(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119179
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】粒子、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08J 3/16 20060101AFI20230821BHJP
C08F 290/04 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08J3/16 CEY
C08F290/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021899
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】喜夛 裕
(72)【発明者】
【氏名】青木 貴之
【テーマコード(参考)】
4F070
4J127
【Fターム(参考)】
4F070AA32
4F070AC17
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(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、基材成分を含む組成物の元来有するソフトな触感を維持でき、衝撃性能の低下及び外観不良を抑制できる粒子、及びその用途を提供することである。
【解決手段】 下記単量体(A)を含む重合性成分の重合体を含み、オレイン酸吸油量が95mL/100g以上であり、平均粒子径が2~100μmである粒子。
単量体(A):アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有し、かつ前記アクリロイル基及びメタクリロイル基以外に反応性炭素-炭素二重結合を有し、分子量が200以上であり、下記一般式(1)で示される化合物
R1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3はそれぞれ独立して、アクリロイル基またはメタクリロイル基であり、R2は前記反応性炭素-炭素二重結合を有する。)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(A)を含む重合性成分の重合体を含み、オレイン酸吸油量が95mL/100g以上であり、平均粒子径が2~100μmである、粒子。
単量体(A):アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有し、かつ前記アクリロイル基及びメタクリロイル基以外に反応性炭素-炭素二重結合を有し、分子量が200以上であり、下記一般式(1)で示される化合物
R1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3はそれぞれ独立して、アクリロイル基またはメタクリロイル基であり、R2は前記反応性炭素-炭素二重結合を有する。)
【請求項2】
前記R2が重合体鎖を有し、前記重合体鎖が構成単位としてジエンを含む、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
前記ジエンが、ブタジエン及び/またはイソプレンである、請求項2に記載の粒子。
【請求項4】
前記重合性成分が、ニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
下記式(I)によって定義されるイソプロピルアルコール膨潤倍率が3.0以下である、請求項1~4のいずれかに記載の粒子。
イソプロピルアルコール膨潤倍率(倍)=B/A (I)
A:イソプロピルアルコール膨潤前の粒子の平均粒子径
B:イソプロピルアルコール膨潤後の粒子の平均粒子径
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の粒子と、液状有機化合物及び/または水を含む、湿粉状粒子。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の粒子、及び請求項6に記載の湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分を含む、組成物(ただし、タイヤ用であるゴム組成物を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、船舶等の内装材(例えば、自動車のドアトリム、インストルメントパネル等)やパッキン(例えば、自動車のウェザーストリップ、ガラスランチャンネル等)等の部品には、ソフトな触感を付与する目的で、基材としてゴムやエラストマーが好適に使用されている。
【0003】
エラストマーを基材として用いた場合、例えば、特許文献1や特許文献2のパラフィンオイルとシリコーンオイルとを添加した柔軟性に優れるスチレン系エラストマーが提案されているように、オイルを柔軟成分として添加して、得られる組成物に柔軟性を付与する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-73112号公報
【特許文献2】特開平4-73142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2のようにオイルを使用した組成物である場合、組成物は柔軟性を有してはいるが、含有したオイルのブリードアウトにより組成物の表面がベト付き、ソフトな触感が損なわれることの問題が確認された。
オイルのブリードアウトを抑制するためには、オイルに対して吸油性を有する物が求められるが、充分に満足するものはなく、さらには、添加剤を配合することで、得られる組成物の衝撃性能の低下や外観が損なわれるなど、組成物の物性低下も生じる問題が確認された。
【0006】
本発明の目的は、基材成分を含む組成物の元来有するソフトな触感を維持でき、衝撃性能の低下及び外観不良を抑制できる粒子、及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の条件を満足する粒子であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の粒子は、下記単量体(A)を含む重合性成分の重合体を含み、オレイン酸吸油量が95mL/100g以上であり、平均粒子径が2~100μmである。
単量体(A):アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有し、かつ前記アクリロイル基及びメタクリロイル基以外に反応性炭素-炭素二重結合を有し、分子量が200以上であり、下記一般式(1)で示される化合物
R1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3はそれぞれ独立して、アクリロイル基またはメタクリロイル基であり、R2は前記反応性炭素-炭素二重結合を有する。)である。
【0008】
本発明の粒子は、前記R2が重合体鎖を有し、前記重合体鎖が構成単位としてジエンを含むものであると、好ましい。
本発明の粒子は、前記ジエンが、ブタジエン及び/またはイソプレンであると、好ましい。
本発明の粒子は、前記重合性成分が、ニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むと、好ましい。
本発明の粒子は、下記式(I)によって定義されるイソプロピルアルコール膨潤倍率が3.0以下であると、好ましい。
イソプロピルアルコール膨潤倍率(倍)=B/A (I)
A:イソプロピルアルコール膨潤前の粒子の平均粒子径
B:イソプロピルアルコール膨潤後の粒子の平均粒子径
【0009】
本発明の湿粉状粒子は、上記の記載の粒子と、液状有機化合物及び/または水を含む。
本発明の組成物は、上記の粒子、及び上記の湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分を含み、タイヤ用であるゴム組成物を除くものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粒子は、基材成分を含む組成物が元来有するソフトな触感を維持しつつ、優れた衝撃性能及び優れた外観とすることができる。
本発明の組成物は、ソフトな感触を有し、衝撃性能及び外観に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(粒子)
本発明の粒子は重合性成分の重合体を含むものである。
重合性成分は分子内に少なくとも1つ以上の反応性炭素-炭素二重結合を有する単量体成分を意味し、重合することによって粒子を構成する重合体となる成分である。重合性成分としては、反応性炭素-炭素二重結合を1つ有する単量体(以下、単官能単量体ということがある)と、反応性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体である架橋剤が挙げられる。架橋剤により橋掛け構造を重合体に導入することができる。
ここでいう反応性炭素-炭素二重結合は、ラジカル反応性を示す炭素-炭素二重結合を意味し、ベンゼン環やナフタレン環等の芳香環内にある炭素-炭素二重結合ではなく、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニレン基等に含まれる炭素-炭素二重結合が挙げられる。
本発明の粒子は、本発明の効果をより奏する点で、重合性成分の重合体を含む重合体粒子(中実状)であると好ましく、また、球状であると好ましい。
【0012】
重合性成分は下記単量体(A)を含む。
単量体(A):アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有し、かつアクリロイル基及びメタクリロイル基以外に反応性炭素-炭素二重結合を有し、分子量が200以上であり、下記一般式(1)で示される化合物
R1-O-R2-O-R3 (1)
(式中、R1およびR3はそれぞれ独立して、アクリロイル基またはメタクリロイル基であり、R2は反応性炭素-炭素二重結合を有する。)
【0013】
アクリロイル基、メタアクリロイル基は反応性炭素-炭素二重結合と極性を有する構造であるため、非常に高いラジカル反応性を持つと考えられる。
このため、単量体(A)を含む重合性成分から得られる重合体は緻密性が向上した橋架け構造を有し、単量体(A)の分子量は200以上であるため、重合体の分子量をより大きくすることが可能となり、さらに単量体(A)は上記一般式(1)のような構造を有するため、重合体中に炭素-炭素二重結合を有することができるため、高い弾性を有すると考えられる。また、重合体中に炭素-炭素二重結合を有することにより、オイルとの親和性も調整できると考えられる。
【0014】
単量体(A)の分子量は200以上であり、好ましくは200~100000である。該分子量が200未満であると、弾性が高くなりすぎてしまい、衝撃性能が低下する。一方、該分子量が100000以下であると、重合体の緻密性が向上する傾向がある。
該分子量の上限は、より好ましくは75000、さらに好ましくは50000、特に好ましくは35000、最も好ましくは25000である。一方、該分子量の下限は、好ましくは500、より好ましくは600、さらに好ましくは1000、特に好ましくは1500である。
【0015】
単量体(A)において、上記一般式(1)中のR2が重合体鎖を有する構造であると、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
反応性炭素-炭素二重結合は重合体鎖中に有していてもよく、重合体鎖以外の構造部に有していてもよい。本発明の効果をより奏する点で、反応性炭素-炭素二重結合は重合体鎖に含まれていることが好ましい。重合体鎖に反応性炭素-炭素二重結合を有することで、R2の屈曲を抑制することができるため、高い弾性を有すると考えられ、衝撃特性をさらに向上させることができると考えられる。
R2が重合体鎖を有する構造である場合、単量体(A)の分子量は重量平均分子量を意味するものである。
【0016】
R2は重合体鎖のみで構成された構造でもよく、重合体鎖と重合体鎖以外の有機基及び/または無機基とが結合した構造でもよい。有機基は、炭素元素を含む機能性基と定義する。有機基としては、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、オキシアルキレン基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、エステル基、カルボニル基、アミド基、ウレタン基、フェニル基、フェニレン基、アクリロイル基、クリロイル基、アリル基等が挙げられる。これらの有機基は1種が重合体鎖に結合していてもよく、または2種以上が重合体鎖に結合していてもよい。
また、本発明において、無機基は炭素元素を含まない機能性基と定義する。無機基としては、例えば、ヒドロキシル基;エーテル基;アミノ基;スルホ基;フルオロ基やクロロ基等のハロゲン基;シラノール基等が挙げられる。これらの無機基は1種が重合体鎖に結合、または2種以上が重合体鎖に結合していてもよい。
さらに、R2は直鎖状の構造でもよく、枝分かれの構造であってもよい。
【0017】
さらに、重合体鎖が構成単位としてジエンを含むと、単量体(A)に含まれる反応性炭素-炭素二重結合の数が多くなるため、弾性を付与し、衝撃性能を向上させることができるため、好ましい。
【0018】
単量体(A)が有する構成単位としてのジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン(本発明では、単にブタジエンともいう);1,3-ペンタジエン;1,3-ヘキサジエン;2,4-ヘキサジエン;1,3-ヘプタジエン;1,3-オクタジエン;イソプレン;クロロプレン;2-メチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-ブチル-1,3-ブタジエン、2-ペンチル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2-ヘプチル-1,3-ブタジエン、2-オクチル-1,3-ブタジエン、2-ネオペンチル-1,3-ブタジエン等の2-アルキル-1,3-ブタジエン;2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエン等の2,3-ジアルキル-1,3-ブタジエン;1-フェニル-1,3-ブタジエン;2-フェニル-1,3-ブタジエン等のアリール-1,3-ブタジエン;1-フェニル-2,4-ペンタジエン;2-クロロ-1,3-ブタジエン;2-シアノ-1,3-ブタジエン;3-メチル-1,3-ペンタジエン等の共役ジエン、1,4-ヘキサジエン;3-メチル-1,4-ヘキサジエン;4-メチル-1,4-ヘキサジエン;5-メチル-1,4-ヘキサジエン;4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン;7-メチル-1,6-オクタジエン;8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン;4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン;メチルテトラヒドロインデン;5-エチリデン-2-ノルボルネン;5-メチレン-2-ノルボルネン;5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン;5-ビニリデン-2-ノルボルネン;6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン;5-ビニル-2-ノルボルネン;5-イソプロペニル-2-ノルボルネン;5-イソブテニル-2-ノルボルネン;シクロペンタジエン;ノルボルナジエン等の非共役ジエンが挙げられる。これらのジエンは1種または2種以上を含んでもよい。
ジエンの中でも、本発明の効果をより奏する点で、ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンから選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、ブタジエン及び/またはイソプレンであるとさらに好ましい。
重合体鎖が構成単位として2種以上のジエンを含む場合、重合体鎖はランダム共重合体のようにランダムに各ジエンの構成単位が重合した重合体であってもよく、ブロック共重合体のように各ジエンの構成単位が各々纏まりをもって重合した重合体であってもよい。
【0019】
重合体鎖については本発明の効果を阻害しない範囲で、構成単位としてジエン以外を含んでもよい。ジエン以外の構成単位としては、例えば、1,3,5-ヘキサトリエン等の構成単位中に反応性炭素-炭素二重結合を3つ以上有しているポリエン系構成単位;アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系構成単位;スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等の芳香族系ビニル構成単位;エチレン、ポリプロピレン、イソブチレン等のオレフィン系構成単位等が挙げられる。これらのジエン以外の構成単位は1種または2種以上含んでもよい。
重合体鎖にジエン以外の構成単位を含む場合は、重合体鎖はランダム共重合体のようにジエンとそれ以外の構成単位がランダムに重合した重合体鎖でもよく、ブロック共重合体のようにジエンとそれ以外の構成単位が各々纏まりをもって重合した重合体鎖でもよい。
【0020】
重合体鎖を構成する全構成単位の重合度に対する、ジエンの構成単位の重合度の割合は、特に限定はないが、(1)10%以上、(2)20%以上、(3)40%以上、(4)55%以上、(5)65%以上、(6)75%以上、(7)90%以上、(8)100%の順で好ましい(括弧内の数値が大きくなるにつれ好ましい)。該割合が10%以上であると、弾性が向上する傾向がある。
重合体鎖が構成単位としてジエンを含む場合、重合体鎖はシス構造及びトランス構造の少なくとも1種の構造を有することがある。
【0021】
重合性成分に占める単量体(A)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.05重量%以上である。該重量割合が上記範囲であると、粒子の弾性が向上する傾向がある。該重量割合の上限は、好ましくは50重量%、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは25重量%、特に好ましくは15重量%、最も好ましくは10重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.1重量%、さらに好ましくは0.3重量%、特に好ましくは0.5重量%、最も好ましくは1重量%である。
【0022】
重合性成分は単量体(A)の他に、単量体成分、単量体(A)以外の反応性炭素-炭素二重結合を少なくとも2つ有する単量体(以下、単にその他架橋剤ということがある)を含んでもよい。また、本発明の効果を奏する点で、重合性成分が単官能単量体を有すると好ましい。
【0023】
単官能単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等のニトリル系単量体;塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸の無水物や、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N-ビニルカルバゾール、N-ビニルピロリドン等のN-ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等が挙げられる。
カルボキシル基含有単量体は、一部または全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。
なお、本発明では、アクリル酸またはメタクリル酸を合わせて(メタ)アクリル酸ということもあり、アクリレートまたはメタクリレートを合わせて(メタ)アクリレートということもある。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味するものとする。これらの単官能単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
重合性成分は単官能単量体として、ニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含むと、粒子の耐衝撃性が向上する点で好ましい。
重合性成分がニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びスチレン系単量体から選ばれる少なくとも1種を含む場合、重合性成分に占めるニトリル系単量体、カルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、及びスチレン系単量体の重量割合の合計は、特に限定はないが、好ましくは50~99.95重量%である。該重量割合の合計の上限は、より好ましくは99.9重量%、さらに好ましくは99.7重量%、特に好ましくは99.5重量%、最も好ましくは99重量%である。一方、該重量割合の合計の下限は、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは85重量%、特に好ましくは90重量%である。
【0025】
重合性成分が単官能単量体としてニトリル系単量体を含むと、粒子の耐溶剤性が向上する点で好ましい。重合性成分がニトリル系単量体を含む場合、重合性成分に占めるニトリル系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0.05~90重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは80重量%、さらに好ましくは60重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは30重量%である。一方、該重量割合の合計の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは5重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは15重量%である。
【0026】
ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。ニトリル系単量体がアクリロニトリルを含む場合、ニトリル系単量体に占めるアクリロニトリルの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5重量%以上である。該重量割合の上限は、好ましくは100重量%、より好ましくは75重量%、さらに好ましくは50重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、特に好ましくは20重量%である。
【0027】
重合性成分が単官能単量体としてカルボキシル基含有単量体系単量体を含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。重合性成分がカルボキシル基含有単量体を含む場合、重合性成分に占めるカルボキシル基含有単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~99.95重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは95重量%、さらに好ましくは90重量%、特に好ましくは85重量%、最も好ましくは80重量%である。一方、該重量割合の合計の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは50重量%である。
【0028】
重合性成分が単官能単量体として(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むと、粒子の硬さを調整できる点で好ましい。重合性成分が(メタ)アクリル酸系単量体を含む場合、重合性成分に占める(メタ)アクリル酸系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは10~99.95重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは99.9重量%、さらに好ましくは99.7重量%、特に好ましくは99.5重量%、最も好ましくは99重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは20重量%、さらに好ましくは30重量%、特に好ましくは40重量%、最も好ましくは50重量%である。
【0029】
重合性成分が単官能単量体としてスチレン系単量体を含むと、粒子の耐熱性が向上する点で好ましい。重合性成分がスチレン系単量体を含む場合、重合性成分に占めるスチレン系単量体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5~90重量%である。該重量割合の上限は、より好ましくは85重量%、さらに好ましくは80重量%、特に好ましくは75重量%、最も好ましくは70重量%である。一方、該重量割合の合計の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは30重量%である。
【0030】
重合性成分は上述のようにその他架橋剤を含んでもよい。重合性成分がその他架橋剤を含むと、粒子の強度がより向上する点で好ましい。
その他架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル系モノマー;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG200#ジ(メタ)アクリレート、PEG400#ジ(メタ)アクリレート、PEG600#ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能以上の(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。これらのその他架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
重合性成分がその他架橋剤を含む場合、その量は特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0~30重量部である。その他架橋剤の量が30重量部以下であると、粒子の強度を保持しつつオイルとの親和性を調整できる傾向がある。該含有量の上限は、より好ましくは15重量部、さらに好ましくは10重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは0.1重量部、さらに好ましくは0.5重量部、特に好ましくは1重量部、最も好ましくは3重量部である。
【0031】
本発明の粒子に占める、上記重合性成分を重合して得られる重合体の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%、最も好ましくは97重量%である。該重量割合が80重量%以上であると、本発明の効果をより奏する傾向がある。一方、該重量割合の上限は、好ましくは100重量%である。
【0032】
本発明の粒子は、上記重合性成分を重合して得られる重合体以外の成分として、無機成分を含んでもよい。
無機成分としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン等が挙げられる。これらの無機成分は、シランカップリング剤等のカップリング剤で予め表面処理されたものであってもよい。これらの無機成分は1種または2種以上で構成されていてもよい。
【0033】
粒子に占める無機成分の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。該重量割合が20重量%以下であると、よりソフトな感触となる傾向がある。該重量割合の下限は0重量%である。
粒子が無機成分を含む場合、無機成分は粒子の表面に存在していてもよく、粒子の内部に存在していてもよく、その両方であってもよい。
【0034】
本発明の粒子のオレイン酸吸油量は95mL/100gであり、好ましくは95~300mL/100gである。該吸油量が95mL/100g未満であると、オイルの吸油性が低く、組成物に使用した際に表面がベト付き、ソフトな触感に劣る。該吸油量の上限は、より好ましくは250mL/100gである。一方、該吸油量の下限は、好ましくは、120mL/100gある。
なお、粒子のオレイン酸吸油量は、実施例に記載の方法によるものである。
【0035】
本発明の粒子の平均粒子径は、2~100μmである。該平均粒子径が2μm未満であると、粒子の弾性が低下し、衝撃性能が低下する。一方、該平均粒子径が100μm超であると、外観が損なわれる。該平均粒子径の上限は、好ましくは90μm、より好ましくは75μm、さらに好ましくは60μm、特に好ましくは50μmである。一方、該平均粒子径の下限は、好ましくは2μm、より好ましくは5μm、さらに好ましくは7μmである。
なお、粒子の平均粒子径は、実施例に記載の方法によるものである。
【0036】
本発明の粒子の粒度分布の変動係数CVは、特に限定はないが、得られる組成物の外観不良を抑制する点で、1~70%であると好ましい。該CVの上限は、より好ましくは65%、さらに好ましくは50%である。一方、該CVの下限は、より好ましくは3%、さらに好ましくは5%である、特に好ましくは10%、最も好ましくは15%である。
なお、該CVは、以下に示す計算式(1)及び(2)により算出した。
【0037】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、x
iはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0038】
本発明の粒子の円形度は、特に限定はないが、衝撃性能を向上させる点で、0.70~1.0であると好ましい。該円形度の下限は、より好ましくは0.75、さらに好ましくは0.80、特に好ましくは0.85、特に好ましくは0.90である。
なお、粒子の円形度は、実施例に記載の方法によるものである。
【0039】
本発明の粒子は、下記式(I)によって定義されるイソプロピルアルコール膨潤倍率が3.0以下であると好ましい。
イソプロピルアルコール膨潤倍率(倍)=B/A (I)
A:イソプロピルアルコール膨潤前の粒子の平均粒子径
B:イソプロピルアルコール膨潤後の粒子の平均粒子径
該膨潤倍率が3.0以下であると、組成物と共に用いた際に表面のベト付きが抑制され、よりソフトな触感となる傾向がある。該該膨潤倍率の上限は、より好ましくは2.5、さらに好ましくは2.0である。一方、該該膨潤倍率の下限は、好ましくは1.0、より好ましくは1.05、さらに好ましくは1.08、特に好ましくは1.1、最も好ましくは1.2である。
【0040】
(粒子の製造方法)
本発明の粒子において、その製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法(例えば、懸濁重合法、分散重合法、シード重合法等)を採用することができる。なかでも、本発明の粒子を効率よく製造できるという点から、懸濁重合法が好ましい。
懸濁重合法においては、通常、分散剤の存在下、重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させた懸濁液を調製し、しかる後に懸濁液を加熱し重合性成分を重合させることにより粒子を製造する。以下、本発明の粒子において、その製造方法が懸濁重合法である場合について説明する。
【0041】
粒子の製造方法は、重合性成分を含む油性混合物を水性分散媒中に分散させ、重合性成分を重合させる工程(以下、重合工程という)を含むものである。
重合工程では、重合開始剤を含む油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
【0042】
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ-2-オクチルパーオキシジカーボネート、ジベンジルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート等のパーオキシエステル;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド等が挙げられる。
【0043】
アゾ化合物としては、例えば、2,2’アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種または2種以上を併用してもよい。重合開始剤としては、重合性成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
油性混合物における重合開始剤の含有量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.1~8重量部、さらに好ましくは0.2~5重量部である。
【0044】
水性分散媒は、油性混合物を分散させるための、水を主成分とする媒体である。水性分散媒に用いる水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水等のいずれでもよい。また、水性分散媒の主成分として水が使用されるが、水とともに、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン等の親水性有機溶媒を併用してもよい。水と親水性有機溶媒との混合物を用いることにより、粒子の表面及び内部に空孔を形成させることができる。なお、ここでいう親水性とは、水に任意に混和できる状態であることを意味する。
水性分散媒に占める水の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50~99.5重量%である。
【0045】
水性分散媒は、電解質をさらに含有してもよい。電解質としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。これらの電解質は、1種または2種以上を併用してもよい。水性分散媒における電解質の含有量は、特に限定はないが、水性分散媒100重量%に対して、0.1~30重量%であると好ましい。
【0046】
水性分散媒は、水酸基、カルボン酸(塩)基及びホスホン酸(塩)基から選ばれる親水性官能基とヘテロ原子とが同一の炭素原子に結合した構造を有する水溶性1,1-置換化合物類、重クロム酸カリウム、亜硝酸アルカリ金属塩、金属(III)ハロゲン化物、ホウ酸、水溶性アスコルビン酸類、水溶性ポリフェノール類、水溶性ビタミンB類および水溶性ホスホン酸(塩)類から選ばれる少なくとも1種の水溶性化合物を含有してもよい。なお、本発明における水溶性とは、水100gあたり1g以上溶解する状態であることを意味する。
【0047】
水性分散媒中に含まれる水溶性化合物の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.0001~1.0重量部、より好ましくは0.0003~0.1重量部、さらに好ましくは0.001~0.05重量部である。水溶性化合物の量が少なすぎると、水溶性化合物による効果が十分に得られないことがある。また、水溶性化合物の量が多すぎると、重合速度が低下したり、原料であるモノマーの残存量が増加したりすることがある。
【0048】
水性分散媒は、水や親水性有機溶媒以外に、分散剤及び/または界面活性剤を含有すると好ましい。
分散剤としては、例えば、コロイダルシリカ、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機化合物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられる。これらの分散剤は、1種または2種以上を併用してもよい。これらの中でも、難水溶性無機化合物が好ましく、コロイダルシリカが特に好ましい。
水性分散媒に含まれる分散剤の量は、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは0.5~15重量部である。
【0049】
界面活性剤としては、分子量が1000未満の低分子界面活性剤が好ましく、例えば、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、アジピン酸-ジエタノールアミン縮合物等のノニオン界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキサイド、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
水性分散媒に含まれる界面活性剤の量は、特に限定はないが、モノマー混合物100重量部に対して、好ましくは0.01~5重量部である。
【0050】
水性分散媒は、例えば、水(イオン交換水)に、必要に応じて、親水性有機溶媒、電解質、水溶性化合物、分散剤、界面活性剤等を配合して調製される。重合時の水性分散媒のpHは、分散剤の種類によって適宜決められる。
水性分散媒における水の量については、特に限定はないが、重合性成分100重量部に対して、好ましくは100~1000重量部である。
【0051】
重合工程では、まず、所定粒子径の球状油滴が調製されるように油性混合物を水性分散媒中に分散させる。
油性混合物を分散させる方法としては、例えば、ホモミキサー(例えば、プライミクス社製)、ホモディスパー(例えば、プライミクス社製)、クレアミクス(エムテクニック社製)等により攪拌する方法や、スタティックミキサー(例えば、ノリタケエンジニアリング社製)等の静止型分散装置を用いる方法、膜乳化法、超音波分散法、マイクロチャネル法等の一般的な分散方法を挙げることができる。
【0052】
次いで、油性混合物が油滴として水性分散媒に分散された分散液(懸濁液)を加熱することにより、重合を開始する。
重合温度は、重合開始剤の種類によって自由に設定されるが、好ましくは40~100℃、より好ましくは45~90℃の範囲で制御される。反応温度を保持する時間は、1~20時間程度が好ましい。重合初期圧力については、ゲージ圧で0~5MPa、より好ましくは0.1~3MPaの範囲である。
重合反応中は、分散液を攪拌するのが好ましく、その攪拌は、例えば、モノマーの浮上や重合後の粒子の沈降を防止できる程度に緩く行えばよい。
このように重合工程を行うことによって、粒子を含有する水性分散液(スラリー)を得ることができる。
【0053】
粒子の製造方法は、重合工程の他に、必要に応じて、分散剤を分解する工程、濾過工程、洗浄工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程を含み、さらに無機粉体を付着させる工程等を含んでもよい。これらの工程を行う順序や回数などは特に制限されない。なお、分散剤を分解する工程とは、粒子を含有する水性分散液(スラリー)等に対して、酸又は塩基を添加することにより、分散剤として使用した難水溶性無機化合物を分解する工程をいう。
【0054】
濾過工程は、粒子を含有する水性分散液(スラリー)を、濾過装置を用いて固液分離し、含水率5~50重量%、好ましくは含水率7~30重量%のウェットケーキとする工程である。濾過装置としては、遠心分離機、加圧プレス機、真空脱水機等が挙げられ、これらの装置において設定条件を適宜変更することにより、得られるウェットケーキの含水率を調整することができる。
乾燥工程では、棚型乾燥機、間接加熱乾燥機、流動乾燥機、真空乾燥機、振動乾燥機、気流乾燥機等によりウェットケーキを乾燥し、含水率5重量%以下の乾燥粉体とすることができる。また、スラリーを噴霧乾燥機、流動乾燥機等により乾燥し、乾燥粉体とすることもできる。
【0055】
粒子が上記重合性成分の重合体からなるものであるとき、上述のように無機粉体を粒子に付着させてもよい。無機粉体は上記無機成分と同様のものであってもよい。無機粉体を付着させる方法としては、特に限定はないが、例えば、公知の粉体混合機等を用いて、必要に応じて加熱する等行いながら、粒子と無機粉体とを混合する方法等が挙げられる。付着させる無機粉体の量は、特に限定はないが、粒子100重量部に対して好ましくは1~15重量部である。
【0056】
(湿粉状粒子)
本発明の湿粉状粒子は、上記粒子と、液状有機化合物及び/または水を含む、湿粉状態のものであり、粒子のハンドリング性を向上させることができる。また、湿粉状粒子は上記ウェットケーキであってもよい。
液状有機化合物としては、例えば、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、プロセスオイル、流動パラフィン、ナフテン系オイル、アロマ系オイル、油脂類、シリコーンオイル、上記親水性有機溶媒等が挙げられる。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水のいずれを使用してもよい。
【0057】
本発明の湿粉状粒子において、液状有機化合物及び水の含有量の合計は特に限定はないが、粒子100重量部に対して、好ましくは1~100重量部である。該含有量の合計が、上記範囲内であると、高いハンドリング性を維持できる傾向がある。該含有量の合計の上限は、より好ましくは45重量部、さらに好ましくは30重量部、特に好ましくは20重量部である。一方、該含有量の合計の下限は、より好ましくは5重量部である。
【0058】
(湿粉状粒子の製造方法)
本発明の湿粉状粒子において、その製造方法としては特に限定はないが、例えば、以下の(1)~(4)が挙げられる。
(1)上記重合工程で得られたスラリーをそのまま固液分離し、得られたウェットケーキを湿粉状粒子とする方法。
(2)上記重合工程で得られたスラリーを固液分離してウェットケーキを得、次いで得られたウェットケーキと、液状有機化合物及び/または水と、を混合して湿粉状粒子とする方法。
(3)重合工程で得られたスラリーを固液分離してウェットケーキを得、次いで得られたウェットケーキを乾燥させて粒子の乾燥粉体を得、そして得られた粒子の乾燥粉体と、液状有機化合物及び/または水と、を混合して湿粉状粒子とする方法。
上記(2)および(3)の方法において、ウェットケーキ又は粒子の乾燥粉体と、液状有機化合物及び/または水とを混合する装置としては、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機、スーパーミキサー等の一般的な粉体混合機を用いることができる。
【0059】
(組成物)
本発明の組成物は、上記粒子及び上記湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種と、基材成分とを含むものであって、タイヤ用ゴム組成物を除くものである。
基材成分としては、特に限定はなく、天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等のゴム類;不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等のワックス類;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド樹脂(ナイロン6、ナイロン66など)、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の熱可塑性樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ポリ乳酸(PLA)、酢酸セルロース、PBS、PHA、澱粉樹脂等のバイオプラスチック;シリコーン系、変性シリコーン系、ポリサルファイド系、変性ポリサルファイド系、ウレタン系、アクリル系、ポリイソブチレン系、ブチルゴム系等のシーリング材料;ウレタン系、エチレン-酢酸ビニル共重合物系、塩化ビニル系、アクリル系等のエマルジョンやプラスチゾル等の液状物成分;セメントやモルタルやコージエライト等の無機物;セルロース、ケナフ、フスマ、アラミド繊維、フェノール繊維、ポリエステル系繊維、アクリル系繊維、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、レーヨン等の有機繊維が挙げられる。これらの基材成分は1種または2種以上を併用してもよい。
【0060】
本発明の組成物に占める、粒子及び湿粉状粒子から選ばれる少なくとも1種の重量割合は特に限定はないが、好ましくは0.01~80重量%である。該重量割合が上記範囲であると、組成物はソフトな感触を有し、衝撃性能及び外観が優れる傾向がある。該重量割合の上限は、より好ましくは65重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは25重量%、最も好ましくは10重量%である。一方、該重量割合の下限は、より好ましくは0.05重量%、さらに好ましくは0.1重量%、特に好ましくは0.3重量%、最も好ましくは0.5重量%である。
【0061】
本発明の組成物は必要に応じて、無機充填剤、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、酸化防止剤、老化防止剤、発泡剤、着色顔料等の各種添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量も、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0062】
本発明の組成物において、その製造方法は特に限定ないが、従来公知の方法を採用すればよく、例えば、ホモミキサー、スタティックミキサー、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール、ミキシングロール、ミキサー、単軸混練機、二軸混練機、多軸混練機等を用いて、機械的に均一に混合や、成形する方法が挙げられる。
【実施例0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、測定に用いた粒子は、特別な記載がない限り、乾燥した粒子を示す。
【0064】
〔平均粒子径と粒度分布の測定〕
レーザー回折式粒度分布測定装置(マイクロトラック9320HRA×100、日機装株式会社製)の湿式測定法により測定し、体積基準測定によるD50値を平均粒子径とした。
【0065】
〔オレイン酸に対する吸収量の測定〕
平滑なガラス板上に粒子1gを精秤し(Wg)、ビューレットよりオレイン酸を滴下し、金属のヘラで錬り込む。これを繰り返して最後にヘラで押さえた時、オレイン酸がにじみ出す直前のオレイン酸の滴下量(VmL)を測定し、下記の式によって吸収量を算出した。
吸収量(mL/100g)=V(mL)/W(g)×100
【0066】
〔イソプロピルアルコール膨潤倍率の測定〕
スライドガラス上に粒子約10mgを載せ、光学顕微鏡とマウンテック(株)製の画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View Ver.4を用いて、粒子の平均粒子径(A)を測定した。その後、粒子にIPAを0.5mL滴下して23℃下で放置し、光学顕微鏡で膨潤が進行する様子を観察する。そして、膨潤が平衡に達した際の、粒子の平均粒子径(B)を測定した。
イソプロピルアルコール膨潤倍率(倍)は、下記式にしたがって算出される。
イソプロピルアルコール膨潤倍率(倍)=B/A
A:イソプロピルアルコール膨潤前の粒子の平均粒子径(μm)
B:イソプロピルアルコール膨潤後の粒子の平均粒子径(μm)
上記測定を5回行い、その平均値を粒子のイソプロピルアルコール膨潤倍率とした。
【0067】
〔円形度の測定〕
粘着テープ上に粒子約10mgを載せ、白金でスパッタリング後、電子顕微鏡にて観察を行った。観察した任意の100個の粒子をマウンテック株式会社製の画像解析式粒度分布ソフトウェアMac-View Ver.4を用いて円形度を測定した。
【0068】
<実施例1>
イオン交換水200重量部に、塩化ナトリウム50重量部、シリカ有効成分20重量%であるコロイダルシリカ20重量部、低分子ノニオン界面活性剤であるアジピン酸-ジエタノールアミン縮合物の水溶液(有効濃度50重量%)0.5重量部を加えて混合した後、pHを2.8~3.2に調整することで水性分散媒を調製した。
これとは別にアクリル酸n-ブチル99重量部、ポリブタジエンジアクリレート(サートマー社製 品番CN-307)1重量部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部を混合、溶解し油性混合物とした。
上記で得られた水性分散媒及び油性混合物をTKホモミキサー2.5型(プライミクス社)で攪拌(8000rpm×1min)して懸濁液を調製した。この懸濁液を容量1.5リットルの加圧反応器に移して窒素置換をしてから反応初期圧0.2MPaにし、80rpmで攪拌しつつ重合温度65℃で15時間重合を行い、粒子を含む水性分散液を得た。
得られた粒子を含む水性分散液を濾過、乾燥して、粒子を得た。その物性を表1に示す。
【0069】
<実施例2~11、比較例1~3>
実施例2~11及び比較例1~3では、実施例1において、使用する原料の種類および量をそれぞれ表1に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして粒子を得た。得られた粒子の物性を表1~2に示す。
なお、表1~2では、表3に示す略号が用いられている。
【0070】
<組成物の作製及び評価>
スチレン系エラストマー(A硬度:26)90重量部及び実施例1で得た粒子10重量部をニーダーで均一に混練してスチレン系エラストマー混合物を調製した。次いで、このスチレン系エラストマー混合物に対して、ベント付の一軸押出成形機(スクリュー径φ65mm)を用いて押出し成形を行って、組成物を作製した。なお、押出成形時の成形温度は160℃であり、口金形状は幅150mm×厚み20mmの長方形であった。作製した組成物について、衝撃性能評価及びベト付き性の評価を口述する方法にて行った。結果を表1に示す。
実施例2~11及び比較例1~3で得られた粒子についても、上記と同様にしてそれぞれスチレン系エラストマー混合物を調製し、組成物の評価を行った。その結果を表1~2に示す。
【0071】
〔衝撃性能の評価〕
得られた組成物の衝撃性能をJIS K6400-3に準拠した方法により、反発弾性試験機(FR-2型、高分子計器株式会社製)を用いて測定を行った。
組成物の衝撃性能は、以下の評価基準に基づいて判定した。
○:粒子を含有した組成物の反発弾性が、粒子をいれていない成形物に対して80%以上を保持し、試験後の成形物にへこみがない
×:粒子を含有した組成物の反発弾性が、粒子をいれていない成形物に対して80%未満である、または、試験後の成形物にへこみがある
【0072】
〔ベト付き性の評価〕
組成物を23℃下で2日間放置後、パネラー5人の触手による評価を行い、ベト付き感がないと5人とも評価したものを○、ベト付き感がないと3~4人が評価したものを△、それ以外を×とした。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
表1~2の結果から分かるように、単量体(A)を含む重合性成分の重合体を含み、オレイン酸吸油量が95mL/100g以上であり、平均粒子径が2~100μmである粒子であると、基材成分が元来有するソフトな触感を維持しつつ、衝撃性能の低下及び外観不良を抑制が可能であった。一方、単量体(A)を使用していない粒子(比較例1)、オレイン酸吸油量が95mL/100g未満である粒子(比較例2)、平均粒子径が2~100μmの範囲にない粒子(比較例3)であると、基材成分が元来有するソフトな触感の維持、衝撃性能の低下及び外観不良の抑制という本発明の課題すべてを解決することはできなかった。