(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119208
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤
(51)【国際特許分類】
C08K 5/103 20060101AFI20230821BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08K5/103
C08L67/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021947
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】庄司 大輔
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 啓介
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF031
4J002CF041
4J002CF061
4J002EH046
4J002FD206
4J002GG01
4J002GG02
(57)【要約】
【課題】ポリエステル樹脂に配合することにより、ポリエステル樹脂組成物の成形時におけるドローダウンを抑制できるポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤を提供する。
【解決手段】金属元素Na及びSnの含有量が、それぞれ2mg/kg以下であるペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを有効成分とするポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素Na及びSnの含有量が、それぞれ2mg/kg以下であるペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを有効成分とするポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤。
【請求項2】
請求項1のドローダウン抑制剤を含有するポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2のポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂に配合するドローダウン抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステル樹脂は透明性が優れており、また打ち抜き加工、裁断加工、折り曲げ加工等がし易いため、食品、化粧品、薬品等の容器、雑貨のブリスターパック、クリアケース等の外装透明材等として幅広く用いられている。
【0003】
しかし、ポリエステル樹脂は溶融粘度が低く、例えば、押出成形工程において押出機から出る際に垂れてしまい(以下、加熱混錬されたポリエステル樹脂が垂れ下がる現象を「ドローダウン」ともいう)、引き取りが困難となることで生産性が低下するという問題があった。
【0004】
ポリエステル樹脂のドローダウンを抑制する技術としては、非晶性ポリエステル樹脂(I)、ヒドロキシル基を1分子あたり2個以上含有し、重量平均分子量200以上50万以下であり、(X)20~99重量%のビニル芳香族モノマー、(Y)1~80重量%のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及び(Z)0~40重量%のアルキル(メタ)アクリレートからなる共重合体である反応性化合物(II)、及び多層構造重合体粒子(III)、を含むことを特徴とするポリエステル樹脂用改質剤(特許文献1)、非晶性ポリエステル樹脂(I)、グリシジル基及び/又はイソシアネート基を1分子あたり2個以上含有し重量平均分子量200以上50万以下である反応性化合物(II)、及び滑剤(III)を含むことを特徴とするポリエステル樹脂用改質剤(特許文献2)等が開示されている。しかし、これらの技術は一長一短があり、ポリエステル樹脂のドローダウンを十分に抑制できる、優れたドローダウン抑制剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-159431号公報
【特許文献2】特開2006-124451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ポリエステル樹脂に配合することにより、該樹脂組成物の成形時におけるドローダウンを抑制できるポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル樹脂に特定の金属元素の含有量を一定量以下にしたペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを添加することで、前記課題を解決できることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)金属元素Na及びSnの含有量が、それぞれ2mg/kg以下であるペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを有効成分とするポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤、
(2)前記(1)のドローダウン抑制剤を含有するポリエステル樹脂組成物、
(3)前記(2)のポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品、
からなっている。
また、本発明は、
(4)前記(1)のドローダウン抑制剤をポリエステル樹脂に配合することを特徴とするポリエステル樹脂組成物のドローダウン抑制方法、
も包含する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤は、ポリエステル樹脂に配合することにより、ポリエステル樹脂組成物の成形時におけるドローダウンを抑制することができる。また、本発明に係るポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤を含有するポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形品は、耐熱性及び透明性に優れている。さらに、本発明に係るポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤に、アンチブロッキング剤を配合することができ、その場合、ドローダウン抑制効果を奏するだけでなく、アンチブロッキング剤としての効果も阻害されない。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るポリエステル樹脂用ドローダウン抑制剤(以下「本発明のドローダウン抑制剤」ともいう)の有効成分であるペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル(以下「本発明のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル」ともいう)は、ペンタエリスリトールが有する4つの水酸基の全てに脂肪酸がエステル結合した、エステル結合数が4の化合物であり、ペンタエリスリトールと脂肪酸とのエステル化反応、ペンタエリスリトールと脂肪酸の低級アルコールエステルとのエステル交換反応等、自体公知の方法により製造される。
【0010】
本発明のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルは、金属元素Na及びSnの含有量が、それぞれ2mg/kg以下、好ましくはそれぞれ1mg/kg以下である。金属元素Na及びSnの含有量の測定方法としては特に制限はないが、例えば、ICP発光分光分析装置(型式:ICPE-9800;島津製作所社製)を用いて酸分解-誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES法)によって測定する方法等が挙げられる。
【0011】
本発明のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸に特に制限はなく、例えば、炭素数8~22の飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸等が挙げられる。具体的には、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも、パルミチン酸又はステアリン酸が好ましい。これら脂肪酸は、いずれか1種のみを単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0012】
本発明のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルの製造方法としては特に制限はなく、公知の方法が採用されるが、例えば、エステル化反応による製造方法として、下記の方法を例示することができる。
例えば、温度調節器、攪拌機、加熱用のジャケット、窒素導入管、水分定量管、空冷管等を備えた通常の反応容器に、ペンタエリスリトールと脂肪酸とを仕込み、必要により触媒を加えて攪拌混合し、窒素ガス雰囲気下で、エステル化反応により生成する水を系外に除去しながら、温度調節器を用いて所定温度で加熱することによりエステル化反応した反応物(エステル化生成物)が得られる。ここで、脂肪酸の仕込みモル比は、ペンタエリスリトール1.0モルに対し、3.5~4.5モルであり、好ましくは3.8~4.0モルである。反応温度は通常、190~250℃の範囲、好ましくは210~240℃の範囲である。また、反応圧力条件は減圧下又は常圧下どちらでも良い。反応の終点は、通常反応混合物の酸価を測定し、1.5以下、好ましくは1.0以下を目安に決められる。
【0013】
前記エステル化反応に用いる触媒としては特に制限はなく、例えば、酸化錫、オクチル酸錫、ジラウリン酸ジブチル錫、ジブチルチ錫オキシド等の錫触媒、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ‐n‐ブトキシド等のチタン触媒等の金属系触媒等が挙げられる。これら触媒は、いずれか1種のみを単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。触媒の使用量は、用いたペンタエリスリトールと脂肪酸との合計量100質量部に対し、0.01~1質量部であり、好ましくは0.05~0.1質量部である。
【0014】
エステル化反応によって得られた反応物(ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル)の金属元素Na及びSnの含有量が、それぞれ2mg/kgを超える場合、これらの金属元素を除去する処理を行う。金属元素Na及びSnの除去処理方法としては、例えば、吸着剤処理、中和処理等の方法が挙げられる。吸着剤処理の具体例としては、例えば、エステル化反応によって得られた反応物(ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル)に、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム等を含む吸着剤を添加し、加熱混合した後、ろ過により吸着剤を除去する方法等が挙げられる。
【0015】
前記吸着剤の添加量に特に制限はないが、エステル化反応によって得られた反応物(ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル)100質量部に対して0.1~5質量部、好ましくは0.2~2質量部である。吸着剤処理の処理温度としては70~100℃、好ましくは80~90℃である。吸着剤処理の処理時間として好ましくは0.5~3.0時間である。
【0016】
本発明のドローダウン抑制剤には、本発明のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルのほか、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、可塑剤、安定剤、滑剤、加工性改良剤、酸化防止剤、加水分解防止剤、スリップ剤、顔料、フィラー、難燃剤、防曇剤等が挙げられる。
【0017】
前記アンチブロッキング剤としては特に制限はなく、例えば、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、ポリエステル樹脂組成物の透明性の観点から、カオリンが好ましい。
【0018】
本発明のドローダウン抑制剤は、ポリエステル樹脂に配合して使用することにより、押出成形等における成形時のドローダウンを抑制することができる。これにより、例えば、生産性の向上等の効果が期待される。
【0019】
本発明のドローダウン抑制剤の使用対象であるポリエステル樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリL-乳酸、ポリグリコール酸等が挙げられる。また、ポリエステル樹脂は1種のモノマーによるホモポリマーのみならず、2種以上のモノマーを併用した共重合体であっても良い。該共重合体としては例えば、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリDL-乳酸、ポリエチレングリコールアジペートとポリL-乳酸の共重合体等が挙げられる。また、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール、トリメット酸等の3価以上の多価カルボン酸等を加えたものでも良い。また、2種以上のポリエステル樹脂の混合物でも良い。
【0020】
本発明のドローダウン抑制剤のポリエステル樹脂への配合量は、ポリエステル樹脂100質量部に対し、本発明のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルが、0.01~3.0質量部、好ましくは0.1~0.9質量部配合されるように調整すれば良い。
【0021】
本発明のドローダウン抑制剤をポリエステル樹脂に配合する方法に特に制限はなく、例えば、(1)ポリエステル樹脂と本発明のドローダウン抑制剤を溶融混練する方法、(2)あらかじめポリエステル樹脂に対して本発明のドローダウン抑制剤を配合したマスターバッチを作製し、該マスターバッチとポリエステル樹脂を溶融混練する方法等が挙げられる。
【0022】
前記溶融混練する方法としては、自体公知の方法を用いることができ、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いる方法等が挙げられる。溶融混練する際の加熱温度としては、200~300℃、好ましくは210~280℃である。このようにして得られる本発明のドローダウン抑制剤を含有するポリエステル樹脂組成物も、本発明の一つの形態である。
【0023】
前記本発明のドローダウン抑制剤を含有するポリエステル樹脂組成物は、さらに押出成形、射出成形、圧縮成形、シート成形、吹込成形、真空成形等の種々の成形手段に供することにより、任意の形状の成形品として使用することができる。このようにして得られる成形品も、本発明の一つの形態である。得られた成形品は、食品、化粧品、薬品等の容器、雑貨のブリスターパック、クリアケースの外装透明材等の用途に用いることができる。
【実施例0024】
以下に本発明を実施例で説明するが、これは本発明を単に説明するだけのものであって、本発明を限定するものではない。
【0025】
≪ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルの作製≫
(1)製造例1
温度調節器、攪拌機、加熱用のジャケット、窒素導入管、水分定量管、空冷管を取り付けた4つ口フラスコに、ペンタエリスリトール(商品名:ペンタリットTS;広栄化学社製)184.0g、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸300;ステアリン酸65質量%及びパルミチン酸35質量%含有;新日本理化社製)1060.8g及びパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;パルミチン酸98質量%含有;ナチュラルオレオ社製)355.2gを添加し、触媒として酸化錫(富士フイルム和光純薬社製)0.8gを添加した。これらを窒素気流下、235℃で反応水を留去しつつ、酸価が1.0以下となるまで常圧で反応させた後、130℃まで冷却した。その後、85%リン酸(富士フイルム和光純薬社製)1.376gを添加して中和して30分間混合した後、90℃まで冷却した。冷却後の反応物に、金属元素を除去する処理として、水酸化アルミニウム系吸着剤(商品名:キョーワード200;協和化学工業社製)及びケイ酸アルミニウム系吸着剤(商品名:キョーワード700;協和化学工業社製)をそれぞれ3.2g添加し、30分撹拌混合した後、濾過により除去することで1400gのペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを得た。該ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを室温まで冷却し、固化したペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルをウィレー粉砕機(型式:1029J-BS;吉田製作所社製)にて粉砕し、粉末状のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル(ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル1)を得た。
【0026】
(2)製造例2
ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル1の作製において金属元素除去処理を行わなかった点以外は同様の処理を行い、ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル2を得た。具体的な製法は下記のとおりである。
温度調節器、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた4つ口フラスコに、ペンタエリスリトール(商品名:ペンタリットTS;広栄化学社製)184.0g、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸300;ステアリン酸65質量%及びパルミチン酸35質量%含有;新日本理化社製)1060.8g及びパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;パルミチン酸98質量%含有;ナチュラルオレオ社製)355.2gを添加し、触媒として酸化錫(富士フイルム和光純薬社製)0.8gを添加した。これらを窒素気流下、235℃で反応水を留去しつつ、酸価が1.0以下となるまで常圧で反応させた後、130℃まで冷却した。その後、85%リン酸(富士フイルム和光純薬社製)1.376gを添加して中和して30分間混合し、1400gのペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを得た。該ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを室温まで冷却し、固化したペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルをウィレー粉砕機(型式:1029J-BS;吉田製作所社製)にて粉砕し、粉末状のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル(ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル2)を得た。
【0027】
(3)製造例3
ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル1の作製において中和処理及び金属元素除去処理を行わなかった点以外は同様の処理を行い、ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル3を得た。具体的な製法は下記のとおりである。
温度調節器、窒素導入管、攪拌機及び冷却管を取り付けた4つ口フラスコに、ペンタエリスリトール(商品名:ペンタリットTS;広栄化学社製)184.0g、ステアリン酸(商品名:ステアリン酸300;ステアリン酸65質量%及びパルミチン酸35質量%含有;新日本理化社製)1060.8g及びパルミチン酸(商品名:パルミチン酸98;パルミチン酸98質量%含有;ナチュラルオレオ社製)355.2gを添加し、触媒として酸化錫(富士フイルム和光純薬社製)0.8gを添加した。これらを窒素気流下、235℃で反応水を留去しつつ、酸価が1.0以下となるまで常圧で反応させ、1400gのペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを得た。該ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルを室温まで冷却し、固化したペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステルをウィレー粉砕機(型式:1029J-BS;吉田製作所社製)にて粉砕し、粉末状のペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル(ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル3)を得た。
【0028】
得られたペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル1~3について、金属元素Na及びSnの含有量を表1に示す。なお、金属元素Na及びSnの含有量は、ICP発光分光分析装置(型式:ICPE-9800;島津製作所社製)を用いて酸分解-誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES法)によって測定した。
【0029】
【0030】
≪ドローダウン抑制剤の作製≫
(1)原材料
1)ペンタエリスリトールテトラ脂肪酸エステル1~3
2)カオリン(商品名:インシュライトMC-6;水澤化学工業社製)
【0031】
(2)ドローダウン抑制剤の配合
前記原材料を用いて作製したドローダウン抑制剤の配合量を表2に示す。なお、ドローダウン抑制剤1及び2は本発明の実施例であり、ドローダウン抑制剤3及び4はそれらに対する比較例である。
【0032】
【0033】
(3)ドローダウン抑制剤の作製方法
ドローダウン抑制剤1、3、4は、表2に示した原材料をそのままドローダウン抑制剤として用いた。ドローダウン抑制剤2は、表2に示した原材料の等倍量を、ビニール袋に入れて手で持ち、30秒間均一になるように混合して得た。
【0034】
≪ポリエステル樹脂組成物のドローダウン抑制評価試験≫
ポリエステル樹脂(商品名:EASTAR GN-001;グリコール変性ポリエチレンテレフタレート;EASTMAN社製)、ドローダウン抑制剤1~4のいずれかを、表3に示した原材料の10倍量で、ストランドダイを備えた二軸押出機〔型式:KZW15TW-45MG-NH(-700);テクノベル社製〕に投入し、210℃で溶融混錬してストランド状に押出し、押出されたポリエステル樹脂組成物をペレタイザーでカットして、ペレット1~5を得た。得られたペレット1~5をメルトインデクサー(型式:メルトインデックサG-02;東洋精機製作所社製)に投入し、メルトインデックスを測定し、試験区1~5とした。結果を表4に示す。該メルトインデクスは、JIS-K6924-1に準拠し、温度190℃、荷重2160g、時間10分間の条件で測定したときの単位時間あたりの流出したポリエステル樹脂組成物のグラム数を意味する。なお、メルトインデックスの数値が低い方が、溶融粘度が高いことを示し、すなわちドローダウンが発生しづらい(ドローダウンが抑制できている)ことを示す。
【0035】
【0036】
【0037】
表4の結果から明らかなように、本発明の実施例であるドローダウン抑制剤1及び2を配合した試験区1及び2は、ドローダウン抑制剤を添加していない試験区5に比べメルトインデックスが顕著に低く、ドローダウンが抑制されていた。一方本発明の比較例であるドローダウン抑制剤3及び4を配合した試験区3及び4は、ドローダウン抑制剤を添加していない試験区5に比べメルトインデックスの低下の程度が小さく、ドローダウン抑制効果が不十分であった。
【0038】
≪ポリエステル樹脂組成物の成形品の作製≫
(1)原材料
1)ポリエステル樹脂(商品名:EASTAR;GN-001;グリコール変性ポリエチレンテレフタレート;EASTMAN社製)
2)ドローダウン抑制剤1及び2
【0039】
(2)配合
前記原材料を用いて作製したペレット又はフィルムの配合量を表5に示す。ペレット又はフィルム1及び2は、本発明の実施例である。
【0040】
【0041】
表5に示した原材料の10倍量を、ストランドダイを備えた二軸押出機〔型式:KZW15TW-45MG-NH(-700);テクノベル社製〕に投入し、210℃で溶融混錬してストランド状に押出し、押出されたポリエステル樹脂組成物をペレタイザーでカットして、ペレット1及び2を得た。得られたペレットをギヤオーブン(型式:GPHH-201;エスペック社製)を用いて70℃で12時間乾燥した後、Tダイを備えた単軸押出機(型式:3S150;東洋精機製作所社製)にて260℃で溶融混錬して押出し、50μm厚のフィルム1及び2を得た。
【0042】
≪ポリエステル樹脂組成物の成形品の耐熱性、透明性、アンチブロッキング性評価試験≫
(1)耐熱性
得られたペレット1及び2につき、ギヤオーブン(型式:GPHH-201;エスペック社製)を用いて230℃で90分間加熱処理し、加熱処理前後のYI値を分光色彩計(型式:SE7700;日本電色工業社製)を用いて測定し、加熱処理前後のYI値の差を算出した。結果を表6に示す。なお、数値が2.00以下の場合、加熱処理による色調の変化が少なく、耐熱性に優れることを示す。
【0043】
(2)透明性
得られたフィルム1及び2につき、HAZE(%)を、ヘイズメーター(型式:NDH2000;日本電色工業社製)を用いて測定した。結果を表7に示す。なお、数値が3.00以下の場合、透明性に優れることを示す。
【0044】
(3)アンチブロッキング性
得られたフィルム1及び2につき、JIS-P8147の傾斜法に準拠した方法でフィルム同士の静摩擦係数を測定した。結果を表7に示す。なお、数値が0.30以下の場合、アンチブロッキング性に優れることを示す。
【0045】
【0046】
【0047】
表6の結果から明らかなように、本発明の実施例であるペレット1及び2は耐熱性に優れており、成形品として好ましいものであった。また表7の結果から明らかなように、本発明の実施例であるフィルム1及び2は透明性に優れており、成形品として好ましいものであった。さらにドローダウン抑制剤2を配合したフィルム2は、アンチブロッキング性に優れており、成形品として好ましいものであった。