(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119387
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】電気接続部品、及び電気接続ユニット
(51)【国際特許分類】
H01R 9/18 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
H01R9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022268
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】舘 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻井 芳朋
【テーマコード(参考)】
5E086
【Fターム(参考)】
5E086CC47
5E086DD05
5E086DD32
5E086JJ03
5E086LL12
5E086LL14
5E086LL16
(57)【要約】
【課題】構造を簡素化できる電気接続部品、及び電気接続ユニットを提供する。
【解決手段】電気接続部品5は、端部に設けられた配線取付部2に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線4を有する。配線取付部2(第2配線取付部22)は、突壁部33、凹部35、及び被締結部36を備えている。突壁部33は、配線4の本体32から外方に突出形成されている。凹部35は、突壁部33の内部に凹設され、相手配線を配線4に固定するためのボルト等の締結部を挿し込む。被締結部36は、凹部35の内周面に設けられ、ボルト等の締結部を締結する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に設けられた配線取付部に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線を有する電気接続部品であって、
前記配線取付部は、
前記配線の本体から外方に突出形成された突壁部と、
前記突壁部の内部に凹設され、前記相手配線を前記配線に固定するための締結部を挿し込む凹部と、
前記凹部の内周面に設けられ、前記締結部を締結する被締結部と
を備えている電気接続部品。
【請求項2】
前記配線取付部は、前記配線の両端に一対設けられ、
前記一対の配線取付部の少なくとも一方は、前記突壁部、前記凹部、及び前記被締結部を有した構造である
請求項1に記載の電気接続部品。
【請求項3】
前記凹部は、前記配線の長手方向に対して交差する方向を凹設方向とするように形成されている
請求項1又は請求項2に記載の電気接続部品。
【請求項4】
前記突壁部は、前記配線の本体よりも薄く形成されている
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項5】
前記突壁部は、前記配線の基材に前記凹部の元となる孔を空けて前記孔を広げていく工法であるバーリング加工によって形成されている
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項6】
前記被締結部は、前記凹部にタップを挿し込んで雌ねじを形成するタッピング加工によって形成されている
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項7】
前記配線を保持する保持部を備え、
前記配線は、前記保持部に貫通するように設けられるとともに、前記保持部から露出する部位に前記配線取付部が設けられる
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項8】
前記保持部は、樹脂製であって、隣合う配線間を絶縁する絶縁部を有する
請求項7に記載の電気接続部品。
【請求項9】
前記複数の配線は、一列に沿って等間隔に並び配置されている
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項10】
前記配線は、平板状に形成されている
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項11】
前記配線は、両端を円柱部で繋いだ丸芯状に形成されている
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の電気接続部品。
【請求項12】
端部に設けられた配線取付部に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線を有する電気接続部品と、前記電気接続部品を取り付けるための部品取付部を有するケースとを備えている電気接続ユニットであって、
前記配線取付部は、
前記配線の本体から外方に突出形成された突壁部と、
前記突壁部の内部に凹設され、前記相手配線を前記配線に固定するための締結部を挿し込む凹部と、
前記凹部の内周面に設けられ、前記締結部を締結する被締結部と
を備えている電気接続ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続部品、及び電気接続ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、ケース内外を電気接続する中継コネクタ機能を有する端子台が周知である。端子台は、両端を相手バスバーとの固定箇所とするバスバーを有する。相手バスバーは、例えば、ボルトとナットとを用いた取付構造によってバスバーに取り付け固定される。この場合、ナットは、端子台の本体に対し、圧入などによって取り付け保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した取付構造の場合、相手バスバーを取り付けるためにナットが別途必要となる。このため、端子台の部品点数が増えたり、端子台の重量が増したりする課題があった。また、端子台の本体にナットを圧入して保持しておく構造を用いると、ナットを圧入固定するための部位を端子台の本体に設ける必要が生じる。よって、端子台の大型化や、ナット組付けのためのコストが別途必要となる課題もあった。
【0005】
本開示の目的は、構造を簡素化できる電気接続部品、及び電気接続ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する電気接続部品は、端部に設けられた配線取付部に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線を有する。前記配線取付部は、前記配線の本体から外方に突出形成された突壁部と、前記突壁部の内部に凹設され、前記相手配線を前記配線に固定するための締結部を挿し込む凹部と、前記凹部の内周面に設けられ、前記締結部を締結する被締結部とを備えている。
【0007】
前記課題を解決する電気接続ユニットは、端部に設けられた配線取付部に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線を有する電気接続部品と、前記電気接続部品を取り付けるための部品取付部を有するケースとを備えている。前記配線取付部は、前記配線の本体から外方に突出形成された突壁部と、前記突壁部の内部に凹設され、前記相手配線を前記配線に固定するための締結部を挿し込む凹部と、前記凹部の内周面に設けられ、前記締結部を締結する被締結部とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、構造を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、電気接続ユニットの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図6において相手配線が取り付けられたときのV-V線断面図である。
【
図7】
図7は、配線における第2配線取付部付近の側面図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、第2配線取付部の製造の手順図である。
【
図9】
図9は、相手配線の従来の取付構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示の電気接続部品は、端部に設けられた配線取付部に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線を有する。前記配線取付部は、前記配線の本体から外方に突出形成された突壁部と、前記突壁部の内部に凹設され、前記相手配線を前記配線に固定するための締結部を挿し込む凹部と、前記凹部の内周面に設けられ、前記締結部を締結する被締結部とを備えている。
【0011】
本例の構成によれば、相手配線を電気接続部品の配線に取り付けるときに用いる被締結部を配線自体に設けることが可能となる。このため、締結部を取り付けるための被締結部を配線と別で用意する必要がない。よって、電気接続部品の構成を簡素化することが可能となる。
【0012】
[2]前記配線取付部は、前記配線の両端に一対設けられている。前記一対の配線取付部の少なくとも一方は、前記突壁部、前記凹部、及び前記被締結部を有した構造である。この構成によれば、両端を配線取付部とする配線において、両端の配線取付部の少なくとも一方を、簡素な形状とすることが可能となる。
【0013】
[3]前記凹部は、前記配線の長手方向に対して交差する方向を凹設方向とするように形成されている。この構成によれば、長手方向に延びる配線に対し、横から締結部を凹部に挿し込んで被締結部に締結する組付け作業とすることが可能となる。よって、締結部を組付け易くすることができる。
【0014】
[4]前記突壁部は、前記配線の本体よりも薄く形成されている。この構成によれば、突壁部は、配線の一部分を盛り上げて形成した部位であることが分かる。
[5]前記突壁部は、前記配線の基材に前記凹部の元となる孔を空けて前記孔を広げていく工法であるバーリング加工によって形成されている。この構成によれば、例えば、配線の基材が薄い部材であっても、バーリング加工によって突壁部を精度よく形成することが可能となる。
【0015】
[6]前記被締結部は、前記凹部にタップを挿し込んで雌ねじを形成するタッピング加工によって形成されている。この構成によれば、タッピング加工によって簡易に、かつ精度よく被締結部を電気接続部品に形成することが可能となる。
【0016】
[7]前記電気接続部品は、前記配線を保持する保持部を備えている。前記配線は、前記保持部に貫通するように設けられるとともに、前記保持部から露出する部位に前記配線取付部が設けられる。この構成によれば、保持部の両側から各々露出する配線の配線取付部に、相手配線を電気接続することが可能となる。
【0017】
[8]前記保持部は、樹脂製であって、隣合う配線間を絶縁する絶縁部を有する。この構成によれば、絶縁部によって配線の短絡を生じ難くすることが可能となる。
[9]前記複数の配線は、一列に沿って等間隔に並び配置されている。この構成によれば、各配線に相手配線を取り付けるときの作業性がよくなる。
【0018】
[10]前記配線は、平板状に形成されている。この構成によれば、配線製造時の歩留まりを少なくすることが可能となる。
[11]前記配線は、前記両端を円柱部で繋いだ丸芯状に形成されている。この構成によれば、配線製造時の材料ロスを少なくすることが可能となる。
【0019】
[12]本開示の電気接続ユニットは、端部に設けられた配線取付部に相手配線が取り付け固定される1つ又は複数の配線を有する電気接続部品と、前記電気接続部品を取り付けるための部品取付部を有するケースとを備えている。前記配線取付部は、前記配線の本体から外方に突出形成された突壁部と、前記突壁部の内部に凹設され、前記相手配線を前記配線に固定するための締結部を挿し込む凹部と、前記凹部の内周面に設けられ、前記締結部を締結する被締結部とを備えている。この構成によれば、電気接続部品の作用効果と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0021】
[電気接続ユニット1の構成]
図1に示すように、電気接続ユニット1は、端部に設けられた配線取付部2に相手配線3(
図5等を参照)が取り付け固定される1つ又は複数の配線4を有する電気接続部品5を備えている。本例の配線取付部2は、配線4の両端6(片側のみ図示)に一対設けられている。本例の電気接続ユニット1を端子台ユニットとした場合、例えば、相手配線3が相手バスバーであり、配線4がバスバーであり、電気接続部品5が端子台である。
【0022】
電気接続ユニット1は、電気接続部品5を取り付けるための部品取付部7を有するケース8を備えている。電気接続部品5は、両側の端9を締結体10によって部品取付部7に固定することにより、ケース8に取り付けられる。締結体10は、例えば、ボルトである。
【0023】
配線4は、金属製バスバーであって、複数(3つ)設けられている。配線4が3つの場合、配線4は、紙面左側のものを第1配線4aとし、紙面真ん中のものを第2配線4b、紙面右側のものを第3配線4cとする。これら配線4は、一列に沿って等間隔に並び配置されている。
【0024】
[電気接続部品5の構成]
図2及び
図3に示すように、電気接続部品5は、配線4を保持する保持部13を備えている。本例の電気接続部品5は、例えば、配線4を金型に装填して樹脂を注入するモールド成型によって形成されている。このため、保持部13は、樹脂部(モールド樹脂)である。配線4は、保持部13に貫通するように設けられるとともに、保持部13から露出する部位に相手配線3が取り付け固定される。
【0025】
保持部13は、保持部13の本体部分をなす本体部14と、本体部14から一方に延設された第1延設部15と、本体部14から他方に延設された第2延設部16とを有する。配線4は、本体部14、第1延設部15、及び第2延設部16に亘って配置される。本体部14は、締結体10を挿し込むための貫通孔17を両側の端9に有する。貫通孔17には、環状のカラー18を介して締結体10の軸部(図示略)が挿通される。
【0026】
配線取付部2は、配線4の一方(+Z軸方向)の端部のものを「第1配線取付部21」とし、配線4の他方(-Z軸方向)の端部のものを「第2配線取付部22」とする。配線4は、例えば、平板状(狭長平板状)に形成されている。配線4は、長手方向を電気接続部品5の高さ方向(
図2のZ軸方向)とする向きで配置されている。
【0027】
[ケース8の構成]
図2に示す通り、部品取付部7は、締結体10を取り付けるための穴部24が長さ方向両端に一対設けられている。部品取付部7は、電気接続部品5を挿し込む挿込孔25が設けられている。本例の挿込孔25は、例えば、長孔形状である。挿込孔25の長さ方向両端(
図2のY軸方向の両端縁)は、略円弧状に形成されている。
【0028】
挿込孔25の周縁には、部品取付部7の表面から所定量突出した段部26が設けられている。本体部14及び段部26の間には、電気接続部品5及び部品取付部7の間の防水のために、図示しないシール材が配置される。シール材は、例えば、ゴムパッキンである。このシール材は、例えば、本体部14及び段部26で挟み込まれることにより保持される。
【0029】
[保持部13の本体部14の形状]
図2~
図4に示すように、本体部14は、対向する一対の側部に補強用のリブ28が形成されている。本例のリブ28は、一方の側部である正面(
図2、
図4を参照)と、他方の側部である背面(
図3を参照)と、の両方に設けられている。本例のリブ28は、本体部14の側部に形成された空間部29の内部に立設されている。リブ28は、保持部13の上壁30及び下壁31の間に配置されることにより、これらを補強する。
【0030】
リブ28は、側面から見て斜め方向に延びる第1リブ28aと、第1リブ28aに交差するように延びる第2リブ28bと、側面から見て高さ方向(
図2等のZ軸方向)に延びる第3リブ28cとを含む。第3リブ28cは、互いに交差する第1リブ28a及び第2リブ28bの1つの組とした場合、隣合う組の間に配置されている。第1リブ28a、第2リブ28b、及び第3リブ28cは、平板状に形成されている。
【0031】
[配線取付部2の形状]
図5及び
図6に示すように、第1配線取付部21及び第2配線取付部22の少なくとも一方は、ナットを使用せずに相手配線3を取り付け可能な構造(ナット不使用取付構造)をとる。本例のナット不使用取付構造は、第2配線取付部22に適用されている。ナット不使用取付構造は、例えば、バーリング加工とタッピング加工とを用いて形成される。
【0032】
配線4(第2配線取付部22)は、配線4の本体32から外方に突出形成された突壁部33を有する。突壁部33は、配線4の本体32よりも薄く形成されている。具体的には、突壁部33の厚さを「W1」とした場合、配線4の本体32の厚さW2は、W1よりも薄く設定されている(W1<W2の関係)。なお、突壁部33の厚さW1は、配線4の本体32の1/2、或いはその付近の値に設定されている。突壁部33は、例えば、環状(円筒状)の筒部である。
【0033】
配線4(第2配線取付部22)は、相手配線3を配線4に固定するための締結部34を挿し込む凹部35を有する。凹部35は、突壁部33の内部に凹設されている。本例の凹部35は、例えば、貫通した孔である。締結部34は、例えば、ボルトである。凹部35の径は、締結部34の軸径と同等の大きさに形成されている。本例の凹部35及び突壁部33は、例えば、バーリング加工によって形成される。
【0034】
配線4(第2配線取付部22)は、締結部34を締結する被締結部36を有する。被締結部36は、凹部35の内周面に形成されている。本例の被締結部36は、例えば、ボルトを螺着するためのネジ溝である。本例の被締結部36は、例えば、凹部35にタップを挿し込んで雌ネジを形成するタッピング加工によって形成される。
【0035】
図5に示す通り、第2配線取付部22は、バーリング加工によって形成される場合、凹部35の基端周縁に形成された第1斜面部37aと、凹部35の先端周縁に形成された第2斜面部37bとを有する。本例の第1斜面部37a及び第2斜面部37bは、例えば、凹部35の開口径が外から内に向かうに従い小さくなるようなテーパ状に形成されている。
【0036】
図7に示すように、凹部35は、配線4の長手方向(
図7のZ軸方向)に対して交差する方向を凹設方向(
図7の矢印A1方向)とするように形成されている。このため、相手配線3は、配線4に対し、横(側方)から取り付け固定される。
【0037】
[配線4の絶縁構造]
図2及び
図3に示す通り、保持部13は、隣合う配線4間を絶縁する絶縁部39を有する。本例の絶縁部39は、保持部13の高さ方向(
図2等のZ軸方向)に延びるように平板状に形成されている。絶縁部39は、第1配線4a及び第2配線4bの間を絶縁する第1絶縁部39aと、第2配線4b及び第3配線4cを絶縁する第2絶縁部39bとを有する。絶縁部39は、第1延設部15及び第2延設部16の両者に亘るように形成されている。
【0038】
[第2配線取付部22の製造方法]
図8(a)に示すように、配線4の基材40において第2配線取付部22を形成したい箇所に、凹部35の元となる孔41を形成する。
図8(b)→
図8(c)に示すように、孔41の形成後、バーリング加工によって、孔41を広げていく。すなわち、治具42によって孔41を大きくしていくことにより、孔41の周縁に突壁部33を立てていく。このように、突壁部33(本例は、凹部35も含む)は、配線4の基材40に凹部35の元となる孔41を空けて孔41を広げていく工法であるバーリングによって形成されている。以上により、凹部35及び突壁部33が形成される。
【0039】
図8(d)に示すように、バーリング加工後、凹部35(突壁部33)の内周面に対し、タッピング加工によって、被締結部36を形成する。例えば、凹部35の内周面全域にタッピング加工を施すことにより、この内周面にネジ溝を形成する。タッピング加工は、例えば、切削式、又は転造式のいずれでもよい。以上の手順により、配線4に第2配線取付部22が形成される。
【0040】
[作用]
図9に、ナットを使用して相手配線3を配線4に取り付ける構造を図示する。このナット使用構造の場合、締結部34の軸34aを、相手配線3の孔部45と配線4の孔部46とに挿し込み、そして、軸34aをナットに螺着することにより、相手配線3を配線4に取り付け固定する。ナット使用構造の場合、ナットを使用するため、電気接続部品5の部品点数が増えたり、電気接続部品5の重量が増したりする課題がある。
【0041】
また、ナット使用構造の場合、ナットを保持するための部位を保持部13(モールド樹脂)に設ける必要がある。よって、保持部13の体格が大きくなってしまうため、この点でも、電気接続部品5の大型化や重量増の懸念があった。また、保持部13の体格が大きくなると、使用する樹脂量が多くなってしまう。さらに、ナットを保持部13に取り付ける作業も別途必要となってしまう。
【0042】
一方、本例の場合、配線4にバーリング加工及びタッピング加工を施すことにより、配線4自体に、被締結部36を有する配線取付部2(本例は、第2配線取付部22)を設ける。このように、配線4自体に締結部34の締結箇所を設けるため、締結部34を螺着するためのナットが不要となる。よって、電気接続部品5の構造を簡素化することが可能となる。ひいては、電気接続部品5の大型化や重量増を抑制することが可能となる。
【0043】
[実施形態の効果]
上記実施形態の電気接続部品5(電気接続ユニット1)によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0044】
(1)電気接続部品5は、端部に設けられた配線取付部2に相手配線3が取り付け固定される1つ又は複数の配線4を有する。配線取付部2は、突壁部33、凹部35、及び被締結部36を備えている。突壁部33は、配線4の本体32から外方に突出形成されている。凹部35は、突壁部33の内部に凹設され、相手配線3を配線4に固定するための締結部34を挿し込む。被締結部36は、凹部35の内周面に設けられ、締結部34を締結する。
【0045】
本例の構成によれば、相手配線3を電気接続部品5の配線4に取り付けるときに用いる被締結部36を配線4自体に設けることが可能となる。このため、締結部34を取り付けるための被締結部36を配線4と別で用意する必要がない。よって、電気接続部品5の構成を簡素化できる。
【0046】
(2)相手配線3の取り付け固定においてナットが不要となれば、電気接続部品5の低コスト化や部品点数を抑制できる。また、挿込孔25の開口(間口)も縮小できる。
(3)配線取付部2は、配線4の両端に一対設けられている。一対の配線取付部2の少なくとも一方は、突壁部33、凹部35、及び被締結部36を有した構造である。この構成によれば、両端6を配線取付部2とする配線4において、両端6の配線取付部2の少なくとも一方を、簡素な形状とすることができる。
【0047】
(4)凹部35は、配線4の長手方向(
図7等のZ軸方向)に対して交差する方向を凹設方向(
図7の矢印A1方向)とするように形成されている。この構成によれば、長手方向に延びる配線4に対し、横から締結部34を凹部35に挿し込んで被締結部36に締結する組付け作業とすることが可能となる。よって、締結部34を組付け易くすることができる。
【0048】
(5)突壁部33は、配線4の本体32よりも薄く形成されている。この構成によれば、突壁部33は、配線4の一部分を盛り上げて形成した部位であることが分かる。
(6)突壁部33は、配線4の基材40に凹部35の元となる孔41を空けて孔41を広げていく工法であるバーリング加工によって形成されている。この構成によれば、例えば、配線4の基材40が薄い部材であっても、バーリング加工によって突壁部33を精度よく形成することができる。
【0049】
(7)被締結部36は、凹部35にタップ(図示略)を挿し込んで雌ねじを形成するタッピング加工によって形成されている。この構成によれば、タッピング加工によって簡易に、かつ精度よく被締結部36を電気接続部品5に形成できる。
【0050】
(8)電気接続部品5は、配線4を保持する保持部13を備えている。配線4は、保持部13に貫通するように設けられるとともに、保持部13から露出する部位に配線取付部2が設けられる。この構成によれば、保持部13の両側から各々露出する配線4の配線取付部2に、相手配線3を電気接続することができる。
【0051】
(9)保持部13は、樹脂製であって、隣合う配線4間を絶縁する絶縁部39を有する。この構成によれば、絶縁部39によって配線4の短絡を生じ難くできる。
(10)複数の配線4は、一列に沿って等間隔に並び配置されている。この構成によれば、各配線4に相手配線3を取り付けるときの作業性がよくなる。
【0052】
(11)配線4は、平板状に形成されている。この構成によれば、配線製造時の歩留まりを少なくすることができる。
[他の実施形態]
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・
図10に示すように、配線4は、平板状に限定されず、両端6を円柱部51で繋いだ丸芯状(丸芯型)としてもよい。この構成によれば、配線製造時の材料ロスを少なくすることができる。また、丸芯状の場合、使用環境下においては、円柱部51の周囲のモールド樹脂(保持部13の樹脂部分)が均一に引っ張られる。このため、円柱部51とモールド樹脂との界面に剥がれが生じ難くなるので、製品の信頼性が向上する。
【0054】
・突壁部33は、配線4の本体32よりも厚く形成されてもよい。
・突壁部33の製造方法は、バーリング工法に限定されず、他の工法を採用できる。
・突壁部33の高さや厚さは、実施例以外の他の値に変更できる。
【0055】
・凹部35は、貫通した孔に限定されず、例えば、底部がある穴でもよい。
・被締結部36のネジ溝の個数は、使用する締結部34のネジ山の数に応じて、適宜変更してもよい。
【0056】
・被締結部36の製造方法は、タッピング工法に限定されず、他の工法を採用できる。
・締結部34は、ボルトに限定されず、他の部材を用いてもよい。このように、配線4への相手配線3の取付構造は、ボルトを用いた構造に限定されず、他の構造を採用してもよい。
【0057】
・配線4は、一直線に延びた板状に限定されない。例えば、配線4は、板材の途中で曲げられた形状としてもよい。
・複数の配線4は、一列に並び配置されることに限定されない。例えば、配列方向において配線4を互い違いに配置するなど、他の配置パターンを採用してもよい。
【0058】
・配線取付部2は、配線4において片方の端部にのみ設けられてもよい。
・電気接続部品5は、端子台に限定されず、例えば、ケーブルの先端に設けられたコネクタでもよい。
【0059】
・電気接続部品5は、車載用に限定されず、他の機器や装置に使用されてもよい。
・本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0060】
1 電気接続ユニット
2 配線取付部
3 相手配線
4 配線
4a 第1配線
4b 第2配線
4c 第3配線
5 電気接続部品
6 両端
7 部品取付部
8 ケース
9 端
10 締結体
13 保持部
14 本体部
15 第1延設部
16 第2延設部
17 貫通孔
18 カラー
21 第1配線取付部
22 第2配線取付部
24 穴部
25 挿込孔
26 段部
28 リブ
28a 第1リブ
28b 第2リブ
28c 第3リブ
29 空間部
30 上壁
31 下壁
32 本体
33 突壁部
34 締結部
34a 軸
35 凹部
36 被締結部
37a 第1斜面部
37b 第2斜面部
39 絶縁部
39a 第1絶縁部
39b 第2絶縁部
40 基材
41 孔
42 治具
45 孔部
46 孔部
51 円柱部
W1 厚さ
W2 厚さ