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特開2023-119299堰堤構造物及び堰堤構造物の構築方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119299
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】堰堤構造物及び堰堤構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
E02B7/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022115
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】山口 聖勝
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の堰堤に捕捉体を精度よくかつ簡単に構築することができる技術を提供する。
【解決手段】河川の流れ方向において捕捉体が連結される堰堤の上流側に面する壁面における、河川の幅方向に所定の間隔をあけて設けられる捕捉体の複数の柱部材が連結される各位置で複数のアンカーボルトを打ち込み、各位置において全てのアンカープレートが実質的に同一の平面上にあるようにアンカーボルトにアンカープレートを取り付け、かつ、複数の柱部材のうち両端に設けられた柱部材と壁面との間に設けられる側方梁部材が連結される壁面の各位置で複数のアンカーボルトを打ち込み、各位置において全てのアンカープレートが実質的に同一の平面上にあるようにアンカーボルトにアンカープレートを取り付ける取付け工程S11,S12と、対応するアンカープレートに捕捉体の柱部材及び側方梁部材を連結する連結工程S31,S32と、を含むことから構成される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の流れ方向において捕捉体が連結される堰堤の上流側に面する壁面における、前記河川の幅方向に所定の間隔をあけて設けられる前記捕捉体の複数の柱部材が連結される各位置で複数のアンカーボルトを打ち込み、前記各位置において全てのアンカープレートが実質的に同一の平面上にあるように前記アンカーボルトにアンカープレートを取り付け、かつ、前記複数の柱部材のうち両端に設けられた柱部材と前記壁面との間に設けられる梁部材が連結される前記壁面の各位置で複数のアンカーボルトを打ち込み、前記各位置において全てのアンカープレートが実質的に同一の平面上にあるように前記アンカーボルトにアンカープレートを取り付ける取付け工程と、
対応する前記アンカープレートにそれぞれ、前記捕捉体の前記柱部材及び前記梁部材を連結する連結工程と、
を含むことを特徴とする堰堤構造物の構築方法。
【請求項2】
前記壁面と前記アンカープレートとの間の間隔を、前記アンカーボルトに対して前記アンカープレートを移動させることにより調整することを特徴とする請求項1に記載の堰堤構造物の構築方法。
【請求項3】
前記アンカーボルトとして構造用アンカーボルトを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の堰堤構造物の構築方法。
【請求項4】
前記アンカープレートと前記壁面との間に無収縮モルタルを充填する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の堰堤構造物の構築方法。
【請求項5】
前記アンカープレートと前記柱部材及び前記梁部材の一端との連結部分に対してコンクリートを打設して前記壁面に根巻き部を構築する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の堰堤構造物の構築方法。
【請求項6】
前記アンカーボルトを介して前記アンカープレートに連結される前記柱部材及び前記梁部材それぞれの一端に設けられたベースプレートは、前記アンカーボルトが挿通される孔を有し、該孔の内周面と前記アンカーボルトの外周面との間の隙間を介して前記壁面に対する前記柱部材及び前記梁部材の固定位置を調整することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の堰堤構造物の構築方法。
【請求項7】
前記アンカーボルトを介して前記アンカープレートに連結される一端に設けられたベースプレートと、前記ベースプレートにおいて前記柱部材及び前記梁部材それぞれにおける各前記アンカーボルトを挟むように設けられた複数のリブプレートと、を有する前記柱部材及び前記梁部材を使用することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の堰堤構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堰堤構造物及び堰堤構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部等の河川においては、台風や大雨による土砂災害を防止するため、堰堤が設置される(例えば、特許文献1参照)。堰堤は、水を通過させつつも土石流に含まれる岩石や流木が通過することを抑えるものであり、その壁部にて土石流の勢いを弱めると共に、岩石や流木を堰き止める働きをしている。
【0003】
近年では、水の通過を遮ることなく、岩石や流木だけを捕捉するため、堰堤の一部にスリットを形成し、このスリットに鋼管等で柵状に構築された捕捉体を設けた、いわゆる透過型堰堤が構築されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、土砂災害による被害を抑えるため、捕捉体が設けられていない既存の不透過型の堰堤において上流壁面に捕捉体を新たに設置する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2-55566号公報
【特許文献2】特開2015-63840号公報
【特許文献3】特開2021-085198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、捕捉体が新たに設けられる既存の堰堤の上流壁面には、堰堤自体の経年劣化等により不陸が発生していたり、土石流等により欠損していたり変形している部分がある。上流壁面が変形していると、既存の堰堤に正確かつ確実に捕捉体を設置することが困難になることがあるため、変形した部分を均したりして補修等する必要がある。
【0007】
例えば、特許文献3のように、上流壁面に鋼製の型枠を設置し、型枠にコンクリートを打設して、既存の堰堤の上流壁面に平坦な面を有する調整コンクリート部を構築する対策が検討されてきた。この対策においては、コンクリートの硬化を待って調整コンクリートの構築後に、アンカーボルトを打ち込む工程などがあり、後工程を考慮すると調整コンクリート表面を精度よく平坦な面にする必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、既存の堰堤に捕捉体を精度よくかつ簡単に構築することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、水通し部を有する既設の不透過型の堰堤に捕捉体を追加的に設置して堰堤構造物を構築する構築方法であって、河川の流れ方向において捕捉体が連結される堰堤の上流側に面する壁面における、前記河川の幅方向に所定の間隔をあけて設けられる前記捕捉体の複数の柱部材が連結される各位置で複数のアンカーボルトを打ち込み、前記各位置において全てのアンカープレートが実質的に同一の平面上にあるように前記アンカーボルトにアンカープレートを取り付け、かつ、前記複数の柱部材のうち両端に設けられた柱部材と前記壁面との間に設けられる梁部材が連結される前記壁面の各位置で複数のアンカーボルトを打ち込み、前記各位置において全てのアンカープレートが実質的に同一の平面上にあるように前記アンカーボルトにアンカープレートを取り付ける取付け工程と、対応する前記アンカープレートにそれぞれ、前記捕捉体の前記柱部材及び前記梁部材を連結する連結工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る構築方法の一態様においては、前記壁面と前記アンカープレートとの間の間隔を、前記アンカーボルトに対して前記アンカープレートを移動させることにより調整してもよい。
【0011】
また、本発明に係る構築方法の一態様においては、前記アンカーボルトとして構造用アンカーボルトを使用してもよい。
【0012】
また、本発明に係る構築方法の一態様においては、前記アンカープレートと前記壁面との間に無収縮モルタルを充填する工程をさらに含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明に係る構築方法の一態様においては、前記アンカープレートと前記柱部材及び前記梁部材の一端との連結部分に対してコンクリートを打設して前記壁面に根巻き部を構築する工程をさらに含んでいてもよい。
【0014】
また、本発明に係る構築方法の一態様においては、前記アンカーボルトを介して前記アンカープレートに連結される前記柱部材及び前記梁部材それぞれの一端に設けられたベースプレートは、前記アンカーボルトが挿通される孔を有し、該孔の内周面と前記アンカーボルトの外周面との間の隙間を介して前記壁面に対する前記柱部材及び前記梁部材の固定位置を調整してもよい。
【0015】
また、本発明に係る構築方法の一態様においては、前記アンカーボルトを介して前記アンカープレートに連結される一端に設けられたベースプレートと、前記ベースプレートにおいて前記柱部材及び前記梁部材それぞれにおける各前記アンカーボルトを挟むように設けられた複数のリブプレートと、を有する前記柱部材及び前記梁部材を前記アンカープレートに連結してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、既存の堰堤に捕捉体を精度よくかつ簡単に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1の構築方法により構築された堰堤構造物を上流側から見た正面図である。
図2】本発明に係る第1の構築方法により構築された堰堤構造物を上流側から見た斜視図である。
図3】本発明に係る第1の構築方法により構築された堰堤構造物を側方から見た図である。
図4A】本体及び袖部における固定部の斜視図である。
図4B図1のIVB-IVB線に沿った断面図である。
図5A】柱部材の脚部材の側面図である。
図5B】柱部材の第1脚部及び第2脚部と固定部との連結部分を一部拡大して示す図である。
図5C図3におけるVC部分を拡大して示す断面図である。
図6】柱部材の中央直立部材を上流側から見た正面図である。
図7A】柱部材の端部直立部材を上流側から見た正面図である。
図7B】柱部材の端部直立部材を側方から見た側面図である。
図8A図2のVIIIA部を拡大して側方梁部材を示す拡大図である。
図8B】側方梁部材と固定部との連結部分を概略的に示す平面図である。
図8C図3におけるVIIIC部分を拡大して示す断面図である。
図9】第1の構築方法における工程を示すフローである。
図10A】アンカープレートが取り付けられた既設の堰堤を示す正面図である。
図10B】アンカープレートを既設の堰堤に取り付ける工程を説明するための図である。
図11A】固定部に脚部材を連結された状態を示す図である。
図11B】固定部に側方梁部材が連結された状態を示す図である。
図11C】脚部材に直立部材が連結された状態を示す図である。
図12】第2の構築方法により構築された堰堤構造物を上流側から見た正面図である。
図13】第2の構築方法により構築された堰堤構造物の断面図である。
図14】第2の構築方法における工程を示すフローである。
図15】アンカープレートが取り付けられた既設の堰堤を示す正面図である。
図16A】アンカープレートに脚部材が連結された状態を示す図である。
図16B】アンカープレートに側方梁部材が連結された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率等が異なる部分が含まれている場合がある。
【0019】
<堰堤構造物の構成>
図1は、本発明に係る第1の構築方法により構築された堰堤構造物1を上流側から見た正面図である。図2は、本発明に係る第1の構築方法により構築された堰堤構造物1を上流側から見た斜視図である。図3は、本発明に係る第1の構築方法により構築された堰堤構造物1を側方から見た図である。説明の便宜上、河川の幅方向を「W」、河川の流れ方向を「F」、堰堤構造物1の高さ方向を「H」とする。
【0020】
堰堤構造物1は、堰堤2と、捕捉体3とを備えている。本発明に係る堰堤構造物1は、河川に設置されている既存の不透過型の堰堤に捕捉体3を新たに設置して、河川の上流から流れてくる土砂に加えて流木、岩石等(物体)を捕捉する捕捉機能を高めたものである。
【0021】
(堰堤)
堰堤2は、その底部が地盤に埋設されており、河川を横切るように河川の幅方向Wに沿って延在するように構築されている。堰堤2は、不透過型の堰堤として構築されており、例えば、コンクリート又はソイルセメントによって構築されている。なお、堰堤2において、河川の上流側に面する上流壁面211,222又は下流側に面する下流壁面212,223を、複数の鋼製セグメントを連結することにより形成された鋼板壁とし、その内部にコンクリートやソイルセメントを充填してもよい。
【0022】
堰堤2は、本体21と、一対の袖部22と、を有し、一対の袖部22の間に水通し部23が形成されている。本体21は、堰堤2において河川の底側に設けられていて、上流側から流れてくる土砂を堰き止めるように、河川の地盤から高さ方向Hに所定の高さを持って構築されている。本体21は、河川の両岸に接続している。本体21は、側面視において略台形状に形成されている。上流側に面する本体21の上流壁面211は、河川の底側から袖部22に向かって上方に向かうに連れて下流側に傾斜している。また、下流側に面する本体21の下流壁面212は、河川の底側から袖部22に向かって上方に向かうに連れて下流側に傾斜している。上流壁面211の傾斜角度は、下流壁面212の傾斜角度に対して小さくなっている。なお、本体21の上流壁面211及び下流壁面212は、河川の底側から袖部22に向かって鉛直方向に延びていてもよい。
【0023】
上流壁面211には複数の固定部213が形成されている。本実施の形態においては12個の固定部213の列が幅方向Wに沿って2列設けられている。固定部213の一方の列は、固定部213の他方の列に対して堰堤構造物1の高さ方向Hにおいて所定の間隔をあけて設けられている。幅方向Wにおいて各列における両端部の3個の固定部213が袖部22に重なる位置に設けられており、6個の固定部213が水通し部23に重なる位置に設けられている。なお、固定部213の数は、例示であり、堰堤構造物1のサイズ等により適宜変更可能であり、特に限定されない。
【0024】
各袖部22は、本体21の上に設けられている。袖部22は、河川の幅方向Wにおいて互いに間隔をあけて河川の両岸に接続して設けられている。袖部22は、天端面221と、上流壁面222と、下流壁面223と、側壁面224と、を有する。天端面221は、堰堤構造物1の上方に面する平坦な面である。天端面221は、両岸から水通し部23に向かって水平又は略水平に延びており、次いで、後述する側壁面224に向かって斜め下方に本体21に向かって延びている。
【0025】
上流壁面222は、河川の上流側に面していて、本体21の上流壁面211に連続していて、本体21の上流壁面211から鉛直方向に天端面221に向かって延びている。下流壁面223は、河川の下流側に面していて、本体21の下流壁面212に連続していて、下流壁面212から鉛直方向に天端面221に向かって延びている。なお、上流壁面222は、本体21の側から天端面221に向かうに連れて下流側に傾斜していてもよく、また、下流壁面223は、本体21の側から天端面221に向かうに連れて上流側に傾斜していてもよい。
【0026】
各袖部22の上流壁面222には一の固定部225が形成されている。幅方向Wにおいて固定部225は、本体21における固定部213のうち各端の固定部213と重なる位置に設けられている。
【0027】
側壁面224は、上流壁面222と下流壁面223との間を河川の流れ方向Fに沿って延びている。各袖部22における側壁面224は、幅方向Wにおいて所定の間隔をあけて対向しており、側壁面224の間に水通し部23が形成されている。側壁面224は、本体21の側から天端面221に向かって、互いに離れるように傾斜して延びている。
【0028】
水通し部23は、堰堤2における河川の幅方向Wに沿った中央近傍に設けられている。具体的には、水通し部23は、堰堤構造物1が構築される河川の両岸から河川中央に延在する袖部22における側壁面224の間に凹んで形成されている。水通し部23は、上流からの流水を堰堤2の中央近傍に集約して下流に流すために形成されている。
【0029】
(捕捉体)
捕捉体3は、複数の柱部材31と、側方梁部材(梁部材)33と、を有する。捕捉体3は、河川の上流から流れてくる物体を捕捉して流水を通す構造体である。捕捉体3は、堰堤2の本体21及び袖部22に上流側で、流れ方向Fにおいて水通し部23に対向するように設けられている。捕捉体3は、堰堤2の延在方向、すなわち、河川の幅方向Wに沿って設けられている。捕捉体3は、幅方向Wの長さが水通し部23の幅よりも長くなるように構築されている。幅方向Wにおける捕捉体3の両端部は、少なくとも堰堤2の袖部22と対向する位置に配置されている。捕捉体3は、少なくとも一部が堰堤2の水通し部23の底面よりも上方に位置するように堰堤2に設けられている。
【0030】
捕捉体3は、固定部213,225を介して本体21及び袖部22にそれぞれ固定されている。図4Aは、本体21及び袖部22における固定部213,225の斜視図である。図4Bは、図1におけるIVB部分を拡大して示す断面図である。
【0031】
各固定部213は、上流壁面211の法面に対して突出した部分であり、平面視矩形又は略矩形に形成されている。固定部213には、後述する捕捉体3の柱部材31の一端が固定されている。固定部213は、モルタル部214と、鋼板により形成されたアンカープレート215と、例えば、構造用のアンカーボルト216と、を有する。
【0032】
モルタル部214は、例えば、モルタル、特に無収縮モルタルにより形成されている。上流壁面211とは反対の側に面するモルタル部214の面は、アンカープレート215により覆われている。アンカープレート215の表面215aは、上流壁面211に対して平行又は略平行になっている。アンカープレート215は、その中心点周りに等間隔にアンカーボルト216が挿通される孔215bを有している。各固定部213におけるアンカープレート215の表面215aは、幅方向Wにおいて実質的に同一の平面P上にある又は平面Pに含まれるようになっている。
【0033】
ここで「実質的に同一の平面上にあるように又は平面に含まれる」とは、不陸が存在しない理想的な上流壁面211に対して平行な一の仮想の平面Pを想定した場合に、その仮想の平面Pとアンカープレート215の表面215aとが施工公差を含んでなす程度の面一を意味し、必ずしも完全一致を要していない。
【0034】
アンカーボルト216は、上流壁面211に対して垂直又は略垂直に本体21に所定の深さだけ打ち込まれていて、モルタル部214を貫通し、アンカープレート215の孔215bに挿通されている。アンカーボルト216の自由端部側は、アンカープレート215から所定の長さだけ延出している。各固定部213におけるアンカーボルト216の位置は、全て同じである(図4A参照)。
【0035】
各固定部225は、上流壁面222から突出した部分であり、平面視矩形又は略矩形に形成されている。固定部225には、後述する捕捉体3の側方梁部材33の一端が固定されている。固定部225は、モルタル部226と、鋼板により形成されたアンカープレート227と、例えば、構造用のアンカーボルト228と、を有する。
【0036】
モルタル部226は、例えば、モルタル、特に無収縮モルタルにより形成されている。上流壁面222とは反対の側に面するモルタル部226の面は、アンカープレート227により覆われている。アンカープレート227の表面227aは、上流壁面222に対して平行又は略平行になっている。アンカープレート227は、四隅にアンカーボルト228が挿通される孔227bを有している。各固定部225におけるアンカープレート227の表面227aは、幅方向Wにおいて実質的に同一の平面上にある又は平面に含まれるようになっている。
【0037】
ここで「実質的に同一の平面上にあるように又は平面に含まれる」とは、不陸が存在しない理想的な上流壁面222に対して平行な一の仮想平面を想定した場合に、その仮想平面とアンカープレート215の表面227aとが施工公差を含んでなす程度の面一を意味し、必ずしも完全一致を要していない。
【0038】
アンカーボルト228は、上流壁面222に対して垂直又は略垂直に各袖部22に所定の深さだけ打ち込まれていて、モルタル部226を貫通し、アンカープレート227の孔227bに挿通されている。アンカーボルト228の自由端部側は、アンカープレート227から所定の長さだけ延出している。各固定部225におけるアンカーボルト228の位置は、全て同じである(図4A参照)。
【0039】
柱部材31は、主として鋼管により形成されており、本体21における各固定部213に対して固定されている(図3参照)。具体的には、2列の固定部213のうち幅方向Wにおいて同じ位置にある2つの固定部213に対して一の柱部材31が固定されている。柱部材31は、幅方向Wに沿って互いに所定の間隔をおいて設けられていて、かつ流れ方向Fにおいて堰堤2に対して所定の間隔をあけて設けられている。隣接する柱部材31の間隔は、河川を流れてくると想定される流木の長さの半分の長さ、又は、河川を流れてくると想定される最大の礫径の2倍に相当する長さであることが好ましい。
【0040】
柱部材31は、脚部材310と、直立部材313と、を有する。なお、説明の便宜上、柱部材31のうち河川の幅方向Wにおいて中央の柱部材31を中央柱部材31a、両端の柱部材31を端部柱部材31bともいう(図1及び図2参照)。特に、両者を区別する必要がない場合には、単に「柱部材31」という。脚部材310は、二叉状に形成されていて、互いに一体に製造されている第1脚部311と第2脚部312とを有する。
【0041】
図5Aは、柱部材31の脚部材310の側面図である。図5Bは、柱部材31の第1脚部311及び第2脚部312と固定部213との連結部分を一部拡大して示す図である。図5Cは、図3におけるVC部分を拡大して示す断面図である。第1脚部311は、一端において本体21において2列ある固定部213の列のうち、下側にある固定部213に固定されている。第1脚部311は、固定部213から上流側に向かって斜め上方に延びている。第1脚部311は、堰堤構造物1の高さ方向Hにおいて袖部22の上流壁面222又は水通し部23に少なくとも対向する位置にまで延在している。
【0042】
第1脚部311は、固定部213に連結される側の一端にベースプレート311aを有する。ベースプレート311aは、平面視円形又は略円形の鋼材により形成されている。ベースプレート311aの外周部は、第1脚部311の管状部分から外側に円環状に張り出している。ベースプレート311aには周方向に所定の間隔で4個の孔311bが設けられている。孔311bの内径は、アンカーボルト216の直径よりも大きく、アンカーボルト216が孔311bに挿通された状態において、孔311bの内周とアンカーボルト216の外周面との間には、固定部213に第1脚部311を連結する際の施工誤差を吸収することができる程度の隙間がある。
【0043】
第1脚部311のベースプレート311aの各孔311bからアンカーボルト216が延出しており、アンカーボルト216の延出した部分にナットN1が締結されている。これによって第1脚部311は、アンカープレート215に対して連結されて固定部213を介して本体21に固定されている。
【0044】
第1脚部311は、ベースプレート311aの側の端部に8枚のリブプレート311cを有する。リブプレート311cは、第1脚部311の外周面において周方向に等間隔をあけて設けられており、第1脚部311の管状部分及びベースプレート311aに、例えば、溶接により立設して取り付けられている。
【0045】
リブプレート311cは、直角三角形又は略直角三角形状に形成されており、直角部分が第1脚部311の管状部分とベースプレート311aとの移行部に対応するように設けられている。リブプレート311cの斜辺の一方の端は、ベースプレート311aの周縁に達していて、他方の端は、一方の端に対してベースプレート311aから離れた第1脚部311の管状部分に位置している。4本のアンカーボルト216はそれぞれ、2枚のリブプレート311cの間に位置している。
【0046】
第1脚部311の他端は、その延び方向が鉛直方向に延びるようになっていて、フランジプレート311dを有する。第1脚部311は、フランジプレート311dを介して、後述する直立部材313と連結されている。なお、フランジプレート311dは、リブプレート311cを有していない点を除いてベースプレート311aと同じ構成を有している。
【0047】
第2脚部312は、一端において本体21において2列ある固定部213の列のうち、上側にある固定部213に固定されている。第2脚部312は、固定部213から上流側に向かって斜め上方に延びている。第2脚部312は、他端において第1脚部311に一体に連結されている。柱部材31の第1脚部311及び第2脚部312は、側面視略λ形状に構築されている。
【0048】
第2脚部312が上流側の川底の傾斜に沿うように配置されていると、土石流の力を第2脚部312の軸線方向に沿って受けることができる。第2脚部312により、本体21の上流壁面211から捕捉体3を引き剥がそうとする力を小さく抑えることができるので好ましい。
【0049】
第2脚部312は、固定部213に連結される側の一端にベースプレート312aを有する。ベースプレート312aは、平面視円形又は略円形の鋼材により形成されている。ベースプレート312aの外周部は、第2脚部312の管状部分から外側に円環状に張り出している。ベースプレート312aには周方向に所定の間隔で4個の孔312bが設けられている。孔312bの内径は、アンカーボルト216の直径よりも大きく、アンカーボルト216が孔312bに挿通された状態において、孔312bの内周とアンカーボルト216の外周面との間には、固定部213に第2脚部312を連結する際の施工誤差を吸収することができる程度の隙間がある。
【0050】
第2脚部312のベースプレート312aの各孔312bからアンカーボルト216が延出しており、アンカーボルト216の延出した部分にナットN1が締結されている。これによって第2脚部312は、アンカープレート215に対して連結されて固定部213を介して本体21に対して固定されている。
【0051】
第2脚部312は、ベースプレート312aの側の端部に8枚のリブプレート312cを有する。リブプレート312cは、第1脚部311の外周面において周方向に等間隔をあけて設けられており、第2脚部312の管状部分及びベースプレート312aに、例えば、溶接により立設して取り付けられている。
【0052】
リブプレート312cは、直角三角形又は略直角三角形状に形成されており、直角部分が第2脚部312の管状部分とベースプレート312aとの移行部に対応するように設けられている。リブプレート312cの斜辺の一方の端は、ベースプレート312aの周縁に達していて、他方の端は、一方の端に対してベースプレート312aから離れた第2脚部312の管状部分に位置している。4本のアンカーボルト216はそれぞれ、2枚のリブプレート312cの間に位置している。
【0053】
直立部材313は、一端が第1脚部311のフランジプレート311dに連結されている。直立部材313は、上流側に傾斜して延在している第1脚部311から上方に、柱部材31の斜めの延在方向を鉛直方向に変えるようにして設けられている。なお、直立部材313のうち、中央柱部材31aに連結される部材を中央直立部材313aと呼称し、端部柱部材31bに連結される部材を端部直立部材313bと呼称する。特に、両者を区別する必要がない場合には、単に「直立部材313」という。
【0054】
図6は、柱部材31の中央直立部材313aを上流側から見た正面図である。中央直立部材313aは、直立部314と、一対の梁部315と、を有する。直立部314は、第1脚部311に連結されて鉛直方向又は略鉛直方向に延びている。直立部314は、柱部材31の中央柱部材31aのフランジプレート311dと連結されるフランジプレート314aを有する。
【0055】
中央直立部材313aは、一対の梁部315を有する。一対の梁部315は、第1脚部311と連結される端部とは反対の側の端部寄りの側で、直立部314に対して交差して幅方向Wに互いに対向して直立部314から延出している。各梁部315の自由端部には、ベースプレート315aが設けられている。直立部314は、幅方向Wに隣合う中央柱部材313aの梁部315のフランジプレート315a、及び後述する端部直立部材313bのフランジプレート317aを介して互いに連結される。
【0056】
図7Aは、柱部材31の端部直立部材313bを上流側から見た正面図である。図7Bは、柱部材31の端部直立部材313bを側方から見た側面図である。ここでは、上流側から見て左端の端部直立部材313bを例にして説明する。端部直立部材313bは、直立部316と、2つの梁部317,318と、を有する。直立部316は、一端において第1脚部311と連結されている。梁部317,318はそれぞれ互いに直角をなして直立部316の外周面から鉛直方向又は略鉛直方向に延出している。
【0057】
直立部316が第1脚部311に連結された状態において、梁部317は、幅方向Wに延びており、梁部318は、流れ方向Fに延びている。両梁部317,318はそれぞれフランジプレート317a,318aを有する。梁部317は、フランジプレート317aを介して中央直立部材313aの梁部315と連結され、梁部318は、フランジプレート318aを介して、後述する側方梁部材33と連結されている。全ての第1脚部311に直立部材313が連結された状態において、幅方向Wにおいて隣合う直立部材313の梁部315,317は、互いに連結されて、捕捉体3の上流側に面していて幅方向Wに延在する梁32を形成している(図1及び図2参照)。
【0058】
図8Aは、図2のVIIIA部を拡大して側方梁部材33を示す拡大図である。図8Bは、側方梁部材33と固定部225との連結部分を概略的に示す平面図である。図8Cは、図3におけるVIIIC部分を拡大して示す断面図である。側方梁部材33は、一端が端部柱部材31bに連結されていて、他端が固定部225を介して袖部22に固定されている。側方梁部材33は、捕捉体3に対して側方から廻り込む流木等の物体を捕捉する。側方梁部材33は、梁部331と、2つの直立部332と、を有する。
【0059】
梁部331は、固定部225に連結される側の一端にベースプレート331aと、端部柱部材31bの梁部331と連結される側の一端にフランジプレート331bと、を有する。ベースプレート331aは、平面視円形又は略円形の鋼材により形成されている。ベースプレート331aの外周部は、梁部331の管状部分から外側に円環状に張り出している。ベースプレート331aには周方向に所定の間隔で4個の孔331dが設けられている。ベースプレート331aの孔331dの内径は、後述するアンカーボルト228の直径よりも大きく、後述するアンカーボルト228がベースプレート331aの孔に挿通された状態において、孔331dの内周とアンカーボルト216の外周面との間には、本体21に第2脚部312を連結する際の施工誤差を吸収することができる程度の隙間がある。
【0060】
各孔からアンカーボルト228が延出しており、アンカーボルト228の延出した部分にナットN2が締結されている。これによって側方梁部材33は、アンカープレート227に対して連結されて固定部225を介して袖部22に固定されている。
【0061】
側方梁部材33は、ベースプレート331aの側の端部に8枚のリブプレート331cを有する。リブプレート331cは、側方梁部材33の外周面において周方向に等間隔をあけて設けられており、側方梁部材33の管状部分及びベースプレート331aに、例えば、溶接により立設して取り付けられている。
【0062】
リブプレート331cは、直角三角形又は略直角三角形状に形成されており、直角部分が側方梁部材33の管状部分とベースプレート331aとの移行部に対応するように設けられている。リブプレート331cの斜辺の一方の端は、ベースプレート331aの周縁に位置していて、他方の端は、一方の端に対してベースプレート331aから離れた側方梁部材33の管状部分に位置している。4本のアンカーボルト228はそれぞれ、2枚のリブプレート331cの間に位置している。なお、フランジプレート331bの構成は、リブプレート331cを有していない点を除いてベースプレート331aと同じ構成を有している。
【0063】
2つの直立部332は、梁部331の外周面から鉛直方向又は略鉛直方向において2方向(上下方向)に突き出ている。直立部332は、梁部331の延在方向(流れ方向F)に沿って互いに所定の間隔をあけて設けられている。
【0064】
<第1の構築方法>
以下に、既設の不透過型の堰堤100に捕捉体3を設置して堰堤構造物1を構築する工程について説明する。図9は、第1の構築方法における工程を示すフローである。本発明に係る堰堤構造物1の構築方法は、水通し部23を有する既設の不透過型の堰堤100に捕捉体3を追加的に設置して堰堤構造物1を構築する構築方法であって、河川の流れ方向Fにおいて捕捉体3が連結される堰堤100の上流側に面する壁面211における、河川の幅方向Wに所定の間隔をあけて設けられる捕捉体3の複数の柱部材31が連結される各位置で複数のアンカーボルト216を打ち込み、各位置において全てのアンカープレート217が実質的に同一の平面P上にあるようにアンカーボルト216にアンカープレート217を取り付け、かつ、複数の柱部材31のうち両端に設けられた柱部材31bと壁面222との間に設けられる側方梁部材33が連結される壁面222の各位置で複数のアンカーボルト228を打ち込み、各位置において全てのアンカープレート227が実質的に同一の平面上にあるようにアンカーボルト228にアンカープレート227を取り付ける取付け工程S11,S12と、対応するアンカープレート215,227に捕捉体3の柱部材31及び側方梁部材33を連結する連結工程S31,S32と、を含むことを特徴とする。以下に本発明に係る堰堤構造物1の構築方法について具体的に説明する。
【0065】
既存の堰堤100の上流壁面211,222は、例えば、経年劣化等により不陸が生じていることがある。上流壁面211,222に不陸があると、上流壁面211,222に取り付けられる捕捉体3の各柱部材31に施工誤差が発生し、捕捉体3を既存の堰堤100に正確かつ確実に施工することが困難になることがある。
【0066】
図10Aは、アンカープレート215,227が取り付けられた既設の堰堤100を示す正面図である。図10Bは、アンカープレート215,227を既設の堰堤100に取り付ける工程を説明するための図である。本発明においては、まず、捕捉体3の各柱部材31及び側方梁部材33が連結されるアンカープレート215,227を上流壁面211,222に対して取り付ける(柱用アンカープレート取付け工程S11及び側方梁部材用アンカープレート取付け工程S12)。この場合、上流壁面211に取り付けられる柱部材31用のアンカープレート215は、例えば、全てのアンカープレート215が実質的に同一の平面P上にあるように上流壁面211に取り付けられる。
【0067】
柱用アンカープレート取付け工程S11においては、まず、柱部材31の脚部材310の固定位置を確定するために、上流壁面211に墨出しを行う。墨出しに基づいて、柱部材31が設置される本体21の上流壁面211の各位置に4本ずつアンカーボルト216を打ち込む。次いで、4本のアンカーボルト216にそれぞれナットN3(図4B参照)を締結して、アンカープレート215をアンカーボルト216に取り付ける。この作業を、柱部材31が設置される各位置で行う。次いで、全てのアンカープレート215が実質的に同一の平面P上にあるかを確認する。
【0068】
例えば、いずれかの位置におけるアンカープレート215が他の位置におけるアンカープレート215に対して上流壁面211から離れた位置にある(同一の平面P上にない)場合、アンカーボルト216に取り付けられているナットN3の位置を調整することにより、アンカープレート215の位置を調整することができる。
【0069】
また、側方梁部材用アンカープレート取付け工程S12においては、まず、柱部材31の脚部材310の固定位置を確定するために、上流壁面211に墨出しを行う。墨出しに基づいて、側方梁部材33が設置される各袖部22の上流壁面221の位置に4本ずつアンカーボルト228を打ち込む。次いで、4本のアンカーボルト228にそれぞれナットN4(図5参照)を締結して、アンカープレート227をアンカーボルト228に取り付ける。次いで、全てのアンカープレート227が実質的に同一の平面上にあるかを確認する。
【0070】
例えば、いずれかの位置におけるアンカープレート227が他の位置におけるアンカープレート227に対して上流壁面222から離れた位置にある(同一の平面上にない)場合、アンカーボルト228に取り付けられているナットN4の位置を調整することにより、アンカープレート227の位置を調整することができる。
【0071】
なお、柱用アンカープレート取付け工程S11及び側方梁部材用アンカープレート取付け工程S12が実施される順序は、特に限定されない。
【0072】
次に、各アンカープレート215,227と、上流壁面211,222との間の隙間を、例えば、モルタル、特に無収縮モルタルにより充填(モルタル充填工程S21)して、モルタル部214,226を形成する。具体的には、袖部22の天端面221の側を除いて各アンカープレート215,227の周囲に型枠(図示せず)を設置し、モルタルを型枠内に流し込む。型枠は、モルタルの硬化後に撤去される。これにより、本体21における固定部213及び袖部22における固定部225が形成される(固定部形成工程S22)。
【0073】
図11Aは、固定部213に脚部材310を連結された状態を示す図である。図11Bは、固定部225に側方梁部材33が連結された状態を示す図である。図12Cは、脚部材310に直立部材313が連結された状態を示す図である。次に、各固定部213,225に柱部材31及び側方梁部材33を連結する(柱部材連結工程S31及び側方梁部材連結工程S32)。まず、クレーンにより脚部材310を吊り上げた状態において、第1脚部311のベースプレート311a及び第2脚部312のベースプレート312aの孔311b,312bにそれぞれアンカーボルト216を挿通させる。脚部材310を吊り上げた状態で所望の位置・姿勢を決定し、各ベースプレート311a,312aから突き出たアンカーボルト216にナットN1を締結する。これにより、脚部材310が固定部213に対して連結される。
【0074】
固定部213への脚部材310の連結は、捕捉体3の設置幅の中央から、左右交互に行い、各中央柱部材31aに中央直立部材313aを連結する。また、隣り合う脚部材310を長さ調整自在な2つの連結材(図示せず)を介して互いに連結してもよい。
【0075】
次に、側方梁部材33が取り付けられる位置にクレーンにより吊された状態の側方梁部材33を接近させる。側方梁部材33の梁部331におけるベースプレート331aの孔に、固定部225から突出しているアンカーボルト228を挿通し、各ベースプレート331aから突き出たアンカーボルト228にナットN2を締結する。これにより、側方梁部材33が固定部225に対して連結される。
【0076】
次いで、端部直立部材313bを中央直立部材313a及び側方梁部材33に連結する。端部柱部材31b及び中央直立部材313aは、互いにそれぞれのフランジプレート317b,315aを介して互いに連結される。また、側方梁部材33及び端部直立部材313bは、互いにそれぞれのフランジプレート331b,318aを介して互いに連結される。以上の工程により、既存の堰堤100に捕捉体3が設置された堰堤構造物1が構築される。
【0077】
上記の構築方法によれば、既存の堰堤100に捕捉体3を取り付けるために、本体21の上流壁面211及び袖部22の上流壁面222のそれぞれに固定部213,225を設けるので、既存の堰堤100に不陸があった場合であっても捕捉体3を精度よくかつ簡単に構築することができる。
【0078】
本発明に係る第1の構築方法によれば、各固定部213,225におけるアンカープレート215,227はそれぞれ、実質的に同一の平面上に含まれるように調整されて各アンカーボルト216,228に取り付けられる。これにより、既設の堰堤100の上流壁面211,222に不陸があった場合であっても、不陸による不都合な影響を受けることなく、捕捉体3を既設の堰堤100に設置することができる。既存の堰堤100の上流壁面211,222に付加的に固定部213,固定部225を形成することにより、既存の堰堤100そのものを削って平坦な部分を形成する必要はない。
【0079】
さらに、固定部213,225においては、構造用のアンカーボルト216,228を使用しているので、例えば、据付用のアンカーボルトに比べて外力に対する耐力が増し、固定部213,225と柱部材31との連結部をコンクリートにより覆う必要はない。
【0080】
さらに、固定部213,225においては、モルタル部214,226が無収縮モルタルにより形成されているので、硬化時の膨張や硬化後の収縮を抑制することができ、固定部213,225の強度を確保することができるとともに、耐水性にも優れているので、経年劣化しにくい。
【0081】
さらに、柱部材31の第1脚部311及び第2脚部312にはリブプレート311c,312cがアンカーボルト216,228を挟むように立設しているので、柱部材31における固定部213,225の側の強度が高まるとともに、アンカーボルト216,228に対する礫等の直接的な衝突を回避することができる。
【0082】
<第2の構築方法>
以上、本発明の好適な実施の形態及について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、上記実施の形態の各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記第1の構築方法においては、柱部材31及び側方梁部材33を固定する位置に、無収縮モルタルにより形成された固定部213,225を設けたが、コンクリ-トによる根巻き部213A,225Aを形成してもよい。
【0083】
図12は、本発明に係る第2の構築方法により構築された堰堤構造物1Aを上流側から見た正面図である。なお、以下では、堰堤構造物1と異なる部分についてのみ説明する。堰堤構造物1Aは、堰堤2と、捕捉体3とを備えている。堰堤構造物1は、河川に設置された既存の不透過型の堰堤の堰堤2に捕捉体3を新たに設置して、河川の上流から流れてくる土砂に加えて流木、岩石等(物体)を捕捉する捕捉機能を高めたものである。第2の構築方法においては、リブプレート311c,312c,331cを有していない柱部材31及び側方梁部材33が使用される。
【0084】
堰堤2は、本体21と、一対の袖部22と、水通し部23と、を有する。本体21の上流壁面211には、コンクリート製の根巻き部213Aが形成されている。図13は、第2の構築方法により構築された堰堤構造物1Aの断面図である。根巻き部213Aは、平面視矩形又は略矩形に形成されていて、幅方向Wにおいて柱部材31を越えて設けられており、高さ方向Hにおいては、例えば、水通し部23の底面から第1脚部311を少し越えた位置まで設けられている。なお、高さ方向Hにおいて根巻き部213Aは、堰堤構造物1Aが設置される河川の設置面にまで延びていてもよい。
【0085】
根巻き部213Aには第1脚部311及び第2脚部312の一端が埋設されている。さらに、根巻き部213Aの内部には、柱部材31が設置される各位置に、アンカープレート215と、例えば、据付用のアンカーボルト216Aと、が設けられていて、第1脚部311及び第2脚部312はそれぞれ、対応するアンカープレート215に連結されている。アンカープレート215の表面215aは、実質的に同一の平面上にある又は平面に含まれるようになっている。
【0086】
各袖部22の上流壁面222には一の根巻き部225Aが形成されている。根巻き部225Aは、コンクリ-トにより形成されていて、幅方向Wにおいて両端にある柱部材31と同じ位置にある。各根巻き部225Aは、上流壁面222から突出した部分であり、平面視矩形又は略矩形に形成されている。根巻き部225Aには、側方梁部材33の一端が埋設されている。なお、根巻き部225Aの内部には、アンカープレート227と、例えば、据付用のアンカーボルト228Aと、が設けられていて、側方梁部材33は、アンカープレート227に連結されている。2つのアンカープレート227の表面227aは、実質的に同一の平面上にある又は平面に含まれるようになっている。
【0087】
以下に、既設の不透過型の堰堤100に捕捉体3を設置して捕捉体3付きの堰堤構造物1Aを構築する工程について説明する。図14は、第2の構築方法における工程を示すフローである。図16は、アンカープレートが取り付けられた既設の堰堤を示す正面図である。
【0088】
第2の構築方法においては、まず、捕捉体3の各柱部材31及び側方梁部材33が取り付けられるアンカープレート215,227を上流壁面211,222に対して取り付ける。になるように上流壁面211,222に対してアンカープレート215,227を取り付ける(柱用アンカープレート取付け工程S11A及び側方梁部材用アンカープレート取付け工程S12A)。この場合、上流壁面211に取り付けられる柱部材31用のアンカープレート215は、例えば、全てのアンカープレート215が実質的に同一の平面上にあるように取り付けられる。
【0089】
柱用アンカープレート取付け工程S11Aにおいては、まず、柱部材31の脚部材310の固定位置を確定するために、上流壁面211に墨出しを行う。墨出しに基づいて、柱部材31が設置される本体21の上流壁面211の各位置に4本ずつアンカーボルト216を打ち込む。次いで、4本のアンカーボルト216にそれぞれナットN3を締結して、アンカープレート215をアンカーボルト216に取り付ける。この作業を、柱部材31が設置される各位置で行う。次いで、全てのアンカープレート215が実質的に同一の平面上にあるかを確認する。
【0090】
例えば、いずれかの位置におけるアンカープレート215が他の位置におけるアンカープレート215に対して上流壁面211から離れた位置にある(同一の平面P上にない)場合、アンカーボルト216に取り付けられているナットN3の位置を調整することにより、アンカープレート215の位置を調整することができる。
【0091】
また、側方梁部材用アンカープレート取付け工程S12Aにおいては、まず、柱部材31の脚部材310の固定位置を確定するために、上流壁面211に墨出しを行う。墨出しに基づいて、側方梁部材33が設置される各袖部22の上流壁面221の位置に4本ずつアンカーボルト228を打ち込む。次いで、4本のアンカーボルト228にそれぞれナットN4を締結して、アンカープレート227をアンカーボルト228に取り付ける。次いで、全てのアンカープレート227が実質的に同一の平面上にあるかを確認する。
【0092】
例えば、いずれかの位置におけるアンカープレート227が他の位置におけるアンカープレート227に対して上流壁面222から離れた位置にある(同一の平面上にない)場合、アンカーボルト228に取り付けられているナットN4の位置を調整することにより、アンカープレート227の位置を調整することができる。
【0093】
なお、柱用アンカープレート取付け工程S11A及び側方梁部材用アンカープレート取付け工程S12Aが実施される順序は、特に限定されない。
【0094】
図16Aは、アンカープレート215に脚部材31が連結された状態を示す図である。図16Bは、アンカープレート227に側方梁部材33が連結された状態を示す図である。次に、各アンカープレート215,227に柱部材31及び側方梁部材33を連結する(柱部材連結工程S21A及び側方梁部材連結工程S22A)。
【0095】
クレーンにより脚部材310を吊り上げた状態において、第1脚部311のベースプレート311a及び第2脚部312のベースプレート312aの孔311b,312bにそれぞれアンカーボルト216を挿通させる。脚部材310を吊り上げた状態で所望の位置・姿勢を決定し、各ベースプレート311a,312aから突き出たアンカーボルト216にナットN1を締結する。これにより、脚部材310がアンカープレート215に対して連結される。
【0096】
アンカープレート215への脚部材310の連結は、捕捉体3の設置幅の中央から、左右交互に行い、各中央柱部材31aに中央直立部材313aを連結する。この場合、端部柱部材31bに対して、端部直立部材313bは連結されない。また、隣り合う脚部材310を長さ調整自在な2つの連結材(図示せず)を介して互いに連結してもよい。
【0097】
次に、側方梁部材33が取り付けられる位置にクレーンにより吊された状態の側方梁部材33を接近させる。側方梁部材33の梁部331におけるベースプレート331aの孔に、アンカープレート227から突出しているアンカーボルト228を挿通し、各ベースプレート331aから突き出たアンカーボルト228にナットN2を締結する。これにより、側方梁部材33がアンカープレート227に対して連結される。
【0098】
次いで、端部直立部材313bを中央柱部材31a及び側方梁部材33に連結する。中央柱部材31a及び端部柱部材31bは、互いにそれぞれのベースプレート317b,315aを介して互いに連結される。また、側方梁部材33及び端部直立部材313bは、互いにそれぞれのベースプレート331b,318aを介して互いに連結される。
【0099】
次に、各アンカープレート215,227と、捕捉体3の柱部材31及び側方梁部材33との連結部分の周辺にコンクリートを打設(コンクリート打設工程S31A)して、根巻き部213Aを形成する(図12及び図13参照)。具体的には、柱部材31における全ての脚部材310を、袖部22の天端面221の側を除いて幅方向W及び高さ方向Hに囲むように型枠(図示せず)を設置し、コンクリートを型枠内に流し込む。型枠は、コンクリートの硬化後に撤去される。これにより、捕捉体3の柱部材31及び側方梁部材33とアンカープレート215,227との連結部分は、根巻き部213Aにより覆われる(根巻き部形成工程S32A)。以上の工程により、既存の堰堤100に捕捉体3が設置された堰堤構造物1Aが構築される。
【0100】
第2の構築方法においては、第1の構築方法と同様の効果を奏することができる。さらに、第2の構築方法によれば、既存の堰堤100に捕捉体3を取り付けるために、本体21の上流壁面211及び袖部22の上流壁面222のそれぞれに、柱部材31及び側方梁部材33の一端が埋設された根巻き部213Aが設けられている。これにより、本体21と柱部材31及び袖部22と側方梁部材33との合成を高めることができる。
【0101】
また、柱部材31及び側方梁部材33の一端は、根巻き部213Aに埋設されていて、アンカープレート215,227との連結部分は、根巻き部213A内にあるので、連結部分へ礫などが直接的に衝突することは防がれている。
【0102】
なお、第2の構築方法において、柱部材31の第1脚部311及び第2脚部312にリブプレート311c,312cが設けられていてもよく、また、側方梁部材33にリブプレート331cが設けられていてもよい。これにより、捕捉体3の耐性を高めることができる。
【符号の説明】
【0103】
1,1A・・・堰堤構造物
2・・・堰堤
21・・・本体、22・・・袖部、23・・・水通し部
211,222・・・上流壁面(壁面)、213,225・・・固定部、213A,225A・・・根巻き部、214,226・・・モルタル部、215,227・・・アンカープレート、216,216A,228,228A・・・アンカーボルト
3・・・捕捉体
31・・・柱部材、32・・・梁、33・・・側方梁部材(梁部材)
100・・・既存の不透過型の堰堤
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B