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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119354
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】貨物自動車の荷室の側壁構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/04 20060101AFI20230821BHJP
   F16B 25/10 20060101ALI20230821BHJP
   F16B 35/00 20060101ALI20230821BHJP
   F16B 39/282 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B62D33/04 Z
F16B25/10 A
F16B35/00 K
F16B39/282 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022217
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000229357
【氏名又は名称】日本トレクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303037482
【氏名又は名称】北西物産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深井 悦子
(72)【発明者】
【氏名】北條 学
(57)【要約】
【課題】側壁の内装材に樹脂製ボードが用いられた高品質の荷室を実現する。
【解決手段】一実施形態の貨物自動車の荷室の側壁構造では、前記荷室の内面を形成する内装材が固定ねじ50によってフレームに固定される。その固定ねじ50は、頭部60と、頭部60の裏面(座面61)から延びる軸部70と、を備える。座面61には、第1テーパ部66が設けられた内側環状領域63と、複数の突起80が設けられた中間環状領域64と、第2テーパ部67が設けられた外側環状領域65と、が径方向内側から径方向外側に向けてこの順で配置されている。さらに、第1テーパ部66および第2テーパ部67の表面は、径方向外側に行くに連れて次第に頭部60の上面62に近接するように傾斜する平滑面であり、複数の突起80は、中間環状領域64の全周に亘って連続的に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物自動車の荷室の側壁構造であって、
フレームと、
前記フレームの外側に配置され、前記荷室の外面を形成する外装材と、
前記フレームの内側に配置され、前記荷室の内面を形成する内装材と、
前記内装材を貫通して前記フレームにねじ結合された固定ねじと、を有し、
前記固定ねじは、頭部と、前記頭部の裏面から延びる軸部と、を備え、
前記頭部の前記裏面には、第1テーパ部が設けられた内側環状領域と、複数の突起が設けられた中間環状領域と、第2テーパ部が設けられた外側環状領域と、が径方向内側から径方向外側に向けてこの順で配置され、
前記第1テーパ部および前記第2テーパ部の表面は、径方向外側に行くに連れて次第に前記頭部の表面に近接するように傾斜する平滑面であり、
複数の前記突起は、前記中間環状領域の全周に亘って連続的に設けられている、貨物自動車の荷室の側壁構造。
【請求項2】
それぞれの前記突起は、
前記軸部の中心線と平行に前記軸部の先端側に向かう垂直面と、前記垂直面の一端から隣接する他の前記突起の前記垂直面の一端に向かう傾斜面と、を含み、
それぞれの前記突起における前記垂直面と前記傾斜面との交線は、前記頭部の半径方向に延びている、請求項1に記載の貨物自動車の荷室の側壁構造。
【請求項3】
前記内装材は、中間層と、前記中間層を挟んで対向する一対の表面層と、を含む多層構造を有し、
前記中間層には空気が封入され、
それぞれの前記表面層は、樹脂製シートによって形成されている、請求項1又は2に記載の貨物自動車の荷室の側壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物自動車の荷室(貨物室,コンテナ室)に関するものであり、特に荷室の側壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの貨物自動車は、走行方向を長手方向とする略直方体形の荷室を備えている。荷室は、“貨物室”や“コンテナ室”と呼ばれることもあるが、本明細書では“荷室”と総称する。
【0003】
貨物自動車が備える荷室は、床,側壁,天壁,前壁,後壁から構成されている。荷室を備える貨物自動車のうち、側壁と天壁とが一体的に上下方向に開閉する貨物自動車は“ウイングボディ車”と呼ばれることがある。また、後壁や側壁に観音開き式の扉が設けられた貨物自動車は“バンボディ車”と呼ばれることがある。
【0004】
いずれのタイプの貨物自動車においても、荷室の左右の側壁は、フレーム,外装材,内装材などから構成される。外装材は、フレームの外側に配置されて側壁の外面を形成し、内装材は、フレームの内側に配置されて側壁の内面を形成する。
【0005】
従来、内装材には、ワラン合板などの木製の板材が主に用いられていた。しかし、近年、合成樹脂製の板材が内装材として用いられることがある。より特定的には、多層構造の合成樹脂製の板材が内装材として用いられることがある。多層構造の合成樹脂製の板材は、例えば、一対の表面層とそれら表面層の間に設けられた中間層とを有し、中間層には空気が封入されている。さらに、それぞれの表面層は、厚みが数ミリメートルの樹脂製シートによって形成されている。
【0006】
以下の説明では、内装材として用いられる木製の板材を“木製ボード”と呼び、合成樹脂製の板材を“樹脂製ボード”と呼んで区別する場合がある。一方、木製の板材と合成樹脂製の板材とを特に区別しない場合、これらを“ボード”と総称する場合がある。
【0007】
木製ボードはねじによってフレームに固定される。この際、ねじの頭部が木製ボードの表面(荷室の側壁内面)から大きく突出すると、見栄えが悪いばかりでなく、荷室に入れられた荷物を傷付ける虞がある。そこで、ねじの頭部には、木製ボードの表面を座刳る(ざぐる)ための突起が設けられている。より特定的には、頭部の下面(座面)に、周方向に沿って複数の突起が設けられている。ねじを木製ボードにねじ込んでいくと、座面に設けられている突起が木製ボードの表面に回転しながら接触する。すると、回転する突起によって木製ボードの表面が削られて陥没する。この結果、ねじの頭部の全部または一部が埋没し、頭部の上面が木製ボードの表面(荷室に側壁内面)と面一または略面一になる。
【0008】
ここで、特許文献1には、貨物自動車の荷室の床構造が記載されている。特許文献1に記載されている床構造は、複数本の根太材と、それら根太材の上に配置され、荷室の床を形成する木製の板材と、板材を根太材に固定する皿タッピングねじと、を有する。そして、皿タッピングねじの頭部の背面(座面)には、複数の切り込み突起が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4199690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
樹脂製ボードは、木製ボートよりも軟らかい。別の見方をすると、樹脂製ボードの表面は、木製ボードの表面に比べて脆弱である。そのため、従来のねじを使って樹脂製ボードをフレームに固定すると、座面に設けられている突起によって樹脂製ボードの表面(荷室の側壁内面)が傷付けられることがあった。例えば、多層構造の樹脂製ボードの表面層を形成している樹脂製シートが引き裂かれたり、切り裂かれたりすることがあった。さらに、裂け目や切れ目がねじの頭部の周囲にまで及んで露出することがあった。また、回転するねじの頭部との接触によって樹脂製シート等が引っ張られ、樹脂製シート等の表面(荷室の側壁内面)に皺が発生することもあった。
【0011】
一方、上記のような不具合の発生を回避するために、ねじの締め込み量を少なくすると、頭部が樹脂製ボードの表面から大きく突出してしまう。
【0012】
総じて、側壁の内装材に樹脂製ボードが用いられた高品質の荷室を実現することは困難であった。
【0013】
本発明の目的は、側壁の内装材に樹脂製ボードが用いられた荷室の品質向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一実施形態に係る貨物自動車の荷室の側壁構造は、フレームと、前記フレームの外側に配置され、前記荷室の外面を形成する外装材と、前記フレームの内側に配置され、前記荷室の内面を形成する内装材と、前記内装材を貫通して前記フレームにねじ結合された固定ねじとを有し、前記固定ねじは、頭部と、前記頭部の裏面から延びる軸部とを備える。前記頭部の前記裏面には、第1テーパ部が設けられた内側環状領域と、複数の突起が設けられた中間環状領域と、第2テーパ部が設けられた外側環状領域と、が径方向内側から径方向外側に向けてこの順で配置される。前記第1テーパ部および前記第2テーパ部の表面は、径方向外側に行くに連れて次第に前記頭部の表面に近接するように傾斜する平滑面である。複数の前記突起は、前記中間環状領域の全周に亘って連続的に設けられる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、側壁の内装材に樹脂製ボードが用いられた高品質の荷室が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】貨物自動車の斜視図である。
図2】荷室の側壁構造を示す部分拡大斜視図である。
図3図2におけるX-X断面図である。
図4】(a)は固定ねじの平面図、(b)は固定ねじの正面図、(c)は固定ねじの背面図、(d)は固定ねじの右側面図、(e)は固定ねじの左側面図である。
図5】固定ねじの頭部裏面(座面)を示す拡大図である。
図6】(a)は図5中のA-A線に沿う端面図、(b)は図5中のB-B線に沿う端面図、(c)は図5中のC-C線に沿う端面図である。
図7】固定ねじが内装材を貫通してポストにねじ結合されるまでの一過程を示す断面図である。
図8】固定ねじが内装材を貫通してポストにねじ結合されるまでの他の一過程を示す断面図である。
図9】固定ねじが内装材を貫通してポストにねじ結合されるまでの他の一過程を示す断面図である。
図10】固定ねじが内装材を貫通してポストにねじ結合されるまでの他の一過程を示す断面図である。
図11】固定ねじが内装材を貫通してポストにねじ結合されるまでの他の一過程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するために参照する全ての図面において、同一または実質的に同一の構成については同一の符号を用いる。また、一度説明した構成については、原則として繰り返しの説明は行わない。
【0018】
<荷室の概略>
図1は、本実施形態に係る貨物自動車1の斜視図である。図1に示される貨物自動車1は、床11,側壁12,天壁13,前壁14,後壁15によって構成され、内部に荷物Aを収容可能な荷室10を備えている。荷室10の床11および天壁13は、貨物自動車1の前後方向を長手方向とする長方形である。また、側壁12には、床11および天壁13の一方の長辺に連接している右側壁12Rと、床11および天壁13の他方の長辺に連接している左側壁12Lと、が含まれる。なお、図示は省略されているが、荷室10の後壁15には観音開き式の扉が設けられている。つまり、貨物自動車1は、バンボディ車である。
【0019】
<側壁構造の概略>
図2は、荷室10の側壁構造を示す部分拡大斜視図である。図3は、図2におけるX-X断面図である。荷室10の側壁12には、必要な耐久性を維持しつつ軽量化を実現するために、フレーム構造が採用されている。より特定的には、側壁12は、複数本のポスト20と、それらポスト20の外側に配置された外装材30と、それらポスト20の内側に配置された内装材40と、を有する。別の見方をすると、外装材30と内装材40とが複数本のポスト20を挟んで対向している。
【0020】
<ポスト(フレーム)>
ポスト20は、貨物自動車1の前後方向に沿って並んでいる。また、隣接するポスト20は、互いに平行である。それぞれのポスト20は、貨物自動車1の上下方向(車高方向)に延びる金属部材であって、床11と天壁13との間に介在して天壁13の荷重を支えている。つまり、ポスト20は、側壁12のフレームであると同時に、天壁13を支える柱でもある。
【0021】
それぞれのポスト20は、断面形状がコ字形のポスト本体部21と、ポスト本体部21の開口部の縁から前後に延びるポストフランジ部22と、を有している。
【0022】
ポスト20の外側に配置されている外装材30は、側壁12の外面を形成しており、ポスト20の内側に配置されている内装材40は、側壁12の内面を形成している。なお、対向する外装材30と内装材40との間に断熱材が設けられることもある。
【0023】
<外装材>
外装材30は、金属製(例えば、アルミニウム合金製)の板材である。外装材30には、前後方向に延びる複数の凸部がプレス成形されている。それら凸部31は互いに平行であり、かつ、上下に並んでいる。外装材30は、ブラインドリベット等の固定具32によってポスト20に固定されている。より特定的には、外装材30は、ポスト本体部21の底面(背面)に固定されている。
【0024】
<内装材>
内装材40は、多層構造を有する合成樹脂製の板材である。つまり、内装材は、樹脂ボードである。なお、図2では、作図上の都合により、内装材40の断面構造が簡略化されている。
【0025】
図3に示されるように、内装材40は、中間層41と、中間層41を挟んで対向する一対の表面層42,43と、を含む多層構造を有する。さらに、中間層41には空気が封入されており、表面層42,43は、樹脂製シートによって形成されている。
【0026】
より特定的には、中間層41には多数の空気室が設けられており、それぞれの空気室に空気が封入されている。それぞれの空気室は筒形状し、各空気室の上下は、表面層42,43を形成する樹脂製シートによって気密に塞がれている。
【0027】
以下の説明では、表面層42を“内側表面層42”と呼び、表面層43を“外側表面層43”と呼んで区別する場合がある。もっとも、かかる区別は説明の便宜上の区別に過ぎない。内装材40の表面層42,43は、実質的に同一の層である。
【0028】
内側表面層42が荷室10の内部を臨む向きで、複数枚の内装材40がフレームの内側に並べて配置されている。それぞれの内装材40は、フレームを構成しているポスト20に固定ねじ50によって固定されている。より特定的には、それぞれの内装材40を内側表面層42,中間層41,外側表面層43の順で貫通している固定ねじ50がポストフランジ部22にねじ結合されている。
【0029】
上記のような多層構造を有する内装材40は、弾性を有する。別の見方をすると、内装材40は、荷室10に積まれた荷物Aを保護する緩衝材として機能する。例えば、荷室10に積まれている荷物Aは、貨物自動車1の走行中に揺れや振動によって側壁12(内装材40)に衝突する虞がある。このとき、衝突の衝撃が内装材40の弾性変形によって吸収され、荷物Aの破損等が防止される。
【0030】
前後の内装材40の端部同士は、ポスト20上で隣接している。より特定的には、一方の内装材40の側縁(連結縁部44)がポスト20の一方のポストフランジ部22に固定され、他方の内装材40の側縁(連結縁部44)が同一のポスト20の他方のポストフランジ部22に固定されている。
【0031】
<ジョイント部材>
同一のポスト20に固定されている2つの連結縁部44は、ジョイント部材23に嵌め込まれている。ジョイント部材23は、ポスト20と同方向に延びる板金である。
【0032】
ジョイント部材23は、ポスト本体部21の開口部を覆う中央部24と、中央部24の両側(前後)に一体的に設けられた介在片25と、中央部24と対向する化粧カバー片26と、を備えている。さらに、中央部24と化粧カバー片26とは、これらに対して垂直な連結片27を介して繋がっている。
【0033】
ジョイント部材23の中央部24と化粧カバー片26とは、内装材40の厚みと略同一の隙間を介して対向している。別の見方をすると、連結片27の前後に、内装材40の連結縁部44を差込み可能な隙間が形成されている。
【0034】
そして、一方の内装材40の連結縁部44の一部は、連結片27の前方において、中央部24と化粧カバー片26との間の隙間に差し入れられている。また、他方の内装材40の連結縁部44の一部は、連結片27の後方において、中央部24と化粧カバー片26との間の隙間に差し入れられている。この結果、それぞれの連結縁部44の端面同士が連結片27を挟んで対向している。また、対向する連結縁部44の端面同士の間の隙間が化粧カバー片26によって覆われている。
【0035】
さらに、ジョイント部材23の介在片25が内装材40の連結縁部44とポスト20のポストフランジ部22との間に挟まれている。固定ねじ50は、内装材40の連結縁部44のみでなく、介在片25も貫通してポストフランジ部22にねじ結合されている。別の見方をすると、内装材40の連結縁部44とジョイント部材23の介在片25とが固定ねじ50によってポストフランジ部22に共締めされている。
【0036】
なお、ジョイント部材23の中央部24は、ポスト本体部21の内側(底面)に向かって僅かに屈曲している。また、化粧カバー片26の表面は、連結縁部44を除く内装材40の表面よりも僅かに外側(外装材30側)に位置している。
【0037】
<固定ねじ>
次に、内装材40をポスト20に固定している固定ねじ50についてより詳細に説明する。図4(a)~(e)は、固定ねじ50の異なる面を示す図である。より特定的には、図4(a)は固定ねじ50の平面図,図4(b)は正面図,図4(c)は背面図,図4(d)は右側面図,図4(e)は左側面図である。
【0038】
図5は、固定ねじ50の頭部60の裏面61を示す拡大図である。なお、図5では、軸部70の図示は省略されている。図6(a)は図5中のA-A線に沿う端面図であり、図6(b)は図5中のB-B線に沿う端面図であり、図6(c)は図5中のC-C線に沿う端面図である。
【0039】
固定ねじ50は、頭部60と、頭部60の裏面61から延びる軸部70と、を備えている。以下の説明では、頭部60の裏面61を“座面61”と呼ぶ場合がある。また、頭部60の表面62を“上面62”と呼ぶ場合がある。
【0040】
軸部70は、頭部60(座面61)の中央に設けられている。軸部70には、外周面にねじ山が形成されたねじ部71と、切り刃が形成されたドリル部72と、が設けられている。つまり、固定ねじ50は、ドリルねじである。よって、内装材40をポスト20に固定する際に、事前に下穴を形成する必要はない。
【0041】
ねじ部71は軸部70の基端側に設けられ、ドリル部72は軸部70の先端側に設けられている。固定ねじ50の各部の寸法に制限はないが、本実施形態のねじ部71の外径は4.8mm、ねじピッチは1.06mmである。また、頭部60の直径は14.5mmである。
【0042】
座面61には、複数の環状領域が同心円状に配置されている。より特定的には、内側環状領域63,中間環状領域64および外側環状領域65が径方向内側から径方向外側に向けてこの順で配置されている。
【0043】
<内側環状領域>
内側環状領域63は、3つの領域の中で最も内側の領域であって、その内縁は軸部70に連接し、その外縁は中間環状領域64に連接している。
【0044】
内側環状領域63には、第1テーパ部66が設けられている。第1テーパ部66の表面66aは、傾斜した平滑面である。より特定的には、第1テーパ部66の表面66aは、径方向外側に行くに連れて次第に頭部60の上面62に近接するように傾斜している。
【0045】
別の見方をすると、軸部70の先端を下に向けた状態(図4(b),(d),(e)に示される状態)では、第1テーパ部66の表面66aは上り傾斜になる。言い換えれば、軸部70の先端を上に向けた状態(図4(c)に示される状態)では、第1テーパ部66の表面66aは、下り傾斜になる。以下の説明では、第1テーパ部66の表面66aを“内側テーパ面66a”と呼ぶ場合がある。
【0046】
<中間環状領域>
中間環状領域64は、内側環状領域63と外側環状領域65との間の領域であって、その内縁は内側環状領域63に連接し、その外縁は外側環状領域65に連接している。
【0047】
内側環状領域63及び外側環状領域65は平滑であるのに対し、中間環状領域64には起伏がある。より特定的には、中間環状領域64には、複数の突起80が全周に亘って連続的に設けられている。これら突起80は、中間環状領域64に施されたセレーション加工によって形成されたものである。
【0048】
<突起>
図6(b)に最も明確に示されるように、それぞれの突起80は、垂直面81および傾斜面82を含み、全体として略直角三角形の断面形状を有する。垂直面81は、軸部70の中心線Cと平行に軸部70の先端側に向かう面である。別の見方をすると、垂直面81は、軸部70の先端を上に向けた状態(図4(c)に示される状態)では、垂直に立ち上がる。言い換えれば、垂直面81は、軸部70の先端を下に向けた状態(図4(b),(d),(e)に示される状態)では、垂直に立ち下がる。
【0049】
傾斜面82は、垂直面81の一端から隣接する他の突起80の垂直面81の一端に向かう面である。傾斜面82は、軸部70の先端を下に向けた状態(図4(b),(d),(e)に示される状態)では、突起80の垂直面81の下端から隣接する他の突起80の垂直面81の上端に向かう上り傾斜の斜面となる。言い換えれば、軸部70の先端を上に向けた状態(図4(c)や図6(b)に示される状態)では、傾斜面82は、突起80の垂直面81の上端から隣接する他の突起80の垂直面81の下端に向かう下り傾斜の斜面となる。
【0050】
図5に最も明確に示されるように、それぞれの突起80の垂直面81と傾斜面82との交線83は、頭部60の半径方向に延びている。この結果、座面61上では、複数の突起80の交線83が放射状に延びている。別の見方をすると、それぞれの突起80の頂辺(先端)が座面61上において放射状に並んでいる。
【0051】
<外側環状領域>
外側環状領域65は、3つの領域の中で最も外側の領域であって、その内縁は中間環状領域64に連接し、その外縁は頭部60の側面に連接している。
【0052】
外側環状領域65には、第2テーパ部67が設けられている。第2テーパ部67の表面67aは、傾斜した平滑面である。より特定的には、第2テーパ部67の表面67aは、径方向外側に行くに連れて次第に頭部60の上面62に近接するように傾斜している。
【0053】
別の見方をすると、軸部70の先端を下に向けた状態(図4(b),(d),(e)に示される状態)では、第2テーパ部67の表面67aは上り傾斜になる。言い換えれば、軸部70の先端を上に向けた状態(図4(c)に示される状態)では、第2テーパ部67の表面67aは、下り傾斜になる。以下の説明では、第2テーパ部67の表面67aを“外側テーパ面67a”と呼ぶ場合がある。
【0054】
ここで、外側テーパ面67aの中心線Cに対する傾きは、内側テーパ面66aの中心線Cに対する傾きよりも緩やかである。具体的には、図4(d)に示される角度θ1は約41°であるのに対し、角度θ2は約75°である。
【0055】
<内装材の固定手順>
次に、図3に示されている固定ねじ50が内装材40を貫通してポスト20にねじ結合されるまでの過程について説明する。図7図11は、上記過程を時系列順で示す断面図である。但し、図7図11では、作図上の都合により、ジョイント部材23の図示が省略されている。既述のとおり、図3に示されている固定ねじ50は、内装材40およびジョイント部材23(介在片25)を貫通してポスト20にねじ結合される。なお、実際には、図3に示されている固定ねじ50を含む多数本の固定ねじ50によって内装材40がポスト20に固定されている。これら多数本の固定ねじ50には、内装材40の連結縁部44以外の部分(ジョイント部材23と重なっていない部分)をポスト20に固定している固定ねじ50も含まれる。
【0056】
図7に示される固定ねじ50は、内装材40およびポスト20(ポストフランジ部22)に途中まで捩じ込まれており、軸部70が内装材40およびポスト20を貫通している。もっとも、図7に示されている段階では、固定ねじ50の頭部60は内装材40に到達していない。
【0057】
なお、ドリルねじである固定ねじ50は、内装材40およびポスト20(ポストフランジ部22)に自ら穴を開ける。よって、内装材40およびポスト20に固定ねじ50を捩じ込む前に、これらに下穴を設ける必要はなく、下穴の内周面にねじ山(雌ねじ)を形成する必要もない。
【0058】
内装材40およびポスト20に対する固定ねじ50の捩じ込みがある程度進行し、頭部60が内装材40に到達すると、座面61が内装材40の内側表面層42(樹脂製シート)に接触する。より特定的には、座面61の内側環状領域63(図5)が内装材40の内側表面層42(樹脂製シート)に接触する。
【0059】
その後、固定ねじ50の捩じ込みが進行すると、内側環状領域63に設けられている第1テーパ部66が内装材40に押し込まれる。このとき、第1テーパ部66の表面(内側テーパ面66a)が上記のように傾斜しているので、第1テーパ部66が内装材40にスムーズに押し込まれる。
【0060】
図8を参照する。固定ねじ50の捩じ込みがさらに進行すると、座面61の中間環状領域64(図5)が内装材40の内側表面層42(樹脂製シート)に接触する。つまり、複数の突起80の先端が内装材40の内側表面層42に接触する。このとき、それぞれの突起80の先端は、回転しながら内側表面層42に接触する。
【0061】
したがって、内装材40の内側表面層42は、固定ねじ50の回転方向に引っ張られつつ、固定ねじ50の進行方向に押される。しかし、この段階における座面61と内装材40の内側表面層42との接触状態は、線接触である。よって、座面61との内側表面層42との接触抵抗は小さく、内側表面層42が受ける負荷も小さい。この結果、内側表面層42(樹脂製シート)が切り裂かれたり、引き裂かれたりすることはなく、内側表面層42(樹脂製シート)に皺が発生することもない。
【0062】
次いで図9を参照する。固定ねじ50の捩じ込みがさらに進行すると、座面61に押されて内装材40の内側表面層42および中間層41が沈み込む。この間も、座面61と内装材40の内側表面層42との接触状態は、線接触状態に保たれる。よって、座面61の回転抵抗は小さく、内側表面層42および中間層41をスムーズに沈み込ませることができる。
【0063】
図10を参照する。固定ねじ50の捩じ込みが進行すると、座面61の外側環状領域65(図5)が内装材40の内側表面層42(樹脂製シート)に接触する。つまり、第2テーパ部67が内装材40の内側表面層42に接触(面接触)する。すると、座面61の回転抵抗が増大する。また、第2テーパ部67の表面(外側テーパ面67a)は、第1テーパ部66の表面(内側テーパ面66a)に比べて傾斜が緩やかである。このため、第2テーパ部67は、第1テーパ部66に比べて、内装材40に押し込まれ難い。
【0064】
別の見方をすると、作業者は、座面61の回転抵抗の増大により、第2テーパ部67が内装材40の内側表面層42に接触したことを感知することができる。また、第2テーパ部67が内装材40に押し込まれ過ぎる前に作業を停止することができる。
【0065】
以上の工程を経て、図11に示されるように、固定ねじ50の頭部60が過不足なく内装材40に埋め込まれる。別の見方をすると、固定ねじ50の頭部60が過不足なく埋め込まれる略円形の窪み45が内装材40の表面に形成される。また、上記工程を実施している最中に、内装材40の内側表面層42(樹脂製シート)が傷付けられたり、内装材40の内側表面層42(樹脂製シート)に皺が発生したりすることもない。
【0066】
再び図1図2を参照すると、側壁12の内側にラッシングレール90が設けられている。もっとも、ラッシングレール90は必要に応じて設ければよく、これまでに説明した側壁構造を実現するための必須構成要素ではない。
【0067】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…貨物自動車、10…荷室、11…床、12…側壁、12L…左側壁、12R…右側壁、13…天壁、14…前壁、15…後壁、20…ポスト、21…ポスト本体部、22…ポストフランジ部、23…ジョイント部材、24…中央部、25…介在片、26…化粧カバー片、27…連結片、30…外装材、31…凸部、32…固定具、40…内装材、41…中間層、42…表面層(内側表面層)、43…表面層(外側表面層)、44…連結縁部、60…頭部、61…裏面(座面)、62…表面(上面)、63…内側環状領域、64…中間環状領域、65…外側環状領域、66…第1テーパ部、66a…表面(内側テーパ面)、67…第2テーパ部、67a…表面(外側テーパ面)、70…軸部、71…ねじ部、72…ドリル部、80…突起、81…垂直面、82…傾斜面、83…交線、90…ラッシングレール、A…荷物、C…中心線、θ1,θ2…角度
図1
図2
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図5
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図7
図8
図9
図10
図11