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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119421
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
H05K3/34 501E
H05K3/34 501F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022322
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 俊樹
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA03
5E319AB05
5E319AC11
5E319CD02
5E319GG03
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】配線基板における接続信頼性の向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、第1絶縁層31と第1導体層1と第2絶縁層32と第2導体層2と第3導体層3と、第1導体層1と第3導体層3とを接続する第1ビア導体61と、第1導体層1と第2導体層2とを接続する第2ビア導体62とを含み、第2絶縁層32は、第1導体層1の第1絶縁層31と反対側の表面と第1導体層1の側面とを覆っており、第1導体層の表面は研磨面であり、第1導体層1は、側面および第1絶縁層31側の表面である下面を構成する金属膜からなる第1層1aと、第1層1aよりも内側に形成されている電解めっき膜からなる第2層1bとを含んでおり、第2ビア導体62は、平面視において、第1ビア導体61と重なっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上に形成されている第1導体層と、
前記第1絶縁層および前記第1導体層を覆う第2絶縁層と、
前記第2絶縁層の上に形成されている第2導体層と、
前記第1絶縁層に覆われている第3導体層と、
を含む配線基板であって、
前記配線基板は、さらに、
前記第1絶縁層を貫く第1貫通孔の内部に形成されていて前記第1導体層と前記第3導体層とを接続する第1ビア導体と、
前記第2絶縁層を貫く第2貫通孔の内部に形成されていて前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する第2ビア導体と、を含み、
前記第2絶縁層は、前記第1導体層における前記第1絶縁層と反対側の表面、および前記第1導体層の側面を覆っており、
前記第1導体層における前記第1絶縁層と反対側の表面は研磨面であり、
前記第1導体層は、側面および前記第1絶縁層側の表面である下面を構成する金属膜からなる第1層と、前記第1層よりも内側に形成されている電解めっき膜からなる第2層とを含んでおり、
前記第2ビア導体は、平面視において、前記第1ビア導体と重なっている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1層および前記第2層は、前記第1絶縁層の表面から前記第1貫通孔の内部まで連続的に形成されていて前記第1ビア導体を構成している。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1絶縁層は感光性樹脂を含んでいる。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板であって、前記第2絶縁層は感光性樹脂を含んでいる。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第2導体層と前記第2導体層に覆われていない前記第2絶縁層の表面とにより構成される表面が部品実装面である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1導体層は、前記第1ビア導体に接続されている第1ビアランドを含んでおり、
前記第2導体層は、前記第2ビア導体に接続されている第2ビアランドを含んでいる。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第2導体層は、前記第2絶縁層側の表面である下面を構成する下層と前記下層の上に形成されている上層とで構成され、
前記第2導体層の側面は前記下層に覆われており、
前記第2導体層における前記第2絶縁層と反対側の表面は研磨面である。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板であって、前記下層および前記上層は、前記第2絶縁層の表面から前記第2貫通孔の内部まで連続的に形成されていて前記第2ビア導体を構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導体回路間がスタックビア構造をもつバイアホールを介して接続されている多層プリント配線板が開示されている。スタックビア構造を有するバイアホールのうちの少なくとも一つのバイアホールのランドがスタックビア構造のバイアホールの周囲に形成された導体回路非形成領域に拡大して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-280739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の多層プリント配線板では、バイアホールやランドと層間樹脂絶縁層とのあいだの剥離が発生する虞があると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上に形成されている第1導体層と、前記第1絶縁層および前記第1導体層を覆う第2絶縁層と、前記第2絶縁層の上に形成されている第2導体層と、前記第1絶縁層に覆われている第3導体層と、を含んでいる。そして、配線基板は、さらに、前記第1絶縁層を貫く第1貫通孔の内部に形成されていて前記第1導体層と前記第3導体層とを接続する第1ビア導体と、前記第2絶縁層を貫く第2貫通孔の内部に形成されていて前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する第2ビア導体と、を含み、前記第2絶縁層は、前記第1導体層における前記第1絶縁層と反対側の表面、および前記第1導体層の側面を覆っており、前記第1導体層における前記第1絶縁層と反対側の表面は研磨面であり、前記第1導体層は、側面および前記第1絶縁層側の表面である下面を構成する金属膜からなる第1層と、前記第1層よりも内側に形成されている電解めっき膜からなる第2層とを含んでおり、前記第2ビア導体は、平面視において、前記第1ビア導体と重なっている。
【0006】
本発明の実施形態によれば、ビア導体に加わる応力が分散され得る接続信頼性の高い配線板が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1のII部の拡大図。
図3A】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3B】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3C】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3D】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3E】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3F】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3G】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3H】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3I】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3J】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3K】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3L】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3M】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図3N】本発明の一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。なお、以下、参照される図面においては、各構成要素の正確な比率を示すことは意図されておらず、本発明の特徴が理解され易いように描かれている。図1は一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図である。図2には図1のII部の拡大図が示されている。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。実施形態の配線基板の積層構造、ならびに、導体層および絶縁層それぞれの数は、図1の配線基板100の積層構造、ならびに配線基板100に含まれる導体層および絶縁層それぞれの数に限定されない。
【0009】
図1に示されるように、配線基板100は、絶縁層31(第1絶縁層)と、絶縁層31の上に形成されている導体層1(第1導体層)と、導体層1に覆われていない絶縁層31の表面および導体層1を覆う絶縁層32(第2絶縁層)と、絶縁層32の上に形成されている導体層2(第2導体層)と、を含んでいる。図1の配線基板100は、さらに、コア基板4と、コア基板4の一方の表面に積層されている絶縁層33(第3絶縁層)と、絶縁層33上に形成されている導体層3(第3導体層)と、を含んでいる。絶縁層31は、絶縁層33および導体層3の上に積層されている。絶縁層33における導体層3に覆われていない表面、および導体層3は絶縁層31に覆われている。
【0010】
コア基板4は、絶縁層34と、絶縁層34の一方の表面34sに形成されている導体層41とを含んでいる。コア基板4は、さらに、絶縁層34を貫通するスルーホール導体42を含むと共に、絶縁層34の他方の表面(図示せず)にも導体層41と同様の導体層(図示せず)を含んでいる。導体層41はスルーホール導体42によって絶縁層34の図示されない他方の表面の導体層と接続されている。スルーホール導体42の内部は、エポキシ樹脂などを含む樹脂体43で充填されている。導体層41は、絶縁層34上の金属箔からなる下層と、スルーホール導体42と一体の中層と、樹脂体43を覆う上層とを含む多層構造を有している。図示されていないが、配線基板100は、絶縁層34の一方の表面34sと反対側の表面上に積層または形成された、任意の導体パターンを含む任意の数の導体層および任意の数の絶縁層を含み得る。
【0011】
実施形態の説明では、配線基板100の厚さ方向において絶縁層34から遠い側は、「外側」、「上側」もしくは「上方」、または単に「上」とも称され、絶縁層34に近い側は、「内側」、「下側」もしくは「下方」、または単に「下」とも称される。さらに、各導体層および各絶縁層において、絶縁層34と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層34側を向く表面は「下面」とも称される。
【0012】
絶縁層31~34は、任意の絶縁性樹脂を含んでいる。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、またはフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂、ならびに、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン(PTFE)樹脂、ポリエステル(PE)樹脂、および変性ポリイミド(MPI)樹脂のような熱可塑性樹脂が例示される。各絶縁層は、それぞれが同じ絶縁性樹脂を含んでいてもよく、互いに異なる絶縁性樹脂を含んでいてもよい。また、各絶縁層は、ガラス繊維やアラミド繊維からなる芯材(補強材)を含んでいてもよい。図1の例では絶縁層34は芯材34bを含んでいる。各絶縁層はさらに、シリカ(SiO2)、アルミナ、またはムライトなどの微粒子からなる無機フィラー(図示せず)を含み得る。このような無機フィラーを含む絶縁層は、例えば各導体層の熱膨張率と近い熱膨張率を有し得るので好ましいことがある。
【0013】
各絶縁層31、32および33には、各絶縁層を貫通し、各絶縁層を介して隣接する導体層同士を接続する接続導体(ビア導体)が形成されている。絶縁層31には、導体層3と導体層1とを接続するビア導体61(第1ビア導体)が形成されている。ビア導体61は、絶縁層31を貫く貫通孔31a(第1貫通孔)の内部に形成されている。絶縁層32には、導体層1と導体層2とを接続するビア導体62(第2ビア導体)が形成されている。ビア導体62は、絶縁層32を貫く貫通孔32a(第2貫通孔)の内部に形成されている。絶縁層33には、第4導体層41と導体層3とを接続するビア導体63が形成されている。ビア導体63は、絶縁層33を貫く貫通孔33aの内部に形成されている。
【0014】
導体層1~3、41は、それぞれ、任意の導体パターンを含んでいる。例えば、図1の例では、導体層1は導体パターン11を含んでいる。導体パターン11は、ビア導体61と一体的に形成されているビアランド113(第1ビアランド)を含んでいる。すなわち、導体層1はビア導体61に接続されているビアランド113を含んでいる。また、導体パターン11は、例えば、その配線幅および配線間距離が比較的小さい配線パターンに形成されている配線パターン112を含んでいてもよい。また、図1の例において導体層3は、導体パターン13を含んでいる。導体パターン13は、ビア導体63と一体的に形成されているビアランド313と、配線パターン312を含んでいる。導体層2は、ビア導体62と一体的に形成されているビアランド213(第2ビアランド)を所定のパターンで含む導体パターン12を含んでいる。すなわち、導体層2はビア導体62に接続されているビアランド213を含んでいる。図に示される例では、絶縁層32および導体層2で構成される表面が、配線基板100の2つの表面(配線基板100の厚さ方向と直交する表面)のうちの一方(第1面100s)を構成している。配線基板100の使用時において、第1面100sには、配線基板100に実装される部品(図示せず)が載置され得る。すなわち、配線基板100の第1面100sは部品実装面であってよい。したがって、ビアランド213は、外部の部品が配線基板100に搭載される際の接続部として使用される部品実装用のビアパッドであってもよい。
【0015】
導体層1、2、3、41、および、ビア導体61、62、63は、銅またはニッケルなどの任意の金属を用いて形成されている。図1の例において、導体層1~3は2層構造を有している。導体層1は、絶縁層31における絶縁層32側の表面31s上に形成されている第1層1aと、第1層1aの上に形成されている第2層1bと、を含んでいる。導体層2は、絶縁層32の表面32s上に形成されている下層2aと、下層2aの上に形成されている上層2bと、を含んでいる。導体層3は、絶縁層33の表面33s上に形成されている下層3aと、下層3aの上に形成されている上層3bと、を含んでいる。
【0016】
図2を参照して、各導体層1~3およびビア導体61~63がさらに詳述される。図2に示されるように、絶縁層32は、導体層1における絶縁層31と反対側の上面11sを覆っている。この絶縁層32は、さらに、導体層1の側面を覆っている。すなわち、この絶縁層32は、導体層1に含まれるビアランド113の側面を覆っている。また、絶縁層32は、配線パターン112などの導体パターン11の側面を覆っている。導体パターン11は、導体層1が含む第1層1aおよび第2層1bを含んでいる。第1層1aは金属膜からなり、導体層1の側面および絶縁層31側の表面である下面を構成している。第2層1bは、導体層1において第1層1aよりも内側、すなわち、第1層1aよりも各導体パターン11の内側に形成されている電解めっき膜からなる。各ビアランド113において、第1層1aによって、第2層1bの側面および絶縁層31側の表面が覆われている。
【0017】
本実施形態では、各導体パターン11においても、第1層1aは、その側面および絶縁層31側の表面である下面を構成している。第2層1bは、第1層1aよりも各導体パターン11の内側に形成されている。第1層1aによって、各導体パターン11における第2層1bの側面および絶縁層31側の表面が覆われている。換言すると、導体層1の第1層1aは、導体層1における上面11sを除く表面全体を構成している。
【0018】
例えば第1層1aを構成する金属膜は、スパッタリング膜や無電解めっき膜などである。電解めっき膜からなる第2層1bは、例えば、第1層1aを給電層として用いる電解めっきを含むパターンめっきによって形成される。
【0019】
図2に示されるように、ビア導体61は、導体層1と一体的に形成されている。すなわち、導体層1を構成する第1層1aおよび第2層1bは、絶縁層31の表面31sから、絶縁層31に設けられている貫通孔31aの内部まで連続的に形成されていてビア導体61を構成している。第1層1aは、導体パターン11の側面だけでなく、ビア導体61の側面も導体パターン11の側面と一体的に構成している。そのためビア導体61の側面に加わる応力が、ビアランド113のような導体パターン11の側面にも分散されると考えられる。結果として、ビア導体61と絶縁層31との剥離などが抑制されることがある。
【0020】
上述したように、導体パターン11の第2層1bは、第1層1aを給電層として用いる電解めっきを含むパターンめっきによって形成される。そのパターンめっきの際に、導体パターン11が形成されない領域では、導体パターン11の側面を覆う第1層1aはパターンめっきに用いられるめっきレジスト(図示せず)上に形成される。すなわち、導体パターン11が形成されない領域では第1層1aは絶縁層31の表面31s上には形成されない。そのため、表面31sのうち導体パターン11に覆われずに露出している部分は、その上に第1層1aが形成されるという経緯を経ておらず、その上から第1層1aのような導電体が除去された面ではない。したがって、導電体の残渣などの懸念がない。したがって、導体パターン11には、例えば実施形態の配線パターン112のように微細なピッチで配線が配置され得る。例えば、配線パターン112において、配線幅は、その最小値が5.0μm以下である。このような配線幅および配線間距離で配線パターン112が形成されても、配線間での短絡などの不良が引き起こされる虞がないと考えられる。加えて、高いアスペクト比を有する配線パターン112が形成され得る。したがって、導体層1には、低抵抗の配線パターン112が高密度で形成され得る。
【0021】
本実施形態では、導体層1の上面11sは研磨面である。上面11sは、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やサンドブラストによって研磨された研磨面である。すなわち、導体層1の上面11sは、後述されるように、配線基板100の製造工程において研磨仕上げされた面である。したがって、導体パターン11の電解めっきによる形成後に表面に凹凸が生じていても、凸部が削られることによって上面11sは平らに均されている。導体層1の上面11sが凹凸の少ない研磨面であると、例えば配線パターン112において、良好な高周波伝送特性が得られることがある。
【0022】
導体層1の上面11sおよび導体パターン11の側面を覆っている絶縁層32には、導体層2と一体的に形成されているビア導体62が形成されている。導体層2は、前述したように下層2aと上層2bとを含んでいる。ビア導体62は、絶縁層32の表面32sから、絶縁層32に設けられている貫通孔32aの内部まで連続的に形成されている下層2aと上層2bとで構成されている。本実施形態では、導体層2の下層2aは、導体層1の第1層1aと同様に、金属膜からなり、導体層2の側面および絶縁層32側の表面である下面を構成している。上層2bは、下層2aよりも各導体パターン12の内側に形成されている電解めっき膜からなる。下層2aによって、上層2bの側面および絶縁層32側の表面が覆われている。
【0023】
図2の例では、ビア導体62とビア導体61とは平面視で重なっている。そのため、外部の部品(図示せず)が接続パッド(ビアランド213)を介して配線基板100の第1面100sに搭載される場合に、導体層3などの導体層1よりも下側の導体層と、外部の部品とが短い経路で接続されると考えられる。また、導体パターン12の側面とビア導体62の側面とが一体的に構成されているため、絶縁層32上のビアランド213とビア導体62とのあいだでクラックなどが生じる不具合も起こりにくいと考えられる。しかしながら、導体層2は、後述する導体層3のように、下層2aが導体層2の導体パターン12の側面を覆わず、上層2bが導体パターン12側面に露出しているように形成されてもよい。
【0024】
なお、ビア導体62とビア導体61とが「平面視で重なる」とは、導体層1の上面11sと接しているビア導体62の底部が絶縁層31と導体層1との界面における貫通孔31aの開口内に収まっていることを意味している。また「平面視」は、実施形態の配線基板をその厚さ方向に沿う視線で見ることを意味している。
【0025】
導体層3は、前述したように下層3aと上層3bとを含んでいる。本実施形態では、導体層3の下層3aは、導体層1の第1層1aと同様に、金属膜からなり、導体層3の、ビアランド313や配線パターン312などの導体パターン13の側面および絶縁層33側の表面である下面を構成している。上層3bは、下層3aよりも各導体パターン13の内側に形成されている電解めっき膜からなる。下層3aによって、上層3bの側面および絶縁層33側の表面が覆われている。このように実施形態の配線基板には、電解めっき時に給電層として用いられる金属膜によって側面を構成されている導体パターンを含む導体層が所望の数で形成され得る。
【0026】
本実施形態では、ビア導体62と、ビア導体61と、ビア導体63とが積み重なるように形成されており、所謂スタックビア導体がスルーホール導体42上に形成されている。スタックビア導体が形成されている配線基板においては、熱応力などによって、スタックビア導体へのストレスが生じたり、スタックビア導体の歪みが生じたりすることがある。ビア導体と絶縁層との界面における界面剥離が発生する虞がある。しかし、本実施形態では、ビア導体61において、ビア導体61の側面と導体パターン11の側面とが一体的に形成されているため、応力が分散され得、その結果、界面剥離が生じ難い信頼性の高い配線基板100が提供され得る。
【0027】
前述したように、導体層1には、微細なピッチで並ぶ配線パターン112が形成されている。すなわち、図1に示されるように、導体層1に含まれる配線パターン112同士の間隔S1(配線パターン112の上面11s間の距離)は、他の導体層、例えば導体層3に含まれる配線パターン312同士の間隔S2(配線パターン312の上面13s間の距離)よりも小さく形成され得る。また、配線パターン112の配線幅L1(配線パターン112の上面11sにおける配線幅)は、配線パターン312の配線幅L2(配線パターン312の上面13sにおける配線幅)よりも小さくてもよい。しかしながら、本実施形態では、高密度で配置すべき配線パターンは、導体層1と同様の方法で形成される任意の導体層に、任意の位置および数で配置され得る。高密度で配置された配線パターンを含む、接続信頼性の高い配線基板が得られると考えられる。
【0028】
実施形態の配線基板100では、導体層1の導体パターン11、導体層2の導体パターン12、および導体層3の導体パターン13が、それぞれの側面が下側(コア基板4側)ほど内側に向かって傾くテーパー形状を有している。したがって、そのテーパー形状によって絶縁層32や絶縁層31が浮き上がり難く、そのため、導体パターン11および導体パターン13と絶縁層32または絶縁層31との剥離が生じ難いと考えられる。なお、導体パターン11、導体パターン12、および導体パターン13は、導体層1、導体層2、および導体層3の形成時における適しためっきレジストの選択、およびそのめっきレジストに対する適した露光条件の選択によって形成され得る。
【0029】
つぎに、実施形態の配線基板を製造する方法の一例が、図1の配線基板100を例に用いて図3A図3Nを参照して説明される。
【0030】
図3Aに示されるように、絶縁層34とその両面の導体層41とを含むコア基板4が用意され、その両面に絶縁層33が形成される。例えば両面銅張積層板にスルーホール導体42の形成用の貫通孔が形成され、その貫通孔の内壁および両面銅張積層板の表面に無電解めっきまたはスパッタリング、および電解めっきなどで金属膜が形成される。貫通孔内には、その金属膜と一体の金属膜からなるスルーホール導体42が形成される。例えばエポキシ樹脂の注入によってスルーホール導体42の内部が樹脂体43で充填される。そして、先に形成された金属膜および樹脂体43の上にさらに無電解めっきや電解めっきによって金属膜が形成される。そして、サブトラクティブ法によるパターニングによって、所定の導体パターンを有する多層構造の導体層41が絶縁層34の両面に形成される。例えばこのようにコア基板4が用意され、コア基板4の両面に、例えばフィルム状のエポキシ樹脂を積層して熱圧着することによって絶縁層33が形成される。しかしながら、後述される絶縁層31と同様に、絶縁層33の形成に用いられるフィルム状樹脂は感光性樹脂であってもよい。
【0031】
図3Bに示されるように、絶縁層33におけるビア導体63(図1参照)の形成位置に、例えば炭酸ガスレーザー光の照射によって貫通孔33aが形成される。絶縁層33が感光性樹脂を用いて形成される場合は、貫通孔33aは、貫通孔33aに対応する開口を有する露光マスクを用いる露光および現像によって形成されてもよい。なお、図3B、ならびに以下で参照する図3C図3Hおよび図3J図3Nでは、絶縁層34の一方の表面34sの反対側の表面上に形成され得る導体層および絶縁層の図示は省略されており、それらの説明も省略される。しかし、表面34sと反対側にも、表面34s上と同様の態様および数の、または表面34s上とは異なる態様および数の導体層および絶縁層が形成されてもよく、そのような導体層および絶縁層が形成されなくてもよい。
【0032】
図3Cに示されるように、めっきレジストR1が、絶縁層33の表面上に設けられる。めっきレジストR1には、導体層3に含まれる導体パターン13(図1参照)に応じた開口R11が形成される。
【0033】
めっきレジストR1は、例えばドライフィルムレジストの積層によって設けられてもよく、また、ポジ型の液状レジストの塗布および乾燥によって設けられてもよい。開口R11は、開口R11に対応する開口を有する露光マスクを用いる露光、および現像によって形成され得る。例えばポジ型のめっきレジストが使用される。露光条件を調整して、めっきレジストR1の表面側の露光量を多くし、現像液による溶解が絶縁層33の表面33s側よりもめっきレジストR1の表面側で多くなるようにすることによって、めっきレジストR1の表面側の開口径が大きく、表面33s側に向かうほど開口径が小さくなっていく断面形状をもつ開口R11が形成され得る。ポジ型のめっきレジストでは、現像中のレジストの湿潤も起こらないため、所望の形状の開口R11は、現像後も維持され得る。
【0034】
図3Dに示されるように、貫通孔33aの内壁上およびめっきレジストR1に覆われていない絶縁層33の表面33sの上、ならびに、めっきレジストR1の表面上およびめっきレジストR1の開口R11の内壁上に、導体層3の下層3a(図1参照)を構成する金属膜3aaが形成される。金属膜3aaは、例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。次いで、金属膜3aaの上に、導体層3の上層3b(図1参照)を構成する電解めっき膜3bbが形成される。電解めっき膜3bbは、金属膜3aaを給電層として用いる電解めっきによって形成される。
【0035】
図3Dに示されているように、電解めっき膜3bbは、めっきレジストR1の表面上にも、具体的にはめっきレジストR1の表面を覆う金属膜3aa上にも形成される。絶縁層33の表面33s上の金属膜3aa上において、少なくとも導体層3の上層3bに求められる厚さ以上の厚さを有する電解めっき膜3bbが形成される。したがって、電解めっき膜3bbで、めっきレジストR1の開口R11が完全に充填されてもよく、完全には充填されなくてもよい。一方、電解めっき膜3bbは、絶縁層33の貫通孔33aを完全に充填する。その結果、ビア導体63(図1参照)が形成される。
【0036】
図3Eに示されるように、電解めっき膜3bbの積層方向の一部が、研磨によって除去される。例えば、CMPやサンドブラストなどによって、電解めっき膜3bbが除去される。この研磨によって、金属膜3aaのうちの少なくともめっきレジストR1の表面上の部分も除去される。電解めっき膜3bbは、絶縁層33の表面33s上の電解めっき膜3bbの厚さが導体層3の上層3bに求められる所定の厚さになるまで、めっきレジストR1と共に研磨される。導体層3において平坦な上面13sが得られる。
【0037】
図3Fに示されるように、めっきレジストR1が除去される。その結果、ビアランド313や複数の配線パターン312などの導体パターン13を含む導体層3が形成される。
【0038】
図3Gに示されるように、絶縁層31が形成され、絶縁層31に貫通孔31aが形成される。絶縁層31は、例えば絶縁層33と同様に、エポキシ樹脂などを含むフィルム状樹脂の積層ならびに加熱および加圧をすることによって形成され得る。
【0039】
図1の例のように導体層1に微細なピッチで並ぶ配線パターン112を含む導体パターン11が形成される場合、ビア導体61も微細なピッチで形成されることが好ましい場合がある。絶縁層31に小径の貫通孔31aが形成される必要がある。このような場合、小径の貫通孔31aが形成され易いように、無機フィラーを含まない絶縁層31が好ましいことがある。
【0040】
無機フィラーを含まない樹脂は、例えば導体層1のような金属からなる導体層の熱膨張率と近い熱膨張率を有し難い。そのため、絶縁層31が無機フィラーを含まない場合、例えば絶縁層31の硬化などにおいて、絶縁層31が高温に晒されないことが好ましいと考えられる。したがって、絶縁層31は、熱硬化以外の硬化機構を有する樹脂、例えば光硬化型の樹脂で形成され得る。すなわち、絶縁層31は感光性樹脂で形成され得る。
【0041】
したがって、絶縁層31の形成に用いられるフィルム状樹脂は、例えば光重合開始剤などを含む感光性樹脂であってもよい。絶縁層31の高温での硬化工程を回避できる。絶縁層31への貫通孔31aの形成は、例えば炭酸ガスレーザー光やエキシマレーザー光の照射によって行われ得る。絶縁層31が感光性樹脂を用いて形成される場合は、貫通孔31aに対応する開口を有する露光マスクを用いる露光および現像によって貫通孔31aが形成されてもよい。
【0042】
図3Hに示されるように、前述しためっきレジストR1と同様に、めっきレジストR2が、絶縁層31の表面上に設けられる。めっきレジストR2には、前述した開口R11と同様に、導体層1の導体パターン11(図1参照)に対応した開口R21が形成される。
【0043】
図3Iに示されるように、導体層1の第1層1a(図1参照)を構成する金属膜1aaが形成される。金属膜1aaは、例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。なお、図3Iには、図3Hに示されるIIII部に相当する部分の金属膜1aaの形成後の状態が示されている。金属膜1aaは、貫通孔31aの内壁上、およびめっきレジストR2に覆われていない絶縁層31の表面31sの上、ならびに、めっきレジストR2の表面上、およびめっきレジストR2の開口R21の内壁上に形成される。
【0044】
図3Jに示されるように、導体層1の第2層1b(図1参照)を構成する電解めっき膜1bbが、電解めっき膜3bbと同様の方法で、金属膜1aaの上に形成される。電解めっき膜1bbは、絶縁層31の表面31s上の金属膜1aa上において、少なくとも導体層1の第2層1bに求められる厚さ以上の厚さを有するように形成される。絶縁層31の貫通孔31aは、電解めっき膜1bbによって完全に充填され、その結果、ビア導体61が形成される。
【0045】
図3Kに示されるように、図3Eを参照して説明された方法と同様の方法で、電解めっき膜1bbの積層方向の一部が、めっきレジストR2の表面上の金属膜1aa上と共に研磨によって除去される。導体層1においても平坦な上面11sが得られる。その後、めっきレジストR2が除去される。
【0046】
図3Lに示されるように、ビアランド113などの導体パターン11を含むと共に、第1層1aおよび第2層1bからなる2層構造を有する導体層1が得られる。導体パターン11を含む導体層1が、エッチングによる第1層1aの除去工程を経ずに形成されるので、微細なピッチで並ぶ配線パターン112が形成され得る。
【0047】
図3Mに示されるように、絶縁層32が形成される。絶縁層32は、例えば前述した絶縁層31の形成方法と同様の方法で形成され得る。絶縁層32も、光重合開始剤を含む感光性のエポキシ樹脂で形成されてもよい。絶縁層32には、ビア導体62の形成個所に貫通孔32aが形成される。貫通孔32aは、絶縁層32が感光性樹脂で形成される場合、露光および現像によって形成され得る。貫通孔32aは、炭酸ガスレーザー光やエキシマレーザー光の照射によって形成されてもよい。
【0048】
前述した導体層1の形成方法と同様の方法で、導体層2が形成される。すなわち、図3Mに示されるように、導体層2の導体パターン12(図1参照)に対応した開口R31を有するめっきレジストR3が絶縁層32の表面32s上に形成され、導体層2の下層2a(図1参照)を構成する金属膜2aaが例えばスパッタリングや無電解めっきによって形成される。金属膜2aaは、貫通孔32aの内壁上、絶縁層32の表面32s上、めっきレジストR3の表面上、および開口R31の内壁上に形成される。そして、金属膜2aaの上に、金属膜2aaを給電層として用いる電解めっきによって、導体層2の上層2b(図1参照)を構成する電解めっき膜2bbが形成される。電解めっき膜2bbが、絶縁層32の貫通孔32aを完全に充填して、ビア導体62が形成される。
【0049】
その後、電解めっき膜2bbの積層方向の一部がめっきレジストR3と共に研磨によって除去される。導体層2において平坦な上面12s(図3N参照)が得られる。その後、めっきレジストR2が除去される。以上の工程を経ることによって図1の例の配線基板100が完成する。
【0050】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、ならびに、本明細書において例示される構造、形状、および材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は任意の積層構造を有し得る。例えば実施形態の配線基板はコア基板を含まないコアレス基板であってもよい。実施形態の配線基板は任意の数の導体層および絶縁層を有し得る。例えば、図1の例のビア導体62は、同様の2層構造を有する導体ポストとして形成されていてもよい。絶縁層32の表面32s上の導体ポストの突出部においても、その側面が下層2aによって覆われているため、外的ストレスによる導体ポストの破断などが起こりにくい場合がある。また、絶縁層32がソルダーレジストとして設けられていてもよい。絶縁層31および導体層1を保護すると共に、導体層1の導体パターン11同士の短絡を抑制し得ると考えられる。
【符号の説明】
【0051】
100 配線基板
1 導体層(第1導体層)
11 導体パターン
112 配線パターン
113 ビアランド(第1ビアランド)
1a 第1層
1b 第2層
2 導体層(第2導体層)
2a 下層
2b 上層
3 導体層(第3導体層)
13 導体パターン
312 配線パターン
313 ビアランド
3a 下層
3b 上層
31 絶縁層(第1絶縁層)
31s 表面
32 絶縁層(第2絶縁層)
32s 表面
61、62、63 ビア導体
31a、32a、33a 貫通孔
L1 配線パターン112の配線幅
L2 配線パターン312の配線幅
S1 配線パターン112の配線同士の間隔
S2 配線パターン312の配線同士の間隔
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N