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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119186
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】磁気ギアード電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/10 20060101AFI20230821BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20230821BHJP
   F16H 49/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H02K7/10 A
H02K9/06 G
F16H49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021910
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 拓史
【テーマコード(参考)】
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE26
5H609BB03
5H609BB18
5H609PP02
5H609QQ02
5H609RR04
5H609RR16
(57)【要約】
【課題】磁石回転子と連動して冷却ファンを回転させる簡易な構成の磁気ギアード電気機械を提供する。
【解決手段】磁気ギアード電気機械は、ステータと、径方向においてステータに対向して配置される磁極片回転子と、磁極片回転子を挟んで径方向にてステータとは反対側に位置する複数の磁石を含む第1回転子と、軸方向において第1回転子の一方側に配置されて磁極片回転子の一端に接続されるエンドプレートと、を含む磁気ギアユニットと、冷却ファンを含み、軸方向においてエンドプレートを挟んで第1回転子の反対側に配置される第2回転子と、第1回転子に設けられる第1磁石と、エンドプレートを挟んで第1磁石の反対側に位置するように第2回転子に設けられる第2磁石とを含む磁気トルク伝達ユニットとを備える。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、径方向において前記ステータに対向して配置される磁極片回転子と、前記磁極片回転子を挟んで前記径方向にて前記ステータとは反対側に位置する複数の磁石を含む第1回転子と、軸方向において前記第1回転子の一方側に配置されて前記磁極片回転子の一端に接続されるエンドプレートと、を含む磁気ギアユニットと、
冷却ファンを含み、前記軸方向において前記エンドプレートを挟んで前記第1回転子の反対側に配置される第2回転子と、
前記第1回転子に設けられる第1磁石と、前記エンドプレートを挟んで前記第1磁石の反対側に位置するように前記第2回転子に設けられる第2磁石とを含む磁気トルク伝達ユニットと
を備える磁気ギアード電気機械。
【請求項2】
前記エンドプレートは、前記第1磁石または前記第2磁石の少なくとも一方と対向して周方向に沿って延在する窪みを含み、
前記第1磁石または前記第2磁石の前記少なくとも一方は、少なくとも部分的に前記窪みに侵入するように配置される
請求項1に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項3】
前記窪みは、
前記第1磁石と対向する第1窪みと、
前記第2磁石と対向する第2窪みと
を有し、
前記第1磁石は少なくとも部分的に前記第1窪みに侵入するように配置され、
前記第2磁石は少なくとも部分的に前記第2窪みに侵入するように配置される
請求項2に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項4】
前記エンドプレートは貫通孔を含む
請求項1乃至3の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項5】
前記エンドプレートは、
前記第1磁石または前記第2磁石の少なくとも一方と対向して周方向に沿って延在する窪みと、
貫通孔と
を含み、
前記第1磁石または前記第2磁石の前記少なくとも一方は、少なくとも部分的に前記窪みに侵入するように配置され、
前記貫通孔の少なくとも一部は、前記窪みと前記周方向に並ぶように配置される
請求項1乃至4の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項6】
前記エンドプレートは、前記第1磁石及び前記第2磁石と対向する対向部を含み、
前記対向部は、非磁性体である
請求項1乃至5の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項7】
前記エンドプレートは、前記第1磁石及び前記第2磁石と対向する対向部を含み、
前記対向部は、絶縁体である
請求項1乃至6の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項8】
前記第2回転子の回転位置を計測するためのセンサを備える
請求項1乃至7の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項9】
前記センサは、前記軸方向において、前記冷却ファンの少なくとも一部を挟んで前記エンドプレートと反対側に配置される請求項8に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項10】
前記磁気トルク伝達ユニットは磁気カップリングである
請求項1乃至9の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項11】
前記第1磁石と前記第2磁石は、前記軸方向において前記エンドプレートと対向する
請求項10に記載の磁気ギアード電気機械。
【請求項12】
前記磁極片回転子は、複数の磁極片を含み、
前記第1回転子の前記複数の磁石の極対数は、前記複数の磁極片の磁極数よりも少ない
請求項1乃至11の何れか1項に記載の磁気ギアード電気機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気ギアード電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内部を冷却するように構成されるモータが知られている。例えば特許文献1に開示のモータは、モータ内部冷却用のファンが設けられる回転軸を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-077841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気的な動力を伝達するための複数の部品が互いに非接触にできる磁気ギアード電気機械に上記の冷却ファンが搭載される場合、磁石回転子とファンは、磁極片回転子の一端に設けられるエンドプレートを隔てて配置される。従って、磁石回転子と連動して冷却ファンを回転させるために、両構成要素を機械的に連結する機構が採用されると、磁気ギアード電気機械の構成の複雑化を招く可能性がある。
【0005】
本開示の目的は、磁石回転子と連動して冷却ファンを回転させる簡易な構成の磁気ギアード電気機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード電気機械は、
ステータと、径方向において前記ステータに対向して配置される磁極片回転子と、前記磁極片回転子を挟んで前記径方向にて前記ステータとは反対側に位置する複数の磁石を含む第1回転子と、軸方向において前記第1回転子の一方側に配置されて前記磁極片回転子の一端に接続されるエンドプレートと、を含む磁気ギアユニットと、
冷却ファンを含み、前記軸方向において前記エンドプレートを挟んで前記第1回転子の反対側に配置される第2回転子と、
前記第1回転子に設けられる第1磁石と、前記エンドプレートを挟んで前記第1磁石の反対側に位置するように前記第2回転子に設けられる第2磁石とを含む磁気トルク伝達ユニットとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、磁石回転子と連動して冷却ファンを回転させる簡易な構成の磁気ギアード電気機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】磁気ギアード電気機械の例を示す概略図である。
図1B】磁気ギアード電気機械の他の例を示す概略図である。
図2】一実施形態に係る磁気ギアード電気機械の径方向断面図である。
図3】一実施形態に係る磁気ギアード電気機械の軸方向断面図である。
図4】磁気トルク伝達ユニットの例を示す概略図である。
図5】一実施形態に係る軸方向視の第1エンドプレートを示す概略図である。
図6図5のA―A線矢視方向における第1エンドプレートの断面を示す概略図である。
図7】磁気トルク伝達ユニットの他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0010】
(磁気ギアード電気機械の概要)
図1A及び図1Bは、それぞれ、磁気ギアード電気機械10の例を示す概略図である。ここで、図1A及び図1Bにおいて、「軸方向」は磁気ギアード電気機械10の回転シャフト35に平行な方向であり、「径方向」は回転シャフト35に直交する方向であり、「周方向」は回転シャフト35を基準とした周方向である。磁気ギアード電気機械10と外部機器7との間では、動力の伝達がなされる。
一実施形態では、図1Aに示すように、磁気ギアード電気機械10は、原動機としての外部機器7A(7)から伝達(入力)される動力によって発電を行い、発電により生成した電力Pを例えば電力系統であってもよい電力供給先4に向けて供給するように構成される磁気ギアード発電機10Aである。
他の実施形態では、図1Bに示すように、磁気ギアード電気機械10は、例えば電力系統であってもよい電力供給源6から電力Pの供給を受けて、駆動部としての外部機器7B(7)に動力を伝達(出力)するように構成される磁気ギアードモータ10Bである。
【0011】
図1Aに示す実施形態では、磁気ギアード発電機10Aは、発電システム1の一部を構成する。発電システム1は、例えば、風力発電システムや潮流発電システムのような再生可能エネルギー発電システムであってもよい。発電システム1が風力発電システムである場合、原動機としての外部機器7Aに含まれるシャフト3A(3)は風車ロータである。
磁気ギアード発電機10Aは磁気ギアユニット5を備える。磁気ギアユニット5は、ステータ磁石22及びステータコイル24を含むステータ20と、径方向においてステータ20に対向して配置される複数の磁極片32を含む磁極片回転子30と、磁極片回転子30を挟んで径方向にてステータ20とは反対側に位置する複数の磁石42を含む第1回転子(磁石回転子)110とを備える。図1Aの例では、複数の磁極片32はステータ20よりも径方向内側に配置され、第1回転子110は複数の磁極片32よりも径方向内側に配置される。ステータ20は、ハウジング21の内部に配置される。
磁気ギアユニット5は、磁極片回転子30の軸方向における両端にそれぞれ接続される一対のエンドプレート34と、外部機器7Aのシャフト3Aに連結される回転シャフト35とを備え、一対のエンドプレート34は回転シャフト35に接続される。従って、動力が外部機器7Aのシャフト3Aから回転シャフト35にトルクが入力されることで、磁極片回転子30はシャフト3Aと一体的に回転する。なお、本例の回転シャフト35は、ベアリングB1,B2を介してハウジング21によって回転可能に支持される。
第1回転子110は、複数の磁石42が設けられるコア46と、コア46と回転シャフト35とを連結するベアリングB3,B4とを備える。コア46は回転シャフト35に対して回転することができる。
【0012】
上述の磁気ギアード発電機10Aは、高調波型磁気ギア原理および電磁誘導を利用することで、外部機器7Aからの機械的入力を電力に変換する。
例えば、磁気ギアード発電機10Aにおける発電は以下の原理により行われてもよい。外部機器7Aのシャフト3Aとともに回転する磁極片回転子30の磁極片32によって、ステータ磁石22の磁束が変調され、変調された磁場から磁石42が磁力を受けて第1回転子110が回転する。このとき、磁極片回転子30に対する第1回転子110の回転数の比(増速比)は、磁石42の極対数NHに対する磁極片32の磁極数NLの比(=NL/NH)で表される。第1回転子110が回転することで、電磁誘導によってステータコイル24に電流が発生する。
なお、図1Aに示す実施形態では、磁気ギアユニット5は、径方向の外側から順に、ステータ20、磁極片回転子30、及び第1回転子110が順に配置される構成を有する。別の実施形態では、磁気ギアード発電機10Aは、径方向の外側から順に、第1回転子110、磁極片回転子30、及びステータ20が順に配置される構成を有する。この場合、円筒状のシャフト3Aの内側に、第1回転子110、磁極片回転子30、及びステータ20が配置される。
【0013】
図1Bに示す実施形態では、磁気ギアードモータ10Bは、駆動システム2の一部を構成する。駆動システム2は、磁気ギアードモータ10Bを駆動源として稼働する。一例として、駆動システム2は、磁気ギアードモータ10Bを動力源として走行する車両であってもよく、この場合、外部機器7Bに含まれるシャフト3B(3)は、ホイールに動力を伝達するためのドライブシャフトである。
磁気ギアードモータ10Bの基本構成は、図1Aに示す磁気ギアード発電機10Aと共通する。
すなわち、磁気ギアードモータ10Bは、磁気ギアユニット5を備える。磁気ギアユニット5は、ステータ磁石22及びステータコイル24を含むステータ20と、径方向においてステータ20に対向して配置される複数の磁極片32を含む磁極片回転子30と、磁極片回転子30を挟んで径方向にてステータ20とは反対側に位置する複数の磁石42を含む第1回転子(磁石回転子)110とを備える。図1Bの例では、複数の磁極片32はステータ20よりも径方向内側に配置され、第1回転子110は複数の磁極片32よりも径方向内側に配置される。ステータ20は、ハウジング21の内部に配置される。
磁気ギアユニット5は、磁極片回転子30の軸方向における両端にそれぞれ接続される一対のエンドプレート34と、外部機器7Bのシャフト3Bに連結される回転シャフト35とを備え、一対のエンドプレート34は回転シャフト35に接続される。従って、動力が外部機器7Bのシャフト3Bから回転シャフト35にトルクが入力されることで、磁極片回転子30はシャフト3Bと一体的に回転する。なお、本例の回転シャフト35は、ベアリングB1,B2を介してハウジング21によって回転可能に支持される。
第1回転子110は、複数の磁石42が設けられるコア46と、コア46と回転シャフト35とを連結するベアリングB3,B4とを備える。コア46は回転シャフト35に対して回転することができる。
【0014】
なお、磁気ギアードモータ10Bは、磁気ギアとモータとを一体化したものであり、ステータコイル24の通電によって発生する回転磁界によって第1回転子110を回転させ、第1回転子110から磁極片回転子30への動力伝達は高調波磁気ギアの原理を利用するものである。
なお、図1Bに示す実施形態では、磁気ギアユニット5は、径方向の外側から順に、ステータ20、磁極片回転子30、及び第1回転子110が順に配置される構成を有する。別の実施形態では、磁気ギアユニット5は、径方向の外側から順に、第1回転子110、磁極片回転子30、及びステータ20が順に配置される構成を有する。この場合、円筒状のシャフト3Bの内側に、第1回転子110、磁極片回転子30、及びステータ20が配置される。
【0015】
(磁気ギアード電気機械の内部構造)
続けて、図2を参照して、上述した磁気ギアード電気機械10(10A,10B)の内部構造について説明する。
図2は、一実施形態に係る磁気ギアード電気機械10の径方向断面図である。
図2に示すように、磁気ギアード電気機械10のステータ20は、周方向に配列された複数のステータ磁石22とステータコイル24とを含む。ステータ磁石22及びステータコイル24は、ステータコア23に取り付けられる。
【0016】
ステータ磁石22は、永久磁石により構成され、径方向においてステータコイル24と磁極片回転子30との間を軸方向に通過するように周方向に複数設けられる。図2に示す例では、各々のステータ磁石22は、矩形断面を有する軸方向に長尺なロッド状部材である。すなわち、図2に示したステータ磁石22の矩形断面の各辺の寸法は、図1A及び図1Bに示したステータ磁石22の軸方向寸法よりも十分に小さい。
図2には、ステータ磁石22がステータコア23の表面に取り付けられた表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構造例を示している。他の実施形態では、ステータ20は、ステータ磁石22がステータコア23に埋め込まれた埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構造を有していてもよい。
【0017】
ステータコイル24は、ステータコア23に設けられた複数のスロット25内に設けられる。複数のスロット25は周方向に複数設けられ、各々のスロット25は軸方向に延在する。各々のスロット25の軸方向両端は開放されており、ステータコア23の軸方向の両端において、スロット25に収まらないステータコイル24のコイルエンド部がステータコア23から突出してもよい。
【0018】
上記構成のステータ20に径方向にて対向する磁極片回転子30は、ステータ20との間に第1半径方向隙間G1を隔てて配置され、周方向に配列される複数の磁極片32を含む。各々の磁極片32は、例えば電磁鋼板や圧粉磁心等の磁性体により構成され、矩形断面を有する軸方向に長尺なロッド状部材である。すなわち、図2に示した磁極片32の矩形断面の各辺の寸法は、図1A及び図1Bに示した磁極片32の軸方向寸法よりも十分に小さい。
【0019】
なお、磁極片回転子30は、磁極片32以外にも、非磁性体により構成されて磁極片32間を周方向に接続する非磁性部材33(図2参照)や、図1A及び図1Bを参照して上述したエンドプレート34等の他の部材を含んでいてもよい。
非磁性部材33は、マトリックス樹脂に強化繊維を複合化させた繊維強化プラスチック(FRP)であってもよく、例えば、炭素繊維を強化繊維として用いたCFRPや、ガラス繊維を強化繊維として用いたGFRPであってもよい。
【0020】
図2に例示されるとおり、複数の磁極片32よりも径方向内側には、第2半径方向隙間G2を隔てて第1回転子110が設けられる。なお、ステータ20と磁極片回転子30との間の第1半径方向隙間G1と、磁極片回転子30と第1回転子110との間の第2半径方向隙間G2とは、略同一の寸法であってもよい。
【0021】
第1回転子110は、各々が永久磁石により構成される複数の磁石42を含み、複数の磁石42は周方向に配列される。各々の磁石42は、矩形断面を有する軸方向に長尺なロッド状部材であってもよい。
図2には、磁石42がコア46の表面に取り付けられた表面磁石型(SPM;Surface Permanent Magnet)の構造例を示している。他の実施形態では、第1回転子110は、磁石42がコア46に埋め込まれた埋込磁石型(IPM;Interior Permanent Magnet)の構造を有していてもよい。
【0022】
第1回転子110は、磁石42及びコア46以外にも、磁石42間の周方向隙間を埋める閉塞部材45(図2参照)等の他の部材を含んでいてもよい。
また、閉塞部材45は、マトリックス樹脂に強化繊維を複合化させた繊維強化プラスチック(FRP)であってもよく、例えば、炭素繊維を強化繊維として用いたCFRPや、ガラス繊維を強化繊維として用いたGFRPであってもよい。閉塞部材45は、図2に示すように、周方向に交互に並ぶ磁石グループ(Gr1,Gr2)間の周方向隙間の少なくとも一部を閉塞してもよい。この場合、コア46からの各磁石42の突出高さよりも、コア46からの閉塞部材45の表面までの高さは小さくてもよい。
【0023】
なお、図2に示す例示的な実施形態では、個数の大小関係は、少ない順から、ステータコイル24、磁石42、磁極片32、及びステータ磁石22である。
【0024】
(磁気ギアード電気機械10の冷却構造の概要)
上記構成の磁気ギアード電気機械10(10A,10B)では、ステータコイル24における銅損、磁極片32における鉄損に起因した発熱、または、磁気ギアード電気機械10内部での熱の滞留などが発生し得る。従って、磁気ギアード電気機械10では冷却構造が採用される。以下、その概要を説明する。
図3は、一実施形態に係る磁気ギアード電気機械10の内部構造を示す軸方向断面図である。以下の説明では、上述した一対のエンドプレート34のうちで、軸方向において第1回転子110の一方側に配置されるエンドプレート34を、第1エンドプレート34Aといい、もう一方のエンドプレート34を第2エンドプレート34Cという場合がある。第1エンドプレート34Aと第2エンドプレート34Cが互いに異なる形状を有してもよい。
【0025】
幾つかの実施形態に係る磁気ギアード電気機械10は、軸方向において第1エンドプレート34Aを挟んで第1回転子110とは反対側に配置される第2回転子120を備える。第2回転子120は冷却ファン127を含み、冷却ファン127はベアリングB5を介して回転シャフト35によって回転可能に支持される。従って、冷却ファン127を含む第2回転子120は回転シャフト35に対して回転可能である。本例では、複数の冷却ファン127が周方向に沿って等間隔に配置される。
【0026】
本例の第2回転子120は、第1回転子110のトルクが磁気トルク伝達ユニット15によって伝えられることで回転する。磁気ギアード電気機械10の構成要素である磁気トルク伝達ユニット15は、第1回転子110に設けられる第1磁石11A(11)と、第2回転子120に設けられる第2磁石12A(12)とを含む。第2磁石12Aは、第1エンドプレート34Aを挟んで第1磁石11Aの反対側に位置する。第1エンドプレート34Aを隔てて配置される第1磁石11Aと第2磁石12Aは磁気的に結合しており、第1回転子110の回転に連動して第2回転子120は回転できる。冷却ファン127の回転に伴いハウジング21の内部で冷却風が流れ、磁気ギアード電気機械10は冷却される。
なお、本実施形態では、複数の第1磁石11Aが周方向に沿って配列され、且つ、複数の第2磁石12Aも周方向に沿って配列される。第1磁石11Aは、第1回転子110の軸方向における一方側の端面115に設けれてもよい。第2磁石12Aは、冷却ファン127よりも軸方向における他方側に位置する支持プレート17に設けられてもよい。
【0027】
図3で例示される磁気トルク伝達ユニット15は磁気カップリングであり、第1磁石11Aの個数と第2磁石12Aの個数は同じである。より詳細には、磁気トルク伝達ユニット15は、複数の第1磁石11Aと複数の第2磁石12Aがそれぞれ軸方向において第1エンドプレート34Aと対向するディスクタイプの磁気カップリング(Planar Magnetic Coupling)である。複数の第1磁石11Aはそれぞれ、複数の第2磁石12Aのいずれかと磁気的に結合しており、それぞれの磁気的結合が維持された状態で、第1回転子110と第2回転子120は回転する。従って、第1回転子110の回転速度と第2回転子120の回転速度は互いに略一致する。
【0028】
本開示の一実施形態に係る冷却ファン127による冷風の流路を例示する。
図3で例示されるハウジング21は、第1通路壁221と、第1通路壁221よりも径方向内側に位置する第2通路壁222と、第2通路壁222よりも径方向内側でステータ20を支持する支持壁223とを備える。第1通路壁221には通気口221Aが形成される。また、第1通路壁221及び第2通路壁222は、磁気ギアード電気機械10の外側の空間Soと通気口221Aを介して連通する外通風路231を規定し、第2通路壁222及び支持壁223は内通風路232を規定し、支持壁223は磁気ギアユニット5が配置される内空間Siを規定する。
同図で例示される冷却ファン127は、互いに一体的に形成された第1冷却ファン121及び第2冷却ファン122を有し、第1冷却ファン121は、第2冷却ファン122の軸方向の一方側に位置する。第1冷却ファン121は、第1入口121Aと、第1入口121Aよりも径方向外側に位置する第1出口121Bとを有する。冷却ファン127の回転に伴い通気口221Aから第1入口121Aに流入した冷却風は、第1出口121Bと外通風路231を順に経由して外側の空間Soへと流れる(実線の矢印参照)。
また、第2冷却ファン122は、第2入口122Aと、第2入口122Aよりも径方向外側に位置する第2出口122Bとを有する。冷却ファン127の回転に伴い内空間Siから第2入口122Aに流入した冷却風は、第2出口122B及び内通風路232を順に経由して、内空間Siに戻り、磁気ギアユニット5の内部を流れる(破線の矢印参照)。磁気ギアユニット5の内部を流れる冷却風には、上述の第1半径方向隙間G1に侵入する冷却風、及び、第2エンドプレート34Cに設けられる通風口36を介して上述の第2半径方向隙間G2に侵入する冷却風が含まれる。なお、内通風路232を流れる冷却風は、外通風路231を流れる冷却風との熱交換により冷やされるため、内空間Siでの冷却効果を高めることができる。
なお、図示される実施形態では、第2冷却ファン122は、第1冷却ファン121よりも径方向において長く、第2入口122Aの少なくとも一部は第1入口121Aよりも径方向内側に位置する。
【0029】
上記構成によれば、磁気トルク伝達ユニット15は、磁石回転子としての第1回転子110と、第1回転子110と第1エンドプレート34Aを隔てて配置される第2回転子120とを磁気的に結合できる。これにより、磁石回転子としての第1回転子110の回転に連動して冷却ファン127を回転させることができる。第1回転子110と第2回転子120を機械的に連結する必要がないため、磁気ギアード電気機械10の構成を簡易化できる。以上より、磁石回転子と連動して冷却ファン127を回転させる簡易な構成の磁気ギアード電気機械10が実現される。
【0030】
なお他の実施形態では、磁気トルク伝達ユニット15は、磁気カップリングである代わりに磁気ギアであってもよい。この場合、複数の第1磁石11Aと複数の第2磁石12Aとの間には複数の磁極片が回転可能に設けられてもよく、さらに第1磁石11Aの個数と第2磁石12Aの個数は互いに異なってもよい。また、磁気トルク伝達ユニット15は、ディスクタイプの磁気カップリングである代わりに、インアウトタイプの磁気カップリング(Coaxial Magnetic Coupling)であってもよい(詳細は図7を用いて後述する)。さらに、ハウジング21には外通風路231が形成されてもよく、冷却ファン127は第1冷却ファン121を有さなくてもよい。また、ハウジング21には通気口221Aが設けられなくてもよく、ハウジング21の内空間Siは密閉空間であってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、磁気トルク伝達ユニット15が、第1回転子110の回転に連動して冷却ファン127を回転させることができ、第1回転子110と第2回転子120を機械的に連結する必要がない。よって、磁石回転子と連動して冷却ファン127を回転させる簡易な構成の磁気ギアード電気機械10が実現される。
【0031】
また、磁気トルク伝達ユニット15が磁気カップリングである実施形態によれば、例えば磁気トルク伝達ユニット15が、第1磁石11Aと第2磁石12Aに加えて複数の磁極片を備える磁気ギアである場合に比べて、磁気トルク伝達ユニット15の構成を簡素化できる。
【0032】
また、磁気トルク伝達ユニット15がディスクタイプの磁気カップリングである構成によれば、第1磁石11Aと第2磁石12Aの間にある第1エンドプレート34Aが径方向に延在する構成を採用できるので、第1エンドプレート34Aの軸方向における配置スペースをコンパクトにすることができる。
第1エンドプレート34Aが径方向に延在する構成を採用できるので、第1エンドプレート34Aの形状を簡素化でき、第1エンドプレート34Aの強度を確保することができる。
【0033】
また、図2図3で例示される実施形態では、第1回転子110の複数の磁石42の極対数NHは、複数の磁極片32の磁極数NLよりも少ない。上述したように、磁極片回転子30に対する第1回転子110の回転数の比(増速比)は、NL/NHで表される。従って、本実施形態では、増速比は1より大きく、第1回転子110は磁極片回転子30よりも高速で回転するので、第1回転子110と連動する冷却ファン127の送風量が増大する。よって、磁気ギアード電気機械10は冷却性能を向上できる。
【0034】
(一実施形態に係る磁気トルク伝達ユニットの詳細の例示)
図4は、本開示の一実施形態に係る磁気トルク伝達ユニット15を示す概略図である。
本開示の幾つかの実施形態に係る第1エンドプレート34Aは、第1磁石11A(11)と第2磁石12A(12)の少なくとも一方と対向して周方向に沿って延在する窪み60A(60)を含む。本例の窪み60A(60)は軸方向視でリング状に形成され、第1磁石11Aまたは第2磁石12Aの少なくとも一方と軸方向に対向する。また、窪み60Aは第1エンドプレート34Aの軸方向中心に向けて凹む。
同図で例示される窪み60A(60)は、第1磁石11Aと対向する第1窪み61A(61)と、第2磁石12Aと対向する第2窪み62A(62)とを有する。そして、第1磁石11Aは少なくとも部分的に第1窪み61Aに侵入するように配置され、第2磁石12Aも少なくとも部分的に第2窪み62Aに侵入するように配置される。
第1磁石11Aの一部が第1窪み61Aと軸方向及び径方向にて重なると、第1磁石11Aは部分的に第1窪み61Aに侵入すると了解される。換言すると、所定の径方向範囲において、第1磁石11Aの一部が第1窪み61Aと軸方向において重なると、第1磁石11Aは部分的に第1窪み61Aに侵入すると了解される。また、複数の第1磁石11Aの各々の一部が第1窪み61Aの内側に位置する場合、各第1磁石11Aは、第1窪み61Aに部分的に侵入すると了解される。
他方で、第1磁石11Aの全部が第1窪み61Aと軸方向及び径方向にて重なると、第1磁石11Aの全体が第1窪み61Aに侵入すると了解される。換言すると、所定の径方向範囲において、第1磁石11Aの全部が第1窪み61Aと軸方向において重なると、第1磁石11Aの全体が第1窪み61Aに侵入すると了解される。また、複数の第1磁石11Aの各々の全体が第1窪み61Aの内側に位置する場合、各第1磁石11Aの全体が第1窪み61Aに侵入すると了解される。
同様に、第2磁石12Aの一部が第2窪み62Aと軸方向及び径方向にて重なると、第2磁石12Aは部分的に第2窪み62Aに侵入すると了解される。また、第2磁石12Aの全部が第2窪み62Aと軸方向及び径方向にて重なると、第2磁石12Aの全体が第2窪み62Aに侵入すると了解される。
【0035】
上記構成によれば、第1磁石11Aまたは第2磁石12Aの少なくとも一方が窪み60Aの内側に配置されるので、第1磁石11Aと第2磁石12Aの間の距離を短くできる。第1磁石11Aと第2磁石12Aの間の磁気的な結合力が増大するので、磁気トルク伝達ユニット15は第1回転子110のトルクを第2回転子120に効率的に伝達できる。
なお、第1磁石11Aまたは第2磁石12Aのいずれかが少なくとも部分的に窪み60Aに侵入するように配置されれば、第1磁石11Aと第2磁石12Aの間の距離を短くできる。従って、窪み60Aが第1窪み61Aまたは第2窪み62Aのいずれか一方のみを有する実施形態であっても、上記利点は得られる。
【0036】
また、窪み60Aが第1窪み61Aと第2窪み62Aを有する構成によれば、第1磁石11Aが第1窪み61Aの内側に位置し、第2磁石12Aが第2窪み62Aの内側に位置することで、第1磁石11Aと第2磁石12Aの間の距離をさらい短くでき、第1磁石11Aと第2磁石12Aの間の磁気的な結合力を増大できる。よって、磁気トルク伝達ユニット15は、第1回転子110のトルクを第2回転子120に効率的に伝達できる。
【0037】
図5は、本開示の一実施形態に係る軸方向視の第1エンドプレート34Aを示す概略図である。図6は、図5のA-A線矢視方向における第1エンドプレート34Aの断面を示す概略図である。第1エンドプレート34Aは少なくとも1つの貫通孔353を含む。図示される実施形態では、複数の貫通孔353が周方向に沿って配置される。
【0038】
上記構成によれば、第1回転子110及び磁極片回転子30の間の隙間である第2半径方向隙間G2と、冷却ファン127が配置される空間S1とが、貫通孔353によって連通される。これにより、冷却ファン127が回転すると、第1半径方向隙間G1と空間S1との間を冷却風が流れることができ、ハウジング21内部における冷却風の流れが促進される。よって、磁気ギアード電気機械10は冷却性能を向上することができる。
【0039】
図5図6の例では、貫通孔353の少なくとも一部は、窪み60Aと周方向に並ぶように配置される。より具体的な一例として、径方向において、貫通孔353の外端と窪み60Aの外端は略同じ位置にあり、貫通孔353の内端と窪み60Aの内端は略同じ位置にある。この場合、磁気ギアード電気機械10の動作時において、第1磁石11Aと第2磁石12Aが貫通孔353を間にして対向するタイミングが例えば周期的に到来する(図6参照)。
なお他の実施形態では、径方向において、貫通孔353の両端は窪み60Aの両端よりも内側に位置してもよい。この場合、貫通孔353は窪み60Aに形成される。
【0040】
上記構成によれば、第1磁石11Aと第2磁石12Aとの間の磁場は、窪み60Aの内側に形成され、少なくとも一部が窪み60Aと周方向に並ぶ貫通孔353は、該磁場の形成を阻害しない。よって、磁気トルク伝達ユニット15は第1回転子110のトルクを第2回転子120に効率的に伝達できる。なお、貫通孔353の一部が窪み60Aと径方向において異なる位置に配置される実施形態であっても、上記利点は得られる。
【0041】
(対向部37の材質)
図4に戻り、本開示の一実施形態に係る第1エンドプレート34Aは、第1磁石11A及び第2磁石12Aと対向する対向部37を含む。図4で例示される対向部37は、第1窪み61と第2窪み62を含む窪み60である。詳細な図示は省略するが、窪み60が設けられない実施形態に係る対向部37は、第1エンドプレート34Aのうちで、第1磁石11Aと対向する面及び第2磁石12Aと対向する面を含むと共に該2つの面を両端面とする部位である。第1磁石11Aと対向する面及び第2磁石12Aと対向する面は、いずれも平坦な面であってもよい。
【0042】
本開示の一実施形態に係る対向部37は非磁性体であってもよい。非磁性体は一例として、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、またはステンレス鋼などである。上記構成によれば、対向部37が非磁性体であることで、第1磁石11A(11)と第2磁石12A(12)との間における磁気の形成を阻害しない。よって、磁気トルク伝達ユニット15は、第1回転子110のトルクを第2回転子120に効率的に伝達できる。
なお、他の実施形態では、対向部37を含む第1エンドプレート34Aの全体が非磁性体であってもよい。この場合であっても上記利点は得られる。
【0043】
本開示の一実施形態に係る対向部37は絶縁体であってもよい。絶縁体は一例として、CFRPである。上記構成によれば、第1磁石11Aと第2磁石12Aの間の磁気が対向部37を通過しても、第1エンドプレート34Aにおける渦電流を抑制できる。よって、磁気トルク伝達ユニット15は第1回転子110のトルクを第2回転子120に効率的に伝達できる。
なお、他の実施形態では、対向部37を含む第1エンドプレート34Aの全体が絶縁体であってもよい。この場合であっても上記利点は得られる。
【0044】
(第2回転子の回転位置の検出構造)
図3で例示される磁気ギアード電気機械10は、第2回転子120の回転位置を計測するためのセンサ80を備える。センサ80は、第2回転子120と接触する接触式センサ、または、第2回転子120から離れた位置にある非接触センサのいずれであってもよい。ただし、冷却ファン127の回転が低減されないよう、センサ80は非接触センサであることが好ましい。非接触センサは、冷却ファン127の経路上へ光を照射するための発光素子を備える光学式センサであってもよい。
【0045】
センサ80の検出結果に基づき、第1回転子110の回転位置を取得することができる。例えば、第2回転子120と第1回転子110が互いに同じ速度で回転する実施形態では、センサ80が示す第2回転子120の回転位置を第1回転子110の回転位置とみなすことが可能である。第2回転子120の回転位置は、磁極片回転子30と第1回転子110との間の位相差であるねじれ角を取得するときに参照される。ねじれ角が規定範囲を超えた場合、磁気ギアード電気機械10の脱調を回避するために所定の制御が実行される。
例えば、磁気ギアード電気機械10が磁気ギアード発電機10Aである実施形態においてねじれ角が規定範囲を超えると、磁気ギアード発電機10Aから生成される電力を変換して電力供給先4に供給するための電力変換器(図示外)にトルク低減指令が入力され、ねじれ角が低減する。トルク低減指令は、磁気ギアード発電機10Aにおける発電機トルクを低減させるための指令である。
また、磁気ギアード電気機械10が磁気ギアードモータ10Bである実施形態においてねじれ角が規定範囲を超えると、ステータコイル24における通電制御を変更することで、ねじれ角が低減する。
上記構成によれば、センサ80の検出結果に基づき第1回転子110の回転位置を取得することができる。冷却ファン127と第1エンドプレート34Aを隔てて配置される第1回転子110の回転位置を直接的に計測する必要がないので、磁気ギアード電気機械10は構成を簡素化できる。
また、冷却ファン127と第1エンドプレート34Aを隔てて配置される第1回転子110の回転位置を直接的に計測するセンサ構造が採用される場合に比べて、センサ80の配線を短くでき、配線の配置構造を簡素化できる。さらに、センサ80のメンテナンスが実行される場合であっても、磁極片回転子30、または、磁極片回転子30の一端に接続される第1エンドプレート34Aの少なくとも一方を外す必要がないため、メンテナンスを容易化できる。
【0046】
センサ80は、軸方向において、冷却ファン127の少なくとも一部を挟んで第1エンドプレート34Aとは反対側に配置される。図3の例では、冷却ファン127の第1冷却ファン121を挟んで第1エンドプレート34Aとは反対側に配置され、ハウジング21に固定される。上記構成によれば、センサ80は、軸方向において磁気ギアード電気機械10の外側の空間Soの近くに配置される。これにより、センサ80の配線を短くできるので、センサ80の配置構造を簡素化できる。
【0047】
(他の実施形態に係る磁気トルク伝達ユニット)
図7を参照し、他の実施形態に係る磁気トルク伝達ユニット16を説明する。磁気トルク伝達ユニット16は、インアウトタイプの磁気カップリングである。他の実施形態に係る第1エンドプレート34Bは、径方向を厚さ方向とする規定プレート341を有する。磁気トルク伝達ユニット16は、インアウトタイプの磁気カップリングである。より具体的な一例として、磁気トルク伝達ユニット16は、規定プレート341よりも径方向内側に配置される第1磁石11B(11)と、規定プレート341よりも径方向外側に配置される第2磁石12B(12)とを備え、第1磁石11Bと第2磁石12Bとは磁気的に結合する。第1磁石11Bは第1回転子110に接続され、第2磁石12は第2回転子120に接続される。規定プレート341には、第1磁石11Bまたは第2磁石12Bの少なくとも一方と対向して周方向に沿って延在する窪み60B(60)を含む。窪み60Bは軸方向視においてOリング状であり、径方向に第1磁石11B及び第2磁石12Bと対向する。図示される実施形態では、窪み60Aは、第1磁石11Bが部分的に侵入するように配置される第1窪み61B(61)と、第2磁石12Bが部分的に侵入するように配置される第2窪み62B(62)とを有する。
【0048】
図7で例示される実施形態であっても、磁気トルク伝達ユニット16は、第1回転子110のトルクを第2回転子120に伝達することができ、簡易な構成で磁石回転子としての第1回転子110と連動して、冷却ファン127を回転させることができる。また、窪み60Bが設けられることにより、第1磁石11Bと第2磁石12Bとの間の距離は短くなり、第1回転子110のトルクを第2回転子120に効率的に伝達できる。
【0049】
(まとめ)
以下、本開示の幾つかの実施形態の概要を記載する。
【0050】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る磁気ギアード電気機械(10)は、
ステータ(20)と、径方向において前記ステータに対向して配置される磁極片回転子(30)と、前記磁極片回転子を挟んで前記径方向にて前記ステータとは反対側に位置する複数の磁石(42)を含む第1回転子(110)と、軸方向において前記第1回転子の一方側に配置されて前記磁極片回転子の一端に接続されるエンドプレート(第1エンドプレート34A,34B)と、を含む磁気ギアユニット(5)と、
冷却ファン(127)を含み、前記軸方向において前記エンドプレートを挟んで前記第1回転子の反対側に配置される第2回転子(120)と、
前記第1回転子に設けられる第1磁石(11)と、前記エンドプレートを挟んで前記第1磁石の反対側に位置するように前記第2回転子に設けられる第2磁石(12)とを含む磁気トルク伝達ユニット(15,16)と
を備える。
【0051】
上記1)の構成によれば、磁気トルク伝達ユニットは、磁石回転子としての第1回転子と、第1回転子とエンドプレートを隔てて配置される第2回転子とを磁気的に結合できる。これにより、磁石回転子としての第1回転子の回転に連動して冷却ファンを回転させることができる。第1回転子と第2回転子を機械的に連結する必要がないため、磁気ギアード電気機械の構成を簡易化できる。以上より、磁石回転子と連動して冷却ファンを回転させる簡易な構成の磁気ギアード電気機械が実現される。
【0052】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記エンドプレートは、前記第1磁石または前記第2磁石の少なくとも一方と対向して周方向に沿って延在する窪み(60)を含み、
前記第1磁石または前記第2磁石の前記少なくとも一方は、少なくとも部分的に前記窪みに侵入するように配置される。
【0053】
上記2)の構成によれば、第1磁石と第2磁石の間の距離を短くでき、第1磁石と第2磁石の間の磁気的な結合力を増大できる。よって、磁気トルク伝達ユニットは、第1回転子のトルクを第2回転子に効率的に伝達できる。
【0054】
3)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記窪みは、
前記第1磁石と対向する第1窪み(61)と、
前記第2磁石と対向する第2窪み(62)と
を有し、
前記第1磁石は少なくとも部分的に前記第1窪みに侵入するように配置され、
前記第2磁石は少なくとも部分的に前記第2窪みに侵入するように配置される。
【0055】
上記3)の構成によれば、第1磁石と第2磁石の間の距離をさらに短くでき、第1磁石と第2磁石の間の磁気的な結合力を増大できる。よって、磁気トルク伝達ユニットは、第1回転子のトルクを第2回転子に効率的に伝達できる。
【0056】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から3)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記エンドプレートは貫通孔(353)を含む。
【0057】
上記4)の構成によれば、第1回転子及び磁極片回転子の間の隙間(第2半径方向隙間G2)と、冷却ファンが配置される空間とが貫通孔によって連通されるので、冷却ファンが回転すると、上記隙間と上記空間との間を冷却風が流れることができる。よって、磁気ギアード電気機械は冷却性能を向上できる。
【0058】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記エンドプレートは、
前記第1磁石または前記第2磁石の少なくとも一方と対向して周方向に沿って延在する窪み(60)と、
貫通孔(353)と
を含み、
前記第1磁石または前記第2磁石の前記少なくとも一方は、少なくとも部分的に前記窪みに侵入するように配置され、
前記貫通孔の少なくとも一部は、前記窪みと前記周方向に並ぶように配置される。
【0059】
上記5)の構成によれば、第1回転子及び磁極片回転子の間の隙間(第2半径方向隙間G2)と、冷却ファンが配置される空間とが貫通孔によって連通されるので、冷却ファンが回転すると、上記隙間と上記空間との間を冷却風が流れることができる。よって、磁気ギアード電気機械は冷却性能を向上できる。また、第1磁石と第2磁石12との間の磁場は窪みの内側に形成され、少なくとも一部が窪みと周方向に並ぶ貫通孔は、該磁場の形成を阻害しない。よって、磁気トルク伝達ユニットは、第1回転子のトルクを第2回転子に効率的に伝達できる。
【0060】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記エンドプレートは、前記第1磁石及び前記第2磁石と対向する対向部(37)を含み、
前記対向部は、非磁性体である。
【0061】
上記6)の構成によれば、対向部が非磁性体であることで、第1磁石と第2磁石との間における磁気の形成を阻害しない。よって、磁気トルク伝達ユニットは、第1回転子のトルクを第2回転子に効率的に伝達できる。
【0062】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から6)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記エンドプレートは、前記第1磁石及び前記第2磁石と対向する対向部(37)を含み、
前記対向部は、絶縁体である。
【0063】
上記7)の構成によれば、第1磁石と第2磁石の間の磁気がエンドプレートを通過しても、エンドプレートにおける渦電流を抑制できる。よって、磁気トルク伝達ユニットは、第1回転子のトルクを第2回転子に効率的に伝達できる。
【0064】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から7)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械は、
前記第2回転子の回転位置を計測するためのセンサ(80)を備える。
【0065】
上記8)の構成によれば、センサの検出結果に基づき第1回転子の回転位置を取得することができる。冷却ファンとエンドプレートを隔てて配置される第1回転子の回転位置を直接的に計測する必要がないので、磁気ギアード電気機械は構成を簡素化できる。
また、冷却ファンとエンドプレートを隔てて配置される第1回転子の回転位置を直接的に計測するセンサ構造が採用される場合に比べて、センサの配線を短くでき、配線の配置構造を簡素化できる。さらに、センサのメンテナンスが実行される場合であっても、磁極片回転子、または、磁極片回転子の一端に接続されるエンドプレートの少なくとも一方を外す必要がないため、メンテナンスを容易化できる。
【0066】
9)幾つかの実施形態では、上記8)に記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記センサは、前記軸方向において、前記冷却ファンの少なくとも一部を挟んで前記エンドプレートと反対側に配置される。
【0067】
上記9)の構成によれば、センサは、軸方向において、磁気ギアード電気機械の外側空間に近くに配置される。これによりセンサの配線を短くできるので、センサの配置構造を簡素化できる。
【0068】
10)幾つかの実施形態では、上記1)から9)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記磁気トルク伝達ユニットは磁気カップリングである。
【0069】
上記10)の構成によれば、磁気トルク伝達ユニットが例えば磁気ギアである場合に比べて、磁気トルク伝達ユニットの構成を簡素化できる。
【0070】
11)幾つかの実施形態では、上記10)に記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記第1磁石と前記第2磁石は、前記軸方向において前記エンドプレートと対向する。
【0071】
上記11)の構成によれば、第1磁石と第2磁石の間にあるエンドプレートが径方向に延在する構成を採用できるので、エンドプレートの軸方向における配置スペースをコンパクトにすることができる。
また、エンドプレートが径方向に延在する構成を採用できるので、エンドプレートの形状を簡素化でき、エンドプレートの強度を確保することができる。
【0072】
12)幾つかの実施形態では、上記1)から11)のいずれかに記載の磁気ギアード電気機械であって、
前記磁極片回転子は、複数の磁極片(32)を含み、
前記第1回転子の前記複数の磁石の極対数は、前記複数の磁極片の磁極数よりも少ない。
【0073】
上記12)の構成によれば、第1回転子は磁極片回転子よりも高速で回転するので、第1回転子と連動する冷却ファンの送風量が増大する。よって、磁気ギアード電気機械は冷却性能を向上できる。
【0074】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0075】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0076】
5 :磁気ギアユニット
10 :磁気ギアード電気機械
11 :第1磁石
12 :第2磁石
15,16 :磁気トルク伝達ユニット
20 :ステータ
30 :磁極片回転子
32 :磁極片
34A,34B :第1エンドプレート(エンドプレート)
42 :磁石
60 :窪み
61 :第1窪み
62 :第2窪み
80 :センサ
110 :第1回転子
120 :第2回転子
127 :冷却ファン
353 :貫通孔

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7