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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119168
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】粒子、及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20230821BHJP
   C08F 20/26 20060101ALI20230821BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230821BHJP
   C08F 220/12 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08J3/16 CEY
C08F20/26
C08F2/44 A
C08F220/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021878
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜夛 裕
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【テーマコード(参考)】
4F070
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
4F070AA32
4F070AC17
4F070AC23
4F070AC46
4F070AC47
4F070AE14
4F070AE30
4F070DA33
4F070DB10
4F070DC07
4F070DC11
4J011AA05
4J011PA13
4J011PB22
4J011PC02
4J011PC06
4J011PC07
4J011PC13
4J100AL03P
4J100AL04P
4J100AL62R
4J100AL63R
4J100AL66Q
4J100BA02Q
4J100BA08Q
4J100CA03
4J100CA23
4J100DA25
4J100DA36
4J100EA09
4J100FA03
4J100FA21
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、金属への付着性が低い粒子、及びその用途を提供することである。
【解決手段】 下記単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、オレイン酸吸油量が70mL/100g以上であり、円形度が0.80~1.0であり、平均粒子径が1~100μmである粒子。前記重合性成分が下記単量体(A)を含むと好ましい。
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有し、かつその分子内にエーテル結合を有する化合物
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、
オレイン酸吸油量が70mL/100g以上であり、円形度が0.80~1.0であり、
平均粒子径が1~100μmである、粒子。
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有し、かつその分子内にエーテル結合を有する化合物
【請求項2】
前記重合性成分が下記単量体(A)を含む、請求項1に記載の粒子。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体
【請求項3】
前記単量体(A)が下記単量体(a1)を含む、請求項2に記載の粒子。
単量体(a1):炭素数4~8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の粒子と、液状有機化合物及び/または水とを含む、湿粉状粒子。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の粒子、及び請求項4に記載の湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含む、組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶等の内装材(例えば、自動車のドアトリム、インストルメントパネル等)やパッキン(例えば、自動車のウェザーストリップ、ガラスランチャンネル等)等の部品には、ソフトな触感を付与する目的で、基材としてゴムやエラストマーが好適に使用される。
【0003】
また、基材の柔らかさだけでなく、柔らかさに優れた粒子を添加することで、ソフトな触感を付与することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-155678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている粒子は柔らかさに優れているが、一方で、粒子を移送する際や粒子を基材へ添加する際等にホッパー及び配管等に粒子が付着する問題があり生産性や製品品質が低下する場合があった。係る生産性や製品品質低下の原因を調査した結果、粒子の金属への付着性が高いことによるものと判明した。
【0006】
従って、本発明の目的は、金属への付着性が低い粒子およびその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の条件を満足する粒子であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の粒子は、下記単量体(B)を含む重合性成分の重合体からなり、
オレイン酸吸油量が70mL/100g以上であり、円形度が0.80~1.0であり、
平均粒子径が1~100μmである。
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有し、かつその分子内にエーテル結合を有する化合物
【0008】
前記重合性成分は、下記単量体(A)を含むと、好ましい。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体
前記単量体(A)は下記単量体(a1)を含むと好ましい。
単量体(a1):炭素数4~8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル
【0009】
本発明の湿紛状粒子は、上記の粒子と、液状有機化合物及び/または水とを含む。
本発明の組成物は、上記の粒子、及び上記の湿紛状粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒子は、金属への付着性が低い。
本発明の湿紛状粒子は上記の粒子を含むため、金属への付着性が低い。
本発明の組成物は上記の粒子及び上記の湿紛状粒子から選ばれる少なくとも1種を含むため、安定に生産できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(粒子)
本発明の粒子は重合性成分の重合体からなるものである。
前記重合性成分は分子内に少なくとも1つ以上の反応性炭素-炭素二重結合を有する単量体成分を意味し、重合することによって粒子を構成する重合体となる成分である。前記重合性成分としては、反応性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(以下、単官能モノマーということがある)と、反応性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体(以下、架橋剤ということがある)とが挙げられる。架橋剤により重合体に橋掛け構造を導入することができる。
ここでいう反応性炭素-炭素二重結合は、ラジカル反応性を示す炭素-炭素二重結合を意味し、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環内にある炭素-炭素二重結合ではなく、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニレン基等に含まれる炭素-炭素二重結合が挙げられる。
本発明の粒子の形態は、本発明の効果をより奏する点で、中実状又は多孔質状であると好ましく、中実状であるとより好ましい。
【0012】
本発明の粒子が金属への付着性が低い理由は、単量体(B)を含む重合性成分の重合体であり、オレイン酸吸油量、円形度及び平均粒子径が特定の範囲内であることで、粒子表面の親水性/親油性のバランスが適切であるために粒子表面同士の粘着性及び粒子表面と金属表面間との粘着性が低減され、さらに粒子表面の平滑性が優れるためであると考えられる。
【0013】
(単量体(B))
前記重合性成分は下記単量体(B)を含む。
単量体(B):重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有し、かつその分子内にエーテル結合を有する化合物
【0014】
前記単量体(B)は分子内に重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有し、かつエーテル結合を有するため、その親水性により粒子表面に適度な極性を付与し、かつ架橋構造を導入することができるため粒子同士の粘着性を低減させると考えられる。ここで、エーテル結合とは、酸素原子が二つの炭化水素基と結合した構造におけるC-O-C結合をいう。
【0015】
前記単量体(B)が分子内に有するエーテル結合の数は1~23であると、粒子表面に適度な親水性を付与し、粒子同士の粘着性が低減することがあるため好ましい。該結合の数の下限は2がより好ましく、3がさらに好ましい。一方、該結合の数の上限は18がより好ましく、14がさらに好ましく、12が特に好ましく、9が最も好ましい。
【0016】
前記単量体(B)は重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有し、かつその分子内にエーテル結合を有する化合物であれば特に限定はないが、本願効果をより奏する点で、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが好ましく、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートがより好ましく、ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがさらに好ましい。単量体(B)は、1種または2種以上を併用してもよい。また、本願において(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。
【0017】
ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、特に限定はないが、例えばジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート(化合物名中の#200は分子内のポリエチレングリコール鎖部分の重量平均分子量が200であることを表し、以下記載の#アラビア数字も同様である。)、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#1000ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
前記単量体(B)は、本発明の効果を奏する点で、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる1種を含むと好ましく、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレートから選ばれる1種を含むとさらに好ましい。
前記単量体(B)は分子量分布を持っていてもよい。
【0019】
前記単量体(B)がポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含む場合、ポリオキシアルキレン基は本発明の効果を奏する点で、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基であると好ましく、ポリオキシエチレン基又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基であるとより好ましく、ポリオキシエチレン基であるとさらに好ましい。
ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートがポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を含む場合、オキシエチレン単位とオキシプロピレン単位のモル比(EO/PO)は本発明の効果を奏する点で、99/1~1/99が好ましい。該モル比の上限は95/5がより好ましく、90/10がさらに好ましく、80/20が特に好ましい。該モル比の下限は5/95がより好ましく、10/90がさらに好ましく、20/80が特に好ましい。
また、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基中のオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の配列はランダムであってもブロックであってもよい。
【0020】
前記重合性成分に占める単量体(B)の重量割合は特に限定はないが、0.1~15重量%であると、粒子の疎水性と親水性のバランスが適正となり、粒子同士の凝集性が低減することがあり好ましい。該重量割合の上限は、より好ましくは9重量%、さらに好ましくは5重量%、特に好ましくは4重量%、最も好ましくは3重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.3重量%、さらに好ましくは0.5重量%、特に好ましくは1重量%である。
【0021】
(単量体(A))
前記重合性成分は、単官能モノマーとして下記単量体(A)を含むと、硬さを調整できるため好ましい。
単量体(A):重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体。
【0022】
前記重合性成分が前記単量体(A)を含む場合、前記重合性成分に占める前記単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは70~99.9重量%である。前記単量体(A)が前記範囲内であると、粒子を安定に生産できることがある。該重量割合の上限は、より好ましくは99重量%、さらに好ましくは98重量%、特に好ましくは96重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは81重量%、特に好ましくは91重量%、最も好ましくは95重量%である。
【0023】
前記単量体(A)としては特に限定はないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記単量体(A)は1種または2種以上を使用してもよい。
前記単量体(A)は炭素数1~18のアルキル基を有していてもよく、アルキル基は直鎖状、分岐鎖状、又は、環状であってもよい。
【0024】
前記単量体(A)は下記単量体(a1)を含むと本願効果を奏する点で好ましい。
単量体(a1):炭素数4~8の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル
前記単量体(a1)は1種または2種以上を使用してもよい。
【0025】
前記単量体(A)が前記単量体(a1)を含む場合、前記単量体(A)に占める前記単量体(a1)の重量割合は特に限定はないが、本願効果を奏する点で、好ましくは65~100重量%である。該重量割合の下限は、69重量%がより好ましく、80重量%がさらに好ましく、90重量%が特に好ましい。
【0026】
前記重合性成分は、前記単量体(A)以外の重合性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(以下、単にその他単官能モノマーということがある)を含んでもよい。
前記その他単官能モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等のカルボキシル基含有単量体;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ドデセニルコハク酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等が挙げられる。その他単官能モノマーは1種または2種以上を使用してもよい。
カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。
【0027】
前記重合性成分がその他単官能モノマーとして、ニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。
前記重合性成分に占めるニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、及びスチレン系単量体の合計の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0~10重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは8重量%、さらに好ましくは6重量%、特に好ましくは4.5重量%である。
【0028】
前記その他単官能モノマーがニトリル系単量体を含む場合、ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。前記その他単官能モノマーがアクリロニトリルを含む場合、前記重合性成分に占めるアクリロニトリルの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは1~10重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは8重量%、さらに好ましくは6重量%、特に好ましくは4.5重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは2重量%、特に好ましくは3重量%である。
【0029】
前記その他単官能モノマーがカルボキシル基含有単量体を含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。前記その他単官能モノマーがカルボキシル基含有単量体を含む場合、前記重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは1~10重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは8重量%、さらに好ましくは6重量%、特に好ましくは4.5重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは2重量%、特に好ましくは3重量%である。
【0030】
前記その他単官能モノマーがスチレン系単量体を含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。前記その他単官能モノマーがスチレン系単量体を含む場合、前記重合性成分に占めるスチレン系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは1~10重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは8重量%、さらに好ましくは6重量%、特に好ましくは4.5重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは2重量%、特に好ましくは3重量%である。
【0031】
前記重合性成分は単量体(B)の他に、単量体(B)以外の反応性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体(以下、単にその他架橋剤ということがある)を含むと、耐熱性が向上する点で好ましい。
前記重合性成分に占めるその他架橋剤の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0~15重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは8重量%、特に好ましくは6重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.2重量%、さらに好ましくは0.5重量%、特に好ましくは1重量%、最も好ましくは2重量%である。
【0032】
その他架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル系モノマー;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上の(メタ)アクリレート系単量体等が挙げられる。その他架橋剤は1種または2種以上を使用してもよい。
【0033】
前記重合性成分に含まれる、前記単量体(B)と前記その他架橋剤の重量割合の比(単量体(B)/その他架橋剤)は特に限定はないが、本願効果を奏する点で好ましくは100/0~5/95である。該重量割合の比の上限は、より好ましくは90/10、さらに好ましくは80/20、特に好ましくは70/30である。一方、該重量割合の比の下限は、より好ましくは10/90、さらに好ましくは15/85、特に好ましくは20/80である。
【0034】
本発明の粒子は、前記重合性成分を重合して得られる重合体以外の成分として、無機成分を含んでもよい。
前記無機成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン等が挙げられる。これらの無機成分は、シランカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理されたものであってもよい。これらの無機成分は1種または2種以上で構成されていてもよい。
【0035】
本発明の粒子のオレイン酸吸油量は70mL/100g以上であり、好ましくは、70~300mL/100gである。該吸油量が70mL/100g未満であると、粒子表面の極性が高くなり、金属への付着性が高くなる。該吸油量の上限は、より好ましくは250mL/100g、さらに好ましくは240mL/100g、特に好ましくは200mL/100gである。一方、該吸油量の下限は、より好ましくは85mL/100g、さらに好ましくは110mL/100g、特に好ましくは130mL/100gである。
なお、本発明に記載のオレイン酸吸油量は、実施例に記載の方法によるものである。
【0036】
本発明の粒子の円形度は、0.80~1.0である。該円形度が0.80未満であると粒子が凝集し、金属への付着性が高くなる。該円形度の下限は、好ましくは0.83、より好ましくは0.85、さらに好ましくは0.87、特に好ましくは0.90である。該円形度の上限は、好ましくは0.99、より好ましくは0.98である。
なお、本発明に記載の粒子の円形度は、実施例に記載の方法によるものである。
【0037】
本発明の粒子の平均粒子径は、1~100μmである。該平均粒子径が1μm未満であると、粒子が凝集し金属への付着性が高くなる。一方、該平均粒子径が100μm超であると、粒子の形状が不均一となり、金属への付着性が高くなる。該平均粒子径の上限は、好ましくは90μm、より好ましくは80μm、さらに好ましくは70μm、特に好ましくは60μm、最も好ましくは50μmである。一方、該平均粒子径の下限は、好ましくは3μm、より好ましくは5μm、さらに好ましくは10μm、特に好ましくは12μm、最も好ましくは15μmである。
なお、本発明に記載の粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法によるものである。
【0038】
本発明の粒子の粒度分布の変動係数CVは、特に限定はないが、得られる組成物の外観不良を抑制する点で、1~70%であると好ましい。該CVの上限は、より好ましくは65%、さらに好ましくは50%である。一方、該CVの下限は、より好ましくは3%、さらに好ましくは5%、特に好ましくは10%、最も好ましくは15%である。
なお、該CVは、実施例に記載の方法によるものである。
【0039】
本発明の粒子のガラス転移温度(Tg)は、特に限定はないが、柔軟性が優れる点で、-70℃~-20℃であると好ましい。該ガラス転移温度の上限は、より好ましくは-30℃、さらに好ましくは-35℃、特に好ましくは-40℃である。一方、該ガラス転移温度の下限は、-65℃がより好ましく、-60℃がさらに好ましく、-50℃が特に好ましい。なお、該ガラス転移温度は、実施例に記載の方法によるものである。
【0040】
(粒子の製造方法)
本発明の粒子において、その製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法(例えば、懸濁重合法、分散重合法、シード重合法等)を採用することができる。なかでも、本発明の粒子を効率よく製造できるという点から、懸濁重合法が好ましい。
懸濁重合法においては、通常、分散剤の存在下、重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させた懸濁液を調製し、しかる後に懸濁液を加熱し重合性成分を重合させることにより粒子を製造する。以下、本発明の粒子において、その製造方法が懸濁重合法である場合について説明する。
【0041】
粒子の製造方法は、重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させ、重合性成分を重合させる工程(以下、重合工程という)を含むものである。
重合工程では、重合開始剤を含む油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
【0042】
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-(オクチル)パーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド等が挙げられる。
【0043】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、特に限定はないが、重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
油性混合物における重合開始剤の含有量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~8重量部、さらに好ましくは0.2~5重量部である。
【0044】
水性分散媒は、油性混合物を分散させるための、水を主成分とする媒体である。水性分散媒に用いる水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれでもよい。また、水性分散媒の主成分として水が使用されるが、水とともに、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等の親水性有機溶媒を併用してもよい。水と親水性有機溶媒との混合物を用いることにより、粒子の表面及び内部に空孔を形成させることができる。なお、ここでいう親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。
水性分散媒に占める水の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50~99.5重量%である。
【0045】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。水性分散媒における電解質の含有量は、特に限定はないが、水性分散媒100重量%に対して、0.1~30重量%であると好ましい。
【0046】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0047】
水性分散媒中に含まれる前記水溶性化合物の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、より好ましくは0.0003~0.1重量部、さらに好ましくは0.001~0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料であるモノマーの残存量が増加したりすることがある。
【0048】
水性分散媒は、水や親水性有機溶媒以外に、分散剤及び/または界面活性剤を含有すると好ましい。
分散剤としては、例えば、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機化合物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられる。これらの分散剤は、1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、難水溶性無機化合物が好ましく、コロイダルシリカ、水酸化マグネシウム及びピロリン酸マグネシウムから選ばれる少なくとも一種がさらに好ましく、コロイダルシリカが特に好ましい。
水性分散媒に含まれる分散剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは0.5~15重量部である。
【0049】
界面活性剤としては、分子量が1000未満の低分子界面活性剤が好ましく、例えば、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸-ジエタノールアミン縮合物等のノニオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
水性分散媒に含まれる界面活性剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.01~5重量部である。
【0050】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、親水性有機溶媒、電解質、水溶性化合物、分散剤、界面活性剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、分散剤の種類によって適宜決められる。
水性分散媒における水の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは100~1000重量部である。
【0051】
重合工程では、まず、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に分散させる。
油性混合物を分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス社製)、ホモディスパー(例えば、プライミクス社製)、クレアミクス(エムテクニック社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法、マイクロチャネル法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
【0052】
次いで、油性混合物が油滴として水性分散媒に分散された分散液(懸濁液)を加熱することにより、重合を開始する。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは40~100℃、より好ましくは45~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については、ゲージ圧で0~5MPa、より好ましくは0.1~3MPaの範囲である。
重合時は重合容器内を窒素置換して反応すると好ましく、重合初期圧を高める際は窒素を用いると好ましい。
重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、モノマーの浮上や重合後の粒子の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
このように重合工程を行うことによって、粒子を含有する水性分散液(スラリー)を得ることができる。
【0053】
粒子の製造方法は、重合工程の他に、必要に応じて、分散剤を分解する工程、濾過工程、洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程を含んでもよい。これらの工程を行う順序や回数などは特に制限されない。なお、分散剤を分解する工程とは、粒子を含有する水性分散液(スラリー)等に対して、酸又は塩基を添加することにより、分散剤として使用した難水溶性無機化合物を分解する工程をいう。
【0054】
濾過工程は、粒子を含有する水性分散液(スラリー)を、濾過装置を用いて固液分離し、含水率5~50重量%、好ましくは含水率7~30重量%のウェットケーキとする工程である。濾過装置としては、遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等が挙げられ、これらの装置において設定条件を適宜変更することにより、得られるウェットケーキの含水率を調整することができる。
乾燥工程では、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等によりウェットケーキを乾燥し、含水率5重量%以下の乾燥粉体とすることができる。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体とすることもできる。
【0055】
粒子が前記重合性成分の重合体からなるものであるとき、無機粉体が付着していてもよい。無機粉体は前記無機成分と同様のものであってもよい。無機粉体を付着させる方法としては、特に限定はないが、例えば、公知の粉体混合機等を用いて、必要に応じて加熱する等行いながら、粒子と無機粉体とを混合する方法等が挙げられる。付着させる無機粉体の量は、特に限定はないが、粒子100重量部に対して好ましくは1~15重量部である。
【0056】
(湿粉状粒子)
本発明の湿粉状粒子は、前記粒子と、液状有機化合物及び/または水を含む、湿粉状態のものであり、粒子のハンドリング性を向上させることができる。また、湿粉状粒子は前記ウェットケーキであってもよい。
液状有機化合物としては、例えば、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、プロセスオイル、流動パラフィン、ナフテン系オイル、アロマ系オイル、油脂類、シリコーンオイル、前記親水性有機溶媒等が挙げられる。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水のいずれを使用してもよい。
【0057】
本発明の湿粉状粒子に占める、液状有機化合物及び水の含有量の合計は特に限定はないが、粒子100重量部に対して、好ましくは1~100重量部である。該含有量の合計が、前記範囲内であると、高いハンドリング性を維持できる傾向がある。該含有量の合計の上限は、より好ましくは45重量部、さらに好ましくは30重量部、特に好ましくは20重量部である。一方、該含有量の合計の下限は、より好ましくは3重量部、さらに好ましくは5重量部、特に好ましくは10重量部である。
【0058】
(湿粉状粒子の製造方法)
本発明の湿粉状粒子において、その製造方法としては特に限定はないが、例えば、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)前記重合工程で得られたスラリーをそのまま固液分離し、得られたウェットケーキを湿粉状粒子とする方法。
(2)前記重合工程で得られたスラリーを固液分離してウェットケーキを得、次いで得られたウェットケーキと、液状有機化合物及び/または水と、を混合して湿粉状粒子とする方法。
(3)重合工程で得られたスラリーを固液分離してウェットケーキを得、次いで得られたウェットケーキを乾燥させて粒子の乾燥粉体を得、そして得られた粒子の乾燥粉体と、液状有機化合物及び/または水と、を混合して湿粉状粒子とする方法。
前記(2)および(3)の方法において、ウェットケーキ又は粒子の乾燥粉体と、液状有機化合物及び/または水とを混合する装置としては、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機、スーパーミキサー等の一般的な粉体混合機を用いることができる。
【0059】
(組成物)
本発明の組成物は、前記粒子及び前記湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含むものである。
基材成分としては、特に限定はなく、天然ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、エチレンープロピレンージエンゴム(EPDM)等のゴム類;不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリ乳酸(PLA)、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、変性ポリサルファイド系、ウレタン系、アクリル系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン-酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系等のエマルジョンやプラスチゾル等の液状物成分;セメントやモルタルやコージェライト等の無機物;セルロース、ケナフ、フスマ、アラミド繊維、フェノール繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、レーヨン、炭素繊維、耐炎化繊維、ガラス繊維等の繊維が挙げられる。これらの基材成分は1種または2種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明の組成物に占める、粒子及び湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種の重量割合は特に限定はないが、好ましくは0.01~80重量%である。該重量割合が前記範囲であると、組成物はソフトな感触を有し、衝撃性能及び外観が優れる傾向がある。該重量割合の上限は、より好ましくは65重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは25重量%、最も好ましくは10重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.5重量%、さらに好ましくは1重量%、特に好ましくは2重量%、最も好ましくは3重量%である。
【0061】
本発明の組成物は必要に応じて、無機充填剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、酸化防止剤、老化防止剤、発泡剤、着色顔料等の各種添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量も、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0062】
本発明の組成物において、その製造方法は特に限定ないが、従来公知の方法を採用すればよく、例えば、ホモミキサー、スタティックミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等を用いて、機械的に均一に混合や、成形する方法が挙げられる。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、測定に用いた粒子は、特別な記載がない限り、乾燥した粒子を示す。
【0064】
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック9320HRA×100、日機装株式会社製)の湿式測定法により測定し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0065】
〔粒子径のCV〕
前記平均粒子径と粒度分布の測定により得られた粒度分布の結果から、以下に示す計算式(1)及び(2)により粒子径のCVを算出した。
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、xはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0066】
〔オレイン酸吸収量の測定〕
平滑なガラス板上に粒子1gを精秤し(Wg)、ビューレットよりオレイン酸を滴下し、金属のヘラで錬り込む。これを繰り返して最後にヘラで押さえた時、オレイン酸がにじみ出す直前のオレイン酸の滴下量(VmL)を測定し、下記の式によって吸収量を算出した。
吸収量(mL/100g)=V(mL)/W(g)×100
【0067】
〔ガラス転移温度(Tg)の測定〕
JIS K7121に準拠して(株)パーキンエルマー製のJade DSCを使用し、示差走査熱量測定(DSC)法により、昇温速度:20℃/分にて測定した。
【0068】
<実施例1>
イオン交換水200重量部に、塩化ナトリウム50重量部、シリカ有効濃度20重量%であるコロイダルシリカ20重量部、アジピン酸-ジエタノールアミン縮合物の水溶液(有効濃度50重量%)0.5重量部を加えて混合した後、硫酸にてpHを2.8~3.2に調整することで水性分散媒を調製した。
これとは別にアクリル酸n-ブチル98重量部、トリエチレングリコールジアクリレート1重量部、エチレングリコールジメタクリレート1重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部を混合、溶解し油性混合物とした。
上記で得られた水性分散媒及び油性混合物をTKホモミキサー2.5型(プライミクス社)で攪拌(8000rpm×1min)して懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度65℃で15時間重合を行い、粒子を含む水性分散液を得た。
得られた粒子を含む水性分散液を濾過、乾燥して、粒子を得た。その物性を表1に示す。
【0069】
<実施例2~8、比較例1~4、比較例6~8>
実施例2~8、比較例1~4及び比較例6~8では、実施例1において、使用する原料の種類および量をそれぞれ表1~2に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして粒子を得た。得られた粒子の物性を表1~2に示す。
【0070】
<比較例5>
イオン交換水1000重量部に、ドデシル硫酸ナトリウム0.25重量部、複分解ピロリン酸マグネシウム15重量部を混合し調整することで水性分散媒を調製した。
これとは別にアクリル酸メチル20重量部、アクリル酸n-ブチル40重量部、エチレングリコールジメタクリレート40重量部、酢酸エチル150重量部、ベンゾイルパーオキサイド0.75重量部を混合、溶解し油性混合物とした。
上記で得られた水性分散媒及び油性混合物をTKホモミキサー2.5型(プライミクス社)で攪拌(8000rpm×1min)して懸濁液を調製した。この懸濁液を容量3リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度65℃で15時間重合を行い、多孔質粒子及び多孔化剤の酢酸エチルを含む水性分散液を得た。
容量3リットルの減圧蒸留器に移して、圧力260mmHg、温度70℃、回転数100rpmに調整し減圧蒸留を行い、多孔化剤の留出完了を目視で確認して1時間後に蒸留を停止した。
得られた多孔質粒子を含む水性分散液を濾過、乾燥して、多孔質粒子を得た。その物性を表2に示す。
【0071】
なお、表1~2の実施例及び比較例で使用した単量体(B)が分子内に有するエーテル結合の数は表3の通りであった。
【0072】
<組成物の作製及び評価>
スチレン系エラストマー(A硬度:26)90重量部及び実施例1で得た粒子10重量部をニーダーで均一に混練してスチレン系エラストマー混合物を調製した。次いで、このスチレン系エラストマー混合物に対して、ベント付の一軸押出成形機(スクリュー径φ65mm)を用いて押出し成形を行って、組成物を作製した。なお、押出成形時の成形温度は160℃であり、口金形状は幅150mm×厚み20mmの長方形であった。作製した組成物について、硬度の変化率を後述する方法にて行った。結果を表1~2に示す。
実施例2~8及び比較例1~8で得られた粒子についても、上記と同様にしてそれぞれスチレン系エラストマー混合物を調製し、組成物の評価を行った。その結果を表1~2に示す。
【0073】
〔円形度の測定〕
粘着テープ上に粒子約10mgを載せ、白金でスパッタリング後、電子顕微鏡にて観察を行った。観察した任意の100個の粒子をマウンテック(株)製の画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View Ver.4を用いて円形度を測定した。
【0074】
〔金属板への付着量の評価〕
SUS304の平板(10cm×5cm)に7cm×3.5cm(底面積24.5cm)の枠を作り、枠内に得られた粒子を7g入れ、底辺が7cm×3.5cm(底面積24.5cm)、重量が1500gの平面圧子で加重をかけた。25℃、12時間経過後、平面圧子及び、枠を外した。圧縮された粒子が付着した平板を10秒間ひっくり返し、平板から脱落した粒子の重量を測定した。金属板への付着量は以下の式で求めた。
粒子の金属板への付着量(%)=(7g-平板から脱落した粒子の重量)/7g×100
粒子の金属板への付着性を以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:粒子の金属板への付着量が10%未満であり、金属への付着性が低い。
○:粒子の金属板への付着量が10%以上、20%未満であり、金属への付着性がやや低い。
△:粒子の金属板への付着量が20%以上、30%未満であり、金属への付着性がやや高い。
×:粒子の金属板への付着量が30%以上であり、金属への付着性が高い。
【0075】
〔硬度の変化率の測定〕
得られた組成物について、JIS K6253に準拠し、(23±2)℃の条件下でタイプAデュロメーター硬さ試験により測定し、A硬度の変化率を以下の評価基準に基づいて評価した。なお、基材樹脂として、前述の市販のスチレン系エラストマー(A硬度:26)を用いた。
◎:樹脂粒子を添加していない基材樹脂とのA硬度の差が0以上、1.5以下であった。
○:樹脂粒子を添加していない基材樹脂とのA硬度の差が1.5超、3以下であった。
△:樹脂粒子を添加していない基材樹脂とのA硬度の差が3超、5以下であった。
×:樹脂粒子を添加していない基材樹脂とのA硬度の差が5超であった。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
表1~2の結果から分かるように、単量体(B)を含む重合性成分の重合体を含み、オレイン酸吸油量が70mL/100g以上であり、円形度が0.80~1.0であり、平均粒子径が1~100μmである粒子であると、金属への付着性が低減され、良好であった。一方、単量体(B)を使用していない粒子(比較例1、5)、オレイン酸吸油量が70mL/100g未満である粒子(比較例2、4、7、8)、円形度が0.8未満である粒子(比較例3、5、7、8)、平均粒子径が1~100μmの範囲にない粒子(比較例3、6、8)であると金属への付着性を解決することはできなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の粒子は、基材成分の添加剤として利用することができる。また、これ以外にも、化粧料や外用医薬品の配合成分としても利用することができる。