(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119452
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】システム、配合比決定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20230821BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B29C45/76
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022365
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 遼太郎
【テーマコード(参考)】
3C100
4F206
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA34
3C100AA57
3C100BB05
3C100BB13
3C100BB15
3C100EE12
4F206AA50
4F206AB07
4F206AM23
4F206AP03
4F206AR03
4F206JA07
4F206JL09
(57)【要約】
【課題】汎用的な射出成形機を用いた場合でも、材料製造ロットごとの流動性の違いを補償して品質安定化を図ることができる流動性改質剤のより適切な配合比を決定することができる。
【解決手段】 少なくとも、一つ以上のプロセッサと、一つ以上の記憶媒体と、を有するシステムであって、前記プロセッサは、材料を用いた製品の製造設備に設置したセンサのセンサ値から得られる情報と、当該情報に対応する前記材料に含まれる流動性改質剤の配合比と、を学習することで、前記材料と同一型番の材料が目的とする流動性を得ることができる前記流動性改質剤の配合比を予測する学習済み予測モデルを生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一つ以上のプロセッサと、一つ以上の記憶媒体と、を有するシステムであって、
前記プロセッサは、
材料を用いた製品の製造設備に設置したセンサのセンサ値から得られる情報と、当該情報に対応する前記材料に含まれる流動性改質剤の配合比と、を学習することで、前記材料と同一型番の材料が目的とする流動性を得ることができる前記流動性改質剤の配合比を予測する学習済み予測モデルを生成する
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、
前記材料と同一型番における新たな材料について前記センサから得られた情報と、前記目的とする流動性と、を前記学習済み予測モデルに入力することで得られる配合比を、当該材料における前記流動性改質剤の配合比に決定する
ことを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、
前記材料について、前記流動性改質剤が未添加の状態における前記センサ値と、前記流動性改質剤が所定の配合比で添加された状態における前記センサ値と、の各々から当該材料の流動性に相関する特徴量を算出し、
算出した前記特徴量を前記センサ値から得られる情報として所定の予測モデルに入力することで、前記学習済み予測モデルを生成する
ことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、
前記材料と同一型番における材料について、前記流動性改質剤が未添加の状態における試し成形により前記センサ値から得られた前記情報と、当該情報および目的とする流動性を前記学習済み予測モデルに入力することで得られた前記流動性改質剤の配合比と、を関連付けて前記学習済み予測モデルに入力することで、当該学習済み予測モデルの再学習を行う
ことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、
前記材料と同一型番における材料について、前記流動性改質剤を所定の配合比で添加した状態における量産製造により前記センサ値から得られた前記情報と、当該情報および目的とする流動性を前記学習済み予測モデルに入力することで得られた前記流動性改質剤の所定の配合比と、を関連付けて前記学習済み予測モデルに入力することで、当該学習済み予測モデルの再学習を行う
ことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムであって、
前記材料は、少なくともその一部にリサイクル材を含む材料である
ことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項3に記載のシステムであって、
前記特徴量には、
ピーク圧力、射出工程における圧力積分値、射出開始から終了までの圧力の積分値および最大微分値のうち、少なくとも一つ以上が含まれる
ことを特徴とするシステム。
【請求項8】
少なくとも、一つ以上のプロセッサと、一つ以上の記憶媒体と、を有するシステムが行う配合比決定方法であって、
前記プロセッサは、
材料を用いた製品の製造設備に設置したセンサのセンサ値から得られる情報と、当該情報に対応する前記材料に含まれる流動性改質剤の配合比と、を学習することで、前記材料と同一型番の材料が目的とする流動性を得ることができる前記流動性改質剤の配合比を予測する学習済み予測モデルを生成するステップを行う
ことを特徴とする配合比決定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の配合比決定方法であって、
前記プロセッサは、
前記材料と同一型番における新たな材料について前記センサから得られた情報と、前記目的とする流動性と、を前記学習済み予測モデルに入力することで得られる配合比を、当該材料における前記流動性改質剤の配合比に決定するステップを行う
ことを特徴とする配合比決定方法。
【請求項10】
少なくとも、一つ以上のプロセッサと、一つ以上の記憶媒体と、を有するシステムで実行されるプログラムであって、
前記プロセッサが、
材料を用いた製品の製造設備に設置したセンサのセンサ値から得られる情報と、当該情報に対応する前記材料に含まれる流動性改質剤の配合比と、を学習することで、前記材料と同一型番の材料が目的とする流動性を得ることができる前記流動性改質剤の配合比を予測する学習済み予測モデルを生成する、
という処理を実行するためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムであって、
前記プロセッサが、
前記材料と同一型番における新たな材料について前記センサから得られた情報と、前記目的とする流動性と、を前記学習済み予測モデルに入力することで得られる配合比を、当該材料における前記流動性改質剤の配合比に決定する、
という処理を実行するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、配合比決定方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、射出成形機に関し、「射出成形プロセスを自動的に調整して、溶融プラスチック材料の流動性における変動を補償する方法であって、該方法は、少なくとも1つの金型キャビティを備える射出成形機を提供する工程と、圧力制御出力を含む射出成形コントローラを提供する工程であって、該圧力制御出力は、該射出成形機の該射出成形プロセスに対する射出成形圧力を少なくとも部分的に決定する制御信号を生成するように構成される、工程と、を含み、該方法は、射出成形サイクルにおける第1の時間で、該圧力制御出力から生成された第1の制御信号を測定する工程と、該第1の時間に続く、該射出成形サイクルにおける第2の時間で、該圧力制御出力から生成された第2の制御信号を測定する工程と、該圧力制御出力から生成された該第1の制御信号と、該圧力制御出力から生成された該第2の制御信号とを比較して、比較結果を得る工程と、該第2の時間に続く第3の時間で、該比較結果の少なくとも一部に基づいて、該圧力制御出力に対する第3の制御信号を決定する工程と、を更に含むことを特徴とする、方法。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、射出成形運転中における材料の流動性の変化を考慮する射出成形機が開示されている。また、同文献に開示される方法では、圧力制御出力から生成された制御信号に基づき、1つの成形品を得るためのサイクルであるショット中あるいは次のショットにおける圧力の制御信号を決定している。そのため、同文献に記載の技術では、制御信号の測定および新たな制御信号の決定に対応する射出成形コントローラを搭載した射出成形機が必要となる。
【0005】
一方で、複数の射出成形機を保有する製造メーカにとっては、各々の射出成形機をかかるコントローラが搭載されている射出成形機に更新することはコスト面の負担が大きい。また、耐用年数以内の射出成形機を更新することは、資源の有効利用の観点からも好ましくない。
【0006】
また、従来の大量消費、大量廃棄のリニアエコノミーから循環型のサーキュラーエコノミーに転換する社会潮流の中、廃棄物から材料を回収して再生されたリサイクル材を活用する社会的要求が高まっている。また、パリ協定で定められた1.5℃シナリオの実現に向け世界各国でカーボンニュートラルの目標設定がなされており、バージン材に対して製造時のCO2の排出が少ないリサイクル材の活用は、製造メーカにとって喫緊の課題となっている。
【0007】
一方で、リサイクル材は、回収した廃材の来歴によって物性が異なるため、材料製造ロットごとに流動性が大きく異なる場合がある。そのため、製造メーカは、既設の射出成形機も活用しつつ、リサイクル材の材料製造ロットごとに異なる流動性についても考慮して製品製造を行う必要がある。したがって、特許文献1に記載される技術のように、射出成形機自体の高性能化だけでは、リサイクル材の活用というニーズを満たすことが難しい、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、汎用的な射出成形機を用いた場合でも、材料製造ロットごとの流動性の違いを補償して品質安定化を図ることができる流動性改質剤のより適切な配合比を決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記の課題を解決する本発明の一態様に係るシステムは、少なくとも、一つ以上のプロセッサと、一つ以上の記憶媒体と、を有するシステムであって、前記プロセッサは、材料を用いた製品の製造設備に設置したセンサのセンサ値から得られる情報と、当該情報に対応する前記材料に含まれる流動性改質剤の配合比と、を学習することで、前記材料と同一型番の材料が目的とする流動性を得ることができる前記流動性改質剤の配合比を予測する学習済み予測モデルを生成する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汎用的な射出成形機を用いた場合でも、材料製造ロットごとの流動性の違いを補償して品質安定化を図ることができる流動性改質剤のより適切な配合比を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第一実施形態に係るシステムの機能構成の一例を示した概略構成図である。
【
図3】学習済み予測モデルの生成処理の一例を示したフロー図である。
【
図4】配合比決定処理の一例を示したフロー図である。
【
図5】実施形態による効果を検証するための実験例の概要を示した図である。
【
図6】第一実施形態に係るシステムのハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図7】第二実施形態に係るシステムのハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図8】第三実施形態に係るシステムのハードウェア構成の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の各実施形態について説明する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態に係るシステム1000の機能構成の一例を示した概略構成図である。図示するように、本システム1000は、複数のサブシステムを有し、システム1000全体として材料(例えば、リサイクル材あるいはリサイクル材を一部に含む原材料)に添加する流動性改質剤の配合比を求め、求めた配合比で流動性改質剤を添加した材料を用いて製品の製造を実行する。
【0014】
具体的には、本システム1000は、生産管理システム100、製造統括システム200、配合比決定システム300および製造実行システム400というサブシステムを有している。また、各サブシステムは、相互に連携して各種の処理を実行する。
【0015】
また、本システム1000は、サブシステム以外にも、図示しない機能部を有している。具体的には、本システム1000は、当該システム1000が備える入力装置を介してユーザからの指示や情報の入力を受け付ける入力受付部を有している。また、本システム1000は、当該システム1000が備える出力装置(ディスプレイ)に表示される表示情報(画面情報)を生成する出力表示部を有している。
【0016】
また、本システム1000は、様々な情報を記憶する記憶部を有している。具体的には、記憶部は、配合比決定システム300に用いられる配合比情報DB320と、流動性情報DB340と、予測モデルDB360と、を有している。また、記憶部は、製造実行システム400に用いられる学習用射出成形プロセス421、試し射出成形プロセス422および量産射出成形プロセス423を格納した射出成形プロセスDB420を有している。
【0017】
また、本システム1000は、外部装置(例えば、製造設備500)との間で情報通信を行う通信部を有している。具体的には、通信部は、例えばインターネット等の公衆網やLAN(Local Area Network)あるいはWAN(Wide Area Network)などの通信経路(
図8に示すCN2)を介して外部装置と相互通信可能に接続されている。
【0018】
なお、これらの入力受付部、出力表示部、記憶部および通信部は、各サブシステムの機能部と協働して様々な処理を実行する。
【0019】
次に、生産管理システム100の機能構成について説明する。
【0020】
生産管理システム100は、生産計画の管理に関する様々な処理を実行する処理部として機能する。具体的には、生産管理システム100は、生産計画管理部110を有している。生産計画管理部110は、受注状況および在庫状況に合わせて、生産仕様、数量、および時期などを含む生産計画を生成する機能部である。
【0021】
次に、製造統括システム200の機能構成について説明する。
【0022】
製造統括システム200は、製造実行システム400に対して所定種類の製造指示を行うなど、製造に関する統括的な処理を行う処理部として機能する。具体的には、製造統括システム200は、製造条件決定部210と、配合比取得部220と、製造指示部230と、を有している。
【0023】
製造条件決定部210は、生産計画管理部110により生成された生産計画を用いて製造条件を決定する機能部である。なお、製造条件には、例えば製品の製造設備500(本例では、例えば製品製造に用いられる射出成形機などの製造機器510を含む)を特定する情報と、製造に使用する材料の型番(以下、材料型番という場合がある)およびその製造ロット(以下、材料製造ロットという場合がある)を特定する情報と、流動性改質剤の型番と、目的とする流動性の値と、生産する製品の数量および生産時期と、が含まれる。
【0024】
ここで、材料型番とは、材料の特性を識別するために材料メーカが定めている識別情報(例えば、番号)である。また、材料製造ロットとは、同一の型番の材料に対して材料メーカが定めている生産あるいは納品の最小単位である。また、流動性改質剤の型番とは、流動性改質剤のメーカが提供する流動性改質剤の特性を識別するために材料メーカが定めている識別情報(例えば、番号)である。また、目的とする流動性の値とは、射出成形時の材料の流動性を示す値であって、流動性改質剤を所定の配合比で材料に添加することで得られる流動性の値である。なお、流動性改質剤の配合比は、材料の量に対する流動性改質剤の量の割合を示し、例えば重量比(重量パーセント)や重量部(PHR:Part Hundred Resin)で管理される。
【0025】
配合比取得部220は、材料に対する流動性改質剤の配合比に関する情報を配合比決定システム300から取得する機能部である。具体的には、配合比取得部220は、流動性改質剤の配合比の決定に必要な基礎的情報を配合比決定システム300に送ることにより、配合比決定システム300から流動性改質剤の配合比を取得する。なお、かかる基礎的情報には、例えば材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、目的とする流動性の値と、が含まれる。なお、目的とする流動性の値は、後述するように、材料型番、材料製造ロットおよび流動性改質剤の型番に対応する配合比が未決定の場合、学習済み予測モデルを用いてかかる配合比を求める際に配合比決定システム300で使用される。
【0026】
また、配合比取得部220は、使用する材料製造ロットと流動性改質剤の型番との組み合わせにおける配合比を配合比決定システム300から取得した場合、製造条件決定部210により決定された前述の製造条件と、配合比決定システム300から取得した流動性改質剤の配合比と、に基づく製品の量産製造を製造指示部230に要求する。
【0027】
また、配合比取得部220は、使用する材料型番の材料製造ロットと流動性改質剤の型番との組み合わせにおける配合比が未決定であることを示す情報を配合比決定システム300から取得した場合、すなわち、かかる材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルは存在するものの、かかる材料製造ロットにおける流動性改質剤の配合比が求められていない場合、その配合比を決定するための試し成形を製造指示部230に要求する。
【0028】
また、配合比取得部220は、使用する材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルが存在しないことを示す情報を配合比決定システム300から取得した場合、かかる予測モデルを生成するための学習用成形を製造指示部230に要求する。
【0029】
なお、試し成形とは、流動性改質剤の配合比を決定するために、流動性改質剤が未添加の状態で、使用する材料製造ロットの射出成形を行うプロセスを指す。
【0030】
また、学習用成形とは、使用する材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルを生成するための射出成形プロセスであって、使用する材料型番における複数の材料製造ロットと、使用する流動性改質剤の型番と、の組み合わせごとに複数の配合比で行われる射出成形プロセスである。なお、複数の配合比には、流動性改質剤の配合比が「0(ゼロ)」すなわち流動性改質剤が未添加の場合も含まれる。
【0031】
製造指示部230は、製造実行システム400に対して製造の実行を指示する機能部である。具体的には、製造指示部230は、配合比取得部220からの要求に基づいて、量産製造、試し成形または学習用成形のいずれかの製造(成形)指示を製造実行部410に出力する。
【0032】
具体的には、製造指示部230は、量産製造を指示する場合、製造条件決定部210で決定された製品の製造設備500を特定する情報と、製造に使用する材料型番およびその材料製造ロットを特定する情報と、流動性改質剤の型番を特定する情報と、目的とする流動性の値と、製造する製品の数量および生産時期と、配合比決定システム300から取得した流動性改質剤の配合比と、に基づく量産製造の射出成形プロセスを実行するための指示を製造実行部410に出力する。
【0033】
また、製造指示部230は、試し成形を指示する場合、製造条件決定部210で決定された製品の製造設備500を特定する情報と、製造に使用する材料型番およびその材料製造ロットを特定する情報と、に基づく試し成形を指示する。具体的には、製造指示部230は、流動性改質剤が未添加の状態で、使用する材料型番の材料製造ロットについて試し成形の射出成形プロセスを実行するための指示を製造実行部410に出力する。
【0034】
また、製造指示部230は、学習用成形を指示する場合、製造条件決定部210で決定された製品の製造設備500を特定する情報と、製造に使用する材料型番を特定する情報と、かかる材料型番における複数の材料製造ロットを特定する情報と、流動性改質剤の型番を特定する情報と、かかる材料製造ロットと流動性改質剤の型番との各組み合わせにおける複数の配合比と、に基づく学習用成形の射出成形プロセスを実行するための指示を製造実行部410に出力する。なお、材料製造ロットと流動性改質剤の型番との各組み合わせにおける複数の配合比とは、使用される材料型番に対応する複数の材料製造ロット(例えば、a、b、c、d)の各々と、使用される流動性改質剤の型番Mと、の各組み合わせ(a/M、b/M、c/M、d/M)において、各々の組み合わせごとに設定される任意の複数の配合比(例えば、流動性改質剤の配合比=0%、1%、2%、3%)のことである。
【0035】
次に、配合比決定システム300の機能構成について説明する。
【0036】
配合比決定システム300は、流動性改質剤の配合比を決定するための処理を行う処理部として機能する。具体的には、配合比決定システム300は、配合比決定部310と、流動性情報生成部330と、予測モデル生成部350と、を有している。
【0037】
配合比決定部310は、材料製造ロットと流動性改質剤との配合比を決定する機能部である。具体的には、配合比決定部310は、配合比取得部220から材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、目的とする流動性の値と、を含む配合比の取得要求を受け付けると、配合比情報DB320を参照する。また、配合比決定部310は、取得要求に係る材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、の組み合わせに対応する配合比が配合比情報DB320に格納されている場合、かかる配合比を配合比取得部220に出力する。
【0038】
また、配合比決定部310は、取得要求に係る材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、の組み合わせに対応する配合比が配合比情報DB320に格納されていない場合、予測モデルDB360を参照する。また、配合比決定部310は、取得要求に係る材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルが存在する場合、配合比が未決定であることを示す情報を配合比取得部220に出力する。
【0039】
また、配合比決定部310は、取得要求に係る材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルが存在しない場合、かかる予測モデルが存在しないことを示す情報を配合比取得部220に出力する。
【0040】
また、配合比決定部310は、試し成形により生成された流動性情報(配合比の取得要求に係る材料製造ロットに対応する流動性情報)と、取得要求に含まれる目的とする流動性を示す値とを、取得要求に係る材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルに入力することにより、使用される材料製造ロットと流動性改質剤の型番との組み合わせにおける配合比を決定する(すなわち、配合比決定部310は、予測モデルから出力された値を流動性改質剤の配合比に決定する)。また、配合比決定部310は、取得要求に係る材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番とを、決定した配合比に対応付けて配合比情報DB320に格納する。
【0041】
流動性情報生成部330は、試し成形あるいは学習用成形において、製造設備500(この場合、例えば金型)に含まれるセンサ520から出力された値と製品品質(例えば、製品重量)とを測定値として取得し、流動性情報を生成する機能部である。また、流動性情報生成部330は、生成した流動性情報に、試し成形あるいは学習用成形において使用した材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、を対応付けて流動性情報DB340に格納する。
【0042】
ここで、流動性情報とは、センサ520の測定値から得られる材料の物性に相関する特徴量を指す。具体的には、流動性情報の1つは、材料製造ロットの流動性に相関する特徴量(例えば、ピーク圧力、圧力の最大微分値、圧力の積分値など)である。かかる特徴量は、試し成形の際の測定値すなわち流動性改質剤が添加されていない材料製造ロットを用いた場合のセンサ520による測定値から算出される特徴量である。
【0043】
また、流動性情報の1つは、流動性改質剤を所定の配合比で添加した材料製造ロットの流動性に相関する特徴量(例えば、ピーク圧力、圧力の最大微分値、圧力の積分値など)である。かかる特徴量は、学習用成形の際の測定値すなわち流動性改質剤が添加されていない材料製造ロット(流動性改質剤の配合比がゼロの場合)を用いた場合のセンサ520による測定値から算出される特徴量、および、流動性改質剤を所定の配合比で添加した材料製造ロットを用いた場合のセンサ520による測定値から算出される特徴量である。
【0044】
なお、このような流動性に相関する特徴量は、単一のセンサから得られる単一の特徴量であっても良く、あるいは、複数のセンサから得られる複数の特徴量を次元削減した次元削減特徴量であっても良い。また、次元削減を行う場合、例えばUMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)、あるいは、t-SNE(t-distributed Stochastic Neighbor Embedding)などの手法が用いられれば良い。
【0045】
予測モデル生成部350は、材料に関する学習済み予測モデルを生成する機能部である。具体的には、予測モデル生成部350は、学習用成形で得られた特徴量と、その際の材料型番および材料製造ロットに対する流動性改質剤の配合比と、を学習することで、使用される新たな材料製造ロットが製造時に目的とする流動性となるように、流動性改質剤の配合比を予測する学習済み予測モデルを生成する。なお、学習済み予測モデルは、材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対して生成されるモデル情報である。そのため、材料型番および流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルに対して製造に使用される同一の材料型番の新たな(配合比が未決定という意味)材料製造ロットと、目的とする流動性の値とが入力されることで、かかる流動性が得られる流動性改質剤の配合比が出力されることになる。
【0046】
なお、予測モデル生成部350は、予め他の測定手段による測定によって流動性が既知の材料に対して、流動性改質剤が未添加の状態における流動性(すなわち、既知の流動性であって、流動性改質剤の配合比がゼロの状態における流動性)に相関する特徴量と、任意の複数の配合比で流動性改質剤を添加した状態における流動性に相関する特徴量およびその際の配合比と、を学習することで、学習済み予測モデルを構築しても良い。
【0047】
また、予測モデル生成部350は、生成した学習済み予測モデルを、材料型番と、流動性改質剤の型番と、に対応付けて予測モデルDB360に格納する。なお、予測モデルとしては、リッジ回帰あるいはサポートベクターマシン(SVM)などの教師有り予測モデルが用いられれば良い。
【0048】
また、予測モデル生成部350は、試し成形および量産製造で得られた材料製造ロットの流動性に相関する特徴量と、流動性改質剤の配合比と、を関連付けて、学習済み予測モデルに再学習させるアクティブラーニングを行う。
【0049】
次に、製造実行システム400の機能構成について説明する。
【0050】
製造実行システム400は、製造統括システム200からの指示に基づき所定の製造プロセスの実行することで製品の製造を行う処理部として機能する。具体的には、製造実行システム400は、製造実行部410と、品質検査部430と、を有している。
【0051】
製造実行部410は、製造統括システム200からの指示に基づく所定の製造プロセスを実行して製品の製造を行う機能部である。具体的には、製造実行部410は、製造指示部230から学習用成形を指示された場合、射出成形プロセスDB420から学習用射出成形プロセス421を取得する。また、製造実行部410は、指示に含まれる複数の材料製造ロットおよび流動性改質剤の組み合わせごとに複数の配合比で学習用成形プロセスに従った学習用成形の実行指示を製造機器510に出力する。
【0052】
また、製造実行部410は、製造指示部230から試し成形を指示された場合、射出成形プロセスDB420から試し射出成形プロセス422を取得する。また、製造実行部410は、指示に含まれる材料製造ロットを用いて、流動性改質剤が未添加の状態で試し射出成形プロセス422に従った試し成形の実行指示を製造機器510に出力する。
【0053】
また、製造実行部410は、製造指示部230から量産製造を指示された場合、射出成形プロセスDB420から量産射出成形プロセス423を取得する。また、製造実行部410は、指示に含まれる製造条件および配合比に基づき量産射出成形プロセス423に従った量産製造の実行指示を製造機器510に出力する。
【0054】
品質検査部430は、製品の品質を検査する機能部である。具体的には、品質検査部430は、例えば形状特性、機械的・光学特性などに基づき製品の品質を検査する。
【0055】
また、品質検査部430は、品質検査を行った材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、品質検査結果と、を対応付けて配合比決定システム300の流動性情報生成部330に出力する。
【0056】
以上、各サブシステムの機能構成について説明した。
【0057】
次に、本システム1000の記憶部に記憶されている各種の情報について説明する。
【0058】
配合比決定システム300で用いられる配合比情報DB320には、例えば材料型番を識別する情報と、材料製造ロットを識別する情報と、流動性改質剤の型番を識別する情報と、流動性改質剤の配合比と、が対応付けられて記憶されている。
【0059】
また、配合比決定システム300で用いられる流動性情報DB340には、例えば測定値から算出された流動性に相関する特徴量を示す情報と、材料型番を識別する情報と、材料製造ロットを識別する情報と、流動性改質剤の型番を識別する情報と、が対応付けられて記憶されている。
【0060】
また、配合比決定システム300で用いられる予測モデルDB360には、例えば材料型番と、流動性改質剤の型番と、の組み合わせごとに対応する学習済み予測モデルが格納されている。
【0061】
また、製造実行システム400で用いられる射出成形プロセスDB420には、学習用成形、試し成形および量産製造を実行するための各種の製造(成形)プロセスが記憶されている。
【0062】
また、記憶部には、製品の受注状況や在庫状況、および、製造工場における製造設備500の稼働状況といった所定情報が記憶されている。
【0063】
また、本システム1000が有する通信部は、配合比決定システム300と製造設備500との間の情報通信を行う。また、通信部は、製造実行システム400と製造設備500との間の情報通信を行う。
【0064】
なお、製造設備500は、製造実行部410から出力された製造プロセスに基づいて製品を製造する製造機器510と、製造プロセス中の物理量を測定することで測定値を取得する複数の各種センサ520と、を有している。また、センサ520は、測定値を配合比決定システム300の流動性情報生成部330に出力する。
【0065】
以上、本実施形態に係るシステム1000の概略構成について説明した。
【0066】
[動作の説明]
図2は、本システム1000で実行される製造処理の一例を示したフロー図である。かかる処理は、例えば入力装置を介して入力受付部が製造処理の実行指示をユーザから受け付けると開始される。
【0067】
処理が開始されると、生産管理システム100は、生産計画を決定する(ステップS10)。具体的には、生産管理システム100の生産計画管理部110は、受注状況や在庫状況などの所定情報を記憶部から取得する。また、生産計画管理部110は、出力表示部を介して、記憶部から取得したこれらの情報を表示するための画面情報を生成し、これを出力装置(ディスプレイ)に表示する。
【0068】
なお、ユーザは、表示された受注状況や在庫状況を参照し、入力装置を介して適切な生産使用、数量および時期を入力する。生産計画管理部110は、入力受付部を介して入力情報を取得すると、所定のアルゴリズムに基づき生産計画を決定する。
【0069】
なお、生産計画管理部110は、ロジスティクス全体を最適化するための数理計画モデルおよびそのアルゴリズムを用いることにより、ユーザからの入力に依らず、自動で生産計画を決定しても良い。なお、かかる数理計画モデルやアルゴリズムは予め記憶部に記憶されていれば良い。
【0070】
次に、製造統括システム200の製造条件決定部210は、製造条件を決定する(ステップS20)。具体的には、製造条件決定部210は、生産計画および製造設備500の稼働状況を記憶部から取得する。また、製造条件決定部210は、出力表示部を介して、記憶部から取得したこれらの情報を表示するための画面情報を生成し、これを出力装置(ディスプレイ)に表示する。
【0071】
なお、ユーザは、表示された生産計画や製造設備500の稼働状況を参照し、入力装置を介して適切な製造設備500と材料との組み合わせに係る製造条件を入力する。製造条件決定部210は、入力受付部を介して入力情報を取得すると、所定のアルゴリズムに基づき製造条件を決定する。また、製造条件決定部210は、製品の製造に使用される材料の型番、材料製造ロット、流動性改質剤の型番などを含む製造条件を配合比取得部220に出力する。
【0072】
なお、製造条件決定部210は、生産効率を最適化するための数理計画モデルおよびそのアルゴリズムを用いることにより、ユーザからの入力に依らず、自動で製造条件を決定しても良い。また、かかる数理計画モデルやアルゴリズムは予め記憶部に記憶されていれば良い。
【0073】
次に、配合比取得部220は、製造条件に含まれる材料型番、材料製造ロットおよび流動性改質剤の型番の組み合わせにおける配合比の取得要求を出力する(ステップS30)。具体的には、配合比取得部220は、材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、目的とする流動性の値と、を含む配合比の取得要求を配合比決定部310に出力する。
【0074】
次に、配合比決定部310は、取得要求に係る配合比があるか否かを判定する(ステップS40)。具体的には、配合比決定部310は、配合比情報DB320を参照し、取得要求に係る材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、が対応付けられた配合比が格納されている場合、取得要求に係る配合比があると判定する。
【0075】
そして、かかる配合比が無いと判定した場合(ステップS40でNo)、配合比決定部310は、処理をステップS70に移行する。一方で、かかる配合比があると判定した場合(ステップS40でYes)、配合比決定部310は、配合比情報DB320から取得要求に係る配合比を取得して配合比取得部220に出力し、処理をステップS50に移行する。
【0076】
ステップS50では、配合比取得部220は、配合比決定部310から配合比を取得すると、製造条件決定部210により決定された製造条件と、取得した配合比と、に基づく製品の量産製造を製造指示部230に要求する。また、製造指示部230は、配合比取得部220からの要求に基づき量産製造の指示を製造実行部410に出力する。
【0077】
次に、製造実行部410は、通信部を介して、指示に含まれる製造条件および配合比に基づき量産射出成形プロセス423に従った量産製造の実行指示を製造機器510に出力することで、生産計画および製造条件に応じた製品の量産製造を実行する(ステップS60)。また、製造実行部410は、製造設備500に量産射出成形プロセス423を出力すると、本フローを終了する。
【0078】
なお、予測モデル生成部350は、量産製造で得られた材料型番における材料製造ロットの流動性情報(配合比決定部310により決定された配合比により流動性改質剤が添加されている状態の流動性情報)と、その際の流動性改質剤の配合比と、を関連付けて、学習済み予測モデルに再学習させるアクティブラーニングを行う。
【0079】
また、前述のステップS40において、取得要求に係る配合比が無いと判定した場合(ステップS40でNo)に移行するステップS70では、配合比決定部310は、取得要求に係る材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルが存在するか否かを判定する。具体的には、配合比決定部310は、予測モデルDB360を参照し、かかる学習済み予測モデルが格納されているか否かを判定する。
【0080】
そして、配合比決定部310は、学習済み予測モデルが格納されていない場合に、かかる学習済み予測モデルが存在しないと判定し(ステップS70でNo)、取得要求に係る材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルが存在しないことを示す情報を配合比取得部220に出力して、処理をステップS90に移行する。なお、ステップS90では、学習済み予測モデルの生成処理が実行される。学習済み予測モデルの生成処理の詳細については後述する。
【0081】
一方で、配合比決定部310は、学習済み予測モデルが格納されている場合、かかる学習済み予測モデルが存在すると判定し(ステップS70でYes)、取得要求に係る配合比が未決定であることを示す情報を配合比取得部220に出力して、処理をステップS80に移行する。なお、ステップS80では、配合比決定処理が実行される。配合比決定処理の詳細については後述する。
【0082】
次に、学習済み予測モデルの生成処理(ステップS90)の詳細について説明する。
【0083】
図3は、学習済み予測モデルの生成処理の一例を示したフロー図である。
【0084】
ステップS91では、製造統括システム200、製造実行システム400および配合比決定システム300は、協働で学習用成形を実行し、学習済み予測モデルを生成する。具体的には、配合比取得部220は、配合比の取得要求に係る材料型番と、流動性改質剤の型番と、の組み合わせに対応する学習済み予測モデルが存在しない事を示す情報を取得すると、かかる予測モデルを生成するための学習用成形を製造指示部230に要求する。
【0085】
また、製造指示部230は、配合比取得部220からの要求に基づいて、学習用成形に用いる材料型番における複数の材料製造ロットと、使用する流動性改質剤の型番と、かかる材料製造ロットと流動性改質剤の型番との各組み合わせにおける複数の配合比と、を含む学習用成形の実行指示を製造実行部410に出力する。なお、製造指示部230は、予め流動性が既知の材料を用いた学習用成形の実行指示を出力しても良い。
【0086】
また、製造実行部410は、学習用成形の実行指示を製造指示部230から取得すると、射出成形プロセスDB420から学習用射出成形プロセス421を取得する。また、製造実行部410は、製造指示部230から取得した実行指示の内容に応じた学習用射出成形プロセス421の実行指示を製造機器510に出力することで、学習用成形を行う。
【0087】
次に、流動性情報生成部330は、学習用成形における測定値を用いて流動性情報を生成する(ステップS92)。具体的には、流動性情報生成部330は、学習用成形において製造設備500(この場合、例えば金型)に含まれるセンサ520および品質検査部430から出力された測定値(センサ値および製品品質)を取得する。また、流動性情報生成部330は、取得した測定値から材料特性(流動性)に相関する特徴量を算出し、流動性情報を生成する。また、流動性情報生成部330は、生成した流動性情報に、材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番と、材料製造ロットと流動性改質剤の型番との各組み合わせにおける各々の配合比と、を対応付けて流動性情報DB340に格納する。なお、予め流動性が既知の材料を用いて学習用成形が行われている場合、流動性情報生成部330は、その流動性もさらに対応付けて、流動性情報DB340に格納する。
【0088】
次に、予測モデル生成部350は、学習済み予測モデルを生成する(ステップS93)。具体的には、予測モデル生成部350は、所定の教師有り予測モデルを用いて、流動性情報の特徴量を学習することにより、学習用成形における材料型番と、流動性改質剤の型番と、の組み合わせに対応した学習済み予測モデルを生成する。なお、予測モデル生成部350は、流動性が既知の材料を用いる場合、流動性に相関する特徴量と、かかる流動性との相関を予測モデルに学習させることで、測定値から直接、流動性を予測する学習済み予測モデルを構築(生成)しても良い。
【0089】
次に、予測モデル生成部350は、生成した学習済み予測モデルを予測モデルDB360に登録し(ステップS94)、本フローを終了する。なお、予測モデル生成部350は、本フローの終了後、処理を
図2のステップS30に戻す。
【0090】
以上、学習済み予測モデルの生成処理について説明した。
【0091】
次に、配合比決定処理(ステップS80)の詳細について説明する。
【0092】
図4は、配合比決定処理の一例を示したフロー図である。
【0093】
ステップS81では、製造統括システム200、製造実行システム400および配合比決定システム300は、協働で試し成形を実行し、流動性改質剤の配合比を決定する。具体的には、配合比取得部220は、取得要求に係る配合比が未決定である事を示す情報を取得すると、かかる配合比を決定するための試し成形を製造指示部230に要求する。
【0094】
また、製造指示部230は、配合比取得部220からの要求に基づいて、試し成形に用いる材料型番の材料製造ロットを含む試し成形の実行指示を製造実行部410に出力する。
【0095】
また、製造実行部410は、試し成形の実行指示を製造指示部230から取得すると、射出成形プロセスDB420から試し射出成形プロセス422を取得する。また、製造実行部410は、製造指示部230から取得した実行指示の内容に応じた試し射出成形プロセス422の実行指示を製造機器510に出力することで、試し成形を行う。
【0096】
次に、流動性情報生成部330は、試し成形における測定値を用いて流動性情報を生成する(ステップS82)。具体的には、流動性情報生成部330は、試し成形において製造設備500(この場合、例えば金型)におけるセンサ520および品質検査部430から出力された測定値(センサ値および製品品質)を取得する。また、流動性情報生成部330は、取得した測定値から材料特性(流動性)に相関する特徴量を算出し、流動性情報を生成する。また、流動性情報生成部330は、生成した流動性情報に材料型番および材料製造ロットを対応付けて流動性情報DB340に格納する。
【0097】
次に、配合比決定部310は、配合比を求める(配合比の取得要求に係る)材料製造ロットの材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルに対して、生成した流動性情報と、目的とする流動性の値と、を入力することで、その材料型番における材料製造ロットと流動性改質剤の型番との組み合わせに係る配合比を決定する(ステップS83)。具体的には、配合比決定部310は、配合比を求める材料製造ロットの材料型番と流動性改質剤の型番との組み合わせに対応する学習済み予測モデルを予測モデルDB360から特定する。また、配合比決定部310は、かかる材料製造ロットを用いた試し成形によって生成された流動性情報を流動性情報DB340から特定する。そして、配合比決定部310は、特定した学習済み予測モデルに、特定した流動性情報と、配合比の取得要求に含まれている目的とする流動性の値と、を入力することで、かかる学習済み予測モデルから出力された配合比を取得し、これを配合比に決定する。
【0098】
次に、配合比決定部310は、かかる材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の型番とを、決定した配合比に対応付け、配合比情報DB320に格納(登録)する(ステップS84)。
【0099】
次に、予測モデル生成部350は、試し成形で得られた材料型番における材料製造ロットの流動性情報(流動性改質剤が未添加の状態における流動性情報)と、配合比決定部310が学習済み予測モデルを用いて目的とする流動性となるように決定した流動性改質剤の配合比と、を関連付けて、学習済み予測モデルに再学習させるアクティブラーニングを行う(ステップS85)。また、予測モデル生成部350は、再学習を行うと、本フローを終了する。なお、予測モデル生成部350は、本フローの終了後、処理を
図2のステップS30に戻す。
【0100】
以上、配合比決定処理について説明した。
【0101】
次に、本実施形態に係るシステム1000を実行した場合に得られる効果を検証する実験例の概要について説明する。
【0102】
図5は、本実施形態による効果を検証するための実験例の概要を示した図である。実験例としては、樹脂製品(例えば、プラスチック樹脂を用いた製品)を製造する射出成形プロセスにおける実験例を示す。図示する金型600は、スプルー601およびランナー602を経由して、4点のサイドゲート方式で二個取りのダンベル試験片状の製品形成部603に樹脂が流入する構造をしている。実験例では、ランナー602に設けたセンサ配置部604と、製品形成部603に設けたセンサ配置部605と、の各々に複数の圧力センサおよび樹脂温度センサが配置されている。そして、これらのセンサから圧力および温度の時間変化の測定値を取得した。
【0103】
実験で得られた測定値のうち、複数の流動性に相関する特徴量を取得した。また、本実験例では、ピーク圧力、射出工程における圧力積分値、射出開始から終了まで圧力積分値、および、圧力の最大微分値を取得した。また、製品品質として製品重量を測定した。なお、ここでは、材料の流動性に相関する特徴量として、射出工程中の圧力積分値を用いた。
【0104】
また、製造に使用する材料には、廃家電由来のポリプロピレンの1つの型番を用い、その型番の材料製造ロット3種類での製造を行った。また、流動性改質剤には、A社製の流動性改質剤を用いた。
【0105】
また、目的変数である流動性改質剤添加後の材料の流動性を示す射出工程中の圧力積分値に対して、予測値と実測値とを比較した。学習用データにおいては、予測値と実測値とが良く一致した。同様に、検証用データについても、予測値と実測値とは良く一致した。これより、生成した学習済み予測モデルの汎化性能を確認することができた。
【0106】
なお、前述の通り、試し成形および量産製造における測定値から得られる特徴量を用いて予測モデルを再学習して更新することで、継続的に予測精度を向上させることができる。
【0107】
以上、本実施形態に係るシステム1000について説明した。このようなシステムによれば、汎用的な射出成形機を用いた場合でも、材料製造ロットごとの流動性の違いを補償して品質安定化を図ることができる流動性改質剤のより適切な配合比を決定することができる。
【0108】
特に、本システムでは、射出成形プロセス中のセンサから得られる測定値に基づき、汎用の射出成形機においても、目的の流動性が得られる流動性改質剤の配合比を決定することができる。また、射出成形プロセス中のセンサから得られる測定値から流動性改質剤の配合比を決定することで、材料(材料製造ロット)ごとの流動性の違いを補償し、射出成形プロセス中の流動性を自動で均一にして量産を行うことができる。そのため、本システムによれば、リサイクル材のように、ばらつきの大きい材料を汎用的な射出成形機で用いた場合でも、熟練作業者に依らず品質を安定化させることができる。これにより、本システムは、より要求精度の高い製品においてもリサイクル材を活用することが可能となり、資源循環社会およびカーボンニュートラルの実現に貢献することができる。
【0109】
また、学習済み予測モデルに対して、試し成形および量産製造で得られた流動性情報(流動性の特徴量)と、流動性改質剤の配合比と、を関連付けて再学習させることで、使用するごとに学習済み予測モデルの精度を向上させることができる。
【0110】
なお、例えば配合比決定システム300を複数のユーザが使用する場合、各ユーザが製造設備として用いる射出成形機、金型およびセンサなどの条件によって材料(材料製造ロット)の流動性の特徴量が若干異なる。そのため、学習済み予測モデルは、ユーザごとに、これらの製造設備に関する条件を関連付けた機械学習を行い、流動性改質剤の配合比を決定する際には、これらの条件に対応する予測モデルを用いることで、より精度の高い流動性改質剤の配合比を求めるようにしても良い。
【0111】
あるいは、予め流動性が既知の材料における学習用成形を行い、得られた特徴量と流動性との相関を学習させることで、センサ520から得た情報に基づき直接流動性を予測する学習済み予測モデルを構築してもよい。この場合、目的変数として流動性を用いることで、射出成形機や金型に依らずに構築した学習済み予測モデルを生成することができる。なお、流動性の指標としては、例えばメルトフローレートや溶融粘度など任意のパラメータを用いることができる。
【0112】
なお、本実施形態は、同一の事業者が学習済み予測モデルを生成および再学習させ、かつ、かかる学習済み予測モデルから出力された配合比を用いて製品の量産製造を行う場合と、学習済み予測モデルを生成および再学習させる事業者と、学習済み予測モデルから出力された配合比を用いて製品の量産製造を行う事業者と、が異なる場合と、の両方の形態を含むものである。
【0113】
次に、本実施形態に係るシステム1000のハードウェア構成について説明する。
【0114】
図6は、本システム1000のハードウェア構成の一例を示した図である。本システム1000は、例えば一つの計算機700(情報処理装置)を用いて実現することができる。
【0115】
具体的には、計算機700は、演算装置710と、メモリ720と、記憶装置730と、入力装置740と、出力装置750と、通信装置760と、媒体インターフェース770と、を備えており、これらの各装置は通信経路CN1により電気的に相互接続されている。なお、通信経路CN1は、例えば内部バスあるいはLAN(Local Area Network)などである。
【0116】
演算装置710は、例えばプロセッサ(マイクロプロセッサ、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unitあるいはその他の半導体デバイスを含む)から構成されている。
【0117】
メモリ720は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの不揮発性あるいは揮発性の記憶媒体である。
【0118】
記憶装置730は、各サブシステムの機能部を実現するコンピュータプログラム731や本システム1000全体あるいは各サブシステムの処理に用いられる種々の情報などを記憶する装置である。記憶装置730は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスクあるいはSSD(Solid State Drive)などの書き換え可能な記憶媒体である。
【0119】
入力装置740は、ユーザ(例えば、システムを使用するオペレーターなど)が計算機700に情報や指示を入力する装置である。入力装置740には、例えばキーボード、タッチパネル、マウスなどのポインティングデバイスやマイクロフォンのような音声入力装置などがある。出力装置750(表示装置)は、計算機700により生成された情報や外部装置から取得した情報を出力(表示)する装置である。出力装置750には、例えばディスプレイ、プリンタ、音声合成装置などがある。
【0120】
通信装置760は、外部の情報処理装置と計算機700とを通信経路CN2を介して通信させる装置である。外部の情報処理装置としては、図示しない他の計算機700や外部記憶装置800がある。なお、外部記憶装置800としては、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、メモリカードおよびハードディスクなどがある。
【0121】
計算機700は、外部記憶装置800に格納された情報(例えば、本システム1000の計算機700に用いられる固有情報や生産実績情報など)やコンピュータプログラムを読み込むことができる。また、計算機700は、記憶装置730に記憶されたコンピュータプログラム731および情報の全部または一部を、外部記憶装置800に送信して記憶させることもできる。
【0122】
媒体インターフェース770は、外部記録媒体810(例えば、USBメモリ、メモリカードあるいはDVDなど)に読み書きする装置である。計算機700は、外部記録媒体810から記憶装置730に対してコンピュータプログラム731および情報を転送させることもできるし、記憶装置730に記憶されたコンピュータプログラム731および情報の全部または一部を外部記録媒体810に転送して記憶させることもできる。
【0123】
以上、本実施形態に係るシステム1000のハードウェア構成について説明した。
【0124】
なお、本システム1000の処理部すなわち各サブシステムの各機能部は、演算装置710に処理を行わせるプログラム731によって実現される。このプログラムは、例えば記憶装置730や外部記憶装置800に記憶され、プログラム731の実行にあたって例えばメモリ720上にロードされ、演算装置710により実行される。
【0125】
また、入力受付部は、入力装置740により実現される。また、出力表示部は、出力装置750により実現される。また、記憶部は、メモリ720、記憶装置730または外部記憶装置800あるいはこれらの組合せにより実現される。また、通信部は、通信装置760により実現される。
【0126】
また、本システム1000の各構成、機能、処理部および処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良い。また、本システム1000は、各機能の一部または全部を、ソフトウェアにより実現することもできるし、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現することもできる。また、本システム1000は、固定的な回路を有するハードウェアを用いても良いし、少なくとも一部の回路を変更可能なハードウェアを用いてもよい。
【0127】
また、上述の通り、各サブシステムは、専用のソフトウェアやハードウェアを用いず、各機能の一部または全部をユーザ(オペレータ)が実施することで、システムを実現することもできる。
【0128】
なお、本実施形態では、一つの計算機700から本システム1000を実現する場合を例に説明したが、本発明はこれに限らず、複数の計算機700を連携させることにより一つまたは複数のシステムを構築することもできる。このようなシステムの構成については、以下の第二実施形態および第三実施形態で詳細に説明する。
【0129】
<第二実施形態>
前述の第一実施形態では、本システム1000が一つの計算機700により実現される場合について説明したが、本発明はこのような構成に限られるものではない。
【0130】
図7は、第二実施形態に係るシステム1000のハードウェア構成の一例を示した図である。図示するように、第二実施形態に係るシステム1000は、配合比決定システム300を実現する計算機700a(以下、配合比決定側計算機700aという場合がある)と、それ以外のサブシステムである生産管理システム100、製造統括システム200および製造実行システム400を実現する複数の計算機700b(以下、ユーザ側計算機700bという場合がある)と、が各々、通信経路CN2により相互通信可能に接続されている。なお、ユーザ側計算機700bは単数であっても良い。なお、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0131】
このようなシステム構成によっても、汎用的な射出成形機を用いた場合でも、材料製造ロットごとの流動性の違いを補償して品質安定化を図ることができる流動性改質剤のより適切な配合比を決定することができる。特に、本システムでは、配合比決定側計算機をクラウド上に配置し、ユーザ側計算機の各々は、通信経路CN2を介して配合比決定側計算機に配合比の決定を要求することで、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、ユーザ側計算機は、配合比決定側計算機から配合比を得る場合、前述の製造統括システムにおける配合比取得部と同様に、材料型番と、材料製造ロットと、流動性改質剤の改質剤と、目的とする流動性の値と、を配合比決定側計算機に送信すれば良い。
【0132】
また、このような構成によれば、配合比決定側計算機(配合比決定システム)は、複数あるユーザ側計算機から配合比決定の要求を取得することになるため、それに伴って学習済み予測モデルにより多くの再学習を実行させることができ、その予測モデルの精度をより向上させることができる。また、ユーザ側計算機は、精度がより向上した学習済み予測モデルを用いて出力された配合比に基づいて製造を実行することができるため、製造メーカは、使用される材料について信頼度のより高い製造を行うことができる。
【0133】
なお、このような配合比決定側計算機700aは、例えば学習済み予測モデルを生成および再学習させる事業者が保有し、ユーザ側計算機700bは、かかる学習済み予測モデルを用いた配合比の取得を配合比決定側計算機700aにリクエストし、取得した配合比に基づいて製品の量産製造を行う事業者が保有する形態が考えられる。
【0134】
<第三実施形態>
前述の第二実施形態では、配合比決定システム300を実現する計算機700aと、それ以外のサブシステムを実現する複数の計算機700bと、が各々、通信経路CN2により相互通信可能に接続されている構成としたが、本発明はこのような構成に限られるものではない。
【0135】
図8は、第三実施形態に係るシステム1000のハードウェア構成の一例を示した図である。図示するように、第三実施形態に係るシステム1000は、各サブシステムが各々、別個の計算機700o~700rにより実現され、通信経路CN2を介して通信可能に相互接続されている。なお、図示するように、本実施形態では、製造実行システム400を実現する計算機700rが複数あっても良い。なお、同一の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0136】
このような構成によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、製造実行システム400を実現する計算機700rが複数ある場合、各々が分散された各製造工場に配置されている場合でも、共通の生産管理システム100、製造統括システム200および配合比決定システム300により製造実行システム400の各計算機700で実行される処理を集約して管理することができる。
【0137】
なお、本発明のシステムに係る計算機700は、生産管理システム100、製造統括システム200、配合比決定システム300および製造実行システム400といったサブシステムの中で、任意のサブシステムを実現するためのプログラム731を他の計算機700に配信するコンピュータ(配信サーバ)として提供することもできる。例えば、本システム1000は、任意のサブシステムを実現するためのプログラム731の取得要求を外部の計算機700(図示せず)から受け付けると、通信部を介して、記憶部に記憶した各サブシステムを実現するためのコンピュータプログラム731を外部の計算機700に送信することもできる。
【0138】
また、このような配合比決定システムに係る計算機700qは、例えば学習済み予測モデルを生成および再学習させる事業者が保有し、それ以外の計算機700p~700rの一部または全部を、かかる学習済み予測モデルを用いた配合比の取得を計算機700qにリクエストし、取得した配合比に基づいて製品の量産製造を行う事業者が保有する形態が考えられる。
【0139】
また、本発明は上記した実施形態および変形例に限定されるものではなく、同一の技術的思想の範囲内において様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0140】
また、上記説明では、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0141】
1000・・・システム、100・・・生産管理システム、110・・・生産計画管理部、200・・・製造統括システム、210・・・製造条件決定部、220・・・配合比取得部、230・・・製造指示部、300・・・配合比決定システム、310・・・配合比決定部、320・・・配合比情報DB、330・・・流動性情報生成部、340・・・流動性情報DB、350・・・予測モデル生成部、360・・・予測モデルDB、400・・・製造実行システム、410・・・製造実行部、420・・・射出成形プロセスDB、430・・・品質検査部、500・・・製造設備、510・・・製造機器、520・・・センサ、700・・・計算機、710・・・演算装置、720・・・メモリ、730・・・記憶装置、731・・・サブシステムの各機能部を実現するコンピュータプログラム、740・・・入力装置、750・・・出力装置、760・・・通信装置、770・・・媒体インターフェース、800・・・外部記憶装置、810・・・外部記録媒体、CN1、CN2・・・通信経路