(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119430
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】レンズ装置およびレンズ制御方法
(51)【国際特許分類】
G03B 5/00 20210101AFI20230821BHJP
【FI】
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022334
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】503027931
【氏名又は名称】学校法人同志社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 大介
(72)【発明者】
【氏名】橋本 隼佑
【テーマコード(参考)】
2K005
【Fターム(参考)】
2K005CA25
2K005CA56
(57)【要約】
【課題】機械的可動部を用いることなく手振れ補正機能を発揮することが可能なレンズ装置を提供する。
【解決手段】レンズ部2および制御部6を備えるレンズ装置1Aであって、レンズ部2は、振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子5(Ch1~Ch4)と、超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズ4とを備え、制御部6は、複数の超音波振動子5(Ch1~Ch4)のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて、弾性レンズ4を偏心変形させることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ部および制御部を備えるレンズ装置であって、
前記レンズ部は、
振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子と、
前記超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズと、
を備え、
前記制御部は、
前記複数の超音波振動子のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて、前記弾性レンズを偏心変形させる
ことを特徴とするレンズ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記複数の超音波振動子に共通の電圧値の電気信号を印加する通常制御と、
前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせて前記電圧差を変化させる電圧差制御と、を行う
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記共通の周波数を前記レンズ部の共振周波数とは異なる値に設定した状態で前電圧差制御を行う
ことを特徴とする請求項2に記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせた状態で前記共通の周波数を変化させる周波数制御を行う
ことを特徴とする請求項2または3に記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記レンズ部では、前記超音波によりたわみ振動が励振され、
前記制御部は、
前記周波数制御の時に、前記たわみ振動が(n-1)次共振モード(nは2以上の整数)と(n+1)次共振モードとの間の状態になる周波数帯域において、前記共通の周波数を変化させる
ことを特徴とする請求項4に記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記複数の超音波振動子は、前記弾性レンズの周囲に配置され、かつ周方向にN分割されたN個の超音波振動子(Nは3以上の整数)を備え、
前記制御部は、
前記N個の超音波振動子に対して、異なる位相でかつ周方向に増加または減少させた位相の電気信号を印加し、前記弾性レンズの周方向に伝搬する前記超音波の進行波を生じさせる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のレンズ装置。
【請求項7】
振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子および前記超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズを備えるレンズ部と、制御部とを備えるレンズ装置のレンズ制御方法であって、
前記制御部により、前記複数の超音波振動子のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて、前記弾性レンズを偏心変形させるステップを含むことを特徴とするレンズ制御方法。
【請求項8】
前記制御部により、前記複数の超音波振動子に共通の電圧値の電気信号を印加する通常制御ステップと、
前記制御部により、前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせて前記電圧差を変化させる電圧差制御ステップと、を含む
ことを特徴とする請求項7に記載のレンズ制御方法。
【請求項9】
前記電圧差制御ステップでは、前記共通の周波数を前記レンズ部の共振周波数とは異なる値に設定した状態で前記電圧差を変化させる
ことを特徴とする請求項8に記載のレンズ制御方法。
【請求項10】
前記制御部により、前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせた状態で前記共通の周波数を変化させる周波数制御ステップを含む
ことを特徴とする請求項8または9に記載のレンズ制御方法。
【請求項11】
前記周波数制御ステップでは、前記制御部により、前記レンズ部で励振されたたわみ振動が(n-1)次共振モード(nは2以上の整数)と(n+1)次共振モードとの間の状態になる周波数帯域において、前記共通の周波数を変化させる
ことを特徴とする請求項10に記載のレンズ制御方法。
【請求項12】
前記複数の超音波振動子は、前記弾性レンズの周囲に配置され、かつ周方向にN分割されたN個の超音波振動子(Nは3以上の整数)を備え、
前記制御部により、前記N個の超音波振動子に対して、異なる位相でかつ周方向に増加または減少させた位相の電気信号を印加し、前記弾性レンズの周方向に伝搬する前記超音波の進行波を生じさせるステップを含む
ことを特徴とする請求項7~11のいずれか一項に記載のレンズ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ装置およびレンズ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なデジタルカメラやスマートフォンに搭載されるカメラモジュールには、レンズ装置が設けられている。従来のレンズ装置は、アクチュエータ等の機械的可動部によりレンズを移動・回転させることで、外部振動によって生じるレンズの位置や傾きの変化を補正し、撮影時の手振れ補正を行うことができる。
【0003】
しかしながら、機械的可動部の存在によって、部品数の増大、装置の大型化、耐震性の低下などの問題が生じる。そのため、機械的可動部を持たない手振れ補正機能を有する小型・薄型のレンズ装置を開発できれば、カメラモジュールの薄型化に繋がるとともに、耐震性および長寿命を要する車載用カメラモジュールへの応用展開も期待できる。
【0004】
ところで、機械的可動部を持たないレンズ装置としては、例えば、特許文献1に記載の可変焦点レンズが知られている。特許文献1に記載の可変焦点レンズは、中央開口部を有する環状の超音波振動子と、中央開口部に配置された透明粘弾性ゲルからなるレンズとを備える。特許文献1に記載の可変焦点レンズは、超音波振動子に印加する電気信号の電圧振幅値が大きいほどレンズの中心部を凸型形状の高さが高くなるため、電圧振幅値を制御することで、レンズの焦点距離を制御することができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の可変焦点レンズは、レンズの焦点距離を長くしたり短くしたりするだけで、レンズの焦点位置をレンズの径方向に移動させることはできず、手振れ補正機能を有するものではない。このため、特許文献1に記載の可変焦点レンズにおいて手振れ補正を行う場合、上記のレンズ装置と同様に、レンズの位置や傾きの変化を補正するための機械的可動部が必要になる。
【0006】
なお、特許文献2では、圧電素子で基板の所定領域を変位させることにより、基板の所定領域に直接作り込まれた光学素子の光軸を傾ける方法が提案されている。特許文献3では、圧電効果により圧電材料を変形させることで、レンズの形状を変形させてレンズの焦点距離を変化させる方法が提案されている。しかしながら、特許文献2および特許文献3の方法は、超音波の音響放射力を利用したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-61549号公報
【特許文献2】特開2010-210968号公報
【特許文献3】特開2002-243918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、機械的可動部を用いることなく手振れ補正機能を発揮することが可能なレンズ装置およびレンズ制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズ装置は、
レンズ部および制御部を備えるレンズ装置であって、
前記レンズ部は、
振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子と、
前記超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズと、
を備え、
前記制御部は、
前記複数の超音波振動子のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて、前記弾性レンズを偏心変形させることを特徴とする。
【0010】
前記レンズ装置において、
前記制御部は、
前記複数の超音波振動子に共通の電圧値の電気信号を印加する通常制御と、
前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせて前記電圧差を変化させる電圧差制御と、を行うよう構成できる。
【0011】
前記レンズ装置において、
前記制御部は、前記共通の周波数を前記レンズ部の共振周波数とは異なる値に設定した状態で前電圧差制御を行うことが好ましい。
【0012】
前記レンズ装置において、
前記制御部は、
前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせた状態で前記共通の周波数を変化させる周波数制御を行うよう構成できる。
【0013】
前記レンズ装置において、
前記レンズ部では、前記超音波によりたわみ振動が励振され、
前記制御部は、
前記周波数制御の時に、前記たわみ振動が(n-1)次共振モード(nは2以上の整数)と(n+1)次共振モードとの間の状態になる周波数帯域において、前記共通の周波数を変化させるよう構成できる。
【0014】
前記レンズ装置において、
前記複数の超音波振動子は、前記弾性レンズの周囲に配置され、かつ周方向にN分割されたN個の超音波振動子(Nは3以上の整数)を備え、
前記制御部は、
前記N個の超音波振動子に対して、異なる位相でかつ周方向に増加または減少させた位相の電気信号を印加し、前記弾性レンズの周方向に伝搬する前記超音波の進行波を生じさせるよう構成できる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るレンズ制御方法は、
振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子および前記超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズを備えるレンズ部と、制御部とを備えるレンズ装置のレンズ制御方法であって、
前記制御部により、前記複数の超音波振動子のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて、前記弾性レンズを偏心変形させるステップを含むことを特徴とする。
【0016】
前記レンズ制御方法は、
前記制御部により、前記複数の超音波振動子に共通の電圧値の電気信号を印加する通常制御ステップと、
前記制御部により、前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせて前記電圧差を変化させる電圧差制御ステップと、を含むよう構成できる。
【0017】
前記レンズ制御方法は、
前記電圧差制御ステップでは、前記共通の周波数を前記レンズ部の共振周波数とは異なる値に設定した状態で前記電圧差を変化させることが好ましい。
【0018】
前記レンズ制御方法は、
前記制御部により、前記複数の超音波振動子に異なる電圧値および共通の周波数の電気信号を印加し、少なくとも1組の電気信号間に電圧差を生じさせた状態で前記共通の周波数を変化させる周波数制御ステップを含むよう構成できる。
【0019】
前記レンズ制御方法において、
前記周波数制御ステップでは、前記制御部により、前記レンズ部で励振されたたわみ振動が(n-1)次共振モード(nは2以上の整数)と(n+1)次共振モードとの間の状態になる周波数帯域において、前記共通の周波数を変化させるよう構成できる。
【0020】
前記レンズ制御方法において、
前記複数の超音波振動子は、前記弾性レンズの周囲に配置され、かつ周方向にN分割されたN個の超音波振動子(Nは3以上の整数)を備え、
前記制御部により、前記N個の超音波振動子に対して、異なる位相でかつ周方向に増加または減少させた位相の電気信号を印加し、前記弾性レンズの周方向に伝搬する前記超音波の進行波を生じさせるステップを含むよう構成できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、機械的可動部を用いることなく手振れ補正機能を発揮することが可能なレンズ装置およびレンズ制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るレンズ装置であって、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るレンズ装置の基板上面の振動強度を示す図であって、(A)は電圧値が(0,10,10,10)Vppの時の図、(B)は電圧値が(10,10,10,10)Vppの時の図、(C)は電圧値が(20,10,10,10)Vppの時の図である。
【
図3】電圧値と最大振動位置の移動距離との関係を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るレンズ装置の基板上面の振動強度を示す図であって、(A)は周波数が32.5kHzの時の図、(B)は周波数が40.5kHzの時の図、(C)は周波数48.5kHzの時の図である。
【
図5】周波数と最大振動位置の移動距離との関係を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るレンズ装置であって、(A)は平面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るレンズ装置およびレンズ制御方法の実施形態について説明する。
【0024】
[第1実施形態]
(レンズ装置)
図1に、第1実施形態に係るレンズ装置1Aを示す。レンズ装置1Aは、レンズ部2(基板3、レンズ4、および超音波振動子5)と、制御部6とを備える。レンズ装置1Aは、例えば、デジタルカメラやスマートフォンに搭載されるカメラモジュールや車載用カメラモジュールに使用される。
【0025】
基板3は、円盤状に形成されたガラス基板である。基板3は、30[mm]の径、1.1[mm]の厚みを有する。
【0026】
レンズ4は、透明粘弾性ゲルからなる弾性レンズである。透明粘弾性ゲルは、可視光に対して透明であり、重力に抗して形状を維持することができ、かつ音響放射力による圧力によって形状を変形できるゲルである。本実施形態では、透明粘弾性ゲルとして、疎水性シリカ粒子とシリコーンオイルからなるシリコーンゲルを用いる。
【0027】
超音波振動子5は、円環形状の圧電超音波振動子であり、20[mm]の内径、30[mm]の外径、1[mm]の厚みを有する。本実施形態では、超音波振動子5を周方向に4分割して、第1の超音波振動子Ch1、第2の超音波振動子Ch2、第3の超音波振動子Ch3、および第4の超音波振動子Ch4としている。
【0028】
超音波振動子Ch1~Ch4は、基板3の上面に配置され、基板3の上面に中央開口部を形成する。中央開口部には、レンズ4が配置される。本実施形態では、レンズ4の中心軸と基板3の中心軸とが一致する。
【0029】
各超音波振動子Ch1~Ch4は、厚み方向(Z方向)に分極した圧電素子5a(本実施形態では、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))と、正電極5bおよび負電極5c(本実施形態では、いずれもアルミニウム電極)とを備える。正電極5bは、圧電素子5aの上面に形成されている。負電極5cは、圧電素子5aの上面から側面を経由して下面側(基板3側)にも形成されている。
【0030】
超音波振動子Ch1~Ch4間の隙間には、当該隙間からレンズ4を構成するゲルが流出するのを防ぐために、封止材料(例えば、エポキシ樹脂等の樹脂材料)が充填されている。なお、本実施形態では、圧電素子5aを4分割しているが、分割されていない円環形状の圧電素子5aを用いて、その上面に
図1(A)と同様に各超音波振動子Ch1~Ch4の正電極5bおよび負電極5cを形成してもよい。下面側の負電極5cは、4分割されていてもよいし、分割されていなくてもよい。
【0031】
制御部6は、超音波振動子Ch1~Ch4に電気信号(本実施形態では、交流電圧信号)を印加する駆動回路DC1~DC4と、駆動回路DC1~DC4が出力する上記電気信号の位相、電圧値(本実施形態では、ピーク間電圧値)および周波数を制御する制御回路とを備える。駆動回路DC1~DC4および制御回路は、アナログ回路および/またはデジタル回路で構成される。
【0032】
制御部6は、レンズ4の焦点距離を制御するための通常制御と、レンズ4を偏心変形させるため、すなわちレンズ4の焦点をレンズ4の径方向(XY方向)に移動させるための補正制御とを行う。
【0033】
通常制御時の制御部6は、超音波振動子Ch1~Ch4のそれぞれに対して、共通の電圧値、共通の周波数および共通の位相の電気信号を印加する。これにより、超音波振動子Ch1~Ch4は、同じ振動状態となり、各電気信号に応じた所定の周波数の超音波を発生させる。
【0034】
超音波振動子Ch1~Ch4で発生した超音波が基板3に伝搬すると、基板3ではたわみ振動が励振され、たわみ振動の定在波(音響定在波)が発生する。その結果、レンズ4の上面と空気との境界面、レンズ4の下面と基板3との境界面、基板3の下面と空気との境界面に、定在波の音響放射力による圧力が働く。ただし、レンズ4の変形に最も寄与するのは、レンズ4の上面と空気との境界面に働く定在波の音響放射力である。当該音響放射力による圧力は、レンズ4の中心部で高くなり、中心部を隆起させてレンズ4を凸型形状に変形させる。
【0035】
制御部6が電気信号の共通の電圧値を増減させると、定在波の音響放射力による圧力が変化し、レンズ4の中心部の凸型形状の高さも変化して、レンズ4の焦点距離が変化する。したがって、制御部6で電気信号の共通の電圧値を制御することにより、凸型形状において焦点距離を制御することができる。
【0036】
補正制御時の制御部6は、超音波振動子Ch1~Ch4のうちの一部の振動子の振動状態を他の振動子の振動状態と異ならせる制御として、電圧差制御および周波数制御を行う。
【0037】
電圧差制御時の制御部6は、超音波振動子Ch1~Ch4に対して、異なる電圧値、共通の周波数および共通の位相の電気信号を印加し、電気信号間に電圧差を生じさせた状態で当該電圧差を変化させる。例えば、制御部6は、超音波振動子Ch1~Ch4のうちの一部の振動子に印加する電気信号のピーク間電圧値と、他の振動子に印加する電気信号のピーク間電圧値との間に電圧差を生じさせる。
【0038】
電圧差を生じさせた状態で超音波振動子Ch1~Ch4が超音波を発生すると、基板3では基板3の中心軸に対して非軸対称のたわみ振動が励振され、非軸対称のたわみ振動の定在波(非軸対称の音響定在波)が発生する。主にレンズ4の上面と空気との境界面には、非軸対称の音響放射力による圧力が働き、当該圧力はレンズ4の中心軸から径方向にずれた位置で高くなり、当該中心軸からずれた位置を隆起させてレンズ4の形状を変形させる。
【0039】
制御部6が電気信号間の電圧差を増減させると、たわみ振動の振動分布すなわち音響放射力の圧力分布がレンズ4の径方向に移動する。すなわち、電圧差を増減させると、レンズ4の最大隆起位置がレンズ4の中心軸から遠ざかったり、近づいたりする。したがって、制御部6が電気信号間の電圧差を制御することにより、レンズ4の焦点位置を制御して、手振れ補正機能を発揮させることができる。
【0040】
ところで、電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数と同じ値にした場合、基板3に励振されるたわみ振動は共振状態(共振モード)になる。共振状態では、たわみ振動の最大振動位置がレンズ4の中心軸と一致する振動分布となり、さらに最大振動位置の振動振幅が増大するので、制御部6が電圧差制御を行っても、たわみ振動の軸対称性は維持される(たわみ振動の振動分布がレンズ4の径方向に移動しない)。このため、制御部6は、電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数とは異なる値に設定し、電圧差制御を行うことが好ましい。
【0041】
なお、電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数と同じ値に設定して電圧差制御を行っても、例えば、電気信号間の電圧差を大きくしたり、レンズ4の構成を変更(例えば、より粘度の低い材料を用いる等)したりすることによって、たわみ振動の振動分布をレンズ4の径方向に移動させることができる場合がある。
【0042】
周波数制御時の制御部6は、超音波振動子Ch1~Ch4に対して、異なる電圧値、共通の周波数および共通の位相の電気信号を印加し、電気信号間に電圧差を生じさせた状態で上記周波数を変化させる。
【0043】
電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数と同じ値にしたときは、上記のとおり、たわみ振動の最大振動位置はレンズ4の中心軸と一致する。電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数よりも下げていくと、たわみ振動の最大振動位置はレンズ4の中心軸から径方向の一方側に離れていく。電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数よりも上げていくと、たわみ振動の最大振動位置はレンズ4の中心軸から径方向の他方側に離れていく。
【0044】
電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数と同じ値にしたときのたわみ振動をn次共振モードのたわみ振動とした場合、たわみ振動は、電気信号の周波数を下げていくと(n-1)次共振モードに遷移し始め、電気信号の周波数を上げていくと(n+1)次共振モードに遷移し始める。n次共振モードから離れるほど共振の影響が小さくなる一方で、(n-1)次共振モードまたは(n+1)次共振モードに近づくほど共振の影響が大きくなる。このような共振モードの遷移による共振の影響を受けて、たわみ振動の振動分布はレンズ4の径方向に移動する。
【0045】
制御部6が電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数の近傍で変化させると、たわみ振動の振動分布すなわち音響放射力の圧力分布がレンズ4の径方向に移動するので、レンズ4の最大隆起位置も径方向に移動する。したがって、制御部6が電気信号の周波数を制御することにより、レンズ4の焦点位置を制御して、手振れ補正機能を発揮させることができる。
【0046】
なお、電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数よりも下げていく場合(または上げていく場合)に、たわみ振動の最大振動位置がレンズ4の径方向のどちら側に移動するかは、レンズ部2の構成や電気信号間の電圧差等によって変わる。したがって、例えば、電気信号の周波数、電気信号間の電圧差およびたわみ振動の最大振動位置の移動方向との関係を示すデータを予め作成しておき、当該データを制御部6に記憶させておくことが好ましい。これにより、制御部6は、当該データを参照しつつ周波数制御を行うことができる。
【0047】
(レンズ制御方法)
第1実施形態に係るレンズ制御方法は、レンズ装置1Aの制御方法である。すなわち、当該レンズ制御方法は、制御部6が通常制御を行う第1ステップと、制御部6が電圧差制御を行う第2ステップと、制御部6が周波数制御を行う第3ステップとを含む。当該レンズ制御方法では、各ステップを任意の順に行ってもよいし、制御は複雑化するが複数のステップを同時に行ってもよい。通常制御、電圧差制御および周波数制御は、上記で説明したとおりであるため、ここでは省略する。
【0048】
(評価実験)
次に、レンズ装置1Aおよびそのレンズ制御方法の評価実験について説明する。
【0049】
図2は、レーザドップラー振動計(LDV)を用いて測定した、基板3の上面の中心から所定範囲における振動強度分布を示す画像である。
図2では、レンズ4の上面と基板3の上面からのレーザ反射光が干渉するのを避けるため、レンズ4を取り除いて測定した。
【0050】
超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号のピーク間電圧値を(V1,V2,V3,V4)Vppとする。
図2(A)は(0,10,10,10)Vppで測定し、
図2(B)は(10,10,10,10)Vppで測定し、
図2(C)は(20,10,10,10)Vppで測定したものである。超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号の周波数は、レンズ4のないレンズ部2の共振周波数(40.5[kHz])とは異なる36.5[kHz]に設定している。
【0051】
図3は、超音波振動子Ch1に印加するピーク間電圧値V1[Vpp]と、最大振動位置の基板3の中心軸(=レンズ4の中心軸)から移動距離との関係を示す図である。
【0052】
図2および
図3から、V1=10[Vpp]の場合に最大振動位置が基板3の中心軸と一致し、V1>10[Vpp]の場合は最大振動位置が超音波振動子Ch1に近づく方向に移動し、V1<10[Vpp]の場合は最大振動位置が超音波振動子Ch3に近づく方向に移動することが分かる。
【0053】
基板3の最大振動位置は、レンズ4がある場合の音響放射力の圧力が最大となる位置に相当し、レンズ4の最大隆起位置に相当する。したがって、
図2および
図3から、制御部6が超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号間の電圧差を制御することにより、レンズ4の焦点位置を制御できることが分かる。
【0054】
図4は、
図2と同様に測定した振動強度分布を示す画像である。
図4では、超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号のピーク間電圧値を(0,10,10,10)Vppに固定し、周波数のみを変化させて測定した。
図4(A)は周波数32.5[kHz]で測定し、
図4(B)は周波数40.5[kHz](=レンズ4のないレンズ部2の共振周波数)で測定し、
図4(C)は周波数48.5[kHz]で測定したものである。
【0055】
図4(B)では、基板3に励振されるたわみ振動は、2次共振モードの共振状態になる。一方、
図4(A)では、1次共振モードと2次共振モードとの間の遷移状態になり、
図4(C)では、2次共振モードと3次共振モードとの間の遷移状態になる。
【0056】
図5は、超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号の周波数と、最大振動位置の基板3の中心軸(=レンズ4の中心軸)から移動距離との関係を示す図である。
【0057】
図4および
図5から、電気信号の周波数を共振周波数40.5[kHz]に設定した場合に最大振動位置が基板3の中心軸と一致し、電気信号の周波数が共振周波数よりも低い場合は最大振動位置が超音波振動子Ch1に近づく方向に移動し、電気信号の周波数が共振周波数よりも高い場合は最大振動位置が超音波振動子Ch3に近づく方向に移動することが分かる。
【0058】
したがって、
図4および
図5から、制御部6が超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号の周波数を制御することにより、レンズ4の焦点位置を制御できることが分かる。本実施形態では、たわみ振動が1次共振モードと3次共振モードとの間の状態になる周波数帯域(すなわち、2次共振モードの前後の周波数帯域)において、周波数を変化させることが好ましい。
【0059】
また、電圧差制御によりレンズ4の焦点位置をレンズ4の中心軸から移動させた場合、周波数制御により電気信号の周波数をレンズ部2の共振周波数に設定することで、超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号間に電圧差を生じさせた状態であっても、レンズ4の焦点位置をレンズ4の中心軸に戻すことができる。
【0060】
[第2実施形態]
(レンズ装置)
図6に、第2実施形態に係るレンズ装置1Bを示す。レンズ装置1Bは、レンズ4の代わりにレンズ4’を備える点、制御部6の代わりに制御部6’を備える点を除いて、第1実施形態と共通する。
【0061】
図6(B)に示すように、レンズ4’は、液体材料4aと、液体材料4aの表面(上面)を覆うように形成された膜材料4bとを含む。このように、本発明においては、液体材料と膜材料とで構成されたレンズを液体レンズ(本発明の「弾性レンズ」に相当)という。
【0062】
液体材料4aは、可視光に対して透明な、液体もしくは液体に近い低粘性のものであればよい。液体材料4aとしては、例えば、水、シリコーンオイル、またはフッ素系不活性液体を用いることができる。液体材料4aは、超音波振動子5の中央開口部に充填された状態で、例えば、300[μm]~1000[μm]の厚みを有する。
【0063】
膜材料4bは、可視光に対して透明であり、重力に抗して形状(レンズ4’の形状)を維持することができ、かつ音響放射力による圧力によって形状を変形できる膜であればよい。本実施形態では、平坦な形状から凹状または凸状に湾曲した形状に変形する。膜材料4bとしては、例えば、シリコーンゴム(例えば、PDMS)、フッ素ゴム、またはウレタンゴムを用いることができる。膜材料4bは、例えば、50[μm]~500[μm]の厚みを有し、液体材料4aよりも薄い方が好ましい。
【0064】
本実施形態では、膜材料4bは、所定の張力を有するように、液体材料4aの上面にのみ形成されているが、液体材料4aの上面に加えて、液体材料4aの側面(外周面)に形成されてもよいし、液体材料4aの下面に形成されてもよい。また、膜材料4bの厚みを均一にしているが、不均一にしてもよい。例えば、膜材料4bの中心部と周辺部とで厚みを変えてもよい。さらに、超音波振動子5に電気信号を印加していない状態において、膜材料4bは平坦な形状であるが、凹状または凸状に湾曲した形状であってもよい。
【0065】
制御部6’は、制御部6と同様の構成であり、制御部6が行う通常制御(第1通常制御)および補正制御(第1補正制御)を行い、さらに第2通常制御および第2補正制御を行う。第1通常制御および第1補正制御は、たわみ振動の定在波を発生させる制御であるのに対して、第2通常制御および第2補正制御は、たわみ振動の進行波を発生させる制御である。
【0066】
第2通常制御時の制御部6’は、超音波振動子Ch1~Ch4に対して、共通の電圧値および共通の周波数の電気信号であって、周方向に位相を90°ずつずらした(90°ずつ増加させた)電気信号を印加する。すなわち、駆動回路DC1が超音波振動子Ch1に印加する電気信号に対して、駆動回路DC2が超音波振動子Ch2に印加する電気信号は90°の位相差を有し、駆動回路DC3が超音波振動子Ch3に印加する電気信号は180°の位相差を有し、駆動回路DC4が超音波振動子Ch4に印加する電気信号は270°の位相差を有する。超音波振動子Ch1~Ch4は、各電気信号に応じた超音波を発生させる。
【0067】
超音波振動子Ch1~Ch4で発生した超音波が基板3に伝搬すると、基板3ではたわみ振動が励振され、周方向に伝搬するたわみ振動の進行波(音響進行波)が発生する。その結果、膜材料4bの上面と空気との境界面、膜材料4bの下面と液体材料4aの上面との境界面、液体材料4aの下面と基板3の上面との境界面、基板3の下面と空気との境界面に、進行波の音響放射力による圧力が働く。ただし、レンズ4’の変形に最も寄与するのは、膜材料4bの上面と空気との境界面に働く進行波の音響放射力である。当該音響放射力による圧力は、膜材料4bの上面の周辺部で高くなり、膜材料4bの周辺部を隆起させる。膜材料4bの周辺部が隆起した分、膜材料4bの中心部は沈降し(液体材料4aの周辺部は厚みが増加する一方、液体材料4aの中心部は厚みが減少し)、レンズ4’は凹型形状に変形する。
【0068】
また、電気信号の共通の電圧値を増減させると、進行波の音響放射力による圧力が変化し、レンズ4’の中心部の凹型形状の深さも変化して、焦点距離が変化する。したがって、制御部6’で電気信号の電圧値を制御することにより、凹型形状において焦点距離を制御することができる。
【0069】
第2補正制御時の制御部6’は、超音波振動子Ch1~Ch4のうちの一部の振動子の振動状態を他の振動子の振動状態と異ならせる制御として、電圧差制御および周波数制御を行う。以下、第2補正制御時の電圧差制御および周波数制御について説明する。
【0070】
電圧差制御時の制御部6’は、超音波振動子Ch1~Ch4に対して、異なる電圧値、共通の周波数および90°ずつずらした位相の電気信号を印加し、電気信号間に電圧差を生じさせた状態で当該電圧差を変化させる。例えば、制御部6’は、超音波振動子Ch1~Ch4のうちの一部の振動子に印加する電気信号のピーク間電圧値と、他の振動子に印加する電気信号のピーク間電圧値との間に電圧差を生じさせる。
【0071】
電圧差を生じさせた状態で超音波振動子Ch1~Ch4が超音波を発生すると、基板3ではたわみ振動が励振され、周方向に伝搬するたわみ振動の進行波(音響進行波)が発生する。たわみ振動の進行波は、第2通常制御時の進行波と比較して、振動分布が基板3の径方向にずれている。このような進行波が発生すると、主にレンズ4’の上面と空気との境界面に音響放射力による圧力が働き、当該圧力は第2通常制御時と比較してレンズ4’の径方向にずれる。その結果、レンズ4’の凹型形状も径方向にずれる。
【0072】
制御部6’が超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号間の電圧差を変化させると、たわみ振動の振動分布すなわち音響放射力の圧力分布がレンズ4’の径方向に移動するので、レンズ4’の凹型形状も径方向に移動する。したがって、制御部6’が電気信号間の電圧差を制御することにより、レンズ4’の焦点位置を制御して、手振れ補正機能を発揮させることができる。
【0073】
周波数制御時の制御部6’は、超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号間に電圧差を生じさせた状態で、超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号の共通の周波数を変化させる。原理は第1実施形態と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0074】
制御部6’が超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号の周波数を変化させると、たわみ振動の振動分布すなわち音響放射力の圧力分布がレンズ4’の径方向に移動するので、レンズ4’の凹型形状も径方向に移動する。したがって、制御部6’が電気信号の周波数を制御することにより、レンズ4’の焦点位置を制御して、手振れ補正機能を発揮させることができる。
【0075】
(レンズ制御方法)
第2実施形態に係るレンズ制御方法は、レンズ装置1Bの制御方法である。すなわち、当該レンズ制御方法は、制御部6’が第1通常制御を行う第1ステップと、制御部6’が第1補正制御の電圧差制御を行う第2ステップと、制御部6’が第1補正制御の周波数制御を行う第3ステップと、制御部6’が第2通常制御を行う第4ステップと、制御部6’が第2補正制御の電圧差制御を行う第5ステップと、制御部6’が第2補正制御の周波数制御を行う第6ステップとを含む。
【0076】
当該レンズ制御方法では、各ステップを任意の順に行ってもよいし、制御は複雑化するが複数のステップを同時に行ってもよい。各制御は、上記で説明したとおりであるため、ここでは省略する。
【0077】
[変形例]
以上、本発明に係るレンズ装置およびレンズ制御方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0078】
本発明に係るレンズ装置は、レンズ部および制御部を備えるレンズ装置であって、レンズ部は、振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子と、超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズと、を備え、制御部は、複数の超音波振動子のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて音響放射力の圧力分布を弾性レンズの径方向に移動させることにより、弾性レンズを偏心変形させるのであれば、適宜構成を変更できる。
【0079】
超音波振動子は少なくとも2つあれば、例えば、上下方向の手振れ補正を行うことができる。
【0080】
第1実施形態では、電圧差制御において超音波振動子Ch1に印加する電気信号のピーク間電圧値のみ変化させているが、少なくとも1組の電気信号間に電圧差が生じるのであれば、他の超音波振動子Ch2~Ch4に印加する電気信号のピーク間電圧値を変化させてもよいし、すべての超音波振動子Ch1~Ch4に印加する電気信号のピーク間電圧値を変化させてもよい。
【0081】
第1実施形態に係るレンズ装置1Aは、基板3を備えているが、レンズ4を超音波振動子5の中央開口部に保持できるのであれば、基板3を備えていなくてもよい。第2実施形態に係るレンズ装置1Bにおいても、同様に基板3を省略できるが、その場合、膜材料4bを液体材料4aの下面にも形成する必要がある。基板3を備える場合、基板3はたわみ振動が励振される構成であればよい。
【0082】
第1実施形態のレンズ4は、可視光に対して透明であるように構成されているが、レンズ4で使用する光の波長領域に対して透明であるように構成できる。例えば、紫外光を使用するのであれば紫外光に対して透明であればよく、赤外光を使用するのであれば赤外光に対して透明であればよい。第2実施形態のレンズ4’を構成する液体材料4aおよび膜材料4bも同様に、使用する光の波長領域に対して透明であるように構成できる。
【0083】
第1実施形態において、第2実施形態のレンズ4’を用いてもよいし、第2実施形態において、第1実施形態のレンズ4を用いてもよい。
【0084】
第2実施形態では、制御部6’は、超音波振動子Ch1~Ch4に対して周方向に位相を90°ずつ増加させた電気信号を印加しているが、レンズ4’の周方向に伝搬する超音波の進行波を生じさせることができるのであれば、任意の位相の電気信号を印加してもよい。
【0085】
本発明に係るレンズ制御方法は、振動して超音波を発生させる複数の超音波振動子および超音波により生じる音響放射力によって形状を変形させる弾性レンズを備えるレンズ部と、制御部とを備えるレンズ装置のレンズ制御方法であって、制御部により、複数の超音波振動子のうちの一部の超音波振動子の振動状態を他の超音波振動子の振動状態と異ならせて、弾性レンズを偏心変形させるステップを含むのであれば、適宜構成を変更できる。
【符号の説明】
【0086】
1A、1B レンズ装置
2 レンズ部
3 基板
4、4’ レンズ
4a 液体材料
4b 膜材料
5 超音波振動子
5a 圧電素子
5b 正電極
5c 負電極
6、6’ 制御部