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特開2023-119350一体成形ブロック、燃焼室ユニット、ブロック保持装置、及び燃焼室設置方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119350
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】一体成形ブロック、燃焼室ユニット、ブロック保持装置、及び燃焼室設置方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/00 20060101AFI20230821BHJP
   F27D 1/04 20060101ALI20230821BHJP
   F27D 1/16 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C10B29/00
F27D1/04 Z
F27D1/16 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022204
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】599090615
【氏名又は名称】株式会社メガテック
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 康平
(72)【発明者】
【氏名】長尾 光剛
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】李 崇基
(72)【発明者】
【氏名】亀村 崇也
(72)【発明者】
【氏名】福島 康雅
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA08
4K051AB01
4K051AB03
4K051AB05
4K051EA03
4K051LF04
(57)【要約】
【課題】本発明は、コークス炉を早く安全に低コストで再構築できる一体成形ブロック、燃焼室ユニット、ブロック保持装置、及び燃焼室設置方法を提供することを課題とする。また、本発明は、コークス炉を新規に構築する際に、コークス炉を安全に早く低コストで構築することも課題とする。
【解決手段】コークス炉の燃焼室に用いる一体成形ブロックであって、内部に燃焼空間を備え、第1側面に第1溝を有すると共に、第2側面に第2溝を有し、前記第1溝と前記第2溝に持上部材を差し込むことにより持ち上げることが可能であることを特徴とする一体成形ブロックを用いる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の燃焼室に用いる一体成形ブロックであって、
内部に燃焼空間を備え、
第1側面に第1溝を有すると共に、第2側面に第2溝を有し、
前記第1溝と前記第2溝に持上部材を差し込むことにより持ち上げることが可能である
ことを特徴とする一体成形ブロック。
【請求項2】
前記第1溝の内側は、前記第1側面から一定の距離にあり、前記第2溝の内側は、前記第2側面から一定の距離にある
ことを特徴とする請求項1に記載された一体成形ブロック。
【請求項3】
前記第1側面と前記第2側面は、非平行であり、
前記第1溝の内側と前記第2溝の内側が平行である
ことを特徴とする請求項1に記載された一体成形ブロック。
【請求項4】
少なくとも、前記第1溝と前記第2溝のいずれか一方には、前記燃焼空間と接続した穴開き部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載された一体成形ブロック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載された前記一体成形ブロックを含んだブロックを組み合わせて形成した燃焼室ユニット。
【請求項6】
水平方向に延在する第1持上部材及び第2持上部材と、
を備え、
コークス炉における燃焼室を形成する一体成形ブロックの溝に、前記第1持上部材と前記第2持上部材を差し込んで前記一体成形ブロックを持ち上げ可能である
ことを特徴とするブロック保持装置。
【請求項7】
前記第1持上部材と前記第2持上部材は互いに平行である
ことを特徴とする請求項6に記載されたブロック保持装置。
【請求項8】
前記第1持上部材と前記第2持上部材は、互いの位置関係が固定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載されたブロック保持装置。
【請求項9】
前記第1持上部材と前記第2持上部材は、互いに接近した接近位置と、互いに離間した離間位置の間を移動可能である特徴とする請求項6又は7に記載されたブロック保持装置。
【請求項10】
一体成形ブロックの第1側面に水平に設けた第1溝と、前記一体成形ブロックの第2側面に水平に設けた第2溝に、ブロック保持装置の第1持上部材と第2持上部材を差し込む装置セット工程、及び前記一体成形ブロックをセットした前記ブロック保持装置をコークス炉の内部へ移動する移動工程と、
前記一体成形ブロックをコークス炉の内部に載置するブロック載置工程と、
前記第1溝及び前記第2溝を埋める溝平坦化工程と、
を備えたことを特徴とするコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項11】
前記装置セット工程は、
前記第1持上部材と前記第2持上部材を前記第1溝と前記第2溝の延在方向に沿ってスライドさせることにより、前記第1持上部材と前記第2持上部材を前記第1溝と前記第2溝に差し込むことを特徴とする請求項10に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項12】
前記装置セット工程は、
前記第1持上部材と前記第2持上部材を接近させることにより、前記第1持上部材を前記第1溝に差し込み、前記第2持上部材を前記第2溝に差し込むことを特徴とする請求項10に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項13】
前記一体成形ブロックを含んだユニットを形成するユニット形成工程をさらに有し、
前記装置セット工程では、前記ユニットにおける前記一体成形ブロックの前記第1溝と前記第2溝に前記第1持上部材と前記第2持上部材を差し込み、
前記移動工程では、前記ユニットをセットした前記ブロック保持装置をコークス炉の内部へ移動し、
前記ブロック載置工程では、前記ユニットを順次に前記コークス炉の内部に載置することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項14】
前記装置セット工程では、ユニットを形成していない前記一体成形ブロックの前記第1溝と前記第2溝に前記第1持上部材と前記第2持上部材を差し込み、
前記移動工程では、前記ブロック保持装置の1回の移動でユニットを形成していない前記一体成形ブロックを移動し、
前記ブロック載置工程では、ユニットを形成していない前記一体成形ブロックを順次に前記コークス炉の内部に載置することを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項15】
前記ブロック載置工程において、前記コークス炉の炉底の上に設けた設置ベースの上に前記一体成形ブロックを載置することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項16】
前記一体成形ブロックをリフトの上昇台の上に載置する台載置工程をさらに備え、
前記移動工程は、
前記一体成形ブロックが載置された前記上昇台を上昇させることにより前記一体成形ブロックを持ち上げるリフト工程と、
前記リフトの上部に設けた第1横行レールから前記コークス炉の上部に設けた第2横行レールに走行車を移動させて、前記ブロック保持装置を前記コークス炉へ移動させる水平移動工程と、
を有し、
前記装置セット工程では、前記リフト工程と前記水平移動工程の間において、前記第1横行レールに位置する前記走行車に吊り下げられた前記ブロック保持装置の前記第1持上部材と前記第2持上部材を、前記一体成形ブロックの前記第1溝と前記第2溝に差し込むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【請求項17】
前記装置セット工程は、リフトの上部に設けた第1横行レールに位置する走行車に吊り下げられた前記ブロック保持装置の前記第1持上部材と前記第2持上部材を、前記一体成形ブロックの前記第1溝と前記第2溝に差し込み、
前記移動工程は、
前記ブロック保持装置を前記第1横行レールに位置する走行車の方向へ引き上げるリフト工程と、
前記リフトの上部に設けた前記第1横行レールから前記コークス炉の上部に設けた第2横行レールに前記走行車を移動させて、前記ブロック保持装置を前記コークス炉へ移動させる水平移動工程と、を有することを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載されたコークス炉の燃焼室設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の燃焼室に用いる一体成形ブロック、一体成形ブロックを含んだブロックを組み合わせて形成した燃焼室ユニット、一体成形ブロックを持ち上げ可能であるブロック保持装置、及びコークス炉の燃焼室設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、コークス炉1では、蓄熱室11の上方に設けられた炉底18に耐熱煉瓦12を積み上げて複数の炉壁13を構築し、複数の炉壁13により複数の燃焼室14と複数の炭化室15を形成している。図1は、図示しない押出機の側からコークス炉1の一部を見た図であり、両矢印は炉団方向SDを示す。図1において、燃焼室14は炉壁13の中に形成され、炭化室15は2つの炉壁13の間に形成される。
【0003】
コークス炉1は高熱の苛酷な状況で使用され、使用し続けることにより経年劣化が生じる。経年劣化により炉壁13に穴が開いた場合には、特許文献1に記載されているように、炉壁表面131に溶射層を形成して補修を行うことができる。一方、経年劣化によって炉壁の耐熱煉瓦12に位置ずれがおき、図2のように炭化室15の側に張り出しPが生じることがある。図3は、張り出しPが生じたコークス炉1の水平断面を示す概念図であり、炭化室15を構成する2つの炉壁13を示す。両矢印は炉長方向FDと炉団方向SDを示す。図3では、一つの炉壁13の耐熱煉瓦12に位置ずれがおきて、炭化室15の側に張り出しPが生じている。このような劣化が生じると、炭化室15で乾留されたコークスを図3の矢印の方向へ押し出す際に張り出しPが障害となり、コークスを押し出すことが難しくなる。
【0004】
コークス炉1において、経年劣化により耐熱煉瓦12の張り出しP等が生じた場合には、特許文献1のような溶射層の形成では対応が難しく、耐熱煉瓦12を積み直して補修する必要がある。その場合には、図4に示すように、複数ある炉壁13のうち、劣化して位置ずれ等が生じた炉壁13を解体する。そして、新たに手作業で炉底18の上に耐熱煉瓦12を積み上げて、図1に示すような張り出しPがない新たな炉壁13を構築する。しかし、炉壁13を再構築する時であっても、コークス炉1内の他の燃焼室14と炭化室15は運用中であり、高温となっている。そして、炉壁13を再構築する際には、高温の炉壁13の間に位置する炭化室15の狭い空間で、耐熱煉瓦12を手作業で積み上げる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-130783号公報
【0006】
【特許文献2】国際公開第2012/078036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示す炉底18の上での作業を軽減するためには、特許文献2のように、燃焼室を形成する炉壁をコークス炉1の外部で作成しておき、炉壁をコークス炉1の内部に運んで設置することが考えられる。しかしながら、燃焼室を形成する炉壁は巨大であり、特許文献2のように炉壁を移動するためには、大型の吊り上げ機を用いなければならない。しかも、図5に示すように、特許文献2における炉壁9の下部には切欠き91があるため、設置面92が幅狭になっている。そのため、炉壁9はコークス炉1内に設置する際に安定性が低いという問題がある。さらに、特許文献2の炉壁9をコークス炉1の内部に設置する際には、位置合わせ等のために、狭い炭化室15の中で大重量の炉壁9の下部にある設置面92の近傍に作業者を配置しなければならない。
【0008】
本発明は、コークス炉を早く安全に低コストで再構築できる一体成形ブロック、燃焼室ユニット、ブロック保持装置、及び燃焼室設置方法を提供することを課題とする。コークス炉1の外部で作成しておき、炉壁をコークス炉1の内部に運んで設置する炉壁9の安定性や作業者の安全性等については、コークス炉を新規に構築する場合も同様である。本発明は、コークス炉を新規に構築する際に、コークス炉を安全に早く低コストで構築することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコークス炉の燃焼室に用いる一体成形ブロックは、内部に燃焼空間を備え、第1側面に第1溝を有すると共に、第2側面に第2溝を有し、前記第1溝と前記第2溝に持上部材を差し込むことにより持ち上げることが可能である。また、本発明の燃焼室ユニットは、上記の一体成形ブロックを含んだブロックを組み合わせて形成する。さらに、本発明のブロック保持装置は、水平方向に延在する第1持上部材及び第2持上部材と、を備え、コークス炉における燃焼室を形成する一体成形ブロックの溝に、前記第1持上部材と前記第2持上部材を差し込んで前記一体成形ブロックを持ち上げ可能である。また、本発明のコークス炉の燃焼室設置方法は、一体成形ブロックの第1側面に水平に設けた第1溝と、前記一体成形ブロックの第2側面に水平に設けた第2溝に、ブロック保持装置の第1持上部材と第2持上部材を差し込む装置セット工程、及び前記一体成形ブロックをセットした前記ブロック保持装置をコークス炉の内部へ移動する移動工程と、前記一体成形ブロックをコークス炉の内部に載置するブロック載置工程と、前記第1溝及び前記第2溝を埋める溝平坦化工程と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、コークス炉を安全に早く低コストで再構築または新規に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】押出機の側から見たコークス炉の部分図。
図2】押出機の側から見た張り出しが生じたコークス炉の部分図。
図3】張り出しが生じたコークス炉の水平断面部分図。
図4】押出機の側から見た炉壁を1つ解体したコークス炉の部分図。
図5】従来の燃焼室ユニットの下部。
図6】本発明の実施形態における燃焼室ユニットの斜視図。
図7図6における太矢印の方向から見た燃焼室ユニット。
図8】本発明の実施形態におけるブロック保持装置の斜視図。
図9図8における太矢印の方向から見たブロック保持装置。
図10】本発明の実施形態におけるブロック保持装置にセットされた燃焼室ユニットの斜視図。
図11図10における太矢印の方向から見たブロック保持装置にセットされた燃焼室ユニット。
図12】本発明の実施形態における一体成形ブロックを上方から見た模式図。
図13】本発明の他の実施形態における一体成形ブロックを上方から見た模式図。
図14】一体成形ブロックを炉長方向に並べて結合した燃焼室ユニットの実施形態における炉団方向側面図。
図15】ブロックを上下方向に積層して結合した燃焼室ユニットの実施形態における炉団方向側面図。
図16】ブロック保持装置により保持する単一の一体成形ブロックの炉団方向側面図。
図17】ブロック保持装置により保持する単一の一体成形ブロックの炉長方向側面図。
図18】実施例1における燃焼室設置方法のフロー図。
図19】炉底に設置ベースを作成したコークス炉の炉長方向側面図。
図20】実施例1におけるコークス炉と搬入台車の炉団方向側面図。
図21】実施例1における装置セット工程後のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図22】実施例1における装置セット工程後の搬入台車の炉長方向側面図。
図23】実施例1におけるリフト工程後のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図24】実施例1における移動工程後のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図25】実施例1における複数の燃焼室ユニットをコークス炉内に設置したときのコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図26】実施例2における装置セット工程の前のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図27】実施例2における装置セット工程の後のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図28】実施例2における複数の燃焼室ユニットをコークス炉内に設置したときのコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図29】実施例3における燃焼室設置方法のフロー図。
図30】実施例3におけるリフト工程のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図31】実施例3におけるリフト工程の搬入台車の炉長方向からみた断面図。
図32】実施例3における装置セット工程のコークス炉及び搬入台車の炉団方向側面図。
図33】実施例4におけるコークス炉及びクレーンの炉団方向側面図。
図34】実施例4におけるブロック保持装置。
図35】実施例5における装置セット工程の後のコークス炉及びクレーンの炉団方向側面図。
図36】実施例5におけるリフト工程後のコークス炉及びクレーンの炉団方向側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願では、水平方向に関し、コークス炉でコークスを押し出す方向を炉長方向FD、炉長方向FDに直交する水平方向を炉団方向SDと記載する。一体成形ブロックや燃焼室ユニットについては、コークス炉に設置した際の方向により炉長方向FD、炉団方向SDと記載する。垂直方向は上下方向と記載する。図面では、FDと付した両矢印により炉長方向FDを、SDと付した両矢印により炉団方向SDを示す。
【0013】
本実施形態の一体成形ブロックは、耐熱材として溶融シリカ(純度99質量%以上)を96~99質量%、バインダー(リン酸塩および/または酸化カルシウム)を2.5~3.5質量%含有し、残部が不可避的に混入する不純物(以下、不可避的不純物という)からなる混合物を型枠に流し込んで、自然乾燥、強制乾燥を経て、昇温速度10~25℃/時で900~1100℃の温度範囲まで昇温し、さらに24時間以上保持した後、室温まで自然冷却することによって、一体的に成形したものである。
【0014】
図6に、本実施形態の一体成形ブロック2を用いた燃焼室ユニット31の斜視図を示す。燃焼室ユニット31は、最下部に一体成形ブロック2が2つ用いられ、その上に成形ブロック311が設けられている。図7は、燃焼室ユニット31を炉長方向FDから見た図であり、図6の太矢印の方向から見た図である。図7では、横方向が炉団方向SDとなる。燃焼室ユニット31における最下部の一体成形ブロック2は、第1側面21に第1溝211を有すると共に、第2側面22に第2溝221を有する。第1溝211と第2溝221は、略炉長方向FDに延在しており、上下方向で同じ高さに設けられている。第1溝211は、第1側面21を切欠いた溝状の構成であり、上方の第1上側面215と下方の第1下側面216に分けるように設けられている。また、第2溝221は、第2側面22を切欠いた溝状の構成であり、上方の第2上側面225と下方の第2下側面226に分けるように設けられている。第1下側面216と第2下側面226の間隔は第1上側面215と第2上側面225の間隔と同じである。第1下側面216と第2下側面226があることにより、図7に示すように設置面25は炉団方向SDに広く形成される。
【0015】
図6、7に示す本実施形態の燃焼室ユニット31は、一体成形ブロック2と、炉団方向SDの側面に第1溝211や第2溝221のような溝がない成形ブロック311と、耐熱性モルタルにより形成される。そして、ユニット形成工程において、炉長方向FDに長さの異なる2つの一体成形ブロック2を並べ、その上に、複数の成形ブロック311を積み上げている。燃焼室ユニット31は、一体成形ブロック2と成形ブロック311、一体成形ブロック2同士、成形ブロック311同士の間に耐熱性モルタルを挟み、互いに隙間なく固定されている。図6、7に示すように、成形ブロック311には形状の異なる複数の種類があるが、本願では持ち上げるための溝がないブロックとしてまとめて成形ブロックと記載する。また、一体成形ブロックと持ち上げるための溝のない成形ブロックをまとめて、ブロックと記載する。成形ブロックも、上記した一体成形ブロックと同様の製造方法により製造される。一体成形ブロックと溝のない成形ブロックは共に、一体成形されたブロックである。
【0016】
一体成形ブロック2には、内部に燃焼空間23が設けられている。燃焼空間23は、成形ブロック311の内部に設けられた燃焼空間(図示せず)と共に、燃焼室ユニット31の燃焼空間312を形成する。そして、炉壁13を形成した際に、燃焼室ユニット31の燃焼空間312が燃焼室14を形成する。図6に示す一体成形ブロック2の第1溝211と第2溝221には、燃焼空間23及び燃焼空間312と外部が接続した穴開き部231が形成されている。図6、7に示す燃焼室ユニット31は、コークス炉1の最上部に設置されるものであり、燃焼室ユニット31の上部には炉長方向FDに導通する煙道24を有している。コークス炉1の中部や下部には、煙道24がない燃焼室ユニット31を用いる。
【0017】
一体成形ブロック2と成形ブロック311、一体成形ブロック2同士、成形ブロック311同士を固定するために挟んだ耐熱性モルタルは、ユニット形成工程の際に燃焼室ユニット31の外方と内方に膨出する。外方に膨出した耐熱性モルタルは、凸部を形成しないように外方から均されて成型される。一方、内方に膨出した耐熱性モルタルは、燃焼空間23の中を燃焼室14の最下部まで落下する。コークス炉1の最下部に設置する燃焼室ユニット31では、燃焼空間23の中を落下した耐熱性モルタルが、穴開き部231から作業者により掻き出される。
【0018】
このように、穴開き部231は、炉壁13の内部における不要な耐熱性モルタルを掻き出すために用いられる。そのため、燃焼室ユニット31を複数段積み上げる場合は、最下部に位置する燃焼室ユニット31に穴開き部231が設けられれば、その上の燃焼室ユニット31には、第1溝211や第2溝221に穴開き部231が設けられなくてもよい。また、穴開き部231は、第1溝211と第2溝221のいずれか一方に設けられればよい。以上のように、耐熱性モルタルを掻き出す必要のない第1溝211や第2溝221には、穴開き部231を備えていてもよいが、備えていなくてもよい。
【0019】
燃焼室ユニット31は第1溝211と第2溝221を有するが、燃焼室ユニット31により炉壁13をコークス炉1に設置する最終段階では、溝平坦化工程により炉壁表面131を略平坦にする。溝平坦化工程では、第1溝211と第2溝221に耐熱煉瓦(図示せず)が埋め込まれ、耐熱性モルタルにより固定される。これにより、穴開き部231が塞がれると共に、炭化室15に面する炉壁13の側面である炉壁表面131は、略平坦に形成される。
【0020】
図6、7に示した燃焼室ユニット31は、ブロック保持装置により持ち上げられてコークス炉1の内部に設置される。図8は、燃焼室ユニット31を持ち上げるためのブロック保持装置41の斜視図である。また、図9は、ブロック保持装置41を炉長方向FDから見た図であり、図8の太矢印の方向から見た図である。ブロック保持装置41は、フレーム413が、上下方向に延在する複数の棒状体と炉長方向FDに延在する複数の棒状体により、炉長方向FDと下方に開いた箱状に形成されている。そして、フレーム413の下部内側に、第1持上部材411と第2持上部材412が突出している。
【0021】
本実施形態のブロック保持装置41における第1持上部材411と第2持上部材412は、炉長方向FDに長く延在する直方体の形状を有する。第1持上部材411の上下幅は、図7に示す一体成形ブロック2における第1溝211の上面である第1溝上面212と、下面である第1溝下面213の間隔より小さい。また、第2持上部材412の上下幅は第1持上部材411と同じであり、同様に第2溝221の上面である第2溝上面222と下面である第2溝下面223の間隔より小さい。そして、第1持上部材411と第2持上部材412の炉団方向SDの間隔は、図7に示す一体成形ブロック2における第1側面21と第2側面22の間隔よりも狭く、第1溝内面214と、第2溝内面224との間隔より広い。これにより、第1持上部材411と第2持上部材412は、それぞれ第1溝211と第2溝221に入り込むことができる。ブロック保持装置41では、第1持上部材411と第2持上部材412は、フレーム413により互いの位置関係が離れないように固定されている。
【0022】
燃焼室ユニット31を持ち上げる際には、ブロック保持装置41を燃焼室ユニット31にセットする。まず、図6、7に示すブロック保持装置41を、図8、9に示す燃焼室ユニット31の炉長方向FDの側に配置する。そして、装置セット工程において、ブロック保持装置41を炉長方向FDに水平移動させて、第1持上部材411と第2持上部材412を第1溝211と第2溝221の延在方向に沿ってスライドさせる。これにより、第1持上部材411と第2持上部材412を第1溝211と第2溝221に差し込んでセットが行われる。燃焼室ユニット31にブロック保持装置41をセットした状態の斜視図を図10に、炉長方向FDである図10の太矢印の方向から見た図を図11に示す。図10、11に示すように、装置セット工程の後では、第1持上部材411と第2持上部材412がそれぞれ第1溝211と第2溝221に入り込んでおり、ブロック保持装置41に燃焼室ユニット31がセットされた状態となる。
【0023】
移動工程におけるリフト工程等では、ブロック保持装置41を持ち上げることにより、図11の位置関係で第1持上部材411の上面が第1溝上面212を押し上げ、第2持上部材412の上面が第2溝上面222を押し上げて、燃焼室ユニット31が持ち上げられる。そして、移動工程の後のブロック載置工程で、燃焼室ユニット31はコークス炉1の内部における所定の位置に下ろされ、ブロック保持装置41を水平移動して第1持上部材411と第2持上部材412抜くことによりセットを解除する。ブロック保持装置41は、燃焼室ユニット31の最下部に位置する一体成形ブロック2を持ち上げるため、燃焼室ユニット31は耐熱性モルタルの部分で分解することなく、持ち上げられて移動することができる。
【0024】
燃焼室ユニット31では、図5に示した従来における炉壁9の設置面92と異なり、図11に示すように、第1下側面216と第2下側面226の存在により、設置面25が炉団方向SDに広く形成されている。最下部に設けた一体成形ブロック2の設置面25が幅広に形成されているため、燃焼室ユニット31は安定して設置される。また、複数の燃焼室ユニット31を移動して載置することにより炉壁13が設置されるため、ブロック保持装置41や持ち上げるためのクレーン等を、炉壁13を一度に移動する場合と比べて小さいものとすることができる。燃焼室ユニット31は特許文献2の炉壁9と比べて軽くて小さく、載置する際の位置合わせも安全で容易に行うことができる。
【0025】
ところで、図1に示すコークス炉1の炭化室15は、コークスを押し出すためにコークスサイド側であるコークス出口側Eが拡がるように形成されている。炭化室15の両壁は炉壁13により形成されているため、炉壁13は逆にコークスサイド側で狭くなるようにテーパー状に形成される。そして、炉壁13を構成する図6、7に示した燃焼室ユニット31も、コークスサイド側に対応する向きが幅狭のテーパー状に形成される。燃焼室ユニット31の構成要素である一体成形ブロック2も同様である。
【0026】
図12は、本実施形態の一体成形ブロック2を上方から見た模式図である。燃焼空間23は記載を省略している。点線は、一体成形ブロック2における第1溝内面214と第2溝内面224の位置を示す。図12では、第1側面21から第1溝内面214までの溝深さaは、炉長方向FDの全体にわたって同じである。このことは、第2側面22から第2溝内面224までの溝深さaについても同様である。一体成形ブロック2の第1溝211の内側である第1溝内面214は第1側面21から一定の距離にあり、第2溝221の内側である第2溝内面224は第2側面22から一定の距離にある。一方、第1溝内面214から第2溝内面224までの幅は、図12の溝部厚b1、b2のように、コークス出口側Eとその反対側で異なっている。
【0027】
このことは、一体成形ブロック2を用いる図6、7に示した燃焼室ユニット31についても同様である。本実施形態の燃焼室ユニット31では、接続した時に第1側面21と第2側面22が平面となり、第1溝内面214と第2溝内面224が直線的になる2つの一体成形ブロック2を使用する。
【0028】
図12に示した一体成形ブロック2では、溝深さaを一定としたことにより、第1溝211を形成する際には第1側面21を基準とすることができ、第2溝221を形成する際には第2側面22を基準とすることができる。そのため、一体成形ブロック2の製造が容易である。
【0029】
ところで、図8、9に示したブロック保持装置41の第1持上部材411と第2持上部材412は、炉長方向FDの全体にわたって炉団方向SDに同じ間隔となるように設けられる。したがって、図12のコークス出口側Eでは、その反対側よりも第1溝上面212が第1持上部材411に持ち上げられる幅は狭くなる。第2溝上面222と第2持上部材412についても同様である。しかし、一体成形ブロック2とブロック保持装置41は、持ち上げの際に作用する力に構造的に耐えうるように、一体成形ブロック2の溝深さaやブロック保持装置41の第1持上部材411と第2持上部材412等が設計される。そのため、燃焼室ユニット31をブロック保持装置41にセットして、安全に移動させることができる。
【0030】
図13は、他の実施形態に係る一体成形ブロック5を上方から見た模式図である。図12と同様に燃焼空間は記載を省略している。点線は、一体成形ブロック5における第1溝内面514と第2溝内面524の位置を示す。一体成形ブロック5は、第1側面51と第2側面52が非平行であり、第1溝511の内側である第1溝内面514と第2溝521の内側である第2溝内面524が平行である。図13に示すように、溝部厚bは、炉長方向FDの全体にわたって同じである。一方、第1側面51から第1溝内面514までの深さ、第2側面52から第2溝内面524までの深さは、図13に示す溝深さa1、a2のようにコークス出口側Eとその反対側で幅が異なっている。
【0031】
このことは、図6、7に示した燃焼室ユニット31の一体成形ブロック2を、図13の一体成形ブロック5とした燃焼室ユニット32(図示せず)についても同様である。一体成形ブロック5を複数並べて用いる燃焼室ユニット32は、溝部厚bが同じであると共に、接続した時に第1側面51と第2側面52が平面となる複数の一体成形ブロック5を使用する。
【0032】
このような一体成形ブロック5や燃焼室ユニット32を用いると、ブロック保持装置41における第1持上部材411の内側と第1溝内面514との間を一定の狭い間隔とすることができる。これは、第2持上部材412の内側と第2溝内面524の間についても同様である。そのため、第1持上部材411と第2持上部材412は、第1溝511及び第2溝521の中で炉団方向SDにずれることなく、安定した一体成形ブロック5及び燃焼室ユニット32の保持を行うことができる。
【0033】
燃焼室ユニット32と、図6、7、10に示す燃焼室ユニット31は、炉長方向FDと上下方向に一体成形ブロック5、2とブロックを耐熱性モルタルで結合したものである。しかしながら、図14のように、一体成形ブロック2、5を炉長方向FDのみに耐熱性モルタルで結合して燃焼室ユニット33を形成してもよい。また、図15のように、一体成形ブロック2、5の上に、持ち上げるための溝がない成形ブロック341を重ねて、上下方向のみに耐熱性モルタルで結合して燃焼室ユニット34を形成してもよい。さらに、一体成形ブロック2または一体成形ブロック5を他のブロック等と組み合わせることなく、単独でブロック保持装置41により持ち上げられるようにしてもよい。この場合、図16、17のように、燃焼室ユニット31と同程度に大きく成形した一体成形ブロック2、5を用いてもよい。
【0034】
次に、一体成形ブロック2を用いた燃焼室ユニットにより炉壁を形成し、図1のようなコークス炉1の燃焼室14を設置する燃焼室設置方法に関して、いくつかの実施例を記載する。
【実施例0035】
実施例1は、経年劣化したコークス炉1を再構築する例である。実施例1では、図20~25に示す上下方向に大きな燃焼室ユニット35を用いる。図18に実施例1の燃焼室設置方法のフロー図を示す。まず、図2の状態のコークス炉1から経年劣化した古い炉壁13とその上の天井部17を解体して図4の状態とする(ステップS1)。そして、図19に示すように炉底18に設置ベース19を作成し、第2横行レール16を、コークス炉1の天井部17があった位置に炉長方向FDに延在させて設置する(ステップS2)。図4に示した炉壁13を解体したコークス炉1では、新たな炉壁13を設置する前に炉底18の凹凸を平坦化する必要がある。そのため、図19に示すように、炉底18に耐熱煉瓦を並べて耐熱性モルタルにより接着し、設置ベース19を作成する。また、第2横行レール16の設置位置は、燃焼室14を内部に有する炉壁13を新たに設置する構築位置の上部である。
【0036】
実施例1では、ユニット形成工程において、後述する図20~25の搬入台車6における可動ベース67の上に一体成形ブロック2を並べて設置し、その上に溝のない成形ブロック351(図示せず)を積み上げて耐熱性モルタルで固定して、組み上げて燃焼室ユニット35を形成する(ステップS3)。搬入台車6は、押出機(図示せず)が移動するレールMRの上を移動することができる。炉壁13の再構築を行う場合は、コークス炉1は稼働中である。そのため、押出機によるコークスの押し出し作業に影響しないように、ユニット形成工程では、搬入台車6をコークス炉1の側方のレールMR上に位置させ、燃焼室ユニット35の形成が行われる。この時、台車フレーム61の中で、炉団方向SDに並べて2つの可動ベース67の上に1つずつ燃焼室ユニット35が形成される。
【0037】
ユニット形成工程が終了すると、レールMRの上で搬入台車6を移動させ、搬入台車6を炉壁13の構築位置に移動する(ステップS4)。図20には、炉壁13の構築位置に対応した位置に移動した搬入台車6を記載している。図20の状態では、2つの燃焼室ユニット35が搬入台車6に搭載されているが、図面を見やすくするため1つ目の燃焼室ユニット35のみ記載し2つ目の燃焼室ユニット35の記載を省略する。後述の図21、23、24も同様に他方の燃焼室ユニット35の記載を省略する。図20に示す構築位置では、炉壁13と天井部17が解体されて取り去られ、第2横行レール16が設置されている。搬入台車6は、台車フレーム61の下に車輪62が設けられており、押出機(図示せず)のレールMRの上を、炉長方向FDに直交する炉団方向SDに移動することができる。そして、ステップS4で燃焼室ユニット35を形成した位置から、炉壁13の構築位置まで移動させている。また、台車フレーム61の上部には、炉長方向FDに延在して第1横行レール63が設けられている。第1横行レール63には走行車64が炉長方向FDへ移動可能に設けられており、複数の走行車64はワイヤ65でブロック保持装置42に接続している。
【0038】
搬入台車6を炉壁13の構築位置に移動した後、図21の上部に示すように、搬入台車6の上部に設置した第1横行レール63を、コークス炉1の上部に設置した第2横行レール16と、接続レール66により接続する(ステップS5)。
【0039】
次の装置セット工程においては、ブロック保持装置42を燃焼室ユニット31の側方から、炉長方向FDに水平移動させる。水平移動は、ブロック保持装置42が吊り下げられている走行車64を移動することにより行われる。そして、ブロック保持装置42の第1持上部材421(図示せず)と第2持上部材422(図示せず)を燃焼室ユニット35の一体成形ブロック2における第1溝211と第2溝221の延在方向に沿ってスライドさせる。これにより、第1持上部材421と第2持上部材422を第1溝211と第2溝221に差し込んでセットする(ステップS6)。
【0040】
図21は、装置セット工程が終了した状態を示す。また、図22は、この時の搬入台車6と燃焼室ユニット35の炉長方向側面図を示す。図22では、ユニット形成工程で形成された2つの燃焼室ユニット35を台車フレーム61の中に記載している。1つ目の燃焼室ユニット35は、前述のユニット形成工程において、炉団方向SDで搬入台車6の中心で形成され、2つ目の燃焼室ユニット35はその側方で形成される。図22に示すように、ブロック保持装置42を吊す走行車64は、炉団方向SDの中心で2本の第1横行レール63から懸下されて走行する。各々の走行車64からは、2本のワイヤ65が吊り下げられ、ブロック保持装置42に繋がっている。ブロック保持装置42は、炉長方向FDにスライドすることにより燃焼室ユニット35にセット可能であり、ブロック保持装置41と同様のスライド型のブロック保持装置である。
【0041】
次の移動工程におけるリフト工程では、走行車64から下がるワイヤ65によりブロック保持装置42を吊り上げる(ステップS7)。図23は、リフト工程が終了した状態を示す。そして、移動工程における水平移動工程により、図24に示すように走行車64を第1横行レール63から第2横行レール16へ移動して、燃焼室ユニット35をコークス炉1の内部に運び込む(ステップS8)。次のブロック載置工程では、ワイヤ65を弛めてブロック保持装置42を下げ、燃焼室ユニット35を図19、24に示す設置ベース19の上に下ろす。この時、設置ベース19の接続面には耐熱性モルタルが塗られている。燃焼室ユニット35を載置すると耐熱性モルタルは外側に膨出するが、均しを行って炉壁13の表面を整える。そして、走行車64を搬入台車6の側へ移動することによって、ブロック保持装置42を炉長方向FDへ抜き去ることにより、燃焼室ユニット35を載置する(ステップS9)。
【0042】
図22に示した2つの燃焼室ユニット35の各々は、炉団方向SDに移動する可動ベース67に載置されている。図22の中央に示した1つ目の燃焼室ユニット35がコークス炉1の内部に設置されると、可動ベース67の移動により左側に示した2つ目の燃焼室ユニット35を炉団方向SDで搬入台車6の中心に移動する(ステップS10)。さらに、ステップS6の装置セット工程でブロック保持装置42にセットし、ステップS7~ステップS8により燃焼室ユニット35をコークス炉1の内部に設置する。
【0043】
以上に示したステップS3からステップS10の工程を繰り返すことにより、ブロック載置工程で燃焼室ユニット35を順次にコークス炉1の内部に載置して、図25に示すように複数の燃焼室ユニット35をコークス炉1内に設置する。燃焼室ユニット35の設置固定には耐熱性モルタルを利用する。また、燃焼室ユニット35の内側で燃焼空間352(図示せず)から落下した耐熱性モルタルは、作業者が穴開き部353から掻き出して取り去る(ステップS11)。その後、溝平坦化工程により、一体成形ブロック2の第1溝211と第2溝221を耐熱煉瓦と耐熱性モルタルにより埋めて平坦化すると共に、天井部17を設置する(ステップS12)。平坦化の際、第1溝211と第2溝221は設置面25よりも十分に高い位置にあるため、炭化室15という狭い作業空間においても効率よく溝平坦化工程の作業を行うことができる。
【0044】
また、実施例1では、ユニット形成工程において、コークス炉1の側方に位置した搬入台車6で2つの燃焼室ユニット35を形成する。そして、搬入台車6を炉壁13の構築位置に移動してから2つの燃焼室ユニット35をコークス炉1の内部に設置する。その後、搬入台車6を再びコークス炉1の側方に移動させて2つの燃焼室ユニット35を形成する。このように複数のユニットを形成してコークス炉1内に設置する作業を繰り返すことにより、炉壁13を構築する作業の効率化を図ることができる。
【実施例0045】
実施例2では、図26~28に示す炉長方向FDに長く、上下方向に短い燃焼室ユニット36とブロック保持装置43を用いる。燃焼室ユニット36は、一体成形ブロック2と、第1溝211や第2溝221のような溝がない成形ブロック361(図示せず)により形成されている。ブロック保持装置43は、ブロック保持装置41、42と同様のスライド型のブロック保持装置である。実施例2においても、ユニット形成工程において、台車フレーム61の中に一体成形ブロック2を並べて設置し、その上に溝のない成形ブロック361を積み上げて耐熱性モルタルで固定して、2つの燃焼室ユニット36を組み上げて形成する。2つの燃焼室ユニット36は炉団方向SDに並べて形成されるが、図26、27でも1つ目の燃焼室ユニット36のみを記載し、2つ目の燃焼室ユニット36の記載を省略する。
【0046】
図26は、装置セット工程の前における搬入台車6と燃焼室ユニット36を示す。実施例2のユニット形成工程でも、燃焼室ユニット36は台車フレーム61の中で可動ベース68の上に形成される。実施例2の装置セット工程では、実施例1と同様に、図26に示すように炉長方向FDの側方からブロック保持装置43をスライドさせる。そして、第1持上部材431(図示せず)、第2持上部材432(図示せず)を燃焼室ユニット36の溝に差し込んでセットする。装置セット工程が終了すると、図27のセット状態となる。そして、実施例1と同様にユニット形成工程、装置セット工程、移動工程のリフト工程と水平移動工程、ブロック載置工程を繰り返すことにより、燃焼室ユニット36をコークス炉1の内部に積み上げる。
【0047】
実施例2では、実施例1と異なり、図28のように上下方向に短く炉長方向FDに長い燃焼室ユニット36を、互い違いになるように積み上げて炉壁13を形成する。実施例2では、実施例1と同様に、可動ベース68を用いて、搬入台車6における燃焼室ユニット36の炉団方向SDへの移動を行う。また、実施例1と同様に、均しや耐熱性モルタルの穴開き部231からの掻き出し、第1溝211及び第2溝221を埋める溝平坦化工程を行う。燃焼室設置方法のフロー図は実施例1の図18と同様であるが、実施例2では、燃焼室ユニット36の上に他の燃焼室ユニット36を載置する。実施例2では、燃焼室ユニット36を、互い違いになるように積み上げて炉壁13を形成するため、燃焼室ユニット36同士を炉長方向FDに接続する位置が互い違いになり、炉壁13の強度を高めることができる。
【実施例0048】
実施例3では、後述する図30~32に示す、リフト76を備えた搬入台車7を使用する。図29に実施例3の燃焼室設置方法のフロー図を示す。実施例3では、実施例2と同じ燃焼室ユニット36を用いて説明する。まず、図2の状態のコークス炉1から経年劣化した古い炉壁13とその上の天井部17を解体して図4の状態とする(ステップS1)。そして、図19に示すように炉底18に設置ベース19を作成し、第2横行レール16をコークス炉1の天井部17であった位置に炉長方向FDに延在させて設置する(ステップS2)。設置ベース19は、新たな炉壁13を設置する前に炉底18の凹凸を平坦化するため、炉底18に耐熱煉瓦を並べて耐熱性モルタルにより接着して作成される。また、第2横行レール16の設置位置は、燃焼室14を内部に有する炉壁13を新たに設置する構築位置の上部である。
【0049】
実施例3においても、ユニット形成工程において、搬入台車7の可動ベース78の上に一体成形ブロック2を並べて設置し、その上に溝のない成形ブロック361(図示せず)を積み上げて耐熱性モルタルで固定して、燃焼室ユニット36を組み上げて形成する(ステップS3)。搬入台車7も、車輪72により押出機(図示せず)が移動するレールMRの上を移動することができる。ユニット形成工程では、搬入台車7をコークス炉1の側方のレールMR上に位置させ、燃焼室ユニット36の形成が行われる。この時、燃焼室ユニット36は、炉団方向SDに並べて2つ形成される。1つ目の燃焼室ユニット36は、炉団方向SDで搬入台車7の中心で形成され、2つ目の燃焼室ユニット36はその側方で形成される。
【0050】
ユニット形成工程が終了すると、レールMRの上で搬入台車7を移動させ、搬入台車7を炉壁13の構築位置に移動する(ステップS4)。そして、搬入台車7の第1横行レール73を、コークス炉1の天井部に設置した第2横行レール16と、接続レール77により接続する(ステップS5)。以上の工程は、実施例1、2と同様である。燃焼室ユニット36は実施例1、2と同様に形成されるが、実施例3においては、ユニット形成工程で燃焼室ユニット36がリフト76における上昇台761の上で形成されるので、ユニット形成工程は台載置工程でもある。
【0051】
そして、次の移動工程におけるリフト工程で、上昇台761を上昇させる(ステップS6)。リフト工程における上昇中の上昇台761と燃焼室ユニット36について、図30は炉団方向側面図を、図31は搬入台車7の炉長方向FDからみた断面図を示す。図30では、2つ目の燃焼室ユニット36の記載を省略している。また、図31では、燃焼空間362の記載は省略している。リフト76は上昇台761、リフトワイヤ762、ウインチ763、滑車764を備える。上昇台761は、滑車764を通してウインチ763につながるリフトワイヤ762により、台車フレーム71の上方へ引き上げられている。また、図30では、ブロック保持装置43が、台車フレーム71上部における炉長方向FDの端にはみ出した状態で、第1横行レール73を走行する複数の走行車74からワイヤ75により吊り下げられている。
【0052】
リフト工程では、図31に示すウインチ763にリフトワイヤ762が巻かれることにより、上昇台761とその上の燃焼室ユニット36は、ブロック保持装置43の高さまで上昇する。そして、装置セット工程において、走行車74が第1横行レール73を移動して、燃焼室ユニット36の炉長方向FDの側方からブロック保持装置43がスライドし、一体成形ブロック2の第1溝211と第2溝221に第1持上部材431と第2持上部材432が差し込まれる(ステップS7)。図32は装置セット工程が行われている状態を示す。ブロック保持装置43は、燃焼室ユニット36にセット可能であり、ブロック保持装置41、42と同様にスライド型のブロック保持装置である。そして、上昇台761を下降させることにより、燃焼室ユニット36はブロック保持装置43に保持された状態となる(ステップS8)。なお、図32では、台車フレーム71の下方で可動ベース78の上に形成された2つ目の燃焼室ユニット36を示す。2つ目の燃焼室ユニット36は、1つ目の燃焼室ユニット36と長さが異なっている。
【0053】
次の移動工程における水平移動工程では、走行車74を第1横行レール73から第2横行レール16まで移動することにより、燃焼室ユニット36をコークス炉1の内部に運び込む(ステップS9)。ブロック載置工程では、走行車74から下がるワイヤ(図示せず)を弛めてブロック保持装置43を下げ、燃焼室ユニット36を設置ベース19や他の燃焼室ユニット36の上に下ろす。そして、ブロック保持装置43を搬入台車7のある炉長方向FDの側方へ抜き去ることにより、燃焼室ユニット36を載置する(ステップS10)。燃焼室ユニット36の設置固定には耐熱性モルタルを利用する。そして、均しを行うことにより炉壁13の表面に膨出した耐熱性モルタルを整える。図31に示した2つの燃焼室ユニット36の各々は、炉団方向SDに移動する可動ベース78に載置されている。図31の中央に示した1つ目の燃焼室ユニット36がコークス炉1の内部に設置されると、可動ベース78の移動により左側に示した2つ目の燃焼室ユニット36を炉団方向SDで搬入台車7の中心に移動する(ステップS11)。さらに、ステップS6で上昇台761を上昇させ、ステップS7~ステップS10により燃焼室ユニット36をコークス炉1の内部に設置する。
【0054】
以上のステップS3からステップS11の工程を繰り返すことにより、ブロック載置工程で燃焼室ユニット36を順次にコークス炉1の内部に載置して、実施例2の図28のように複数の燃焼室ユニット36をコークス炉1内に設置する。ステップS3のユニット形成工程は時間を要するため、押出機の運用に支障が生じないようにコークス炉1の側方へ移動した搬入台車7の上でユニット形成工程を行い、ステップS4の搬入台車7の移動とステップS7のレールの接続を行う。燃焼室ユニット36の内側で、燃焼空間362(図示せず)から落下した耐熱性モルタルは、穴開き部363から掻き出して取り去る(ステップS12)。その後、溝平坦化工程により、一体成形ブロック2の第1溝211と第2溝221を耐熱煉瓦と耐熱性モルタルにより埋めて平坦化する(ステップS13)。実施例3では、移動工程におけるリフト工程と水平移動工程の間に装置セット工程が行われる。
【実施例0055】
実施例4では、図33に示すように、ブロック保持装置44を、ワイヤ101を介してクレーン100により吊り上げる。そして、天井部を取り去ったコークス炉1の上から、ブロック保持装置44に保持された燃焼室ユニット36を下ろして、所定の位置に載置する。図33に、実施例4のコークス炉1とクレーン100を示す。図33は、ブロック保持装置44に保持した燃焼室ユニット36を、移動工程でコークス炉1の外部から内部へ移動させている所を示している。クレーン100は、押出機のレールMRの上に設置されており、燃焼室14を設置する位置に車輪により移動することができる。燃焼室ユニット36は、トラックの荷台等の上で形成してクレーン100の近くに運んでもよい。
【0056】
この燃焼室設置方法は、押出機のレールMRの上で一般的なクレーン100を用いることができる利点がある。しかしながら、ブロック載置工程において、コークス炉1の中で炉長方向FDにスライド型のブロック保持装置を水平に移動させて横方向に抜くことが難しい。そのため、図34に示す把持型のブロック保持装置44をワイヤ101に吊して用いる。ブロック保持装置44では、第1フレーム441が第2フレーム443に対して、図34に記載するように両矢印で示す幅方向に平行移動する。これにより、第1持上部材442と第2持上部材444の間隔を拡げたり狭めたりすることができる。ブロック保持装置44は、第1持上部材442と第2持上部材444が、互いに接近した接近位置と、互いに離間した離間位置の間を移動可能である。また、ブロック保持装置44をワイヤ101で吊り下げた際には、自重により第1持上部材442と第2持上部材444が互いに近づくように力が作用する構造(図示せず)を有している。そして、実施例4の装置セット工程では、第1持上部材442と第2持上部材444が幅方向から燃焼室ユニット36を挟むようにして接近位置に移動し、第1溝211と第2溝221に差し込まれてセットする。一方、ブロック載置工程では、第1持上部材442と第2持上部材444を離間した離間位置に移動させて、第1溝211と第2溝221から抜くことにより、セットを解除する。
【実施例0057】
図35、36に示す実施例5も、コークス炉1の上からブロック保持装置44に保持された燃焼室ユニット36を下ろして、所定の位置に載置する。実施例5のクレーン8は車輪82を有し、コークス炉1の天井部17の上の位置に設けたレールUR上を移動する。車輪82の上にはクレーン脚81が立脚し、横行レール83を支えている。また、横行レール83に設けた走行車84から下がる一本のワイヤ85により、図34に示した把持型のブロック保持装置44を吊り下げている。
【0058】
図35は、トラックにより運ばれた燃焼室ユニット36を、荷台LPの上で装置セット工程によりブロック保持装置44にセットしたところを示す。ブロック保持装置44は、実施例4と同様に、第1持上部材442と第2持上部材444が幅方向で挟むようにして一体成形ブロック2の第1溝211と第2溝221に差し込まれてセットする。図35の燃焼室ユニット36とブロック保持装置44は長手方向が炉団方向SDに沿うように荷台LP上に置かれている。
【0059】
実施例5では、ブロック保持装置44を一本のワイヤ85により引き上げる際に、ブロック保持装置44の方向を90°転回する。そして、図36のようにブロック保持装置44と燃焼室ユニット36の方向を、炉長方向FDが長手方向となるようにして設置時の方向に位置合わせする。この状態で、走行車84をコークス炉1の上に移動して、ブロック保持装置44を下ろし、ブロック載置工程で燃焼室ユニット36をコークス炉1の中に載置する。ブロック載置工程では、図34に示した第1持上部材442と第2持上部材444を離間させて第1溝211と第2溝221から抜く。これらの工程を繰り返して、燃焼室14の炉壁13を設置する。
【0060】
以上のように、実施例1~5では燃焼室ユニット32等を用いたが、図14、15に示した燃焼室ユニット33、34や、図16、17に示した一体成形ブロックの単体をブロック保持装置で保持して移動させてもよい。また、実施例1~5は、経年劣化したコークス炉を再構築する例であるが、コークス炉を新規に構築する際にも上記の技術を用いることができる。
【0061】
一体成形ブロック2、5は、第1溝211、511と第2溝221、521を下方に設けているが、中程や上方等のより高い位置に設けてもよい。また、実施例1~3では、ユニット形成工程を搬入台車の上で行ったが、他の場所で燃焼室ユニットを形成し、搬入台車に運び込んでもよい。
【0062】
また、実施例1等のように、複数の燃焼室ユニットの組み上げと、複数の燃焼室ユニットのコークス炉内への移動と設置を繰り返すようにしてもよく、燃焼室ユニットを1つ組み上げるごとにコークス炉内へ移動と設置を行うようにしてもよい。
【0063】
穴開き部からの耐熱性モルタルの掻き出しは、全ての燃焼室ユニットを載置した後でもよいが、その前に行ってもよい。溝平坦化工程では、耐熱煉瓦を用いずに耐熱性モルタルだけを用いて溝を平坦化してもよい。
【0064】
その他、具体的な構成は実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 コークス炉
11 蓄熱室
12 耐熱煉瓦
13 炉壁
131 炉壁表面
14 燃焼室
15 炭化室
16 第2横行レール
17 天井部
18 炉底
19 設置ベース
2 一体成形ブロック
21 第1側面
211 第1溝
212 第1溝上面
213 第1溝下面
214 第1溝内面
215 第1上側面
216 第1下側面
22 第2側面
221 第2溝
222 第2溝上面
223 第2溝下面
224 第2溝内面
225 第2上側面
226 第2下側面
23 燃焼空間
231 穴開き部
24 煙道
25 設置面
31 燃焼室ユニット
311 成形ブロック
312 燃焼空間
32 燃焼室ユニット
33 燃焼室ユニット
34 燃焼室ユニット
341 成形ブロック
35 燃焼室ユニット
351 成形ブロック
352 燃焼空間
353 穴開き部
36 燃焼室ユニット
361 成形ブロック
362 燃焼空間
363 穴開き部
41 ブロック保持装置
411 第1持上部材
412 第2持上部材
413 フレーム
42 ブロック保持装置
421 第1持上部材
422 第2持上部材
43 ブロック保持装置
431 第1持上部材
432 第2持上部材
433 フレーム
44 ブロック保持装置
441 第1フレーム
442 第1持上部材
443 第2フレーム
444 第2持上部材
5 一体成形ブロック
51 第1側面
511 第1溝
514 第1溝内面
52 第2側面
521 第2溝
524 第2溝内面
6 搬入台車
61 台車フレーム
62 車輪
63 第1横行レール
64 走行車
65 ワイヤ
66 接続レール
67 可動ベース
68 可動ベース
7 搬入台車
71 台車フレーム
72 車輪
73 第1横行レール
74 走行車
75 ワイヤ
76 リフト
761 上昇台
762 リフトワイヤ
763 ウインチ
764 滑車
77 接続レール
78 可動ベース
8 クレーン
81 クレーン脚
82 車輪
83 横行レール
84 走行車
85 ワイヤ
9 炉壁
91 切欠き
92 設置面
100 クレーン
101 ワイヤ
a 溝深さ
a1 溝深さ
a2 溝深さ
b 溝部厚
b1 溝部厚
b2 溝部厚
P 張り出し
LP 荷台
MR レール
FD 炉長方向
SD 炉団方向
E コークス出口側
UR レール
図1
図2
図3
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図5
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