(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119313
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】測定システム
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
G01C15/00 104C
G01C15/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022144
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】394017446
【氏名又は名称】マック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 宏史
(57)【要約】 (修正有)
【課題】GPS衛星の信号を受信できない場所においても作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定することができる測定システムを提供する。
【解決手段】作業機械3の位置と向いている方向を特定する測定システム1であって、作業機械3から離れた位置に配置される測量機器2と、作業機械3に載置されるターゲット4と、を有し、測量機器2は、レーザー光を発振するレーザー発振器2Bを有し、ターゲット4は、レーザー発振器2Bから発振されたレーザー光の入射方向を検知する検知部4Dを有し、測定システム1は、測量機器2によって計測される測量機器2とターゲット4の間の距離および角度に基づいて、ターゲット4の位置を特定する位置特定部と、ターゲット4の検知部4Dが検知するレーザー光の入射方向と、入射方向に対する作業機械1の前後左右の位置関係とに基づいて、作業機械3が向いている方向を特定する方向特定部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定する測定システムであって、
前記作業機械から離れた位置に配置される測量機器と、
前記作業機械に載置されるターゲットと、を有し、
前記測量機器は、
前記測量機器から前記ターゲットへ向かってレーザー光を発振するレーザー発振器を有し、
前記ターゲットは、
前記測量機器の前記レーザー発振器から発振されたレーザー光の入射方向を検知する検知部を有し、
前記測定システムは、
前記測量機器によって計測される前記測量機器と前記ターゲットの間の距離および角度に基づいて、前記ターゲットの位置を特定する位置特定部と、
前記ターゲットの検知部が検知するレーザー光の入射方向と、前記入射方向に対する前記作業機械の前後左右の位置関係とに基づいて、前記作業機械が向いている方向を特定する方向特定部と、
を有することを特徴とする測定システム。
【請求項2】
前記検知部は、
上方に向けて配置された受光レンズと、
前記受光レンズの下方に設けられ、前記レーザー発振器から発振されたレーザー光を受光する受光部と、を有する請求項1記載の測定システム。
【請求項3】
前記検知部は、
上方に向けて配置された受光レンズと、
前記受光レンズの下方に設けられたカメラと、を有する請求項1記載の測定システム。
【請求項4】
前記検知部は、
前記レーザー発振器から発振されたレーザー光を受光する受光体を筒状に配置した受光部を有する請求項1記載の測定システム。
【請求項5】
前記ターゲットは、
前記レーザー発振器から発振されたレーザー光を前記測量機器へ反射する反射部と、を有し、
前記測定システムは、
前記レーザー発振器と前記ターゲットの間に分光部材を有し、
前記レーザー発振器から発振された前記レーザー光が前記分光部材で分光され、分光されたレーザー光が前記検知部と前記反射部にそれぞれ入射する構成とされた請求項1記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定する測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定するために様々な測定システムが用いられている。例えば、下記特許文献1および2に開示されたものを挙げることができる。
【0003】
下記特許文献1記載の「作業機械の位置と方向を決定する方法と装置」は、アンダーキャリッジと、該アンダーキャリッジに回転可能に接続された車体と、該車体に接続されたレシーバと、3次元空間でのレシーバの位置を求める位置決めシステムと、円弧に沿う複数の点でレシーバの位置を求める位置決めシステムと、複数の点の位置に応じて車体の位置と方向を求めるプロセッサと、を備えている。
【0004】
下記特許文献2記載の「走行式建設機械の位置計測システム」は、油圧ショベルに、ブーム角度、アーム角度、バケット角度を検出する角度センサ、上部旋回体の前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサ、2個のGPSアンテナ及びGPS受信機、基準局からの補正データを無線アンテナを介して受信する無線機、位置データを送信する無線アンテナと、パネルコンピュータとを設け、GPS受信機からの位置データと上記の各種センサからの角度データとに基づき、油圧ショベルのバケットの先端(モニタポイント)の位置を演算するというものである。このシステムによれば、建設機械がどのような作業状態にあっても、かつどのような種類の建設機械であっても、車体の方向を特定することができ、モニタポイントの位置を計測することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平9-500700
【特許文献2】特開2002-310652
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記特許文献1に記載された「作業機械の位置と方向を決定する方法と装置」は、作業機械の方向を特定するために車体を旋回させる作業が必要になる。作業機械が頻繁に移動する場合は作業機械を移動させる度に車体を旋回させる必要があるため、手間がかかるとともに工事の遅れの原因となる。
【0007】
前記特許文献2に記載された「走行式建設機械の位置計測システム」は車体を旋回させる作業は必要ないが、GPSアンテナを用いるものであるためGPS衛星からの信号を受信できない場所(例えばトンネル内部)では用いることができない。
【0008】
したがって本発明の課題は、GPS衛星の信号を受信できない場所においても作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定する測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、以下の各態様を採ることができる。
(第1の態様)
作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定する測定システムであって、
前記作業機械から離れた位置に配置される測量機器と、
前記作業機械に載置されるターゲットと、を有し、
前記測量機器は、
前記測量機器から前記ターゲットへ向かってレーザー光を発振するレーザー発振器を有し、
前記ターゲットは、
前記測量機器の前記レーザー発振器から発振されたレーザー光の入射方向を検知する検知部を有し、
前記測定システムは、
前記測量機器によって計測される前記測量機器と前記ターゲットの間の距離および角度に基づいて、前記ターゲットの位置を特定する位置特定部と、
前記ターゲットの検知部が検知するレーザー光の入射方向と、前記入射方向に対する前記作業機械の前後左右の位置関係とに基づいて、作業機械が向いている方向を特定する方向特定部と、
を有することを特徴とする測定システム。
【0010】
(作用効果)
本態様は、測量機器とターゲットの間の距離と角度を測量機器が計測し、その計測結果に基づいて位置特定部がターゲットの位置を特定する。また、レーザー光の入射方向を検知部が検知し、検知した入射方向とその入射方向に対する作業機械の前後左右の位置関係とに基づいて、方向特定部が作業機械の向いている方向を特定する。
【0011】
以上のような本態様の測定システムは前記特許文献2のようにGPS衛星の信号を用いないため、GPS衛星の信号を受信できない場所(例えばトンネル工事中の抗内)であっても作業機械の位置と作業機械が向いている方向を特定することができる。勿論、GPS衛星の信号を受信できる場所(例えば様々な施設の建築工事現場)であっても本態様の測定システムを用いることができるため、本態様の測定システムは使用場所が限定されずに様々な場所で使用できるという利点がある。
【0012】
また前記特許文献1のように作業機械を移動させる度に工事作業を中断させて車体を旋回させる必要がないため、工事作業の効率を高めることができる。
【0013】
以上のように作業機械の位置と作業機械が向いている方向を特定することができれば、作業機械の前方に設けた作業部位(例えば油圧ブレーカーのロッド)の位置を検知することが可能になり、工事の進捗状況をリアルタイムで把握し、工事内容の変更(例えば掘削部位の変更)などを的確に行うことができるようになる。
【0014】
(第2の態様)
前記検知部は、
上方に向けて配置された受光レンズと、
前記受光レンズの下方に設けられ、前記レーザー発振器から発振されたレーザー光を受光する受光部と、を有する前記第1の態様の測定システム。
【0015】
(作用効果)
作業機械が移動する度に測量機器とターゲットの位置関係が変化する。このような位置関係の変化が起きた場合であっても、測量機器からターゲットへ向かって発振されたレーザー光を確実に受光する必要がある。そこで、第2の態様では受光レンズを上方に向けて配置することによって、測量機器とターゲットの位置関係が様々に変化した場合であっても、レーザー光を受光できるようにした。また、受光レンズの下方に受光部(例えば受光素子)を設けることで、超広角レンズから入射したレーザー光の入射方向を容易に検知することができる。
【0016】
以上のような受光レンズや受光素子などは様々な市販品が存在するため、イニシャルコストを抑えることができるという利点がある。
【0017】
(第3の態様)
前記検知部は、
上方に向けて配置された受光レンズと、
前記受光レンズの下方に設けられたカメラと、を有する前記第1の態様の測定システム。
【0018】
(作用効果)
受光レンズを用いる利点は前記第2の態様で述べた通りである。本態様では受光レンズの下方にカメラを用いる点を特徴としている。受光レンズに入射したレーザー光をカメラで撮像することにより、レーザー光の入射方向を容易に検知することができる。なおカメラにも様々な市販品が存在するため、イニシャルコストを抑えることができるという利点がある。
【0019】
(第4の態様)
前記検知部は、
前記レーザー発振器から発振されたレーザー光を受光する受光体を筒状に配置した受光部を有する前記第1の態様の測定システム。
【0020】
(作用効果)
第4の態様の測定システムは、第2の態様や第3の態様とは異なり、超広角レンズを用いなくてもレーザー光の入射方向を検知することが可能である点に特徴を有する。
【0021】
具体的には受光体(例えば受光素子)を筒状に配置し、例えばレーザー光が当たった部分の方角からレーザー光が発振されたと推認すればよい。以上のような構成にすることで、超広角レンズを用いなくてもレーザー光の入射方向を容易に検知することができる。
【0022】
(第5の態様)
前記ターゲットは、
前記レーザー発振器から発振されたレーザー光を前記測量機器へ反射する反射部と、を有し、
前記測定システムは、
前記レーザー発振器と前記ターゲットの間に分光部材を有し、
前記レーザー発振器から発振された前記レーザー光が前記分光部材で分光され、分光されたレーザー光が前記検知部と前記反射部にそれぞれ入射する構成とされた前記第1の態様の測定システム。
【0023】
(作用効果)
本態様は、レーザー発振器から発振されたレーザー光を分光部材で分光させた後、分光したレーザー光を検知部と反射部にそれぞれ入射させることを特徴とする。このように分光部材を用いることにより、1つのレーザー発振器を用いるだけで済むため、2つのレーザー発振器を用いる場合と比べてイニシャルコストを下げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る測定システムによれば、GPS衛星の信号を受信できない場所においても作業機械の位置と前記作業機械が向いている方向を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る測定システムである。
【
図2】本発明に用いる測距機器の一例を示す側面図である。
【
図3】本発明に用いるターゲットの一例を示す側面図である。
【
図5】(5-1)検知部の他の例を示す概略斜視図である。(5-2)カメラで撮像した画像の一例である。
【
図6】検知部の他の形態の概略を示す斜視図である。
【
図7】レーザー光を分光させる態様を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る測定システムの好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明及び図面は本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0027】
(測定システム1)
図1に本発明の第1実施形態に係る測定システム1を示した。この測定システム1は、測量機器2と、作業機械3に取り付けられたターゲット4と、を有している。
【0028】
(作業機械3)
作業機械3の種類は特に限定されないが、
図1では作業機械3として油圧ブレーカーを示している。油圧ブレーカー以外の作業機械3として、バックホウ、ツインヘッダー、クレーン車などの旋回式作業機械を用いてもよいし、クローラキャリア、ホイールローダ、ブルドーザなどの非旋回式作業機械を用いてもよい。
【0029】
図1に例示した作業機械3(油圧ブレーカー)は、作業機械3の下部に設けられ、作業機械3を移動させるために用いられる走行体3Aと、走行体3Aの上側に設けられ、走行体3Aに対して旋回移動する旋回体3Bと、旋回体3Bの前方に設けられ、上下及び前後方向に可動する(俯仰可能な)ブーム5A、アーム5B、ロッド5C(チゼル、ノミ)と、を有している。このブーム5A、アーム5B、ロッド5Cには、それぞれ傾斜センサ6A、6B、6Cが取り付けられ、各部材5A、5B、5Cの傾斜角度を検出できるようになっている。
【0030】
なお、本測定システムによって作業機械3の位置(座標)と作業機械3が向いている方向を特定し、それとともに傾斜センサ6A、6B、6Cによってブーム5A、アーム5B、ロッド5Cの各傾斜角度を検出することによって、作業機械3が作業している部分(「作業部分」という。
図1の例ではロッド5Cの先端部分TP)の位置(座標)を特定することができる。
【0031】
(測量機器2)
図1に示すように作業機械3から離れた位置に測量機器2が設けられている。この測量機器2は作業機械3の後方(トンネル坑口側)に設けられている。測量機器2の取り付け位置は限定されないが、トンネル坑内に存在する他の作業機械等によって計測を阻害されないようにするため(後述のレーザー光が当該作業機械等によって遮断されないようにするため)、測量機器2をトンネル断面の上部側壁に取り付けることが好ましい。
【0032】
この測量機器2の種類は特に限定されないが、例えば測距機器(例えば光波測距儀)2A、レーザー光発振器2Bおよび測角機器(例えばセオドライトやトランシット)2Cを有するものを用いることができる。
図1に示したように、測距機器2Aと測角機器2Cを一体化させたトータルステーションを用いてもよく、このトータルステーションの上部に第1レーザー発振器2Baを後付けしたものを測量機器2としてもよい。
【0033】
測量機器2の一例を
図2に示した。
図2に示した測量機器2は
図1に示した測量機器1と若干異なるが、基本的な構造は同じである。この測量機器2は、測量機器2とターゲット4の間の距離を計測する測距機器2Aと、測量機器2を基準としてターゲット4のある(存在する)角度を計測する測角機器2Cと、ターゲット4に向けてレーザー光を発振するレーザー光発振器2Bと、を有している。
【0034】
測角機器2Cは、垂直方向VTの角度(「垂直角」という)を測定する垂直角測定部2Caと、水平方向HTの角度(「水平角」という)を測定する水平角測定部2Cbとを有している。
図2における垂直角測定部2Caは、ターゲット4を視るための対物レンズ2Eの側方であって、枠部2Gの垂直部分の内部に設けられており、
図2における水平角測定部2Cbは、前記対物レンズ2Eの下方であって、枠部2Gの水平部分の内部(測量機器2の各種操作と設定内容などの表示を行う操作表示部2Dの裏側に枠部2Gがある)に設けられている。対物レンズ2Eがターゲット4の反射部4Aを視るように調整し、そのときの各角度(垂直角および水平角)を垂直角測定部2Caと水平角測定部2Cbによって計測する。
【0035】
測距機器2Aは、ターゲット4の反射部4Aを視るための対物レンズ2Eと、ターゲット4の反射部4Aに向けてレーザー光を発振するレーザー発振器2Bを有する。なお
図1や
図2の実施形態では測量機器2に2つのレーザー発振器2Bが設けられており、具体的にはターゲット4の検知部4Dに向けてレーザー光を発振する第1レーザー発振器2Baと、ターゲット4の反射部4Aに向けてレーザー光を発振する第2レーザー発振器2Bbが設けられている。第2レーザー発振器2Bbから発振されたレーザー光はターゲット4の反射部4Aに当たって反射され、その反射されたレーザー光(「反射光」という)は測距機器2Aの反射光受光部2F(
図2の測量機器では、対物レンズ2Eの内部に反射光受光部2Fが設けられている)まで到達する。そして、レーザー光が第2レーザー発振器2Bbから発振されて反射光が測距機器2Aの反射光受光部2Fに到達するまでの時間に基づいて、測距機器2Aとターゲット4の間の距離を算出する。
【0036】
前述したように
図2の測量機器2Aにはターゲット4の検知部4Dに向けてレーザー光を発振する第1レーザー発振器2Baも設けられている。
【0037】
(ターゲット4)
作業機械3にはターゲット4が取り付けられる。
図1の第一実施形態では作業機械3の旋回体3Bの後方上面に1台のターゲット4が設けられている。このターゲット4の取り付け位置は特に限定されないが、前記測量機器2から発振されたレーザー光を受光しやすい位置に設けることが好ましい。すなわち、測量機器2とターゲット4の間に遮断する物が入り込まないように、ターゲット4の取り付け位置を決めることが好ましく、
図1では旋回体3Bの中心部よりもやや後方寄りの位置に設けている。
【0038】
ターゲット4の種類も特に限定されないが、
図1の第一実施形態に示したターゲット4は、測距機器2Aから発振されたレーザー光を受光するとともに、受光したレーザー光を測距機器2Aへ向かって反射する反射部4Aと、レーザー発振器2Bから発振されたレーザー光の入射方向を検知する検知部4Dと、を有している。
図1に示した第一実施形態において、ターゲット4は、作業機械3の後方上壁面に載置された箱体4Cと、箱体4Cの上面に載置された反射部4Aと、反射部4Aの上方に設けられた検知部4Dと、を有している。
図1の実施形態では、ターゲット4がレーザー光を受光しやすくするため、いわゆる底上げ部材として箱体4Cを設けて反射部4Aと検知部4Dの位置を高くしているが、
図3に示す変形例のように箱体4Cを設けずに省略してもよい。
【0039】
図1、
図3の実施形態に示すターゲット4には、反射部4Aとして反射プリズムが設けられている。反射部4Aは反射プリズムに限られるものではなく、例えば360度の方向に張り巡らされた鏡や、反射シート(例えば、製品名:3M≡ ダイヤモンドグレード≡ DG3 超高輝度反射シート広角プリズム型フルキューブ DG2090)などを用いることができる。
【0040】
図1、
図3、
図4の実施形態の検知部4Dには、トンネルの上方に向かって湾曲した受光レンズ4Lが設けられている。この受光レンズ4Lとして画角の広い超広角レンズを用いることが好ましく、この超広角レンズの中でも特に画角の広い魚眼レンズを用いることがより好ましい。
図1、
図3、
図4には受光レンズ4Lとして魚眼レンズ4Lを用いた例を示している。魚眼レンズ4Lとして一般的に多用されている180度程度の画角を有する物を用いることができるが、第1レーザー発振器2Baから発振されたレーザー光を受光しやすくするために画角は広い方が好ましく、例えば220度の画角を有するものを用いることがより好ましい。測量機器2の取り付け位置を工夫することにより、検知部4Dに光波やレーザー光が確実に届くようにできるのであれば、安価な180度に満たない画角を有する魚眼レンズを用いても良い。
【0041】
図1、
図3、
図4に示す検知部4Dにおいて、受光レンズ4Lの下方に受光部4B(「レーザー光受光部」ともいう。以下同じ)が設けられている。この受光部4Bとして受光素子(例えばCCD、CMOS等)などを用いることができる。
【0042】
(レーザー発振器とターゲットの関係)
前述のように、ターゲット4は、レーザー発振器2Bから発振されたレーザー光を測量機器2へ反射する反射部4Aと、を有しており、前記レーザー発振器2Bは、前記ターゲット4の前記検知部4Dへレーザー光を発振する第1レーザー発振器2Baと、前記ターゲット4の前記反射部4Aへレーザー光を発振する第2レーザー発振器2Bbと、を有している。このとき、前記第1レーザー発振器2Baから発振されるレーザー光の経路LA1と、前記第2レーザー発振器2Bbから発振されるレーザー光の経路LA2が略平行となるようにすることが好ましい。
【0043】
具体的には、
図2に示すように、第1レーザー発振器2Baの中心部分と第2レーザー発振器2Bbの中心部分の間の垂直方向VTの距離H1と、
図3に示すように、検知部4D(
図3の例では魚眼レンズ)の垂直方向VTの距離の中央部分と反射部4A(
図3の例ではプリズム)の垂直方向VTの距離の中央部分の距離H2をほぼ同じにすることで、レーザー光の各経路LA(LA1とLA2)を略平行にすることができる。
【0044】
略平行にしなかった場合、第1レーザー発振器2Baから発振されたレーザー光が検知部4Dに入射するように調整すると、第2レーザー発振器2Bbから発振されたレーザー光が反射部4Aに当たらなくなる可能性がある。または、第2レーザー発振器2Bbから発振されたレーザー光が反射部4Aに当たるように調整すると、第1レーザー発振器2Baから発振されたレーザー光が検知部4Dに入射されなくなる可能性がある。
略平行にすることで、上記のような不具合の発生を防止することができる。
【0045】
(測定手順)
次に、前記測定システム1を用いて作業機械3の位置を測定する手順を説明する。まず、測量機器2を取り付けた位置の3次元座標データ(X1、Y1、Z1)を予めコンピュータ9上に入力しておく。
【0046】
なお前記コンピュータ9は測量機器2やターゲット4から離れた位置に設置され、測量機器2で測定した情報(測量機器2によって計測される測量機器2とターゲット4の間の距離および角度)や、ターゲット4が検出するレーザー光の入射方向に関する情報が、無線(有線でもよい)によってコンピュータ9の受信機14へ送信される。なお、測量機器2やターゲット4に送信機(図示しない)が設けられている。
【0047】
このコンピュータ9は、各種演算を行う演算処理部11と、その演算結果等を表示するモニタ10を有している。この演算処理部11は、測量機器2によって計測される測量機器2とターゲット4の間の距離および角度に基づいてターゲット4の位置を特定する位置特定部12と、ターゲット4の検知部4Dが検知するレーザー光の入射方向と、その入射方向に対する作業機械3の前後左右の位置関係とに基づいて、作業機械3が向いている方向を特定する方向特定部13と、を有している。
【0048】
(距離の測定)
例えば
図1に示すように、作業機器3にターゲット4を取り付け、かつ作業機械3から離れた位置に測量機器2を設置した状態で、測量機器2の測距機器2Aからターゲット4の反射部4Aにレーザー光(光波)を発振する。測距機器2Aから発振されたレーザー光は反射部4Aによって受光された後に反射されて測距機器2Aへと戻る。このように測距機器2Aから発振されたレーザー光が測距機器2Aに戻る時間を計測し、計測した時間情報を基にして測距機器2Aとターゲット4の間の距離を演算して求める。
【0049】
(角度の測定)
測量機器2の測角機器2Cでターゲット4の反射部4Aを視準し、測角機器2Cの対物レンズ2Eを水平方向及び垂直方向へ回転させ、測量機器2を基準としたターゲット4の水平角及び垂直角を測定する。
【0050】
(ターゲット4の座標の特定)
以上の測定結果をコンピュータへ送り、ターゲット4の3次元座標(X2、Y2、Z2)を確定する。なお、作業機械3が移動するとターゲット4の3次元座標も変わるため、測量機器2がターゲット4を自動追尾するように設定しておくことが好ましい。
【0051】
(作業機械3が向いている方向の特定)
前記距離や角度の測定と同時に、または前記距離や角度の測定の前後に、作業機械3が向いている方向を測定する。作業機械3が向いている方向の特定には測量機器2の第1レーザー発振器2Baとターゲット4の検知部4Dを用いる。
【0052】
具体的には第1レーザー発振器2Baから検知部4Dの受光レンズ4L(
図1、
図3、
図4の例では魚眼レンズをいい、以下魚眼レンズを例に説明する)に向かってレーザー光LA1が発振され、このレーザー光LA1が魚眼レンズ4Lの内部に入射する。レーザー光LA1は、魚眼レンズ4L内に入射する際に魚眼レンズ4Lによって所定の角度に屈折した後、魚眼レンズ4Lの下方にある受光部4Bによって受光される。
図4に示す受光部4Bは、複数の受光素子が平面状に敷き詰められており、どの受光素子がレーザー光LA1を受光したかを検知することにより、レーザー光LA1の入射方向を特定することができる態様となっている。このレーザー光LA1の入射方向を特定することによって、ターゲット4を基準として、どの方向に測量機器2が存在するのかを知ることができる。
【0053】
なお、受光部4Bと作業機械3の前後方向の位置関係は、作業機械3が向いている方向を特定する作業を開始する前に、初期設定として予め定めておく。例えば、
図4に示す例では、
図4の右側に作業機械3の前方FSがあり、
図4の左側に作業機械3の後方BSがあり、
図4の手前側に作業機械3の右側RSがあり、
図4の奥側に作業機械3の左側があると予め定めている。
【0054】
そして、予め定められた受光部4Bと作業機械3の前後方向の位置関係の情報と、レーザー光LA1の入射方向の情報に基づいて、作業機械3(例えば作業機械3の前方部分)が向いている方向を特定する。
【0055】
(作業機械3の作業部分TPの位置判定)
以上のようにして特定したターゲット4の三次元座標(すなわち作業機械3の三次元座標X2、Y2、Z2)と作業機械3が向いている方向から、作業機械3の作業部分TPの位置を特定することができる。なお、作業機械3の作業部分TPとは、実際に工事作業を行う部分をいい、例えば作業機械3が油圧ブレーカーの場合はロッド5Cのロッド先端部分をいい、作業機械3がバックホウの場合はバケットの先端部分をいい、そのほか作業機械3の先端にカッターを設けた場合はカッターの先端部をいう。
【0056】
この作業機械3の作業部分TPの三次元位置を特定する際は、作業機械3の三次元座標(X2、Y2、Z2)のデータと作業機械3が向いている方向(方位)のデータのほかに、ブーム5A、アーム5B、ロッド5Cにそれぞれ取り付けた傾斜センサ6A、6B、6Cからの角度データや、ブーム5A、アーム5B、ロッド5Cの長さなどの作業機械3自体のデータを用いて求めることができる。その際、作業機械3の如何なる位置にターゲット4を設置したかの情報や、作業機械3の各部分の長さの情報なども用いるようにすると良い。
【0057】
(その他の実施例1)
上記の実施例とは異なり、検知部4Dにカメラ4Eを用いてもよい。カメラ4Eを用いる形態の一例を
図5(5-1)に示した。受光レンズ4Lの下方にカメラ4Eが設置されており、そのカメラ4Eが受光レンズ4Lの内側部分を撮像するように配置されている。なお、一般的にカメラ4Eの内部にも受光素子4Bが存在する。
【0058】
図5(5-1)のカメラ4Eが撮像した画像の例を
図5(5-2)に示した。この態様では、画像に映ったレーザースポットLPの中心点LCを求め、当該中心点LCの延長線上に測量機器2が存在すると判定する。
【0059】
以上のようにして取得した画像には作業機械3の前後左右の情報(例えば作業機械3のブーム5A)等が映っている可能性が高く、例えばブーム5Aの映っている方向が作業機械3の前方であると判定する。このようにしてカメラ4Eが撮影した画像から、作業機械3の方位(作業機械3が向いている方向)を容易に判定することができる。
【0060】
なお、作業機械3にターゲット4を取り付ける位置によっては、カメラ4Eが撮影した画像にブーム5A等の目印(作業機械3の前後方向を示す目印)になるものが映らない可能性がある。目印になるものが映らない原因としては、例えば作業機械3のブーム5Aとターゲット4が著しく離れている場合、作業機械3のブーム5Aとターゲット4の間に障害物がある場合、受光レンズ4Lの画角が狭い場合などを想定することができる。このような場合は、例えば作業機械3の前方の位置(ブーム5Aが存在する位置)を受光レンズ4Lに予めマーキングしておいたり、カメラ4Eが撮影する画像の特定の位置FP(
図5(5-2)の例では右側)にブーム5Aが存在することを初期設定の段階で予め確認して記憶しておいたりするなど、測定開始前に所望の準備をしておけばよい。
【0061】
(その他の実施例2)
図1、3~5の実施例では、検知部4Dに受光レンズ4Lを用いる例を示したが、本発明は受光レンズ4Lを用いる形態に限られるものではない。例えば、
図6に示すように、筒状の受光部4Bを備えた検知部4Dを用いても良い。
図6に示す実施例では、円筒管の外周面全体を覆うように受光素子を配置しており、360度の如何なる方向からレーザー光LA1が入射しても、そのレーザー光を受光できるようにしている。
図6に示す形態では円筒形状のものを例示したが、角筒形状のものにするなど、筒形状は任意に変更することができる。ただし、様々な方向から入射するレーザー光LA1を受光できるように、受光素子を360度全体に配置することが好ましい。
【0062】
なお、なお、受光部4Bと作業機械3の前後方向の位置関係を予め定めておくことや、予め定められた受光部4Bと作業機械3の前後方向の位置関係の情報と、レーザー光LA1の入射方向の情報に基づいて、作業機械3(例えば作業機械3の前方部分)が向いている方向を特定することは、
図4で説明したものと同様であるため、説明を省略する。
【0063】
(その他の実施例3)
図1の測定システム1では、2つのレーザー発振器2Ba、2Bbを用いているが、
図7に示すようにレーザー発振器2Bを一つだけ設けるようにしても良い。この場合は、レーザー発振器2Bとターゲット4の間に分光部材7を設けることが好ましい。この分光部材7は特に限定されるものではないが、例えばレーザー光のうちの約半分を透過させ、レーザー光のうちの約半分を反射させる機能を持つハーフミラーを用いることができる。
図7の実施例では、レーザー発振器2Bと反射部4Aの間にハーフミラー7を所定の方向(
図7の斜め左側)に傾けて配置している。また
図7の実施例では、ハーフミラー7の上方かつ検知部4Dの前の位置に、分光したレーザー光を反射させて検知部4Dに誘導するための誘導鏡8を設けている。この誘導鏡8も所定方向(
図7の斜め左側)に傾けて配置されている。
【0064】
図7に示す実施例において、測量機器2(
図7においては図示を省略した)のレーザー発振器2Bから発振されたレーザー光は分光部材7に到達するまで一つの経路LA3を通過するが、分光部材7で分光され、分光されたレーザー光の一部は経路LA3aを通って反射部4Aに到達する。他方、分光されたレーザー光のその他の部分(他部)は経路LA3bを通って検知部4Dに到達する。
【0065】
なお、レーザー光は様々な方向からターゲット4に入射するため、分光部材7や誘導鏡8はターゲット4を360度取り囲むように配置することが好ましい。また、
図7の分光部材7や誘導鏡8の位置は任意に変更することができる。例えば、レーザー発振器2Bを検知部4Dの前側に設け、レーザー発振器2Bと検知部4Dの間に分光部材7を配置するとともに、その分光部材7の下側かつ反射部4Aの前側に誘導鏡8を配置するようにしても良い。また、分光部材7の設置角度や設置位置を変更することにより、誘導鏡8を設けないようにしてもよい。
【0066】
(効果)
以上のような実施形態によれば、前記特許文献1に記載されたように、作業機械3の方向を特定するために、旋回体3Bを旋回させる作業が不要になる。特に、トンネルの耐久性向上のためにトンネルの地面を掘って逆アーチ状のコンクリート壁(インバート)を形成する際は、バックホウや油圧ブレーカー等の作業機械3を頻繁に移動させなければならないところ、作業機械3を移動させる度に旋回体3Bを旋回させていたのでは、労力がかるととともに、工事が大幅に遅延してしまう。そのため、旋回体3Bの旋回を省くことができるこの測定システム1を用いれば、工期の短縮を図ることができる。
【0067】
また、前記特許文献2に記載されたようにGPSを用いて位置を検出するものではないため、衛生電波が届かないトンネル坑内の工事等にも用いることができるという利点がある。なお、トンネル工事以外の衛生電波が届く場所においてもこの測定システム1を用いることができることは勿論である。
【0068】
また、この測定システム1は1台の測量機器2と1台のターゲット4があれば測定できるものであるため、非常に簡易なシステムである。このように測量機器2やターゲット4をそれぞれ複数台用いるものではないため、イニシャルコストが安いという利点がある。また、1台の測量機器2と1台のターゲット4を用いて行う演算が複雑なものではないため誤りが少ないという利点もある。
【0069】
さらにこの測定システム1によって作業機械3の作業部分TPの位置をリアルタイムで判定することで、作業機械3の作業の進捗をリアルタイムで確認することができ、トンネル掘削作業等を適切に行うことができる。
【0070】
また、測量機器2がターゲット4を自動追尾するように設定すれば、作業機械3が移動したり方位を変えたとしても、リアルタイムで新しい測定データを取得して、作業機械3の三次元座標データや方位の情報を更新するため、ドリフト(測定対象や条件を固定した後に、時間の経過とともに生じる値のズレ)が生じづらいという利点がある。
【符号の説明】
【0071】
1:測定システム、2:測量機器、2A:測距機器(例えば光波測距儀)、2B:レーザー発振器、2Ba:第1レーザー発振器、2Bb:第2レーザー発振器、2C:測角機器(例えば測角儀。測角儀の代表例として、セオドライトやトランシットがある。)、2Ca:垂直角測定部、2Cb:水平角測定部、2D:表示操作部、2E:対物レンズ、2F:反射光受光部、2G:枠部、3:作業機械、3A:走行体、3B:旋回体、4:ターゲット、4A:プリズム、4B:受光部(レーザー光受光部)(例えば受光素子)、4C:箱体、4D:検知部、4E:カメラ、4L:受光レンズ(例えば魚眼レンズ)、5A:ブーム、5B:アーム、5C:ロッド、6A:(ブームに取り付けた)傾斜センサ、6B:(アームに取り付けた)傾斜センサ、6C:(ロッドに取り付けた)傾斜センサ、7:分光部材、8:誘導鏡、9:コンピュータ、10:モニタ、11:演算処理部、12:位置特定部、13:方向特定部、14:受信機、FP:作業機器の前方目印、LA:レーザー光の経路、LA1:第1レーザー発振器から発振されるレーザー光の経路、LA2:第2レーザー発振器から発振されるレーザー光の経路、LC:レーザーポイント、LP:(レーザーポイントの)中心部分、M1:第一のミラー、M2:第二のミラー、TP:(作業機械の)作業部分、HZ:水平方向、VT:垂直方向