IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電波工業株式会社の特許一覧

特開2023-119229水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ
<>
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図1
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図2
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図3
  • 特開-水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119229
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/19 20060101AFI20230821BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H03H9/19 F
H03H3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021989
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓之
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC10
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE07
5J108EE18
5J108FF07
5J108FF13
5J108MM11
5J108MM14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水晶片の表裏を導通するための貫通孔として好ましい貫通孔を有した新規な構造の水晶振動子を提供する。
【解決手段】水晶振動子10は、水晶片11と、水晶片を収容する容器13と、水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤15と、水晶片の前記接続固定領域11cの一部に設けられ水晶片の表裏を貫通している貫通孔17であって、水晶の結晶性を消失させた面を内壁に有する貫通孔17と、水晶片の一方の面、貫通孔の内壁上及び水晶片の他方の面に渡って設けられた電極(励振用電極11a、配線電極11b)と、を備える。貫通孔17は、短パルスレーザであるピコ秒レーザ又はフェムト秒レーザで形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶片と、前記水晶片を収容する容器と、前記水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤と、前記水晶片の前記接続固定領域の一部に設けられ前記水晶片の表裏を貫通している貫通孔と、を備える水晶振動子において、
前記貫通孔としての、水晶の結晶性を消失させた面を内壁に有する貫通孔と、
前記水晶片の一方の面、前記貫通孔の内壁上及び前記水晶片の他方の面に渡って設けられた電極と、を備えることを特徴とする水晶振動子。
【請求項2】
前記貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿って切った断面形状が、水晶片の第1表面側からその反対面である第2表面側に向かって先細りのロート状であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項3】
前記貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿って切った面形状が、水晶片の厚さ方向の途中で開口具合が低減し、その後拡大する砂時計状であることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動子。
【請求項4】
水晶片を容器に導電性接着剤によって固定している構造を有した水晶振動子を製造するに当たり、
前記水晶片の導電性接着剤によって固定される予定領域の一部に、短パルスレーザによって、水晶片を貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を形成した水晶片に水晶振動子の電極形成用の金属膜を、前記貫通孔内も被覆するよう形成する工程と、
前記金属膜を形成した水晶片に前記貫通孔内も被覆するようフォトレジストを形成する工程と、
前記フォトレジストを露光・現像して電極形成用のレジストパタンを形成する工程と、前記レジストパタンから露出する前記金属膜を選択的に除去して当該電極としての、前記貫通孔内も被覆している電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする水晶振動子の製造方法。
【請求項5】
水晶振動子形成用の中間体である水晶片をマトリクス状に多数備える水晶振動子用の中間体ウエハにおいて、
前記中間体である水晶片の、導電性接着剤によって容器に接続固定される領域の一部に、前記水晶片の表裏を貫通している貫通孔であって、水晶の結晶性を消失させた面を内壁に有する貫通孔と、
前記水晶片の一方の面、前記貫通孔の内壁上及び前記水晶片の他方の面に渡っても設けられた電極と、を備えることを特徴とする水晶振動子用の中間体ウエハ。
【請求項6】
前記貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿って切った断面形状が、水晶片の第1表面側からその反対面である第2表面側に向かって先細りのロート状であることを特徴とする請求項5に記載の水晶振動子用の中間体ウエハ。
に水晶振動子。
【請求項7】
前記貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿って切った断面形状が、水晶片の厚さ方向の途中で開口具合が低減しその後拡大する、砂時計状であることを特徴とする請求項5に記載の水晶振動子用の中間体ウエハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶片を容器に導電性接着剤によって接着固定する構造に特徴を有した水晶振動子及びその製造方法並びに水晶振動子用の中間体ウエハに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のほとんどの水晶振動子は、SMD型のものである。従って、水晶片を容器に固定する際は、水晶片の2つの主面の一方を容器の接着パッド側に対向させ、当該主面の所定部分を接着パッドに導電性接着剤によって電気的かつ機械的に接続固定する。
【0003】
一方、水晶片は、その表裏に励振用電極を有しているため、接着パッドとは反対面側にある励振用電極は、接着パッド側に引き回す必要がある。一般には、この引き回しは、水晶片の側面を経由して行われる。
水晶片の一方の面から他方の面に励振用電極を、水晶片の側面を経由して引き回す場合、水晶片の主面と側面との境界である水晶片のエッジで電極の断線が起き易い。
この断線を軽減する1つの策として、例えば特許文献1に示されているように、水晶片の一方の面から他方の面に貫通孔を設け、この貫通孔を利用して表裏の導通を図る構造がある(特許文献1,3,5、段落83等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-191579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、貫通孔の具体的な構造、特に深さ方向の内部形状等の具体的な記載はない。また、貫通孔の製法に関する記載もない。貫通孔の製法としてフォトリソグラフィ技術及びウエットエッチング技術を用いる方法が考えられるが、この方法を水晶片の貫通孔の形成に使用した場合、貫通孔の開口部や内部が水晶の結晶性に起因した結晶面の影響を受け、貫通孔内部は複数の結晶面からから成る複雑な構造となる。そのため、貫通孔内部を、電極膜等の導通部材が形成し易い状態となった貫通孔を形成することが難しい。
すなわち、貫通孔の構造によっては、水晶片の表裏の導通を図るという目的を満足できない場合があり、貫通孔の構造やその製造方法に関して、改善の余地がある。
本出願に係る発明者も、水晶片の表裏の導通を図るための貫通孔の構造およびその製法について鋭意検討を行ってきた。
この出願は上記の点に鑑みなされたものであり、従って、この出願の目的は、水晶片の表裏を導通するための好ましい貫通孔を有した新規な構造の水晶振動子と、この構造を簡易に形成できる製造方法と、前記水晶振動子を形成するための中間体ウエハと、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的の達成を図るため、この出願の水晶振動子によれば、水晶片と、前記水晶片を収容する容器と、前記水晶片を容器に接続固定している導電性接着剤と、前記水晶片の前記接続固定領域の一部に設けられ前記水晶片の表裏を貫通している貫通孔と、を備える水晶振動子において、
前記貫通孔としての、水晶の結晶性を消失させた面を内壁に有する貫通孔と、
前記水晶片の一方の面、前記貫通孔の内壁上及び前記水晶片の他方の面に渡って設けられた電極と、を備えることを特徴とする。
【0007】
ここで、水晶の結晶性を消失させた面とは、フォトリソグラフィ技術及びフッ酸系エッチャントを用いたウエットエッチング技術によって形成され、水晶の結晶面が凹部の内壁や底面の一部又は全部に残った面とは違う面、のことである。
具体的には、水晶の結晶性を消失させた面とは、当該貫通孔の内壁に水晶片表面から深さ方向に進行した線状痕跡が、内壁の周方向に並んでいて、これら並んだ線状痕跡による微小凹凸が生じている面である(図2(A)のSEM写真参照)。このような面は、本願の別発明である短パルスレーザ、例えばピコ秒レーザ又はフェムト秒レーザ等を用いる製法によって形成できる。
【0008】
なお、この水晶振動子の発明を実施するに当たり、前記貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿って切った断面形状が、水晶片の第1表面側からその反対面である第2表面側に向かって先細りのロート状であることが好ましい(図1(C)参照)。
また、この水晶振動子の発明を実施するに当たり、前記貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿って切った断面形状が、水晶片の厚さ方向の途中で開口具合が低減し、その後拡大する、いわゆる砂時計状であっても良い(図2(B)参照)。
このようにロート状や砂時計形状であると、貫通孔内に電極形成用の膜を被覆し易い。
【0009】
この出願の他の発明である水晶振動子の製造方法の発明によれば、水晶片を容器に導電性接着剤によって固定している構造を有した水晶振動子を製造するに当たり、
前記水晶片の導電性接着剤によって固定される予定領域の一部に、短パルスレーザによって、水晶片を貫通する貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を形成した水晶片に水晶振動子の電極形成用の金属膜を、前記貫通孔内も被覆するよう形成する工程と、
前記金属膜を形成した水晶片に前記貫通孔内も被覆するようフォトレジストを形成する工程と、
前記フォトレジストを露光・現像して電極形成用のレジストパタンを形成する工程と、前記レジストパタンから露出する前記金属膜を選択的に除去して当該電極としての、前記貫通孔内も被覆している電極を形成する工程と
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この出願の水晶振動子によれば、水晶片の容器と接続される領域の一部に、水晶片を貫通していて、水晶の結晶性を消失させた面を内壁に有する貫通孔と、前記水晶片の一方の面、前記貫通孔の内壁上及び前記水晶片の他方の面に渡って設けた電極と、を備えている。従って、貫通孔内に水晶片の結晶面が無い構造を持つ水晶片を有した水晶振動子が得られる。しかも、容器の側とは反対側の励振用電極はこの貫通孔を介して容器側に引き回されて接着パッドと接続された水晶振動子が得られる。ここで、貫通孔内に水晶の結晶面があると、結晶面は結晶の異方性に起因した面であるため、貫通孔の開口度を低下し易いことが多いため、貫通孔を利用して電極を引き回すという目的の弊害になる。一方、本発明では、貫通孔は結晶性を消失させた側面を持つものであるため、結晶面を有する場合に比べ、貫通孔の開口率を高くできる。従って、水晶片の一方の面、貫通孔の内壁上および水晶片の他方の面に渡って設けた電極も、貫通孔内に有効に形成されたものとなるため、水晶片の表裏の導通を確実に行える。
また、この出願の水晶振動子の製造方法によれば、水晶片の表裏を貫通する貫通孔を短パルスレーザによって形成するため、水晶の結晶性を消失させた面を有する貫通孔を簡易に形成できる。また、水晶の結晶性を消失させた面を持つ貫通孔は、水晶の結晶性を有する面を持つ貫通孔に比べて、貫通孔の開口率は高くなり易く、かつ、内壁は金属膜やフォトレジトの被膜性が高い貫通孔になる。そのため、水晶振動子の電極形成用の金属膜やフォトレジストを貫通孔内に被覆し易いので、貫通孔内に所望の電極を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)~(D)は、実施形態の水晶振動子10の説明図である。
図2】(A)~(C)は、本発明に係る貫通孔のいくつかの具体例を説明するための図である。
図3】(A)及び(B)は、製造方法の実施形態を説明するための工程図である。
図4】(A)及び(B)は、製造方法の実施形態を説明するための図3に続く工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照してこの出願の各発明の実施形態について説明する。なお、説明に用いる各図はこれら発明を理解できる程度に概略的に示してあるにすぎない。また、説明に用いる各図において、同様な構成成分については同一の番号を付して示し、その説明を省略する場合もある。また、以下の実施形態中で述べる形状、材質、製法例等はこの発明の範囲内の好適例に過ぎない。従って、本発明が以下の実施形態のみに限定されるものではない。
【0013】
1. 水晶振動子の実施形態
図1を参照して実施形態の水晶振動子10について、説明する。図1(A)~(D)は実施形態の水晶振動子10の説明図である。特に、(A)図はその上面図、(B)図は水晶片11に着目した上面図、(C)図は(B)図中のP-P線での断面図、(D)図は(C)図中のQ部分を水晶片11の上方(図中Rで示す方向)から見た上面図である。
実施形態の水晶振動子10は、水晶片11と、水晶片11を収容する容器13と、水晶片11を容器13に接続固定している導電性接着剤15と、水晶片11の導電性接着剤15との接続固定領域11c(図1(B)参照)の一部に設けられ、水晶の結晶性を消失させた面を内壁に有する貫通孔17と、を備えている。以下、各構成成分について具体的に説明する。
【0014】
水晶片11は、この場合、ATカットの水晶片である。水晶片11は、励振用電極11aと、引出電極11bと、本発明の特徴である貫通孔17(詳細は後述する)と、を備えている。励振用電極11aは、水晶片11の表裏の主面の所定領域に設けてあり、任意好適な金属膜で構成してある。引出電極11bは、水晶片11の両主面の励振用電極11a各々から、貫通孔17内を経由して、水晶片11の他方の面のこの例の場合は水晶片の一端側に引きまわしてある。すなわち、容器側とは反対面にある励振用電極はこの貫通孔17内の電極を介して容器側の面に引き回された構造が実現される。なお、励振用電極の水晶片の表裏の引き回しのために、水晶片の側壁を介した引き回し構造を併用しても良い。
【0015】
容器13は、この例の場合、水晶片11を収容する凹部13aと、凹部13aを生じさせている土手部13bと、接着パッド13cとを備えるものである。接着パッド13cは、この例の場合、凹部13aの底面であって、水晶片11の引出電極11bと対応する領域に設けてある。接着パッド13cは、容器13の裏面に設けた外部接続端子(図示を省略)に、ビア配線又はキャスタレーション配線(いずれも図示せず)を介して接続してある。 そして、水晶片11は、接着パッド13cに、引出電極11bの位置で、導電性接着剤15によって電気的及び機械的に接続固定してある。すなわち、水晶片11は容器13に片持ち支持されている。
容器13の土手部13bの天面に、蓋部材(図示を省略)が接合されて、水晶片11は、容器13に封止してある。なお、容器13と蓋部材との接合は、封止方式に応じた任意好適な方法で行われる。容器13は、例えばセラミック製パッケージで構成できる。
導電性接着剤15は、任意好適なもので構成できるが、この例の場合はシリコーン系の導電性接着剤としてある。
【0016】
次に、本発明の特徴である貫通孔17の、具体的構造例について説明する。この説明を図1に加えて図2を参照して行う。図2(A)は、水晶片11の接続固定領域11C付近を水晶片11の厚さ方向に切った断面の、SEM(電子顕微鏡)写真である。また、図2(B)、図2(C)は貫通孔の他の例を示した図であり、図2(A)同様の位置での断面図である。なお、図2(A)のSEM写真中に記した寸法は、短パルスレーザによる試作加工時の寸法例である。
貫通孔17は、水晶片11の表裏を導通する電極を設けるための貫通孔であり、然も、内壁が水晶の結晶性を消失させた面17aとなっている貫通孔である。
この例の場合は、面17aは、貫通孔17の内壁に水晶片11の表面から深さ方向に進行した線状痕跡が、内壁の周方向に並んでいて、これら並んだ線状痕跡による微小凹凸が生じている面17aである。このような面は、本願の別発明である短パルスレーザを用いる製法によって容易に形成できる(詳細は後述する)。
【0017】
また、この実施形態の貫通孔17は、図1(C)、図2(A)に示したように、水晶片の厚さ方向に沿った断面で見た際の形状が、水晶片の第1表面側からその反対面である第2表面側に向かって先細りのロート状となっている。このような形状であると、貫通孔の内壁に電極形成用の金属膜を例えばスパッタ法等で成膜する際に金属膜を被覆させ易く、さらに、貫通孔の内壁にフォトレジストを被覆させ易いので、好ましい。貫通孔17の大きさは、金属膜やレジスト膜の被覆のし易さ等を考慮して決める。これに限られないが、貫通孔17の大きな開口側(図2(A)の上方の開口)の直径が例えば20~50μm、貫通孔17の小さな開口側(図2(A)の下方側の開口)の直径が例えば10~30μmが良い。
【0018】
なお、貫通孔は、水晶片の厚さ方向に沿った断面で見た際の形状が、水晶片の厚さ方向の途中で開口具合が低減し、その後拡大する、いわゆる砂時計状の貫通孔17x(図2(B)参照)であっても良い。この例の場合も、貫通孔の内壁に電極形成用の金属膜を例えばスパッタ法等で成膜する際に、金属粒子は水晶片の両面から貫通孔内に親友し易くなるので、金属膜を被覆させ易く、さらに、貫通孔の内壁にフォトレジストを被覆させ易いので、好ましい。断面形状が砂時計状の貫通孔17xを構成する場合、水晶片の表裏から見て貫通孔17xの細くなる部分までの深さd1、d2(図2(B)参照)は、同じ程度が好ましい、すなわち、水晶片11の厚さの中央付近で細くなる構造が好ましい。しかし、d1>d2の場合や、d1<d2の場合があっても良い。
また、図2(C)に示すように、貫通孔は水晶片11の表裏に渡ってほぼ同じ太さの貫通孔17yあっても良い。ただし、この貫通孔17yの場合は、図2(A)、(B)の場合に暮部、貫通孔の内壁に金属膜やレジストを被覆させにくい。
なお、図2の各例では貫通孔は、反対電位とされる2つの励振用電極に対し1個ずつの例であったが、貫通孔は2つずつ以上設ける場合があっても良い。
【0019】
貫通孔17の平面的形状は任意のものとできるが、貫通孔の開口際での電極膜のカバレージ等を考慮すれば、貫通孔の開口部は、円形状や楕円形状であることが好ましい。
この発明の水晶振動子10では、所定の貫通孔と貫通孔内の電極とによって、水晶片の表裏の導通をとることができるので、貫通孔17を用いず水晶片の側壁を介して電極を引き回す場合に比べて、電極引き回しの信頼性が高まる。
【0020】
2. 製造方法の実施形態
次に、本願の製造方法の発明の実施形態について、図3を及び図4を参照して説明する。図3図4は、いずれも、実施形態の製造方法の要部を示した製造工程図である。なお、本発明の水晶振動子10は、大型の水晶ウエハからフォトリソグラフィ技術及び成膜技術を用いた工法によって製造することが好ましいので、本実施形態ではそのような例を説明する。
先ず、水晶振動子10を製造するための、ATカット水晶ウエハであって所定厚み及び大きさのATカットの水晶ウエハ110を、用意する(図3(A))。そして、水晶ウエハ110に、周知の方法で、水晶振動子10の中間体11xとして、水晶片11の外形加工が済んでいて励振用電極が形成される前の中間体11xを、マトリクス状に多数形成する(図3(A))。
次に、このような水晶ウエハ110の個々の振動子の中間体11xの、導電性接着剤によって接着される接続固定領域11cの一部に対し、レーザ装置例えば短パルスレーザ装置21から、短パルスレーザ光21aを照射して貫通孔17を形成する。レーザ装置21は、ガルバノミラー(図示を省略)を備えていて、レーザ光21aを接続固定領域11cに任意の形状で走査できるので、任意の平面形状の貫通孔17を形成できる。また、レーザ光21aのパワー及び又は走査回数を所定の条件にすることによって、貫通孔17の大きさを調整できる(図3(A)参照)。このようにレーザによって形成された貫通孔17は、内壁や底面が水晶の接結晶性を消失させた面、すなわち線状痕跡が多数並んで生じた微小凹凸面になる。
なお、貫通孔として図2(B)に示した断面が砂時計状の貫通孔17xを水晶ウエハ110に形成する場合は、水晶ウエハ110の両面からレーザ光をそれぞれ照射すれば良い。
【0021】
貫通孔17の形成が済んだ水晶ウエハ110に対し、周知の成膜技術、例えばスパッタ法によって、励振用電極11a及び引出電極11bを形成するための金属膜11mを、水晶ウエハの全面に形成して、金属膜形成済みの水晶ウエハ112を得る(図3(B))。この際、図4(A)に示したように、金属膜11mを水晶ウエハ112の両面はもちろん、貫通孔17の内壁にも被覆する。本発実施形態の貫通孔17であると、水晶の結晶性が消失された微小凹凸状態及びロート状の断面の効果によって、金属膜11mは所望の通りに貫通孔17に被覆できる。
次に、この水晶ウエハ112全面及び貫通孔17内に、フォトレジスト23を被覆する(図4(A))。本発実施形態の貫通孔17であると、上記した側面状態及び断面のロート形状の効果によって、フォトレジスト23は所望の通りに貫通孔17に被覆できる。
次に、フォトレジスト23を露光・現像して電極形成用のレジストパタン(図示を省略)を形成し、次いで、レジストパタンから露出する金属膜11mを選択的に除去して当該電極としての、前記貫通孔内も被覆している電極、すなわち励振用電極11a及び引出電極11bを形成する。この図4(B)に示した水晶ウエハ112は、水晶振動子用の中間体ウエハに相当する。
その後、周知の方法で水晶ウエハ112から水晶振動子の中間体11yを個片化し、それを容器13(図1参照)に導電性接着剤によって接着固定する。
導電性接着剤の硬化が済んだ水晶片11に対し周波数調整をし、容器13を蓋部材(図示を省略)によって封止することによって、図1(A)に示した水晶振動子10を形成できる。
この製造方法によれば、貫通孔17を短パルスレーザによって形成するので、内壁や底面が水晶の結晶性を除去した面となっている貫通孔であって、電極形成用の金属膜やフォトレジストを貫通孔内に被覆させ易い形状の貫通孔を容易に形成できる。
【0022】
なお、上記した実施形態では、水晶片としてATカットの水晶片を用いた例を示したが、水晶片は、ATカットの水晶片以外の水晶片、例えば音叉型水晶片や、SCカットの水晶片などのいわゆる2回回転の水晶片であって良い。また、引出電極11bは、水晶片11の両主面の励振用電極11a各々から、水晶片11の1つの辺の側であって当該1つの辺の両端領域に引き出した例、すなわち片持ち保持に対応する形状の例を示したが、両持ち支持の2点固定や両持ち支持の4点固定の接着構造に対しても本発明は適用できる。また、容器13として凹部13aを有した構造の例を示したが、容器が平板状で、蓋部材が水晶片を収容する凹部を有したキャップ状のものとした水晶振動子に対しても、本発明は適用できる。
【符号の説明】
【0023】
10:実施形態の水晶振動子、 11:水晶片、
11a:励振用電極、 11b:引出電極、
11c:接続固定領域、 13:容器、
13a:凹部、 13b:土手部、
13c:接着パッド、 15:導電性接着剤、
17:貫通孔、 17a:水晶の接結晶性を消失させた面
21:レーザ装置、 21a:レーザ光、
23:フォトレジスト
110:水晶ウエハ
112:水晶ウエハ(水晶振動子用の中間体ウエハ)、
11x、11y:水晶振動子の中間体
11m:電極形成用の金属膜



























図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
1. 製造方法の実施形態
次に、本願の製造方法の発明の実施形態について、図3を及び図4を参照して説明する。図3図4は、いずれも、実施形態の製造方法の要部を示した製造工程図である。なお、本発明の水晶振動子10は、大型の水晶ウエハからフォトリソグラフィ技術及び成膜技術を用いた工法によって製造することが好ましいので、本実施形態ではそのような例を説明する。
先ず、水晶振動子10を製造するための、ATカット水晶ウエハであって所定厚み及び大きさのATカットの水晶ウエハ110を、用意する(図3(A))。そして、水晶ウエハ110に、周知の方法で、水晶振動子10の中間体11xとして、水晶片11の外形加工が済んでいて励振用電極が形成される前の中間体11xを、マトリクス状に多数形成する(図3(A))。
次に、このような水晶ウエハ110の個々の振動子の中間体11xの、導電性接着剤によって接着される接続固定領域11cの一部に対し、レーザ装置例えば短パルスレーザ装置21から、短パルスレーザ光21aを照射して貫通孔17を形成する。レーザ装置21は、ガルバノミラー(図示を省略)を備えていて、レーザ光21aを接続固定領域11cに任意の形状で走査できるので、任意の平面形状の貫通孔17を形成できる。また、レーザ光21aのパワー及び又は走査回数を所定の条件にすることによって、貫通孔17の大きさを調整できる(図3(A)参照)。このようにレーザによって形成された貫通孔17は、内壁や底面が水晶の結晶性を消失させた面、すなわち線状痕跡が多数並んで生じた微小凹凸面になる。
なお、貫通孔として図2(B)に示した断面が砂時計状の貫通孔17xを水晶ウエハ110に形成する場合は、水晶ウエハ110の両面からレーザ光をそれぞれ照射すれば良い。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
10:実施形態の水晶振動子、 11:水晶片、
11a:励振用電極、 11b:引出電極、
11c:接続固定領域、 13:容器、
13a:凹部、 13b:土手部、
13c:接着パッド、 15:導電性接着剤、
17:貫通孔、 17a:水晶の結晶性を消失させた面
21:レーザ装置、 21a:レーザ光、
23:フォトレジスト
110:水晶ウエハ
112:水晶ウエハ(水晶振動子用の中間体ウエハ)、
11x、11y:水晶振動子の中間体
11m:電極形成用の金属膜