特開 2023-119419 乗員保護装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023119419

(43)【公開日】2023-08-28

(54)【発明の名称】乗員保護装置

(51)【国際特許分類】

   B60R 21/217 20110101AFI20230821BHJP

   B60R 21/18 20060101ALI20230821BHJP

   B60R 21/207 20060101ALI20230821BHJP

【ＦＩ】

B60R21/217

B60R21/18

B60R21/207

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022022320

(22)【出願日】2022-02-16

(71)【出願人】

【識別番号】000241463

【氏名又は名称】豊田合成株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100076473

【弁理士】

【氏名又は名称】飯田 昭夫

(72)【発明者】

【氏名】折▲高▼ 早苗

(72)【発明者】

【氏名】増田 泰士

(72)【発明者】

【氏名】柳澤 利仁

【テーマコード（参考）】

3D054

【Ｆターム（参考）】

3D054AA02

3D054AA03

3D054AA04

3D054AA07

3D054AA25

3D054CC15

3D054CC34

3D054DD14

3D054DD40

(57)【要約】

【課題】膨張用ガスをエアバッグ内に案内するパイプ部による異音発生を抑制することが可能な乗員保護装置を提供する。
【解決手段】シート１に着座した乗員ＭＰを保護するための乗員保護装置Ｓは、シートベルト７と、シートベルト７において装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルト１０の領域に配置され、乗員ＭＰの上半身ＭＵを保護可能に膨張するエアバッグ２５と、シート１を支えるシートフレーム４に固定され膨張用ガスを発生させるインフレーター本体１８と、インフレーター本体１８から延びて膨張用ガスをエアバッグ２５内に案内するパイプ部１９と、を有している。パイプ部１９は少なくとも１つの固定部材６５Ｂによってシートフレーム４に固定されている。
【選択図】 図９

【特許請求の範囲】

【請求項1】

シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、
該シートベルトにおいて装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置され、前記乗員の上半身を保護可能に膨張するエアバッグと、
前記シートを支えるシートフレームに固定され膨張用ガスを発生させるインフレーター本体と、
該インフレーター本体から延びて前記膨張用ガスを前記エアバッグ内に案内するパイプ部と、
を有する構成とされて、
前記パイプ部は少なくとも１つの固定部材によって前記シートフレームに固定されていることを特徴とする乗員保護装置。

【請求項2】

前記インフレーター本体は前記シートの背もたれ部の下部において左右方向に延びる柱状として配設され、前記インフレーター本体と前記エアバッグとが屈曲形成された前記パイプ部により接続されていることを特徴とする、請求項１に記載の乗員保護装置。

【請求項3】

屈曲形成された前記パイプ部は、屈曲部よりも前記エアバッグ側となる部位が前記固定部材によって前記シートフレームに固定されていることを特徴とする、請求項２に記載の乗員保護装置。

【請求項4】

屈曲形成された前記パイプ部は、屈曲部を挟んだ前記エアバッグ側と前記インフレーター本体側との両側の部位が前記固定部材によって前記シートフレームに固定されていることを特徴とする、請求項２に記載の乗員保護装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、乗員保護装置としては、シートベルトにおいて装着時に乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグを備える構成のものがあった（例えば、特許文献１参照）。この乗員保護装置では、展開膨張時にラップベルトから前上方に向けてエアバッグを膨張させ、膨張完了時に、乗員の上半身の保護が図られる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０２０－６６４２５号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

上記のような乗員保護装置では、ガスを発生させるインフレーター本体と、ラップベルトの領域に配置されるエアバッグと、がパイプ部により繋がれている。このパイプ部はシートに近接して配設されているが、車両走行時に揺動して、シートと干渉して異音が発生する場合があった。

【0005】

本発明は、このような問題を解決するものであり、膨張用ガスをエアバッグ内に案内するパイプ部による異音発生を抑制することが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護するための乗員保護装置であって、
シートベルトと、該シートベルトにおいて装着時に前記乗員の腰部を拘束するラップベルトの領域に配置されるエアバッグと、前記シートを支えるシートフレームに固定され膨張用ガスを発生させるインフレーター本体と、該インフレーター本体から延びて前記膨張用ガスを前記エアバッグ内に案内するパイプ部と、を有する構成とされて、
前記パイプ部は少なくとも１つの固定部材によって前記シートフレームに固定されていることを特徴とする。

【0007】

本発明の乗員保護装置によれば、膨張用ガスをエアバッグ内に案内するパイプ部が固定部材によってシートフレームに固定されており、かかるパイプ部がシートに対して接近する揺動が抑制される。これによりパイプ部とシートとの干渉による異音発生を抑制することができる。

【0008】

また本発明では、インフレーター本体をシートの背もたれ部の下部において左右方向に延びる柱状として配設し、インフレーター本体とエアバッグとを屈曲形成されたパイプ部により接続した構成とすることができる。
このように構成された乗員保護装置においては、インフレーター本体およびパイプ部を含めたエアバックモジュールをシートの周りにコンパクトに配置することができる。

【0009】

ここで、パイプ部はインフレーター本体から延び出した先の先端側（エアバッグ側）において特に揺動し易いことが考えられる。このためハイプ部における揺動抑制の観点から、屈曲形成されたパイプ部における屈曲部よりもエアバッグ側となる部位を、固定部材によってシートフレームに固定するのが好ましい。

【0010】

更に、パイプ部における屈曲部を挟んだエアバッグ側とインフレーター本体側との両側の部位を固定部材によってシートフレームに固定するようにすれば、パイプ部がシートに対して強固に固定され、より効果的にパイプ部の揺動を抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。

【図2】図１のシートの側面図である。

【図3】図１のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。

【図4】Ａはインフレーターがシートフレームに取付けられた状態を示す斜視図、Ｂはインフレーターとシートフレームとの固定箇所をその周辺部とともに示した図である。

【図5】図１の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。

【図6】図５のエアバッグの概略縦断面図である。

【図7】図５のエアバッグを構成する基布を示す平面図である。

【図8】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。

【図9】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。

【図10】実施形態の乗員保護装置において、膨張を完了させたエアバッグにより乗員を拘束する状態を示す側面図である。

【図11】パイプ部における固定箇所が図４とは異なる変形例を示した図である。

【図12】パイプ部における固定箇所が図４、図１１とは異なる変形例を示した図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Ｓは、図１～３に示すように、車両のシート１に搭載されるもので、シートベルト７と、エアバッグ２５と、インフレーター１７と、を備える構成とされている。シート１は、背もたれ部２と座部３とを備えている。

【0013】

シートベルト７は、シート１に着座した乗員ＭＰを拘束するためのベルト本体８と、ベルト本体８に取り付けられるタングプレート１２と、タングプレート１２を連結させるためのバックル１３と、を備える構成とされている。ベルト本体８は、背もたれ部２内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に、一端を係止され、他端側を、シート１における座部３の後端３ｂ左方に配置されるアンカ部材１４（図１，２参照）に係止されている。詳細には、ベルト本体８は、背もたれ部２の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員の非着座状態においては、図１，２に示すように、エアバッグ２５を配置させるラップベルト１０を、背もたれ部２の前面に露出させるように、構成されている。ベルト本体８は、ラップベルト１０と、背もたれ部２内に収納されたショルダーベルト９と、を有し、乗員着座時においてタングプレート１２をバックル１３に連結させた状態で、アンカ部材１４とバックル１３との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト１０によって乗員ＭＰの下半身ＭＤ（腰部）を拘束し、背もたれ部２の上端左縁側から延びつつバックル１３にかけて斜めに配置されるショルダーベルト９によって乗員ＭＰの上半身ＭＵ（肩から胸部ＭＢにかけてと頭部ＭＨ）を拘束する構成とされている（図３参照）。なお、シートベルト７において、背もたれ部２内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。

【0014】

インフレーター１７は、エアバッグ２５に膨張用ガスを供給する。実施形態の場合、インフレーター１７は、膨張用ガスを発生させるインフレーター本体１８と、インフレーター本体１８から延びて膨張用ガスをエアバッグ２５内に案内するパイプ部１９と、を備えている。実施形態におけるインフレーター１７は、エアバッグ２５の膨張に伴なうシートベルト７のベルト本体８の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト７のプリテンショナー機構よりも遅らせるように設定されている。具体的には、インフレーター１７は、シートベルト７のプリテンショナー機構の作動から５ｍｓ後に作動するように設定されている。

【0015】

インフレーター１７は、シート１における座面３ａよりも下方となる位置において、シート１（詳しくは座部３）を支えるシートフレーム４に取り付けられており、例えばシート１を前後に大きくスライドさせたり、回転させたりした場合でも、インフレーター１７はシート１と共に移動可能とされている。

【0016】

図４のＡおよび図４のＢは、インフレーター１７がシートフレーム４に取付けられた状態を示している。これらの図で示されているように、インフレーター本体１８は、略円柱状のシリンダタイプとされ、座部３より下方の背面側においてその軸方向を左右方向に略沿わせて設けられている。このときインフレーター本体１８の軸方向の一端側に設けられたガス吐出口部６１はシート１の左方向を向いている。

【0017】

インフレーター本体１８は、固定部材６５を利用して、軸方向に離間した２箇所においてシートフレーム４に固定されている。固定部材６５としては、縮径可能なリング状のクランプ６６と、クランプ６６の外周面から径方向外向きに突出させたボルト６８と、を備えたボルト付きクランプが用いられている。

【0018】

クランプ６６は、板金製とされ、インフレーター本体１８の外周面に装着された状態で縮径変形することで、インフレーター本体１８に強固に巻き付けられている。これによりクランプ６６を含む固定部材６５がインフレーター本体１８に取り付けられている。

【0019】

一方、インフレーター本体１８が固定されるシートフレーム４の取付板部７０は、左右方向に延びる平坦な第１の取付面７１を備え、第１の取付面７１には左右方向に離間して貫通の取付孔７２が穿設されている（図４のＢ参照）。実施形態では、この取付孔７２に固定部材６５のボルト６８を挿通させ、ボルト６８の先端側から、取付板部７０を挟み込むように、ボルト６８の雄ねじ部にナット７５を螺合させることにより、インフレーター本体１８がシートフレーム４の取付板部７０に固定されている。

【0020】

パイプ部１９は、略Ｌ字状に屈曲形成された金属製の管体で、その一方の端部１９ａがインフレーター本体１８のガス吐出口部６１と接続されている。ガス吐出口部６１と接続される端部１９ａは拡径部とされ、インフレーター本体１８のガス吐出口部６１に外嵌させた状態でカシメ加工され、カシメ接合部７６が形成されている。カシメ接合部７６において、ガス吐出口部６１の基部に形成された凹溝６２内にパイプ部１９の一部がくい込むことにより、パイプ部１９の端部１９ａはインフレーター本体１８に接続されている。

【0021】

インフレーター本体１８に接続されたパイプ部１９は、端部１９ａを水平方向に延ばした後、屈曲部１９ｂにおいてその向きを前上方向に変えている。その後シートフレーム４の外側においてシートフレーム４に近接した位置を前上方向に延びて、その先端１９ｃはシート１の左方において、座面３ａよりも少し低い位置に配設されている。実施形態では、この先端１９ｃを、クランプ２０を利用して、エアバッグ２５における後述する導管部４０と接続させる構成とされている。

【0022】

このようにしてインフレーター本体１８とエアバッグ２５との間に配設されたパイプ部１９は、固定部材６５Ｂを利用して、シートフレーム４に固定されている。固定部材６５Ｂは、前述の固定部材６５と同様に、縮径可能なリング状のクランプ６６と、クランプ６６の外周面から径方向外向きに突出させたボルト６８を備えたボルト付きクランプが用いられている。図４のＢにおける部分拡大図で示すように、パイプ部１９が固定されるシートフレーム４の取付板部７０には貫通の取付孔７２Ｂが穿設されており、この取付孔７２Ｂに固定部材６５Ｂのボルト６８を挿通させ、ボルト６８の先端側からボルト６８の雄ねじ部にナット７５を螺合させることにより、パイプ部１９がシートフレーム４の取付板部７０に固定されている。但し、実施形態の場合、パイプ部１９に巻き付けられたクランプ６６とシートフレーム４側の取付面７１との間に隙間が生じるため、この隙間に対応した高さのスリーブ７８をボルト６８に外挿し、ナット７５とスリーブ７８とで取付板部７０を挟み込んでいる。

【0023】

パイプ部１９における揺動抑制の効果を考慮すれば、固定部材６５Ｂを利用しての固定箇所は、カシメ接合部７６からある程度離間した位置であることが望ましい。この実施形態では、パイプ部１９における拡径部１９ａの、カシメ接合部７６とは反対側の端部近傍位置が固定箇所とされている。このようにすることで、ハイプ部１９は、シートフレーム４に固定部材６５で固定されたインフレーター本体１８と、固定部材６５Ｂと、によって、シート１（詳しくはシートフレーム４）に取り付け固定される。

【0024】

エアバッグ２５は、長尺状に折り畳まれて、シートベルト７の装着時におけるラップベルト１０の上面側に、重ねられるようにして、ラップベルト１０の領域に配置されている（図３参照）。すなわち、図１に示すような非装着状態においては、エアバッグ２５は、ラップベルト１０の背面側（背もたれ部２側）に、配置されている。実施形態の場合、エアバッグ２５とラップベルト１０とは、図３に示すように、周囲を、エアバッグ２５の展開膨張時に破断可能なカバー２２によって、覆われて、一体化されている。すなわち、実施形態では、ラップベルト１０とカバー２２との間の隙間が、エアバッグ２５を収納させる収納部位を構成している。

【0025】

エアバッグ２５は、図５，６に示すように、バッグ本体２６と、インフレーター１７と接続されてバッグ本体２６に膨張用ガスを流入させる導管部４０と、ラップベルト１０を挿通させるベルト取付部４７と、を備えている。

【0026】

バッグ本体２６は、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされている。詳細に説明すれば、バッグ本体２６は、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている（図８，９参照）。バッグ本体２６は、膨張完了時に乗員ＭＰから離れた前側に配置される前壁部２７と、膨張完了時に乗員ＭＰ側に配置される後上壁部２８及び後下壁部２９と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部３０及び右壁部３１と、を備えている。そして、バッグ本体２６は、後下壁部２９の後端２９ａの下面側に、導管部４０と連通される連通孔３３を有するとともに、この連通孔３３の周縁の部位で、導管部４０と連結されている。実施形態の場合、連通孔３３は、円形に開口して、バッグ本体２６の左右の中心を挟むようにして、略左右対称となるように、左右方向側で２個並設されている。また、前壁部２７の左右両縁側における上下の中央付近には、余剰の膨張用ガスを排気させるためのベントホール３４，３４が、形成されている。実施形態のバッグ本体２６では、後下壁部２９が、膨張完了時に乗員ＭＰの脚部（大腿部）の上面と当接可能な脚当接面３６を構成し、後上壁部２８が、膨張完了時に乗員ＭＰの前方に配置されて、乗員ＭＰの胸部から頭部にかけてを拘束可能な上半身拘束面３７を、構成している。実施形態の場合、後上壁部２８と後下壁部２９とは、バッグ本体２６の膨張完了状態での外形形状を、それぞれ、前後方向側若しくは上下方向側に長手方向を略沿わせた略長方形状として、図６に示すように、長手方向側の幅寸法を、一致させて構成されている。後上壁部２８は、バッグ本体の膨張完了時に、上端２８ａを、乗員の頭部ＭＨの前方に位置させるように、構成されている（図９参照）。また、後上壁部２８と後下壁部２９とは、バッグ本体２６の膨張完了時における断面形状において、略直交するように配置される構成である（図６参照）。

【0027】

導管部４０は、インフレーター１７のパイプ部１９と接続されるもので、バッグ本体２６に連結される先端４０ｂ側を閉塞させ、元部４０ａ側を、パイプ部１９と接続可能に開口させて構成されるもので、エアバッグ２５の膨張完了時に、ラップベルト１０に略沿うように左右方向に沿って配置される構成である。この導管部４０は、図５に示すように、先端４０ｂ側の領域を、膨張完了時のバッグ本体２６の下面側に配置させるもので、この先端４０ｂ側の領域を、幅広として、内部に流入した膨張用ガスを一旦貯留させるガス貯留部４１としている。この導管部４０は、元部４０ａ側を、上述したごとく、クランプ２０を用いて、インフレーター１７のパイプ部１９に、接続されている。ガス貯留部４１は、幅寸法を、導管部４０における元部４０ａ側の部位の幅寸法の２倍程度に、設定されている。また、ガス貯留部４１は、左右方向側の幅寸法を、バッグ本体２６における後下縁側の部位（連通孔３３の配置部位付近）の左右方向側の幅寸法と略同一として、構成されている（図５，７参照）。そして、ガス貯留部４１には、バッグ本体２６に形成される連通孔３３に対応する開口４１ａが、形成されている。導管部４０は、実施形態の場合、外形形状を同一とされる上壁部４３と下壁部４４との周縁相互を結合させることにより、筒状とされており、開口４１ａは、上壁部４３の領域に、形成されている。また、開口４１ａは、周縁を全周にわたって連通孔３３の周縁と結合（縫着）されている。

【0028】

ベルト取付部４７は、導管部４０のガス貯留部４１の領域における下面側（下壁部４４側）に配置されるもので、ラップベルト１０を挿通可能に両端側を開口させた略筒状として、下壁部４４に縫着されている（図５，６参照）。このベルト取付部４７は、長さ寸法を、ガス貯留部４１の左右方向側の幅寸法よりも僅かに小さく設定されている。すなわち、ベルト取付部４７は、展開膨張時のバッグ本体２６のラップベルト１０からの過度の浮き上がりを抑制可能に、ラップベルト１０に沿った方向側の長さ寸法を大きく設定されている。

【0029】

実施形態のエアバッグ２５は、所定形状の基布の周縁相互を結合させて形成されるもので、実施形態の場合、図６，７に示すように、バッグ本体２６を構成する２枚の乗員側パネル５０，前側パネル５５と、導管部４０を構成する２枚の導管部用パネル５７，５８と、ベルト取付部４７を構成するベルト取付用パネル６０と、から、構成されている。これらの乗員側パネル５０，前側パネル５５，導管部用パネル５７，５８，ベルト取付用パネル６０は、それぞれ、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。

【0030】

実施形態の乗員保護装置Ｓでは、車両に搭載した状態で、インフレーター１７が作動すれば、インフレーター１７から吐出される膨張用ガスが、導管部４０を経てバッグ本体２６内に流入することとなり、バッグ本体２６が、カバー２２を破断させるようにして、ラップベルト１０から前上方に突出しつつ、図８，９に示すように膨張を完了させることとなる。

【0031】

そして、実施形態の乗員保護装置Ｓでは、エアバッグ２５（バッグ本体２６）は、膨張完了時の形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱形状とされており、脚当接面３６を脚部ＭＴの上面と当接させつつ、乗員ＭＰの上半身ＭＵの前側に配置される。そのため、エアバッグ２５の膨張完了時に、乗員ＭＰが、上半身ＭＵを下半身ＭＤに近づけるように大きく移動させることとなっても、図１０に示すように、脚当接面３６が広い面積で脚部ＭＴに支持されることから、倒れることや圧縮されることを抑制されて、乗員ＭＰの上半身ＭＵ（胸部ＭＢから頭部ＭＨにかけて）を、上半身ＭＵの前側において対向するように配置されている上半身拘束面３７によって、的確に拘束することができる。また、実施形態の乗員保護装置Ｓでは、エアバッグ２５（バッグ本体２６）の膨張完了形状が、略三角柱形状とされていることから、乗員ＭＰが背もたれ部を傾斜させた状態のシートに着座している場合にも、上半身ＭＵを、上半身拘束面３７によって的確に拘束することができる。

【0032】

以上のように構成された実施形態の乗員保護装置Ｓによれば、パイプ部１９は固定部材６５Ｂによってシートフレーム４に固定されており、シート１に対して接近するパイプ部１９の揺動が抑制される。これによりパイプ部１９とシート１との干渉による異音発生を抑制することができる。

【0033】

また実施形態の乗員保護装置Ｓでは、インフレーター本体１８をシート１の背もたれ部２の下部において左右方向に延びる柱状として配設し、インフレーター本体１８とエアバッグ２５とを屈曲形成されたパイプ部１９により接続させた構成としており、インフレーター本体１８およびパイプ部１９を含めたエアバックモジュールをシート１の周りにコンパクトに配置することができる。

【0034】

次に、パイプ部の固定箇所を異ならせた変形例について説明する。上記実施形態は、図４に示すように、パイプ部１９における屈曲部１９ｂよりも基端側（インフレーター本体１８側）の部位を固定した例であったが、パイプ部１９における固定箇所は適宜変更可能である。例えば、図１１に示すように、パイプ部１９における屈曲部１９ｂよりも先端側（エアバッグ２５側）の部位にも固定箇所を設けることができる。この場合、屈曲部１９ｂよりも先端側の部位は、固定部材６５Ｂを利用して、シートフレーム４の取付板部７０における第２の取付面７３（第１の取付面７１と交差する方向に延びる第２の取付面７３）に固定される。この図１１の例のように、屈曲部１９ｂを挟んだエアバッグ２５側とインフレーター本体１８側との両側の部位がそれぞれ固定部材６５Ｂによってシートフレーム４に固定されるようにすれば、パイプ部１９がシート１に対して強固に固定され、より効果的にパイプ部１９の揺動を抑制することができる。

【0035】

また、図１２で示すように、パイプ部１９に屈曲部が２箇所形成されている場合において、基端側に位置する第１の屈曲部１９ｂ１よりも更に基端側（インフレーター本体１８側）の部位と、先端側に位置する第２の屈曲部１９ｂ２よりも更に先端側（エアバッグ２５側）の部位と、に固定箇所を設けることができる。

【0036】

なお、パイプ部１９においては、インフレーター本体１８から延び出した先の（即ち、カシメ接合部７６から離れた位置の）先端側において特に揺動し易いことが考えられる。このため場合によっては、屈曲形成されたパイプにおける屈曲部１９ｂよりも先端側（エアバッグ２５側）の部位のみを、固定部材６５Ｂによってシートフレーム４に固定することも可能である。

【0037】

以上、本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例である。例えばパイプ部とシートフレームとの固定に利用する固定部材の構成については適宜変更可能である。上記実施形態では無端環状のクランプを用いているが、周方向の一部が切り欠かれた略Ｃ字形状として、パイプ部の径方向からクランプを装着可能とすることも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。

【符号の説明】

【0038】

１…シート、２…背もたれ部、４…シートフレーム、７…シートベルト、１０…ラップベルト、１８…インフレーター本体、１９…パイプ部、１９ｂ…屈曲部、２５…エアバッグ、６５、６５Ｂ…固定部材、ＭＰ…乗員、Ｓ…乗員保護装置、ＭＵ…上半身。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】