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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119223
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】聴診器
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
A61B7/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021976
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】720009479
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武島 儀忠
(57)【要約】
【課題】聴診器の使用者が、聴診器を聴診対象に適切に当てることができる手段を提供すること。
【解決手段】聴診器1は、2つの接触面3a、3bと、2つのジンバル機構6A、6Bと、を備える。2つのジンバル機構6A、6Bは、2つの接触面3a、3bを、それぞれ、独立して可動とする。接触面3a、3bは、無負荷で、自然姿勢である。ジンバル機構6A、6Bは、接触面3a、3bへの負荷に応じて、接触面3a、3bを自然姿勢から傾動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴診対象に接触する接触面と、
前記接触面を可動とする可動部と、を備えることを特徴とする聴診器。
【請求項2】
複数の前記接触面と、
複数の前記可動部と、を備え、
前記複数の可動部は、前記複数の接触面を、それぞれ、独立して可動とすることを特徴とする請求項1に記載の聴診器。
【請求項3】
前記可動部は、前記接触面を、直交する2軸方向に回転可能とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の聴診器。
【請求項4】
前記可動部は、前記接触面への負荷に応じて、前記接触面を動かすことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の聴診器。
【請求項5】
前記接触面は、無負荷で、第1姿勢であり、
前記可動部は、前記接触面への負荷に応じて、前記接触面を第1姿勢から傾動させることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の聴診器。
【請求項6】
聴診音を採取するためのセンサーと、
前記センサーを覆うセンサーカバーと、を備え、
前記接触面は、前記センサーカバーの一部であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の聴診器。
【請求項7】
前記可動部は、第1軸と、前記第2軸に直交する第2軸と、を有するジンバル機構であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の聴診器。
【請求項8】
前記第1軸と前記第2軸とは、前記接触面から所定距離内に位置することを特徴とする請求項7に記載の聴診器。
【請求項9】
前記センサーが配置されるセンサーホルダーをさらに備え、
前記センサーホルダーは、前記第1軸に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の聴診器。
【請求項10】
前記センサーホルダーと前記第1軸との間に、弾性を有する弾性部材が設けられていることを特徴とする請求項9に記載の聴診器。
【請求項11】
筐体をさらに備え、
前記第2軸は、前記筐体に回転可能に取り付けられていることを特徴とする請求項7~10のいずれか1項に記載の聴診器。
【請求項12】
聴診音を採取するためのセンサーと、
前記センサーが配置されるセンサーホルダーと、を備え、
前記センサーは、締結部材により、前記センサーホルダーに取り付けられていることを特徴とする聴診器。
【請求項13】
聴診対象と接触する接触面と、
接触面が設けられた筐体と、
前記筐体に設けられた溝と、を備えることを特徴とする聴診器。
【請求項14】
前記筐体は、前記接触面と反対側の面と、前記接触面の両側に位置する2つの側面と、を有し、
前記溝は、前記接触面と反対側の面と、前記2つの側面と、に設けられていることを特徴とする請求項13に記載の聴診器。
【請求項15】
聴診対象と接触する接触面と、
前記接触面が設けられた筐体と、を備え、
前記筐体の前記接触面が設けられた面において、前記接触面を除いた部分は、前記筐体の厚み方向において凹んでいることを特徴とする聴診器。
【請求項16】
聴診対象と接触する2つの接触面と、
前記2つの接触面が設けられた筐体と、を備え、
前記筐体において、前記2つの接触面の間は、前記2つの接触面の並び方向と直交方向に凹んでいることを特徴とする聴診器。
【請求項17】
聴診対象と接触する接触面と、
バッテリーと、
前記接触面が設けられ、前記バッテリーを収容する筐体と、
を備え、
前記バッテリーは、前記筐体の長手方向の中心からずれた位置に配置されていることを特徴とする聴診器。
【請求項18】
聴診対象と接触する接触面と、
前記接触面が設けられた筐体と、を備え、
前記筐体の前記接触面と反対側の面は、湾曲形状であり、
前記接触面と反対側の面の湾曲率は、長手方向のいずれか一方側と、他方側と、で異なっていることを特徴とする聴診器。
【請求項19】
聴診音を採取するためのセンサーと、
前記センサーを覆うセンサーカバーと、
本体筐体と、を備え、
前記センサーカバーの端部は、前記本体筐体によって挟まれていることを特徴とする聴診器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴診器に関する。
【背景技術】
【0002】
聴診器の中には、マイク等のセンサーにより電子的に心音等の音を採取し、採取した音を増幅し、増幅した音を医師等に聴取させる、いわゆる電子聴診器と呼ばれるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-242849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した電子聴診器を含め、聴診器が使用される対象者の身体(聴診対象)は、凹凸を有しているため、聴診器の使用者は、聴診器を聴診対象に適切に当てることが困難であるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、聴診器の使用者が、聴診器を聴診対象に適切に当てることができる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の聴診器は、聴診対象に接触する接触面と、前記接触面を可動とする可動部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、可動部は、聴診対象に接触する接触面を可動とする。これにより、聴診器の使用者が、聴診対象に接触する接触面を、聴診対象に接触させたときに、接触面が動くため、使用者は、聴診対象の形状等にあわせて、接触面を接触させることができる。従って、本発明によれば、使用者は、聴診器を聴診対象に適切に当てることができる。
【0008】
第2の発明の聴診器は、第1の発明の聴診器において、複数の前記接触面と、複数の前記可動部と、を備え、前記複数の可動部は、前記複数の接触面を、それぞれ、独立して可動とすることを特徴とする。
【0009】
本発明では、複数の可動部は、複数の接触面を、それぞれ、独立して可動とする。これにより、接触面が複数ある場合であっても、聴診器の使用者は、接触面を、聴診対象の形状等にあわせて接触させることができる。
【0010】
第3の発明の聴診器は、第1又は第2の発明の聴診器において、前記可動部は、前記接触面を、直交する2軸方向に回転可能とすることを特徴とする。
【0011】
第4の発明の聴診器は、第1~第3のいずれかの発明の聴診器において、前記可動部は、前記接触面への負荷に応じて、前記接触面を動かすことを特徴とする。
【0012】
第5の発明の聴診器は、第1~第4のいずれかの発明の聴診器において、前記接触面は、無負荷で、第1姿勢であり、前記可動部は、前記接触面への負荷に応じて、前記接触面を第1姿勢から傾動させることを特徴とする。
【0013】
第6の発明の聴診器は、第1~第5のいずれかの発明の聴診器において、聴診音を採取するためのセンサーと、前記センサーを覆うセンサーカバーと、を備え、前記接触面は、前記センサーカバーの一部であることを特徴とする。
【0014】
第7の発明の聴診器は、第1~第6のいずれかの発明の聴診器において、前記可動部は、第1軸と、前記第2軸に直交する第2軸と、を有するジンバル機構であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明の聴診器は、第7の発明の聴診器において、前記第1軸と前記第2軸とは、前記接触面から所定距離内に位置することを特徴とする。
【0016】
例えば、軸の位置が、接触面から遠くなると、聴診器が凹凸面をスライドするとき、接触面が凹凸面に追従することが困難になる。本発明では、ジンバル機構を構成する第1軸と第2軸とは、接触面から所定距離内に位置するため、聴診器が凹凸面をスライドするときであっても、接触面が凹凸面に追従することが可能となる。
【0017】
第9の発明の聴診器は、第7又は第8の発明の聴診器において、前記センサーが配置されるセンサーホルダーをさらに備え、前記センサーホルダーは、前記第1軸に回転可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
第10の発明の聴診器は、第9の発明の聴診器において、前記センサーホルダーと前記第1軸との間に、弾性を有する弾性部材が設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明では、センサーホルダーと第1軸との間に、弾性を有する弾性部材が設けられている。これにより、制振・防振の効果を得ることができる。
【0020】
第11の発明の聴診器は、第7~第10のいずれかの発明の聴診器において、筐体をさらに備え、前記第2軸は、前記筐体に回転可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0021】
第12の発明の聴診器は、聴診音を採取するためのセンサーと、前記センサーが配置されるセンサーホルダーと、を備え、前記センサーは、締結部材により、前記センサーホルダーに取り付けられていることを特徴とする。
【0022】
例えば、両面テープでセンサーがセンサーホルダーに取り付けられた場合、経年劣化、個体によるばらつき、組み立て性の悪さが懸念される。本発明では、センサーは、締結部材により、センサーホルダーに取り付けられているため、これらの問題がない。
【0023】
第13の発明の聴診器は、聴診対象と接触する接触面と、接触面が設けられた筐体と、前記筐体に設けられた溝と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明では、筐体に溝が設けられている。このため、聴診器の使用者は、溝により、聴診器を持ちやすい。
【0025】
第14の発明の聴診器は、第13の発明の聴診器において、前記筐体は、前記接触面と反対側の面と、前記接触面の両側に位置する2つの側面と、を有し、前記溝は、前記接触面と反対側の面と、前記2つの側面と、に設けられていることを特徴とする。
【0026】
第15の発明の聴診器は、聴診対象と接触する接触面と、前記接触面が設けられた筐体と、を備え、前記筐体の前記接触面が設けられた面において、前記接触面を除いた部分は、前記筐体の厚み方向において凹んでいることを特徴とする。
【0027】
本発明では、筐体の接触面が設けられた面において、接触面を除いた部分は、筐体の厚み方向において凹んでいる。これにより、使用者が、聴診器を聴診対象に当てる際に、不要な部分が邪魔にならない。
【0028】
第16の発明の聴診器は、聴診対象と接触する2つの接触面と、前記2つの接触面が設けられた筐体と、を備え、前記筐体において、前記2つの接触面の間は、前記2つの接触面の並び方向と直交方向に凹んでいることを特徴とする。
【0029】
本発明では、筐体において、2つの接触面の間は、2つの接触面との並び方向と直交方向に凹んでいる。これにより、使用者が、聴診器を聴診対象に当てる際に、不要な部分が邪魔にならない。
【0030】
第17の発明の聴診器は、聴診対象と接触する接触面と、バッテリーと、前記接触面が設けられ、前記バッテリーを収容する筐体と、を備え、前記バッテリーは、前記筐体の長手方向の中心からずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0031】
使用者は、聴診器は、長手方向のいずれか一方側を手で持って、聴診器を使用する。本発明では、バッテリーは、筐体の長手方向の中心からずれた位置に配置されている。このように、重量があるバッテリーが、使用者の手が位置する場所に配置されることで、重心が手元に集中するため、持ちやすさ、及び、操作性が向上する。
【0032】
第18の発明の聴診器は、聴診対象と接触する接触面と、前記接触面が設けられた筐体と、を備え、前記筐体の前記接触面と反対側の面は、湾曲形状であり、前記接触面と反対側の面の湾曲率は、長手方向のいずれか一方側と、他方側と、で異なっていることを特徴とする。
【0033】
本発明では、接触面と反対側の面の湾曲率は、長手方向のいずれか一方側と、他方側と、で異なっている。このように、湾曲率を変えることで、使用者が、聴診器の前後を把握することができるようになっている。
【0034】
第19の発明の聴診器は、聴診音を採取するためのセンサーと、前記センサーを覆うセンサーカバーと、本体筐体と、を備え、センサーカバーの端部は、前記本体筐体によって挟まれていることを特徴とする。
【0035】
本発明では、センサーカバーの端部は、本体筐体によって挟まれている。このため、アルコール及びその他薬品、並びに、血液が内部に入り込まない設計となっている。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、使用者は、聴診器を聴診対象に適切に当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施形態に係る聴診器を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る聴診器を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る聴診器を示す背面図である。
図4】本発明の実施形態に係る聴診器を示す正面図である。
図5】本発明の実施形態に係る聴診器を示す左側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る聴診器を示す平面図である。
図7図4におけるA-A線断面図である。
図8図4におけるB-B線断面図である。
図9】聴診器の使用状態を示す図である。
図10】ジンバル機構を示す図である。
図11】(a)は、センサーホルダーの回転範囲を示す図である。(b)、及び、(c)は、接触面と第1軸及び第2軸との関係を説明するための図である。
図12】ジンバル機構の本体筐体への取付を説明するための図である。
図13】センサーホルダー付近の断面図である。
図14】センサーカバー付近の断面図である。
図15】センサー付近を示す図である。
図16図7に、バッテリー、及び、基板が追加された図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る聴診器1を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る聴診器1を示す斜視図である。図2においては、後述するセンサーカバー3が透明に描かれることで、後述する内部のセンサー4等が示されている。図3は、本発明の実施形態に係る聴診器1を示す背面図である。図4は、本発明の実施形態に係る聴診器1を示す正面図である。図5は、本発明の実施形態に係る聴診器1を示す左側面図である。図6は、本発明の実施形態に係る聴診器1を示す平面図である。図7は、図4におけるA-A線断面図である。図8は、図4におけるB-B線断面図である。以下では、聴診対象に接触する接触面3a、3b側を背面、背面と反対側を正面として説明する。
【0039】
聴診器1の使用者は、図9に示すように、聴診器1を手で握って、聴診器1を聴診対象に当てて、使用する。
【0040】
聴診器1は、正面視、略砂時計形状である。聴診器1は、本体筐体2と、センサーカバー3と、を備える。本体筐体2と、センサーカバー3と、によって、聴診器1の筐体が構成されている。本体筐体2は、図1等において、濃いグレーで示されている部分である。センサーカバー3は、図1等において、本体筐体2よりも薄いグレーで示されている部分である。
【0041】
本体筐体2は、内部に、基板、バッテリー等を収容する。本体筐体2は、ボトム筐体21と、ベースフレーム22と、から構成されている。ボトム筐体21の両側面には、長手方向に延びる、溝21aが設けられている。溝21aの幅は、中央が最も深く、先端に向かうにつれて、細くなっている。また、ボトム筐体21の背面(接触面3a、3bと反対側の面)にも、長手方向に延びる、溝21bが設けられている。溝21bの幅は、中央が最も深く、先端に向かうにつれて、細くなっている。使用者が、聴診器1を手で持ちやすくなるように配慮して、ボトム筐体21(本体筐体2)に、溝21a、21bが設けられている。このため、溝21a、21bにより、使用者は、聴診器1を持ちやすい。
【0042】
ボトム筐体21において、正面(接触面3a、3bと反対側の面、使用者の手のひらに接触する面)は、側面視、湾曲形状となっている。正面の湾曲率は、長手方向のいずか一方側と、他方側とで、異なっている。このように、湾曲率を変えることで、使用者が、聴診器1の前後を把握することができるようになっている。使用者は、湾曲率が大きい側(湾曲が小さい側)を持って、聴診器1を使用する。
【0043】
センサーカバー3は、内部に、センサー4を収容している。本実施形態では、聴診器1は、2つ(複数)のセンサー4A、4Bを備える。センサーカバー3の一部は、聴診対象に接触する接触面3a、3bである。本実施形態では、センサー4は、2つであるため、2つの接触面3a、3bが形成されている。接触面3a、3bは、それぞれ、背面視、略円形状である。センサーカバー3の素材は、柔軟性のある材料であって、例えば、エラストマー、シリコンゴム等である。センサーカバー3の接触面3a、3bに対応する内面は、センサー4A、4Bに密着している。
【0044】
後述するが、センサー4A、4Bは、動くことが可能である。上述したように、センサーカバー3の素材は、柔軟性がある材料(弾性素材)であるため、接触面3a、3b(センサーカバー3)は、センサー4A、4Bの動きに追従可能である。このため、接触面3a、3bも、センサー4A、4Bに追従して、動くことが可能である。なお、センサーカバー3の素材は、柔軟性がある材料であって、センサー4A、4Bの動きに追従するものであればよい。
【0045】
センサーカバー3において、接触面3a、3bを除いた部分は、厚み方向に凹んでいる。逆に言えば、センサーカバー3の厚み方向に凹んだ部分以外が、接触面3a、3bとなる。また、本体筐体2、センサーカバー3(筐体)において、背面視、長手方向の略中央部(接触面3a、3bの間)が、長手方向(接触面3a、3bの並び方向)と直交方向に凹んでいることによって、聴診器1は、略砂時計形状となっている。このように、センサーカバー3において、接触面3a、3bを除いた部分を厚み方向に凹ませた形状とし、また、本体筐体2、センサーカバー3(筐体)において、背面視、長手方向の略中央部を、長手方向と直交方向に凹ませた形状とすることで、使用者が、聴診器1を聴診対象に当てる際に、不要な部分が邪魔にならない。
【0046】
上述したように、本実施形態では、聴診器1は、2つのセンサー4A、4Bを備える。センサー4は、聴診音を採取するためのものである。センサー4は、例えば、ピエゾ素子等から構成されるピエゾセンサーである。センサー4は、扁平な略円盤形状である。この形状に対応して、センサーカバー3の接触面3は、背面視、略円形状となっている。センサー4は、センサーホルダー5に配置されている。
【0047】
センサーホルダー5は、略円錐台形状である。2つのセンサーホルダー5A、5Bに対して、それぞれ、センサー4A、4Bが配置されている。センサーホルダー5は、ジンバル機構6(可動部)によって、本体筐体2(ベースフレーム22)に取り付けられている。センサーホルダー5Aは、ジンバル機構6Aによって、本体筐体2(ベースフレーム22)に取り付けられ、センサーホルダー5Bは、ジンバル機構6Bによって、本体筐体2(ベースフレーム22)に取り付けられている。
【0048】
図10は、ジンバル機構6を示す図である。ジンバル機構6は、第1軸61と、第2軸62と、ベース63と、を有する。ベース63は、ジンバル機構6のベースとなる略リング状の部分である。第1軸61、及び、第2軸62は、ベース63によって支持されている。第1軸61と第2軸62とは、直交している。第1軸61は、センサーホルダー5に設けられた軸受に挿通されている。センサーホルダー5は、軸受が第1軸61に挿通されることで、第1軸61(ジンバル機構6)に回転可能に取り付けられている。これにより、センサーホルダー5は、第1軸61(一点鎖線i-i)を中心に、回転可能となる。第2軸62は、本体筐体2(ベースフレーム22)に回転可能に取り付けられている。これにより、ジンバル機構6は、第2軸62(一点鎖線ii-ii)を中心に、回転可能となる。
【0049】
このように、センサーホルダー5は、ジンバル機構6の第1軸61(一点鎖線i-i)を中心に回転可能である。さらに、センサーホルダー5が取り付けられるジンバル機構6は、ジンバル機構6の第2軸62(一点鎖線ii-ii)を中心に回転可能である。従って、センサーホルダー5は、第1軸61(一点鎖線i-i)、及び、第1軸61と直交する第2軸62(一点鎖線ii-ii)の2軸方向に回転可能である。同様に、センサーホルダー5に配置されているセンサー4も、第1軸61(一点鎖線i-i)、及び、第2軸62(一点鎖線ii-ii)の2軸方向に回転可能である。
【0050】
同様に、センサー4A、4Bの動きに追従する接触面3a、3bも、第1軸61(一点鎖線i-i)、及び、第2軸62(一点鎖線ii-ii)の2軸方向に回転可能である。すなわち、ジンバル機構6A、6B(可動部)は、それぞれ、接触面3a、3bを可動とする。これにより、聴診器1の使用者が、聴診対象に接触する接触面3a、3bを、聴診対象に接触させたときに、接触面3a、3bが動くため、使用者は、聴診対象の形状等にあわせて、接触面3a、3bを接触させることができる。従って、本実施形態によれば、使用者は、聴診器1を聴診対象に適切に当てることができる。
【0051】
2つのジンバル機構6A、6Bは、センサーホルダー5A、5Bに対応して、それぞれ設けられているため、2つの接触面3a、3bを、それぞれ、独立して可動とする。これにより、本実施形態のように、接触面3a、3bが2つ(複数)ある場合であっても、聴診器1の使用者は、接触面3a、3bを、聴診対象の形状等にあわせて接触させることができる。2つのジンバル機構6A、6Bは、2つの接触面3a、3bを、それぞれ、直交する2軸方向(第1軸61方向、第2軸方向)に回転可能としている。
【0052】
接触面3a、3bは、負荷がかけられていない状態、すなわち、無負荷で、図1図6に示す自然姿勢(第1姿勢)である。この状態から、聴診器1が聴診対象に当てられると、接触面3a、3bに負荷がかかる。接触面3a、3bへの負荷によって、接触面3a、3bは、ジンバル機構6A、6Bによって、動く。言い換えれば、ジンバル機構6A、6Bは、接触面3a、3bへの負荷に応じて、接触面3a、3bを動かす。さらに言い換えれば、ジンバル機構6A、6Bは、接触面3a、3bへの負荷に応じて、接触面3a、3bを自然姿勢(第1姿勢)から傾動させる。
【0053】
ジンバル機構6の第1軸61、及び、第2軸62は、接触面3a、3bから所定距離内に位置する。ここで、図11(b)、及び、(c)においては、円錐台形状のセンサーホルダー5と第1軸61とが、模式的に示されている。図11(c)に示すように、第1軸61が、センサーホルダー5の接触面3a、3b側と離れていると、聴診器1が、凹凸がある聴診対象上を移動(スライド)したときに、接触面3a、3bが、凹凸に追従することが困難となる。一方、図11(b)に示すように、第1軸61が、センサーホルダー5の接触面3a、3b側に近いと、聴診器1が、凹凸がある聴診対象上を移動(スライド)したときに、接触面3a、3bが、凹凸に追従しやすくなる。しかしながら、図11(a)に示すように、センサーホルダー5の第1軸61を中心とした回転範囲(回転角)は、センサーホルダー5の接触面3a、3b側と第1軸61との距離によって決まる。距離が長ければ、回転範囲は広くなるが、距離が短ければ、回転範囲は狭くなる。このため、センサーホルダー5の接触面3a、3b側と第1軸61との距離は、センサーホルダー5の回転範囲も鑑みて、設定すればよい。第2軸62も同様である。
【0054】
センサーホルダー5が取り付けられたジンバル機構6は、図12に示すように、一方の軸受7に第2軸62が斜め上から挿通された後、ジンバル機構6が時計回り方向に回転され、第2軸62が他方の軸受7に挿通されることで、本体筐体2(ベースフレーム22)に取り付けられる。反対に、ジンバル機構6が、本体筐体2(ベースフレーム22)から取り外される場合、他方の軸受7の開口から、第2軸62が押し込まれ、他方の軸受7から、第2軸62が取り外された後、ジンバル機構6が反時計回り方向に回転され、第2軸62が一方の軸受7から取り外されることで、ジンバル機構6は、本体筐体2(ベースフレーム22)から取り外される。ジンバル機構6が、本体筐体2(ベースフレーム22)に取り付けられている状態で、第2軸62は、他方の軸受7に対して、例えば、0.5~1.0mm引っかかった状態である。
【0055】
接触面3a、3bが聴診対象に接触すると、センサーホルダー5には、矢印Cの方向に負荷がかかる。図12に示すように、センサーホルダー5に負荷がかかる方向と、センサーホルダー5の着脱方向とが同一ではないため、受ける側にしっかりとした支えを設けることができる。従って、負荷を受ける方向(矢印Cの方向)には、しっかりと負荷を受けることができ、ジンバル機構6の取付、取り外しが容易となる。
【0056】
センサーホルダー5と第1軸61との間には、弾性を有する弾性部材が設けられている。例えば、図13(a)に示すように、センサーホルダー5自体が、弾性部材であってもよい。また、例えば、図13(b)に示すように、センサーホルダー5と第1軸61との接触部分付近に、弾性部材が設けられていてもよい。図13(b)では、弾性部材が、略ブラケット形状となっている。上述したように、センサーホルダー5と第1軸61との間に、弾性を有する弾性部材が設けられているため、制振・防振の効果を得ることができる。
【0057】
双方のジンバル機構6A、6Bにおいて、第1軸61は、聴診器1の長手方向に平行であり、第2軸62は、聴診器1の長手方向と直交方向に平行である。これに限らず、第1軸61と第2軸61との位置関係が入れ替わっていてもよい。また、双方のジンバル機構6A、6Bにおいて、軸の配置が、同じである。これに限らず、双方のジンバル機構6A、6Bにおいて、軸の位置関係が90度異なっていてもよい。さらに、第1軸61が、長手方向から45度傾斜しており、第2軸62が、第1軸61と直交するように配置されていてもよい。
【0058】
本実施形態では、接触面3a、3bを可動とする可動部として、ジンバル機構6A、6Bが用いられている。これに限らず、接触面3a、3bを可動とする可動部として、例えば、バネによる機構が用いられていてもよい。
【0059】
図14(a)、及び、(b)は、センサーカバー3付近の断面図である。図14(a)に示すように、センサーカバー3の断面長さが、傾斜したセンサーホルダー5の端と、センサーカバー3の保持部と、を結ぶ長さ以下にならないため、センサーホルダー5が、傾斜しても、センサーカバー3が突っ張らない設計となっている。また、図13(b)に示すように、センサーホルダー5が外側に傾斜したとき、センサーカバー3の内部構造物が、センサーホルダー5上面の延長線を超えないため、センサーホルダー5が傾斜しても、聴診対象(身体)に密着して沿わせることができる設計となっている。また、図14(b)に示すように、ベースフレーム22の最外周にリブを設け、センサーカバー3(センサーカバー3の内側に延びている端部)をボトム筐体21とで圧縮させて挟み込んでいるため、アルコール及びその他薬品、並びに、血液が内部に入り込まない設計となっている。なお、上述のとおり、センサーカバー3(接触面3a、3b)は、センサーホルダー5の動き(傾動)に追従するが、図14では、センサーカバー3が追従している状態は示されていない。
【0060】
図15は、センサー4付近の図である。センサー4は、センサーホルダー5に、図示しない、ねじ(締結部材)により、取り付けられている。例えば、両面テープにより、センサー4がセンサーホルダー5に取り付けられた場合、経年劣化、個体によるばらつき、組み立て性の悪さが懸念される。本実施形態では、センサー4は、ねじ(締結部材)により、センサーホルダー5に取り付けられているため、これらの問題がない。ねじによるセンサー4のセンサーホルダー5の取付は、センサー4の位置決めも兼ねている。なお、センサー4とセンサーホルダー5との間に、振動板が設けられていていてもよい。
【0061】
図16は、図7に、バッテリー8、及び、基板9が追加された図である。使用者は、聴診器1の長手方向のいずれか一方側を手で持って、聴診器1を使用する。バッテリー8は、本体筐体2(筐体)の長手方向の中心からずれた位置に配置されている。このように、重量があるバッテリー8が、使用者の手が位置する場所に配置されることで、重心が手元に集中するため、持ちやすさ、及び、操作性が向上する。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0063】
上述した実施形態では、センサー4は、2つであり、これに対応するセンサーホルダー5、接触面3a、3bも2つである。これに限らず、センサーは、1つ、又は、3つ以上であってもよいし、これに対応するセンサーホルダー、接触面は、センサーの数と同一となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、聴診器に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0065】
1 聴診器
2 本体筐体
21 ボトム筐体
21a、21b 溝
22 ベースフレーム
3 センサーカバー
3a、3b 接触面
4(4A、4B) センサー
5(5A、5B) センサーホルダー
6(6A、6B) ジンバル機構
7 軸受
8 バッテリー
9 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16