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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011929
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】光硬化型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20230117BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20230117BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20230117BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J4/02
C09J175/14
C09J11/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022180910
(22)【出願日】2022-11-11
(62)【分割の表示】P 2019074192の分割
【原出願日】2019-04-09
(71)【出願人】
【識別番号】000162434
【氏名又は名称】協立化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】横井川 孝志
(72)【発明者】
【氏名】寺田 智仁
(72)【発明者】
【氏名】金子 聖
(57)【要約】
【課題】 接着性、透明性、低収縮率などの、光学表示体用接着剤に求められる特性を備えつつ、高い比誘電率を有する光硬化型接着剤組成物を提供する。
【解決手段】 (A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、(C)(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールエーテル又はグリコールエステル、及び(D)光反応開始剤を含む、光硬化型接着剤組成物である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)(メタ)アクリロイル基を有さない、グリコールエーテル又はグリコールエステル、及び
(D)光反応開始剤を含む、光硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項1記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が、(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールモノエーテルである、請求項1又は2記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が、イソブチルグリコール、イソプロピルグリコール、イソブチルジグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ベンジルグリコール及びベンジルジグリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、積層体。
【請求項6】
光学表示体である、請求項5記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学表示体又はタッチセンサーの貼り合わせに使用され得る光硬化型接着剤組成物、及び、これを用いて貼り合わせた積層体、特に光学表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、直感的かつ簡潔で多彩な操作性、装置全体の小型化などをもたらすことができるため、携帯電話、ATMや自動販売機など、デジタル情報機器において広く用いられている電子部品である。タッチパネルの動作原理は、パネルに触れた位置の電気的変化を検出するというものであるが、現在は指がパネルに触れた際に生じる静電容量の変化を検出する、静電容量型の機器がよく用いられている。
【0003】
静電容量型のタッチセンサーは、従来は液晶ディスプレイに外付けされていたが、機器全体の重量や厚みを軽減するため、近年はオンセル型又はインセル型の構造が採用されている。特に、薄膜トランジスタ内にタッチパネルとしての機能を設けたインセル型の構造が注目され、実用化されてきている。
【0004】
インセル型のタッチセンサー構造はタッチパネル内部、例えば薄膜トランジスタ内に設けられる。このため、タッチセンサーとフロントパネルとの距離は外付けのタッチセンサーを設けたタッチパネルと比べて大きくならざるを得ず、タッチセンサーの感度が低くなる傾向がある。インセル型のタッチパネルでは、検出感度向上のためにタッチパネル全体の比誘電率を高める必要がある。タッチパネルの比誘電率を高めるための方法として、タッチセンサーとフロントパネルとの間を充填している樹脂の誘電率を高めることが試みられている(特許文献1)。
【0005】
タッチセンサーとフロントパネルとの間を充填する樹脂はその操作性から液状であることが望ましいが、一方で、液晶パネルのガラスは、表示装置の薄型、軽量化のニーズから薄くなってきている。ここで、液状樹脂が硬化すると、その際の硬化収縮応力によって、液晶パネルのガラスが破損したり、変形したりする場合がある。これは表示不良の原因となることから、液状樹脂の硬化収縮率や弾性率を低下させる必要がある(特許文献2)。また、液状樹脂を用いた技術では、液状樹脂が接着のため液晶パネルの表示部を覆うように適用されるので、利用される液状樹脂は、光学的に透明な樹脂(OCR)であること、耐熱試験後の着色、変色、耐湿試験後の強度低下を起こさないことが求められる(特許文献3)。また、液状樹脂は、熱硬化による収縮を防ぐためや、樹脂全体を万遍なく硬化させるために、紫外線などの光により硬化するタイプであることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-50239号公報
【特許文献2】WO2010/027041号パンフレット
【特許文献3】特開2012-046658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
OCRがタッチパネルに用いられる場合、OCRは液晶表示部を覆うように充填されている。このため、OCRにはタッチセンサーの機能を維持するための高い誘電率のほか、高い透明性、低い収縮率などが求められる。さらに、接着剤としても用いられるため接着剤としての特性も要求されるなど、多様な機能を備えたOCRの需要が存在する。しかしながら本発明者らが明らかにしたところによると、特許文献1記載の組成物では、ヒドロキシ基が誘電率に寄与しているが、ヒドロキシ基を有するモノマー成分の重量比率が高い為に他の成分との相溶性を十分に確保することができず、硬化収縮の抑制など本来求められる物性において不十分であった。
したがって、本発明の課題は、接着性や透明性などのタッチパネル用接着剤に求められる特性を備えつつ、高い比誘電率を有する光硬化型接着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、光硬化型接着剤組成物において、(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールエーテル又はグリコールエステルを添加することにより、上記の課題が達成されることを見出して本発明を完成した。
【0009】
本発明は、以下の事項によって特定されるものである。
すなわち、第1の発明は、
(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールエーテル又はグリコールエステル、及び
(D)光反応開始剤、を含む、光硬化型接着剤組成物である。
第2の発明は、前記成分(A)が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上である、光硬化型接着剤組成物である。
第3の発明は、前記成分(C)が、(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールモノエーテルである、光硬化型接着剤組成物である。
第4の発明は、前記成分(C)が、イソブチルグリコール、イソプロピルグリコール、イソブチルジグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ベンジルグリコール及びベンジルジグリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、光硬化型接着剤組成物である。
第5の発明は、前記光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、積層体である。
第6の発明は、光学表示体である、前記積層体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、接着剤に求められる特性を備えつつ、OCRとしての特性も満足し、硬化収縮を抑えることができ、さらに高い比誘電率を有する光硬化型接着剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光硬化型接着剤組成物について、詳細に説明する。ここで、本明細書における「炭化水素基」について説明する。炭化水素基とは、炭素及び水素からなる構造であり、結合手を幾つ有するかに応じて1価の炭化水素基、2価の炭化水素基、などと表記される。炭化水素基には、炭素が鎖状に連なった鎖状の炭化水素基、炭素が環を形成する環式の炭化水素基に分けられ、鎖状の炭化水素基には炭素の鎖が分岐を有しているものを含む。環式の炭化水素基には、当該環が芳香族性を示す芳香環と、芳香族性を有さない脂環式環に分けられる。また、炭化水素基に不斉炭素原子やキラリティー軸など光学異性体を生じる要素が含まれる場合、当該基には各々の光学異性体及びそれらの混合物、ラセミ体が含まれる。
【0012】
「アルキル基」とは、直鎖状又は分岐鎖状の、1価の炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ラウリルなどが挙げられる。アルキル基の炭素数を特定するときは、「C1-6アルキル」のように、アルキル基を構成する炭素原子の数の範囲を語「アルキル」の前に修飾する。「C1-6アルキル」の場合、炭素数の範囲は1~6である。
「アルキレン基」とは、直鎖状又は分岐鎖状の、2価の炭化水素基、すなわちアルキル基の水素が1つ結合手に置き換わった構造を意味する。結合手に置き換わる位置は任意であり特に制限されない。アルキレン基の名称を記載するときは、アルキル基の語尾を「-レン」に置き換える。すなわち、アルキレン基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレンなどが挙げられる。炭素数が2以上の場合、結合手の位置は2種類以上の場合が考えられるが、特記しない場合は当該アルキレン基の両末端(分岐がある場合は最長の炭素鎖における両末端)が結合手である基を意味する。結合手が末端に存在しない場合は、有機化合物の命名規則に従って付けられる炭素番号を表記し、その位置に結合手があることを意味する。
【0013】
「アルケニル基」とは、アルキル基の炭素-炭素単結合のうち少なくとも一つが炭素-炭素二重結合になった基を意味する。炭素-炭素二重結合の位置は任意であり特に制限されない。アルケニル基の例としては、エテニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、1-ヘプテニル、1-オクテニル、1-ノネニルなどが挙げられる。炭素数が3以上であり二重結合の位置が複数考えられる場合は、有機化合物の命名規則に従って二重結合が存在する炭素番号のうち小さい方を接頭辞として表記する。炭素数を特定する場合、二価の基とする場合の表記は、アルキル基のそれに準ずる。「アルキニル基」とは、アルキル基の炭素-炭素単結合のうち少なくとも一つが炭素-炭素三重結合になった基を意味し、表記の方法はアルケニル基のそれに準ずる。アルキニル基の例としては、エチニル、1-プロピニル、1-ブチニル、1-ペンチニル、1-ヘキシニル、1-ヘプチニル、1-オクチニルなどが挙げられる。
【0014】
「シクロアルキル基」とは、炭素鎖が環を形成しており、その環を構成している炭素原子の一つが結合手を有する、1価の炭化水素基を意味する。当該環は、環を構成する炭素原子のうち隣接していない二つの炭素原子が直接又はアルキレン基を介して架橋した構造であってもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、ノルボルニル、アダマンチル、ジシクロペンタニルなどが挙げられる。炭素数を特定する場合、二価の基とする場合の表記は、アルキル基のそれに準ずる。
【0015】
「アリール基」とは、芳香族性を有する環が一つ以上存在し、芳香族性を有する環を構成している炭素原子の一つが結合手を有する、1価の炭化水素基を意味する。当該環は、2つ以上の環が縮合した構造であってもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、アントラセニルなどが挙げられる。炭素数を特定する場合、二価の基とする場合の表記は、アルキル基のそれに準ずる。
【0016】
[(A)(メタ)アクリレートオリゴマー]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、単に「成分(A)」とすることがある)を含む。(メタ)アクリレートオリゴマーは光(紫外線)により硬化するので、光硬化型接着剤組成物において、ベースの役割を有する。アクリル基又はメタクリル基を有するものであれば、オリゴマーを構成するモノマー単位には幅広い構造の分子を用いることができる。好ましくは、光硬化型接着剤組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマーとして、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群から選ばれた1種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。より好ましくは、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群から選ばれた1種以上を含む。これらの例示をはじめとする(メタ)アクリレートオリゴマーであれば、複数種類を組み合わせて用いることもできる。(メタ)アクリレートオリゴマーは、接着剤組成物の硬化収縮率をより小さくすることができる点から、アクリル当量が200g/mol以上であることが好ましい。ここでの「アクリル当量」は、アクリル基又はメタクリル基1個あたりの分子量のことを指す。
【0017】
以下、(メタ)アクリレートオリゴマーの具体例を説明する。ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリウレタンとも呼ばれ、好ましくは1000~100000、より好ましくは1000~50000の分子量を有する。(メタ)アクリル基で変性されていればポリウレタンの構造は特に制限されず、例えば、ポリエーテル、ポリカーボネートなどの骨格を有するポリウレタンを原料としてポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを得ることができる。ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、後述する化合物との相溶性の観点から、ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートなどがより好ましい。市販品として、例えば、「UN-9200A」(根上工業社製ポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート)、「UA-10000B」(KSM社製ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート)などがある。
【0018】
ポリイソプレン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリイソプレンとも呼ばれ、好ましくは1000~100000、より好ましくは1000~50000の分子量を有する。また、これらの水素添加体も使用することができる。市販品として、例えば、クラレ社製の「UC-102M」(分子量17000)及び「UC‐203M」(分子量35000)などがある。
【0019】
ポリブタジエン(メタ)アクリレートオリゴマーは、(メタ)アクリル変性ポリブタジエンとも呼ばれ、好ましくは500~100000、より好ましくは1000~30000の分子量を有する。また、これらの水素添加体も使用することができる。市販品として、例えば、日本曹達社製の「TE2000」(分子量2000)などがある。
【0020】
(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含む共重合体であり、好ましくは5000~300000、より好ましくは10000~100000の分子量を有する。共重合体を形成するモノマー成分としては、例えばウレタン、イソプレン、ブタジエン及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選択される2種類以上のモノマーであり、共重合体が未反応の(メタ)アクリロイル基を有する限りこれらを任意の割合で用いることができる。共重合体は、ランダム重合であってもブロック重合であってもよい。
【0021】
(メタ)アクリレートオリゴマーの量は、成分(A)及び後述する成分(B)、(C)、(D)の総和100質量部に対して、好ましくは10~90質量部、より好ましくは20~80質量部の範囲である。この範囲とすることで、良好な接着性能を保つことができ、接着剤組成物としてより好ましい。
【0022】
[(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、単官能の(メタ)アクリレートモノマー(本明細書では、単に「成分(B)」とすることがある)を含む。単官能の(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル基又はメタクリル基を1つ有する、アクリル酸又はメタクリル酸エステルのモノマーである。本発明の光硬化型接着剤組成物は、単官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことにより、硬化物に伸びを付与することができる。
【0023】
単官能の(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル基又はメタクリル基が結合する有機基に特に制限されることなく、その種類を選択することができる。有機基の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基が挙げられるが、これらはヒドロキシ基、アリール基、アルキル基若しくはシクロアルキル基に酸素が結合した構造であるアルコキシ基、又はアリール基に酸素が結合した構造であるアリーロキシ基で一つ以上置換されていてもよい。また、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基は、1箇所以上酸素原子で中断されたエーテル構造や、1箇所以上窒素原子で中断された2級若しくは3級アミン構造を形成していてもよい。
単官能の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート(CH)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(PO)、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(分子量1000未満のもの)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO付加物(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピレリジル(メタ)アクリレート及びアクリロイルモルフォリンから選択される。これらの(メタ)アクリレートモノマーは、1種類又は2種類以上を使用することができる。これらの(メタ)アクリレートモノマーは市販されており市販グレードのものを使用することができるほか、アクリル酸又はメタクリル酸とアルコール化合物との反応により得ることもできる。
【0024】
単官能の(メタ)アクリレートモノマーの量は、成分(A)、成分(B)、後述する成分(C)及び(D)の総和100質量部に対して、好ましくは1~50質量部、より好ましくは10~40質量部である。この範囲とすることで、接着剤としての特性を損なうことなく、硬化物に伸びを付与して硬化収縮をより効果的に抑制することができる。
【0025】
[(C)グリコールエーテル又はグリコールエステル]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールエーテル又はグリコールエステル(本明細書では、単に「成分(C)」とすることがある)を含む。グリコールは、鎖状又は環式脂肪族炭化水素にヒドロキシ基が二つ存在する構造の化合物であり、「グリコールエーテル」は、グリコール中の二つのヒドロキシ基のうち少なくとも一方がエーテル化された構造を意味する。したがって「グリコールエーテル」には、グリコールモノエーテル及びグリコールジエーテルが含まれる。「グリコールエステル」は、グリコール中の二つのヒドロキシ基のうち少なくとも一方がエステル化された構造を意味する。したがって「グリコールエステル」には、グリコールモノエステル及びグリコールジエステルが含まれる。本発明の光硬化型接着剤組成物は、前記成分(A)又は成分(B)と非反応性の成分として、本成分を含むことにより、より低い硬化収縮率とより高い比誘電率を両立することができる。
本明細書において成分(C)の化合物を記述するとき、化合物名の先頭に記載される1価の鎖状又は環式炭化水素基は、分子鎖両末端の少なくとも一方にある、グリコールに由来しない骨格を意味する。化合物名の先頭がラウリン酸のような「酸」となっているときは、当該化合物はグリコールエステルであることを示している。「プロピレングリコール」のように、「グリコール」が「プロピレン」や「ブチレン」などアルキレン基を意味する語で修飾されている場合、1,3-プロピレンジオールのようにアルキレン基の末端2箇所にヒドロキシ基が結合したジオールが骨格であることを意味する。単に「グリコール」と表記されている場合、1,2-エチレンジオールの骨格を有していることを意味する。したがって、例えば「イソプロピルグリコール」というときは、1,2-エチレンジオールの一方のヒドロキシ基がイソプロピル基によってエーテル化された構造((CHCH-O-CHCH-OH)であることを意味する。
【0026】
成分(C)の例示としては、一般式:R-O-X-(O-X)n-OR(ここで、Rは、場合によりエステル基で中断されていてもよい、炭素数1~12の鎖状若しくは環式炭化水素基又はアシル基であり、Rは、水素原子、場合によりエステル基で中断されていてもよい、炭素数1~12の鎖状若しくは環式炭化水素基又はアシル基であり、X及びXは、各々独立して、二価の炭素数2~10の鎖状又は環式脂肪族炭化水素基であり、場合によりエステル基で中断されていてもよく、nは、0以上5以下の整数である)で表される化合物を用いることができる。ここで、「アシル基」とは、1価の炭化水素基がカルボニル基(C=O)に結合した基を指す。
前記一般式におけるRは、一価の炭素数1~12の鎖状若しくは環式炭化水素基又はアシル基であり、炭化水素基の場合、その例としては、C1-12アルキル、C2-12アルケニル、C2-12アルキニル、C6-12アリール、C3-12シクロアルキル又はC2-12アシルである。これらは前記炭素数の範囲を満たす限りアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基で置換されていてもよい。炭化水素基の場合、Rが有する炭素数は、1~12の範囲であることが好ましく、3~8の範囲であることがより好ましい。Rとしては、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、2-エチルヘキシル又はベンジルであることが、より好ましい。Rがアシル基の場合、Rが有する炭素数は、2~12の範囲であることが好ましく、4~12の範囲であることがより好ましい。アシル基である場合のRの例としては、アセチル、ブタノイル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、ラウリル又はベンゾイルが挙げられる。
は、水素原子、炭素数1~12の鎖状若しくは環式炭化水素基又はアシル基であり、炭化水素基又はアシル基である場合の好ましい例は、Rと同じものが適用される。Rとしては、水素原子であることがより好ましい。
及びXは、二価の炭素数2~10の鎖状又は環式脂肪族炭化水素基であり、その例としては、C2-10アルキレン、C2-10アルケニレン、C2-10アルキニレン、C3-10シクロアルキレンである。これらは前記炭素数の範囲を満たす限りアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基で置換されていてもよい。また、C2-10アルキレン、C2-10アルケニレン又はC2-10アルキニレンは、その炭素鎖がC3-8シクロアルキレンで中断されていてもよい。さらに、R、R、X及びXは、一か所以上がエステル基で中断されていてもよい。エステル基の酸素に対するカルボニル基の位置は、左側と右側のどちら側であってもよい。-C(=O)O-であることもでき、-OC(=O)-であることもできる。nが1以上である場合、X及びXは、nが2以上でXが2つ以上存在する場合を含め、各々同一の基であっても異なっていてもよいが、入手、調製が容易である点から、これらは同一の基であることが好ましい。X及びXとしては、二価の直鎖状炭化水素基であることが好ましく、市販されており入手が容易なものが多く後述の分子量の観点からも有利であることから、炭素数2又は3のもの、特に1,2-エチレングリコール又は1,3-プロピレングリコールに基づく骨格の化合物が、成分(C)として好ましい。X及びXは二つの結合手が酸素原子と結合するが、X及びXの炭素のうち任意の位置二箇所で酸素原子と結合していてもよい。ただし、ジェミナルジオールは安定性を欠くため、酸素原子が結合する炭素は、異なる二つの炭素原子であることが好ましい。すなわち、X及びXとしては、エチレン又はプロピレンであることがより好ましい。
nはグリコール鎖の繰り返し単位数を示す値であり、nが1以上の化合物、すなわちジグリコール、トリグリコール類などを成分(C)として用いることができる。入手の容易性からは、nは0から2の範囲であることがより好ましい。成分(C)としては、1種類だけを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0027】
成分(C)は、その分子構造上、エーテル結合を少なくとも1つ有し、場合によりエステル基、ヒドロキシ基を有している。特定の理論に束縛されるものではないが、成分(C)は、グリコールエーテル又はエステルの酸素原子を含む極性構造によって、比誘電率の向上という電気的な効果を得ているものと考えられる。アクリル又はメタクリル基と反応しない構造であれば、極性を有する基を導入することで、接着剤組成物の比誘電率を向上することができると考えられる。一方でヒドロキシ基は相溶性に対する影響を及ぼす。このため、成分(C)の選択にあたっては、これらの基が分子全体にどの程度含まれるかを基準の一つとしてもよい。この基準では、エーテル結合、エステル結合又はヒドロキシ基の数とともに、成分(C)の分子量を考慮することが望ましい。分子量が小さくなると、成分(C)の単位質量あたりのこれらの基又は構造の数が増加する。
【0028】
例えばエーテル結合に注目すると、分子量あたりのエーテル結合の数が多くなると、組成物全体において極性を有する部分が相対的に増加するため、比誘電率によい影響を与えることが考えられる。この観点からは、成分(C)としてはジグリコール、すなわち前記一般式におけるnが1のものが好ましい。また、成分(C)の分子量は低く抑えることが好ましいが、分子量が小さすぎると粘度が小さくなり、接着剤組成物の硬化に悪影響を与えることがあるので、成分(C)の分子量は100以上であることが好ましく、下限としては1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、300以下が特に好ましい。成分(C)中のエーテル結合の観点からは、1分子が有するエーテル結合の数を分子量の値で除したものである成分(C)の分子量あたりのエーテル結合の数が、0.005以上であると、本発明の効果をより発揮しやすくなるため好ましい。成分(C)の分子量あたりのエーテル結合の数は、0.006以上であることがより好ましい。グリコールモノエーテルの場合、分子量あたりのエーテル結合の数は分子量あたりのヒドロキシ基の数と連動する。このため、モノグリコールの場合、成分(C)の分子量あたりのエーテル結合の数が0.010以下であると、接着剤組成物全体でのヒドロキシ基の物質量の総量を、相溶性を損なわない程度にすることができるので、より好ましい。モノグリコールの場合、成分(C)の分子量あたりのエーテル基の数は、0.095以下とすることが、さらに好ましい。成分(C)が、ジグリコールなどエーテル基が複数存在する化合物である場合、エーテル基とヒドロキシ基の個数の比に応じて好ましい範囲とすることができる。例えば、ジグリコールの場合、エーテル基の数はヒドロキシ基の数の2倍であるので、成分(C)の分子量あたりのエーテル結合の数が0.020以下であることがより好ましく、0.019以下であることが、さらに好ましい。
【0029】
エステル結合に注目しても同様に、1分子が有するエステル結合の数を分子量の値で除したものである、分子量あたりのエステル結合の数を基準の一つとすることができる。また、エステル結合は、成分(C)のグリコールを構成する構造中に導入することもできる。その場合の成分(C)となる化合物としては、前記一般式:R-O-X-(O-X)n-ORにおいて、R、R、X、Xの少なくとも一か所がエステル基で中断されている構造を有するものを挙げることができる。エステル基で中断されている箇所は二か所以上であってもよく、アジピン酸などのジカルボン酸から調製することができるので、二か所が中断されているような構造を用いることがより好ましい。エステル結合を有する場合、成分(C)の分子量あたりのエステル結合の数が、0.001以上であると、本発明の効果をより発揮しやすくなるため好ましい。成分(C)の分子量あたりのエステル結合の数は、0.002以上であることがより好ましい。成分(C)がエステル基を有する場合、分子量あたりのエステル基の数をエーテル結合の数に加えて、その総和を成分(C)を選択するにあたっての基準としてもよい。
【0030】
ヒドロキシ基も極性を有しており誘電率に影響を与えるが、ヒドロキシ基があまり多く含まれると相溶性に負の影響が生じることがあるため、ヒドロキシ基の物質量があまり多くならないよう、成分(C)の分子量を調整してヒドロキシ基の数を少なくすることが好ましい。1分子が有するヒドロキシ基の数を分子量の値で除したものである成分(C)の分子量あたりのヒドロキシ基の数が、0.010以下であると、接着剤組成物全体でのヒドロキシ基の物質量の総量が相溶性を損なわない程度にすることができるので、より好ましい。成分(C)の分子量あたりのヒドロキシ基の数は、0.0095以下とすることが、さらに好ましい。グリコールジエーテル又はジエステルを用いることでヒドロキシ基の数を0にすることもできるが、誘電率への影響と相溶性への影響のバランスを考慮して、成分(C)の分子量あたりのヒドロキシ基の数の下限としては、0.001以上であることがより好ましく、0.002以上であることがさらに好ましく、0.003以上であることが特に好ましい。ただし、成分(C)の配合量が後述する範囲の量であれば、相溶性に大きな影響を与えることなく接着剤組成物が所期の特性を発揮することができる。
【0031】
また、分子内に誘電率に影響する構造を導入する観点からは、成分(C)に芳香環を導入した化合物、例えばグリコールのフェニルエーテル又はベンジルエーテルを用いることも好ましい。芳香環は比誘電率の観点からはエーテル結合などの極性基と類似した役割を有すると考えられるので、成分(C)の化合物が芳香環を有する場合、上記エーテル基及びエステルの数に関連する数値に代えて、分子量あたりのエーテル基及びエステル基の数と芳香環の数の総和を、成分(C)の量を記述するために用いてもよい。例えば、ベンジルグリコール(分子量152.19;エーテル基の数1つ;芳香環の数1つなので分子量あたりの芳香環の数=1÷152.19=0.00657)の場合、分子量あたりのエーテル結合の数(0.00657)に代えて、分子量あたりのエーテル結合と芳香環の数の総和(0.0657+0.0657=0.1314)を、成分(C)を選択するにあたっての基準としてもよい。
【0032】
成分(C)に該当する化合物の非限定的な例としては、1分子中にエーテル結合を一つ有するグリコール化合物としてメチルグリコール(メチルセロソルブ)、エチルグリコール(エチルセロソルブ)、ブチルグリコール(ブチルセロソルブ)、イソブチルグリコール、t-ブチルグリコール、イソプロピルグリコール、ブチルプロピレングリコール、2-エチルヘキシルグリコール、メチルプロピレングリコール、プロピルプロピレングリコール、ベンジルグリコールなど、1分子中にエーテル結合を二つ有するジグリコール化合物としてエチルジグリコール、ブチルジグリコール(ブチルカルビトール)、イソブチルジグリコール、t-ブチルジグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルプロピレンジグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、メチルプロピレンジグリコール、プロピルピロピレンジグリコール、ベンジルジグリコールなど、その他のグリコール化合物としてブチルトリグリコールなどが挙げられる。また、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、DPDMのような上記化合物が有するヒドロキシ基が更にエーテル化された化合物が挙げられる。エステル結合を有する化合物としては、グリコールのカルボン酸モノエステル若しくはジエステルが挙げられる。原料となるグリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンジグリコール、プロピレンジグリコール、ポリエチレングリコール(PEG)などが挙げられ、原料となるカルボン酸としては酢酸、プロピレン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソペンタン酸、ヘプタン酸、ラウリン酸、安息香酸などが挙げられる。より具体的な例としては、テトラエチレングリコールのラウリン酸モノエステル(ラウリン酸PEG-4)、テトラエチレングリコールのヘプタン酸ジエステル(ジヘプタン酸PEG-4)などが挙げられる。エステル基で中断されているものとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸のジエステルであって、少なくとも一方がグリコールのエステルとなっているもの、より具体的にはアジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]、アジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)が挙げられる。これらの化合物には、例えばハイソルブ、ハイモール(登録商標)(いずれも東邦化学工業製)などの商品名で一般に入手可能なものもある。入手の容易性、取扱い性などの観点から、イソプロピルジグリコール又はベンジルグリコールを用いることが、より好ましい。成分(C)としては市販品を用いてもよいが、グリコールと1価アルコールの縮合反応など、当業者に公知の方法により製造することもできる。
【0033】
成分(C)の量は、成分(A)(B)(C)及び後述する成分(D)の総和100質量部に対して好ましくは1~30質量部、より好ましくは10~25質量部である。ただし、成分(C)以外の成分にヒドロキシ基が存在するものを用いる場合、その使用量に応じて成分(C)の量を減少させることが好ましい。この範囲とすることで、接着剤組成物、また光学的に透明な樹脂としての機能を損なうことなく、比誘電率をより高めることができる。
【0034】
[(D)光反応開始剤]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、紫外線などの光や電子線により重合反応を開始することができる光反応開始剤(本明細書では、単に「成分(D)」とすることがある)を含む。光反応開始剤としては、一般的な開始剤を使用することができ、市販されているものを用いることができる。その種類も、光硬化性である成分(A)又は成分(B)に合わせて当業者であれば適宜選択することができる。光反応開始剤の例としては、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルホリノプロパンー1-オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル系光重合開始剤などを例示できる。これらの光反応開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0035】
本発明において、好ましい光反応開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンが挙げられ、それぞれを単独でも使用してもよいし、組み合わせてもよい。
【0036】
光反応開始剤の量は、成分(A)(B)(C)(D)の総和100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは0.1~15質量部である。
【0037】
[光硬化型接着剤組成物]
本発明の光硬化型接着剤組成物は、上記のとおり、(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、(C)(メタ)アクリロイル基を有さないグリコールエーテル又はグリコールエステル、及び(D)光反応開始剤を含むものである。これら各成分の好ましい配合割合は、先に説明したとおりである。ただし、成分(C)をはじめ各成分の化合物にはヒドロキシ基が存在することがある。本発明の光硬化型接着剤組成物は、相溶性を十分に確保する観点から、接着剤組成物中のヒドロキシ基の数が少ない方が好ましい。接着剤組成物100gあたりヒドロキシ基の数(モル)が0.30未満となるように配合割合を設定することが、より好ましい。接着剤組成物100gあたりのヒドロキシ基の数(モル)は、0.25未満であることがさらに好ましい。接着剤組成物100gあたりのヒドロキシ基の数(モル)の下限としては、成分(C)にヒドロキシ基が含まれうるので、0.001以上であることがより好ましく、0.002以上であることがさらに好ましく、0.003以上であることが特に好ましい。光硬化型接着剤組成物は、これら各成分と、及び場合により後述する多官能光硬化性モノマーや添加剤を所定量、市販の混合装置にて混合することにより、得ることができる。
【0038】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、少なくとも上記成分(A)(B)(C)及び(D)を含むものであるが、本発明の効果を損なわない範囲で、多官能光硬化性モノマーを含んでいてもよく、さらに、可塑剤、接着付与剤、酸化防止剤など、通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、多官能光硬化性モノマーを含むことができる。多官能光硬化性モノマーは、光により硬化する反応を起こす官能基を1分子中に二つ以上有するモノマーである。光硬化型接着剤組成物に多官能光硬化性モノマーを配合することで、組成物を硬化させたときの弾性を調節することができる。扱い易さ、入手のしやすさなどの観点から、多官能光硬化性モノマーが有する、光により硬化する反応を起こす官能基の数は2~10が好ましく、2~4がより好ましい。多官能光硬化性モノマーは、(メタ)アクリロイル基を複数個官能基として有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが好ましい例として挙げられる。
【0040】
多官能(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物であれば、特に限定されない。組成物が多官能(メタ)アクリレートモノマーを含むと、架橋密度が上がる傾向があり、単官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で用いる場合と比べて、弾性率をより向上させたいときに有利である。多官能(メタ)アクリレートモノマーの(メタ)アクリロイル基の数は、2~10が好ましく、2~4がより好ましい。
【0041】
このような多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族ジ(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどの脂環式ジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレートなどの脂肪族トリ(メタ)アクリレート;シリコンジ(メタ)アクリレート(例えば、EBECRYL 350、ダイセル・オルネクス株式会社製);トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールのアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレートなどのポリオールのアルキレンオキシド付加体のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールのアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンのアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレートなどのポリオールのアルキレンオキシド付加体のテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
これらの多官能光硬化性モノマーの量は、成分(A)(B)(C)(D)の総和100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは0.1~15質量部である。
【0042】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、可塑剤を含むことができる。可塑剤として、(メタ)アクリレートオリゴマーと相溶するポリマー、オリゴマー、フタル酸エステル類、ヒマシ油、キシレン樹脂、テルペン樹脂、ロジンなどが挙げられる。オリゴマー又はポリマーとして、ポリイソプレン系、ポリブタジエン系又はキシレン系のオリゴマー又はポリマーを例示できる。これらの柔軟化成分は、ADEKA社からBFシリーズとして、クラレからLIRシリーズとして、デグッサ社からポリオイルシリーズとして、フドーよりニカノールシリーズとして市販されている。これらの柔軟化成分となる可塑剤は、1種類又は2種類以上を使用することができる。可塑剤の量は、成分(A)(B)(C)(D)の総和100質量部に対して、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下である。
【0043】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、接着付与剤を含むことができる。接着付与剤として、シランカップリング剤、例えば、ビニルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピル、メチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを例示できる。これらの接着付与剤の1種類又は2種類以上を使用することができる。接着付与剤の量は、成分(A)(B)(C)(D)の総和100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0044】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、さらに、酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、オクチル化ジフェニルアミン、2,4,-ビス[(オクチルチオ)メチル]-O-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジブチルヒドロキシトルエンを例示できる。これらの酸化防止剤は1種類又は2種類以上を使用することができる。酸化防止剤の量は、成分(A)(B)(C)(D)の総和100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0045】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、接着すべき材料の構造によって接着面に塗布した接着剤組成物の一部に光が当たらない場合には、光が当たるところは光で硬化させ、光の当たらないところは予め添加した有機過酸化物を開始剤として熱で硬化させるような、光硬化と熱硬化の併用タイプの接着剤組成物にすることもできる。有機過酸化物の例としてケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシエステル系、パーオキシジカーボネート系などが例示できる。これらの有機過酸化物は、1種類又は2種類以上を使用することができる。有機過酸化物の量は、成分(A)(B)(C)(D)の総和100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。上記の有機過酸化物の硬化促進剤として、ナフテン酸金属錯体、ジメチルアニリン、4級アンモニウム塩、リン酸エステル類を使用することもできる。
【0046】
光硬化型接着剤組成物は、塗布の際などの取扱い性、均一な塗布と硬化を達成すること、適用される基板に光学表示体が含まれる点などから、透明な液状であることが好ましい。透明であるかどうかの判断は、目視により濁りなど固体の存在がないかを評価し、液状であるかどうかの判断は、流動性があるかどうかにより評価する。
【0047】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、光、特に紫外線の作用によって硬化し、塗布された面を接着する。硬化は主として成分(A)及び(B)の炭素-炭素二重結合が付加重合して高分子を形成することによる。本発明の光硬化型接着剤組成物は、タッチパネルの接着に利用できることから、硬化後も透明であることが好ましい。
【0048】
光硬化型接着剤組成物は、光による硬化反応の際分子間隔が縮まることにより体積が減少し、結果として収縮する。しかし本発明の光硬化型接着剤組成物は、硬化時の収縮率が小さく、ガラスなどの塗布された基板に対して過度の応力を及ぼさない。本発明の光硬化型接着剤組成物においては、硬化収縮率が3.0%未満であると、塗布された基板に対する硬化収縮応力による影響が小さくなるので好ましい。
【0049】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、従前のタッチパネル用接着剤組成物と比べて、高い比誘電率を有している。このため、本発明の光硬化型接着剤組成物は、タッチセンサーにおけるパネル全面を覆う接着剤として使用することができる。比誘電率は高い方が、タッチパネルの感度が良好になるので好ましい。比誘電率の測定方法は後述の方法が挙げられるが、当該方法によって測定した比誘電率(100kHz)が6.2以上であると、タッチパネルが十分機能する感度を達成することができるので、好ましい。
【0050】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、上記のような性質を備えているので、二枚の基板の貼り合わせ、たとえば、光学表示パネルとタッチパネルとの貼り合わせ、光学表示パネルと保護パネルとの貼り合わせ、タッチパネルと保護パネルとの貼り合わせ、光学表示パネルと光学表示パネルとの貼り合わせ、光学表示パネルと視差バリアとの貼り合わせ用として用いることができる。貼り合わせは、通常の方法によって行うことができる。例えば、まず接着される基板の一方に光硬化型接着剤組成物を添加し、ロールコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、ダイコーティングなど周知の方法を用いて面全体に均一に塗布する。これにもう一方の接着される基板を貼り合わせ、次いで光(例えば紫外線)の照射によって組成物を硬化し、二つの基板を接着する。紫外線は例えば、波長250~450nmの範囲の紫外線を用いることができ、接着剤組成物に含まれる官能基にあわせて適した波長を照射することができる。照射する紫外線は単一の波長のものでもよいが、上記のような幅をもった波長の紫外線を照射することもできる。接着性をより高める観点からは、接着される基板の両面に接着剤組成物を塗布してもよいが、積層体の厚みを抑える観点からは、基板の一方のみに塗布することが好ましい。塗布の厚みは小さい方が望ましいが、十分な接着力を確保する観点からは、硬化後の厚みで1.0mm以下となるようにすることが好ましく、0.7mm以下とすることがより好ましい。光照射のタイミングは任意であるが、通常、二枚の基板を貼り合わせたあと位置決め・仮留めをしてから光照射される。塗布した接着剤が流動して塗布の均一性が損なわれることが懸念されるような場合には、もう一方の基板を貼り合わせる前に、完全に硬化しないような光量での予備硬化を行い、接着剤組成物が流動しない程度に硬化してからもう一方の基板を貼り合わせることが好ましい。又は、塗工面の端部のみを硬化させて樹脂の漏れ出しを防ぐ土手としてから、第二の基板を貼り合わせることもできる。予備硬化の度合いは、完全に硬化する場合の積算光量から所望の硬化率を考慮して、適宜設定することができる。光照射には、市販の装置を用いることができ、当業者であれば、照射する光の波長、光量を各成分に合わせて適宜設定することができる。また、前述の有機過酸化物のような熱開始剤を併用する場合には、貼り合わせ工程に熱を掛ける工程を随時挿入することができる。このような方法により、保護パネル、視差バリア、タッチパネルや光学表示パネルなどの基板どうしを貼り合わせた積層体が得られる。本発明の一つの態様は、上記光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、積層体、特に光学表示体である積層体にも関する。本明細書においては、「積層体」とは、二つ以上の基板を接着剤を介して積み重ねたものをいい、接着剤の硬化前、硬化後のものをともに含む。
【0051】
本発明は、前記の光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、光学表示体、特にタッチセンサーにも関係する。これらの積層体は、例えば、テレビ、デジタルカメラ、携帯電話、パソコン、モニターなどの電子機器に組み込むことができる。
【実施例0052】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例及び比較例で共通して用いた試薬は、以下のとおりである。
[成分(A)]
UA-10000B:ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート(KSM社製)
[成分(B)]
SR-395:イソデシルアクリレート(アルケマ社製)
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
[成分(D)]
イルガキュアTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製)
I-184:イルガキュア184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製)
[その他の添加物]
BF-1000:エポキシ化1,2-ポリブタジエン(ADEKA製)
[評価方法]
光硬化型接着剤組成物及びその硬化物の評価は、以下のようにして行った。
<外観>
光硬化型接着剤組成物の液外観は、透明容器に樹脂を充填し、目視にて確認した。
硬化物外観は、厚み0.5mmの樹脂硬化物を目視にて確認した。
<硬化収縮率>
硬化収縮率は、JIS K6833比重カップ法にて測定した。
<比誘電率>
硬化物は測定部の面積を30mmφ、厚み0.5mmとし、試験機に取り付け比誘電率を測定した。測定はSolartronAnalytical社製インピーダンスアナライザーSI-1260、誘電率測定インターフェース1296を使用し、100kHzにて試験を行った。
【0053】
(実施例1)
成分(A)としてUA-10000Bを50質量部、成分(B)としてSR-395及び4-HBAをそれぞれ10質量部ずつ、成分(C)としてイソブチルグリコール(日本乳化剤社製:分子量118.18)を20質量部、成分(D)としてイルガキュアTPO及びイルガキュア184をそれぞれ0.5質量部ずつ、並びに可塑剤としてBF-1000を25質量部、の配合量で配合して、光硬化型接着剤組成物を得た。得られた組成物を面積30mmφ、厚み0.5mmとなるように成形し、次いで紫外線(250-450nm)を照射することで硬化物を得た。紫外線照射はアイグラフィックス社製アイグランテージを使用し、400mW/cm(照度測定波長は350nm)の照度で3000mJ/cmの照射を行った。
各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0054】
(実施例2)
成分(C)をイソブチルグリコールからイソプロピルグリコール(日本乳化剤社製:分子量104.15)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0055】
(実施例3)
成分(C)をイソブチルグリコールからイソブチルジグリコール(日本乳化剤社製:分子量162.23)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0056】
(実施例4)
成分(C)をイソブチルグリコールからイソプロピルジグリコール(日本乳化剤社製:分子量148.20)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0057】
(実施例5)
成分(C)をイソブチルグリコールからブチルプロピレングリコール(日本乳化剤社製:分子量132.20)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0058】
(実施例6)
成分(C)をイソブチルグリコールからブチルプロピレンジグリコール(日本乳化剤社製:分子量190.28)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0059】
(実施例7)
成分(C)をイソブチルグリコールから2-エチルヘキシルグリコール(日本乳化剤社製:分子量174.28)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0060】
(実施例8)
成分(C)をイソブチルグリコールから2-エチルヘキシルジグリコール(日本乳化剤社製:分子量218.33)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0061】
(実施例9)
成分(C)をイソブチルグリコールからプロピルプロピレングリコール(日本乳化剤社製:分子量118.17)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0062】
(実施例10)
成分(C)をイソブチルグリコールからプロピルプロピレンジグリコール(日本乳化剤社製:分子量176.25)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0063】
(実施例11)
成分(C)をイソブチルグリコールからベンジルグリコール(日本乳化剤社製:分子量152.19)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。ここでベンジルグリコールは、分子量あたりの芳香環の数が0.00657であり、分子量あたりのエーテル結合の数との和は0.01314である。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0064】
(実施例12)
成分(C)をイソブチルグリコールからベンジルジグリコール(日本乳化剤社製:分子量196.25)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。ここでベンジルジグリコールは、分子量あたりの芳香環の数が0.00510であり、分子量あたりのエーテル結合の数との和は0.01529である。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0065】
(実施例13)
成分(C)をイソブチルグリコールからラウリン酸PEG-4(日油社製ノニオン L-2:分子量363)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。ここでラウリン酸PEG-4は、分子量あたりのエステル基の数が0.00275であり、分子量あたりのエーテル結合の数との和は0.01102である。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0066】
(実施例14)
成分(C)をイソブチルグリコールからジヘプタン酸PEG-4(Lipo Chemical社製Liponate 2-DH:分子量418.5)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。ここでジヘプタン酸PEG-4は、分子量あたりのエステル基の数が0.00478であり、分子量あたりのエーテル結合の数との和は0.01195である。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0067】
(実施例15)
成分(C)をイソブチルグリコールからアジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)(ジェイプラス社製D931:分子量346)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。ここでアジピン酸ビス(2-ブトキシエチル)は、分子量あたりの芳香環の数が0.00578であり、分子量あたりのエーテル結合の数との和は0.01156である。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0068】
(実施例16)
成分(C)をイソブチルグリコールからアジピン酸ジブトキシエトキシエチル(Proviron社製Proviplast 01422:分子量434.5)に代えた他は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。ここでアジピン酸ジブトキシエトキシエチルは、分子量あたりの芳香環の数が0.00460であり、分子量あたりのエーテル結合の数との和は0.01381である。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0069】
(比較例1)
成分(C)に該当する化合物を配合していないこと以外は実施例1と同様にして、光硬化型接着剤組成物及びその硬化物を得た。各種物性の評価・測定結果を、後掲の表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
本発明の光硬化型接着剤組成物は、いずれも透明でありOCRとして利用可能である。また、成分(C)を有していない比較例の組成物と比較して、低い収縮率を達成しつつも、比誘電率が向上していることが明らかとなった。本発明の光硬化型接着剤組成物は、透明性・低収縮率を達成しつつ、また高誘電率化を達成した。このため、本発明の光硬化型接着剤組成物は、インセル型タッチパネルの充填剤に優れた接着剤として、液晶パネルの貼り合わせなどに有用な材料であることが示された。
【手続補正書】
【提出日】2022-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(メタ)アクリレートオリゴマー、
(B)単官能の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)分子量が100以上500以下である、(メタ)アクリロイル基を有さない、グリコールエステルであって、ポリエチレングリコールのカルボン酸モノエステル、ポリエチレングリコールのカルボン酸ジエステル、及び、少なくとも一方がグリコールのエステルとなっているジカルボン酸のジエステルからなる群より選択される1種以上である、グリコールエステル、及び
(D)光反応開始剤を含む、光硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
前記成分(A)が、ポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体からなる群より選択される1種以上である、請求項1記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記成分(C)が、一般式:R -O-X -(O-X )n-OR (式中、R は、C 1-12 アルキルであり、R は、C 1-12 アルキルであり、X 及びX は、各々独立して、エステル基で中断されていてもよいC 2-10 アルキレンであり、nは、0以上5以下の整数であるが、但し、エステル基で中断されている箇所は二か所である。)で表される化合物である、請求項1又は2記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
前記カルボン酸が、酢酸、プロピレン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソペンタン酸、ヘプタン酸、ラウリン酸又は安息香酸であり、前記ジカルボン酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸又はアジピン酸である、請求項1又は2記載の光硬化型接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の光硬化型接着剤組成物で貼り合わせた、積層体。
【請求項6】
光学表示体である、請求項5記載の積層体。