IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社フジクラの特許一覧

<>
  • 特開-デジタル移相器 図1
  • 特開-デジタル移相器 図2
  • 特開-デジタル移相器 図3
  • 特開-デジタル移相器 図4
  • 特開-デジタル移相器 図5
  • 特開-デジタル移相器 図6
  • 特開-デジタル移相器 図7
  • 特開-デジタル移相器 図8
  • 特開-デジタル移相器 図9
  • 特開-デジタル移相器 図10
  • 特開-デジタル移相器 図11
  • 特開-デジタル移相器 図12
  • 特開-デジタル移相器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119385
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】デジタル移相器
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/185 20060101AFI20230821BHJP
   H01P 5/04 20060101ALI20230821BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
H01P1/185
H01P5/04 603D
H01P3/08 200
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022266
(22)【出願日】2022-02-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】上道 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 陽
【テーマコード(参考)】
5J012
5J014
【Fターム(参考)】
5J012GA13
5J012HA03
5J014CA43
5J014CA54
(57)【要約】
【課題】外側線路に発生する磁界が弱め合う部分を少なくすることができる小型のデジタル移相器を提供する。
【解決手段】縦続接続された複数のデジタル移相回路と、2つのデジタル移相回路の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、デジタル移相回路は、信号線路、信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、内側線路及び外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、内側線路の各他端と第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチを少なくとも有し、各々が、内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、縦続接続された複数のデジタル移相回路は、接続部を介して渦巻き状に配置されているデジタル移相器である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦続接続された複数のデジタル移相回路と、
2つの前記デジタル移相回路の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、
を備え、
前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記内側線路及び前記外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチを少なくとも有し、各々が、前記内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、
縦続接続された複数の前記デジタル移相回路は、前記接続部を介して渦巻き状に配置されている、
デジタル移相器。
【請求項2】
渦巻き状に配置された複数の前記デジタル移相回路のうち、最内周に位置する前記デジタル移相回路である終端デジタル移相回路の前記信号線路に接続され、前記信号線路を流れる高周波信号を伝送する伝送線路を更に備え、
前記伝送線路は、前記信号線路が形成されている層とは異なる層に形成されている、
請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項3】
渦巻き状に配置された複数の前記デジタル移相回路のうち、最内周に位置する前記デジタル移相回路である終端デジタル移相回路の前記信号線路に接続され、前記信号線路を流れる高周波信号を伝送する伝送線路を更に備え、
前記伝送線路は、前記接続部の上方又は下方に形成されている、
請求項1に記載のデジタル移相器。
【請求項4】
前記伝送線路の上方及び下方の少なくとも一方に配置されるグランド層を備え、
前記グランド層は、前記内側線路及び前記外側線路の少なくとも一方とビアホールを介して接続されている、
請求項2又は3に記載のデジタル移相器。
【請求項5】
前記終端デジタル移相回路の前記内側線路に接続され、前記伝送線路に沿って延在するグランド線路を備える、請求項4に記載のデジタル移相器。
【請求項6】
前記グランド層は、少なくとも前記グランド線路に対してビアホールを介して接続されている、請求項5に記載のデジタル移相器。
【請求項7】
前記接続部は、90°に折れ曲がる構造を有している、
請求項1から6のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項8】
前記接続部は、
2つの前記デジタル移相回路のうち、一方の前記デジタル移相回路の前記信号線路と、他方の前記デジタル移相回路の前記信号線路とを接続する第1の接続線路と、
前記一方の前記デジタル移相回路の前記内側線路と、前記他方の前記デジタル移相回路の前記内側線路とを接続する第2の接続線路と、
前記第1の接続線路の上方及び下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、
を備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載のデジタル移相器。
【請求項9】
前記一方の前記デジタル移相回路の前記外側線路と、前記他方の前記デジタル移相回路の前記外側線路とを接続する第3の接続線路を更に備える、請求項8に記載のデジタル移相器。
【請求項10】
前記第2の接続線路と前記グランド層とは、ビアホールで接続されている、請求項8又は9に記載のデジタル移相器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記非特許文献1には、マイクロ波、準ミリ波又はミリ波などの高周波信号を対象とするデジタル制御型の移相回路(デジタル移相回路)が開示されている。このデジタル移相回路は、実際には多数が縦続接続された状態で半導体基板上に実装される。すなわち、デジタル移相回路は、実際のデジタル移相器の構成における単位ユニットであり、数十個が縦続接続されることによって所望の機能を発揮する。
【0003】
デジタル移相回路は、信号線路、信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、内側線路及び外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、内側線路の各他端と第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチを少なくとも有する。
【0004】
デジタル移相回路は、信号線路における高周波信号の伝送に起因して一対の内側線路又は一対の外側線路に流れるリターン電流を一対の電子スイッチの開/閉に応じて切り替えることにより、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替える。すなわち、デジタル移相回路は、一対の内側線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが低遅延モードとなり、一対の外側線路にリターン電流が流れる場合に動作モードが高遅延モードとなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A Ka-band Digitally-Controlled Phase Shifter with sub-degree Phase Precision (2016,IEEE,RFIC)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
デジタル移相器の構成が、上記のデジタル移相回路が一列に繋げられた構成である場合にはデジタル移相器の長さが長くなる。デジタル移相器の長さを短くするためには、デジタル移相器の構成を、折れ曲がりの構造を有するベンド型の線路などの接続部を用いて折り曲げた構成にすることが考えられる。
【0007】
デジタル移相器の構成を折り曲げた構成にした場合には、その折り曲げ方によっては、対向配置されるデジタル移相回路の外側線路を流れるリターン電流が互いに逆向きになる部分が多くなる場合がある。このような部分では、対向配置されるデジタル移相回路の外側線路の距離が短すぎると、外側線路に発生する磁界を互いに弱め合ってしまう。このため、デジタル移相器の移相動作の観点から、デジタル移相器は、外側線路に発生する磁界が弱め合う部分がなるべく少なくなるように折り曲げた構成であることが望ましい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、外側線路に発生する磁界が弱め合う部分を少なくすることができる小型のデジタル移相器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、縦続接続された複数のデジタル移相回路と、2つの前記デジタル移相回路の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部と、を備え、前記デジタル移相回路は、信号線路、前記信号線路の両側に設けられた一対の内側線路、前記内側線路の外側に設けられた一対の外側線路、前記内側線路及び前記外側線路の各一端に接続された第1の接地導体、前記外側線路の各他端に接続された第2の接地導体、前記内側線路の各他端と前記第2の接地導体との間に各々設けられる一対の電子スイッチを少なくとも有し、各々が、前記内側線路にリターン電流が流れる低遅延モード又は前記外側線路にリターン電流が流れる高遅延モードに設定される回路であり、縦続接続された複数の前記デジタル移相回路は、前記接続部を介して渦巻き状に配置されている、デジタル移相器である。
【0010】
このような構成により、外側線路に発生する磁界が弱め合う部分を少なくすることができる小型のデジタル移相器を提供する。
【0011】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、渦巻き状に配置された複数の前記デジタル移相回路のうち、最内周に位置する前記デジタル移相回路である終端デジタル移相回路の前記信号線路に接続され、前記信号線路を流れる高周波信号を伝送する伝送線路を更に備え、前記伝送線路は、前記信号線路が形成されている層とは異なる層に形成されてもよい。
【0012】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、渦巻き状に配置された複数の前記デジタル移相回路のうち、最内周に位置する前記デジタル移相回路である終端デジタル移相回路の前記信号線路に接続され、前記信号線路を流れる高周波信号を伝送する伝送線路を更に備え、前記伝送線路は、前記接続部の上方又は下方に形成されてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記伝送線路の上方及び下方の少なくとも一方に配置されるグランド層を備え、前記グランド層は、前記内側線路及び前記外側線路の少なくとも一方とビアホールを介して接続されてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記終端デジタル移相回路の前記内側線路に接続され、前記伝送線路に沿って延在するグランド線路を備えてもよい。
【0015】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記グランド層が、少なくとも前記グランド線路に対してビアホールを介して接続されてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記接続部が、90°に折れ曲がる構造を有してもよい。
【0017】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記接続部が、2つの前記デジタル移相回路のうち、一方の前記デジタル移相回路の前記信号線路と、他方の前記デジタル移相回路の前記信号線路とを接続する第1の接続線路と、前記一方の前記デジタル移相回路の前記内側線路と、前記他方の前記デジタル移相回路の前記内側線路とを接続する第2の接続線路と、前記第1の接続線路の上方及び下方の少なくとも一方に配置されるグランド層と、を備えてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記一方の前記デジタル移相回路の前記外側線路と、前記他方の前記デジタル移相回路の前記外側線路とを接続する第3の接続線路を更に備えてもよい。
【0019】
また、本発明の一態様によるデジタル移相器は、前記第2の接続線路と前記グランド層とは、ビアホールで接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、外側線路に発生する磁界が弱め合う部分を少なくすることができる小型のデジタル移相器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るデジタル移相器の概略構成図である。
図2】本実施形態に係るデジタル移相回路の斜視図である。
図3】本実施形態に係る高遅延モードを説明する図である。
図4】本実施形態に係る低遅延モードを説明する図である。
図5】本実施形態に係る接続部の平面図である。
図6】本実施形態に係る接続部の第1の断面図である。
図7】本実施形態に係る接続部の第2の断面図である。
図8】本実施形態に係る伝送部の第1の断面図である。
図9】本実施形態に係る伝送部の第2の断面図である。
図10】本実施形態に係る伝送部の第3の断面図である。
図11】本実施形態に係るデジタル移相回路の第1の変形例を示す図である。
図12】本実施形態に係るデジタル移相回路の第2の変形例を示す図である。
図13】本実施形態に係るデジタル移相回路の第3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係るデジタル移相器を、図面を用いて説明する。尚、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0023】
図1は、本実施形態に係るデジタル移相器100の構成例を示す図である。デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10、1つ以上の接続部20、及び伝送部30を備える。デジタル移相器100は、所定の周波数帯域の高周波の信号Sを、縦続接続された複数のデジタル移相回路10によって移相する。信号Sは、マイクロ波、 準ミリ波、又はミリ波などの周波数帯域を有する高周波信号である。
【0024】
以下に説明する「接続」とは、電気的な接続である。電気的な接続とは、電気信号が直接的又は間接的に伝達可能に接続されていることである。したがって、以下に説明する接続とは、直接的に接続するものだけを示すものではなく、導体などを介して間接的かつ電気的に接続することも含まれる。
【0025】
複数のデジタル移相回路10は、電気的に縦続接続されている。図1に示す例では、57個のデジタル移相回路10が縦続接続されているが、これに限定されず、2つ以上のデジタル移相回路10が縦続接続されていればよい。図1に示す例では、説明の便宜上、縦続接続されている57個のデジタル移相回路10を、信号Sが流れる順番に、デジタル移相回路10-1,10-2,…,10-57としている。ただし、信号Sが流れる方向は逆でもよい。尚、デジタル移相回路10の詳細については後述する。
【0026】
接続部20は、ベンド型の形状を有している。図1に示す例では、接続部20は、90°ベンドの形状を有している。ただし、接続部20は、90°ベンドに限定されない。デジタル移相器100は、複数のデジタル移相回路10がすべて一例に並んで配置される構造ではなく、1つ以上の接続部20によって途中で折り曲げられることで渦巻状の構造を有する。すなわち、縦続接続された複数のデジタル移相回路10は、接続部20を介して渦巻き状に配置されている。
【0027】
接続部20は、縦続接続されている複数のデジタル移相回路10において、折り曲げられる箇所に設置されるものである。接続部20は、その折り曲げられる箇所に設置され、2つのデジタル移相回路10である第1のデジタル移相回路と第2デジタル移相回路との間を接続する。図1に示す例では、デジタル移相器100は、8つの接続部20-1~20-8を備える。
【0028】
接続部20-1は、デジタル移相回路10-12(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-13(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。接続部20-2は、デジタル移相回路10-19(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-20(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。接続部20-3は、デジタル移相回路10-29(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-30(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。接続部20-4は、デジタル移相回路10-34(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-35(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。
【0029】
接続部20-5は、デジタル移相回路10-42(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-43(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。接続部20-6は、デジタル移相回路10-45(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-46(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。接続部20-7は、デジタル移相回路10-51(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-52(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。接続部20-8は、デジタル移相回路10-52(第1のデジタル移相回路)とデジタル移相回路10-53(第2のデジタル移相回路)との間を接続する。このように、複数のデジタル移相回路10-1~10-57は、接続部20-1~20-8を介して渦巻き状に配置されている。尚、接続部20の詳細については後述する。
【0030】
伝送部30は、渦巻き状に配置された複数のデジタル移相回路10-1~10-57のうち、最内周に位置する終端デジタル移相回路に接続される。図1に示す例では、終端デジタル移相回路は、デジタル移相回路10-57である。伝送部30は、終端デジタル移相回路の信号線路1を流れる信号Sを伝送する伝送線路を備える。伝送部30は、渦巻き状に配置された複数のデジタル移相回路10-1~10-57のうち、最外周の外まで延伸されている。
【0031】
図1に示す伝送部30は、デジタル移相回路10の信号線路1が形成されている層とは異なる層に形成されている。例えば、伝送部30は、デジタル移相回路10と衝突しないように、デジタル移相回路10の信号線路1が形成されている層の上の層又は下の層に形成されている。尚、伝送部30の詳細については後述する。
【0032】
以下に、本実施形態に係るデジタル移相回路10の構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るデジタル移相回路10の斜視図である。図2に示す通り、デジタル移相回路10は、信号線路1、2つの内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)、2つの外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)、2つの接地導体4(第1の接地導体4a及び第2の接地導体4b)、平行平板コンデンサ5、複数の接続導体6、4つの電子スイッチ7(第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7c及び第4の電子スイッチ7d)及びスイッチ制御部8を備える。
【0033】
信号線路1は、所定方向に延在する直線状の帯状導体である。すなわち、信号線路1は、一定幅W1、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。図2に示す例では、信号線路1には、手前側から奥側に向かって信号Sが流れる。
【0034】
尚、図2に示す前後方向をX軸方向とし、左右方向をY軸方向とし、上下方向(鉛直方向)をZ軸方向とする。また、+X方向は、X軸方向を手前側から奥側に向かう方向であり、-X方向は+X方向とは反対方向である。+Y方向は、Y軸方向を右に進む方向であり、-Y方向は+Y方向とは反対方向である。+Z方向は、Z軸方向を上方に進む方向であり、-Z方向は+Z方向とは反対方向である。
【0035】
第1の内側線路2aは、直線状の帯状導体である。すなわち、第1の内側線路2aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の内側線路2aは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第1の内側線路2aは、信号線路1と平行に設けられており、所定の距離だけ離間している。具体的には、第1の内側線路2aは、信号線路1の一方側に所定の距離だけ離間して配置されている。換言すれば、第1の内側線路2aは、信号線路1から+Y軸方向に所定の距離だけ離間して配置されている。
【0036】
第2の内側線路2bは、直線状の帯状導体である。すなわち、第2の内側線路2bは、第1の内側線路2aと同様に、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の内側線路2bは、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第2の内側線路2bは、信号線路1と平行に設けられており、所定の距離だけ離間している。具体的には、第2の内側線路2bは、信号線路1の他方側に所定の距離だけ離間して配置されている。換言すれば、第2の内側線路2bは、信号線路1から-Y軸方向に所定の距離だけ離間して配置されている。
【0037】
第1の外側線路3aは、信号線路1の一方側において、第1の内側線路2aよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。すなわち、第1の外側線路3aは、第1の内側線路2aよりも+Y方向に配置された直線状の帯状導体である。第1の外側線路3aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の外側線路3aは、信号線路1に対して第1の内側線路2aを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。第1の外側線路3aは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0038】
第2の外側線路3bは、信号線路1の他方側において、第2の内側線路2bよりも信号線路1から遠い位置に設けられる直線状の帯状導体である。すなわち、第2の外側線路3bは、第2の内側線路2bよりも-Y方向に配置された直線状の帯状導体である。第2の外側線路3bは、第1の外側線路3aと同様に、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の外側線路3bは、信号線路1に対して第2の内側線路2bを挟んだ状態で信号線路1から所定距離を隔てて平行に設けられている。第2の外側線路3bは、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bと同様に、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。
【0039】
第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bの各一端側に設けられる直線状の帯状導体である。第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bの各一端に電気的に接続されている。第1の接地導体4aは、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
【0040】
第1の接地導体4aは、同一方向に延在する第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bに直交するように設けられている。すなわち、第1の接地導体4aは、Y軸方向に延在するように配置されている。第1の接地導体4aは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bから所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0041】
図2に示す例では、第1の接地導体4aは、+Y方向における端部である一端が、第1の外側線路3aの右側縁部と略同一位置となるように設定されている。図2に示す例では、第1の接地導体4aは、-Y方向における端部である他端が、第2の外側線路3bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。
【0042】
第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bの各他端側に設けられる直線状の帯状導体である。第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aと同様に一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。
【0043】
第2の接地導体4bは、第1の接地導体4aに対して平行に配置されており、第1の接地導体4aと同様に、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bに直交するように設けられている。第2の接地導体4bは、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bから所定距離を隔てた下方に設けられている。
【0044】
第2の接地導体4bは、+Y方向における端部である一端が、第1の外側線路3aの右側縁部と略同一位置となるように設定されている。第2の接地導体4bは、-Y方向における端部である他端が、第2の外側線路3bの左側縁部と略同一位置となるように設定されている。図2に示す例では、第2の接地導体4bは、Y軸方向における位置が第1の接地導体4aと同一である。
【0045】
平行平板コンデンサ5は、信号線路1の他端及び第2の接地導体4bの間に設けられる。例えば、平行平板コンデンサ5は、上部電極が信号線路1に対して接続され、下部電極が第4の電子スイッチ7dに対して電気的に接続されている。例えば、平行平板コンデンサ5は、MIM(Metal Insulator Metal)構造の薄膜のコンデンサである。尚、デジタル移相回路10の静電容量値Cは、平行平板コンデンサ5の静電容量値Caを含む。また、平行平板コンデンサ5に替えて、櫛歯型コンデンサを用いてもよい。
【0046】
複数の接続導体6は、少なくとも接続導体6a~6fを含む。接続導体6aは、第1の内側線路2aの一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6aは、Z軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の内側線路2aの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0047】
接続導体6bは、第2の内側線路2bの一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6bは、接続導体6aと同様にZ軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の内側線路2bの下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0048】
接続導体6cは、第1の外側線路3aの一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6cは、Z軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の外側線路3aの一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0049】
接続導体6dは、第1の外側線路3aの他端と第2の接地導体4bとを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6dは、Z軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が第1の外側線路3aの他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0050】
接続導体6eは、第2の外側線路3bの一端と第1の接地導体4aとを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6eは、Z軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の外側線路3bの一端における下面に接続し、他端(下端)が第1の接地導体4aの上面に接続する。
【0051】
接続導体6fは、第2の外側線路3bの他端と第2の接地導体4bとを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6fは、Z軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が第2の外側線路3bの他端における下面に接続し、他端(下端)が第2の接地導体4bの上面に接続する。
【0052】
接続導体6gは、信号線路1の他端と平行平板コンデンサ5の上部電極とを電気的かつ機械的に接続する導体である。例えば、接続導体6gは、Z軸方向に延在する導体であり、一端(上端)が信号線路1の他端における下面に接続し、他端(下端)が平行平板コンデンサ5の上部電極に接続する。
【0053】
第1の電子スイッチ7aは、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。第1の電子スイッチ7aは、例えばMOS型FET(電界効果トランジスタ)であり、ドレイン端子が第1の内側線路2aの他端に電気的に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに電気的に接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に電気的に接続されている。
【0054】
第1の電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。閉状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通している状態である。開状態とは、ドレイン端子及びソース端子が導通しておらず、電気的な接続が遮断している状態である。第1の電子スイッチ7aは、スイッチ制御部8の制御によって、第1の内側線路2aの他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0055】
第2の電子スイッチ7bは、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。第2の電子スイッチ7bは、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が第2の内側線路2bの他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。例えば、第2の電子スイッチ7bのサイズは、第2の接地導体4bの幅以上である。
【0056】
第2の電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。第2の電子スイッチ7bは、スイッチ制御部8の制御によって、第2の内側線路2bの他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0057】
第3の電子スイッチ7cは、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間に接続される。第3の電子スイッチ7cは、例えばMOS型FETであり、ドレイン端子が信号線路1の他端に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。尚、図2に示す例では、第3の電子スイッチ7cは、信号線路1の他端側に設けられているが、これに限定されず、信号線路1の一端側に設けられてもよい。尚、第3の電子スイッチ7cは、必要がなければ使用しなくてもよい。
【0058】
第3の電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。第3の電子スイッチ7cは、スイッチ制御部8の制御によって、信号線路1の他端及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0059】
第4の電子スイッチ7dは、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとの間において、平行平板コンデンサ5に対して直列に接続される。第4の電子スイッチ7dは、例えばMOS型FETである。図2に示す例では、第4の電子スイッチ7dは、ドレイン端子が平行平板コンデンサ5の下部電極に接続され、ソース端子が第2の接地導体4bに接続され、ゲート端子がスイッチ制御部8に接続されている。
【0060】
第4の電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8からゲート端子に入力されるゲート信号に基づいて閉状態又は開状態に制御される。第4の電子スイッチ7dは、スイッチ制御部8の制御によって、平行平板コンデンサ5の下部電極及び第2の接地導体4bを電気的に接続した導通状態又はその電気的な接続を遮断した遮断状態にする。
【0061】
スイッチ制御部8は、複数の電子スイッチ7である第1の電子スイッチ7a、第2の電子スイッチ7b、第3の電子スイッチ7c及び第4の電子スイッチ7dを制御する制御回路である。例えば、スイッチ制御部8は、4つの出力ポートを備えている。スイッチ制御部8は、各出力ポートから個別のゲート信号を出力して複数の電子スイッチ7の各ゲート端子に供給することにより複数の電子スイッチ7のそれぞれを個別に開状態又は閉状態に制御する。
【0062】
図2ではデジタル移相回路10の機械的構造が解り易いようにデジタル移相回路10を斜視した模式図を示しているが、実際のデジタル移相回路10は、半導体製造技術を利用することにより、多層構造物として形成される。
【0063】
一例として、デジタル移相回路10は、信号線路1、第1の内側線路2a、第2の内側線路2b、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bが第1の導電層に形成されている。第1の接地導体4a及び第2の接地導体4bは、絶縁層を挟んで第1の導電層と対向する第2の導電層に形成されている。第1の導電層に形成された構成要素と第2の導電層に形成された構成要素とは、ビアホール(via hole)によって相互に接続される。複数の接続導体6は、絶縁層内に埋設されたビアホールに相当する。
【0064】
次に、本実施形態に係るデジタル移相回路10の動作について、図3及び図4を参照して説明する。デジタル移相回路10は、動作モードとして、高遅延モード及び低遅延モードを有する。デジタル移相回路10は、高遅延モード又は低遅延モードで動作する。
【0065】
(高遅延モード)
高遅延モードでは、信号Sに第1の位相差を発生させるモードである。高遅延モードでは、図3に示すように、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bが開状態に制御され、第4の電子スイッチ7dが閉状態に制御される。
【0066】
第1の電子スイッチ7aが開状態に制御されることにより、第1の内側線路2aの他端及び第2の接地導体4bの電気的な接続が遮断された状態となる。第2の電子スイッチ7bが開状態に制御されることにより、第2の内側線路2bの他端及び第2の接地導体4bの電気的な接続が遮断された状態となる。第4の電子スイッチ7dが閉状態に制御されることにより、信号線路1の他端は、平行平板コンデンサ5を介して第2の接地導体4bに接続された状態となる。
【0067】
信号線路1に入力端(他端)から出力端(一端)に向かって信号Sが伝搬すると、信号Sとは逆方向である一端から他端に向かってリターン電流R1が流れる。すなわち、リターン電流R1は、+X方向に流れる信号Sとは逆方向である-X方向に向かって流れる電流である。高遅延モードでは、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bが開状態であるため、リターン電流R1は、主として、図3に示すように、第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bを-X方向に流れる。
【0068】
高遅延モードでは、リターン電流R1が第1の外側線路3a及び第2の外側線路3bを流れるため、低遅延モードと比較して、インダクタンス値Lが高い。高遅延モードでは、低遅延モードよりも高い遅延量を得ることができる。また、第4の電子スイッチ7dが閉状態になることで、信号線路1の他端と第2の接地導体4bとが平行平板コンデンサ5で電気的に接続されるため、静電容量値Cも高い。よって、高遅延モードでは、低遅延モードよりもさらに高い遅延量を得ることができる。
【0069】
(低遅延モード)
低遅延モードでは、信号Sに第1の位相差よりも小さい第2の位相差を発生させるモードである。低遅延モードでは、図4に示すように、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bが閉状態に制御され、第4の電子スイッチ7dが開状態に制御される。
【0070】
第1の電子スイッチ7aが閉状態に制御されることにより、第1の内側線路2aの他端と第2の接地導体4bとが電気的に接続された状態となる。第2の電子スイッチ7bが閉状態に制御されることにより、第2の内側線路2bの他端と第2の接地導体4bとが電気的に接続された状態となる。
【0071】
低遅延モードでは、第1の電子スイッチ7a及び第2の電子スイッチ7bが閉状態であるため、リターン電流R2は、主として、図4に示すように、第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bを-X方向に流れる。低遅延モードでは、リターン電流R2が第1の内側線路2a及び第2の内側線路2bを流れるため、高遅延モードと比較して、インダクタンス値Lが低い。低遅延モードでの遅延量は、高遅延モードでの遅延量よりも低くなる。また、信号線路1の他端には平行平板コンデンサ5が接続されているが、第4の電子スイッチ7dが開状態であるため、平行平板コンデンサ5の静電容量は機能せず(信号線路1からは見えず)平行平板コンデンサ5の静電容量に比べて極めて小さな寄生容量が存在するのみである。よって、低遅延モードでは、高遅延モードよりもさらに低い遅延量を得ることができる。
【0072】
ここで、低遅延モードでは、第3の電子スイッチ7cが閉状態に制御されることにより、信号線路1の損失を意図的に増加させることも可能である。これは、低遅延モードにおける高周波信号の損失を高遅延モードにおける高周波信号の損失と同程度とするためのものである。
【0073】
すなわち、低遅延モードにおける高周波信号の損失は、高遅延モードにおける高周波信号の損失よりも明確に小さい。この損失差は、動作モードを低遅延モードと高遅延モードとに切り替えた場合にデジタル移相回路10から出力される高周波信号の振幅差を招来させるものである。このような事情に対して、デジタル移相回路10では、低遅延モードで第3の電子スイッチ7cを閉状態に制御することにより、上記振幅差を解消することもある。
【0074】
以下に、本実施形態に係る接続部20の構成について図5,6を用いて説明する。図5は、図1に示した接続部20の平面図である。図6は、図1,5に示した接続部20のA-A線の断面図である。図5,6に示す通り、接続部20は、第1の接続線路21、第2の接続線路22、第3の接続線路23、第1のグランド層24、及び第2のグランド層25を備える。
【0075】
第1の接続線路21は、例えば一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第1の接続線路21は、第1のデジタル移相回路の信号線路1と、第2のデジタル移相回路の信号線路1とを接続する。尚、第1の接続線路21の幅は、信号線路1の幅と同様であってもよいし、信号線路1の幅よりも広くてもよい。
【0076】
第2の接続線路22は、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。第2の接続線路22は、信号線路1の延在方向と同一な方向に延在する。第2の接続線路22は、第1の接続線路21と平行に設けられており、所定の距離だけ離間している。具体的には、第2の接続線路22は、第1の接続線路21の両側において第1の接続線路21から所定の距離だけ離間して配置されている。尚、以下の説明において、第1の接続線路21の一方側に配置された第2の接続線路22を、「第2の接続線路22a」と称し、第1の接続線路21の他方側に配置された第2の接続線路22を、「第2の接続線路22b」と称する場合がある。第2の接続線路22は、第1のデジタル移相回路の内側線路2と、第2のデジタル移相回路の内側線路2とを接続する。
【0077】
第3の接続線路23は、第1の接続線路21の一方側及び他方側の両側において、第2の接続線路22よりも第1の接続線路21から遠い位置に設けられる帯状導体である。第3の接続線路23は、第1の接続線路21に対して第2の接続線路22を挟んだ状態で第1の接続線路21から所定距離を隔てて平行に設けられている。尚、以下の説明において、第1の接続線路21の一方側に配置された第3の接続線路23を、「第3の接続線路23a」と称し、第1の接続線路21の他方側に配置された第3の接続線路23を、「第3の接続線路23b」と称する場合がある。第3の接続線路23は、第1のデジタル移相回路の外側線路3と、第2のデジタル移相回路の外側線路3とを接続する。
【0078】
第1のグランド層24は、第1の接続線路21の上方に配置される。図6に示す例では、第1のグランド層24は、第1の接続線路21及び第2の接続線路22から所定距離を隔てた上方に設けられている。第1のグランド層24は、第1の接続線路21の上方に配置されており、且つ、第1のグランド層24の幅が少なくとも各第2の接続線路22の一方側の側面220まで延在していることが好ましい。側面220とは、第1の接続線路21が配置されている側とは反対の側面である。尚、第1のグランド層24は、第1の接続線路21及び第2の接続線路22の上方のみならず、第3の接続線路23の上方まで延在していてもよい。
【0079】
第1のグランド層24は、各第2の接続線路22に対してビアホール40を介して接続されている。すなわち、第1のグランド層24は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール40を介して接続されている。ビアホール40は、図5に示す通り、第2の接続線路22aに沿って複数配列されているとともに、第2の接続線路22bに沿って複数配列されている。
【0080】
第1のグランド層24が第3の接続線路23の上方まで延在している場合には、第1のグランド層24は、図7に例示するように、各第2の接続線路22に対してビアホール40を介して接続され、且つ、各第3の接続線路23に対してビアホール41を介して接続されてもよい。すなわち、第1のグランド層24は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール40を介して接続され、第3の接続線路23a及び第3の接続線路23bのそれぞれに対してビアホール41を介して接続されてもよい。尚、図7に例示される構成では、ビアホール41は、第3の接続線路23aに沿って複数配列されるとともに、第3の接続線路23bに沿って複数配列される。
【0081】
第2のグランド層25は、第1の接続線路21の下方に配置される。図6に示す例では、第2のグランド層25は、第1の接続線路21及び第2の接続線路22から所定距離を隔てた下方に設けられている。第2のグランド層25は、第1の接続線路21の下方に配置されており、且つ、第2のグランド層25の幅が少なくとも各第2の接続線路22の一方側の側面220まで延在していることが好ましい。尚、第2のグランド層25は、第1の接続線路21及び第2の接続線路22の下方のみならず、第3の接続線路23の下方まで延在していてもよい。
【0082】
第2のグランド層25は、各第2の接続線路22に対してビアホール42を介して接続されている。すなわち、第2のグランド層25は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール42を介して接続されている。ビアホール42は、ビアホール40と同様に、第2の接続線路22aに沿って複数配列されているとともに、第2の接続線路22bに沿って複数配列されている。
【0083】
第2のグランド層25が第3の接続線路23の下方まで延在している場合には、第2のグランド層25は、図7に例示するように、各第2の接続線路22に対してビアホール42を介して接続され、且つ、各第3の接続線路23に対してビアホール43を介して接続されてもよい。すなわち、第2のグランド層25は、第2の接続線路22a及び第2の接続線路22bのそれぞれに対してビアホール42を介して接続され、第3の接続線路23a及び第3の接続線路23bのそれぞれに対してビアホール43を介して接続されてもよい。尚、図7に例示される構成では、ビアホール43は、ビアホール41と同様に、第3の接続線路23aに沿って複数配列されるとともに、第3の接続線路23bに沿って複数配列される。
【0084】
図6及び図7に示す例では、接続部20は、第1のグランド層24と第2のグランド層25とを有しているが、これに限定されず、第1のグランド層24と第2のグランド層25との少なくとも一方を備えていればよい。すなわち、第1の接続線路21の上方及び下方の少なくとも一方にグランド層が配置されていればよい。
【0085】
以下に、本実施形態に係る伝送部30の構成について図8図10を用いて説明する。図8は、図1に示した伝送部30のB-B線の断面図である。図9は、図1に示した伝送部30のC-C線の断面図である。図10は、図1に示した伝送部30のD-D線の断面図である。
【0086】
伝送部30は、伝送線路31、グランド線路32、及び第3のグランド層33を備える。
【0087】
伝送線路31は、終端デジタル移相回路の信号線路1に接続される。伝送線路31は、例えば一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。伝送線路31は、終端デジタル移相回路の信号線路1とは異なる層に形成されている。例えば、伝送線路31は、終端デジタル移相回路の信号線路1が形成されている層よりも1つ下の層に形成されている。伝送線路31は、終端デジタル移相回路の信号線路1に対して、ビアホール50を介して接続されている。
【0088】
グランド線路32は、終端デジタル移相回路の内側線路2に接続される。グランド線路32は、一定幅、一定厚及び所定長さを有する長尺板状の導体である。グランド線路32は、伝送線路31の延在方向と同一な方向に延在する。グランド線路32は、伝送線路31と平行に設けられており、所定の距離だけ離間している。具体的には、グランド線路32は、伝送線路31の両側において伝送線路31から所定の距離だけ離間して配置されている。尚、グランド線路32と伝送線路31との間の距離は、内側線路2と信号線路1との間の距離と同等であってもよいし、異なってもよい。グランド線路32は、終端デジタル移相回路の内側線路2に対して、ビアホール51を介して接続されている。
【0089】
第3のグランド層33は、伝送線路31の下方に配置される。図8から図10に例示する第3のグランド層33は、第1の外側線路3aから第2の外側線路3bまで延在している。尚、第3のグランド層33は、少なくとも各グランド線路32の一方側の側面330まで延在していればよい。側面330とは、伝送線路31が配置されている側とは反対の側面である。第3のグランド層33は、伝送線路31及びグランド線路32から所定距離を隔てた下方に設けられている。本実施形態では、第3のグランド層33は、伝送線路31の下方のみに配置されているが、第3のグランド層33は、伝送線路31の上方のみに配置されてもよいし、第3のグランド層33は、伝送線路31の上方及び下方に配置されてもよい。
【0090】
第3のグランド層33は、グランド線路32に対して、ビアホール52を介して接続されている。つまり、第3のグランド層33は、終端デジタル移相回路の内側線路2に対して、ビアホール52、グランド線路32、及びビアホール51を介して接続されている。尚、グランド線路32は、省略することも可能である。グランド線路32が省略された場合には、第3のグランド層33は、例えば、終端デジタル移相回路の内側線路2に対して、不図示のビアホールを介して接続されていてもよい。また、第3のグランド層33は、終端デジタル移相回路の外側線路3に対して、不図示のビアホールを介して接続されていてもよい。
【0091】
図10に示す通り、伝送部30は、デジタル移相回路10-44に設けられた信号線路1、2つの内側線路2(第1の内側線路2a及び第2の内側線路2b)、2つの外側線路3(第1の外側線路3a及び第2の外側線路3b)が形成されている層とは異なる層に形成されている。また、伝送部30は、デジタル移相回路10-44に設けられた信号線路1、2つの内側線路2、及び2つの外側線路3と交差する方向に延在するよう形成されている。尚、図1に示す通り、伝送部30は、デジタル移相回路10-16に設けられた信号線路1、2つの内側線路2、及び2つの外側線路3が形成されている層とは異なる層に形成されている。また、伝送部30は、デジタル移相回路10-16に設けられた信号線路1、2つの内側線路2、及び2つの外側線路3と交差する方向に延在するよう形成されている。
【0092】
上述したように、本実施形態に係るデジタル移相器100は、縦続接続された複数のデジタル移相回路10と、2つのデジタル移相回路10の間を接続する1つ以上のベンド型の接続部20と、を備える。そして、縦続接続された複数のデジタル移相回路10は、接続部20を介して渦巻き状に配置されている。このような構成により、図1に示すように、小型化を実現しながら、外側線路3を流れるリターン電流R1が互いに逆向きになる部分をなるべく少なくすることができる。したがって、外側線路3に発生する磁界が弱め合う部分を少なくすることができる。
【0093】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、縦続接続された複数のデジタル移相回路10は、図11に示すような渦巻き状に配置されてもよい。これにより、外側線路3を流れるリターン電流R1が互いに逆向きになる部分を無くすことができ、外側線路3に発生する磁界が弱め合う部分をより低減することができる。尚、図11に示す例では、伝送部30は、接続部20-6を介して、終端デジタル移相回路であるデジタル移相回路10-45に接続されている。
【0094】
図1に示す伝送部30は、デジタル移相回路10-16の信号線路1及びデジタル移相回路10-44の信号線路が形成されている層の情報又は下方の層に形成されているが、これに限定されない。例えば、図12に示すように、伝送部30は、接続部20-2の上方又は下方に形成されてもよい。例えば、図13に示すように、伝送部30は、接続部20-2及び接続部20-6の上方又は下方に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…信号線路、2…内側線路、2a…第1の内側線路、2b…第2の内側線路、3…外側線路、3a…第1の外側線路、3b…第2の外側線路、4…接地導体、5…平行平板コンデンサ、6…接続導体、7…電子スイッチ、8…スイッチ制御部、10…デジタル移相回路、20…接続部、21…第1の接続線路、22…第2の接続線路、23…第3の接続線路、24…第1のグランド層、25…第2のグランド層、30…伝送部、31…伝送線路、32…グランド線路、33…第3のグランド層、40,42…ビアホール、51,52…ビアホール、100…デジタル移相器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13