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特開2023-119380高レベル放射性廃棄物の処分負荷低減方法、及び高速炉の燃料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119380
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】高レベル放射性廃棄物の処分負荷低減方法、及び高速炉の燃料
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/00 20060101AFI20230821BHJP
   G21C 19/46 20060101ALI20230821BHJP
   G21F 9/06 20060101ALI20230821BHJP
   G21C 3/28 20060101ALI20230821BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20230821BHJP
   G21G 1/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G21F9/00 N
G21C19/46 624
G21F9/06 581Z
G21C3/28 900
G21C5/00 A
G21G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022260
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
(72)【発明者】
【氏名】松井 嶺迪
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆
(72)【発明者】
【氏名】儀間 大充
(72)【発明者】
【氏名】日比 宏基
(72)【発明者】
【氏名】森 行秀
(57)【要約】
【課題】廃液量の抑制効果に優れる高レベル放射性廃棄物の処分負荷低減方法を提供する。
【解決手段】使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液である高レベル放射性廃棄物からマイナーアクチノイド(MA)及びランタノイド(Ln)を、Lnの除染係数が1以上100未満となるように回収し、MA及びLnを含む放射性組成物を得るステップと、前記放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップと、前記燃料を高速炉に装荷し、前記マイナーアクチノイドの核変換を行うステップと、を有する、高レベル放射性廃棄物の処分負荷の低減方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液である高レベル放射性廃棄物からマイナーアクチノイド及びランタノイドを、前記ランタノイドの除染係数が1以上100未満となるように回収し、前記マイナーアクチノイド及び前記ランタノイドを含む放射性組成物を得るステップと、
前記放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップと、
前記燃料を高速炉に装荷し、前記マイナーアクチノイドの核変換を行うステップと、を有する、高レベル放射性廃棄物の処分負荷の低減方法。
【請求項2】
前記燃料が炉心燃料である、請求項1に記載の低減方法。
【請求項3】
前記ランタノイドの除染係数が1以上20未満である、請求項2に記載の低減方法。
【請求項4】
前記燃料がブランケット燃料である、請求項1に記載の低減方法。
【請求項5】
前記燃料を製造するステップの前に、前記放射性組成物を保管するステップを有する、請求項4に記載の低減方法。
【請求項6】
前記使用済み核燃料が、再処理において中間貯蔵された使用済み核燃料である、請求項4又は5に記載の低減方法。
【請求項7】
マイナーアクチノイド及びランタノイドを含む、高速炉の燃料。
【請求項8】
炉心燃料である、請求項7に記載の燃料。
【請求項9】
前記ランタノイドの含有量が、装荷する炉心燃料全量に対して1~13質量%である、請求項8に記載の燃料。
【請求項10】
ブランケット燃料である、請求項7に記載の燃料。
【請求項11】
前記ランタノイドの含有量が、装荷するブランケット燃料全量に対して31~33質量%である、請求項10に記載の燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高レベル放射性廃棄物の処分負荷低減方法、及び高速炉の燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉等から発生する使用済み核燃料の再処理においては、使用済み核燃料の溶液からU(ウラン)及びPu(プルトニウム)が回収される。U及びPuを回収した後に残る高レベル放射性廃棄物(Highly Active Liquid Waste)(以下、HALWとも記す。)には、核分裂生成物(Fission Products)(以下、FPとも記す。)のほか、Np(ネプツニウム)、Am(アメリシウム)、Cm(キュリウム)等のマイナーアクチノイド(Minor Actinide)(以下、MAとも記す。)が含まれる。HALWは、濃縮工程を経てガラス固化体とされ、地層処分される計画となっている。
【0003】
MAは、1万年オーダの長半減期を持つ核種があり、HALWの処分における負荷増大の要因となっている。そこで、HALWからMAを回収し、回収したMAを、高速炉や加速器(ADS)を用い、異なる元素に変換する核変換技術が検討されている。
HALW中のFPには、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Eu(ユウロピウム)等のランタノイド(以下、Lnとも記す。)が含まれる。LnはMAと化学的性質が似ていることから、HALWからMAを回収する際にLnが同伴しやすい。そのため、MA回収工程後に、MAとLnとを分離するMA精製工程が行われる。MA回収工程及びMA精製工程の代表的な方法として、MAを抽出するための溶媒(抽出剤溶液)を用いた溶媒抽出法及び抽出クロマト法が知られている。
【0004】
図8に、MAの回収から核変換までのプロセスの一例を示す。この例では、まず、HALWからMAを分離する(MA分離工程)。MA分離工程では、HALWからMAを溶媒抽出し、抽出液からMAを逆抽出する。MA分離工程ではLnがMAに同伴するので、MA分離工程後、逆抽出液を濃縮し、MAとLnとを分離する(MA精製工程)。MA精製工程では、濃縮液からMAを溶媒抽出し、抽出液からMAを水相へ逆抽出することで、Lnが分離されたMA含有溶液を得る。その後、得られたMA含有溶液を濃縮し、MA燃料を製造し、高速炉で核変換(燃焼)を行う。MA分離工程の廃液(FP含有)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。MA精製工程の廃液(Ln含有)は、濃縮し、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
【0005】
従来技術では、Lnを含有しないMA燃料を製造するため、MA精製において極めて高い精製度が要求される。そのため、MA精製においては通常、目的の精製度になるまで抽出-逆抽出の操作が繰り返される。工程数が増えることで、廃液量が増え、設備コストも増える。
このような問題に対し、特許文献1には、HALWからMA回収工程及びMA精製工程を経て得られたMA、Ln及び液状媒体を含む液状媒体を固化し、その固化体を保管する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-125989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法は、廃液量の抑制効果が未だ充分ではない。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、廃液量の抑制効果に優れるHALWの処分負荷低減方法及び高速炉の燃料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るHALWの処分負荷低減方法は、使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液であるHALWからMA及びLnを、前記Lnの除染係数が1以上100未満となるように回収し、前記MA及び前記Lnを含む放射性組成物を得るステップと、前記放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップと、前記燃料を高速炉に装荷し、前記MAの核変換を行うステップと、を有する。
また、本開示に係る高速炉の燃料は、MA及びLnを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示のHALWの処分負荷低減方法及び高速炉の燃料は、廃液量の抑制効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法を説明するフロー図である。
図2】高速炉の構成を示す縦断面図である。
図3】炉心の構成を示す平面図である。
図4】炉心燃料集合体の構成を示す平面図である。
図5】炉心燃料要素の構成を示す平面図である。
図6】本開示の第二実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法を説明するフロー図である。
図7】本開示の第二実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法を説明するフロー図である。
図8】比較例に係るプロセスを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、MA(マイナーアクチノイド)は、アクチノイドに属する超ウラン元素のうちPuを除いた元素である。
アクチノイドは、原子番号89から103までの元素の総称である。
Ln(ランタノイド)は、原子番号57から71までの元素の総称である。
放射性組成物におけるLnの除染係数(以下、DFLnとも記す。)は、HALW中のLn量(質量)を抽出・精製後のLn量(質量)で割った値であり、下記式で表される。Ln量として、質量の代わりに放射能濃度を用いてもよい。
DFLn=HALW中のLn量/抽出・精製後のLn量
【0012】
<第一実施形態>
図1に示すように、本開示の第一実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法は、
使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液であるHALWからMAをLnとともに分離する処理(MA分離)を行うことで、MA及びLnを含む第1の放射性組成物を得るステップS1-1と、
ステップS1-1によって得た第1の放射性組成物に対して、Lnの除染係数が1超100未満となるようにMAの精製処理(MA精製)を行うことで、MA及びLnを含む第2の放射性組成物を得るステップS1-2と、
ステップS1-2によって得た第2の放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップS1-3と、
ステップS1-3によって得た燃料を高速炉に装荷し、MAの核変換を行うステップS1-4と、を有する。
ステップS1-1によってMA及びLnを分離した廃液(FP含有)は、例えば、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
ステップS1-2によって分離したLnを含む廃液は、例えば、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
【0013】
(HALW)
HALWは、使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液である。HALWは、FP、MA、Ln等を含み、U及びPuを含まない。HALWは、典型的には、MAとして少なくとも、Np、Am及びCmを含み、Lnとして少なくとも、La及びCeを含む。
使用済み核燃料の種類(加圧水型炉(PWR)燃料、沸騰水型炉(BWR)燃料、MOX燃料、燃焼度、冷却期間等)によって、使用済み核燃料及びHALWに含まれるMA及びLnの量及び比率は異なる。
【0014】
HALWは、例えば、使用済み核燃料の再処理で生成する。使用済み核燃料の再処理において、原子炉から取り出された使用済み核燃料は、例えば、せん断、溶解、清澄、計量・調整、抽出・分離、精製、脱硝を経て、U及びPuを含む粉末製品とされる。抽出・分離において、使用済み核燃料の溶液からU及びPuが分離される。抽出・分離は、例えば、ピューレックス(PUREX:Plutonium Uranium Redox EXtraction)法により行われる。ピューレックス法では、使用済み核燃料の硝酸溶液と、トリブチルリン酸(TBP)と、ドデカン等の有機溶媒とを接触混合する。これにより、硝酸溶液中のUやPuがTBPと錯体を形成して有機溶媒側へ移動する。一方、FP、MA、Lnは硝酸溶液(廃液)側に残る。
【0015】
使用済み核燃料は、再処理において中間貯蔵されたものであってもよい。
ステップS1-3によって得る燃料がブランケット燃料である場合には、使用済み核燃料が、再処理において中間貯蔵された使用済み核燃料であることが好ましい。
原子炉から取り出された直後の使用済み燃料のMAには、高発熱性の核種(Cm243、Cm244等)が含まれている。このようなMAを用いてブランケット燃料を製造すると、発熱量が高くなりすぎるおそれがあるので、従来は、MA精製の際に高発熱性の核種を分離していた。
再処理において中間貯蔵された使用済み核燃料においては、中間貯蔵によって高発熱性の核種の崩壊熱が低減されているので、HALWからのMA分離後、高発熱性の核種の分離処理を行わずに、ブランケット燃料製造に供することができる。
再処理において、使用済み核燃料の中間貯蔵の期間は、例えば50~60年程度である。
なお、ステップS1-2において高発熱性の核種を分離する場合や、後述する第三実施形態のように、燃料製造の前に放射性組成物を保管するステップを行う場合には、使用済み核燃料は中間貯蔵されたものでなくてもよい。
ステップS1-3によって得る燃料が炉心燃料である場合には、高発熱性の核種が含まれていても問題はない。
【0016】
(ステップS1-1:MA分離)
分離処理は、公知の方法により実施できる。
分離処理としては、例えば、HALWからMAをLnとともに溶媒抽出法により抽出する処理(以下、MA抽出処理とも記す。)を含む処理、又はHALWのMA及びLnを吸着剤に吸着させ、前記吸着剤に吸着したMA及びLnを溶離させる処理(以下、MA吸着-溶離処理とも記す。)を含む処理が挙げられる。
分離処理が抽出処理を含む場合、抽出処理の後に、抽出処理により得られた抽出液からMA及びLnを逆抽出する処理(以下、MA逆抽出処理とも記す。)を更に含んでいてもよい。
【0017】
MA抽出処理では、例えば、HALWと、抽出剤を含む有機溶媒溶液(抽出剤溶液)とを接触させる。HALWと抽出剤溶液とを接触させると、MAやLnが抽出剤溶液側に移行する。
【0018】
抽出剤としては、例えば、MA及びLnと錯体を形成する錯化剤が挙げられる。かかる錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤に比べて安価であることから好ましい。錯化剤の具体例としては、n-オクチル(フェニル)-N,N’-ジイソブチルカルバモイルメチルフォスフィンオキシド-トリブチルリン酸混合物(CMPO-TBP混合物)、ジイソデシルリン酸、6,6’-ビス(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1,2,4-ベンゾトリアジン-3-イル)-2,2’-ビピリジン(BTBP)、N,N’-ジブチル-N,N’-ジメチルテトラデシルマロナミド(DMDBTDMA)、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
有機溶媒は、使用する抽出剤に応じて適宜選定できる。有機溶媒は、再利用可能であること、安価であること、放射線劣化に耐性があることが望ましい。有機溶媒の具体例としては、例えばn-ドデカンが挙げられる。有機溶媒は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
MA抽出処理で得た抽出液はそのまま第1の放射性組成物としてステップS1-2に供してもよく、更にMA逆抽出処理を行ってもよい。工程数や廃液量をより低減できる点では、MA抽出処理で得た抽出液を第1の放射性組成物としてステップS1-2に供することが好ましい。
MA抽出処理では、抽出剤の種類及び濃度、硝酸濃度、有機相と水相の体積比等によってDFLnを調整できる。
【0021】
MA逆抽出処理では、例えば、抽出液と、硝酸を含む水溶液(ストリッピング剤)とを接触させる。これにより、抽出液中のMAとLnが水溶液側に移行する。一方、抽出液中の有機溶媒は水溶液側に移行せずに抽出液側に残るので、再利用できる。
MA逆抽出処理で得た逆抽出液は、典型的にはそのまま、第1の放射性組成物としてステップS1-2に供する。
【0022】
MA吸着-溶離処理に用いる吸着剤は、MA及びLnを吸着可能であればよい。
HALWのMA及びLnを吸着剤に吸着させる方法としては、HALWと吸着剤とを接触させる方法が挙げられる。HALWと吸着剤とを接触させる方法としては、カラム式、バッチ式等が挙げられる。
吸着剤に吸着したMA及びLnは、吸着剤と溶離液とを接触させることにより溶離させることができる。
MA吸着-溶離処理で得られた溶離液、つまり吸着剤と接触させた後の溶離液は、MA及びLnを含む。典型的には、この溶離液をそのまま第1の放射性組成物としてステップS1-2に供する。
MA吸着-溶離処理では、吸着剤の種類、温度、圧力、固液比等によってDFLnを調整できる。
【0023】
ステップS1-1によって得られる第1の放射性組成物において、DFLnは、特に限定されず、1であってもよく、1を超えていてもよい。
第1の放射性組成物におけるDFLnとしては、廃液量の抑制の点から、1以上13未満が好ましい。
【0024】
(ステップS1-2:MA精製)
MA精製では、ステップS1-1で得た第1の放射性組成物中のMAとLnの一部とを分離する。必要に応じて、MAから、高発熱性のMAを分離する。
MA精製は、公知の方法により実施できる。
MA精製としては、例えば、COMPO、TODGA等の抽出剤を利用した抽出クロマトグラフィ法が挙げられる。
【0025】
ステップS1-2によって得られる第2の放射性組成物は、MA及びLnを含む。また、典型的には、第1の放射性組成物よりもLn量が低減されているので、第2の放射性組成物におけるDFLnは、第1の放射性組成物におけるDFLnよりも大きい。
第2の放射性組成物におけるDFLnは、廃液量の抑制の点から、100未満であり、20未満が好ましく、1未満であってもよい。
【0026】
(ステップS1-3:燃料製造)
燃料の製造は、燃料の種類に応じて、公知の方法により実施できる。
燃料としては、例えば、炉心燃料、ブランケット燃料が挙げられる。炉心燃料は、典型的にはMOX燃料であり、U及びPuの混合酸化物を含む。ブランケット燃料は、典型的には劣化Uを含む。
燃料が炉心燃料である場合、例えば、U、Pu及び第2の放射性組成物を混合し、混合酸化物を得、必要に応じて、ペレット状等の任意の形状に成形する。燃料がブランケット燃料である場合、例えば、劣化U及び第2の放射性組成物を混合し、必要に応じて、ペレット状等の任意の形状に成形する。
【0027】
第2の放射性組成物がMA及びLnを含むので、ステップS1-3によって得られる燃料もMA及びLnを含む。燃料中のMAとLnとの質量比は、第2の放射性組成物中のMAとLnとの質量比と同様である。
【0028】
ステップS1-3によって得られる燃料中のLnの含有量は、燃料の種類に応じて設定される。例えば燃料が炉心燃料である場合には、Lnの含有量は、装荷する炉心燃料の全量に対し、1~13質量%が好ましい。燃料がブランケット燃料である場合には、Lnの含有量は、装荷するブランケット燃料全量に対して31~33質量%が好ましい。Lnの含有量が前記上限値以下であれば、MAの核変換を良好に行うことができる。
【0029】
ステップS1-3によって得られる燃料が炉心燃料である場合、炉心燃料の組成としては、例えば、以下の組成が挙げられる。各成分の割合は、装荷する炉心燃料の全重量に対する割合である。U酸化物、Pu酸化物、MA酸化物及びLn酸化物の合計は100質量%を超えない。
U酸化物:64~65質量%、
Pu酸化物:29~30質量%、
MA酸化物:3.2~4.5質量%、
Ln酸化物:0.5~3.4質量%。
ここで、高速炉の炉心燃料には「内側炉心燃料」と「外側炉心燃料」がある。「装荷する炉心燃料の全量」は、これら全ての炉心燃料の合計量である。
炉心燃料は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0030】
ステップS1-3によって得られる燃料がブランケット燃料である場合、ブランケット燃料の組成としては、例えば、以下の組成が挙げられる。各成分の割合は、装荷するブランケット燃料の全量に対する割合である。
劣化U:65質量%、
MA:3.0質量%、
Ln:32質量%。
ここで、高速炉のブランケット燃料には「軸ブランケット燃料」(例えば、後述する上部ブランケット燃料45、下部ブランケット燃料46)と「径方向ブランケット燃料」がある。「装荷するブランケット燃料の全量」は、これら全てのブランケット燃料の合計量である。
ブランケット燃料は、必要に応じて、他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0031】
(ステップS1-4:MA核変換)
ステップS1-3によって得た燃料を高速炉に装荷し、燃焼させることで、MAの核変換を行うことができる。
高速炉は、公知の高速炉であってよい。
【0032】
図2を参照して高速炉の構成の一例について説明する。同図に示すように、この例の高速炉100は、炉心1と、原子炉容器2と、ガードベッセル3と、冷却材入口配管4と、冷却材出口配管5と、炉心上部機構7と、固定プラグ8と、を備えている。
【0033】
炉心1は、核分裂性物質を含む熱発生源である。炉心1の詳細な構成については後述する。原子炉容器2は、炉心1を収容する容器である。原子炉容器2は、底面を有する筒状をなしている。炉心1は、原子炉容器2内の下部に、炉内構造物12を介して固定されている。原子炉容器2の上部の開口は、固定プラグ8によって覆われている。固定プラグ8は、原子炉建屋の構造物(原子炉容器ペデスタル6)によって支持されている。
【0034】
ガードベッセル3は、原子炉容器2を外側から覆っている。つまり、原子炉容器2とガードベッセル3は二重壁構造を形成している。これにより、原子炉容器2から冷却材が漏洩した場合であっても、当該冷却材はガードベッセル3によって保持され、外部への漏洩が抑制される。
【0035】
冷却材入口配管4は、外部から導かれた冷却材(一次冷却材)を原子炉容器2内に導く。冷却材としては、例えば液体金属ナトリウムが挙げられる。冷却材入口配管4の端部は、原子炉容器2内における炉心1の下方に位置している。これにより、原子炉容器2内は冷却材によって満たされた状態となっている。冷却材出口配管5は、原子炉容器2内の冷却材を外部に排出する。冷却材出口配管5の端部は、原子炉容器2内における炉心1の上方に位置している。
【0036】
炉心上部機構7は、制御棒駆動機構9と、回転プラグ10と、回転プラグ駆動装置11と、を有している。制御棒駆動機構9は、後述する炉心1内に核分裂反応の進行を制御するための制御棒を挿入・引抜させるための装置である。制御棒駆動機構9は、制御棒を上下方向に進退動させる。回転プラグ10は、炉心1内の核燃料(後述する炉心燃料集合体30)を交換する機器を位置決めするための装置である。回転プラグ10は、回転プラグ駆動装置11によって駆動される。
【0037】
次に、図3を参照して炉心1の構成について説明する。同図に示すように、炉心1は、それぞれ六角形の断面形状を有する部材の集合体であり、全体として六角形状をなすように隙間なく配列されている。炉心1は、中性子遮蔽体21と、径方向ブランケット部22と、制御棒23と、中性子源24と、外側炉心部25と、内側炉心部26と、を有している。ただし、中性子源24は配列されない場合もある。
【0038】
中性子遮蔽体21は、炉心1における最も外周側に配置されている。複数の中性子遮蔽体21が六角形の環状をなすように配列されている。
径方向ブランケット部22は、中性子遮蔽体21の内側に設けられている。複数の径方向ブランケット部22が六角形の環状をなすように配列されている。径方向ブランケット部22は、ブランケット燃料集合体を複数配列することによって形成されている。
外側炉心部25は、径方向ブランケット部22の内側に設けられている。外側炉心部25のさらに内側に内側炉心部26が設けられている。内側炉心部26内の一部の領域には複数の制御棒23が挿入可能とされている。外側炉心部25及び内側炉心部26は、後述する炉心燃料集合体30を複数配列することによって形成されている。
【0039】
外側炉心部25及び内側炉心部26は、それら自身から発生した中性子あるいは中性子源24から発生した中性子をトリガーとして、核分裂物質を核分裂させることによって熱を発生させる。制御棒23は、この核分裂反応の進行を制御するために挿入量が調節される。
径方向ブランケット部22では、外側炉心部25及び内側炉心部26に比べて、高速核分裂反応が減少した状態で反応が進行する。また、径方向ブランケット部22では、外側炉心部25及び内側炉心部26に比べて、核分裂反応によって生じたプルトニウムの生成量が大きい。
中性子遮蔽体21は、中性子を遮蔽し、外側への漏洩を抑止するために設けられている。
【0040】
続いて、図4を参照して、炉心燃料集合体30の構成について説明する。同図に示すように、炉心燃料集合体30は、ラッパ管31と、エントランスノズル32と、ハンドリングヘッド33と、複数の炉心燃料要素40と、を有している。
【0041】
ラッパ管31は、上下方向に延びる軸線Acを中心とする筒状をなしている。また、ラッパ管31は、軸線Ac方向から見て六角形の断面形状を有している。ラッパ管31の下部の開口は、エントランスノズル32によって閉塞されている。エントランスノズル32の内部には、冷却材をラッパ管31の内部に導くための流路(図示略)が形成されている。エントランスノズル32には、この流路32Fと外部とを連通させる開口部が形成されている。ラッパ管31の上部の開口には、ハンドリングヘッド33が取り付けられている。ハンドリングヘッド33は、炉心燃料集合体30を搬送する際に装置によって把持される部分である。
【0042】
ラッパ管31の内部であって、エントランスノズル32の直上には、複数の炉心燃料要素40が軸線Acに直交する方向に間隔をあけて配列されている。
炉心燃料要素40の周囲及び上方の空間には、エントランスノズル32の開口部から導かれた冷却材が流通する。
【0043】
続いて、図5を参照して、炉心燃料要素40の構成について説明する。同図に示すように、炉心燃料要素40は、上下方向に延びる筒状の被覆管41と、この被覆管41の内部に収容されているプレナムスプリング43、炉心燃料44、上部ブランケット燃料45及び下部ブランケット燃料46と、被覆管41の両端部に設けられた上部端栓48及び下部端栓49と、を有している。
【0044】
炉心燃料44、上部ブランケット燃料45及び下部ブランケット燃料46はそれぞれ、円柱型のペレット状に成形されている。複数の下部ブランケット燃料46、複数の炉心燃料44、複数の上部ブランケット燃料45がこの順に、被覆管41の下方から積み重なるようにして充填されている。最も上方の上部ブランケット燃料45は、プレナムスプリング43によって下方に向かって押圧されている。
【0045】
径方向ブランケット部22を構成するブランケット燃料集合体は、炉心燃料要素40の代わりにブランケット燃料要素を備える以外は、炉心燃料集合体と同様である。
ブランケット燃料要素は、炉心燃料44、上部ブランケット燃料45及び下部ブランケット燃料46の代わりにブランケット燃料を備える以外は、炉心燃料要素40と同様である。
【0046】
ステップS1-3によって得た燃料が炉心燃料である場合、この燃料は、外側炉心部25の炉心燃料44に用いてもよく、内側炉心部26の炉心燃料44に用いてもよく、それらの両方に用いてもよいが、内側炉心部26の炉心燃料44に用いることが好ましい。
一般に、外側炉心部25の炉心燃料44と、内側炉心部26の炉心燃料44とは、組成が異なる。例えば、外側炉心部25の炉心燃料44の方が、内側炉心部26の炉心燃料44よりも、Pu富化度が高い傾向がある。
従来、このように組成の異なる炉心燃料44を共用ラインで製造する場合は、外側炉心部25用のPu富化度が高い燃料が内側炉心部26用のPu富化度が低い燃料が混入しないように、共用ライン内に残留している燃料を除去する清掃作業の必要があり、清掃作業の負担が大きかった。
これに対し、ステップS1-3によって得た燃料を内側炉心部26の炉心燃料44に用いる場合は、燃料に含有するLn量を調整することで、外側炉心部25と内側炉心部26のPu富化度の調整が可能である。これにより、Lnを含有させる前の燃料は同一のPu富化度の燃料を使用することができ、燃料製造時の共用ラインの清掃作業が容易になる。
【0047】
ステップS1-3によって得た燃料がブランケット燃料である場合、この燃料は、炉心燃料要素40に上部ブランケット燃料45又は下部ブランケット燃料46として装荷してもよく、ブランケット燃料要素に装荷してもよい。MA核変換の点では、ブランケット燃料要素に装荷することが好ましい。
【0048】
(作用効果)
上記構成の方法では、燃料の製造に用いる第2の放射性組成物のDFLnが1超100未満であるので、第2の放射性組成物を得る際のMA精製の工程数を少なく、例えば3回以下程度に抑えることができる。そのため、MA精製による廃液量及び設備コストを抑制できる。
【0049】
<第二実施形態>
図6に示すように、本開示の第二実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法は、
使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液であるHALWからMAをLnとともに、Lnの除染係数が1以上100未満となるように分離する処理(MA分離)を行うことで、MA及びLnを含む放射性組成物を得るステップS2-1と、
ステップS2-1によって得た放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップS2-2と、
ステップS2-2によって得た燃料を高速炉に装荷し、MAの核変換を行うステップS2-3と、を有する。
ステップS2-1によってMA及びLnを分離した廃液(FP含有)は、例えば、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
【0050】
(ステップS2-1:MA分離)
ステップS2-1は、分離処理によって得られる放射性組成物におけるDFLnが100未満となるように分離処理を行う以外は、ステップS1-1と同様である。
【0051】
ステップS2-1によって得られる放射性組成物は、MA及びLnを含む。
放射性組成物におけるDFLnは、廃液量の抑制の点から、100未満であり、20未満がより好ましく、1未満であってもよい。
【0052】
(ステップS2-2:燃料製造)
ステップS2-2は、ステップS1-3と同様である。
【0053】
(ステップS2-3:MA核変換)
ステップS2-3は、ステップS1-4と同様である。
【0054】
(作用効果)
上記構成の方法では、燃料の製造に用いる放射性組成物のDFLnが1超100未満であり、また、MA分離の際にDFLnを目的の値にしているので、MA精製を省略できる。そのため、MA精製による廃液量及び設備コストを抑制できる。
【0055】
<第三実施形態>
図7に示すように、本開示の第三実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法は、
使用済み核燃料の溶液からU及びPuを分離した廃液であるHALWからMAをLnとともに、Lnの除染係数が1以上100未満となるように分離する処理(MA分離)を行うことで、MA及びLnを含む放射性組成物を得るステップS3-1と、
ステップS3-1によって得た放射性組成物を保管するステップS3-2と、
ステップS3-2によって保管した後の放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップS3-3と、
ステップS3-3によって得た燃料を高速炉に装荷し、MAの核変換を行うステップS3-4と、を有する。
ステップS3-1によってMA及びLnを分離した廃液(FP含有)は、例えば、ガラス固化し、保管した後、地層処分する。
【0056】
(ステップS3-1:MA分離)
ステップS3-1は、ステップS2-1と同様である。
【0057】
(ステップS3-2:保管)
ステップS3-2では、放射性組成物を一時的に保管する。
放射性組成物は、液状のまま保管してもよく、固化処理して固化体の形態で保管してもよい。保管の負荷が小さい点では、固化体の形態で保管することが好ましい。
【0058】
固化処理としては、例えば、分解処理、水熱処理、ガラス固化処理が挙げられる。
ガラス固化処理を行う場合、ガラス固化処理の前に、放射性組成物を濃縮する濃縮処理を行うことが好ましい。
【0059】
放射性組成物が、抽出処理により得られた抽出液である場合、固化処理としては、分解処理が好ましい。抽出液に対して分解処理を行うことにより、抽出液の有機溶媒が除去されるとともにMAが酸化される。これにより、MA酸化物を含む固化体が得られる。
分解処理としては、例えば、蒸留、熱分解、焼却が挙げられる。蒸留は、回分式、連続式(棚段塔や充填塔)等の公知の蒸発方式を用いて実施できる。
【0060】
放射性組成物が、逆抽出処理で得られた逆抽出液、又は吸着-溶離処理で得られた溶離液である場合、固化処理としては、水熱処理、又は液状物を濃縮し、得られた濃縮液をガラス固化する処理(濃縮-ガラス固化処理)が好ましい。
放射性組成物を水熱処理することにより、放射性組成物に含まれるMAが酸化され、MA酸化物を含む固化体が析出する。固化体は固液分離により液状媒体(水)と分離される。これにより、MA酸化物を含む固化体が得られる。
放射性組成物の濃縮、濃縮液のガラス固化はそれぞれ常法により実施できる。
【0061】
必要に応じて、得られた固化体を保管する前に、固化体に対し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行ってもよい。
固化体には、抽出剤、抽出剤の放射線分解物等の有機物が含まれることがある。固化体に有機物が含まれていると、保管時にガスが発生し、放射性物質の閉じ込め機能を損なう、不具合が発生するおそれがある。固化体に対し、炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行うことで、このような不具合の発生を抑制できる。
安定化処理としては、例えば、か焼、焼結が挙げられる。
【0062】
固化体の保管方法としては、放射性廃棄物の乾式保管方法として公知の方法を利用でき、例えば、固化体を複数のキャニスタに格納し、これら複数のキャニスタをキャスクに収納し、保管施設で保管する方法が挙げられる。
【0063】
放射性組成物を保管する期間は、適宜設定できる。
Cm等の高発熱性のMAは、炉心燃料製造に適さないため、放射性組成物が高発熱性のMAを含む場合、ステップS3-2では、放射性組成物又はその固化体を、放射性組成物又はその固化体に含まれる高発熱性のMAが十分に減衰するまで保管することが好ましい。これにより、保管後の放射性組成物又はその固化体を、高発熱性のMAの分離処理を行うことなく、炉心燃料製造に用いることができる。なお、HALWに含まれるCmは主に、半減期が約18年と比較的短い244Cmである。
【0064】
(ステップS3-3:燃料製造)
ステップS3-3は、ステップS2-2と同様である。
ただし、ステップS3-2において、放射性組成物を固化体とした場合は、固化体を溶解し、その溶液を用いて燃料を製造する。
固化体を溶解するには、例えば、MA酸化物を含む固化体であれば、硝酸水溶液を加えればよい。固化体がガラス固化体である場合は、固化体を酸溶液等で溶解した後、得られた溶液からガラス成分を分離する。
【0065】
(ステップS3-4:MA核変換)
ステップS3-4は、ステップS2-3と同様である。
【0066】
(作用効果)
上記構成の方法では、燃料の製造に用いる放射性組成物のDFLnが1超100未満であり、また、MA分離の際にDFLnを目的の値にしているので、MA精製を省略できる。そのため、MA精製による廃液量及び設備コストを抑制できる。
また、放射性組成物を、燃料製造の前に保管するので、高発熱性のMAの分離処理を行うことなく、炉心燃料製造に用いることができる。
【0067】
以上、本開示の実施形態について説明したが、上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0068】
<付記>
各実施形態に記載のHALWの処分負荷低減方法は、例えば以下のように把握される。
(1)上記第一実施形態~第三実施形態に係るHALWの処分負荷低減方法は、HALWからMA及びLnを、DFLnが1以上100未満となるように回収し、MA及びLnを含む放射性組成物を得るステップ(S1-1及びS1-2、S2-1、S3-1)と、前記放射性組成物を用いて、高速炉の燃料を製造するステップ(S1-3、S2-2、S3-3)と、前記燃料を高速炉に装荷し、MAの核変換を行うステップと(S1-4、S2-3、S3-4)、を有する。
【0069】
従来、高速炉でMAの核変換を行う場合は、DFLn=100以上の高い精製度が必要とされていた。このような高い精製度とするためのMA精製は、廃液量及び設備コストの増加をもたらす。
本発明者らの検討によれば、DFLnが100未満の放射性組成物を用いて製造した燃料であっても、問題無くMAの核変換を行うことができることがわかった。そこで、上記実施形態に係る方法では、DFLnを100未満とした。DFLnが100未満であれば、MA精製を行わないことや、MA精製を行う場合でも工程数を少なく抑えることができる。そのため、MA精製による廃液量及び設備コストを抑制できる。
【0070】
(2)上記第一実施形態~第三実施形態に係る方法においては、燃料が炉心燃料であることが好ましい。この場合、Lnの除染係数は1以上20未満であることが好ましい。
上記構成によれば、炉心燃料にLnを同伴した状態で回収MAを核変換できる。
【0071】
(3)上記第一実施形態~第三実施形態に係る方法においては、燃料がブランケット燃料であることも好ましい。
上記構成によれば、ブランケット燃料にLnを同伴した状態で回収MAを核変換できる。
【0072】
(4)上記第一実施形態~第三実施形態に係る方法において、燃料がブランケット燃料である場合には、上記第三実施形態に係る方法のように、前記燃料を製造するステップ(S3-3)の前に、前記放射性組成物を保管するステップ(S3-2)を有することが好ましい。
使用済み燃料のMAには、高発熱性の核種(Cm243、Cm244等)が含まれている。このような核種を含むMAを用いてブランケット燃料を製造すると、発熱量が高くなりすぎるおそれがあるので、従来は、MA精製の際に高発熱性の核種を分離していた。
上記構成によれば、高発熱性の核種の崩壊熱を低減できるので、HALWからのMA分離後、高発熱性の核種の分離処理を行わずにMA燃料製造に供することができる。
【0073】
(5)上記第一実施形態~第三実施形態に係る方法において、燃料がブランケット燃料である場合には、前記使用済み核燃料が、再処理において中間貯蔵された使用済み核燃料であることも好ましい。
使用済み燃料のMAには、高発熱性の核種(Cm243、Cm244等)が含まれている。このようなMAを用いてブランケット燃料を製造すると、発熱量が高くなりすぎるおそれがあるので、従来は、MA精製の際に高発熱性の核種を分離していた。
上記構成によれば、中間貯蔵によって高発熱性の核種の崩壊熱が低減されているので、HALWからのMA分離後、高発熱性の核種の分離処理を行わずに、ブランケット燃料製造に供することができる。
【0074】
各実施形態に記載の高速炉の燃料は、例えば以下のように把握される。
(6)第一実施形態~第二実施形態に係る高速炉の燃料は、MA及びLnを含む。
【0075】
従来、高速炉でMAの核変換を行う場合は、MA燃料にLnが混入しないように高い精製度が必要とされていた。
上記実施形態に係る燃料では、Lnを含むので、燃料を製造する過程でのLnの除染係数を100未満にでき、MA精製による廃液量及び設備コストを抑制できる。
【0076】
(7)上記第一実施形態~第二実施形態に係る燃料は、炉心燃料であることが好ましい。この場合、Lnの含有量は、装荷する炉心燃料全量に対して1~13質量%であることが好ましい。
上記構成によれば、炉心燃料にLnを同伴した状態で回収MAを核変換できる。
【0077】
(8)上記第一実施形態~第二実施形態に係る燃料は、ブランケット燃料であることが好ましい。この場合、Lnの含有量は、装荷するブランケット燃料全量に対して31~33質量%であることが好ましい。
上記構成によれば、ブランケット燃料にLnを同伴した状態で回収MAを核変換できる。
【符号の説明】
【0078】
100 高速炉
1 炉心
2 原子炉容器
3 ガードベッセル
4 冷却材入口配管
5 冷却材出口配管
6 原子炉容器ペデスタル
7 炉心上部機構
8 固定プラグ
9 制御棒駆動機構
10 回転プラグ
11 回転プラグ駆動装置
12 炉内構造物
21 中性子遮蔽体
22 径方向ブランケット部
23 制御棒
24 中性子源
25 外側炉心部
26 内側炉心部
30 炉心燃料集合体
31 ラッパ管
32 エントランスノズル
33 ハンドリングヘッド
40 炉心燃料要素
41 被覆管
43 プレナムスプリング
44 炉心燃料
45 上部ブランケット燃料
46 下部ブランケット燃料
48 上部端栓
49 下部端栓
Ac 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8