IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電波工業株式会社の特許一覧

特開2023-119228水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ
<>
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図1
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図2
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119228
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20230821BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H03H9/19 F
H03H3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021988
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓之
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF07
5J108FF13
5J108KK01
5J108KK02
5J108MM11
5J108MM14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水晶片を容器に導電性接着剤によって接続固定する際の導電性接着剤の食いつきを高めるために好適な新規な構造を有した水晶振動子を提供する。
【解決手段】水晶振動子10は、水晶片11と、水晶片を収容する容器13と、水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤15と、水晶片の接続固定領域11cに設けられ導電性接着剤の水晶片への食いつきを高める凹部17と、を備える。凹部17は、水晶の結晶性を消失させた面17aを有した凹部としてある。凹部17は、短パルスレーザであるピコ秒レーザ又はフェムト秒レーザで形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶片と、前記水晶片を収容する容器と、前記水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤と、前記水晶片の前記接続固定領域に設けられ前記導電性接着剤の前記水晶片への食いつきを高める凹部と、を備える水晶振動子において、
前記凹部を、水晶の接結晶性を消失させた面を有した凹部としてあることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記凹部を前記接続固定領域に複数個備えることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記凹部の平面形状が円状、楕円状又はリング状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水晶振動子。
【請求項4】
水晶片を容器に導電性接着剤によって固定している構造を有した水晶振動子を製造するに当たり、
水晶片の導電性接着剤によって固定される予定領域に、短パルスレーザによって、複数個の凹部を形成する工程と、
前記凹部を形成した水晶片に、当該水晶振動子用の励振用電極、及び、前記励振用電極に接続していて、前記凹部を覆う引出電極を、形成する工程と、
前記容器の前記水晶片が固定される予定領域に、又は、前記凹部を形成した水晶片の前記容器に接続される予定領域に、導電性接着剤を塗布する工程と、
前記導電性接着剤の塗布が終えた水晶片及び容器を設着する工程と、
を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項5】
水晶振動子形成用の中間体である水晶片をマトリクス状に多数備える水晶振動子用の中間体ウエハにおいて、
前記中間体である水晶片の、導電性接着剤によって容器に接続固定される領域に、前記導電性接着剤の前記水晶片への食いつきを高める凹部であって、水晶の接結晶性を消失させた面を有した凹部を備えることを特徴とする水晶振動子用の中間体ウエハ。
【請求項6】
前記凹部を前記接続固定される領域に複数個備えることを特徴とする請求項5に記載の水晶振動子用の中間体ウエハ。
【請求項7】
前記凹部の平面形状が円状、楕円状又はリング状であることを特徴とする請求項5又は6に記載の水晶振動子用の中間体ウエハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶片を容器に導電性接着剤によって接着固定する構造に特徴を有した水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のほとんどの水晶振動子は、水晶片の一部分を容器の接着パッドに導電性接着剤によって電気的かつ機械的に接続固定した構造のものである。導電性接着剤による前記固定は、水晶振動子の電気的特性および衝撃耐性等に影響するため、確実な構造が望まれる。
例えば特許文献1には、水晶片の容器と接続する領域に、水晶片自体を貫通した貫通孔又は水晶片表面から厚み方向途中まで凹ませた凹部を設けて、貫通孔又は凹部を導電性接着剤の収容部とした構造が開示されている(例えば要約)。この構造であると、接着剤の保持力、保持量を増大できるという(例えば段落15)。
【0003】
また、特許文献1に、上記貫通孔又は凹部を、フォトリソグラフィ技術によって形成することが記載されている(例えば段落27)。この方法であると、水晶の異方性を利用した収容部を形成できるという(例えば段落26)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-171591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構造および製造方法は、収容部による導電性接着剤の保持力の効果や収容部を製造する方法として、改善の余地がある。
本出願に係る発明者も、導電性接着剤の食いつきを高めるため水晶片に設ける凹部のより好ましい構造について鋭意検討を行ってきた。また、そのような好ましい凹部を水晶片に簡易に製造できる方法について鋭意検討を行ってきた。
この出願は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、水晶片を容器に導電性接着剤によって接続固定する際の接着剤の食いつきを高めるための新規な構造を有した水晶振動子と、この構造を簡易に形成できる製造方法と、前記水晶振動子を形成するための中間体ウエハと、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この出願の水晶振動子によれば、水晶片と、前記水晶片を収容する容器と、前記水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤と、前記水晶片の前記接続固定領域に設けられ前記導電性接着剤の前記水晶片への食いつきを高める凹部と、を備える水晶振動子において、前記凹部を、水晶の結晶性を消失させた面を有する凹部としてあることを特徴とする。
なお、この発明を実施するに当たり、前記凹部は前記接続固定領域に複数個設けることが好ましい。
【0007】
ここで、水晶の結晶性を消失させた面とは、フォトリソグラフィ技術及びフッ酸系エッチャントを用いたウエットエッチング技術によって形成され、水晶の結晶面が凹部の内壁や底面の一部又は全部に残った面とは違う面、のことである。
具体的には、水晶の結晶性を消失させた面とは、当該凹部の側壁に水晶片表面から深さ方向に進行した線状痕跡が、側壁の周方向に並んでいて、これら並んだ線状痕跡による凹凸が生じている面である(図2のSEM写真参照)。このような面は、本願の別発明である短パルスレーザを用いる製法によって形成できる。
【0008】
また、この出願の水晶振動子の製造方法によれば、水晶片を容器に導電性接着剤によって固定している構造を有した水晶振動子を製造するに当たり、
水晶片の導電性接着剤によって固定される予定領域に、短パルスレーザによって、複数個の凹部を形成する工程と、
前記凹部を形成した水晶片に、当該水晶振動子用の励振用電極、及び、前記励振用電極と接続していて、前記形成した凹部を覆う引出電極を、形成する工程と、
前記容器側又は前記凹部を形成した水晶片側の、前記予定領域に、導電性接着剤を塗布する工程と、
前記導電性接着剤の塗布が終えた水晶片及び容器を接着する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この出願の水晶振動子によれば、導電性接着剤の水晶片への食いつきを高めるため水晶片に設けた凹部が、水晶の接結晶性を消失させた面を有した凹部であるため、そうでない場合、例えば水晶の結晶面すなわち鏡面を有した凹部に比べ、導電性接着剤に対するくさび効果が高い凹部を利用した接着構造を実現できる。
また、この出願の水晶振動子の製造方法によれば、導電性接着剤の水晶片への食いつきを高めるため水晶片に凹部を設ける際、水晶片を短パルスレーザで加工するので、水晶の結晶性を消失させた面を有した凹部を簡易に製造できる。すなわち、フォトリソグラフィ技術によって凹部を形成する場合は、マスク膜の形成工程、フォトレジストの形成工程、露光・現像工程、水晶のエッチング工程等々の多数工程が必要であるのに対し、本発明方法であればレーザ照射のみで済む。また、フォトリソグラフィ技術及びウエットエッチング技術によって凹部を形成する場合、水晶のエッチング異方性が原因で所望の凹部を形成しにくいが、短パルスレーザを用いる方法では、これを回避できる。
従って、水晶片を容器に導電性接着剤によって接続固定する際の接着剤の食いつきを高めるために好適な新規な構造を有した水晶振動子と、上記新規な構造を形成する簡易な製造方法とを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(A)~(C)は、実施形態の水晶振動子10の説明図である。
図2】(A)及び(B)は実施形態の水晶振動子10に設けた凹部17のSEM写真である。
図3】(A)及び(B)は、製造方法の実施形態を説明するための要部工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの出願の各発明の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の実施形態中で述べる形状、材質、製法例等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明が以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0012】
1. 水晶振動子の実施形態
図1を参照して実施形態の水晶振動子10について、説明する。図1(A)~(C)は実施形態の水晶振動子10の説明図である。特に、(A)図はその上面図、(B)図は(A)図中のP-P線での断面図、(C)図は(B)図中のQ部分の拡大図である。
実施形態の水晶振動子10は、水晶片11と、水晶片11を収容する容器13と、水晶片11を容器13に接続固定している導電性接着剤15と、水晶片11の導電性接着剤15との接続固定領域に設けられ、導電性接着剤15の水晶片11への食いつきを高める凹部17と、を備える水晶振動子において、凹部17は、水晶の結晶性を消失させた面17aを有した凹部となっている水晶振動子である。以下、各構成成分について具体的に説明する。
【0013】
水晶片11は、この場合、ATカットの水晶片である。水晶片11は、励振用電極11aと、引出電極11bと、本発明の特徴である凹部17(詳細は後述する)と、を備えている。励振用電極11aは、水晶片11の表裏の主面の所定領域に設けてあり、任意好適な金属膜で構成してある。引出電極11bは、水晶片11の両主面の励振用電極11a各々から、この場合は、水晶片11の1つの辺の側であって当該1つの辺の両端領域に引き出してある。引出電極11bは、励振用電極11aと同じ金属膜で一体形成してある。引出電極11bは、凹部17内にも及んでいることが好ましい。
【0014】
容器13は、この例の場合、水晶片11を収容する凹部13aと、凹部13aを生じさせている土手部13bと、接着パッド13cとを備えるものである。接着パッド13cは、この例の場合、凹部13aの底面であって、水晶片11の引出電極11bと対応する領域に設けてある。接着パッド13cは、容器13の裏面に設けた外部接続端子(図示を省略)に、ビア配線又はキャスタレーション配線(いずれも図示せず)を介して接続してある。そして、水晶片11は、接着パッド13cに、引出電極11bの位置で、導電性接着剤15によって電気的及び機械的に接続固定してある。
容器13の土手部13bの天面に、蓋部材(図示を省略)が、接合されて水晶片11は、容器13に封止れている。なお、容器13と蓋部材との接合は、封止方式に応じた任意好適な方法で行われる。容器13は、例えばセラミック製パッケージで構成できる。
導電性接着剤15は、任意好適なもので構成できるが、この例の場合はシリコーン系の導電性接着剤としてある。
【0015】
次に、本発明の特徴である凹部17の、具体的構造例について説明する。この説明を図1に加えて図2を参照して行う。図2は、水晶片11の接続固定領域11cに設けた凹部17のSEM(電子顕微鏡)写真である。図2の特に(A)図は、水晶片11の導電性接着剤によって固定される領域中の複数個の凹部17を撮影したSEM写真、(B)図は(A)図中の1個の凹部17を拡大したSEM写真である。
凹部17は、導電性接着剤15の水晶片11への食いつきを高めるものであり、然も、側壁及び底面が水晶の接結晶性を消失させた面17aとなっている凹部である。
この例の場合の面17aは、特に図2(B)に示した拡大SEM写真のように、凹部17の側壁に水晶片11の表面から深さ方向に進行した線状痕跡17axが、側壁の周方向に並んでいて、これら並んだ線状痕跡17axによる凹凸が生じている面である。このような面17aは、本願の別発明である短パルスレーザを用いる製法によって容易に形成できる。
【0016】
凹部17は、図1(A)、(B)に示したように、接続固定領域11c内、又は、接続固定領域11cよりやや狭いかやや広い所定の領域に、設けてある。凹部17は、複数個設けることが好ましい。例えば凹部17はマトリクス状に複数個配置して設けることが好ましい。なお、接続固定領域11c自体の大きさは、水晶振動子10の小型化が進んでいることを考えると、実際には、図1(B)に示した寸法a、寸法bで言って、寸法aは長くて0.3mm程度、寸法bは長くて0.1mm程度の大きさである。もちろん、これら寸法は、一例である。
【0017】
凹部17の平面的形状は任意のものとできる。実施形態の場合の凹部17は、平面視してリング状のものとしてある(図2参照)。そして、リング状の凹部の内壁及び底面は、水晶の接結晶性を消失させた面17aとなっている。凹部17をリング状のものとすると、そうでない場合に比べて、導電性接着剤15の凹部17への食いつきが強くなると考えられるので、好ましい。ただし、凹部はリング状ではなく、平面視で円形や楕円形や四角の形状を有したものでも良い。また、凹部17の深さは、深すぎては凹部形成の工数がかかり、また、浅すぎては凹部の効果が薄いので、それらを考慮した設計に応じた任意の深さとできる。これに限られないが、凹部17の深さは10~30μmが良く、より好ましくは10~20μmが良い。
【0018】
この発明の水晶振動子10では、水晶片11の導電性接着剤15との接続固定領域11cに、水晶の接結晶性を消失させた面17aを有した凹部17を複数個備えていて、そして、水晶片11と容器13の接着パッド13cとを、導電性接着剤15によって電気的かつ機械的に固定してあるので、凹部17を有しない場合に比べて、接着強度が高まる。特に水晶振動子が小型化されて、接続固定領域11cが益々狭くなる場合に本発明は有用である。
2.製造方法の実施形態及び中間体ウエハ
【0019】
次に、本願の製造方法の発明の実施形態について、図3を参照して説明する。図3は、実施形態の製造方法の要部を示した製造工程図である。なお、本発明の水晶振動子10は、大型の水晶ウエハからフォトリソグラフィ技術及び成膜技術を用いた工法によって製造することが好ましいので、本実施形態ではそのような例を説明する。
先ず、水晶振動子10を製造するための、ATカット水晶ウエハであって所定厚み及び大きさのATカットの水晶ウエハ110を、用意する(図3(A))。水晶ウエハ110には、水晶振動子10の中間体11xとして、水晶片11の外形加工が済んでいて励振用電極が形成される前の中間体11xが、マトリクス状に多数形成されている。(図3(A))。
【0020】
このような水晶ウエハ110の個々の中間体11xの、導電性接着剤によって接着される接続固定領域11cに対し、レーザ装置例えば短パルスレーザ装置21から、短パルスレーザ光21aを照射する。レーザ装置21は、ガルバノミラー(図示を省略)を備えていて、レーザ光21aを接続固定領域11cに任意の形状で走査できるので、任意の平面形状の凹部17を所望の個数形成できる。図2(A)、(B)に示した平面視でリング状の凹部を形成する場合であれば、レーザ光21aをリング状に走査すればよい。また、レーザ光21aのパワー及び又は走査回数を所定の条件にすることによって、凹部17の深さを調整できる(図3(A)参照)。このようにレーザによって形成された凹部17は、側壁や底面が水晶の接結晶性を消失させた面、すなわち線状痕跡が多数並んで生じた凹凸面になる。
なお、用いる短パルスレーザは、例えばピコ秒レーザ、フェムト秒レーザから選ばれる任意好適なもので良い。
【0021】
凹部17の形成が済んだ水晶ウエハ110に対し、周知の成膜技術及びフォトリソグラフィ技術によって、励振用電極11a及び引出電極11bを形成して、励振用電極11a及び引出電極11bを有した水晶振動子の中間体11yを、水晶ウエハ110に形成する(図3(B)。この図3(B)に示した水晶ウエハ112は、水晶振動子用の中間体ウエハに相当する。
その後、周知の方法で水晶ウエハ110から水晶振動子の中間体11yを個片化し、それを容器13(図1参照)に導電性接着剤によって接着固定する。なお、導電性接着剤15は、典型的には容器13の接着パッド13c上に塗布し、その上に水晶振動子の中間体11yを置いて、導電性接着剤を硬化させるが、水晶振動子の中間体11y側に導電性接着剤を塗布して容器に実装する場合があっても良い。
導電性接着剤の硬化が済んだ水晶片11に対し周波数調整をし、容器13を蓋部材(図示を省略)によって封止することによって、図1(A)に示した水晶振動子10を形成できる。
この製造方法によれば、凹部17を短パルスレーザによって形成するので、微細かつ任意の平面形状および深さの凹部17であって、内壁や底面が水晶の結晶性を除去した面となっている凹部を容易に形成できる。
【0022】
なお、上記した実施形態では、水晶片としてATカットの水晶片を用いた例を示したが、水晶片は、ATカットの水晶片以外の水晶片、例えば音叉型水晶片や、SCカットの水晶片などのいわゆる2回回転の水晶片であって良い。また、引出電極11bは、水晶片11の両主面の励振用電極11a各々から、水晶片11の1つの辺の側であって当該1つの辺の両端領域に引き出した例、すなわち片持ち保持に対応する形状の例を示したが、両持ち支持の2点固定や両持ち支持の4点固定の接着構造に対しても本発明は適用できる。また、容器13として凹部13aを有した構造の例を示したが、容器が平板状で、蓋部材が水晶片を収容する凹部を有したキャップ状のものとした水晶振動子に対しても、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0023】
10:実施形態の水晶振動子、 11:水晶片、
11a:励振用電極、 11b:引出電極、
11c:接続固定領域、 13:容器、
13a:凹部、 13b:土手部、
13c:接着パッド、 15:導電性接着剤、
17:凹部、 17a:水晶の接結晶性を消失させた面
17ax:線状痕跡、
21:レーザ装置、 21a:レーザ光、
110、112:水晶ウエハ(水晶振動子用の中間体ウエハ)、
11x、11y:水晶振動子の中間体


















図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この出願の水晶振動子によれば、導電性接着剤の水晶片への食いつきを高めるため水晶片に設けた凹部が、水晶の結晶性を消失させた面を有した凹部であるため、そうでない場合、例えば水晶の結晶面すなわち鏡面を有した凹部に比べ、導電性接着剤に対するくさび効果が高い凹部を利用した接着構造を実現できる。
また、この出願の水晶振動子の製造方法によれば、導電性接着剤の水晶片への食いつきを高めるため水晶片に凹部を設ける際、水晶片を短パルスレーザで加工するので、水晶の結晶性を消失させた面を有した凹部を簡易に製造できる。すなわち、フォトリソグラフィ技術によって凹部を形成する場合は、マスク膜の形成工程、フォトレジストの形成工程、露光・現像工程、水晶のエッチング工程等々の多数工程が必要であるのに対し、本発明方法であればレーザ照射のみで済む。また、フォトリソグラフィ技術及びウエットエッチング技術によって凹部を形成する場合、水晶のエッチング異方性が原因で所望の凹部を形成しにくいが、短パルスレーザを用いる方法では、これを回避できる。
従って、水晶片を容器に導電性接着剤によって接続固定する際の接着剤の食いつきを高めるために好適な新規な構造を有した水晶振動子と、上記新規な構造を形成する簡易な製造方法とを提供できる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
次に、本発明の特徴である凹部17の、具体的構造例について説明する。この説明を図1に加えて図2を参照して行う。図2は、水晶片11の接続固定領域11cに設けた凹部17のSEM(電子顕微鏡)写真である。図2の特に(A)図は、水晶片11の導電性接着剤によって固定される領域中の複数個の凹部17を撮影したSEM写真、(B)図は(A)図中の1個の凹部17を拡大したSEM写真である。
凹部17は、導電性接着剤15の水晶片11への食いつきを高めるものであり、然も、側壁及び底面が水晶の結晶性を消失させた面17aとなっている凹部である。
この例の場合の面17aは、特に図2(B)に示した拡大SEM写真のように、凹部17の側壁に水晶片11の表面から深さ方向に進行した線状痕跡17axが、側壁の周方向に並んでいて、これら並んだ線状痕跡17axによる凹凸が生じている面である。このような面17aは、本願の別発明である短パルスレーザを用いる製法によって容易に形成できる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
凹部17の平面的形状は任意のものとできる。実施形態の場合の凹部17は、平面視してリング状のものとしてある(図2参照)。そして、リング状の凹部の内壁及び底面は、水晶の結晶性を消失させた面17aとなっている。凹部17をリング状のものとすると、そうでない場合に比べて、導電性接着剤15の凹部17への食いつきが強くなると考えられるので、好ましい。ただし、凹部はリング状ではなく、平面視で円形や楕円形や四角の形状を有したものでも良い。また、凹部17の深さは、深すぎては凹部形成の工数がかかり、また、浅すぎては凹部の効果が薄いので、それらを考慮した設計に応じた任意の深さとできる。これに限られないが、凹部17の深さは10~30μmが良く、より好ましくは10~20μmが良い。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
この発明の水晶振動子10では、水晶片11の導電性接着剤15との接続固定領域11cに、水晶の結晶性を消失させた面17aを有した凹部17を複数個備えていて、そして、水晶片11と容器13の接着パッド13cとを、導電性接着剤15によって電気的かつ機械的に固定してあるので、凹部17を有しない場合に比べて、接着強度が高まる。特に水晶振動子が小型化されて、接続固定領域11cが益々狭くなる場合に本発明は有用である。
2.製造方法の実施形態及び中間体ウエハ
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
このような水晶ウエハ110の個々の中間体11xの、導電性接着剤によって接着される接続固定領域11cに対し、レーザ装置例えば短パルスレーザ装置21から、短パルスレーザ光21aを照射する。レーザ装置21は、ガルバノミラー(図示を省略)を備えていて、レーザ光21aを接続固定領域11cに任意の形状で走査できるので、任意の平面形状の凹部17を所望の個数形成できる。図2(A)、(B)に示した平面視でリング状の凹部を形成する場合であれば、レーザ光21aをリング状に走査すればよい。また、レーザ光21aのパワー及び又は走査回数を所定の条件にすることによって、凹部17の深さを調整できる(図3(A)参照)。このようにレーザによって形成された凹部17は、側壁や底面が水晶の結晶性を消失させた面、すなわち線状痕跡が多数並んで生じた凹凸面になる。
なお、用いる短パルスレーザは、例えばピコ秒レーザ、フェムト秒レーザから選ばれる任意好適なもので良い。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
10:実施形態の水晶振動子、 11:水晶片、
11a:励振用電極、 11b:引出電極、
11c:接続固定領域、 13:容器、
13a:凹部、 13b:土手部、
13c:接着パッド、 15:導電性接着剤、
17:凹部、 17a:水晶の結晶性を消失させた面
17ax:線状痕跡、
21:レーザ装置、 21a:レーザ光、
110、112:水晶ウエハ(水晶振動子用の中間体ウエハ)、
11x、11y:水晶振動子の中間体
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
水晶片と、前記水晶片を収容する容器と、前記水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤と、前記水晶片の前記接続固定領域に設けられ前記導電性接着剤の前記水晶片への食いつきを高める凹部と、を備える水晶振動子において、
前記凹部を、水晶の結晶性を消失させた面を有した凹部としてあることを特徴とする水晶振動子。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
水晶振動子形成用の中間体である水晶片をマトリクス状に多数備える水晶振動子用の中間体ウエハにおいて、
前記中間体である水晶片の、導電性接着剤によって容器に接続固定される領域に、前記導電性接着剤の前記水晶片への食いつきを高める凹部であって、水晶の結晶性を消失させた面を有した凹部を備えることを特徴とする水晶振動子用の中間体ウエハ。