(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119335
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ユニット移動装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G21/16 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022183
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】大友 康平
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 博
【テーマコード(参考)】
2H171
【Fターム(参考)】
2H171FA04
2H171GA03
2H171JA12
2H171KA12
2H171LA03
2H171LA13
2H171QA04
2H171QA08
2H171QA24
2H171QB03
2H171QB15
2H171QB32
2H171QC03
2H171QC36
2H171SA10
2H171SA19
2H171SA22
2H171SA26
2H171SA31
2H171WA11
2H171WA12
(57)【要約】
【課題】係脱装置を小型化することができるだけでなく、係脱装置を安定させて係脱することができるようにする。
【解決手段】移動自在に配設されたユニットと、ユニットの位置を変更するための位置変更機構と、駆動部と、係脱装置と、ユニットの位置を検出する位置検出部と、駆動部及び係脱装置を動作させて前記位置変更機構に駆動力を伝達し、ユニットの位置を変更するユニット位置変更処理部とを有する。係脱装置は、通常、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させられ、前記位置検出部のセンサ出力に応じて、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させられる。係脱装置の係合力の不足を静摩擦トルクで補うことができる。係脱部材が偏摩耗することがない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)画像形成装置の装置本体に移動自在に配設されたユニットと、
(b)該ユニットを移動させ、ユニットの位置を変更するための位置変更機構と、
(c)駆動力を発生させる駆動部と、
(d)係脱自在に配設され、前記駆動力を前記位置変更機構に選択的に伝達する係脱装置と、
(e)前記ユニットの位置を検出する位置検出部と、
(f)前記駆動部及び係脱装置を第1、第2の動作パターンで動作させて前記位置変更機構に駆動力を伝達し、前記ユニットの位置を変更するユニット位置変更処理部とを有するとともに、
(g)前記係脱装置は、通常、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させられ、前記位置検出部のセンサ出力に応じて、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させられることを特徴とするユニット移動装置。
【請求項2】
前記ユニット位置変更処理部は、前記第1の動作パターンで、前記駆動部を駆動した後に前記係脱装置を係合させ、前記第2の動作パターンで、前記係脱装置を係合させた後に前記駆動部を駆動する請求項1に記載のユニット移動装置。
【請求項3】
前記ユニット位置変更処理部は、前記駆動部及び係脱装置を第1の動作パターンで動作させてからの経過時間が制限時間になるまでに前記位置検出部のセンサ出力が変化しなかった場合に、駆動部及び係脱装置を第2の動作パターンで動作させる請求項1又は2に記載のユニット移動装置。
【請求項4】
前記ユニット位置変更処理部は、前記駆動部及び係脱装置を前記第2の動作パターンで動作させてからの経過時間が制限時間になるまでに前記位置検出部のセンサ出力が変化しなかった場合に、駆動部及び係脱装置を再び第1の動作パターンで動作させる請求項3に記載のユニット移動装置。
【請求項5】
前記駆動部及び係脱装置が前記第2の動作パターンで動作させられるときの制限時間は、前記第1の動作パターンで動作させられるときの制限時間より長くされる請求項4に記載のユニット移動装置。
【請求項6】
前記駆動部及び係脱装置が同じ動作パターンで動作させられるときの制限時間は、先に同じ動作パターンで動作させられるときの制限時間より長くされる請求項4に記載のユニット移動装置。
【請求項7】
前記ユニット位置変更処理部は、前記駆動部及び係脱装置を所定の回数前記第2の動作パターンで動作させてからの経過時間が制限時間になるまでに前記位置検出部のセンサ出力が変化しなかった場合に、エラーを発生させる請求項3に記載のユニット移動装置。
【請求項8】
前記位置検出部は、前記ユニットの位置を表す部材を検出する請求項1~7のいずれか1項に記載のユニット移動装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のユニット移動装置を有する画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット移動装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、カラーのプリンタには、複数の画像形成ユニットが配設され、該各画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面が露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像がトナーによって現像されて各色のトナー像が形成され、該トナー像が転写ローラによって用紙に転写されるようになっている。そして、定着器において前記トナー像が用紙に定着させられることによって画像が形成され、印刷が行われる。
【0003】
前記プリンタにおいては、各種のユニット、例えば、各画像形成ユニットのうちの所定の画像形成ユニットを、ユニット移動装置としてのユニット昇降装置によって移動、すなわち、昇降させることができるようになっている。
【0004】
該ユニット昇降装置は、昇降用の駆動部としてのモータ、画像形成ユニットを昇降させるための昇降機構、モータの駆動力を昇降機構に伝達するためのギヤ列、駆動力の伝達を断続する係脱装置としてのクラッチ(電磁クラッチ)等を備え、モータが駆動され、クラッチが係合させられると、駆動がクラッチ及びギヤ列を介して昇降機構に伝達され、画像形成ユニットが昇降させられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところで、前記昇降機構を動作させるに当たり、モータを駆動した後にクラッチを係合させると、クラッチにおいて動摩擦トルクが伝達されるが、動摩擦トルクの保証値は仕様の半分程度であるので、昇降機構の負荷が大きい場合は十分な係合力を発生させる必要があり、そのためにクラッチが大型化するだけでなく、コストが高くなってしまう。
【0006】
そこで、クラッチにおいて静摩擦トルクが伝達されるように、クラッチが係合させられた後にモータが駆動されるようになっているユニット昇降装置が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のユニット昇降装置においては、小型のクラッチを使用することができるが、クラッチの係合に伴い、停止させられた状態のクラッチ板に繰り返し外力が加わるので、クラッチ板が偏摩耗し、クラッチを安定させて係脱することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は、前記従来のユニット昇降装置の問題点を解決して、係脱装置を小型化することができるだけでなく、係脱装置を安定させて係脱することができるユニット移動装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明のユニット移動装置においては、装置本体に移動自在に配設されたユニットと、該ユニットを移動させ、ユニットの位置を変更するための位置変更機構と、駆動力を発生させる駆動部と、係脱自在に配設され、前記駆動力を前記位置変更機構に選択的に伝達する係脱装置と、前記ユニットの位置を検出する位置検出部と、前記駆動部及び係脱装置を第1、第2の動作パターンで動作させて前記位置変更機構に駆動力を伝達し、前記ユニットの位置を変更するユニット位置変更処理部とを有する。
【0011】
そして、前記係脱装置は、通常、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させられ、前記位置検出部のセンサ出力に応じて、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユニット移動装置においては、装置本体に移動自在に配設されたユニットと、該ユニットを移動させ、ユニットの位置を変更するための位置変更機構と、駆動力を発生させる駆動部と、係脱自在に配設され、前記駆動力を前記位置変更機構に選択的に伝達する係脱装置と、前記ユニットの位置を検出する位置検出部と、前記駆動部及び係脱装置を第1、第2の動作パターンで動作させて前記位置変更機構に駆動力を伝達し、前記ユニットの位置を変更するユニット位置変更処理部とを有する。
【0013】
そして、前記係脱装置は、通常、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させられ、前記位置検出部のセンサ出力に応じて、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させられる。
【0014】
この場合、係脱装置が、通常、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させられ、位置変更機構に十分な駆動力が伝達されない場合に、位置検出部のセンサ出力に応じて、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させられるので、係脱装置の製造誤差等によるわずかな係合力の不足を静摩擦トルクで補うことができ、駆動部によって発生させられた駆動力を位置変更機構に十分に伝達することができる。
【0015】
したがって、係脱装置を小型化することができる。
【0016】
また、通常、係脱装置が、動摩擦トルクが伝達されるように係合させられるので、係脱部材が偏摩耗することがなく、係脱装置を安定させて係脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるプリンタの斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図4】本発明の実施の形態におけるプリンタを左斜め上方から見たときの筐体内に配設された左右のインナプレートを示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるプリンタを右斜め上方から見たときの筐体内に配設された左右のインナプレートを示す図である。
【
図6】本発明の実施の形態における画像形成ユニットを支持するユニット支持構造を示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の要部を示す第1の斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の要部を示す第2の斜視図である。
【
図9】本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の動作を説明するための第1の図である。
【
図10】本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の動作を説明するための第2の図である。
【
図11】本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第1のフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第2のフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第3のフローチャートである。
【
図14】本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第1のタイムチャートである。
【
図15】本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第2のタイムチャートである。
【
図16】本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第3のタイムチャートである。
【
図17】本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第4のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、ユニット昇降装置及び画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0019】
図2は本発明の実施の形態におけるプリンタの斜視図、
図3は本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。なお、図において、X軸正方向はプリンタ10における後方向であり、X軸負方向はプリンタ10における前方向であり、Y軸正方向はプリンタ10における左方向であり、Y軸負方向はプリンタ10における右方向であり、Z軸正方向はプリンタ10における上方向であり、Z軸負方向はプリンタ10における下方向である。
【0020】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の装置外装としての筐体、Bdはプリンタ10の本体、すなわち、装置本体である。
【0021】
前記筐体Csは、前壁Wf、背壁Wr、前壁Wf側から見て左側の側壁Ws1、前壁Wf側から見て右側の側壁Ws2及び頂壁Wtを備える。
【0022】
前記前壁Wfの上半部に第1の開閉部材としてのフロントカバーPfが開閉自在に配設され、該フロントカバーPfを開くことによって、操作者は装置本体Bd内にアクセスすることができる。また、前記フロントカバーPfには、第2の開閉部材としての手差しカバーCvが開閉自在に配設され、該手差しカバーCvを開くことによって、操作者は、手差し用の媒体載置部としての用紙トレイSmに媒体としての図示されない用紙をセットすることができる。そして、前記前壁Wfの下端部に媒体収容部としての用紙カセット11が装脱自在に配設され、該用紙カセット11を引き出すことによって、操作者は、自動給紙用の媒体載置部としての用紙トレイSaに用紙をセットすることができる。
【0023】
前記頂壁Wtにおける前壁Wfに隣接する部分には操作・表示部としての操作パネル76が配設される。該操作パネル76は、プリンタ10の状態を表示するための、LED画面等から成る表示部78、及び操作者がプリンタ10への指示を入力するための、スイッチ、キー等から成る操作部79を備える。なお、操作パネル76がタッチパネルによって形成されている場合、表示部78は操作部としても機能する。
【0024】
また、前記頂壁Wtの中央部から背壁Wrにかけて媒体積載部としてのスタッカSkが形成され、該スタッカSkに臨ませて、画像が形成された用紙を排出するための排出口Hdが形成され、該排出口Hdに、排出部材としての排出ローラ対mdが回転自在に配設される。
【0025】
前記用紙カセット11の用紙トレイSaに隣接させて第1の給紙装置15が配設される。該第1の給紙装置15は、繰出部材としてのホップアップローラ16、給紙部材としてのフィードローラ17、分離部材としてのリタードローラ18(分離ローラ)等を備え、ホップアップローラ16によって用紙トレイSaから繰り出された用紙が、フィードローラ17及びリタードローラ18によって、1枚ずつ分離させられて第1の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に給紙される。
【0026】
前記第1の給紙装置15によって給紙された用紙は、用紙搬送路Rt1を第1の搬送部材としての給紙ローラ対m1によって搬送され、続いて、該給紙ローラ対m1より下流側に配設された、レジストローラ及びプレッシャローラから成る第2の搬送部材としてのレジストローラ対m2によって斜行が矯正された後、該レジストローラ対m2より下流側に配設された画像形成部Q1に送られる。
【0027】
該画像形成部Q1は、複数の、本実施の形態においては、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4個の画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Y、該各画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yの像担持体としての感光体ドラム21、該各感光体ドラム21より上方において各感光体ドラム21と対向させて配設された露光装置としての後述されるLEDヘッド22(
図1)、前記画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yの上方に配設され、各画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yに現像剤としてのトナーを供給する現像剤収容部としてのトナー収容部24、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yの下方に配設された転写ユニットu1等を備える。なお、前記トナー収容部24においては、各色のトナーがそれぞれ図示されないカートリッジに収容される。
【0028】
前記画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yは、前記感光体ドラム21、該感光体ドラム21に当接させて配設された帯電装置としての帯電ローラ27、前記感光体ドラム21に当接させて配設された現像剤担持体としての現像ローラ28、該現像ローラ28に当接させて配設された供給部材としてのトナー供給ローラ29等を備える。
【0029】
また、前記転写ユニットu1は、画像形成ユニット20Bkの下方において回転自在に配設され、ベルト走行用の駆動部としての後述されるベルトモータM3と連結され、該ベルトモータM3からの回転を受けて回転させられる第1のローラとしての駆動ローラr1、画像形成ユニット20Yの下方において回転自在に配設され、前記駆動ローラr1の回転に伴って回転させられる第2のローラとしての従動ローラr2、駆動ローラr1及び従動ローラr2によって走行自在に張設され、駆動ローラr1及び従動ローラr2の回転に伴って各画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yに沿って走行させられるベルト部材としての転写ベルト31、該転写ベルト31を介して各画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yの感光体ドラム21とそれぞれ対向させて配設された転写部材としての転写ローラ32等を備える。感光体ドラム21と転写ローラ32との間には転写部が形成される。
【0030】
各画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yにおいて、帯電ローラ27が感光体ドラム21の表面を一様に帯電させると、前記LEDヘッド22が、後述される制御部70で生成された画像データに対応するパターンの光を感光体ドラム21の表面に照射して静電潜像を形成する。
【0031】
そして、トナー収容部24から画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yに供給され、トナー供給ローラ29によって保持されたトナーが現像ローラ28に供給され、感光体ドラム21の表面における静電潜像が形成された部分が、感光体ドラム21の回転に伴って現像ローラ28に接触すると、感光体ドラム21上の静電潜像と現像ローラ28との電位差によってトナーが静電潜像に付着させられ、これにより、各感光体ドラム21上にトナー像が形成される。
【0032】
続いて、感光体ドラム21と転写ローラ32との間の各転写部において、用紙搬送路Rt1を搬送され画像形成部Q1に送られた用紙に、各転写ローラ32によって各色のトナー像が順次重ねて転写されて、用紙上にカラーのトナー像が形成される。
【0033】
前記用紙搬送路Rt1における画像形成部Q1より下流側には定着装置としての定着器35が配設される。該定着器35は、第1の定着部材としての加熱ローラ36、及び該加熱ローラ36に圧接させられた、第2の定着部材としての加圧ローラ37を備える。前記転写部を通過して用紙上に形成されたトナー像は、加熱ローラ36と加圧ローラ37との間の定着部において加熱され、加圧されて、用紙に定着させられる。このようにして、用紙に画像が形成される。
【0034】
画像が形成された用紙は、定着器35から排出され、定着器35より下流側に配設された第3の搬送部材としての搬送ローラ対m3によって搬送された後、前記排出ローラ対mdによって装置本体Bd外に排出され、スタッカSkに積載される。
【0035】
なお、本実施の形態においては、前記プリンタ10において、用紙の両面に画像を形成する両面印刷を行うことができるようになっている。
【0036】
そのために、用紙搬送路Rt1における、定着器35より下流側で、かつ、搬送ローラ対m3より上流側に分岐部pt1が形成され、該分岐部pt1から上流側に向けて分岐させて、第2の媒体搬送路としての用紙搬送路Rt2が形成される。
【0037】
両面印刷においては、一方の面に画像が形成された用紙が、用紙搬送路Rt1における分岐部pt1より下流側に退避させられた後、搬送ローラ対m3が逆方向に回転させられるのに伴って用紙搬送路Rt1から用紙搬送路Rt2に送られ、反転させられる。
【0038】
前記用紙搬送路Rt2における前記分岐部pt1より下流側には、第4~第7の搬送部材としての搬送ローラ対m4~m7が配設され、搬送ローラ対m7より下流側において用紙搬送路Rt2が用紙搬送路Rt1に合流させられる。
【0039】
前記分岐部pt1から用紙搬送路Rt2に送られ、反転させられた用紙は、搬送ローラ対m4~m7によって搬送され、用紙搬送路Rt1に送られ、その後、画像形成部Q1において、他方の面に画像が形成される。
【0040】
前記給紙ローラ対m1は、給紙用の駆動部としての後述される給紙モータM1を駆動することによって回転させられ、前記レジストローラ対m2、感光体ドラム21、転写ローラ32、搬送ローラ対m3、排出ローラ対md等は、画像形成用の駆動部としての後述されるIDモータM2を駆動することによって回転させられ、前記駆動ローラr1等は、前記ベルトモータM3を駆動することによって回転させられ、前記加圧ローラ37等は、定着用の駆動部としての後述される定着モータM4を駆動することによって回転させられる。なお、定着モータM4は、定着用の駆動部としてだけでなく、ユニット移動装置としての後述されるユニット昇降装置51(
図6)の昇降用の駆動部としても使用される。
【0041】
また、本実施の形態においては、搬送ローラ対m1、m7において、搬送用の駆動部としての図示されない搬送モータの回転を受ける図示されないピンチローラが共有され、前記搬送モータが正回転させられると、搬送ローラ対m1が用紙搬送路Rt1において用紙を下流側へ搬送し、搬送モータが逆回転させられると、搬送ローラ対m7が用紙搬送路Rt2において用紙を下流側へ搬送する。
【0042】
さらに、本実施の形態においては、前述されたように、手差しカバーCvが開閉自在に配設され、操作者は、手差しカバーCvを開き、用紙トレイSmに用紙、例えば、用紙カセット11に収容することができないサイズの用紙をセットする。
【0043】
用紙トレイSmに隣接させて媒体給紙装置としての第2の給紙装置41が配設され、該第2の給紙装置41は、回転自在に配設された繰出部材としてのホップアップローラ43、回転自在に配設された給紙部材としてのフィードローラ44、該フィードローラ44と対向させて配設された分離部材としてのリタードローラ45等を備える。ホップアップローラ43によって繰り出された用紙は、フィードローラ44及びリタードローラ45によって1枚ずつ分離させられて用紙搬送路Rt1に給紙され、レジストローラ対m2に送られる。
【0044】
ところで、前記プリンタ10においては、装置本体Bd内に、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Y、転写ユニットu1、定着器35等の各ユニットが配設されるが、各ユニットは、筐体Csの内側に配設された後述される左右のインナプレートPL、PR(
図4)に取り付けられ、必要に応じて移動自在に支持されるようになっている。
【0045】
図4は本発明の実施の形態におけるプリンタを左斜め上方から見たときの筐体内に配設された左右のインナプレートを示す図、
図5は本発明の実施の形態におけるプリンタを右斜め上方から見たときの筐体内に配設された左右のインナプレートを示す図、
図6は本発明の実施の形態における画像形成ユニットを支持するユニット支持構造を示す斜視図である。なお、
図4及び5において、X軸正方向はプリンタ10における後方向であり、X軸負方向はプリンタ10における前方向であり、Y軸正方向はプリンタ10における左方向であり、Y軸負方向はプリンタ10における右方向であり、Z軸正方向はプリンタ10における上方向であり、Z軸負方向はプリンタ10における下方向である。
【0046】
図において、50は、筐体Cs(
図2)の内側において装置本体Bdの各ユニット等を保持するプレート組立体であり、該プレート組立体50は、側壁Ws1の内側に配設され、装置本体Bdの各部位を支持する左側のインナプレートPL、側壁Ws2の内側に取り付けられ、装置本体Bdの各部位を支持する右側のインナプレートPR、前記インナプレートPLに取り付けられ、画像形成部Q1(
図3)を保持する左側のフレームFL、前記インナプレートPRに取り付けられ、画像形成部Q1を保持する右側のフレームFR、及びインナプレートPL、PRを連結し、転写ユニットu1を支持する中央フレームFCを備える。
【0047】
また、51はユニット昇降装置、53は、前後方向に延在させて、かつ、各フレームFL、FRとの間に所定の隙間を置いてフレームFL、FRに取り付けられた板状の位置決めプレート、56は、各位置決めプレート53とフレームFL、FRとの隙間において前後方向に移動自在に配設されたスライダである。
【0048】
本実施の形態において、前記位置決めプレート53は、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yを着脱自在に支持するとともに、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが装置本体Bdに取り付けられたときに画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yを位置決めする。そのために、各位置決めプレート53の上縁に、上端が開放された「U」字状の形状を有する4個の第1の係合部位としての溝54Bk、54C、54M、54Yが、前方から後方にかけて所定のピッチで、かつ、所定の深さで形成される。また、前記画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yの外筐の左右の両縁に第2の係合部位としての図示されないポールが突出させて形成され、各ポールを溝54Bk、54C、54M、54Yと係合させることによって、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが、装置本体Bdに取り付けられ、装置本体Bdに対して位置決めされる。
【0049】
なお、本実施の形態においては、画像形成部Q1及び転写ユニットu1が、前方ほど低く、後方ほど高くなるようにX軸方向に対して傾斜させて配設されるようになっているので、フレームFL、FR、位置決めプレート53、スライダ56等も前方ほど低く、後方ほど高くなるようにX軸方向に対して傾斜させて移動自在に配設される。
【0050】
ところで、前記プリンタ10においては、上位装置としての後述されるホストコンピュータPC(
図1)から送られる印刷データによって画像を形成するモード、すなわち、画像形成モードとして、第1のモードであるカラーモード又は第2のモードであるモノクロモードが選択されるようになっている。
【0051】
そのために、本実施の形態においては、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yのうちの画像形成ユニット20C、20M、20Yが、移動自在に、本実施の形態においては、昇降自在に配設され、カラーモードが選択されると、前記ユニット昇降装置51によって画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが下位置に置かれ、各感光体ドラム21が転写ベルト31を介して転写ローラ32に当接させられ、各色のトナー像が用紙に転写されてカラーの画像が形成される。一方、モノクロモードが選択されると、前記ユニット昇降装置51によって画像形成ユニット20C、20M、20Yが上位置に置かれ、画像形成ユニット20Bkの感光体ドラム21が転写ベルト31を介して転写ローラ32に当接させられ、画像形成ユニット20C、20M、20Yの感光体ドラム21が転写ベルト31から離間させられ、ブラックのトナー像だけが用紙に転写されてモノクロの画像が形成される。本実施の形態においては、印刷データによって画像形成モードが選択されるようになっているが、操作者が、操作パネル76の操作部78を操作することによって画像形成モードを選択することもできる。
【0052】
次に、ユニット昇降装置51について説明する。
【0053】
図7は本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の要部を示す第1の斜視図、
図8は本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の要部を示す第2の斜視図、
図9は本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の動作を説明するための第1の図、
図10は本発明の実施の形態におけるユニット昇降装置の動作を説明するための第2の図である。
【0054】
図において、51はユニット昇降装置であり、該ユニット昇降装置51は、フレームFL(
図5)、FRのうちの一方、本実施の形態においては、フレームFRに取り付けられ、昇降用の駆動部として使用され、駆動力を発生させるモータ、本実施の形態においては、前記定着モータM4、フレームFL、FRに隣接させて配設され、画像形成ユニット20C、20M、20Yを移動させ、昇降させて画像形成ユニット20C、20M、20Yの位置を変更するための位置変更機構としての昇降機構K、フレームFRに取り付けられ、定着モータM4の駆動力を各昇降機構Kに伝達するためのギヤ列Gt、定着モータM4の図示されない出力軸とギヤ列Gtとの間に配設され、駆動力の伝達を断続し、駆動力を選択的に各昇降機構Kに伝達する係脱装置としてのクラッチ(電磁クラッチ)CL等を備え、定着モータM4が正方向及び逆方向に駆動され、クラッチCLが係合させられると、駆動力がクラッチCL及びギヤ列Gtを介して各昇降機構Kに伝達され、画像形成ユニット20C、20M、20Yが昇降させられる。
【0055】
なお、前記ギヤ列Gtは、ギヤgr1、gr2等から成り、ギヤgr1は、シャフトsh1を介して前記フレームFLに配設されたギヤ列Gtに駆動力を伝達し、ギヤgr2は、大小の歯車を有する減速ギヤであり、回転を減速して、後述されるピニオン66に伝達する。
【0056】
また、前記昇降機構Kは、前記スライダ56、該スライダ56の後端部に配設され、回転運動を直線運動に変換する運動方向変換部としてのラックアンドピニオン57等を備える。
【0057】
前記スライダ56は、矢印A、B方向に移動するのに伴って画像形成ユニット20C、20M、20YをZ軸方向に移動させ、上位置に置いたり、下位置に置いたりする。そのために、前記スライダ56と画像形成ユニット20C、20M、20Yとの間に直動カムから成るカム構造が形成される。
【0058】
該カム構造は、スライダ56の長手方向における画像形成ユニット20C、20M、20Yに対応する部分に形成され、主動節を構成する板カム部58C、58M、58Y、及び画像形成ユニット20C、20M、20Yの下部に形成され、従動節を構成する突出部61C、61M、61Yから成り、各板カム部58C、58M、58Yは、前側に所定の距離にわたって形成された第1の平坦部62、後側に所定の距離にわたって第1の平坦部62より高く形成された第2の平坦部63、及び第1、第2の平坦部62、63間に形成された傾斜部64を備え、突出部61C、61M、61Yは、下方に向けて突出させて形成され、半円柱状の形状を有する突起から成る。
【0059】
図9に示されるように、突出部61C、61M、61Yが板カム部58C、58M、58Yの第1の平坦部62上に置かれている場合、画像形成ユニット20C、20M、20Yは下位置に置かれ、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yにおいて形成された各色のトナー像によってカラーの画像が形成される。そして、突出部61C、61M、61Yが第1の平坦部62上に置かれると、スライダ56が矢印A方向に移動させられ、
図10に示されるように、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれると、画像形成ユニット20C、20M、20Yが上位置に置かれ、画像形成ユニット20Bkにおいて形成されたブラックのトナー像によってモノクロの画像が形成される。また、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれると、スライダ56が矢印B方向に移動させられ、突出部61C、61M、61Yが第1の平坦部62上に置かれると、画像形成ユニット20C、20M、20Yが再び下位置に置かれ、カラーの画像が形成される。
【0060】
前記ラックアンドピニオン57は、前記板カム部58Yの第1の平坦部63の下方の縁部に形成されたラック65、及びフレームFL、FRに対して回転自在に配設された前記ピニオン66から成る。該ピニオン66が正方向及び逆方向に回転させられると、ラックアンドピニオン57によって運動方向が変換され、ラック65及びスライダ56が矢印A、B方向に移動させられる。
【0061】
そして、前記スライダ56の位置を検出するために、装置本体Bd(
図3)におけるスライダ56の下方に位置検出部としての位置センサs1が配設される。該位置センサs1は、光学式センサから成り、画像形成ユニット20C、20M、20Yのうちの所定の画像形成ユニット、本実施の形態においては、画像形成ユニット20Mの下方に配設された発光部及び受光部から成るセンサ68、及び前記スライダ56から下方に向けて垂下させられ、センサ68の発光部と受光部との間を遮光する遮光部69を備える。突出部61C、61M、61Yが第1の平坦部62上に置かれている場合、遮光部69は発光部と受光部との間を遮光せず、受光部は発光部で発生させられた光を受光し、位置センサs1はオフになる。これにより、前記制御部70が、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが下位置に置かれていると判断する。そして、スライダ56が前方に向けて移動させられ、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれると、遮光部69が発光部と受光部との間を遮光し、発光部で発生させられた光を受光部が受光しなくなり、位置センサs1はオンになる。これにより、制御部70は、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが上位置に置かれていると判断する。本実施の形態において、スライダ56は画像形成ユニット20C、20M、20Yの位置を表す部材として機能し、位置センサs1は、スライダ56を検出することによって画像形成ユニット20C、20M、20Yの位置を検出する。
【0062】
ところで、前記昇降機構Kを動作させるに当たり、定着モータM4を駆動した後にクラッチCLを係合させると、クラッチCLにおいて動摩擦トルクが伝達されるが、動摩擦トルクの保証値は仕様の半分程度であるので、クラッチCLを確実に係合させようとすると、大型のクラッチを使用する必要があり、プリンタ10が大型化するだけでなく、コストが高くなってしまう。
【0063】
これに対して、クラッチCLにおいて静擦トルクが伝達されるように、クラッチCLを係合させた後に定着モータM4を駆動することが考えられるが、その場合、クラッチCLを確実に係合させることはできても、クラッチCLに偏摩耗が発生してしまう。
【0064】
そこで、本実施の形態においては、定着モータM4及びクラッチCLが、通常は、第1の動作パターンで動作させられ、定着モータM4が駆動された後に、クラッチCLが、動摩擦トルクが伝達されるように動的に係合させられるとともに、クラッチCLの製造誤差等によって係合力が不足してクラッチCLを係合させることができなかった場合に、定着モータM4及びクラッチCLが第2の動作パターンで動作させられ、クラッチCLが、静摩擦トルクが伝達されるように静的に係合させられた後に、定着モータM4が駆動されるようになっている。
【0065】
次に、プリンタ10の制御装置について説明する。
【0066】
図1は本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0067】
図において、10はプリンタ、PCは、有線又は無線のLAN等によってプリンタ10に接続された上位装置としてのホストコンピュータである。
【0068】
また、70は制御部、IFは、プリンタ10とホストコンピュータPCとを接続し、ホストコンピュータPCから印刷データ等を受信したり、プリンタ10のステータス情報をホストコンピュータPCに送信したりする通信部としてのインタフェース部、73は第1の記憶部としてのROM(Read Only Memory)、74は第2の記憶部としてのRAM(Random Access Memory)、75は計時装置としてのタイマ、76は前記操作パネル、78は操作部、79は表示部、s1は位置センサである。
【0069】
そして、22はLEDヘッド、M1は給紙モータ、M2はIDモータ、M3はベルトモータ、M4は定着モータである。
【0070】
前記制御部70は、図示されない演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)、入出力ポート等を備え、プリンタ10の全体の制御を行うとともに、ROM73に記録されたプログラム(ソフトウェア)、制御データ等に基づいて各種の処理を行う。
【0071】
前記ROM73には、前記プログラムのほかに、制御部70が前記各種の処理を行うために必要な設定値、閾値等が記録される。なお、本実施の形態においては、ROM73として、書換え可能なフラッシュROM等が使用される。
【0072】
前記RAM74には、前記印刷データに基づいて生成され、印刷を行うための画像データのほかに、プログラムの実行に伴って生成される各種情報が一時的に記録される。なお、RAM74は、前記CPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。
【0073】
また、前記制御部70は、印刷処理部Pr1、ユニット位置変更処理部としてのユニット昇降処理部Pr2等を備える。
【0074】
前記印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い、ホストコンピュータPCから印刷データを受信すると、印刷データを画像データに変換し、該画像データに基づいて各LEDヘッド22を駆動して用紙に画像を形成し、印刷を行う。
【0075】
前記ユニット昇降処理部Pr2は、ユニット位置変更処理としてのユニット昇降処理を行い、定着モータM4を駆動したり、停止させたりするとともに、クラッチCLを係脱し、画像形成ユニット20C、20M、20Yを下位置に置いたり、上位置に置いたりする。
【0076】
また、ユニット昇降処理部Pr2は、定着モータM4及びクラッチCLの動作パターンを、位置センサs1のセンサ出力であるオン・オフに応じて変更し、第1の動作パターンで、定着モータM4を駆動した後にクラッチCLを動的に係合させるとともに、クラッチCLの係合を先に解除した後に定着モータM4を停止させ、第2の動作パターンで、クラッチCLを静的に係合させた後に定着モータM4を駆動するとともに、クラッチCLの係合を解除した後に定着モータM4を停止させる。
【0077】
次に、制御部70の動作について説明する。
【0078】
図11は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第1のフローチャート、
図12は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第2のフローチャート、
図13は本発明の実施の形態における制御部の動作を示す第3のフローチャート、
図14は本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第1のタイムチャート、
図15は本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第2のタイムチャート、
図16は本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第3のタイムチャート、
図17は本発明の実施の形態における制御部の動作を説明するための第4のタイムチャートである。なお、
図14~17の各タイムチャートにおいて、定着モータM4が停止されている状態をオフとし、定着モータM4が駆動されている状態をオンとし、クラッチCLの係合が解除されている状態をオフとし、クラッチCLが係合させられている状態をオフとする。
【0079】
プリンタ10がインタフェース部IFを介してホストコンピュータPCから印刷データを受信する(ステップS1)と、印刷処理部Pr1は、印刷データにおいて選択されている画像形成モードを判定し(ステップS2)、カラーモードが選択されているかどうかを判断する(ステップS3)。
【0080】
カラーモードが選択されている場合、印刷処理部Pr1は画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが下位置に置かれた状態で印刷処理を行い(ステップS4)、カラーの画像を形成する。
【0081】
一方、カラーモードが選択されていない場合、ユニット昇降処理部Pr2は、定着モータM4及びクラッチCLを第1の動作パターンで駆動する。すなわち、ユニット昇降処理部Pr2は、
図14に示されるように、タイミングt1で定着モータM4を駆動する(ステップS5)とともに、タイマ75による計時を開始し、定着モータM4が定速域に到達するまでの加速時間τ1が経過すると、タイミングt2でクラッチCLを係合させる(ステップS6)。
【0082】
これにより、定着モータM4によって発生させられた駆動力がクラッチCL及びギヤ列Gtを介して昇降機構Kに伝達される。
【0083】
続いて、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt2からの経過時間τ2があらかじめ設定された制限時間τth1になる前に、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれ、位置センサs1のセンサ出力が変化したかどうか、すなわち、位置センサs1がオンになったかどうかを判断する(ステップS7)。
【0084】
なお、前記制限時間τth1は、定着モータM4の速度、ギヤ列Gtのギヤ比、スライダ56の必要移動量等によって算出された、位置センサs1がオンになるまでの理論上の時間にマージンを加算した値にされる。
【0085】
経過時間τ2が制限時間τth1になる前のタイミングt3で位置センサs1がオンになった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt3から所定の時間τ3が経過したタイミングt4でクラッチCLの係合を解除し(ステップS8)、タイミングt4から所定の時間τ4が経過したタイミングt5で定着モータM4を停止させる(ステップS9)。
【0086】
これにより、印刷処理部Pr1は、画像形成ユニット20Bkが下位置に置かれ、画像形成ユニット20C、20M、20Yが上位置に置かれた状態で印刷処理を行い(ステップS10)、モノクロの画像を形成する。
【0087】
一方、経過時間τ2が制限時間τth1になっても位置センサs1がオンにならなかった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、
図15に示されるように、タイミングt11でタイミングt2からの経過時間がτth1になると、定着モータM4を駆動した状態でクラッチCLの係合を解除し(ステップS11)、タイミングt11から所定の時間τ11が経過したタイミングt12で定着モータM4を停止させる(ステップS12)。
【0088】
続いて、ユニット昇降処理部Pr2は、画像形成ユニット20C、20M、20Yを上位置に置くためのユニット昇降装置51の動作をリトライする。
【0089】
そのために、ユニット昇降処理部Pr2は、定着モータM4及びクラッチCLを第2の動作パターンで動作させる。すなわち、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt12からリトライ待機時間τ12が経過すると、タイミングt13でクラッチCLを再び係合し(ステップS13)、タイミングt13からクラッチCLの係合が完了するまでの係合時間τ13が経過したタイミングt14で定着モータM4を再び駆動する(ステップS14)。
【0090】
次に、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt13からの経過時間τ14があらかじめ設定された制限時間τth2になる前に、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれ、位置センサs1がオンになったかどうかを判断する(ステップS15)。なお、前記制限時間τth2は、前記係合時間τ13に、定着モータM4が定速域に到達するまでの加速時間を加算して得られたオン理論値にマージンを加算した値にされ、制限時間τth1より長くされる。
【0091】
経過時間τ14が制限時間τth2になる前のタイミングt15で位置センサs1がオンになった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt15から所定の時間τ15が経過したタイミングt16でクラッチCLの係合を解除し(ステップS8)、タイミングt16から所定の時間τ16が経過したタイミングt17で定着モータM4を停止させる(ステップS9)。
【0092】
これにより、印刷処理部Pr1は、画像形成ユニット20Bkが下位置に置かれ、画像形成ユニット20C、20M、20Yが上位置に置かれた状態で印刷処理を行い(ステップS10)、モノクロの画像を形成する。
【0093】
一方、経過時間τ14が制限時間τth2になっても位置センサs1がオンにならなかった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt13からの経過時間がτth2になると、定着モータM4を駆動したままクラッチCLの係合を解除し(ステップS16)、その後、定着モータM4を停止させる(ステップS17)。
【0094】
続いて、ユニット昇降処理部Pr2は、更にユニット昇降装置51の動作をリトライする。
【0095】
このとき、ユニット昇降処理部Pr2は、定着モータM4及びクラッチCLを再び第1の動作パターンで動作させる。すなわち、ユニット昇降処理部Pr2は、定着モータM4を停止させた後、リトライ待機時間が経過すると、
図16に示されるように、タイミングt21で定着モータM4を駆動し(ステップS18)、定着モータM4が定速域に到達するまでの加速時間τ21が経過すると、タイミングt22でクラッチCLを係合させる(ステップS19)。
【0096】
そして、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt22からの経過時間τ22があらかじめ設定された制限時間τth3になる前に、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれ、位置センサs1がオンになったかどうかを判断する(ステップS20)。
【0097】
なお、前記制限時間τth3は前記制限時間τth1より長くされる。
【0098】
経過時間τ22が制限時間τth3になる前のタイミングt23で位置センサs1がオンになった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt23から所定の時間τ23が経過したタイミングt24でクラッチCLの係合を解除し(ステップS8)、タイミングt24から所定の時間τ24が経過したタイミングt25で定着モータM4を停止させる(ステップS9)。
【0099】
これにより、印刷処理部Pr1は、画像形成ユニット20Bkが下位置に置かれ、画像形成ユニット20C、20M、20Yが上位置に置かれた状態で印刷処理を行い(ステップS10)、モノクロの画像を形成する。
【0100】
一方、経過時間τ22が制限時間τth3になっても位置センサs1がオンにならなかった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、
図17に示されるように、タイミングt23でタイミングt22からの経過時間がτth3になると、定着モータM4を駆動した状態でクラッチCLの係合を解除し(ステップS21)、タイミングt23から所定の時間τ25が経過したタイミングt24で定着モータM4を停止させる(ステップS22)。
【0101】
続いて、ユニット昇降処理部Pr2は、画像形成ユニット20C、20M、20Yを上位置に置くために、更にユニット昇降装置51の動作をリトライする。
【0102】
そのために、ユニット昇降処理部Pr2は、定着モータM4及びクラッチCLを第2の動作パターンで動作させる。すなわち、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt24からリトライ待機時間τ26が経過すると、タイミングt25でクラッチCLを再び係合し(ステップS23)、タイミングt25からクラッチCLの係合が完了するまでの係合時間τ27が経過したタイミングt26で定着モータM4を再び駆動する(ステップS24)。
【0103】
次に、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt25からの経過時間τ28があらかじめ設定された制限時間τth4になる前に、突出部61C、61M、61Yが第2の平坦部63上に置かれ、位置センサs1がオンになったかどうかを判断する(ステップS25)。なお、前記制限時間τth4は前記制限時間τth2、τthより長くされる。
【0104】
経過時間τ28が制限時間τth4になる前のタイミングt27で位置センサs1がオンになった場合、ユニット昇降処理部Pr2は、タイミングt27から所定の時間τ29が経過したタイミングt28でクラッチCLの係合を解除し(ステップS8)、タイミングt28から所定の時間τ30が経過したタイミングt29で定着モータM4を停止させる(ステップS9)。
【0105】
これにより、印刷処理部Pr1は、画像形成ユニット20Bkが下位置に置かれ、画像形成ユニット20C、20M、20Yが上位置に置かれた状態で印刷処理を行い(ステップS10)、モノクロの画像を形成する。
【0106】
一方、経過時間τ28が制限時間τth4になっても位置センサs1がオンにならなかった場合、位置センサs1の故障等が考えられるので、ユニット昇降処理部Pr2は、エラーを発生させる(ステップS26)。なお、ユニット昇降処理部Pr2は、位置センサs1が故障した場合のほかに、定着モータM4がステッピングモータである場合における負荷によって定着モータM4が脱調したり、クラッチCLに滑りが生じたり、ギヤ列Gt、スライダ56等が破損したり、スライダ56の移動軌跡上に異物が侵入したり、製造上の組立てミスが生じたりしている場合等にエラーを発生させることができる。
【0107】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 プリンタ10がホストコンピュータPCから印刷データを受信する。
ステップS2 印刷処理部Pr1は印刷データにおいて選択されている画像形成モードを判定する。
ステップS3 印刷処理部Pr1はカラーモードが選択されているかどうかを判断する。カラーモードが選択されている場合はステップS4に進み、カラーモードが選択されていない場合はステップS5に進む。
ステップS4 印刷処理部Pr1は画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが下位置に置かれた状態で印刷処理を行い、処理を終了する。
ステップS5 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を駆動する。
ステップS6 ユニット昇降処理部Pr2はクラッチCLを係合させる。
ステップS7 ユニット昇降処理部Pr2は経過時間τ2が制限時間τth1になる前に位置センサs1がオンになったかどうかを判断する。経過時間τ2が制限時間τth1になる前に位置センサs1がオンになった場合はステップS8に進み、経過時間τ2が制限時間τth1になる前に位置センサs1がオンにならなかった場合はステップS11に進む。
ステップS8 ユニット昇降処理部Pr2はクラッチCLの係合を解除する。
ステップS9 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を停止させる。
ステップS10 印刷処理部Pr1は画像形成ユニット20Bkが下位置に置かれ、画像形成ユニット20Bk、20C、20M、20Yが上位置に置かれた状態で印刷処理を行い、処理を終了する。
ステップS11 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を駆動した状態でクラッチCLの係合を解除する。
ステップS12 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を停止させる。
ステップS13 ユニット昇降処理部Pr2はクラッチCLを再び係合させる。
ステップS14 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を再び駆動する。
ステップS15 ユニット昇降処理部Pr2は経過時間τ14が制限時間τth2になる前に位置センサs1がオンになったかどうかを判断する。経過時間τ14が制限時間τth2になる前に位置センサs1がオンになった場合はステップS8に進み、経過時間τ14が制限時間τth2になる前に位置センサs1がオンにならなかった場合はステップS16に進む。
ステップS16 ユニット昇降処理部Pr2はクラッチCLの係合を解除する。
ステップS17 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を停止させる。
ステップS18 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を駆動する。
ステップS19 ユニット昇降処理部Pr2はクラッチCLを係合させる。
ステップS20 ユニット昇降処理部Pr2は経過時間τ22が制限時間τth3になる前に位置センサs1がオンになったかどうかを判断する。経過時間τ22が制限時間τth3になる前に位置センサs1がオンになった場合はステップS8に進み、経過時間τ22が制限時間τth3になる前に位置センサs1がオンにならなかった場合はステップS21に進む。
ステップS21 ユニット昇降処理部Pr2はクラッチCLの係合を解除する。
ステップS22 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を停止させる。
ステップS23 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を再び駆動する。
ステップS24 ユニット昇降処理部Pr2は定着モータM4を再び駆動する。
ステップS25 ユニット昇降処理部Pr2は経過時間τ28が制限時間τth4になる前に位置センサs1がオンになったかどうかを判断する。経過時間τ28が制限時間τth4になる前に位置センサs1がオンになった場合はステップS8に進み、経過時間τ28が制限時間τth4になる前に位置センサs1がオンにならなかった場合はステップS26に進む。
ステップS26 ユニット昇降処理部Pr2は、エラーを発生させ、処理を終了する。
【0108】
このように、本実施の形態においては、クラッチCLが、通常、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させられ、昇降機構Kに十分な駆動力が伝達されない場合、位置センサs1のセンサ出力に応じて、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させられるので、クラッチCLの製造誤差等によるわずかな係合力の不足を静摩擦トルクで補うことができ、定着モータM4によって発生させられた駆動力を昇降機構Kに十分に伝達することができる。
【0109】
したがって、クラッチCLを小型化することができる。その結果、プリンタ10を小型化することができ、コストを低くすることができる。
【0110】
また、通常、クラッチCLを静摩擦トルクが伝達されるように係合させると、係脱に伴い、停止させられた状態のクラッチ板に繰り返し外力が加わるので、クラッチCLが偏摩耗するが、本実施の形態においては、クラッチCLが、動摩擦トルクが伝達されるように係合させられるので、クラッチCLが偏摩耗することがなく、クラッチCLを安定させて係脱することができる。
【0111】
さらに、定着モータM4及びクラッチCLが第2の動作パターンで動作させられたときの制限時間τth2が、第1の動作パターンで動作させられたときの制限時間τth1より長くされるので、クラッチCLの製造誤差等による係合力の不足を静摩擦トルクで十分に補うことができる。
【0112】
また、一般に、クラッチは、クラッチ板の摺擦によって係合力を大きくすることができるので、静摩擦トルクが伝達されるように係合させるだけなく、動摩擦トルクが伝達されるように係合させ、静摩擦トルクと動摩擦トルクとが交互に伝達されるようにすると、クラッチCLの係合力を大きくすることができる。
【0113】
すなわち、本実施の形態においては、クラッチCLを、第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させたときに、昇降機構Kに十分な駆動力が伝達されない場合に、再び第2の動作パターンで静摩擦トルクが伝達されるように係合させるのではなく、第1の動作パターンで動摩擦トルクが伝達されるように係合させるようになっているので、クラッチCLのクラッチ板を十分に摺擦することができ、係合力を大きくすることができる。
【0114】
さらに、前記定着モータM4及びクラッチCLが同じ動作パターンで動作させられたときの制限時間τth2、τth4が、先に同じ動作パターンで動作させられたときの制限時間τth1、τth3より長くされるので、クラッチCLのクラッチ板の摺擦時間を長くすることができ、クラッチCLの係合力を大きくすることができる。
【0115】
そして、本実施の形態においては、定着モータM4及びクラッチCLを2回第2の動作パターンで動作させたときに、経過時間τ28が制限時間τth4になっても、位置センサs1がオンにならなかった場合にエラーが発生させられるようになっているが、定着モータM4及びクラッチCLを3回以上第2の動作パターンで動作させたときにエラーを発生させるようにすることもできる。
【0116】
本実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0117】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0118】
10 プリンタ
20C、20M、20Y 画像形成ユニット
Bd 装置本体
CL クラッチ
K 昇降機構
M4 定着モータ
Pr2 ユニット昇降処理部
s1 位置センサ