出したバケットベルト7の裏面の総劣化面積が第1所定値よりも大きいか否かを判断する。該判断がYesの場合は、ステップS9へ進む一方、上記判断がNoの場合は、ステップS10へ進む。本実施形態では、第1所定値は、バケットベルト7の交換が必要な値に設定されている。
【0056】
ステップS9では、ステップS8の判断がYes、つまり、バケットベルト7の裏面には、図6に示すように、欠けd1、へこみd2、キズd3があり、バケットベルト7が交換の必要な劣化状態であるため、中央コントローラ22に対して交換要信号を送信した後、ステップS11へ進む。該交換要信号を受信した中央コントローラ22は、バケットベルト7が交換の必要な劣化状態であることを表示するようディスプレイ23を制御する。そして、作業者等は、ディスプレイ23の表示を視認することにより、バケットベルト7が交換の必要な劣化状態であることを認識することができる。
【0057】
ステップS10では、ステップS8の判断がNo、つまり、図7に示すように、バケットベルト7の裏面に劣化部分がなく、バケットベルト7が交換の必要な劣化状態ではないため、中央コントローラ22に交換要信号を送信せずに、ステップS11へ進む。
【0058】
ステップS11では、撮影部12が撮影した画像からバケットベルト7における搬送方向に直交する方向の総ずれ面積を算出した後、ステップS12に進む。つまり、ステップS12では、図8に示すように、検出範囲Rに対するバケットベルト7の幅方向の移動量をずれ面積Gとして検出範囲R毎に算出し、該算出したずれ面積Gをバケットベルト7の1周分積算することにより、上記総ずれ面積が算出されるようになっている。なお、本実施形態では、検出範囲R内のバケットベルト7の幅方向各端部におけるバケットベルト7とは異なる色(例えば、白色)となっている部分をずれ面積Gとして算出する。
【0059】
ステップS12では、ステップS11において算出したバケットベルト7の総ずれ面積が第2所定値よりも大きいか否かを判断する。該判断がYesの場合は、ステップS13に進む一方、上記判断がNoの場合は、ステップS14へ進む。なお、本実施形態では、第2所定値は、バケットベルト7が蛇行している状態を示す値、つまり、バケットベルト7の蛇行調整が必要となる値に設定されている。
【0060】
ステップS13では、ステップS12の判断がYes、つまり、図8に示すように、バケットベルト7は、検出範囲Rに対して該バケットベルト7の搬送方向に直交する方向に移動する蛇行状態であり、バケットベルト7の蛇行調整が必要な状態であることから、中央コントローラ22に対して蛇行状態信号を送信し、ステップS15へ進む。該蛇行状態信号を受信した中央コントローラ22は、バケットベルト7の蛇行調整が必要な状態であることを表示するようディスプレイ23を制御する。そして、作業者等は、該ディスプレイ23を視認することにより、バケットベルト7の蛇行調整が必要な状態であることを認識することができる。
【0061】
ステップS14では、ステップS12の判断がNo、つまり、図7に示すように、バケットベルト7は、検出範囲Rに対して該バケットベルト7の搬送方向に直交する方向に移動していない非蛇行状態であり、バケットベルト7の蛇行調整が必要な状態ではないことから、中央コントローラ22に蛇行状態信号を送信せず、ステップS15へ進む。
【0062】
ステップS15では、撮影部12、照明部13、及び、エアレーション15を停止させるように指令した後、エンドに進んで処理を終了する。
【0063】
以上より、本実施形態によると、バケットベルト7の裏面における欠けd1、キズd3等の劣化の有無について撮影画像を用いて監視することが可能となる。したがって、作業者が、周期的に設備を止めたり、或いは、点検用窓を覗いてバケットベルト7の裏面側の状態を確認するといった手間のかかる作業をする必要が無くなり、簡単にバケットベルト7の裏面側の状態を確認することができる。
【0064】
また、バケットベルト7の裏面における劣化部分の総面積から該劣化部分の割合が定量的に分かるようになってバケットベルト7の交換時期を適切に判断できるようになる。これにより、例えば、作業員等の目視によりバケットベルト7の裏面の状態を監視することで、その交換時期がばらついしまうのを抑制することができる。したがって、交換を要するほど劣化していないにもかかわらずバケットベルト7の交換が行われることで、その交換にかかるコスト上昇を招くこと、或いは、バケットベルト7の交換が遅れることで、ベルト切れが発生するのを防ぐことができる。
【0065】
また、バケットベルト7の周回動作時における周回移動方向に対する直交方向への総ずれ面積からバケットベルト7の該直交方向の移動量が分かるようになるので、蛇行量を定量的に判断可能になり、バケットベルト7が蛇行状態であるか否かを正確に判断することができる。
【0066】
また、被搬送物Cが排出された後の非搬送領域においては、搬送領域に比べてバケットベルト7周りに飛散する被搬送物Cが少ないので、バケットベルト7の裏面に被搬送物Cが付着し難くなる。したがって、バケットベルト7の裏面の撮影画像を用いて該バケットベルト7の裏面の状態を監視する際において、非搬送領域においてバケットベルト7の裏面を撮影することにより、バケットベルト7の裏面に付着して撮影画像に映り込んだ被搬送物Cをバケットベルト7の劣化部分であると誤判断してしまうといったことを防止することができる。
【0067】
また、第1プーリー5と第2プーリー6との間のデットスペースである空間Sを利用して、撮影部12を配設することができる。これにより、バケット昇降機1が大型化するのを防止することができる。
【0068】
また、撮影部12が地上から比較的近い位置に配設されるようになるので、例えば、作業者等が脚立を用いずに撮影部12の角度調整等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0069】
また、もし仮に、バケット8から溢れ出た被搬送物Cが撮影部12に向かって上方から降りかかってきた場合であっても、被搬送物Cがカバー12cの上面の下り傾斜面12dに接触した後、当該下り傾斜面12dに沿って滑り落ちてレンズ部12bの上側部分を越えて下方に落下するようになる。したがって、撮影部12に被搬送物Cが堆積するのを抑制して、当該被搬送物Cがバケットベルト7の裏面の撮影、つまり、バケットベルト7裏面の状態の監視に影響を及ぼすといったことを回避することができる。
【0070】
なお、本実施形態では、撮影部12は、下部ケーシング4に配設されていたが、上部ケーシング2や中間ケーシング3に配設するようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、撮影部12は、非搬送領域におけるバケットベルト7の裏面を撮影するようにしていたが、搬送領域におけるバケットベルト7の裏面を撮影するようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態では、撮影部12は、撮影方向が斜め下方を向くように設定されているとともに、本体ケース12aの上方を覆うカバー12cを備えているが、該カバー12cを備えないようにしてもよい。この場合、撮影部12の本体ケース12aの上側部分は、撮影方向に沿ってレンズ部12bの上側部分にまで延びる傾斜面とすることにより、もし仮に、バケット8から溢れ出た被搬送物Cが撮影部12に向かって上方から降りかかってきた場合であっても、被搬送物Cが本体ケース12aの上側部分の傾斜面に接触した後、当該傾斜面に沿って滑り落ちてレンズ部12bの上側部分を越えて下方に落下するようになる。したがって、撮影部12に被搬送物Cが堆積するのを抑制して、当該被搬送物Cがバケットベルト7の裏面の撮影、つまり、バケットベルト7裏面の状態の監視に影響を及ぼすといったことを回避することができる。
【0073】
また、本実施形態では、撮影部12の撮影方向は、斜め下方を向くように設定されていたが、水平方向を向くように、つまり、点検用窓14とレンズ部12bとが対向するように撮影部12の撮影方向を設定してもよい。
【0074】
また、本実施形態では、撮影部12は、バケットベルト7の内側で、且つ、第1プーリー5と第2プーリー6との間に形成された空間Sに配設されていたが、該空間S以外の位置に撮影部を配設するとともに、空間S内に鏡等の反射部材を配設することで、反射部材の反射を利用してバケットベルト7の裏面を撮影部により撮影するようにしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、監視部21は、バケットベルト7裏面の総劣化面積が第1所定値よりも大きいか否かに基づいてバケットベルト7の交換時期を判断していたが、例えば、バケットベルト7の裏面の全周面積に対する該全周面積から総劣化面積を除いた面積の割合が所定の第1閾値未満となった場合、又は、バケットベルト7の裏面の全周面積に対する総劣化面積の割合が所定の第2閾値以上となった場合、バケットベルト7が交換の必要な劣化状態であると判断してもよい。さらに、バケットベルト7の裏面のキズ等の数、或いは、1つの検出範囲Rにおける劣化面積に基づいてバケットベルト7の交換が必要であるか否かを判断するようにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、監視部21は、バケットベルト7の裏面の色に基づいて劣化部分を判断していたが、撮影部12の撮影画像からキズ等を判断するようにしてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、監視部21は、バケットベルト7の交換が必要であると判断した場合は、交換要信号を中央コントローラ22に送信するようにしていたが、これに代えて、或いは、これに加えて、バケット昇降機1を自動的に停止するようにしてもよい。
【0078】
また、本実施形態では、監視部21は、バケットベルト7が蛇行している状態であると判断した場合は、蛇行状態信号を中央コントローラ22に送信するようにしていたが、これに代えて、或いは、これに加えて、バケット昇降機1を自動的に停止するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、監視部21は、バケット昇降機1の電源がOFF状態からON状態にされた際に処理を行うようにしていたが、これに加えて、バケット昇降機1の電源がON状態において定期的に監視部21による処理を行うにしてもよく、或いは、バケット昇降機1の電源がON状態では監視部21による処理を常時行うようにしてもよい。
【0080】
また、本実施形態では、一台のバケット昇降機1が設置される例について説明したが、同一施設内において複数台のバケット昇降機1が設置される場合には、複数台の中から選択した一台(例えば、稼働時間が最も長いバケット昇降機を選択)に監視システム20を設置するようにしてもよい。このようにすることで、全てのバケット昇降機1に対して監視システム20を設置する必要が無くなるため、監視システム20の設置に伴うコスト上昇を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、穀物等を上方に搬送するバケット昇降機の監視システムに適している。
【符号の説明】
【0082】
1 バケット昇降機
5 第1プーリー
6 第2プーリー
7 バケットベルト(無端ベルト)
8 バケット
9 投入ホッパ(投入部)
10 排出ホッパ(排出部)
12 撮影部
12a 本体ケース
12b レンズ部
12c カバー
12d 下り傾斜面
20 監視システム
21 監視部
C 被搬送物
S 空間
図1
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