(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119305
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】積層フィルム、食品包装容器用蓋材および食品包装容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20230821BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B32B27/36
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022128
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】玉利 昇
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD24
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA33
3E086BA44
3E086BB51
3E086BB84
3E086BB90
3E086CA01
3E086DA01
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AL05B
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100AT00A
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4F100BA03
4F100BA07
4F100CA18B
4F100CC01B
4F100EH171
4F100EH17A
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4F100EH46B
4F100EJ38A
4F100GB16
4F100GB18
4F100HB31C
4F100JA05B
4F100JK03
4F100JK06B
4F100JK10
4F100JL07B
4F100JL12B
4F100YY00
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】防曇性、易開封性、耐衝撃性および耐ブロッキング性のいずれも良好な積層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも基材層と防曇層の2層を有する積層フィルムであり、(a)120℃、140℃、160℃、180℃の各温度ヒートシール強度がいずれも2.0N/15mm以上、12.0N/15mm以下であり、(b)5℃、50%R.H.条件下での水接触角が50°以下であり、(c)積層フィルムの防曇層面と基材層面の剥離強度が1N/15mm以下であり、(d)5℃条件下での衝撃強度が0.5J以上であり、(e)5℃条件下での引裂強さが、前記積層フィルムのMD方向およびTD方向のいずれも100mN以上 であり、(f)前記積層フィルムの厚みムラが、MD方向およびTD方向のいずれの値も10%以下である、積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と防曇層の2層を有する積層フィルムであり、
(a)前記積層フィルムの防曇層面と厚み200μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートとを、0.2MPa、1秒間で120℃、140℃、160℃、180℃の各温度でヒートシールを行い、15mm幅の試験片を用いて測定するヒートシール強度がいずれも2.0N/15mm以上、12.0N/15mm以下であり、
(b)5℃、50%R.H.条件下で、前記積層フィルムの防曇層の表面に1μLの蒸留水を滴下し、5秒後に測定する水接触角が50°以下であり、
(c)前記積層フィルムの防曇層面と前記積層フィルムの基材層面を重ね合わせ、450kgf/m2の荷重で40℃条件下、1週間静置した後、15mm幅の試験片を用いて測定する剥離強度が1.0N/15mm以下であり、
(d)振り子式衝撃試験における、5℃条件下での衝撃強度が0.5J以上であり、
(e)5℃条件下での引裂強さが、前記積層フィルムのMD方向およびTD方向のいずれも100mN以上であり、
(f)下記式(1)の計算式により求められる前記積層フィルムの厚みムラが、MD方向およびTD方向のいずれの値も10%以下である、
積層フィルム。
式(1) 厚みムラ(%)=(Tmax-Tmin)/Tave×100
Tmax:積層フィルムの最大厚み
Tmin:積層フィルムの最小厚み
Tave:積層フィルムの平均厚み
【請求項2】
前記積層フィルムから切り出した長さ200mmのサンプルの0.5mm間隔のフィルム厚みをグラフにした場合に現れる、厚みの凹凸パターンにおいて、凸部の最大厚みと凹部の最小厚みの差が最も大きい部分を最大凸部としたとき、下記式(2)の計算式により求められる最大凸部の厚みムラが、MD方向およびTD方向のいずれの値も6%以下である、請求項1に記載の積層フィルム。
式(2) 最大凸部の厚みムラ(%)=(最大凸部の最大厚み-最大凸部の最小厚み)/Tave×100
【請求項3】
5℃条件下で測定した、前記積層フィルムのMD方向の引裂強さに対するTD方向の引裂強さの強度比(引裂強さMD/引裂強さTD)が0.6~1.5である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
アッベ屈折計を用い、式(3)の計算式により求められる前記積層フィルムの配向係数が0.6~1.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
式(3) 配向係数={Nx-(Ny+Nz)/2}/{Ny-(Nx+Nz)/2}
Nx:フィルムのMD方向の屈折率
Ny:フィルムのTD方向の屈折率
Nz:フィルムの厚み方向の屈折率
【請求項5】
前記基材層が二軸配向ポリエステルフィルムである、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記防曇層が、ガラス転移温度Tgが0℃以上40℃以下のポリエステル樹脂(A)およびガラス転移温度Tgが41℃以上80℃以下のポリエステル樹脂(B)の少なくとも2種の樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記防曇層を構成する樹脂において、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の質量比が、ポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)=50/50~90/10である、請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記防曇層が、ノニオン性界面活性剤を含む、請求項6または7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
前記ノニオン性界面活性剤のHLB値が3以上、10以下である、請求項8に記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記積層フィルムのヘイズが10%未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項11】
前記接着層、前記基材層および印刷層を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の積層フィルムを含む食品包装容器用蓋材。
【請求項13】
請求項12に記載の蓋材を有する食品包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性および防曇性を兼ね備える積層フィルムに関する。より詳しくは、包装容器との熱接着により用いられる積層フィルムに関する。特に食品包装容器の蓋材用の積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜などの青果物を包装する材料として、プラスチックフィルムやシートを成形した容器が使用されている。透明性や光沢感といった外観の美麗さだけでなく、リサイクルできる素材であることを考慮して、ポリエステルテレフタレートをはじめとするポリエステル系素材からなる容器が幅広く使用されている。このようなポリエステル系の容器を用いる場合、蓋材としてはいわゆる嵌合蓋と言われるはめ込む形のものが従来使用されてきた。しかし、外部応力により蓋が外れ内容物が飛散したり、商品陳列時に開封され異物を混入されてしまうリスク等のデメリットから、近年では蓋材としてフィルムのトップシール化が進められてきている。トップシール化により必要となる特性は、主に防曇性、易開封性、耐衝撃性、耐ブロッキング性が挙げられる。防曇性は例えば内容物がサラダ等の青果物だった場合、内容物から発散される水蒸気によって、保管中や商品陳列中に蓋材が曇って内容物の視認が困難になることを防ぐ機能である。易開封性は、容器開封時に容易にかつ蓋材の破れ等がなく綺麗に開封できるかを示した機能である。耐衝撃性は、例えば商品運搬時の外部からの衝撃や、陳列時に商品を重ねた時の重りによる蓋材の破損がないかの指標である。耐ブロッキング性はヒートシール層をトップシール材に付与しているがために、トップシールフィルムをロール形態で保管しているとブロッキングが生じて操業性に影響を与えるのを防ぐ機能である。
【0003】
特許文献1には、ガラス転移温度-30~30℃のポリエステル樹脂Aおよび防曇剤Cを含有する接着剤組成物が食品包装容器と蓋材フィルムの貼り合わせに好適に用いることができると提案されている。ヒートシール強度、防曇性は良好であり、蓋材としては二軸配向ポリエステルフィルムを用いているため、耐衝撃性も良好であると予想される。しかしながら、蓋材として用いている二軸配向ポリエステルフィルムは一般的な二軸延伸フィルムであり、その製法に由来して引裂強さが低下しやすい傾向がある。そのため、容器開封時に容器と蓋材フィルム間で生じる剥離による破壊が蓋材フィルムに伝播した際、容易に裂けてしまい、易開封性が発現しないことが予想される。
【0004】
特許文献2には、ポリエステル系成分からなり、シール層と基材層を有する蓋材が容器に対して良好なヒートシール性と防曇性を発現することが提案されている。防曇性は良好であり、二軸配向ポリエステルフィルムであるため、耐衝撃性も良好であると予想される。一方で、ヒートシール強度が非常に強く、容器の開封時に容易に剥がすことが困難だと予想される。また、ヒートシール強度が弱い実施例においてもヒートシール温度を変えた場合強度が大きく変化する可能性が高く、実際の製造工程においては所望のヒートシール強度に保つことが困難だと予想される。また、シール層は共重合ポリエステル樹脂を使用しているため、得られる二軸配向ポリエステルフィルムの厚みムラは大きいと予想される。厚みムラが大きい場合、ロールとして保管したときにシール層がブロッキングしてしまい、操業性に大きな影響を与えてしまう。
【0005】
特許文献3には、ベース層として二軸配向ポリエステルフィルムを用い、ヒートシール性外層としてポリエステル樹脂層をオフラインコートした積層フィルムが、食品トレーに対して良好なヒートシール性を示すことが提案されている。ヒートシール強度や防曇性は良好であるが、ベース層として用いている二軸配向ポリエステルフィルムが一般的な二軸延伸フィルムであるため、容器開封時にベース層が裂けて、易開封性が発現しないことが予想される。また、ヒートシール外層に用いられるポリエステル樹脂のTgが0~30℃であり、単一樹脂なので耐ブロッキング性が劣ることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2008/179689号公報
【特許文献2】特開2018-114992号公報
【特許文献3】特開2017-209996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、防曇性、易開封性、耐衝撃性および耐ブロッキング性のいずれも良好な積層フィルムを提供することを目的とする。更に、前記積層フィルムを用いた食品包装容器の蓋材(トップシール材ともいう)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記項1の構成を備える
(項1)
少なくとも基材層と防曇層の2層を有する積層フィルムであり、
(a)前記積層フィルムの防曇層面と厚み200μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートとを、0.2MPa、1秒間で120℃、140℃、160℃、180℃の各温度でヒートシールを行い、15mm幅の試験片を用いて測定するヒートシール強度がいずれも2.0N/15mm以上、12.0N/15mm以下であり、
(b)5℃、50%R.H.条件下で、前記積層フィルムの防曇層の表面に1μLの蒸留水を滴下し、5秒後に測定する水接触角が50°以下であり、
(c)前記積層フィルムの防曇層面と前記積層フィルムの基材層面を重ね合わせ、450kgf/m2の荷重で40℃条件下、1週間静置した後、15mm幅の試験片を用いて測定する剥離強度が1.0N/15mm以下であり、
(d)振り子式衝撃試験における、5℃条件下での衝撃強度が0.5J以上であり、
(e)5℃条件下での引裂強さが、前記積層フィルムのMD方向およびTD方向のいずれも100mN以上であり、
(f)前記防曇層の厚みが0.3μm以上、3.0μm未満であり、
(f)下記式(1)の計算式により求められる前記積層フィルムの厚みムラが、MD方向およびTD方向のいずれの値も10%以下である、
積層フィルム。
式(1) 厚みムラ(%)=(Tmax-Tmin)/Tave×100
Tmax:積層フィルムの最大厚み
Tmin:積層フィルムの最小厚み
Tave:積層フィルムの平均厚み
【0009】
項1によれば、120℃、140℃、160℃、180℃の各温度でヒートシールした際のヒートシール強度が、いずれも2.0N/15mm以上、12.0N/15mm以下であり、容器と蓋材との間で必要なヒートシール強度を有しつつ、蓋材を開封するときに、容易に、かつ蓋材が破れることなく蓋材を開封することができる。項1によれば、積層フィルムの防曇層の表面に1μLの蒸留水を滴下し、5秒後に測定する水接触角が50°以下であり、優れた防曇性を有する。項1によれば、積層フィルムの防曇層面と前記積層フィルムの基材層面を重ね合わせたときの剥離強度が1.0N/15mm以下であり、フィルム同士がブロッキングすることを防止することができる。項1によれば、5℃条件下での衝撃強度が0.5J以上であり、外部からの衝撃に強く、蓋材の破損防止に効果を有する。項1によれば、5℃条件下での引裂強さが、前記積層フィルムのMD方向およびTD方向のいずれも100mN以上 であり、易開封性を有する。すなわち、容器開封時に容器と蓋材との間で生じる剥離による破壊が積層フィルムを伝播して、蓋材が破れることを抑制することができる。項1によれば、防曇層の厚みが0.3μm以上、3.0μm未満であり、ヒートシール性と耐ブロッキング性を両立することができる。項1によれば、前記積層フィルムの厚みムラが、MD方向およびTD方向のいずれの値も10%以下であり、フィルムロールにおけるブロッキングを防止することができる。
【0010】
本発明は、下記項2の構成を有することが好ましい。
(項2)
前記積層フィルムから切り出した長さ200mmのサンプルの0.5mm間隔のフィルム厚みをグラフにした場合に現れる、厚みの凹凸パターンにおいて、凸部の最大厚みと凹部の最小厚みの差が最も大きい部分を最大凸部としたとき、下記式(2)の計算式により求められる最大凸部の厚みムラが、MD方向およびTD方向のいずれの値も6%以下である、項1に記載の積層フィルム。
式(2) 最大凸部の厚みムラ(%)=(最大凸部の最大厚み-最大凸部の最小厚み)/Tave×100
【0011】
項2によれば、前記最大凸部の厚みムラを6%以下とすることにより、フィルムロールにおいて厚みの差が大きい箇所に局所的に応力がかかり、ブロッキングが生じた結果、巻き出し時に破れが発生する加工工程上のトラブルを防ぐことができる。
【0012】
本発明は、下記項3以降の構成を有することが好ましい。
(項3)
5℃条件下で測定した、前記積層フィルムのMD方向の引裂強さに対するTD方向の引裂強さの強度比(引裂強さMD/引裂強さTD)が0.6~1.5である、項1又は2に記載の積層フィルム。
【0013】
項3によれば、積層フィルムのMD方向およびTD方向の配向を等方的にすることにより、蓋材の開封方向にかかわらず、易開封性を有する。
【0014】
(項4)
アッベ屈折計を用い、式(3)の計算式により求められる前記積層フィルムの配向係数が0.6~1.5 である、項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
式(3) 配向係数={Nx-(Ny+Nz)/2}/{Ny-(Nx+Nz)/2}
Nx:フィルムのMD方向の屈折率
Ny:フィルムのTD方向の屈折率
Nz:フィルムの厚み方向の屈折率
【0015】
項4によれば、積層フィルムのMD方向およびTD方向の配向を等方的にすることにより、蓋材の開封方向にかかわらず、易開封性を有する。
【0016】
(項5)
前記基材層が二軸配向ポリエステルフィルムである、項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
(項6)
前記防曇層が、ガラス転移温度Tgが0℃以上40℃以下のポリエステル樹脂(A)およびガラス転移温度Tgが41℃以上80℃以下のポリエステル樹脂(B)の少なくとも2種の樹脂を含む、項1~5のいずれか記載の積層フィルム。
(項7)
前記防曇層を構成する樹脂において、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の質量比が、ポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)=50/50~90/10である、項6に記載の積層フィルム。
【0017】
項6および項7によれば、防曇層がガラス転移温度の異なる少なくとも2種のポリエステル樹脂を有することにより、ヒートシール性と、蓋材開封時の蓋材の破れ防止を両立させることができる。
【0018】
(項8)
前記防曇層が、ノニオン性界面活性剤を含む、項6または項7に記載の積層フィルム。
(項9)
前記ノニオン性界面活性剤のHLB値が3以上、10以下である、項8に記載の積層フィルム。
【0019】
項8および項9によれば、本発明の積層フィルムは防曇性を有する。
【0020】
(項10)
前記積層フィルムの厚みムラが5%以下である、項1~9のいずれかに記載の積層フィルム。
(項11)
前記積層フィルムのヘイズが10%未満である、項1~10のいずれかに記載の積層フィルム。
(項12)
前記接着層、前記基材層および印刷層を有する、項1~11のいずれかに記載の積層フィルム。
【0021】
更に、本発明は、前記積層フィルムを用いた食品包装容器用の蓋材を提供する。
(項13)
項1~12のいずれかに記載の積層フィルムを含む食品包装容器用蓋材。
【0022】
更に、本発明は、前記積層フィルムを用いた蓋材を有する食品包装容器を提供する。
(項14)
項13に記載の蓋材を有する食品包装容器。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、防曇性、易開封性、耐衝撃性および耐ブロッキング性に優れた積層フィルムならびに蓋材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】フィルムの製造工程における、TD方向のストレート形の延伸パターンを示す概略図である。
【
図2】フィルムの製造工程における、TD方向の多段延伸の延伸パターンを示す概略図である。
【
図3】フィルムの製造工程における、TD方向の対数形の延伸パターンを示す概略図である。
【
図4】実施例における易開封性の評価に用いたA-PET容器の形状の概略図である。
【
図5】フィルムの厚みをグラフにした際に現れる最大凸部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[防曇層]
本発明の積層フィルム中の防曇層は、少なくとも下記ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)および防曇剤(C)成分を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂(A)成分およびポリエステル樹脂(B)成分を含有することで優れた易開封性、広いシール温度幅および耐ブロッキング性を発現できるばかりだけでなく、防曇剤(C)成分を含有することで優れた防曇性も発現することができる。さらに耐ブロッキング性を向上させるためにアンチブロッキング剤(D)を含有することもできる。
【0026】
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分と、2価以上の多価アルコール化合物からなるアルコール成分とが重縮合して得られる化学構造のポリエステルであることが好ましい。2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分と、2価以上の多価アルコール化合物からなるアルコール成分とが重縮合して得られる化学構造のポリエステルの場合は、多価カルボン酸化合物および多価アルコール化合物の少なくとも一方が2種類以上の成分からなる共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。また、多価カルボン酸化合物および多価アルコール化合物は、主としてジカルボン酸成分とグリコール成分からなる共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。ここで主としては本発明に用いるポリエステル樹脂(A)を構成する全酸成分と全アルコール成分の合計が200モル%に対して、ジカルボン酸成分とグリコール成分の合計がモル基準で100モル%以上を占めることを指す。
【0027】
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸が好ましく、その中でも芳香族ジカルボン酸がより好ましい。芳香族ジカルボン酸成分の共重合量はカルボン酸成分の合計量を100モル%とした場合、下限は好ましくは40モル%であり、より好ましくは45モル%であり、特に好ましくは50モル%である。40モル%以上とすることでガラス転移温度Tgを低く抑えることができる。
【0028】
芳香族ジカルボン酸は具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられるが、これに限定されない。脂肪族ジカルボン酸は具体的には、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられるが、これに限定されない。これらジカルボン酸を単独でまたは2種類以上併用して使用することができる。また、その他の多価カルボン酸成分として、p-オキシ安息香酸、p-(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環族ジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボ酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等を用いることもできる。さらに必要に応じてトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等のトリおよびテトラカルボン酸ならびにその無水物を含んでも良い。
【0029】
グリコール成分としては、脂肪族グリコールが好ましい。脂肪族グリコール成分の共重合量はグリコール成分の合計量を100モル%とした場合、下限は好ましくは70モル%であり、より好ましくは75モル%であり、特に好ましくは80モル%である。70モル%以上とすることでTgを低く抑えることができる。
【0030】
脂肪族グリコールは具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられるが、これに限定されない。これらグリコール成分を単独でまたは2種類以上併用して使用することができる。また、その他のグリコール成分として、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびプロピレンオキサイド付加物等を用いることもできる。これらの他に必要によりトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどのトリオールおよびテトラオールを少量含んでも良い。
【0031】
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度の下限は、好ましくは0℃であり、より好ましくは5℃であり、特に好ましくは10℃である。0℃以上とすることで、耐ブロッキング性が良好となる。
ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度の上限は、好ましくは40℃であり、より好ましくは35℃であり、特に好ましくは30℃である。40℃以下とすることで、ヒートシール強度を請求項の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
【0032】
ポリエステル樹脂(A)の還元粘度(ηsp/c)の下限は好ましくは0.2dl/gであり、より好ましくは0.4dl/gであり、特に好ましくは0.6dl/gである。0.2dl/g以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0033】
ポリエステル樹脂(A)の数平均分子量(Mn)の下限は好ましくは5000であり、より好ましくは10000であり、特に好ましくは15000である。5000以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0034】
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度の下限は、好ましくは41℃であり、より好ましくは46℃であり、特に好ましくは51℃である。41℃以上とすることで、ヒートシール強度を請求項の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
ポリエステル樹脂(B)のガラス転移温度の上限は、好ましくは80℃であり、より好ましくは75℃であり、特に好ましくは60℃である。80℃以下とすることで、ヒートシール強度を請求項の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
【0035】
ポリエステル樹脂(B)の還元粘度(ηsp/c)の下限は好ましくは0.1dl/gであり、より好ましくは0.2dl/gであり、特に好ましくは0.3dl/gである。0.1dl/g以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0036】
ポリエステル樹脂(B)の数平均分子量(Mn)の下限は好ましくは2000であり、より好ましくは5000であり、特に好ましくは10000である。2000以上とすることで樹脂凝集力が発現し、ヒートシール強度が発現する。
【0037】
ガラス転移温度の異なる少なくとも2種のポリエステル樹脂を混ぜ合わせることにより、120℃から180℃までの広い温度範囲において、一定のヒートシール強度が得られ、易開封性が発現する。ガラス転移温度の異なるポリエステル樹脂を混ぜ合わせることによって、前記記載の易開封性が発現するメカニズムは、ヒートシール強度測定時に防曇層中での凝集破壊が選択的に生じているためであると考えられる。一般的に、ヒートシール強度測定時の破壊進行箇所は、最も力学強度的に弱い箇所から進行すると言われている。本発明の積層フィルム中の防曇層では、ガラス転移温度の高いポリエステル樹脂(B)がシール表面との高いヒートシール強度を発現させ、ガラス転移温度の低いポリエステル樹脂(A)が防曇層の力学的強度の低下、言い換えると防曇層の脆さを発現させると考えられる。そのため、力学的強度としてはシール表面との高いヒートシール強度>防曇層の脆さとなり、最も力学強度的に弱い防曇層中で選択的に凝集破壊が生じる。従って、本発明ではガラス転移温度の異なる少なくとも2種のポリエステル樹脂を混ぜ合わせることにより、ヒートシール温度に依らない防曇層中での凝集破壊を選択的に生じさせて、広い温度範囲で易開封性を発現することができる。
【0038】
ポリエステル樹脂(B)に対するポリエステル樹脂(A)の質量比の下限は、好ましくはポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)=50:50質量%であり、より好ましくは45:55質量%であり、特に好ましくは60:40質量%である。50:50質量%以上とすることで、防曇層を脆くすることができ、広い温度範囲で請求項に記載のヒートシール強度の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
ポリエステル樹脂(B)に対するポリエステル樹脂(A)の質量比の上限は、好ましくはポリエステル樹脂(A):ポリエステル樹脂(B)=90:10質量%であり、より好ましくは85:15質量%であり、特に好ましくは80:20質量%である。90:10質量%以下とすることで、シール表面のシール強度を高めることができ、広い温度範囲で請求項に記載のヒートシール強度の範囲にすることができ、易開封性が得られる。
【0039】
防曇剤(C)としては、防曇性を付与するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤を使用することができる。なかでもノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0040】
例えば、アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフエート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート塩が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド-プロピレンオキサイド共重合体等のポリオキシエチレン構造を有する化合物やソルビタン誘導体が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンザルコニウムが挙げられる。両性界面活性剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイドが挙げられる。
【0041】
ノニオン性界面活性剤としては、具体的には、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタンモノベヘネート、ソルビタンジベヘネート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート等のソルビタン系界面活性剤、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、ジグリセリンモノパルミテート、ジグリセリンジパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、ジグリセリンジステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンジラウレート等のグリセリン系界面活性剤、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノパルミネート等のポリエチレングリコール系界面活性剤、トリメチロールプロパンモノステアレート等のトリメチロールプロパン系界面活性剤、ラウリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミド、オレイルジエタノールアミド、ステアリルジエタノールアミド等のジエタノールアルキルアミン系およびジエタノールアルキルアミド系界面活性剤、ペンタエリスリトールモノパルミテート等のペンタエリスリトール系界面活性剤およびポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンジステアレート、ソルビタン-ジグリセリン縮合体のモノおよびジステアレートなどが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、ラウリルアミンアセテート、トリエタノールアミンモノ蟻酸塩、ステアラミドエチルジエチルアミン酢酸塩等のアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。これらは単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0043】
防曇剤(C)のHydrophilic-Lipophilic Balance(以下HLBと略す)値の下限は、好ましくは3であり、より好ましくは4であり、特に好ましくは5である。3以上とすることで防曇性が発現する。
防曇剤(C)のHLB値の上限は、好ましくは10であり、より好ましくは9であり、特に好ましくは8である。10以下とすることで防曇剤が過剰にフィルム表面に析出することを防ぐことができ、ヘイズの悪化およびシール強度の低下を防ぐことができる。
【0044】
防曇層中の防曇剤(C)の含有量としては、固形分濃度で下限が好ましくは1.0質量%であり、より好ましくは1.5質量%であり、特に好ましくは2.0質量%である。1.0質量%以上とすることで防曇性が発現する。
上限は好ましくは10.0質量%であり、より好ましくは9.5質量%であり、特に好ましくは9.0質量%である。10.0質量%以下とすることで、ヘイズが良好であり、防曇剤の表面への過剰な析出によるヒートシール強度の低下を抑制することができる。
【0045】
本発明の防曇層中にはアンチブロッキング剤(D)を含有することができる。アンチブロッキング剤としては無機粒子、有機粒子、ワックス類等が挙げられ、ヒートシール強度を落とさない程度で含有することができる。これらアンチブロッキング剤は単独あるいは2種類以上併用して使用することができる。アンチブロッキング剤の含有量は、防曇層の固形分濃度換算において下限は好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%であり、特に好ましくは0.5質量%である。0.1質量%以上であると、耐ブロッキング性が発現する。
アンチブロッキング剤の含有量は、防曇層の固形分濃度換算において上限は好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.5質量%であり、特に好ましくは4.0質量%である。5.0質量%以下であると、ヒートシール強度を阻害しない。
【0046】
無機粒子としては、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、モリブテン、珪素、アンチモン、またはチタンなどの金属酸化物、水酸化物、硫酸塩、炭酸塩、または珪酸塩などを含有する無機粒子が挙げられる。これらの無機粒子の中でもシリカゲル粒子が特に好ましい。粒子の形状は粉末状、粒上、顆粒状、平板状、針状などどのような形でもよい。
【0047】
有機粒子としては例えば、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、シリコン樹脂、メタクリレート樹脂、もしくはアクリレート樹脂などのポリマー粒子、またはセルロースパウダー、ニトロセルロースパウダー、木紛、古紙紛、でんぷんなどが挙げられる。粒子の形状は粉末状、粒上、顆粒状、平板状、針状などどのような形でもよい。
【0048】
ワックス類の具体例としては流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィン、ポリエチレンワックスなどの炭化水素系ワックス類、ステアリン酸などの脂肪酸計ワックス類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミドなどの脂肪酸系アミドワックス、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなどのエステル系ワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコール、などのアルコール系ワックス、オレフィン系ワックス、カスターワックス、カルナバワックスなどの天然物ワックス、炭素数12~30の脂肪酸から誘導される金属石けん類などが挙げられる。
【0049】
防曇層は、基材層の少なくとも片面に積層されている。積層の方法は、基材層を構成する樹脂組成物との共押出、基材層と防曇層とのドライラミネート、基材層への防曇層の押出コート、または基材層への溶剤コートの方法で製造することができる。好ましくは、基材層に防曇層の構成する樹脂組成物の有機溶剤溶液をコート(塗布)し、乾燥させることにより、本発明の積層フィルムを得ることができる。
【0050】
防曇層の厚みの下限は好ましくは0.3μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上であり、特に好ましくは0.7μmいじょうである。0.3μm以上であると、ヒートシール性が発現する。
防曇層の厚みの上限は好ましくは3.0μm未満であり、より好ましくは2.8μm未満であり、特に好ましくは2.6μm未満である。3.0μm未満であると、積層フィルムの厚みムラを低く抑えることができ、耐ブロッキング性が良好となる。
【0051】
[基材層]
本発明の積層フィルム中の基材層は、積層フィルムの耐衝撃性を向上させる目的で二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。未延伸のポリエステルフィルムであると、その製造方法に起因して耐衝撃性が劣り、外部衝撃や陳列時の商品の重ね合わせによる荷重によってフィルムが破損する恐れがある。さらに、未延伸のポリエステルフィルムであると、その製造方法に起因して厚みムラが大きくなりやすく、ロールにした際のブロッキングが生じやすくなる。また、二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は特には限定されず、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でも可能だが、インフレーション方式ではその製造方法に起因して厚みムラが生じやすく、ロールにした際のブロッキングが生じやすくなるため好ましくない。
【0052】
本発明の基材層の主たる構成成分としてはポリエステルであれば特に限定されないが、ポリエチレンテレフタレートを主成分とすることが好ましい。なお、本発明を阻害しない範囲内で、他のポリエステルを含有しても良い。具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、及びイソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸が共重合されたポリエステル樹脂、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分が共重合されたポリエステル樹脂が挙げられる。
【0053】
積層フィルムの易滑性を向上させるために、例えば二酸化チタン、微粒子シリカ、カオリン、炭酸カルシウムなどの無機滑剤、長鎖脂肪酸エステルなどの有機滑剤を添加しても良い。また、必要に応じて着色剤、静電防止剤、紫外線吸収剤などを添加しても良い。
【0054】
基材層の層構成は特に限定されず、単層構成でも良く、2層構成、3層構成、4層構成、超多層構成でも構わない。また、各層が異なる組成でも構わない。
【0055】
基材層を得る方法として、特に限定はないが厚み精度が良好である観点から、Tダイ方式が好ましい。インフレーション方式はその製法に起因して厚みムラが生じやすい。
【0056】
冷却ロール温度の上限は好ましくは40℃であり、より好ましくは20℃以下である。40℃以下であると、溶融したポリエステル樹脂組成物が冷却固化する際の結晶化度が高くなりすぎず、延伸が容易となる。
【0057】
長手方向(MD方向ともいう)の延伸温度の下限は好ましくは90℃であり、より好ましくは95℃であり、特に好ましくは100℃である。90℃以上であると破断を抑制することができる。 MD方向の延伸温度の上限は好ましくは140℃であり、より好ましくは135℃であり、特に好ましくは130℃である。140℃以下であると、十分に配向をつけることができ、二軸配向後のフィルムの衝撃強度が向上する。
【0058】
MD方向の延伸倍率の下限は好ましくは3.0倍であり、より好ましくは3.2倍であり、特に好ましくは3.4倍である。3.0倍以上である厚みムラが良好となり、耐ブロッキング性が向上する。MD方向の延伸倍率の上限は好ましくは4.0倍であり、より好ましくは3.8倍であり、特に好ましくは3.6倍である。4.0倍以下とすることで、破断を抑制することができる。
【0059】
幅方向(TD方向ともいう)の延伸温度の下限は好ましくは100℃であり、より好ましくは105℃であり、特に好ましくは110℃である。100℃以上であると破断を抑制することができる。TD方向の延伸温度の上限は好ましくは140℃であり、より好ましくは135℃であり、特に好ましくは130℃である。140℃以下であると、十分に配向をつけることができ、二軸配向後のフィルムの衝撃強度が向上する。
【0060】
TD方向の延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.6倍であり、特に好ましくは3.7倍である。3.5倍以上である厚みムラが良好となり、耐ブロッキング性が向上する。MD方向の延伸倍率の上限は好ましくは4.5倍であり、より好ましくは4.4倍であり、特に好ましくは4.3倍である。4.5倍以下とすることで、破断を抑制することができる。
【0061】
本発明の積層フィルムは、衝撃強度と引裂強さのバランスを取りつつ厚みムラも良好であることが好ましい。厚みムラに対して、特に基材層の製膜条件が大きく寄与し、TD方向の延伸工程が最も影響を与える。例えば、TD方向の延伸倍率を上げると衝撃強度は向上し、厚みムラも低下するが、引裂強さは低下する。TD方向の延伸工程では、
図2に示すようなTDの延伸パターンを多段延伸方式にする方式や、
図3に示すような対数形にする方式にすることが好ましい。
図1に示すような通常のストレート形のTD延伸パターンだと、衝撃強度と引裂強さのバランスを取るために延伸倍率を下げる必要がある。その場合、厚みムラは大きくなり結果的に耐ブロッキング性が悪化するおそれがある。一方で多段延伸方式や対数形のTD延伸パターンだと、延伸倍率を落とさなくてもフィルムの配向を抑えることができるため、厚みムラを維持しつつ衝撃強度と引裂強さのバランスを取ることができるため好ましい。
【0062】
TD方向に多段延伸を行う場合、多段延伸は2段以上5段延伸以下であることが好ましい。多段延伸により、各々の延伸温度を変更することにより延伸応力を変化させることが可能であり、配向を抑えることができるので好ましい。
図2のように、多段延伸においては各段階での延伸終了後に定長を維持するようなパターンを設けることが好ましい。また各段階の延伸において2℃以上の温度差をつけて1段目の延伸から最終段目の延伸にかけて温度を低下させる温度パターンとすることが好ましい。
【0063】
熱固定温度の下限は好ましくは180℃であり、より好ましくは190℃であり、特に好ましくは200℃である。180℃以上であると、熱収縮率を小さくすることができる。熱固定温度の上限は好ましくは240℃であり、より好ましくは230℃であり、特に好ましくは220℃である。240℃以下であると、衝撃強度が低下するのを防ぐことができる。
【0064】
リラックス率の下限は好ましくは0.5%であり、より好ましくは1.0%であり、特に好ましくは2.0%である。0,5%以上であると、熱収縮率を低く保つことができる。リラックス率の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%であり、特に好ましくは6%である。10%以下とすることで、弛みなどが生じることを防止でき、ロールにした際のブロッキングを防ぐことができる。
【0065】
本発明の基材層の厚みの下限は好ましくは5μmであり、より好ましくは10μmであり、特に好ましくは15μmである。5μm以上とすることで衝撃強度および引裂強さを維持することができる。本発明の基材層の厚みの上限は好ましくは100μmであり、より好ましくは80μmであり、特に好ましくは50μmである。100μm以下とすることで、蓋材として好適に用いることができる。
【0066】
[積層フィルム]
本発明における水接触角の測定温度は5℃、相対湿度50%(50%R.H.)の条件で行う。通常、サラダ等の食品を包装したA-PET容器は冷蔵条件にて保管および陳列されることが多く、その際に防曇性が重要となる。そのため、冷蔵条件での防曇性を適切に表す水接触角の条件としては一般的な室温条件よりも5℃条件の方が適当であるためである。
【0067】
本発明の積層フィルムの水接触角の上限は好ましくは50°であり、より好ましくは40°であり、特に好ましくは30°である。50°以下とすることで、内容物等から飛散された水蒸気が積層フィルムに付着しても水滴を薄く延ばすことができ、外観に曇りが発生することがない。
本発明の積層フィルムの水接触角の下限は好ましくは10°であり、より好ましくは15°であり、特に好ましくは20°である。10°以上とすることで、防曇剤が表面に過剰に析出してヒートシール強度を低下させることを防ぐことができる。
【0068】
本発明の積層フィルムと厚み200μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを120℃、140℃、160℃、および180℃の各温度でヒートシールした場合におけるヒートシール強度の下限は、いずれも、好ましくは、2N/15mmであり、より好ましくは3N/15mmであり、特に好ましくは4N/15mmである。2N/15mm以上とすることで、蓋材としたときに十分な強度でシールされる。
【0069】
本発明の積層フィルムと200μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを120℃、140℃、160℃、および180℃の各温度でヒートシールした場合におけるヒートシール強度の上限は、いずれも、好ましくは、12N/15mmであり、より好ましくは11N/15mmであり、特に好ましくは10N/15mmである。12N/15mm以下とすることで、蓋材としたときにシール強度が強すぎて開封するのに多大な力を必要とすることがない他、シール強度が強すぎて積層フィルムが破れるのを防ぐことができる。
【0070】
本発明の特徴の一つは、積層フィルムをA-PET容器の蓋材として用いた際に、蓋材の開封時に防曇層内で凝集破壊を故意に起こすことにより、広い温度範囲で一定のヒートシール強度が得られることである。
【0071】
本発明の積層フィルムの防曇層面と積層フィルムの基材層面を重ね合わせ、450kgf/m2の荷重をかけ、40℃条件下、1週間静置した場合の剥離強度は、上限は1.0N/15mmであり、より好ましくは0.8N/15mmであり、特に好ましくは0.6N/15mmである。1.0N/15mm以下とすることで、ロール形態としたときにフィルム同士がブロッキングして例えば巻き出し時に破れが発生するなどの、加工工程上のトラブルを防ぐことができる。本発明において、防曇層にガラス転移温度の異なる少なくとも2種のポリエステル樹脂を有することにより、フィルム同士のブロッキング現象を抑制する効果がある。
【0072】
本発明の積層フィルムの衝撃強度の下限は0.5Jであり、より好ましくは0.6Jであり、特に好ましくは0.8Jである。0.5J以上とすることで、容器運搬時や陳列時の外部応力に対して十分に耐えうる強さを持ち、蓋材が破れたりすることを防ぐことができる。
【0073】
本発明の積層フィルムの引裂強さの下限は100mNであり、より好ましくは110mNであり、特に好ましくは120mNである。100mN以上とすることで、容器開封時に生じている防曇層中の凝集破壊が基材層に伝播したとき、そのまま基材層ごと破れてしまうのを防ぐことができ、結果的に良好な開封性が得られる。
【0074】
本発明の積層フィルムのMD方向の引裂強さに対するTD方向の引裂強さの強度比(引裂強さMD/引裂強さTD)の下限は0.6であり、より好ましくは0.7であり、特に好ましくは0.8である。0.6以上とすることで、積層フィルムの配向を等方的に抑えることができ、易開封性が得られる。一般的に、蓋材開封時は人によって開け方が微妙に異なるために、蓋材への縦横の力のかかり方がランダムとなる。そのため異方性が強いと破れが生じやすくなる。
【0075】
本発明の積層フィルムのMD方向の引裂強さに対するTD方向の引裂強さの強度比(引裂強さMD/引裂強さTD)の上限は1.5であり、より好ましくは1.3であり、特に好ましくは1.1である。1.5以下とすることで、積層フィルムの配向を等方的に抑えることができ、易開封性が得られる。
【0076】
本発明の積層フィルムのアッベ屈折計を用い、下記式(3)の計算式により得られる配向係数の下限は0.6であり、より好ましくは0.7であり、特に好ましくは0.8である。0.6以上とすることで、積層フィルムの配向を等方的に抑えることができ、易開封性が得られる。
式(3) 配向係数={Nx-(Ny+Nz)/2}/{Ny-(Nx+Nz)/2}
Nx:フィルムのMD方向の屈折率
Ny:フィルムのTD方向の屈折率
Nz:フィルムの厚み方向の屈折率
【0077】
本発明の積層フィルムのアッベ屈折計を用い、上記式(3)の計算式により得られる配向係数の上限は1.5であり、より好ましくは1.3であり、特に好ましくは1.1である。1.5以下とすることで、積層フィルムの配向を等方的に抑えることができ、易開封性が得られる。
【0078】
本発明の積層フィルムの厚みムラの上限は、MD方向及びTD方向のいずれも10%が好ましく、より好ましくは6%であり、特に好ましくは4%である。10%以下とすることで、ロール形態としたきに厚みムラが悪い箇所に局所的に応力がかかり、ブロッキングが生じ、巻き出し時に破れが発生する加工工程上のトラブルを防ぐことができる。
【0079】
本発明の積層フィルムの最大凸部の厚みムラの上限は、MD方向及びTD方向のいずれも6%が好ましく、より好ましくは5%であり、特に好ましくは4%である。6%以下とすることで、ロール形態としたきに厚みムラが悪い箇所に局所的に応力がかかり、ブロッキングが生じ、巻き出し時に破れが発生する加工工程上のトラブルを防ぐことができる。最大凸部の厚みムラが大きいということは、最大凸部内の厚み差が大きいということを示す。この最大凸部の厚み差が大きいと、ロール形態としたときに最大凸部の最大厚み部分に過剰な巻きの応力がかかることとなり、よりブロッキングが生じやすい状態となる。そのため、最大凸部の厚みムラが小さく、巻きの応力を広く分散することができれば、ブロッキングを防ぐことが可能となる。
【0080】
本発明において、最大凸部とは、積層フィルムから切り出した長さ200mmのサンプルの0.5mm間隔のフィルム厚みを、縦軸が厚み(単位μm)、横軸が測定位置(単位mm)の折れ線グラフにした場合に現れる、厚みの凹凸パターンにおいて、凸部の最大厚みと凹部の最小厚みの差が最も大きい部分をいう。
図5に上記グラフ及び最大凸部の例を示す。
【0081】
本発明の積層フィルムのヘイズの上限は好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%であり、特に好ましくは6%である。10%以下であると、蓋材として使用した際の透明性が高く、内容物が十分視認できる。
【0082】
本発明の積層フィルムは、包装材料として好適に使用される。特に、食品包装容器の蓋材として好適である。食品包装容器の蓋材として使用する場合、積層フィルムの防曇層面と食品包装容器の容器開口縁部とが接して密封することが好ましい。本発明の積層フィルムを蓋材として使用する食品包装容器は、特に限定されないが、ポリエステル系容器が好ましく、A-PET(非晶性ポリエチレンテレフタレート)容器であることが特に好ましい。
【0083】
<実施例>
物性評価方法を示す。
[基材層の厚み]
基材層の厚みは、防曇剤の積層前の厚みを、株式会社セイコー・イーエム社製 電子マイクロメーター ミリトロン1202Dを用いて測定した。
【0084】
[防曇層の厚み]
積層フィルム(基材層+防曇層)の厚みを株式会社セイコー・イーエム社製 電子マイクロメーター ミリトロン1202Dを用いて測定した。その後、積層フィルムの防曇層側を、防曇層が可溶な溶剤で完全にふき取った。ふき取り後のサンプルも同様に厚みを測定し、下記式(4)より防曇層の厚みを算出した。
式(4) 防曇層の厚み(μm)=積層フィルムの厚み(μm)-ふき取り後のフィルムの厚み(μm)
【0085】
[積層フィルムのヘイズ]
JIS K7361-1に準拠し、積層フィルムを1辺10cmの正方形状に切り出し、日本電飾(株)製ヘイズメーターNDH2000を用い、ヘイズ測定を行った。6か所で実施し、その平均値をヘイズ実測値とした。
【0086】
[ヒートシール強度]
厚み200μmの未延伸のポリエチレンテレフタレートシートと積層フィルムの防曇層側を重ねた。このサンプルをヒートシーラーにて接着した。ヒートシール条件は、上バー温度は120℃から180℃の間を20℃刻みで、下バー30℃、圧力0.2MPa、時間1秒とした。ヒートシールサンプルはシール幅が15mmとなるように切り出した。ヒートシール強度は、引張試験機「AGS-KNX」(島津製作所製)を用いて、サンプルチャック間20mm、引張速度200mm/分で測定した。ヒートシール強度はシール幅15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。
【0087】
[水接触角]
5℃、50%R.H.条件下、接触角計「PORTABLE CONTACT ANGLE METER PCA-1(協和界面科学社製)」を用いて、積層フィルムの防曇層側の水接触角を測定した。1測定の水の滴下量は1μLとし、滴下後5秒後に防曇層と水滴のなす角度を読み取った。水接触角の読み取りにはθ/2法を用い、1試料につき10か所の水接触角測定を行い、その平均値をその試料の接触角とした。
【0088】
[耐ブロッキング評価]
本発明の積層フィルムから15cm×15cmサイズの評価用サンプルを2枚切り出した。この評価用サンプルの基材層側と防曇層側重ね合わせ、上から450kgf/m2の荷重をかけ、40℃条件下、1週間静置した。その後、評価用サンプルを取り出し、幅が15mmとなるように切り出し、基材層と防曇層の剥離強度を測定した。剥離強度は、引張試験機「AGS-KNX」(島津製作所製)を用いて、サンプルチャック間20mm、引張速度200mm/分で測定した。剥離強度は15mmあたりの強度(N/15mm)で示す。
【0089】
[衝撃強度]
インパクトテスター(東洋精機製作所社製)を用い、5℃、50%R.H.条件下における積層フィルムの衝撃打ち抜きに対する強度を測定した。衝撃球面は直径1・2インチのものを用いた。
【0090】
[引裂強さ]
JIS-K7128-2に準拠して、軽荷重引裂き試験機(東洋精機製作所社製)を用いて、積層フィルムの引裂強さを測定した。なお、切込みは12.7mmであった。
【0091】
[配向係数]
積層フィルムから5mm四方のサンプルを切り出した。このサンプルについてJIS K7142-1996 A法により、ナトリウムD線を光源として接触液としてジヨードメタンを用いてアッベ屈折計 NAR-1T(アタゴ社製)によりフィルム長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。配向係数は下記式(1)により算出した。
式(1) 配向係数={Nx-(Ny+Nz)/2}/{Ny-(Nx+Nz)/2}
【0092】
[厚みムラ]
積層フィルムからTD方向およびMD方向に長さ200mm×幅40mmの長尺な短冊状のサンプルをそれぞれ5か所から切り出した。このサンプルを、連続接触式厚み計(ミクロン測定器社製)を用いて、5m/分の速度、0.5mmの間隔で測定した。測定された厚みの最大値、最小値および厚みの平均値から下記式(1)でそれぞれTD方向の厚みムラとMD方向の厚みムラをそれぞれ5か所の平均値として算出し、さらにMD方向の厚みムラとTD方向の厚みムラの最も値の大きい方を積層フィルムの厚みムラ(%)とした。
式(1) 厚みムラ(%)=(Tmax-Tmin)/Tave×100
Tmax:積層フィルムの最大厚み
Tmin:積層フィルムの最小厚み
Tave:積層フィルムの平均厚み
【0093】
[最大凸部の厚みムラ]
積層フィルムからTD方向およびMD方向に長さ200mm×幅40mmの長尺な短冊状のサンプルをそれぞれ5か所から切り出した。このサンプルを、連続接触式厚み計(ミクロン測定器社製)を用いて、5m/分の速度、0.5mmの間隔で測定した。
図5のように、1000mmの全測定範囲中から、任意の200mmの測定範囲内で、最大厚みと最小厚みの差が最も大きい最大凸部を探した。該最大凸部における最大厚みと最小厚み、平均厚みを用いて、下記式(2)より最大凸部の厚みムラを算出した。
式(2) 最大凸部の厚みムラ(%)=(最大凸部の最大厚み-最大凸部の最小厚み)/Tave×100
【0094】
[防曇評価]
積層フィルムを30cm×30cmの正方形にサンプルを切り出した。プラスチック容器(容量500mL、口部分の直径約10cm)に300mLの50℃温湯を注ぎ、防曇層側を温湯側になるようにしてサンプルでプラスチック容器の口部分を覆い評価サンプルとした。なお、口部分は輪ゴムで留めることにより密閉した。この評価サンプルを5℃条件下、30分静置したのち、蓋材に付着した水滴を以下の基準で目視評価した。
判定〇 水滴による曇りが口部分全面積の1/4未満
判定× 水滴による曇りが口部分全面積の1/4以上
【0095】
[易開封性]
図4に示す形状および大きさのA-PET容器に積層フィルムの防曇層側を重ね、積層フィルムの上からヒートシールにて接着した。ヒートシール条件は、120℃、140℃、160℃、および180℃の各温度で、圧力0.2MPa、時間1秒とした。その後、積層フィルムを手で剥がしたときの剥がしやすさを以下の触感で評価した。
判定A 十分に接着されており、かつ手で容易に剥がせた
判定B 接着が不十分で、力をいれずとも剥がせた
判定C 接着が強すぎて、容易に手で剥がせない
判定D 開封時にフィルムが破れた
【0096】
<製造例>
(1)ポリエステルA-1
エステル反応缶内に、テレフタル酸ジメチル[55質量部]、イソフタル酸ジメチル[15質量部]、セバシン酸ジメチル[30質量部]、エチレングリコール[30質量部]、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[30質量部]を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を250℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧して250℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することでポリエスエルA-1を得た。ガラス転移温度は7℃であった。
【0097】
(2)ポリエステルA-2
エステル反応缶内に、テレフタル酸ジメチル[70質量部]、セバシン酸ジメチル[30質量部]、エチレングリコール[30質量部]、プロピレングリコール[70質量部]を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を250℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧して250℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することでポリエスエルA-2を得た。ガラス転移温度は16℃であった。
【0098】
(3)ポリエステルA-3
エステル反応缶内に、テレフタル酸ジメチル[45質量部]、イソフタル酸ジメチル[39質量部]、セバシン酸ジメチル[16質量部]、エチレングリコール[75質量部]、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[25質量部]を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を250℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧して250℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することでポリエスエルA-3を得た。ガラス転移温度は32℃であった。
【0099】
(4)ポリエステルB-1
エステル反応缶内に、テレフタル酸ジメチル[45質量部]、イソフタル酸ジメチル[45質量部]、セバシン酸ジメチル[10質量部]、エチレングリコール[50質量部]、プロピレングリコール[50質量部]を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を250℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧して250℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することでポリエスエルA-3を得た。ガラス転移温度は47℃であった。
【0100】
(5)ポリエステルB-2
エステル反応缶内に、テレフタル酸ジメチル[50質量部]、イソフタル酸ジメチル[50質量部]、エチレングリコール[50質量部]、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[50質量部]を仕込み、230℃まで昇温しつつ4時間かけてエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、系内を250℃まで昇温しながら60分かけて10torrまで減圧して250℃で60分間重縮合反応を行った。その後、系内に窒素を流し、真空破壊することで重縮合反応を終了させた。反応終了後、ポリエステル樹脂を取り出し、冷却することでポリエスエルB-2を得た。ガラス転移温度は67℃であった。
【0101】
ポリエステルA-1、A-2、A-3およびB-1、B-2の物性を表1に示す。
【0102】
【0103】
[実施例1]
押し出し機にPET樹脂(テレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる固有粘度0.62dl/g、樹脂組成物全体を100質量%としたときに0.1質量%分シリカ粒子配合)を投入した。押し出し機にて樹脂を280℃で融解させた後、280℃のT-ダイスからキャストし、20℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて単層構成の未延伸シートを得た。
次いで、得られた未延伸シートを115℃の温度でMD方向に3.5倍で延伸し、次いで延伸パターンが多段延伸のテンターに通してTD方向に4.0倍延伸した。多段延伸は3段延伸であり、1段延伸目は115℃、2段延伸目は112℃、3段延伸目は109℃で実施した。なお、各延伸段の間には定長のパターンを設けた。TD延伸後、すぐに220℃で3秒間の熱固定処理と1秒間7%の緩和処理を施して、厚さ25μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。これを基材層とした。
【0104】
ポリエステルA-1[75質量%]、ポリエステルB-2[19質量%]、防曇剤C-1(理研ビタミン社製 リケマールL-71-D、ノニオン性界面活性剤、HLB7.3)[5質量%]、アンチブロッキング剤D(GRACE社製 SYLOID C-812、非晶質シリカ)[1質量%]を酢酸エチル溶液中で加熱攪拌してコート剤(A)を得た。このコート剤を基材層上に2μmの厚みとなるようにオフラインコートを実施した。この層を防曇層とした。
【0105】
[実施例2]
基材層の二軸配向ポリエステルフィルムのTD延伸パターンを対数形に変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。
【0106】
[実施例3]
防曇層の厚みを0.3μmに変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。。
【0107】
[実施例4]
防曇層の厚みを2.9μmに変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。
【0108】
[実施例5~9]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。
【0109】
実施例5~9および後述する比較例6~11で用いたコート剤(B)~コート剤(L)の組成を表2に示す。
なお、防曇剤C-2として、ノニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製 ノイゲンES-149D、HLB11・5)を使用した。
【0110】
【0111】
【0112】
実施例により得られた積層フィルムの物性および各種評価結果を表3に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
[比較例1]
基材層の二軸配向ポリエステルフィルムのTD延伸パターンをストレート形に変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムはTD方向の引裂強さが低く、易開封性評価時にフィルム破れが生じ不良であった。
【0116】
[比較例2]
基材層の二軸配向ポリエステルフィルムのTD延伸パターンをストレート形に変え、TD延伸倍率を3.5倍に変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、耐ブロッキング性および衝撃強度が不良であった。
【0117】
[比較例3]
基材層の二軸配向ポリエステルフィルムのTD延伸パターンをストレート形に変え、MD延伸倍率を4.0倍に、TD延伸倍率を3.5倍に変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、耐ブロッキング性が不良であった。
【0118】
[比較例4]
防曇層の厚みを0.2μmに変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは水接触角が大きく、防曇性が不良であっただけでなく、ヒートシール強度が弱く、易開封性評価時にヒートシールができず不良であった。
【0119】
[比較例5]
防曇層の厚みを3.2μmに変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは耐ブロッキング性が不良であった。
【0120】
[比較例6]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムはヒートシール強度が強く、易開封性評価時に開封するのが困難で不良であった。
【0121】
[比較例7]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは耐ブロッキング性が不良であっただけでなく、ヒートシール強度が弱く、易開封性評価時にヒートシールができず不良であった。
【0122】
[比較例8]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムはヒートシール強度が強く、易開封性評価時に開封するのが困難で不良であった。
【0123】
[比較例9]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムはヒートシール強度が弱く、易開封性評価時にヒートシールができず不良であった。
【0124】
[比較例10]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは水接触角が大きく、防曇性が不良であった。
【0125】
[比較例11]
防曇層のコート剤組成を変えた以外は実施例1と同様に積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは耐ブロッキング性が不良であっただけでなく、ヒートシール強度が弱く、易開封性評価時にヒートシールができず不良であった。
【0126】
比較例によって得られた積層フィルムの物性および各種評価結果を表4に示す。
【0127】
【0128】