(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119274
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230821BHJP
H02H 7/122 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02H7/122
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022081
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】513256675
【氏名又は名称】ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宮城 史朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 和隆
(72)【発明者】
【氏名】熊木 哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】青砥 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 悠
【テーマコード(参考)】
5G053
5G066
【Fターム(参考)】
5G053AA01
5G053EB01
5G053EB09
5G053FA01
5G066AA06
5G066AE09
5G066HB06
5G066KA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】日射量の変動を考慮して電力変換装置を制御する制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】太陽光発電装置が出力した直流電力に基づいて負荷に供給する交流電力を発生させるパワーコンディショナを制御する制御装置1であって、電力系統からの受電電力に基づいて、パワーコンディショナに発生させる電力を制御するための出力指令値を決定する指令値決定部143と、太陽光発電装置が受ける日射量又はパワーコンディショナの出力電力の少なくともいずれかに基づいて、出力指令値の上限値を決定する上限値決定部142と、を有する。指令値決定部は、決定した出力指令値が上限値以下である場合には出力指令値をパワーコンディショナに通知し、決定した出力指令値が上限値より大きい場合には上限値をパワーコンディショナに通知する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電装置が出力した直流電力に基づいて負荷に供給する交流電力を発生させる電力変換装置を制御する制御装置であって、
電力系統からの受電電力に基づいて、前記電力変換装置に発生させる電力を制御するための出力指令値を決定する指令値決定部と、
前記太陽光発電装置が受ける日射量又は前記電力変換装置の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、前記出力指令値の上限値を決定する上限値決定部と、
を有し、
前記指令値決定部は、決定した前記出力指令値が前記上限値以下である場合には前記出力指令値を前記電力変換装置に通知し、決定した前記出力指令値が前記上限値より大きい場合には前記上限値を前記電力変換装置に通知する、
制御装置。
【請求項2】
前記上限値決定部は、前記太陽光発電装置が受ける日射量に基づいて前記上限値を決定する場合に、前記電力変換装置の定格容量と、現在の日射量のもとで前記太陽光発電装置が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて前記上限値を決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記上限値決定部は、前記電力変換装置の出力電力に基づいて前記上限値を決定する場合に、前記電力変換装置の定格容量に対する前記電力変換装置の現在の出力電力の比率である動作率に所定の余裕率を加えた値を前記上限値に決定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記上限値決定部は、前記受電電力の目標値と、前記受電電力の実測値との差分に基づいて決定した前記余裕率を使用する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記上限値決定部は、所定の期間内における前記電力変換装置の前記動作率の変動が大きいほど前記余裕率を小さくする、
請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記上限値決定部は、時期又は天候と前記余裕率とが関連付けられたデータを参照することにより、現在の時期又は天候に対応する前記余裕率を使用する、
請求項3から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記上限値決定部が前記上限値を決定する方法の選択を受け付ける受付部をさらに有し、
前記上限値決定部は、
現在の日射量を用いる方法の選択を前記受付部が受け付けた場合に、前記電力変換装置の定格容量と、現在の日射量のもとで前記太陽光発電装置が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて前記上限値を決定し、
現在の日射量を用いる方法の選択を前記受付部が受け付けない場合に、前記電力変換装置の定格容量に対する前記電力変換装置の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を前記上限値に決定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記上限値決定部は、
所定の期間内における前記太陽光発電装置に対する日射量の変動の大きさが所定の閾値以上である場合に、前記電力変換装置の定格容量と、現在の日射量のもとで前記太陽光発電装置が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて前記上限値を決定し、
所定の期間内における前記太陽光発電装置に対する日射量の変動の大きさが所定の閾値未満である場合に、前記電力変換装置の定格容量に対する前記電力変換装置の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を前記上限値に決定する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記指令値決定部は、前記電力変換装置の応答性能を示す応答性能データを参照することにより、前記電力変換装置の出力電力が変化する際のオーバーシュート及びアンダーシュートが所定量以下になるように前記出力指令値を決定する、
請求項1から8のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記指令値決定部は、前記受電電力の実測値と、前記受電電力の目標値との関係に基づいて、前記電力変換装置の出力電力が増加するか減少するかを判定し、前記出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データ又は前記出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データのうち判定した結果に基づいて選択した前記応答性能データを参照する、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記指令値決定部は、前記受電電力の変化量に基づいて、前記電力変換装置の出力電力が増加するか減少するかを判定し、前記出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データ又は前記出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データのうち判定した結果に基づいて選択した前記応答性能データを参照する、
請求項9に記載の制御装置。
【請求項12】
前記指令値決定部は、前記受電電力の最新実測値から前記受電電力の目標値を減算した第1差分値と、前記受電電力の最新実測値から前記受電電力の前回実測値を減算した第2差分値とを加算した結果が正の値を示す場合に、前記出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データを前記応答性能データとして使用し、前記結果が負の値を示す場合に、前記出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データを前記応答性能データとして使用する、
請求項9から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項13】
前記指令値決定部は、電力系統からの受電電力が閾値以下になった場合に、当該電力系統に電力を出力することを阻止するためのリレーの動作時限に基づいて、現在の前記出力指令値よりも小さな前記出力指令値を前記電力変換装置に通知するか、前記電力変換装置に出力を停止させる指示を通知するかを決定する、
請求項1から11のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項14】
コンピュータが実行する、
電力系統からの受電電力に基づいて、太陽光発電装置が出力した直流電力に基づいて負荷に供給する交流電力を発生させる電力変換装置に発生させる電力を制御するための出力指令値を決定するステップと、
前記太陽光発電装置が受ける日射量又は前記電力変換装置の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、前記出力指令値の上限値を決定するステップと、
決定した前記出力指令値が前記上限値以下である場合には前記出力指令値を前記電力変換装置に通知し、決定した前記出力指令値が前記上限値より大きい場合には前記上限値を前記電力変換装置に通知するステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置を制御するための制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池の発電電力を制御する装置が知られている。特許文献1には、消費電力に基づいて定められた上限値以下に発電電力がなるように電力変換装置(パワーコンディショナ)を制御することで逆潮流を回避する発電制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽光発電装置が出力した直流電力を交流電力に変換する電力変換装置が出力する電力は、日射量によって変動する。従来の発電制御システムにおいては日射量の変動が考慮されていなかったので、日射量が変動した場合に、不適切な上限値に基づいて電力変換装置が制御されてしまう場合があるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、日射量の変動を考慮した電力変換装置の制御を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の制御装置は、太陽光発電装置が出力した直流電力に基づいて負荷に供給する交流電力を発生させる電力変換装置を制御する制御装置であって、電力系統からの受電電力に基づいて、前記電力変換装置に発生させる電力を制御するための出力指令値を決定する指令値決定部と、前記太陽光発電装置が受ける日射量又は前記電力変換装置の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、前記出力指令値の上限値を決定する上限値決定部と、を有し、前記指令値決定部は、決定した前記出力指令値が前記上限値以下である場合には前記出力指令値を前記電力変換装置に通知し、決定した前記出力指令値が前記上限値より大きい場合には前記上限値を前記電力変換装置に通知する。
【0007】
前記上限値決定部は、前記太陽光発電装置が受ける日射量に基づいて前記上限値を決定する場合に、前記電力変換装置の定格容量と、現在の日射量のもとで前記太陽光発電装置が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて前記上限値を決定してもよい。
【0008】
前記上限値決定部は、前記電力変換装置の出力電力に基づいて前記上限値を決定する場合に、前記電力変換装置の定格容量に対する前記電力変換装置の現在の出力電力の比率である動作率に所定の余裕率を加えた値を前記上限値に決定してもよい。
【0009】
前記上限値決定部は、前記受電電力の目標値と、前記受電電力の実測値との差分に基づいて決定した前記余裕率を使用してもよい。
【0010】
前記上限値決定部は、所定の期間内における前記電力変換装置の前記動作率の変動が大きいほど前記余裕率を小さくしてもよい。
【0011】
前記上限値決定部は、時期又は天候と前記余裕率とが関連付けられたデータを参照することにより、現在の時期又は天候に対応する前記余裕率を使用してもよい。
【0012】
前記上限値決定部が前記上限値を決定する方法の選択を受け付ける受付部をさらに有し、前記上限値決定部は、現在の日射量を用いる方法の選択を前記受付部が受け付けた場合に、前記電力変換装置の定格容量と、現在の日射量のもとで前記太陽光発電装置が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて前記上限値を決定し、現在の日射量を用いる方法の選択を前記受付部が受け付けない場合に、前記電力変換装置の定格容量に対する前記電力変換装置の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を前記上限値に決定してもよい。
【0013】
前記上限値決定部は、所定の期間内における前記太陽光発電装置に対する日射量の変動の大きさが所定の閾値以上である場合に、前記電力変換装置の定格容量と、現在の日射量のもとで前記太陽光発電装置が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて前記上限値を決定し、所定の期間内における前記太陽光発電装置に対する日射量の変動の大きさが所定の閾値未満である場合に、前記電力変換装置の定格容量に対する前記電力変換装置の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を前記上限値に決定してもよい。
【0014】
前記指令値決定部は、前記電力変換装置の応答性能を示す応答性能データを参照することにより、前記電力変換装置の出力電力が変化する際のオーバーシュート及びアンダーシュートが所定量以下になるように前記出力指令値を決定してもよい。
【0015】
前記指令値決定部は、前記受電電力の実測値と、前記受電電力の目標値との関係に基づいて、前記電力変換装置の出力電力が増加するか減少するかを判定し、前記出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データ又は前記出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データのうち判定した結果に基づいて選択した前記応答性能データを参照してもよい。
【0016】
前記指令値決定部は、前記受電電力の変化量に基づいて、前記電力変換装置の出力電力が増加するか減少するかを判定し、前記出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データ又は前記出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データのうち判定した結果に基づいて選択した前記応答性能データを参照してもよい。
【0017】
前記指令値決定部は、前記受電電力の最新実測値から前記受電電力の目標値を減算した第1差分値と、前記受電電力の最新実測値から前記受電電力の前回実測値を減算した第2差分値とを加算した結果が正の値を示す場合に、前記出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データを前記応答性能データとして使用し、前記結果が負の値を示す場合に、前記出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データを前記応答性能データとして使用してもよい。
【0018】
前記指令値決定部は、電力系統からの受電電力が閾値以下になった場合に、当該電力系統に電力を出力することを阻止するためのリレーの動作時限に基づいて、現在の前記出力指令値よりも小さな前記出力指令値を前記電力変換装置に通知するか、前記電力変換装置に出力を停止させる指示を通知するかを決定してもよい。
【0019】
本発明の第2の態様の制御方法は、コンピュータが実行する、電力系統からの受電電力に基づいて、太陽光発電装置が出力した直流電力に基づいて負荷に供給する交流電力を発生させる電力変換装置に発生させる電力を制御するための出力指令値を決定するステップと、前記太陽光発電装置が受ける日射量又は前記電力変換装置の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、前記出力指令値の上限値を決定するステップと、決定した前記出力指令値が前記上限値以下である場合には前記出力指令値を前記電力変換装置に通知し、決定した前記出力指令値が前記上限値より大きい場合には前記上限値を前記電力変換装置に通知するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、日射量の変動を考慮した電力変換装置の制御が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】制御装置1の全体の動作のフローチャートである。
【
図5】出力指令値の上限値を決定する処理の動作フローチャートである。
【
図6】出力指令値を算出する処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発電システムSの概要]
図1は、発電システムSの構成を示す図である。発電システムSは、太陽光により発電するためのシステムである。発電システムSは、制御装置1と、太陽光発電装置2と、パワーコンディショナ3と、デジタル電力計4と、アナログ電力計5と、逆電力継電器6と、遮断器7と、日射計8と、負荷Lと、を有する。
【0023】
制御装置1は、発電システムSを構成する各部を制御する装置であり、例えばプロセッサを有するコンピュータである。一例として、制御装置1は、太陽光発電装置2から負荷Lまでの各部が設置された建物に設けられているが、当該建物と異なる場所に設けられていてもよい。この場合、制御装置1は、ネットワークを介して太陽光発電装置2、パワーコンディショナ3、デジタル電力計4、アナログ電力計5、及び日射計8とデータを送受信する。
【0024】
太陽光発電装置2は、太陽電池を有しており、太陽光を受けることにより発生した直流電力をパワーコンディショナ3に対して出力する。
【0025】
パワーコンディショナ3は、太陽光発電装置2が出力した直流電力に基づいて負荷Lに供給する交流電力を発生させる電力変換装置である。パワーコンディショナ3は、制御装置1から入力される出力指令値に基づいて、出力する交流電力(以下、「出力電力」という。)の大きさを変化させる。出力指令値は、例えば、パワーコンディショナ3の定格電力に対する最大出力可能電力の割合であり、0~100%の間の値である。
【0026】
デジタル電力計4及びアナログ電力計5は、電力系統Pから負荷Lに対して供給されている電力を測定し、測定した電力値を制御装置1に通知する。本実施形態においては、発電システムSがデジタル電力計4及びアナログ電力計5を有するが、発電システムSは、デジタル電力計4又はアナログ電力計5の一方のみを有してもよい。
【0027】
逆電力継電器6は、負荷Lと、負荷Lに電力を供給する電力系統Pとの間に設けられている。逆電力継電器6は、パワーコンディショナ3からの出力電力が電力系統Pに流れる逆潮流が発生し得る状態になったことを検出した場合に、パワーコンディショナ3と負荷Lとの間の経路を遮断するように遮断器7を制御する。逆電力継電器6は、パワーコンディショナ3からの出力電力が電力系統Pに流れる逆潮流が発生し得る状態になったことを検出した場合に、パワーコンディショナ3に出力を停止するように指示を送信してもよい。逆電力継電器6は、例えば、電力系統Pから負荷Lに向けて供給される電力が所定値以下になった場合に、パワーコンディショナ3から負荷Lに電力が供給されないように動作する。なお、逆電力継電器6は、動作した場合に制御装置1にその旨を通知してもよい。
【0028】
日射計8は、太陽光発電装置2が受ける太陽光の量を示す日射量を測定する。日射計8は、測定した日射量を示す日射量データを制御装置1に通知する。なお、制御装置1が日射量を使用しない場合、発電システムSは日射計8を有していなくてもよい。
【0029】
負荷Lは、太陽光発電装置2から供給される出力電力、又は電力系統Pから供給される商用電力に基づいて動作する電気機器である。太陽光発電装置2が太陽光を受けている昼間の時間帯において、負荷Lは主に太陽光発電装置2から供給される出力電力により動作し、太陽光発電装置2が太陽光を受けていない夜間の時間帯において、主に電力系統Pから供給される商用電力により動作する。
【0030】
ところで、太陽光発電装置2が発生する出力電力が、負荷Lが消費する電力よりも多いと、余剰電力が発生してしまう。その結果、逆潮流が発生する可能性が生じた場合、逆電力継電器6が電力系統Pと負荷Lとの間の経路を遮断する。逆電力継電器6が電力系統Pと負荷Lとの間の経路を遮断した場合、逆電力継電器6が遮断させた遮断器7又は停止させたパワーコンディショナ3を通常に運転できる状態に復帰させるためには人手を介する場合があり、発電システムSが正常な状態に戻るまでに長時間を要してしまう。そこで、制御装置1は、太陽光発電装置2に対する出力指令値が上限値を超えないように動作する。
【0031】
逆潮流を防ぐためには、上限値を小さく抑えておくことが望ましい。しかしながら、上限値を小さくし過ぎると、パワーコンディショナ3が負荷Lに供給する出力電力が過剰に制限されてしまう。そこで、制御装置1は、太陽光発電装置2が受ける日射量又はパワーコンディショナ3の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、出力指令値の上限値を決定することを特徴としている。制御装置1が出力指令値の上限値をこのように変化させることで、日射量の変動を考慮したパワーコンディショナ3の制御が可能になり、逆潮流を防ぎつつ、太陽光発電装置2が発生した電力を有効活用することができる。
【0032】
[制御装置1の構成]
図2は、制御装置1の構成を示す図である。制御装置1は、通信部11と、受付部12と、記憶部13と、制御部14と、を有する。制御部14は、データ取得部141と、上限値決定部142と、指令値決定部143と、を有する。
【0033】
通信部11は、パワーコンディショナ3、デジタル電力計4、アナログ電力計5、及び日射計8との間で各種のデータを送受信するための通信インターフェースである。通信部11は、例えばUSB(Universal Serial Bus)又はSPI(Serial Peripheral Interface)のようなシリアル通信インターフェースを有する。通信部11は、アナログ信号を受信し、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換回路を有してもよい。
【0034】
受付部12は、制御装置1の管理者による操作を受け付けるためのユーザインターフェースである。受付部12は、ディスプレイ及びタッチパネル又はスイッチ等の操作デバイスを有する。受付部12は、外部のコンピュータ(例えばスマートフォン、タブレット又はパーソナルコンピュータ)から送信された設定値を受け付けるように構成されていてもよい。受付部12は、例えば、出力指令値の上限値を制御装置1が決定する方法を管理者が選択する操作を受け付ける。受付部12は受け付けた操作の内容を制御部14に通知する。
【0035】
記憶部13は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体を有する。記憶部13は、例えば制御部14が実行するプログラムを記憶する。また、記憶部13は、制御部14が各種の動作を実行するために用いる各種のデータを記憶する。一例として、記憶部13は、受付部12が受け付けた出力指令値の上限値を制御装置1が決定する方法を示すデータを記憶する。記憶部13は、デジタル電力計4及びアナログ電力計5から入力された電力の値を示すデータを時刻に関連付けてログデータとして記憶してもよい。記憶部13は、パワーコンディショナ3の特性を示すデータを予め記憶していてもよい。
【0036】
制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有する。制御部14は、記憶部13に記憶されたプログラムを実行することにより、データ取得部141、上限値決定部142及び指令値決定部143として機能する。
【0037】
データ取得部141は、通信部11を介して、パワーコンディショナ3、デジタル電力計4、アナログ電力計5及び日射計8から通知されたデータを取得する。データ取得部141は、例えば、パワーコンディショナ3から通知された出力電力データ、デジタル電力計4又はアナログ電力計5が出力した受電電力データ、又は日射計8が出力した日射量データを取得し、取得した出力電力データ、受電電力データ又は日射量データを上限値決定部142に通知する。なお、データ取得部141は、パワーコンディショナ3の出力電力を測定する電力計(不図示)から出力電力データを取得してもよい。
【0038】
上限値決定部142は、太陽光発電装置2が受ける日射量又はパワーコンディショナ3の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、出力指令値の上限値を決定する。上限値決定部142は、太陽光発電装置が受ける日射量に基づいて上限値を決定する場合に、パワーコンディショナ3の定格容量と、現在の日射量のもとで太陽光発電装置2が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて上限値を決定する。
一例として、上限値決定部142は、以下の(式1)により上限値を算出する。
出力指令値の上限値=現在日射量×PV容量÷PCS定格容量(式1)
【0039】
ここで、PV容量は、太陽光発電装置2が出力できる定格電力値である。現在日射量は、太陽光発電装置2が定格電力を出力する状態における日射量に対する割合である。PCS定格容量は、パワーコンディショナ3が出力可能な最大電力値である。上限値決定部142が(式1)に基づいて上限値を決定することで、日射量が多い状態において、日射量が少ない状態よりも上限値を大きくすることができるので、発電システムSは太陽光発電装置2が発生した電力を有効に活用することが可能になる。
【0040】
上限値決定部142は、パワーコンディショナ3の出力電力に基づいて上限値を決定する場合に、パワーコンディショナ3の定格容量に対するパワーコンディショナ3の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を上限値に決定する。すなわち、上限値決定部142は、以下の(式2)により上限値を算出する。
出力指令値の上限値=PCS出力÷PCS定格容量+出力余裕率(式2)
ここで、PCS出力は現在のパワーコンディショナ3の出力電力値であり、「PCS出力÷PCS定格容量」はパワーコンディショナ3の動作率(以下、「PCS動作率」という。)である。
【0041】
上限値決定部142は、上記の(式2)において、例えば、電力系統Pから供給されている受電電力の目標値と、受電電力の実測値との差分に基づいて決定した出力余裕率を使用する。受電電力の目標値が例えば100kWであり、現在の受電電力が150kWである場合、差分の50kW分だけパワーコンディショナ3の出力電力が増加しても逆潮流が発生しないと考えられる。この場合、上限値決定部142は、パワーコンディショナ3の定格電力に対する差分の値(すなわち、差分値÷定格電力)を出力余裕率とする。上限値決定部142が出力余裕率に基づいて上限値を決定することで、太陽光発電装置2が発生する電力を有効に活用することが可能になる。
【0042】
ところで、動作率の変動が大きいと、パワーコンディショナ3が現時点で発生している出力電力が急に大きくなりやすいため、出力余裕率が大き過ぎると逆潮流が発生する可能性が生じてしまう。そこで、上限値決定部142は、所定の期間内におけるパワーコンディショナ3の動作率の変動が大きいほど出力余裕率を小さくしてもよい。所定の期間は、例えば過去の1ヵ月間である。
【0043】
上限値決定部142は、例えば、所定の期間内におけるパワーコンディショナ3の動作率の変動量と出力余裕率とを関連付けたデータテーブルを参照することにより、パワーコンディショナ3の動作率の変動量に基づいて出力余裕率を決定する。上限値決定部142がこのように動作することで、パワーコンディショナ3の動作率の変動が大きい場合にも逆潮流の発生を防ぎつつ、パワーコンディショナ3の動作率の変動が小さい場合に太陽光発電装置2が発生する電力を有効に利用される。
【0044】
また、季節又は天候によって日射量の変動量は変化するので、日射量の変動が多い時期又は天候の出力余裕率と日射量の変動が少ない時期又は天候の出力余裕率とが同じであると、日射量の変動が多い時に逆潮流が発生する可能性が生じたり、日射量の変動が少ない時に太陽光発電装置2が発生した電力が有効に利用されなかったりする。そこで、上限値決定部142は、時期又は天候と出力余裕率とが関連付けられたデータを参照することにより、現在の時期に対応する余裕率を使用してもよい。上限値決定部142は、例えば、日射量の変動量が多い時期の出力余裕率を日射量の変動量が少ない時期の出力余裕率よりも小さくする。上限値決定部142は、天気予報に基づいて日射量の変動量の大きさを推定し、推定した結果に基づいて出力余裕率を変化させてもよい。
【0045】
なお、上限値決定部142が、日射量データに基づいて上限値を決定するか、太陽光発電装置2の出力電力に基づいて上限値を決定するかを選択する方法は任意である。一例として、上限値決定部142は、受付部12を介して入力された制御装置1の管理者により指定された方法に基づいて上限値を決定する。上限値決定部142は、受付部12を介して上限値の決定方法が指定された場合、指定された方法を示す情報を記憶部13に記憶させておき、上限値を決定する際に、当該情報を参照することにより、指定された方法を用いて上限値を決定する。
【0046】
具体的には、上限値決定部142は、現在の日射量を用いる方法の選択を受付部12が受け付けた場合に、パワーコンディショナ3の定格容量と、現在の日射量のもとで太陽光発電装置2が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて上限値を決定する。一方、上限値決定部142は、現在の日射量を用いる方法の選択を受付部12が受け付けない場合に、パワーコンディショナ3の定格容量に対するパワーコンディショナ3の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を上限値に決定する。上限値決定部142がこのように動作することで、制御装置1の管理者が上限値を決定する方法の選択操作を行っていない状態で、日射計8と制御装置1との間のデータの送受信が不安定な場合又は日射計8が故障した場合にも、上限値決定部142は受電電力に基づいて上限値を決定することができる。
【0047】
上限値決定部142は、日射量の変動の大きさに基づいて、上限値を決定する方法を選択してもよい。具体的には、上限値決定部142は、所定の期間内における太陽光発電装置2に対する日射量の変動の大きさが所定の閾値以上である場合に、パワーコンディショナ3の定格容量と、現在の日射量のもとで太陽光発電装置2が発電できる最大出力可能値と、の関係に基づいて上限値を決定する。
【0048】
所定の閾値は、例えば、その時点における受電電力の大きさに基づいて決定され、受電電力が大きいほど閾値も大きくなる。このように閾値が設定されていることで、受電電力が大きく逆潮流が発生しづらい状態においては、日射量の変動が大きい場合であっても、日射量を用いて上限値を決定することができるので、太陽光発電装置2が発生する電力を最大限に活用することができる。
【0049】
一方、上限値決定部142は、所定の期間内における太陽光発電装置2に対する日射量の変動の大きさが所定の閾値未満である場合に、パワーコンディショナ3の定格容量に対するパワーコンディショナ3の現在の出力電力の比率に所定の余裕率を加えた値を上限値に決定する。上限値決定部142がこのように動作することで、パワーコンディショナ3が出力する電力が増加することにより逆潮流が発生するリスクが考慮されるため、上限値決定部142は、日射量が大きく変動しても逆潮流が発生しないように上限値を決定することができる。
【0050】
続いて指令値決定部143の動作を説明する。指令値決定部143は、電力系統Pからの受電電力に基づいて、パワーコンディショナ3に発生させる電力を制御するための出力指令値を決定する。出力指令値の変化速度がパワーコンディショナ3の応答性能に合っていないと、出力指令値の変化にパワーコンディショナ3が出力電力の変化を追従させることができない。そこで、指令値決定部143は、パワーコンディショナ3の応答性能に基づく速度で出力指令値を変化させる。指令値決定部143は、決定した出力指令値が上限値以下である場合には出力指令値をパワーコンディショナ3に通知し、決定した出力指令値が上限値より大きい場合には上限値をパワーコンディショナ3に通知する。指令値決定部143がこのように動作することで、逆潮流が発生することを未然に防ぐことができる。
【0051】
ところで、指令値決定部143が出力指令値をパワーコンディショナ3に通知してからパワーコンディショナ3の出力電力が変化するまでには遅延時間が生じる。したがって、指令値決定部143が遅延時間を考慮することなく出力指令値を増加させる指示をパワーコンディショナ3に通知してしまうと、遅延時間が大きい場合に出力電力が大きくなり過ぎて逆潮流が発生する。一方、遅延時間が小さいにもかかわらず、パワーコンディショナ3の動作を停止させてしまうと、太陽光発電装置2が発生し得た電力を有効に活用できなくなってしまう。
【0052】
そこで、指令値決定部143は、電力系統Pからの受電電力が閾値以下になった場合に、電力系統Pに電力を出力することを阻止するためのリレーである逆電力継電器6の動作時限に基づいて、現在の出力指令値よりも小さな出力指令値をパワーコンディショナ3に通知するか、パワーコンディショナ3に出力を停止させる指示を通知するかを決定してもよい。指令値決定部143は、動作時限が時間閾値以下である場合に、パワーコンディショナ3に出力を停止させる指示を通知し、動作時限が時間閾値よりも大きい場合に、現在の出力指令値よりも小さな出力指令値をパワーコンディショナ3に通知する。
【0053】
時間閾値は、例えばパワーコンディショナ3の出力電力の最大変化速度(すなわち、単位時間当たりの最大電力増加量)に基づいて定められており、出力電力の最大変化速度が大きいほど時間閾値は短くなるように設定されているが、制御装置1の管理者により設定されてもよい。指令値決定部143がこのように逆電力継電器6の動作時限によってパワーコンディショナ3の制御方法を決定することで、発電システムSにおいて使用される逆電力継電器6の仕様ごとに異なる制御装置1を使用する必要がないので、逆電力継電器6が変更された場合であっても、制御装置1を変更することなく逆潮流の発生を抑制することができる。
【0054】
また、パワーコンディショナ3の出力電力を増加させる場合のパワーコンディショナ3の応答性能と、パワーコンディショナ3の出力電力を減少させる場合のパワーコンディショナ3の応答性能とは異なっている。したがって、パワーコンディショナ3の出力を増加させる場合と減少させる場合の処理を同一にしてしまうと、出力指令値の変化速度がパワーコンディショナ3の応答性能に合っていない状態が発生しやすい。その結果、パワーコンディショナ3が、出力指令値の変化に追従して出力電力を変化させることができず、パワーコンディショナ3の出力電力にオーバーシュート又はアンダーシュートが生じやすくなってしまう。
【0055】
そこで、指令値決定部143は、パワーコンディショナ3の応答性能を示す応答性能データを参照することにより、パワーコンディショナ3の出力電力が変化する際のオーバーシュート及びアンダーシュートが所定量以下になるように出力指令値を決定してもよい。具体的には、指令値決定部143は、パワーコンディショナ3の出力電力を増加させる必要があるか減少させる必要があるかを判定し、判定した結果に対応するパワーコンディショナ3の応答性能に基づいて出力指令値を算出してもよい。
【0056】
一例として、指令値決定部143は、受電電力の実測値と、受電電力の目標値との関係に基づいて、パワーコンディショナ3の出力電力が増加するか減少するかを判定する。受電電力の実測値と、受電電力の目標値との関係は、例えば、受電電力の実測値から受電電力の目標値を減算した値(P1)により表される。そして、指令値決定部143は、当該値が正の値である場合に、パワーコンディショナ3の出力電力を増加させると判定し、当該値が負の値である場合に、パワーコンディショナ3の出力電力を減少させると判定する。
【0057】
指令値決定部143は、出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データ又は出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データのうち、判定した結果に基づいて選択した応答性能データを参照することにより出力指令値を決定する。すなわち、指令値決定部143は、出力電力を増加させると判定した場合、第1応答性能データを参照し、出力電力を減少させると判定した場合、第2応答性能データを参照することにより出力指令値を決定する。
【0058】
指令値決定部143は、受電電力の変化量に基づいて、パワーコンディショナ3の出力電力が増加するか減少するかを判定してもよい。そして、指令値決定部143は、出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データ又は出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データのうち判定した結果に基づいて選択した応答性能データを参照してもよい。
【0059】
具体的には、指令値決定部143は、最新の受電電力から、前回取得した受電電力を減算した値(P2)が正の値である場合に、パワーコンディショナ3の出力電力が増加していると判定し、当該値が負の値である場合に、パワーコンディショナ3の出力電力が減少していると判定する。指令値決定部143は、パワーコンディショナ3が出力電力を増加していると判定した場合、第1応答性能データを参照し、パワーコンディショナ3が出力電力を減少させていると判定した場合、第2応答性能データを参照することにより出力指令値を決定する。
【0060】
指令値決定部143は、受電電力の実測値と、受電電力の目標値との差分値(P1)及び受電電力の変化量(P2)の両方を用いてパワーコンディショナ3の出力電力が増加するか減少するかを判定してもよい。具体的には、指令値決定部143は、受電電力の最新実測値から受電電力の目標値を減算した第1差分値(P1)と、受電電力の最新実測値から受電電力の前回実測値を減算した第2差分値(P2)とを加算した結果が正の値を示す場合に、出力電力が増加する場合に対応する第1応答性能データを応答性能データとして使用し、結果が負の値を示す場合に、出力電力が減少する場合に対応する第2応答性能データを応答性能データとして使用する。
【0061】
指令値決定部143は、第1差分値(P1)及び第2差分値(P2)のそれぞれに異なる重み係数を乗算した後に加算した値により、第1応答性能データを用いるか第2応答性能データを用いるかを決定してもよい。すなわち、指令値決定部143は、以下の(式3)に示す所要変化量ΔCを算出し、(式4)により出力指令値を算出する。
ΔC=k1×P1+k2×P2(式3)
出力指令値=前回出力指令値+応答性能データ×ΔC÷PCSの定格容量(式4)
【0062】
ここで、k1は第1差分値の重み係数、k2は第2差分値の重み係数である。指令値決定部143は、ΔCが正の値を示す場合に第1応答性能データを用いて、ΔCが負の値を示す場合に第2応答性能データを用いる。指令値決定部143が、受付部12を介して重み係数を設定できるようにすることで、指令値決定部143がパワーコンディショナ3の特性に応じた最適な出力指令値を決定できるように制御装置1の管理者が調整することが可能になる。
【0063】
[制御装置1における処理の流れ]
図3から
図6は、制御装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
図3は、制御装置1の全体の動作のフローチャートである。制御装置1は、動作を終了する操作を受け付けるまで
図3に示す動作を繰り返す。
【0064】
データ取得部141は、デジタル電力計4又はアナログ電力計5が測定した電力系統Pからの受電電力値を示す受電電力データを取得する(S1)。データ取得部141は、受電電力値が所定の閾値以下(以下、「UPR閾値」という。)であるか否かを監視する(S2)。データ取得部141は、受電電力値がUPR閾値以下であると判定した場合(S2においてYES)、指令値決定部143に、パワーコンディショナ3が出力する電力を減少させるUPR処理を実行させる(S3)。UPR処理の詳細は後述する。
【0065】
データ取得部141は、受電電力値がUPR閾値よりも大きく、パワーコンディショナ3が出力する電力を減少させる必要がないと判定した場合(S2においてNO)、上限値決定部142に上限値を決定する処理を実行させる(S4)。続いて、指令値決定部143は、出力指令値が上限値以下になるように出力指令値をパワーコンディショナ3に入力する出力指令処理を実行する(S5)。制御装置1は、例えば受付部12において終了の操作が行われるまでの間(S6においてNO)、S1からS5までの動作を繰り返す。
【0066】
(UPR処理)
図4は、UPR処理の動作フローチャートである。逆潮流が発生しないようにするために、逆潮流が発生する可能性があることが検出された場合に、パワーコンディショナ3が出力する電力を小さくすることが考えられる。しかしながら、逆電力継電器6の動作時限に対して、パワーコンディショナ3が新たな出力指令値を受けてから電力を変化させるまでに要する時間が長いと、パワーコンディショナ3が出力する電力を小さくするまでの間に逆潮流が発生してしまうというおそれがある。そこで、指令値決定部143は、一例として、逆電力継電器6の動作時限によってUPR処理の方法を決定する。
【0067】
指令値決定部143は、記憶部13に記憶された逆電力継電器6の特性を示すデータを参照することにより、逆電力継電器6の動作時限を特定する(S31)。指令値決定部143は、特定した動作時限が所定の時間閾値以上であるか否かを判定する(S32)。上述のとおり、時間閾値は、例えばパワーコンディショナ3の出力電力の最大変化速度に基づいて定められた値である。指令値決定部143は、記憶部13に記憶されたパワーコンディショナ3の種別を示す情報(例えば型名)と時間閾値とを関連付けた時間閾値データテーブルを参照することにより、受付部12において入力されたパワーコンディショナ3の型名又は発電システムSの型名に対応する時間閾値を決定してもよい。
【0068】
指令値決定部143は、逆電力継電器6の動作時限が時間閾値以上であると判定した場合(S32においてYES)、出力指令値を小さく変更した新たな出力指令値をパワーコンディショナ3に通知する(S33)。指令値決定部143がこのように動作することで、逆電力継電器6が経路を遮断することなくパワーコンディショナ3が電力を出力しながら逆潮流を防止できるので、太陽光発電装置2が発生した電力を有効活用することができる。
【0069】
一方、指令値決定部143は、逆電力継電器6の動作時限が時間閾値未満であると判定した場合(S32においてNO)、出力停止指示をパワーコンディショナ3に通知する(S34)。指令値決定部143がこのように動作することで、逆電力継電器6の動作時限が早い場合であっても、パワーコンディショナ3が電力を低下させるまでの間に逆電力継電器6が経路を遮断してしまうことを防げる。
【0070】
なお、指令値決定部143は、S31において、記憶部13に記憶された逆電力継電器6の種別を示す情報(例えば型名)と動作時限とを関連付けた動作時限データテーブルを参照することにより、受付部12において入力された逆電力継電器6の型名又は発電システムSの型名に対応する逆電力継電器6の動作時限を特定してもよい。また、逆電力継電器6の動作時限が可変である場合、指令値決定部143は、受付部12において入力された動作時限、又は記憶部13に記憶された動作時限に基づいて逆電力継電器6の動作時限を特定してもよい。指令値決定部143が、このように逆電力継電器6の動作時限を特定することで、発電システムSで使用される逆電力継電器6の種別によらず共通の制御装置1を使用することができる。
【0071】
(上限値決定処理)
図5は、出力指令値の上限値を決定する処理の動作フローチャートである。上限値決定部142は、まず、制御装置1の管理者により上限値を決定する方法が指定されているか否かを判定する(S41)。具体的には、上限値決定部142は、例えば記憶部13に記憶された、制御装置1の管理者が指定された方法を示す指定情報を参照し、上限値決定方法が指定されていない場合(S41においてYES)、S42に進んで、日射量を使用して上限値を決定するか否かを自身で判定する。
【0072】
この場合、上限値決定部142は、記憶部13に記憶された日射量の履歴データを取得し(S42)、過去の所定の期間(例えば10分間)の日射量の変動量が閾値以上であるか否かを判定する(S43)。上述したように、閾値は、例えば、その時点における受電電力の大きさに基づいて決定された値であるが、予め制御装置1の管理者又は設計者によって決定された値であってもよい。上限値決定部142は、変動量が閾値以上であると判定した場合(S43においてYES)、日射計8から日射量データを取得し(S44)、上述した(式1)を用いて上限値を算出する(S45)。
【0073】
一方、上限値決定方法が指定されている場合(S41においてNO)、上限値決定部142は、記憶部13に記憶された指定情報が日射量を使用することを示しているか否かを判定する(S46)。上限値決定部142は、日射量を使用することが指定されていると判定した場合(S46においてYES)、S44に処理を進めて(式1)を用いて上限値を算出する(S45)。
【0074】
上限値決定部142は、日射量を使用することが指定されておらず、パワーコンディショナ3の動作率を使用することが指定されていると判定した場合(S46においてNO)、パワーコンディショナ3の定格容量に対するパワーコンディショナ3の出力電力の値をPCS動作率として算出する(S47)。また、上限値決定部142は、受電電力の実測値から受電電力の目標値を減算した値が正の値である場合、当該値をパワーコンディショナ3の定格電力で除算することにより出力余裕率を算出する(S48)。そして、上限値決定部142は、上述の(式2)に示したようにPCS動作率と出力余裕率とを加算することで上限値を算出する(S49)。
【0075】
(出力指令値の算出処理)
図6は、出力指令値を算出する処理の動作フローチャートである。まず、指令値決定部143は、受電電力の目標値と現時点での受電電力との差分値P1を算出する(S51)。また、指令値決定部143は、受電電力の変化量P2を算出する(S52)。続いて、指令値決定部143は、(式3)に示した所要変化量ΔCを算出する(S53)。
【0076】
指令値決定部143は、ΔCが正の値である場合に(S54においてYES)、応答性能データとして、パワーコンディショナ3が出力電力を増加させる場合に対応する第1応答性能データを使用すると決定する(S55)。指令値決定部143は、ΔCが負の値である場合に(S54においてNO)、応答性能データとして、パワーコンディショナ3が出力電力を減少させる場合に対応する第2応答性能データを使用すると決定する(S56)。
【0077】
続いて、指令値決定部143は、応答性能データにパワーコンディショナ3の定格容量を乗算することにより、パワーコンディショナ3が変化させることができる出力電力の値ΔC_mを算出する(S57)。指令値決定部143は、ΔCの絶対値がΔC_mよりも大きい場合(S58においてYES)、出力指令値の算出に用いるΔCの絶対値をΔC_mの絶対値に置換する(S59)。一方、指令値決定部143は、ΔCの絶対値がΔC_m以下である場合(S58においてNO)、ΔCをそのまま出力指令値の算出に用いる(S60)。指令値決定部143は、S59又はS60において決定したΔCを用いて、上述の(式4)により出力指令値を算出する(S61)。
【0078】
[発電システムSによる効果]
以上説明したように、制御装置1は、太陽光発電装置2が受ける日射量又はパワーコンディショナ3の出力電力の少なくともいずれかに基づいて、パワーコンディショナ3に通知する出力指令値の上限値を決定する上限値決定部142を有する。制御装置1がこのように構成されていることで、日射量の変動を考慮したパワーコンディショナ3の制御が可能になり、逆潮流を防ぎつつ、太陽光発電装置2が発生した電力を有効活用することができる。
【0079】
また、制御装置1は、電力系統Pからの受電電力が閾値以下になった場合に、当該電力系統Pに電力を出力することを阻止するための逆電力継電器6の動作時限に基づいて、現在の出力指令値よりも小さな出力指令値をパワーコンディショナ3に通知するか、パワーコンディショナ3に出力を停止させる指示を通知するかを決定する指令値決定部143を有する。制御装置1がこのように構成されていることで、逆電力継電器6の動作時限によらず逆潮流を防ぐとともに、太陽光発電装置2が発生した電力を有効利用することができる。
【0080】
なお、以上の説明においては、発電システムSが逆電力継電器6及び遮断器7を有する場合を例示したが、本発明により逆潮流が発生する確率が低下するため、発電システムSが逆電力継電器6及び遮断器7を有していなくてもよい。このように、本発明により、設備のコストを低減させることも可能になる。
【0081】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0082】
1 制御装置
2 太陽光発電装置
3 パワーコンディショナ
4 デジタル電力計
5 アナログ電力計
6 逆電力継電器
7 遮断器
8 日射計
11 通信部
12 受付部
13 記憶部
14 制御部
141 データ取得部
142 上限値決定部
143 指令値決定部