(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119276
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】分割バンド
(51)【国際特許分類】
F16B 2/08 20060101AFI20230821BHJP
F16L 55/172 20060101ALN20230821BHJP
【FI】
F16B2/08 F
F16L55/172
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022086
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】青木 正之
(72)【発明者】
【氏名】寺口 仁
【テーマコード(参考)】
3H025
3J022
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB06
3H025EC05
3H025ED01
3J022DA11
3J022DA20
3J022EA34
3J022EB12
3J022EC17
3J022EC22
3J022FB04
3J022FB07
3J022FB12
3J022GA03
3J022GA12
3J022GA14
3J022GB42
3J022GB45
3J022GB53
(57)【要約】
【課題】複数の分割体を容易に適正な位置に配置して流体供給管の外周に配置可能な分割バンドを構成する。
【解決手段】流体供給管1の外周に配置される複数の分割体10と、分割体10の内周側に設けられ、複数の分割体10が流体供給管1の外周に配置された状態で流体供給管1の外周に密着するパッキン16と、複数の分割体10を流体供給管1の周方向に配置した状態で夫々の分割体10の端部同士を互いに締結する締結部材2,3とを備え、分割体10は、流体供給管1の周方向での両端部に、流体供給管1の径方向の外方に延出する延出部12を有し、締結部材2,3によって複数の分割体10の端部同士が連結される状態において、複数の分割体10の相対的な位置関係を維持する位置規制部14が、延出部12に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体供給管の外周に配置される複数の分割体と、
前記分割体の内周側に設けられ、複数の前記分割体が前記流体供給管の外周に配置された状態で前記流体供給管の外周に密着するパッキンと、
複数の前記分割体を前記流体供給管の周方向に配置した状態で夫々の前記分割体の端部同士を互いに締結する締結部材とを備え、
前記分割体は、前記流体供給管の前記周方向での両端部に、前記流体供給管の径方向の外方に延出する延出部を有し、前記締結部材によって複数の前記分割体の端部同士が連結される状態において、複数の前記分割体の相対的な位置関係を維持する位置規制部が、少なくとも1つの前記延出部に形成されている分割バンド。
【請求項2】
前記位置規制部が、前記両端部の前記延出部の一方のうち前記流体供給管の軸方向の一方の側面側から前記流体供給管の周方向外方に延びる第1プレートと、前記両端部の前記延出部の他方のうち前記流体供給管の軸方向の他方の側面側から前記周方向外方に延びる第2プレートとを備え、
複数の前記分割体を前記流体供給管の外周に配置した状態で、前記第1プレートが前記周方向で隣接する他方の前記延出部のうち前記第2プレートの反対の側面に当接し、前記第2プレートが、前記周方向で隣接する一方の前記延出部のうち前記第1プレートの反対側の側面に当接する請求項1に記載の分割バンド。
【請求項3】
4つの前記分割体が前記流体供給管の外周の周方向に配置される請求項1又は2に記載の分割バンド。
【請求項4】
前記流体供給管の前記周方向に亘る溶接部に装着され、
前記パッキンは、前記溶接部を跨がって前記流体供給管の外周に密着するように、幅方向の中央に中央溝部が形成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の分割バンド。
【請求項5】
前記パッキンが、前記分割体の前記両端部に前記流体供給管の径方向外方に突出する突出部を一体的に形成しており、
複数の前記分割体を前記流体供給管の外周に配置し、隣接する前記分割体を前記締結部材によって互いに引き寄せた状態において、隣接する前記分割体の間に前記突出部が挟み込まれる請求項1~4の何れか一項に記載の分割バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設する流体供給管として水道管を例に挙げると、水道管は溶接によって接続されることも多く行われている。水道管を長期に亘って使用した場合の経年劣化や、地震の影響、あるいは、土木工事に伴う振動な等の影響により、溶接箇所の一部にクラックが発生する等の現象により、漏水を招くこともあった。
【0003】
特許文献1は、液体潤滑剤を塗布した平板状のゴム質のシール材を、薄型金属板で形成されたバンド部材に内装し、シール材を管体(流体供給管)のうち漏洩発生部分の全周に配置する補修バンドが記載されている。
【0004】
特許文献2は、分割された円弧状のハウジングと、このハウジングの受入部内に収容したシールリングとを有し、ハウジングの両端に緊締座を形成した補修用管接手が示されている。このような構成の複数のハウジングを既設管路(流体供給管)の外周に配置し、緊締座をボルトナットで締結することにより、既設管路の外周を取り囲むようにハウジングを固定する構成が記載されている。
【0005】
特許文献3は、受口管部に挿入される挿口管部の外周に装着され、受口管部の内周と挿口管部の外周との間を密封するシール材を押圧する押輪が記載されている。この特許文献3では、円弧状となる複数の分割片の夫々の端部の管軸方向に向く当接面が形成され、夫々の当接面に管軸方向に沿う貫通孔が形成されている。
【0006】
この特許文献3では、互いに隣接する位置の当接面を接触させた状態で、夫々の貫通孔のボルトを挿通することで分割片を連結している。これにより分割片の端部に集中しがちな応力の分散を実現している。尚、この押輪は、挿入管部の外周に固定した状態で複数の押ボルトからシール材に圧力を作用させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-19388号公報
【特許文献2】特開平5-118491号公報
【特許文献3】特開2012-17811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載される補修バンドは、水道管の全周に比較的均等に圧力を作用させる状態でのシールを可能にする反面、可動部分が多く、複雑化しやすいものであった。特許文献2に記載される補修用管接手は、特許文献1の構成に比較して構造が単純で装着が容易である。特許文献3に記載される押輪は、溶接箇所の漏水の抑制には不向きであるが、水道管の外周に均等な圧力を作用させる状態での装着を可能にするものである。
【0009】
例えば、大径の水道管の溶接箇所の漏水を抑制するための分割バンドとして、特許文献2に記載されるように、複数のハウジング(以下、分割体と称する)を流体供給管の外周に配置し、夫々の流体供給管の端部を連結する構成を考えることができる。
【0010】
このような構成の分割バンドは、単純であり、分割体の数を増大させることにより、1つの分割体を軽量化し、取り扱いを容易にするものである。
【0011】
しかしながら、分割体の数が増大した場合には、複数の分割体同士を連結する際に、夫々の分割体をボルトで仮止めしても、夫々の分割体の相対的な位置関係に適正に維持することが困難になることが懸念された。
【0012】
このような理由から、複数の分割体を容易に適正な位置に配置して流体供給管の外周に配置可能な分割バンドが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る分割バンドの特徴構成は、流体供給管の外周に配置される複数の分割体と、前記分割体の内周側に設けられ、複数の前記分割体が前記流体供給管の外周に配置された状態で前記流体供給管の外周に密着するパッキンと、複数の前記分割体を前記流体供給管の周方向に配置した状態で夫々の前記分割体の端部同士を互いに締結する締結部材とを備え、前記分割体は、前記流体供給管の前記周方向での両端部に、前記流体供給管の径方向の外方に延出する延出部を有し、前記締結部材によって複数の前記分割体の端部同士が連結される状態において、複数の前記分割体の相対的な位置関係を維持する位置規制部が、少なくとも1つの前記延出部に形成されている点にある。
【0014】
この特徴構成によると、例えば、流体供給管の溶接箇所の外周を取り囲むように流体供給管の周方向に沿って複数の分割体を配置し、締結部材で締結することにより、分割体のパッキンが溶接箇所の外周に密着するため、溶接箇所に亀裂が発生した場合には流体の漏出を防止できる。特に、この特徴構成では、複数の分割体の端部同士が連結される際に、例えば、ボルト等の締結部材を用いて端部同士を仮止めした状態であっても、延出部に形成した位置規制部によって分割体の相対的な位置関係を維持できるため、複数の分割体を締結する際に、隣接する位置関係にある複数の分割体の相対的な位置関係を適正に維持することも可能となる。
従って、複数のハウジングを容易に適正な位置に配置して流体供給管の外周に配置可能な分割バンドが構成された。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記位置規制部が、前記両端部の前記延出部の一方のうち前記流体供給管の軸方向の一方の側面側から前記流体供給管の周方向外方に延びる第1プレートと、前記両端部の前記延出部の他方のうち前記流体供給管の軸方向の他方の側面側から前記周方向外方に延びる第2プレートとを備え、複数の前記分割体を前記流体供給管の外周に配置した状態で、前記第1プレートが前記周方向で隣接する他方の前記延出部のうち前記第2プレートの反対の側面に当接し、前記第2プレートが、前記周方向で隣接する一方の前記延出部のうち前記第1プレートの反対側の側面に当接しても良い。
【0016】
これによると、複数の分割体を流体供給管の外周に配置した状態で、第1プレートが周方向で隣接する他方の延出部のうち第2プレートとは反対の側面に当接し、第2プレートが、周方向で隣接する一方の延出部のうち第1プレートとは反対側の側面に当接することで、隣接する位置にある分割体同士の相対的な位置を決める。この構成では、流体供給管の径方向に沿う方向視において、分割体の長手方向の中間を対称点として、第1プレートと第2プレートとが点対称の位置に配置される。このため、複数の分割体を、流体供給管の外周に対し、どのような姿勢で配置しても複数の分割体の相対的な位置関係を決めることが可能となり、分割体の取り扱いが容易になる。
【0017】
上記構成に加えた構成として、4つの前記分割体が前記流体供給管の外周の周方向に配置されても良い。
【0018】
これによると、流体供給管の外周に4つの分割体を配置して全周を覆うことになるので、分割体の軽量化を可能にし、作業を容易にする。
【0019】
上記構成に加えた構成として、前記流体供給管の前記周方向に亘る溶接部に装着され、前記パッキンは、前記溶接部を跨がって前記流体供給管の外周に密着するように、幅方向の中央に中央溝部が形成されても良い。
【0020】
これによると、流体供給管の溶接部を跨ぐようにパッキンの中央溝部の位置を決めて複数の分割体を配置し、夫々の分割体を締結することにより、パッキンが溶接箇所に直接的に圧力を作用させることがない。また、複数の分割体を締結した状態では、パッキンの中央溝部を除く部分が流体供給管の外周に密着し、溶接箇所から流体が漏出する場合でもパッキンの中央溝部の内部に流体を封じ込み、漏出を抑制できる。
【0021】
上記構成に加えた構成として、前記パッキンが、前記分割体の前記両端部に前記流体供給管の径方向外方に突出する突出部を一体的に形成しており、複数の前記分割体を前記流体供給管の外周に配置し、隣接する前記分割体を前記締結部材によって互いに引き寄せた状態において、隣接する前記分割体の間に前記突出部が挟み込まれても良い。
【0022】
これによると、流体供給管の外周に複数の分割体を配置し、隣接する分割体の端部を締結部材で締結することにより、隣接する分割体の端部が互いに引き寄せられ、隣接する分割体の境界部分に、夫々の分割体のパッキンの隣接する突出部同士が密着する状態で、夫々の分割体の端部の間に挟みこまれる。このように挟み込まれることにより隣接するパッキンの突出部が互いに密着状態で圧縮され、隣接する突出部の間において流体が漏出する不都合を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】水道管に装着された分割バンドの斜視図である。
【
図2】水道管に装着された分割バンドの平面図である。
【
図3】水道管に装着された分割バンドの正面図である。
【
図4】水道管に装着された分割バンドの断面図である。
【
図10】別実施形態(a)の分解状態の分割バンドの正面図である。
【
図11】別実施形態(a)の締結状態の分割バンドの正面図である。
【
図12】別実施形態(b)の位置規制部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔基本構成〕
図1~
図3に示すように、流体供給管の一例としての水道管1の外周に配置される4つ(複数の一例)分割体10と、夫々の分割体10の内周側に設けられ、分割体10が水道管1の外周に配置された状態で水道管1の外周に密着するパッキン16と、4つの分割体10の端部同士を互いに締結する締結部材としてのボルト2及びナット3とを備えて分割バンドAが構成されている。
【0025】
この分割バンドAは、例えば、水道管1を埋設する以前に、水道管1のうち
図4に示すように溶接によって接合された溶接部1W(溶接ビード部分)の全周を覆うように4つの分割体10を配置し、夫々の分割体10をボルト2、ナット3により締結する形態で使用される。これにより、4つの分割体10のパッキン16で溶接部1Wを覆う状態で4つの分割体10が水道管1の外周に装着される。
【0026】
尚、溶接部1Wの経年劣化や地震の影響、あるいは土木工事に伴う振動等により、溶接部1W(溶接ビード部分)に微細な亀裂等が発生した場合に漏水を招くことがある。このため、分割バンドAを装着しておくことにより、パッキン16が、漏水の外部への水の漏れ出しを防止する。
【0027】
〔分割体〕
以下の説明で、「径方向」とは、分割体10を水道管1に装着した状態で水道管1の中心に向かう方向となる径方向(水道管1の径方向と称することもある)であり、径方向の外面を外周と称し、径方向の内面を内周と称している。
【0028】
また、以下の説明で、「軸方向」とは、分割体10を水道管1に装着した状態で水道管1の中心軸に沿う軸方向(水道管1の軸方向と称することもある)であり、分割体10の側面は軸方向の端部に配置される面である。
【0029】
また、以下の説明で、「周方向」とは、分割体10を水道管1に装着した状態で水道管1の外周に沿う周方向(水道管1の周方向と称することもある)であり、分割体10の端部とは周方向の端部である。
【0030】
図1及び
図5~
図9に示すように、分割体10は、鉄鋳物として製造され、円弧状の本体11の両端部に、水道管1の径方向外方に延出する延出部12が一体的に形成されている。この延出部12は、フランジとして機能するものであり、夫々の延出部12には、周方向に貫通するボルト孔13が形成されている。延出部12のうち隣接する延出部12と対向する面を端面12fと称する。
【0031】
図6、
図8に示すように、一対の延出部12の一方のうち、水道管1の軸方向の一方の側面から水道管1の周方向に延びる第1プレート14aが形成されている。これと同様に、一対の延出部12の他方のうち、水道管1の軸方向の他方の側面側から水道管1の周方向に延びる第2プレート14bが形成されている。尚、第1プレート14aと第2プレート14bとは位置規制部14の具体例である。
【0032】
位置規制部14は、第1プレート14aと第2プレート14bとを有しており、締結部材としてのボルト2とナット3とによって4つの分割体10の端部同士が連結される状態において、第1プレート14aと第2プレート14bとが隣接する位置の分割体10の延出部12の側面に当接することにより4つの分割体10の相対的な位置関係を維持する。尚、第1プレート14aと第2プレート14bの上位概念を単にプレートと称することもある。
【0033】
図5~
図8から理解できるように、水道管1(流体供給管)の径方向に沿う方向視において、分割体10は、長手方向の中間を対称点として第1プレート14aと第2プレート14bとが点対称の位置に配置されている。これにより、対称点を中心に分割体10を180度回転させた形状は等しい。つまり、分割バンドAに用いる4つの分割体10は全て同じ形状(共通する形状)となる。
【0034】
これらの図では、位置規制部14の位置関係を明らかにするため第1プレート14aと、第2プレート14bとの異なる符号を付しているが、端部を入れ換えるように分割体10の姿勢を変更した場合には、図面上ではプレートの符号が入れ換わるだけであり、プレートの形状は等しく、位置規制部14は同様に機能する。
【0035】
図2、
図5に示すように、一つの分割体10に形成される一対の延出部12の幅(水道管1の軸方向の幅)は、分割体10の本体11の幅と等しく、第1プレート14aと、第2プレート14bとは、夫々の厚みだけ延出部12から幅方向の外方にオーバハングする位置に形成されている。また、一対の延出部12のうち、プレート(第1プレート14a、第2プレート14b)の形成側と反対側を側面と称する。
【0036】
これにより、パッキン16を備えた分割体10を水道管1の外周に配置し、ボルト2とナット3とで締結(仮止めした場合も含む)することで、第1プレート14aの内面14sが、隣接する分割体10の延出部12の側面に当接し、第2プレート14bの内面14sが、隣接する分割体10の延出部12の側面に当接する。その結果、4つの分割体10の相対的な位置関係が維持される。
【0037】
尚、
図9では、2つの分割体10を、ボルト2とナット3とで仮に連結することで2組の連結ユニットを作り出し、この2組の連結ユニットをボルト2とナット3とで連結する作業形態を示しているが、4箇所のボルト2とナット3との締結の順序は任意に設定できる。
【0038】
この分割バンドAでは、4つの分割体10が共通する形状のものを用いるため、分割体10の端部の位置を区別することなく、水道管1の外周に沿って並べるだけで、一方の端部に隣接する延出部12の側面に第1プレート14aの内面14sを当接させ、他方の端部に隣接する延出部12の側面に第2プレート14bの内面14sを当接させて位置規制を行える。
【0039】
〔パッキン〕
図1、
図4、
図8、
図9に示すように、分割体10の内周側で、幅方向の中央位置に嵌合溝部10aが形成され、この嵌合溝部10aにパッキン16が嵌め込まれている。
【0040】
パッキン16は、ゴム材、あるいは、柔軟に変形し得る樹脂材を用い、全体的に円弧状で、単一の分割体10の内周に沿う長さ(弧長)で、両端部に径方向の外方に突出する突出部16Tが一体的に成形されている。このパッキン16の内周には、幅方向の中央位置に中央溝部16aが形成され、中央溝部16aの両側部の夫々に補助溝16bが形成されている。
【0041】
このような構成からパッキン16は、中央溝部16aによって溶接部1Wに跨がって水道管1の外周に密着し、更に、幅方向での外側の補助溝16bによってパッキン16を柔軟に変形させ良好な密着性を作り出す。
【0042】
特に、分割体10を水道管1に装着した状態では、
図4に示すように、分割体10の嵌合溝部10a内でパッキン16が水道管1に挟圧され、かつ、突出部16Tも延出部12同士の挟圧されるように、分割体10とパッキン16との位置関係が設定されている。これにより分割体10からパッキン16に常に圧力を作用させ良好な密着状態を作り出している。
【0043】
パッキン16の突出部16Tの内面側(パッキン16を支持する分割体10の延出部12と反対側)は平坦に成形されている。
【0044】
〔装着作業〕
このように分割体10が構成されるため、
図1、
図2に示すように、パッキン16を内周に備えて4つの分割体10を水道管1の周方向に沿って配置し、これらをボルト2とナット3とで仮止めした後に、ボルト2とナット3とによる締結により4つの分割体10が水道管1の外周に密着させることも可能となる。
【0045】
分割バンドAを装着した状態では、パッキン16の内周が水道管1の外周に密着し、4つのパッキン16のうち、対向する一対の突出部16Tが密着する。また、ボルト2とナット3による締結により隣接する位置にある延出部12が互いに引き寄せられることにより、一対の延出部12の間にパッキン16の突出部16Tが挟みこまれ一対の突出部16Tが密着し良好なシール性を実現する。
【0046】
これにより、溶接部1Wの経年劣化や地震の影響、あるいは土木工事に伴う振動等により、溶接部1W(溶接ビード部分)に微細な亀裂等が発生しても水道管1から外部への水の漏出をパッキン16が防止する。
【0047】
〔実施形態の作用効果〕
この分割バンドAは、4つの分割体10を用いることにより、単一の分割体10の重量を軽減し、大径の水道管1に対する装着作業を容易にする。また、4つの分割体10の端部同士を締結する際には、位置決めを行う必要があるものの、
図8等に示すように、端部に位置規制部14として第1プレート14aと第2プレート14bとを形成してあるため、ボルト2とナット3との締結操作を行うだけで、端部同士が位置決め状態になり、水道管1の周方向に沿って4つの分割体10を直線的に配置できる。
【0048】
また、4つの分割体10は、全て同じ形状(共通の形状)であるため、端部の位置関係を選ぶことなく水道管1の外周に配置することが可能であり、複数の分割体10の端部をボルト2とナット3とで仮止めした状態でも、第1プレート14aと第2プレート14bとが対応する延出部12の側面に接触し、分割体10の位置が乱れることもない。
【0049】
このように4つの分割体10を用いることにより、例えば、2つの分割体10を用いたもののように分割体10を水道管1の外周に装着した状態で、分割体10の両端部においてパッキン16に作用する圧縮力が、他の部位の圧縮力より増大する不都合を抑制し、パッキン16に均等な圧力を作用させて水道管1の外周に密着させることも可能となる。
【0050】
また、分割バンドAを水道管1に装着した状態では、パッキン16の中央溝部16aが溶接部1Wの外周を外部に重複して配置され、中央溝部16aの幅方向の外部位置が水道管1の溶接部1Wを跨ぐ位置に配置されることにより良好なシール性を発揮する。
【0051】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0052】
(a)
図10、
図11に示すように、パッキン16を構成する。この別実施形態(a)のパッキン16は、4つの分割体10の夫々の内周にパッキン16を配置し、そのパッキン16の端部側ほど肉薄になるように、一方の端部側では外周側を取り除き、他方の端部側では内周側を取り除いた形状となるテーパ部16cを両端に形成している。
【0053】
このように構成されるパッキン16は、4つの分割体10を水道管1の外周に装着する際に、対向する位置のテーパ部16cの傾斜面同士が互いに密着する状態に達し、夫々のテーパ部16cに対して径方向に圧力を作用させ、夫々のテーパ部16cを隙間なく密着させることが可能となり良好な密着性を実現する。
【0054】
この別実施形態(a)では、
図10に示すように、4つのパッキン16を用いていたが、これに代えて、両端にテーパ部16cを形成した単一のパッキン16を用いることも考えられる。尚、この別実施形態(a)では実施形態に記載した突出部16Tを備えない構成を想定している。
【0055】
(b)位置規制部14を、
図12に示すように、係合ピン14Pを延出部12の端面12fから周方向に突設し、延出部12の端面12fに貫通する係合孔14Qを穿設して構成する。これら係合ピン14Pと係合孔14Qとはボルト孔13を挟んで対象となる位置に配置されている。
【0056】
係合ピン14Pが隣接する位置の分割体10の延出部12の係合孔14Qに挿入可能であり、延出部12の係合孔14Qに対して隣接する位置の分割体10の延出部12に突設された係合ピン14Pの挿入が可能に構成されている。
【0057】
この別実施形態(b)の位置規制部14では、パッキン16を備えた分割体10を水道管1の外周に配置し、ボルト2とナット3とで分割体10を仮止めした状態において、係合ピン14Pと係合孔14Qとが互いに係合することにより隣接する位置にある分割体10がボルト2を中心に回転する形態の変位を抑制することが可能となる。その結果として、複数の分割体10の相対的な位置関係を決めて装着することが可能となる。
【0058】
(c)分割体10の数は4つに限らず、3つ或いは5つ以上であっても良い。
【0059】
(d)位置規制部14として、分割体10の一方の端部にだけ、隣接する分割体10の端部に係合可能な係合構造を形成する。この係合構造としては隣接する分割体10の本体11の端部を幅方向から挟み込むように当接する二股状の部材や、分割体10の端部の側面や外面に単純に当接する当接片等の構造が考えられる。
【0060】
(e)位置規制部14を形成した複数の分割体10を流体供給管の一例としての水道管1の外周に配置して水道管1に固定される割輪(例えば、穿孔機に用いられる割T字管)として用いる。このように割輪を構成することにより、複数の分割体10を水道管1の外周に配置する際の作業を容易にする。
【0061】
(f)位置規制部14を形成した複数の分割体10を、特許文献3に記載されているように、水道管1の外周に配置されたパッキン等に対し、水道管1の軸方向に沿う方向に圧力を作用させるように機能する押輪として用いる。このように押輪として用いる場合であっても、複数の分割体10を水道管1の外周に配置する際の作業を容易にする。
【0062】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、流体供給管の外周に複数の分割体を装着する分割バンドに利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 水道管(流体供給管)
1W 溶接部
2 ボルト(締結部材)
3 ナット(締結部材)
10 分割体
12 延出部
14 位置規制部
14a 第1プレート
14b 第2プレート
16 パッキン
16a 中央溝部
16T 突出部
A 分割バンド