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特開2023-119162プレキャスト部材、プレキャスト部材の目地構造およびその作製方法
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  • 特開-プレキャスト部材、プレキャスト部材の目地構造およびその作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119162
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】プレキャスト部材、プレキャスト部材の目地構造およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 13/00 20060101AFI20230821BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20230821BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
E04G13/00
E04B1/21 D
E04B1/58 503E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021867
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】森川 勝浩
(72)【発明者】
【氏名】秋竹 教行
【テーマコード(参考)】
2E125
2E150
【Fターム(参考)】
2E125AA46
2E125AB11
2E125AC02
2E125AG03
2E125BA41
2E125CA82
2E125EB11
2E150HC00
2E150LA08
2E150LA15
(57)【要約】
【課題】プレキャスト部材の目地構造を短工期且つ低コストで製作可能であるプレキャスト部材、プレキャスト部材の目地構造およびその施工方法を提供する。
【解決手段】プレキャスト部材1(2)は、延設方向の両端に接合面11(21)を有しており、上記接合面11(21)にグラウト3の充填による縦目地4が形成される部材であって、各接合面11(21)の少なくとも下側縁および左右縁に連続形成された突出部12(22)と、少なくとも一方の接合面11(21)の上記突出部12(22)に貼り付けられた定型シーリング材5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延設方向の両端に接合面を有しており、上記接合面にグラウト充填による縦目地が形成されるプレキャスト部材であって、各接合面の少なくとも左右縁側で縦方向に連続して当該接合面から突出する突出部と、少なくとも一方の接合面の上記突出部に貼り付けられた定型シーリング材と、を備えることを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト部材において、上記左右縁の突出部に貼り付けられた上記定型シーリング材の上記押圧の方向の中央部の少なくとも上記グラウトの充填側は、未押圧の状態で水平方向に凹状であることを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項3】
請求項1に記載のプレキャスト部材において、上記定型シーリング材の上記押圧の方向の中央部の素材は、非中央部の素材に比べて変形し難い素材からなることを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のプレキャスト部材において、基礎梁部と、この基礎梁部の下部から側方に張り出したフーチング部と、を少なくとも有しており、上記基礎梁部の一方の接合面からは鉄筋が突出しており、上記基礎梁部の他方の接合面側には隣のプレキャスト部材の接合面から突出する鉄筋が継がれる機械式継手が埋設されていることを特徴とするプレキャスト部材。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト部材を用い、隣り合う一方のプレキャスト部材と他方のプレキャスト部材の互いに対向する接合面間にグラウトが充填されて縦目地が形成されたプレキャスト部材の目地構造であって、
上記定型シーリング材が上記突出部によって押圧されていることを特徴とするプレキャスト部材の目地構造。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のプレキャスト部材同士を接合させて目地構造を作製する方法であって、
上記定型シーリング材を介在させた状態で隣り合うプレキャスト部材の接合面同士を突き合わせて、上記定型シーリング材を上記突出部によって押圧する段階と、
上記接合面間にグラウトを充填する段階と、
を含むことを特徴とするプレキャスト部材の目地構造の作製方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプレキャスト部材の目地構造の作製方法において、上記プレキャスト部材を設置する施工現場に、上記定型シーリング材が貼り付け済みのプレキャスト部材を搬送することを特徴とするプレキャスト部材の目地構造の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄筋コンクリート部材がプレキャスト化されたプレキャスト部材、このプレキャスト部材を用いた目地構造およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート部材をプレキャスト化したプレキャスト部材を施工現場で組み立てる工法が知られている。この工法では、上記プレキャスト部材の製作誤差や施工現場での施工誤差の吸収のために、当該プレキャスト部材の接合面間に隙間を空けて縦目地を形成している。また、鉄筋コンクリート構造の場合、部材断面応力を伝えるために、上記プレキャスト部材の鉄筋(主筋)は縦目地で継手接続される。この継手接続として、一方のプレキャスト部材の接合面側に埋設された機械式継手を用いる場合、この機械式継手の継手部材内部へグラウトを充填するとともに上記接合面間にも同時にグラウトを充填させる。
【0003】
このグラウト充填では、上記縦目地の周囲に液状のグラウトの流出を止めるための止め枠を設置する必要がある。止め枠としては、プレキャスト部材との接続のための構造を具備するとともに充填圧力に耐える枠部材が用いられる。若しくは、固練りしたモルタルを縦目地の外側より詰め込んで硬化させて止め枠とする方法もある。
【0004】
なお、特許文献1には、プレキャストコンクリート部材の接合部の目地部外周縁部に沿って隙間なくチューブ体を挿入して行う目地止め方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-332584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記止め枠としてモルタルを用いる工法では、モルタルが硬化するまでグラウトの充填作業が開始出来ないため、工期が長くなる欠点がある。また、上記止め枠として上記枠部材を用いる工法は、当該枠部材の製作の手間が生じて施工コストが高くなる。
【0007】
この発明は、プレキャスト部材の目地構造を短工期且つ低コストで製作可能であるプレキャスト部材、プレキャスト部材の目地構造およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のプレキャスト部材は、延設方向の両端に接合面を有しており、上記接合面にグラウト充填による縦目地が形成されるプレキャスト部材であって、各接合面の少なくとも左右縁側で縦方向に連続して当該接合面から突出する突出部と、少なくとも一方の接合面の上記突出部に貼り付けられた定型シーリング材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、隣り合うプレキャスト部材の接合面同士を突き合わせることで、当該プレキャスト部材自体が具備する突出部と、当該突出部に貼り付けられた定型シーリング材とによって、上記接合面間に上記グラウトを封止する封止部が形成される。よって、従来のようにモルタルの硬化を待つ必要が無いので、工期を短縮することができ、また、従来の枠部材を用いる場合に比べて低コスト化が図れるようになる。
【0010】
上記プレキャスト部材において、上記左右縁の突出部に貼り付けられた上記定型シーリング材の上記押圧の方向の中央部の少なくとも上記グラウトの充填側は、未押圧の状態で水平方向に凹状であってもよい。これによれば、上記定型シーリング材が上記押圧を受けて上記グラウトの充填側に膨出する際の上記中央部での膨出量を、上記凹状とされない構造に比べて少なくできるので、上記接合面間におけるグラウトの欠損部の発生を抑制することができる。
【0011】
或いは、上記プレキャスト部材において、上記定型シーリング材の上記押圧の方向の中央部の素材は、非中央部の素材に比べて変形し難い素材からなっていてもよい。これによれば、上記定型シーリング材が上記押圧を受けて当該押圧の方向と直交する方向に膨出する際の上記中央部での膨出量を、上記膨出の程度が全体で同じである定型シーリング材に比べて少なくできるので、上記接合面間におけるグラウトの欠損部の発生を抑制することができる。
【0012】
上記プレキャスト部材において、基礎梁部と、この基礎梁部の下部から側方に張り出したフーチング部と、を少なくとも有しており、上記基礎梁部の一方の接合面からは鉄筋が突出しており、上記基礎梁部の他方の接合面側には隣のプレキャスト部材の接合面から突出する鉄筋が継がれる機械式継手が埋設されていてもよい。
【0013】
また、この発明のプレキャスト部材の目地構造は、上記のいずれかのプレキャスト部材を用い、隣り合う一方のプレキャスト部材と他方のプレキャスト部材の互いに対向する接合面間にグラウトが充填されて縦目地が形成されたプレキャスト部材の目地構造であって、上記定型シーリング材が上記突出部によって押圧されていることを特徴とする。
【0014】
上記の構成であれば、プレキャスト部材自体が具備する突出部によって定型シーリング材が押圧される箇所で上記グラウトが封止されるので、上記枠部材を用いる場合に比べて低コスト化が図れる。また、モルタルの硬化を待つ必要が無いので、工期の短縮も図れる。
【0015】
また、この発明のプレキャスト部材の目地構造を作製する方法は、上記のいずれかのプレキャスト部材同士を接合させて目地構造を作製する方法であって、
上記定型シーリング材を介在させた状態で隣り合うプレキャスト部材の接合面同士を突き合わせて、上記定型シーリング材を上記突出部によって押圧する段階と、
上記接合面間にグラウトを充填する段階と、
を含むことを特徴とする。
【0016】
上記の作製方法であれば、プレキャスト部材自体が具備する突出部によって定型シーリング材が押圧される箇所で上記グラウトが封止されるので、上記枠部材を用いる場合に比べて低コスト化が図れる。また、モルタルの硬化を待つ必要が無いので、工期の短縮も図れる。
【0017】
上記作製方法において、上記プレキャスト部材を設置する施工現場に、上記定型シーリング材が貼り付け済みのプレキャスト部材を搬送してもよい。これによれば、施工現場で上記定型シーリング材を貼り付ける作業が不要になり、施工の迅速化が図れる。
【発明の効果】
【0018】
本発明であれば、プレキャスト部材の目地構造を低コストで製作することが可能であり、工期の短縮も図れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】同図(A)は、実施形態のプレキャスト部材の目地構造を示した斜視説明図であり、同図(B)は、縦目地部分を示した断面説明図である。
図2】実施形態のプレキャスト部材を示した斜視説明図である。
図3】実施形態のプレキャスト部材および機械式継手を示した斜視説明図である。
図4】実施形態のプレキャスト部材の目地構造の作製方法を示した斜視説明図である。
図5】実施形態のプレキャスト部材の目地構造の作製方法を示した斜視説明図である。
図6】同図(A)は、実施形態のプレキャスト部材の目地構造で用いた他の定型シーリング材の断面形状を示した説明図であり、同図(B)は上記定型シーリング材の圧縮による膨出を示した説明図である。
図7】同図(A)は、実施形態のプレキャスト部材の目地構造で用いた他の定型シーリング材の断面形状を示した説明図であり、同図(B)は上記定型シーリング材の圧縮による膨出を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(A)および図1(B)に示すように、この実施形態のプレキャスト部材の目地構造100は、隣り合う一方のプレキャスト部材1と他方のプレキャスト部材2の互いに対向する接合面11,21間にグラウト3が充填されて縦目地4が形成された構造である。
【0021】
上記のプレキャスト部材1およびプレキャスト部材2は、同一の構造を有しており、それぞれの延設方向の両端に接合面11,21を有している。また、例えば、上記プレキャスト部材1は、図2にも示すように、基礎梁部15と、この基礎梁部15の下部から側方に張り出したフーチング部16と、上記基礎梁部15の上面から立ち上がる腰壁部17と、を有している。同様に、上記プレキャスト部材2も、基礎梁部25と、この基礎梁部25の下部から側方に張り出したフーチング部26と、上記基礎梁部25の上面から立ち上がる腰壁部27と、を有している。
【0022】
上記プレキャスト部材1,2の基礎梁部15,25には、所定の配置で例えば4本の主筋15a,25aが埋設されており、一方の接合面11,21からは、上記4本の主筋15a,25aが当該プレキャスト部材1,2の延設方向に所定の長さで突き出ている。
【0023】
また、上記プレキャスト部材1,2についての基礎梁部15,25の他方の接合面11,21側には、機械式継手18,28が埋設されている。
【0024】
図3に示すように、プレキャスト部材1における機械式継手18は、プレキャスト部材2の一方の接合面21から突出する上記4本の主筋25aが差し込まれる4本の継手部材18aを有している。各継手部材18aには、基礎梁部15における主筋15aの端部が位置しており、上記主筋15aと上記継手部材18aの端部開口との間は、ゴム栓によって塞がれている。また、各継手部材18aには2本ずつ樹脂配管18cが接続されて縦に延びており、各樹脂配管18cの上端は基礎梁部15の上端面に露出されている。
【0025】
合計8本の樹脂配管18cのうちの1本は、液状のグラウト3の導入用として用いられ、他の7本は、液状のグラウト3の排出用として用いられる。上記液状のグラウト導入用の樹脂配管18cから導入された液状のグラウト3は、上記接合面11,21間および上記継手部材18a内に充填される。すなわち、上記プレキャスト部材2についての基礎梁部25の一方の接合面21から突き出る主筋25aは、他方の基礎梁部15の機械式継手18の樹脂配管18c内で他方の主筋15aと継がれる。
【0026】
上記プレキャスト部材1、2の各々の接合面11,21の下側縁および左右縁には、それぞれ横方向と縦方向に連続形成されて当該接合面11,21から突出する突出部12,22が形成されている。これら突出部12,22の断面形状は、一例として、角部の欠けが回避されるよう予め面取りされており、突出方向先端側の幅が狭くされた台形状となっている。この台形状における先端側の幅は、例えば17mm程度とされ、基底の幅は、例えば、30mm程度とされる。そして、上記先端における内側端と上記基底における内側端との差は、例えば、3mm程度とされ、上記先端における外側端と上記基底における外側端との差は、例えば、10mm程度とされている。また、上記突出部12,22の突出高さは、例えば、6mm程度とされる。プレキャスト部材1,2の目地構造100における上記突出部12,22の先端間の設計上の離間距離は、例えば、8mm程度とされ、接合面11,21の設計上の離間距離は、例えば、20mm程度とされる。また、フーチング部16、26の端面間の設計上の離間距離は、例えば、8mm程度とされる。また、腰壁部17、27の端面間の設計上の離間距離は、例えば、20mm程度とされる。
【0027】
上記プレキャスト部材1,2の各々の片側(例えば、機械式継手18の配置側)の突出部12,22の先端には、定型シーリング材5が貼付されている。上記定型シーリング材5は、プレキャスト部材の目地構造100においては、上記突出部12,22によって押圧されることで当該突出部12,22の対向面間において圧縮状態で存在している。この圧縮状態では、上記定型シーリング材5は、上記押圧の方向(プレキャスト部材1,2の延設方向)に潰れ、この押圧方向と直交する方向に膨出する。上記突出部12,22における上記押圧の方向と直交する側では、突出部12,22が台形状であることによって接合面11,21の縁空間が拡大しており、この拡大された縁空間内に上記定型シーリング材5の膨出部分が広がることができる。上記突出部12,22が形成された部分は、幅30mm程度のフカシ領域であり、基礎梁部15,25の構造要素とはされない。すなわち、接合面11,21は、グラウトが充填されるグラウト充填領域と、このグラウト充填領域の外側に位置するフカシ領域とからなる。
【0028】
上記定型シーリング材5の未押圧の状態での縦断面形状は、例えば、矩形状であり、上記押圧の方向の突出高さおよび幅は、例えば、各々20mm程度とされている。また、上記定型シーリング材5は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡材等からなっている。上記接合面11,21間に導入されたグラウト3は、上記突出部12,22および上記定型シーリング材5によって封止される。なお、プレキャスト部材の目地構造100の実際の施工では、上記突出部12,22の離間距離が設計値の8mmを越えて広くなる事態もあり、このような場合でも、グラウト3の漏れを防止できるように、上記定型シーリング材5の大きさが設定される。
【0029】
次に、この実施形態のプレキャスト部材の目地構造100を作製する方法について説明する。図4に示すように、既に設置した一方のプレキャスト部材1の接合面11に、他方のプレキャスト部材2の接合面21を対面させる。そして、これら接合面11,21を突き合わせて、上記突出部12,22で上記定型シーリング材5を押圧する。この突き合わせの作業においては、例えば、揚重機で持ち上げたプレキャスト部材2の4本の主筋25aを、設置済のプレキャスト部材1の機械式継手18の継手部材18a内に差し込む操作が行われる。
【0030】
そして、図5に示すように、上記基礎梁部15,25の側面と、上面(腰壁部17,27から外れる部分)に板部材B1,B2を当てて、この板部材B1,B2をボルト等によって基礎梁部15,25に固定する。
【0031】
なお、上記基礎梁部15,25の上面における腰壁部17,27から外れる部分において、上記板部材B2は、液状のグラウト3の止め蓋として機能する。その一方、上記腰壁部17,27の下辺箇所は、上記蓋となる板部材B2を配置できないので、この実施形態では、当該腰壁部17,27の下辺箇所側(基礎梁部15,25にかからない部位)に突出部および定型シーリング材を配置している。なお、基礎梁部15,25の上辺側部分にもフカシ領域を設けておき、このフカシ領域に、突出部12,22および定型シーリング材5を延設させた構造とすれば、上記板部材B2は不要である。
【0032】
次に、上記接合面11,21間に液状のグラウト3を導入する。この液状のグラウト3の導入では、上記8本の樹脂配管18cのうちの液状のグラウト3の導入用の1本の樹脂配管18cにパイプを差し込み、このパイプに接続したホースから、所定圧で液状のグラウト3を送り出す。上記接合面11,21間および上記機械式継手18内に液状のグラウト3が満たされると、7本の樹脂配管18cから液状のグラウト3が溢れ出るので、液状のグラウト3の注入作業を終了する。なお、上記板部材B2については、液状のグラウト3の充填当初は外しておいて、このグラウト3の充填状況の確認が行えるようにしておき、液状のグラウト3が溢れ出す段階で、上記板部材B2を基礎梁部15,25に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
上記のプレキャスト部材1,2であれば、隣り合うプレキャスト部材1,2の接合面11,21同士を突き合わせることで、当該プレキャスト部材1,2自体が具備する突出部12、22と、当該突出部12(または22)に貼り付けられた定型シーリング材5とによって、上記接合面11,21間に上記グラウト3を封止する封止部が形成される。よって、従来のようにモルタルの硬化を待つ必要が無いので、工期を短縮でき、また、従来の枠部材を用いる場合に比べて低コスト化が図れるようになる。なお、対向する突出部12,22に定型シーリング材5をそれぞれ貼付する構成とすることもできる。
【0034】
また、上記プレキャスト部材の目地構造100およびその作製方法においても、プレキャスト部材1,2自体が具備する突出部12,22によって定型シーリング材5が押圧される箇所で液状のグラウト3が上記接合面11,21間で封止されるので、従来の枠部材を用いる場合に比べて低コスト化が図れる。また、モルタルの硬化を待つ必要が無いので、工期の短縮も図れる。
【0035】
また、上記プレキャスト部材1,2を設置する施工現場に、上記突出部12,22に上記定型シーリング材5が貼り付け済みのプレキャスト部材1,2を搬送すれば、施工現場での上記定型シーリング材5の貼り付け作業が不要になるので、施工の迅速化が図れるようになる。
【0036】
上記の定型シーリング材5に代えて、図6(A)に示す定型シーリング材5Aを用いることができる。この定型シーリング材5Aの長手方向に直交する断面形状における加圧面(上下面)は、それぞれ平坦面である一方、両側面は、凹状になっている。そして、この定型シーリング材5Aが基礎梁部15,25の左右縁の突出部12,22に貼り付けられた状態では、上記定型シーリング材5の押圧の方向の中央部は、未押圧の状態で水平方向に凹状であり、上記下側縁の突出部12,22に貼り付けられた状態では、上記定型シーリング材5の押圧の方向の中央部は、未押圧の状態で鉛直方向に凹状である。
【0037】
上記定型シーリング材5Aを用いると、この定型シーリング材5Aが上記押圧を受けて当該押圧の方向と直交する方向に膨出する際の上記中央部での膨出量を、上記凹状とされない構造に比べて、少なくできるので、図6(B)に示すように、上記接合面11,21間におけるグラウト3の欠損部の発生を抑制することができる。すなわち、フカシ領域を越えて上記定型シーリング材5Aが上記接合面11,21間のグラウト充填領域に入り込むのを抑制することができる。
【0038】
上記定型シーリング材5Aは、例えば、厚み20mmで縦横1000mmの板状定型シーリング材を、切断刃によって、20mm幅で切断して得ることができる。ここで、上記切断刃による加圧により、板状定型シーリング材の切断箇所に歪が生じるので、定型シーリング材5Aに上記凹状部分が自然に形成されることになる。定型シーリング材5Aは、両側に凹状部分を有する必要はなく、片側にのみ凹状部分を有する場合、上記凹状部分が内側(グラウト充填領域側)に向くように、突出部12,22に貼り付ければよい。また、断面台形の2本の定型シーリング材の狭幅面同士を接着して定型シーリング材5Aを得ることも可能である。
【0039】
図7(A)に示す定型シーリング材5Bを用いてもよい。この定型シーリング材5Bの長手方向に直交する断面構造は、例えば三層構造になっており、中層の部材は、上層の部材および下層の部材に比べて変形し難くなっている。
【0040】
定型シーリング材5Bを用いると、上記定型シーリング材5Bが上記押圧を受けて当該押圧の方向と直交する方向に膨出する際の中央部での膨出量を、上記変形の程度が全体で同じである定型シーリング材に比べて、少なくできる。これにより、図7(B)に示すように、上記接合面11,21間におけるグラウト3の欠損部の発生を抑制することができる。すなわち、フカシ領域を越えて上記定型シーリング材5Bが上記接合面11,21間のグラウト充填領域に入り込むのを抑制することができる。
【0041】
定型シーリング材5Bの各層部の圧縮に対する変形のし難さは、例えば、EPDM発泡材の発泡倍率を調整することで、変えることができる。すなわち、定型シーリング材の中央部の発泡倍率を非中央部の発泡倍率よりも低くすると、中央部の圧縮による変形量を、非中央部に比べて小さくできる。
【0042】
或いは、定型シーリング材5の中央部の発泡を独立気泡とし、非中央部の発泡を連続気泡または半独立気泡とすると、中央部の押圧による変形量を、非中央部に比べて小さくできる。
【0043】
或いは、定型シーリング材5において、中央部と非中央部の材料を異ならせてもよい。中央部の材料のポアソン比をP1とし、非中央部の材料のポアソン比をP2とし、P1<P2とすることで、中央部の押圧による変形量を、非中央部に比べて小さくできる。
【0044】
また、プレキャスト部材1,2は、上記フーチング部16,26を有しない構造であってもよい。
【0045】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 :プレキャスト部材
2 :プレキャスト部材
3 :グラウト
4 :縦目地
5 :定型シーリング材
5A :定型シーリング材
5B :定型シーリング材
11 :接合面
12 :突出部
15 :基礎梁部
15a :主筋
16 :フーチング部
17 :腰壁部
18 :機械式継手
18a :継手部材
18c :樹脂配管
21 :接合面
22 :突出部
25 :基礎梁部
25a :主筋
26 :フーチング部
27 :腰壁部
100 :目地構造
B1 :板部材
B2 :板部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7