IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

特開2023-119270ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置
<>
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図1
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図2
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図3
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図4
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図5
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図6
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図7
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図8
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図9
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図10
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図11
  • 特開-ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119270
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20230821BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230821BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20230821BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20230821BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20230821BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H01M10/44 P
H01M10/48 P
G01R31/392
G01R31/382
G01R31/387
H02J7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022077
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】室田 洋輔
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA04
2G216BA22
2G216BA26
2G216BA63
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503FA06
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】容量低下を招くNiHの生成の予兆を検出するとともに、ニッケル水素蓄電池のNiHの生成を抑制するように制御する。
【解決手段】まず、閾値を設定し(S1)、SOCを取得する(S2)。そしてSOC≦40%(S3)か否かを判断し、低SOCであれば、強制充電を行いながら充電カーブを取得する(S4)。そしてSOCを監視しながら(S5)、SOC>60%(S6)となったら、充電終了(S7)する。充電カーブからdQ/dVを算出(S8)し、(総放電容量[Ah])/(dQ/dV)のプロット点記憶(S9)を行う。dQ/dV≦T(S10)となったら、直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量EA[Ah]を推定(S11)する。EA≦目標総放電容量SA(S12)であれば、放電レートの制限(S13)を行い劣化を抑制する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧及び電流に基づいてニッケル水素蓄電池の充放電の制御を行う制御装置により行うニッケル水素蓄電池の制御方法であって、
前記制御装置は、前記ニッケル水素蓄電池のSOCを取得するSOC取得のステップと、
設定した低SOC以下に達したとき、設定したレートで前記ニッケル水素蓄電池を充電して電池容量と電池電圧OCVの関係を示す充電カーブを取得する充電のステップと、
前記充電カーブを電圧変化に対する容量変化であるdQ/dVカーブに置換するdQ/dV化のステップと、
総放電容量に対するdQ/dV値の関係を前記充電のステップごとに蓄積するdQ/dV値蓄積のステップと、
前記dQ/dV値が、設定した閾値以下になったとき、そのときの総放電容量に対するdQ/dV値の関係と、その前に取得した総放電容量に対するdQ/dV値の関係をプロットした点とに基づいて、その後の総放電容量に対するdQ/dV値を推定するdQ/dV値推定のステップと
を備えたことを特徴とするニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項2】
前記dQ/dV値推定のステップにおいて推定したその後の総放電容量に対するdQ/dV値の関係において、設定した総放電容量に対するdQ/dV値が設定した閾値以下となった場合に、ニッケル水素蓄電池の放電レートを制限することを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項3】
前記放電レートの制限は、設定した低SOCの領域で行われることを特徴とする請求項2に記載のニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項4】
前記設定した低SOCの領域が、SOC50[%]以下であることを特徴とする請求項3に記載のニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項5】
前記ニッケル水素蓄電池の放電レートの制限後に前記dQ/dV値推定のステップにおいて推定したその後の総放電容量に対するdQ/dV値において、設定した総放電容量に対するdQ/dV値が設定した閾値以下となった場合に、ニッケル水素蓄電池の放電レートをさらに制限することを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項6】
前記充電のステップにおいて、
設定した低SOCが、20~40[%]であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項7】
前記充電のステップにおいて、
設定したレートが、3C以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のニッケル水素蓄電池の制御方法。
【請求項8】
電圧測定装置と、電流測定装置と、前記電圧測定装置により測定した電圧及び前記電流測定装置により測定した電流とに基づいてニッケル水素蓄電池の充放電の制御を行う制御装置を備え、
前記制御装置は、前記ニッケル水素蓄電池のSOCを取得するSOC取得のステップと、
設定した低SOC以下に達したとき、設定したレートで前記ニッケル水素蓄電池を充電して電池容量と電池電圧OCVの関係を示す充電カーブを取得する充電のステップと、
前記充電カーブを電圧変化に対する容量変化であるdQ/dVカーブに置換するdQ/dV化のステップと、
総放電容量に対するdQ/dV値の関係を前記充電のステップごとに蓄積するdQ/dV値蓄積のステップと、
前記dQ/dV値が、設定した閾値以下になったとき、そのときの総放電容量に対するdQ/dV値の関係と、その前に取得した総放電容量に対するdQ/dV値の関係に基づいて、その後の総放電容量に対するdQ/dV値を推定するdQ/dV値推定のステップと
を実行することを特徴とするニッケル水素蓄電池の制御装置。
【請求項9】
前記ニッケル水素蓄電池は、車両の駆動用の電池であり、前記制御装置が車両に搭載されていることを特徴とする請求項8に記載のニッケル水素蓄電池の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置に係り、詳しくは、NiHの生成を抑制するニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機を搭載したハイブリッド自動車等は、二次電池に蓄えられた電力により、電動機を駆動している。このような二次電池においてニッケル水素蓄電池は、大電流の充放電が可能であることから車両用としても広く普及している。
【0003】
このようなニッケル水素蓄電池では、その使用条件によりメモリ効果が生じることが知られている。そのため、電池の正極電位が所定の下限電位よりも低くなったり所定の上限電位よりも高くなったりしやすいため、正極での副反応が起こり、正極が劣化し得る。
【0004】
図1は、正極内におけるNiH(ニッケル酸化物)の存在比率[%]と、電池の容量比率[%]との関係を示すグラフである。図1に示すように、反応の中でも、特にニッケル水素蓄電池においては、正極内におけるNiH(ニッケル酸化物)の存在比率[%]が増加すると、不可逆的に電池の容量比率[%]が低下するという問題があった。また、本発明者らは、図8に示すグラフLように、一旦NiHが生成されると、総放電容量[Ah]が増加するにしたがって、急激に容量の低下が進行することを明らかにした。そこで、特許文献1には、NiHの生成を抑制する以下の発明が開示されている。
【0005】
正極に水酸化ニッケルを用いたアルカリ蓄電池では、繰り返し充放電条件で充放電を行うことで、条件により電気化学的に不活性なNiHが生成することがある。そのため、特許文献1に開示された発明では、電流密度が100[A/m]で、SOCが20~80[%]の範囲内で総電気量が10[kAh]の充放電を実施した際に、NiHが規定量以下になるように正極電位を適正に制御する電池が提案されている。
【0006】
このような発明であればNiHの生成の抑制が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-233423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特に車両用のニッケル水素蓄電池では、使用状況が過酷であり、特許文献1に記載されたような使用条件から外れてしまう場合もある。本発明者らは、NiHは微小でも一定量生成してしまうと、電池の容量が減少し、さらに、このNiHが生成された状態において継続的に使用すると、電池容量が急激に低下することがあることを見出した。このため、NiHが生成されそうな兆候をいち早く把握して、対応する必要がある。
【0009】
従来技術において一定の使用履歴を有するニッケル水素蓄電池の使用の継続に関して、NiHの生成を確認する技術としては、例えば分解後の極板XRD等の構造分析が一般的である。しかしながら、この方法は、破壊検査であるため、電池の再利用が実質的に不可能であるという問題があった。また、従来技術として劣化度の一種であるCo溶出量を測定するdQ/dV検知技術もある。しかしながら、セル1Vを下回る過放電領域での破壊検査であるため、車両に搭載したニッケル水素蓄電池の制御には使えないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明のニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置が解決しようとする課題は、容量低下を招くNiHの生成の予兆を検出するとともに、ニッケル水素蓄電池のNiHの生成を抑制するように制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のニッケル水素蓄電池の制御方法は、電圧及び電流に基づいてニッケル水素蓄電池の充放電の制御を行う制御装置により行うニッケル水素蓄電池の制御方法であって、前記制御装置は、前記ニッケル水素蓄電池のSOCを取得するSOC取得のステップと、設定した低SOC以下に達したとき、設定したレートで前記ニッケル水素蓄電池を充電して電池容量と電池電圧OCVの関係を示す充電カーブを取得する充電のステップと、前記充電カーブを電圧変化に対する容量変化であるdQ/dVカーブに置換するdQ/dV化のステップと、総放電容量に対するdQ/dV値の関係を前記充電のステップごとに蓄積するdQ/dV値蓄積のステップと、前記dQ/dV値が、設定した閾値以下になったとき、そのときの総放電容量に対するdQ/dV値の関係と、その前に取得した総放電容量に対するdQ/dV値の関係をプロットした点とに基づいて、その後の総放電容量に対するdQ/dV値を推定するdQ/dV値推定のステップとを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記dQ/dV値推定のステップにおいて推定したその後の総放電容量に対するdQ/dV値の関係において、設定した総放電容量に対するdQ/dV値が設定した閾値以下となった場合に、ニッケル水素蓄電池の放電レートを制限するようにすることができる。
【0013】
前記放電レートの制限は、設定した低SOCの領域で行われることが好ましい。また、前記設定した低SOCの領域が、SOC50[%]以下とすることができる。
前記ニッケル水素蓄電池の放電レートの制限後に前記dQ/dV値推定のステップにおいて推定したその後の総放電容量に対するdQ/dV値において、設定した総放電容量に対するdQ/dV値が設定した閾値以下となった場合に、ニッケル水素蓄電池の放電レートをさらに制限することができる。
【0014】
前記充電のステップにおいて、設定した低SOCが、20~40[%]とすることができる。前記充電のステップにおいて、設定したレートが、3C以下とすることができる。
本発明のニッケル水素蓄電池の制御装置では、電圧測定装置と、電流測定装置と、前記電圧測定装置により測定した電圧及び前記電流測定装置により測定した電流とに基づいてニッケル水素蓄電池の充放電の制御を行う制御装置を備え、前記制御装置は、前記ニッケル水素蓄電池のSOCを取得するSOC取得のステップと、設定した低SOC以下に達したとき、設定したレートで前記ニッケル水素蓄電池を充電して電池容量と電池電圧OCVの関係を示す充電カーブを取得する充電のステップと、前記充電カーブを電圧変化に対する容量変化であるdQ/dVカーブに置換するdQ/dV化のステップと、総放電容量に対するdQ/dV値の関係を前記充電のステップごとに蓄積するdQ/dV値蓄積のステップと、前記dQ/dV値が、設定した閾値以下になったとき、そのときの総放電容量に対するdQ/dV値の関係と、その前に取得した総放電容量に対するdQ/dV値の関係に基づいて、その後の総放電容量に対するdQ/dV値を推定するdQ/dV値推定のステップとを実行することを特徴とする。
【0015】
前記ニッケル水素蓄電池は、車両の駆動用の電池であり、前記制御装置が車両に搭載された場合に好適に実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置は、容量低下を招くNiHの生成の予兆を検出するとともに、ニッケル水素蓄電池のNiHの生成を抑制するように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】正極内におけるNiHの存在比率(%)と、電池の容量比率(%)との関係を示すグラフである。
図2図2(a)は、ニッケル水素蓄電池の正極の正極活物質2の粒子22aの粒子表面22bの充電時の反応における酸素を示す模式図である。図2(b)は、放電時の正常な正極の主反応と、酸素が発生し局所的な「液枯れ」を起こした場合の異常な副反応を示す反応式である。
図3】ニッケル水素蓄電池の充放電カーブを示すグラフである。
図4】ニッケル水素蓄電池の充放電カーブにおける傾きをdQ/dVカーブで表したグラフである。
図5】本実施形態の強制充電の充電カーブを示すグラフである。
図6】本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御装置のブロック図である。
図8】従来のニッケル水素蓄電池の制御方法によるニッケル水素蓄電池の総放電容量[Ah]に対するdQ/dVを示すグラフである。
図9】(総放電容量[Ah])/(dQ/dV)のプロット点記憶(S9)の手順におけるプロット点の例を示すグラフである。
図10】直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量EA[Ah]を推定(S11)ための手順における直線を示すグラフである。
図11】「EA≦目標総放電容量SA(S12)」と判定され、「放電レートの制限(S13)」した後のニッケル水素蓄電池の総放電容量[Ah]に対するdQ/dVを示すグラフである。
図12】「放電レートの制限(S13)」した後に、プロットした点と、その直前の直近のプロット点2点に基づいた推定において、さらに「EA≦目標総放電容量SA(S12)」と判定され、さらに「放電レートの制限(S13)」した後のニッケル水素蓄電池の総放電容量[Ah]に対するdQ/dVを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本実施形態の原理>
以下、本発明のニッケル水素蓄電池の制御方法を、一実施形態を用いて図1~12を参照して説明する。
【0019】
<本実施形態の前提>
本実施形態のニッケル水素蓄電池の検査方法は、NiHの生成を検出することを目的としている。そのためにまず、NiHの生成の機序について説明する。
【0020】
<正極活物質の粒子の表面>
図2(a)は、ニッケル水素蓄電池の正極の正極活物質2の粒子22aの粒子表面22bの充電時の反応における酸素を示す模式図である。図2(b)は、放電時の正常な正極の主反応と、酸素が発生し局所的な「液枯れ」を起こした場合の異常な副反応を示す反応式である。
【0021】
<放電時の正極における主反応>
正極活物質2の粒子22aは、充放電によりNi(OH)とβ-NiOOHとの間で変化する。なお、説明の便宜上代表して正極活物質をNi(OH)として説明する場合がある。ニッケル水素蓄電池の放電時の正常な主反応は、以下の(1)式のように、HOの存在を前提に、β-NiOOHから、Ni(OH)とOHが生成される。この場合、電解液のHOは消費されて減少することになる。OHは、アルカリ電解液4のアルカリイオンとして働く。この場合は、イオンと電子のやり取りで、酸素Oや水素Hの気体が発生することはない。
【0022】
β-NiOOH+HO+e→Ni(OH)+OH……(1)
<副反応による酸素の発生及び「液枯れ」の発生>
使用状況により正極の電位が低くなることがある。そしてHOの電気分解の電位に達すると、副反応としてHOの電気分解が生じる。HOの電気分解では、正極では、以下の(2)式のような反応によりOが発生する。
【0023】
4OH→O+2HO+4e……(2)
図2(a)に示すように、正極活物質であるNi(OH)/β-NiOOHの正極活物質の粒子表面22bが充電により低い電位になると、上述した(2)式に示すような副反応を生じて、Oの気泡Aのように正極活物質の粒子表面22bに発生する。充電時の正極でOが発生すると、正極活物質の粒子表面22bにOの気泡Aが付着する。このOの気泡Aは、時間が経過すると、正極活物質の粒子表面22bから離脱する。そうすると気泡Aが離脱した場所は、アルカリ電解液4と接触し、HOやOHが供給される。
【0024】
ところが、その条件によっては、正極活物質の粒子表面22bに発生したOが気泡Bのように、正極活物質の粒子表面22bから離脱するのに時間がかかる場合がある。このように正極活物質の粒子表面22bに付着した気泡BのようなOの気泡はアルカリ電解液を局所的に遮断する。その結果、正極活物質の粒子表面22bのHOやOHを物理的に排除することとなり、その部分は、局所的な「液枯れ」となる。ここにはHOもOHも、物理的に存在しない。
【0025】
<「液枯れ」によるNiHの生成>
そうすると正常な反応では、図2(b)の式Aに示すように反応にHOが必要であるが、HOが供給されない「液枯れ」の場合、ニッケル水素蓄電池の放電時の異常な副反応が生じ、以下の(3)式のような反応となる。
【0026】
16β-NiOOH+4e→8NiH+2HO+O+4OH……(3)
つまり、HOを使わずに反応し、逆にHOを生成する。そしてそのときの生成物として、NiHと、Oと、OHとを生成する。このうち、Oは、時間が経過すると以下に示す(4)式のようにセパレータを介し、負極にてスムーズに吸収され(リコンビネーション反応)、密閉系を保っている。OHはアルカリ電解液4に戻る。
【0027】
4MH+O→4M+2HO……(4)
ここで、NiHについては、電気化学的に不活性な生成物であり、NiHが発生すると、不可逆的に蓄積され、電池抵抗の上昇や電池容量の低下を引き起こすことが問題とされている。そのため、NiHの発生は好ましくないとして通常では抑制される。
【0028】
<ニッケル水素蓄電池のメモリ効果>
次に、ニッケル水素蓄電池のメモリ効果について説明する。ニッケル水素蓄電池では、低SOCで繰り返し充放電されることでメモリ効果が発生することが知られている。メモリ効果が生じた電池系では、充電時に電圧が貴側にシフトする。その結果、同じSOCでも充電時に正極の電位が高くなることで、特にOが発生しやすくなる。その一方、放電時には放電カーブが卑側にシフトするため、低い正極電位となる。その結果、正極活物質の粒子表面22bで酸素が発生した場所で、瞬間的に局所的に液枯れが発生する。このHOが不足している状態で放電をすると、放電電圧が卑にシフトしている分、通常よりも低い正極電位へ滞在することでNiHの生成電位に近づく。このため、上記式(3)に示すように不足したHOを生成しようとする反応と同時にNiHが生成される。NiHが生成されると図1に示したように急激な容量低下を招く。
【0029】
<ニッケル水素蓄電池におけるNiH生成のメカニズム>
上述のように、ニッケル水素蓄電池において、NiHは、充電の際の正極の電位により充電の副反応で酸素Oの気体が発生し二次電池の内圧が上昇する。このOにより「液枯れ」が生じ、NiHが生成するメカニズムを解析した。
【0030】
本発明者は、充電の際の正極電位の低下が酸素発生の電位となり、かつ実際に酸素Oの気体が発生して内圧が高い状態のときに、「液枯れ」が生じるものと推定して、これを実証した。
【0031】
<車載のニッケル水素蓄電池のメモリ効果>
次に、車載のニッケル水素蓄電池のメモリ効果について説明する。電動機を搭載したハイブリッド自動車等は、駆動用のニッケル水素蓄電池に蓄えられた電力により、電動機を駆動している。このような二次電池においてニッケル水素蓄電池のようなアルカリ二次電池は、大電流の充放電が可能であることから車両用として広く普及している。このような車載のニッケル水素蓄電池は過酷な使用環境にさらされる場合がある。例えば、低SOC(State Of Charge)の状態で、充放電が繰り返される場合がある。例えばSOCが40%を切ったような場合には、モータジェネレータ17の駆動の余力がなくなる。そのため、制御装置10により例えばSOCが60%になるまで、エンジンを運転することにより、モータジェネレータ17により発電してニッケル水素蓄電池を短時間に急速充電する。このような使用環境では、メモリ効果が発生しやすいことが知られている。メモリ効果が発生すると電池の充電カーブが貴にシフトする。すなわち、同じSOCであっても正極電位が高くなる。一方、放電時には、電池の放電カーブが卑にシフトする。すなわち同じSOCであっても正極電位が低くなる。そうすると、上述したようなメカニズムで、「液枯れ」によるNiHの生成が起こりやすい。
【0032】
<車載のニッケル水素蓄電池に対する制御の必要性>
図2(b)に示したように、一旦NiHが発生すると不可逆的に蓄積され、図1に示すようにニッケル水素蓄電池の容量の低下が生じる。そのような容量が低下したニッケル水素蓄電池に対しては、その劣化に応じた制御をしなければ、さらに劣化が進行することになる。そこで、従来技術の説明で挙げた特許文献1のように、車載のニッケル水素蓄電池に対する制御により、NiHの発生を抑制するような発明が提案されている。
【0033】
<NiHの発生とニッケル水素蓄電池の容量減少>
しかしながら、一旦NiHが発生すると、不可逆的に蓄積される。そうすると、図1に示すようにメモリ効果と相まって、ますます容量低下が進む。容量低下が進むと、さらに電圧は貴側にシフトして、加速度的にNiHが生成しやすい環境となる。その結果図8に示すように、使用に伴って急激な電池の容量低下を招くことになる。このため、少量であってもNiHの発生しないように、その発生を予測し、制御により回避する必要がある。
【0034】
<使用によるニッケル水素蓄電池の劣化と充放電カーブ>
図3を参照して、使用履歴のない新品のニッケル水素蓄電池の充電カーブのグラフC0と、放電カーブのグラフD0を説明した。この充放電カーブは、使用による劣化に応じて変化する。
【0035】
<劣化と充電カーブ>
図3において、グラフC0は、未使用のニッケル水素蓄電池の充電時の充電カーブを示す。これに対して、グラフC1は、1800Ah使用したニッケル水素蓄電池の充電時の充電カーブを示す。グラフC2は、2920Ah使用したニッケル水素蓄電池の充電時の充電カーブを示す。グラフC3は、3070Ah使用したニッケル水素蓄電池の充電時の充電カーブを示す。グラフC4は、3080Ah使用したニッケル水素蓄電池の充電時の充電カーブを示す。
【0036】
グラフC1は、1800[Ah]の使用履歴があるニッケル水素蓄電池を充電したときの充電カーブを示す。なお、グラフC0~C4は、いずれも完全放電したSOC0[%]のモジュール電圧6.0[V]から充電レート1/3Cで、SOC100[%]の満充電まで充電する条件は同じである。充電ニッケル水素蓄電池は使用により活物質の劣化などによりその特性が変化する。グラフC1は、未使用のニッケル水素蓄電池の充電カーブC0と比較する。比較すると、SOC0[%]から充電を開始すると、およそモジュール電圧[V]が8.9[V]でSOC100[%]となる点では、グラフC0と大差はない。しかし、電池容量[Ah]の増加に対するモジュール電圧[V]の変化が異なる。充電開始直後から電池容量[Ah]が概ね2.7[Ah]では、グラフC1は、グラフC0よりモジュール電圧[V]は低く、概ね電池容量が2.7[Ah]を超すと、グラフC1は、グラフC0よりモジュール電圧[V]より高くなる。
【0037】
グラフの傾きを見ると、グラフC0では、変曲点IPc近傍で、概ね水平に近い傾きとなっている。一方、グラフC1では、一貫して一定以上の傾きを維持している。
<使用によるニッケル水素蓄電池の劣化とdQ/dVカーブ>
図4は、ニッケル水素蓄電池の充放電カーブにおける傾きをdQ/dVカーブで表したグラフである。図4に示すように、これらの傾きをdQ/dVカーブで表すと、グラフC0は、グラフRC0となり、グラフC1は、グラフRC1となる。
【0038】
ここで、グラフC0に基づくグラフRC0では、先に説明したように、モジュール電圧[V]が概ね8.35[V]で、dQ/dVの値が概ね+30のピークを示した。これに対し、グラフC1に基づくグラフRC1では、概ね8.3[V]近傍で、dQ/dVの値が概ねdQ/dV=+7程度の極めてなだらかなピークを示す。
【0039】
また、図3に示すグラフC2は、2920[Ah]の使用履歴があるニッケル水素蓄電池を充電したときの充電カーブを示す。この場合は、充電初期でグラフC1よりも、より高いモジュール電圧[V]を示す。さらにグラフC3は、3070[Ah]の使用履歴を有するが、充電初期でグラフC2よりも、さらに高いモジュール電圧[V]を示す。そして、グラフC4では、さらに早いタイミングで、グラフC3よりさらに高いモジュール電圧[V]を示す。
【0040】
以上のように、使用履歴において、多くの電流量での充放電を繰り返したものは、活物質の劣化が進み、少ない電池容量[Ah]で、モジュール電圧[V]が高くなっていることが確認できる。このことは、同じ電池容量[Ah]を充電しても、劣化したニッケル水素蓄電池のSOC[%]は、より高くなっていることがわかる。また、劣化したニッケル水素蓄電池では、より高いSOC[%]となりやすい。このことは、ニッケル水素蓄電池内で、酸素が発生しやすい電位となり、NiHが生成しやすい環境となることを意味する。
【0041】
例えば、グラフC0とグラフC1では、使用履歴は0[Ah]から1800[Ah]と1800[Ah]だけ多くの充放電を繰り返しているが、同じ電気容量[Ah]におけるモジュール電位[V]は大きくは異ならない。しかしながらグラフC3とグラフC4では、使用履歴は3070[Ah]から3080[Ah]の僅か10[Ah]しか充放電を行っていないのに拘わらず、あきらかなモジュール電圧[V]の上昇が確認できる。つまり、ニッケル水素蓄電池の劣化は、使用履歴が長くなって一旦劣化が進み始めると、加速度的に劣化が進み、急激な容量低下が引き起こされることが理解できる。
【0042】
<本実施形態のdQ/dV>
図5は、本実施形態の強制充電の充電カーブを示す模式的なグラフである。本実施形態では、ニッケル水素蓄電池のSOCが40[%]を切った場合に、残容量を確保するために、SOCが60[%]になるまで、車両の制御装置により自動的に充電レートを3Cと一定にして強制充電が行われる。ここでは、このSOC40[%]からSOC60[%]のdQ/dVの平均値を充電のステップにおけるdQ/dV値とする。すなわちSOC60[%]とSOC40[%]の容量の差を、SOC60[%]のOCVであるV60[V]とSOC40[%]のOCVであるV40[V]の電圧の差で除した値である。このように、充電開始のSOCと充電終了のSOCと、充電レート3Cと一定の条件でdQ/dV値を取得する。このため、ここで取得したdQ/dV値は、時系列で比較することができる。つまり、正確に劣化の変化を検出することができる。
【0043】
このdQ/dV値も、上述のとおり、ニッケル水素蓄電池にNiHが生成すると、低下する。
<本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法の原理>
ここで、以上のような知見から本発明者らが見出した本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法の原理をまとめると、以下のとおりである。まず、強制充電という一定の条件におけるニッケル水素蓄電池の低SOCでの充電カーブを取得し、ここからdQ/dVを算出する。本発明者らは、このdQ/dV値に基づいてニッケル水素蓄電池におけるNiHの生成を推定することができることを見出した。また、本発明者らは、さらなるNiHの生成は、低SOC時の急激な放電時における酸素の発生が大きな原因であることを突き止めた。これに基づき推定したニッケル水素蓄電池の劣化に応じて、低SOC時の放電レートを適切に制限することで、急激な劣化を回避し、必要なニッケル水素蓄電池の寿命を確保する。
【0044】
(本実施形態の構成)
<ニッケル水素蓄電池>
以下、本実施形態の前提となるニッケル水素蓄電池について簡単に説明する。本実施形態のニッケル水素蓄電池は、ハイブリッド自動車等の車両の駆動用の電源として用いられる車載電池である。車両に搭載されるニッケル水素蓄電池として所要の電力容量を得るべく、複数の密閉型電池である単電池を電気的に直列接続して構成された電池モジュールからなる電池である。本実施形態におけるOCV(Open Circuit Voltage、開放電池電圧)は、電池モジュールのモジュール電圧を意味する。
【0045】
電池モジュールは、複数の単電池を収容可能な一体電槽と、この一体電槽を封止する蓋体とによって構成される直方体状の角形ケースを有している。なお、この角形ケースは、樹脂製のものを用いることができる。
【0046】
角形ケースを構成する一体電槽は、アルカリ性の電解液に対して耐性を有する合成樹脂材料、例えばポリプロピレンやポリエチレン等により構成されている。そしてこの一体電槽の内部には、複数の単電池を区画する隔壁が形成されており、この隔壁によって区画された部分が、単電池毎の電槽となる。一体電槽は、例えば、6つの電槽を有する。
【0047】
<極板群の構成>
区画された電槽内には、極板群と、その両側に接合された正極の集電板及び負極の集電板とが電解液とともに収容されている。極板群は、矩形状の正極板及び負極板がセパレータを介して積層して構成されている。各々隣接する電槽の極板群は電気的に直列接続されている。直列接続された極板群、すなわち複数の単電池の総出力が正極の接続端子及び負極の接続端子から取り出される。
【0048】
<正極板>
正極板は、基材となる正極基材として、多孔性金属であるNi若しくはNi合金からなる発泡ニッケル三次元多孔体が用いられる。正極基材は、立体的な網状の構造を有した骨部と、この骨部に囲まれた孔部を有する。正極基材は、例えば発泡ウレタンのウレタン骨格表面にニッケルメッキを施した後、発泡ウレタンを焼失させて製造される。正極板は、Ni(OH)及びCoを活物質として含有している正極合材層を備えている。詳しくは、粒状の水酸化ニッケルに、水酸化コバルトや金属コバルト粉末などの導電剤、そして必要に応じてカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤を適量加えてまずはペースト状に加工する。その後、こうしてペースト状になった加工物を、正極基材の網目状の孔部に充填して正極合材層を形成する。その後、これを乾燥、圧延、切断することによって板状の正極板を形成する。
【0049】
<負極板>
負極板は、例えば、ランタン、セリウム、及びネオジム等の希土類元素の混合物であるミッシュメタル、ニッケル、アルミニウム、コバルトおよびマンガンを構成要素とする水素吸蔵合金を活物質として構成されている。これも詳しくは、この水素吸蔵合金にカーボンブラックなどの導電剤、そして必要に応じてカルボキシメチルセルロースなどの増粘剤や、スチレン-ブタジエン共重合体などの結着剤を添加してまずはペースト状に加工する。その後、こうしてペースト状に加工された水素吸蔵合金を、パンチングメタル(活物質支持体)などの芯材に塗布あるいは充填した後、これを乾燥、圧延、切断することによって同じく板状の負極板を形成する。
【0050】
<セパレータ>
セパレータとしては、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の不織布、もしくは必要に応じてこれにスルフォン化などの親水処理を施したものを用いることができる。
【0051】
本実施形態のニッケル水素蓄電池の電池モジュールは以上のような構成を備えている。
<本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御装置>
次に、本実施形態の前提となるニッケル水素蓄電池の制御装置の一例について簡単に説明する。ニッケル水素蓄電池の急激な劣化の兆候を検出し、制御できる本実施形態の制御方法は、駆動用として車載のニッケル水素蓄電池において好適に適用することができる。そこで、ここではそのような車載の駆動用二次電池としてのニッケル水素蓄電池の制御装置について簡単に説明する。
【0052】
<ニッケル水素蓄電池の制御装置10>
図7は、本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御装置10のブロック図である。図7を参照して、ニッケル水素蓄電池の制御装置10について説明する。なお、ここでは、ニッケル水素蓄電池は、電池モジュール90を収容した電池パックの状態で制御する。
【0053】
<制御装置10>
電池制御装置である制御装置10は、車両に搭載し、いわゆるオンボードでリアルタイム又は蓄積データに基づいて車両の電池モジュール90を制御することができる。この制御装置が本発明の前記電圧測定装置により測定した電圧及び前記電流測定装置により測定した電流に基づいてニッケル水素蓄電池の充放電の制御を行う制御装置に相当する。
【0054】
制御装置10は、発電機としてのモータジェネレータ17からの電流を、電池モジュール90を充電させる充電装置としてのインバータ20を制御して充電する。また、制御装置10は、負荷となる駆動用モータとしてのモータジェネレータ17に、電池モジュール90からの電流を電力供給装置としてのインバータ20を制御して放電する。
【0055】
制御装置10は、電池モジュール90の電流を測定する電流検出器21と、電池モジュール90の端子間電圧を測定する電圧検出器22と、電池モジュール90の温度を測定する温度検出器23とを備えている。この電流検出器21が本発明の電流測定装置に相当する。電圧検出器22が本発明の電圧測定装置に相当する。
【0056】
温度検出器23は、温度センサを備えている。温度センサは、電池モジュール90のうちの対応する単電池の極板群の近傍の温度を測定するとともに、測定した温度値を制御装置10に電気信号で出力する。
【0057】
<制御部11>
制御装置10の制御部11は、制御装置10全体の制御を行うCPU、RAM、ROM、インタフェイスを備えたコンピュータとして構成されている。
【0058】
<情報取得部12>
情報取得部12は、逐次電流検出器21から充放電電流値を取得し、電圧検出器22から電圧値を取得し、温度検出器23から電池温度を取得して記憶する。
【0059】
<記憶部13>
記憶部13は、制御装置10のプログラムや、必要なデータが記憶される記憶媒体を備える。プログラムは、図6に示すフローチャートを実行するプログラムを備える。
【0060】
また、記憶部13には、制御の前提のデータとして、dQ/dV値の「閾値」などが予め記憶されている。
<dQ/dV算出部14>
dQ/dV算出部14は、充放電制御部16により充放電された電池モジュール90から、電池容量[Ah]の変化を推定し、かつモジュール電圧であるOCV[V]とから充電カーブを生成する。この場合、電池容量[Ah]は、車載の電池であるので、SOC0[%]の完全放電からSOC100[%]の満充電までの充放電で、正確に電池容量[Ah]を測定することは困難である。そこで車両の運用上問題が生じにくいSOC[%]の範囲で、電池容量[Ah]を推定する。本実施形態では、SOCが40[%]の低SOCになったときに、充電レートを3Cと一定にし、SOC60[%]まで強制充電する車両の電池制御を利用してdQ/dV値を取得している。このため、時系列で同じ条件で取得したdQ/dV値を比較して、ニッケル水素蓄電池の劣化を検出することが可能となっている。
【0061】
<判定部15>
判定部15ではdQ/dV値算出14で算出したdQ/dV値を予め記憶してある閾値と比較して、車載のニッケル水素蓄電池が設定した寿命が全うできるか否かを判定する。また、制御部11は、dQ/dV値により推定したNiHの生成量に応じて、電池モジュール90の低SOC時の放電の条件を制限することで、ニッケル水素蓄電池の急激な劣化を抑制する。この手順で車両の運用に支障が出ないように、ニッケル水素蓄電池の延命を図り、設定した電池寿命が全うできるように制御する。
【0062】
<充放電制御部16>
充放電制御部16は、電池モジュール90の電圧を監視して、SOCが閾値である40[%]より低下している場合は、モータジェネレータ17により発電してインバータ20を介し、充電レートを3CでSOC60[%]となるまで電池モジュール90を充電する。本実施形態では、車両の電池制御自体を利用して、一定の条件で充電したときの充電カーブを取得する。そして、ここからdQ/dV値を取得することで、時系列に比較可能なdQ/dV値を取得するところに技術的な特徴がある。
【0063】
一方、充放電制御部16は、その他の通常の制御として車両の制動時にモータジェネレータ17からの回生電流を、インバータ20を介して供給することで電池モジュール90を充電する。この場合、充放電制御部16は、過大な電流や、電池モジュール90のSOCが高すぎる場合は、充電を制限する。このときの閾値などは、記憶部13に記憶されている。また、本実施形態では、NiHが生成されないように、正極の電位をOが発生しないような電位になるように充放電を制御する。
【0064】
一方、充放電制御部16は、車両の駆動時では、車両のECU(Electronic Control Unit)からの指令で、電池モジュール90から必要な電流を、インバータ20を介しモータジェネレータ17に供給する。
【0065】
特に、判定部15で、ニッケル水素蓄電池の劣化が検知された場合は、充放電制御部16は、低SOC時における急速な放電を回避するなどして、急激なNiHの生成を抑制する。
【0066】
<本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法の手順>
図6は、本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法の手順の一例を示すフローチャートである。次に、本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法により、NiHの発生を予測し、制御によりNiHの発生を回避することができる手順の概略について図6のフローチャートを参照して説明する。
【0067】
<手順の概略>
まず、事前準備として「閾値設定のステップ(S1)」により、制御対象となるニッケル水素蓄電池の特性に合わせて、適切な閾値を設定する。次に、車両の運用において、「SOC推定(S2)」により、制御の基礎となるSOCを取得する。そして「SOC≦40%?(S3)」により、現在のSOCが、低SOCの状態かを否かを判断する。もし、低SOCであれば、「強制充電・充電カーブ取得(S4)」において、ニッケル水素蓄電池の残容量を回復するため、強制充電を行いながら、そのときの充電電力量とニッケル水素蓄電池のOCVを取得する。そして「SOC推定(S5)」の手順でSOCを監視しながら、「SOC>60%?(S6)」となったら、「充電終了(S7)」とする。
【0068】
「取得した充電カーブからdQ/dVを算出(S8)」とともに、「(総放電容量[Ah])/(dQ/dV)のプロット点記憶(S9)」を行う。
もしも、「dQ/dV≦T(S10)」となったら、「直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量EA[Ah]を推定(S11)」行う。その結果、「EA≦目標総放電容量SA(S12)」であれば、現在の制御では、対象となるニッケル水素蓄電池が、目標総放電容量[Ah]まで、寿命が持たないことが予測される。この予測に基づき「放電レートの制限(S13)」を行うことで、ニッケル水素蓄電池の劣化を抑制する。
【0069】
この後、再びS2~S12での手順で、放電レートを制限した制御でも、対象となるニッケル水素蓄電池が、目標総放電容量[Ah]まで、寿命が持たないことを予測した場合は、再度「放電レートの制限(S13)」を行う。この手順の繰り返しにより、ニッケル水素蓄電池が、目標総放電容量[Ah]まで、寿命を持たせるように放電レートを制限した制御を行う。以下、各手順について詳細に説明する。
【0070】
<閾値設定のステップ(S1)>
予め、使用するニッケル水素蓄電池の特性を取得する。ここでは、図3に示すようなSOC0[%]からSOC100[%]までの完全放電から満充電までの充電カーブを取得して、これを図4に示すようなdQ/dVカーブにして、そのニッケル水素蓄電池の劣化度を測定する。そして、これらの劣化度とdQ/dV値との関係に基づいて、閾値を決定する。なお、本実施形態では、SOC40~60[%]において充電レート3Cで強制充電したときのdQ/dV値を閾値とする。
【0071】
総放電容量[Ah]に対してdQ/dV値が急激に低下し始めるdQ/dV値を、「警戒閾値T」として設定する。例えば、本実施形態では、dQ/dV=40とした。この警戒閾値Tより小さいとNiHが発生する可能性が高くなる。
【0072】
また、ニッケル水素蓄電池の限界を示すdQ/dV値を「限界閾値T」として設定する。例えば、本実施形態では、dQ/dV=20とした。dQ/dV値が、この「限界閾値T」より小さいと、NiHが急激に発生する恐れがある。
【0073】
また、ニッケル水素蓄電池の目標とする総放電容量を、「目標総放電容量SA」として設定する。これは、車両に搭載したときの電池に期待される余寿命となる。本実施形態では、目標総放電容量SA=4000[Ah]に設定されている。
【0074】
<SOC推定(S2)>
制御装置10は、電圧検出器22からの電圧OCVに基づいて、現在のSOCを推定する。なおこの手順が本発明の「SOC取得のステップ」に相当する。
【0075】
<SOC≦40[%]?(S3)>
制御装置10は、取得したSOCが、「SOC≦40[%]」であるか否かを判定する。すなわち、ニッケル水素蓄電池が設定した低SOCとなり、強制充電の必要があるどうかを判断する。ここで、「SOC≦40[%]」ではない場合は、(S3:NO)SOCの推定(S2)により、監視を続ける。一方、の場合は、「SOC≦40[%]」の場合は(S3:YES)、強制充電(S4)を行う。
【0076】
<強制充電・充電カーブ取得(S4)>
図3は、強制充電(S4)における充電カーブの一例を示すグラフである。この手順が本発明の「充電のステップ」に相当する。本実施形態の場合は、強制充電(S4)は図7において、図示しない内燃機関により、モータジェネレータ17により発電し、これをインバータ20により直流電流として電池モジュール90をSOC60[%]になるまで充電する。このときの充電レートは充放電制御部により3Cとなるように一定に調整される。
【0077】
この強制充電の実行中は、電流検出器21、電圧検出器22により取得した電流、電圧に基づいてdQ/dV算出部14が開放電池電圧OCVと、SOCとの関係である充電カーブを算出して、記憶部13に記憶する。
【0078】
<SOC推定(S5)>
dQ/dV算出部14は、開始した強制充電の進行に応じて、そのときのSOCを逐次推定する。
【0079】
<SOC>60[%]?(S6)>
ここで、「SOC>60[%]」か否かが判断される(S6)。すなわち、ニッケル水素蓄電池が低SOCを脱したか否かを判定する。ここで、「SOC>60[%]」ではないと判断された場合は(S6:NO)、まだ、低SOCを脱していないとして、強制充電が(S4)が継続される。一方、「SOC>60[%]」であると判断された場合は(S6:YES)、ニッケル水素蓄電池が低SOCを脱したものと判断される。
【0080】
<充電終了(S7)>
「SOC>60[%]」であると判断され(S6:YES)、ニッケル水素蓄電池が低SOCを脱したものと判断された場合は、強制充電(S4)を終了する(S7)。
【0081】
<取得した充電カーブからdQ/dVを算出(S8)>
図5に示すように、強制充電(S4)の間、ニッケル水素蓄電池のOCVの増加分V60-V40=ΔV[V]と、ニッケル水素蓄電池の容量の増加分ΔQ[Ah]とが算出される。そして、dQ/dV算出部14は、その強制充電中のΔQ[Ah]をΔV[V]で除することで、その強制充電(S4)中の平均dQ/dV値を算出し、記憶部13に記憶する。この手順が本発明の「dQ/dV化のステップ」に相当する。
【0082】
<(総放電容量[Ah])/(dQ/dV)のプロット点記憶(S9)>
図9は、(総放電容量[Ah])/(dQ/dV)のプロット点記憶(S9)の手順におけるプロット点の例を示すグラフである。縦軸はdQ/dV[Ah/V]を示し、横軸は、総放電容量[Ah]を示す。
【0083】
図9に示すように、例えば、使用開始からは初めての強制充電時は、総放電容量[Ah]と、dQ/dV値との関係を蓄積する。すなわち、(総放電容量[Ah],(dQ/dV))=(0,60)のプロット点Pをプロットする。また、次のプロット点Pは、概ね(300,51)、次のプロット点Pは、概ね(700,43)である。次のプロット点Pは、概ね(1100,34)である。なお、実際には、図9に記載できないほど多くのプロット点をプロットするが、図9においては、考え方の説明のため、極端に省略している。この手順が本発明の「dQ/dV値蓄積」のステップに相当する。
【0084】
<dQ/dV≦T?(S10)>
つぎに、「dQ/dV≦T」であるか否かの判定をする(S10)。つまり、dQ/dV値が、使用による劣化に基づいて、警戒閾値Tに達しているか否かが判定される。「dQ/dV≦T」ではない場合は(S10:NO)、そのまま、S2~S9までの手順を繰り返す。「dQ/dV≦T」である場合は(S10:YES)、次のS11の手順に進む。
【0085】
本実施形態では、警戒閾値Tは、dQ/dV=40に設定している。ここで、図9に示すプロット点Pは、概ね(700,43)であるので、警戒閾値Tである40には達していない。次のプロット点Pは、概ね(1100,34)であるので、警戒閾値Tである40を下回っている。
【0086】
<直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量EA[Ah]を推定(S11)>
「dQ/dV≦T」である場合は(S10:YES)、直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量EA[Ah]を推定する(S11)。ここで「限界閾値T」は、電池性能を最低限満たすためのdQ/dV値である。dQ/dV値が、限界閾値Tを下回ると、そのニッケル水素蓄電池は、十分な性能を発揮できなくなる。
【0087】
図10は、直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量EA[Ah]を推定(S11)ための手順における予想直線Lを示すグラフである。ここでは、図9に示すプロット点Pが、警戒閾値Tである40を下回ったプロット点である。また、プロット点Pがその直前にプロットしたプロット点である。そこで、このプロット点Pと、プロット点Pを結ぶ直線を予想直線Lとする。この予想直線Lを延ばしていくと、限界閾値Tに達する。このときの総放電容量[Ah]を推定総放電容量EA[Ah]とする。
【0088】
図10に示す例であると、推定総放電容量EA[Ah]は、概ね1800[Ah]となる。つまり、現在のニッケル水素蓄電池に許容された放電レートが3Cに制御されているとすると、この制御のままでは、総放電容量[Ah]が1800[Ah]になった段階で、ニッケル水素蓄電池が使用できなくなるという推定ができる。この手順が本発明の「dQ/dV値推定のステップ」に相当する。
【0089】
<EA≦目標総放電容量SA?(S12)>
次に、「EA≦目標総放電容量SA」であるか否かが判定される(S12)。「EA≦目標総放電容量SA」でないと判定された場合は(S12:NO)、そのまま、S2~S11までの手順を繰り返す。一方、「EA≦目標総放電容量SA」である場合は(S12:YES)、次の放電レートの制限の手順(S13)に進む。
【0090】
ここで、本実施形態の目標総放電容量SAは、4000[Ah]に設定されている。一方、S11で推定された推定総放電容量EA[Ah]は、概ね1800[Ah]であった。すなわち、現在のニッケル水素蓄電池の制御では、総放電容量[Ah]が1800[Ah]になった段階で、ニッケル水素蓄電池が使用できなくなると推定されるため、目標とする目標総放電容量SAである4000[Ah]には到達できないことを意味する。
【0091】
<放電レートの制限(S13)>
図10に示すように、現在のニッケル水素蓄電池の制御、すなわち放電レートを3Cまで許容する方法では、総放電容量[Ah]が1800[Ah]になった段階で、ニッケル水素蓄電池が使用できなくなると推定される。そこで、現在の放電レートを3Cまで許容する制御方法を変更する必要がある。
【0092】
そこで、NiHの生成は低SOC時にハイレートで放電することで生成しやすいことを本発明者らは、実験により確かめている。そこで、例えばSOC50%以下の場合は現在の放電レートである3Cを、それより低い放電レート、例えば2Cに制限する(S13)。
【0093】
図11は、「EA≦目標総放電容量SA(S12)」と判定され、「放電レートの制限(S13)」した後のニッケル水素蓄電池の総放電容量[Ah]に対するdQ/dVを示すグラフである。これまで放電レートを3Cまで許容する制御では将来予想直線Lのような推移を辿るものと考えられる。そこでSOC50%以下での放電レートを例えば2Cに制限すると、ニッケル水素蓄電池の劣化は、予想直線Lのようになると予想される。しかしながら実際にはこの段階ではどのような劣化をするかは不明である。そこで、本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法では、ここで改めて「SOCの推定(S2)」に戻り、「直近のプロット点2点に基づいてdQ/dV=Tとなる総放電容量SA」となるか否かのステップ(S11)までの手順を行う。
【0094】
図12は、「放電レートの制限(S13)」した後に、プロットしたプロット点Pと、その直前の直近のプロット点Pの2点に基づいた推定を示す。さらに、「EA≦目標総放電容量SA(S12)」と判定された状態を示す。そして、「放電レートの制限(S13)」した後のニッケル水素蓄電池の総放電容量[Ah]に対するdQ/dV値を示すグラフである。
【0095】
そして、新たに取得したプロット点Pと、その直前のプロット点Pとで、予想直線Lを得る。図11の段階では、放電レートの制限(S13)により、劣化を抑制することができたと予想できるが、予想直線Lはまだ得られていない。放電レートの制限(S13)後の新たなプロット点Pを取得した段階(S9)で、初めて予想直線Lを取得することができる(S11)。
【0096】
図12に示すように、プロット点Pとプロット点Pに基づいて取得した予想直線Lによれば、推定総放電容量EA[Ah]は、概ね2600[Ah]となる。つまり、現在のニッケル水素蓄電池に許容された放電レートが制限されて2Cに制御されている。この制御のままでは、総放電容量[Ah]が2600[Ah]になった段階で、ニッケル水素蓄電池が使用できなくなるという推定ができる(S11)。
【0097】
その結果、推定総放電容量EA[Ah]である2600[Ah]は、目標総放電容量SAである4000[Ah]に満たない(S12:NO)。そのため、再度放電レートの制限(S13)が行われて、SOC50%以下での放電レートが2Cに制限されていたものが、さらに制限されて例えば1Cに制限される。
【0098】
このような場合、再び次のプロット点を得た場合に、例えば予想直線Lが得られ、推定総放電容量EA[Ah]が目標総放電容量SAである4000[Ah]を超えるものとなっている。このように、推定総放電容量EA[Ah]が目標総放電容量SAである4000[Ah]とならないように、上記手順が繰り返される。
【0099】
(本実施形態の作用)
本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法の作用は以下のとおりである。まず、ニッケル水素蓄電池の低SOCであるSOC40[%]から、充電レート3CでSOC60[%]まで強制充電が行われる。この強制充電における充電カーブを取得し、ここからdQ/dVを算出する。この一定の充電条件の強制充電においてdQ/dV値を取得することで、時系列でdQ/dV値を比較することができる。そのため、ニッケル水素蓄電池におけるNiHの生成を正確に推定することができる。また、さらなるNiHの生成は、低SOC時の急激な放電時における酸素の発生が大きな原因である。そこで、推定したニッケル水素蓄電池の劣化に応じて、SOC50[%]以下の放電レートを適切に段階的に制限する。このような制御を行うことで、車載のニッケル水素蓄電池において急激な劣化を回避し、必要なニッケル水素蓄電池の寿命を確保するという作用を奏する。
【0100】
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態のニッケル水素蓄電池の制御方法及び制御装置は、容量低下を招くNiHの生成を正確に推定し、劣化の予兆を正確に検出することができる。
【0101】
(2)また、正確に検出した劣化の予兆に基づいて、その後におけるニッケル水素蓄電池のNiHの生成を抑制するように制御することができる。このため、急激な容量低下を回避することができる。
【0102】
(3)発明者らはNiHの生成は、低SOC時の急激な放電時における酸素の発生が大きな原因であることを突き止めた。このため、制御は低SOC(例えば50%以下)における放電レートを制限することで行われる。このため、高SOC(例えば50%を超えるSOC)では、放電の制限が行われないため、車載のニッケル水素蓄電池のような場合は、走行に与える影響を小さくできる。
【0103】
(4)このような制御は、ニッケル水素蓄電池のOCVがわかれば可能であるため、ハイブリッド車に車載された駆動用のニッケル水素蓄電池でも容易に制御できる。
(5)制御はリアルタイムで、繰り返し行われるため、急に車両の運用が停止するような事態を回避できる。
【0104】
(6)特に、「強制充電」という充電条件が一定の充電カーブに基づいてdQ/dV値を算出する。そのため、dQ/dV値を時系列で正確に比較することができる。このため、ニッケル水素蓄電池のわずかな劣化の変化も、予兆として見逃すことが無いという効果がある。
【0105】
(変形例)
上記実施形態は、以下のようにしても実施することができる。
○実施形態では、プロット点Pと、直前のプロット点Pn-1に基づいて予想直線Lを生成した。しかしこれに限定されず、直前に限らず、例えば時間に基づいて2点を選択したり、dQ/dVに基づいて選択したりしてもよい。
【0106】
○また、プロット点の選択は2点に限らず、3点以上選択して、これらを最小二乗法などで予想直線Lを求めてもよい。
○さらに、上記実施形態では、可視的な説明のため、総放電容量[Ah]-dQ/dVのグラフ上においてプロット点Pを選択して、予想直線Lを求めている。しかし、これに限定されず、当然グラフ自体の作成は必要ではなく、制御装置10の内部で演算されて制御される態様が含まれるのは言うまでもない。
【0107】
○本実施形態に例示されたdQ/dV、OCV[V]、SOC[%]、総放電容量[Ah]などの数値範囲は一例である。本発明はこれに限定されるものではなく、当業者により対象となるニッケル水素蓄電池の構成や特性に応じて適宜最適化がなされるものである。
【0108】
○閾値は、安全度を見込み適宜マージンを持って設定することができる。
図7に示す制御装置10は、一例であり、このような構成に限定されるものではない。制御装置10は、車両のECUによってその機能を行ってもよい。また、電池パック内に独立して設けることもできる。
【0109】
〇本実施形態では、ハイブリッド車(HV)に搭載されるニッケル水素蓄電池を一例に、本発明を説明したが、ハイブリッド車(HV)に限らず、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PVH)、燃料電池車(FV)などでも実施できる。さらに船舶用、航空機用の電池にも好適に適用できる。さらに、定置用の電池に応用することも可能である。
【0110】
図6に示すフローチャートは、本実施形態の実施の一例であり、当業者によりその手順の順序を変更し、手順を付加し、削除し、又は変更して実施することができることは言うまでもない。
【0111】
○本発明は、実施形態に記載されていない場合でも、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で、当業者によりその構成を付加し、削除し、又は変更して実施することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0112】
A…気泡
B…気泡
2…正極活物質
22a…粒子
22b…粒子表面
4…アルカリ電解液
10…制御装置
11…制御部
12…情報取得部
13…記憶部(プログラム、マップ等)
14…dQ/dV算出部
15…判定部
16…充放電制御部
17…モータジェネレータ
20…インバータ
21…電流検出器
22…電圧検出器
23…温度検出器
24…電池パック
90…電池モジュール
…警戒閾値
…限界閾値
EA…推定総放電容量
SA…目標総放電容量
OCV…開放電池電圧
P、P、P、~P…プロット点
L、L、L、L…予想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12