(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119458
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】地物検出装置および地物検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20230821BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20230821BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G06T7/00 C
G06T7/00 650A
G01B11/24 B
G01C15/00 103A
G01C15/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022374
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592105620
【氏名又は名称】ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591074161
【氏名又は名称】アジア航測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】岡 洋平
(72)【発明者】
【氏名】中山 忠雅
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悟
(72)【発明者】
【氏名】井久保 昌博
(72)【発明者】
【氏名】五百蔵 弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 実可子
【テーマコード(参考)】
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB15
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ01
2F065LL62
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
5L096AA09
5L096BA04
5L096DA01
5L096FA02
5L096FA26
5L096GA51
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】適切に地物を検出する。
【解決手段】台車(移動体)3の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、設定した仮想平面間に存在する点群データを仮想平面に投影する点群データ投影手段103と、投影された仮想平面における単位面積当たりの点群データの密度を点群密度として算出する点群密度算出手段104と、点群密度が所定の点群閾値以上である点群データを壁点群として削除し、壁点群削除後の点群データを設備点群として検出する検出手段105とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周辺の地物に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記地物の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から、前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記地物を検出する地物検出装置であって、
前記移動体の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、前記設定した仮想平面間に存在する前記点群データを前記仮想平面に投影する点群データ投影手段と、
前記投影された仮想平面における単位面積当たりの前記点群データの密度を点群密度として算出する点群密度算出手段と、
前記点群密度が所定の点群閾値以上である前記点群データを壁点群として削除し、前記壁点群削除後の前記点群データを設備点群として検出する検出手段と、
を備えたことを特徴とする地物検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記点群密度が所定の点群閾値以上である前記点群データを壁候補点群とし、
前記仮想平面上であって前記レーザー光の照射点近傍の起点から前記点群データまでを結ぶ直線が前記壁候補点群と交差した場合に、前記壁候補点群と交差した前記点群データと前記壁候補点群とを前記壁点群として削除し、
前記直線が前記壁候補点群と交差しない場合に、前記壁候補点群と交差しない前記点群データを前記設備点群として検出する
ことを特徴とする請求項1記載の地物検出装置。
【請求項3】
前記移動体の左右方向の中心線上であって、地表面から所定の距離だけ離れた位置を前記起点とする
ことを特徴とする請求項2記載に地物検出装置。
【請求項4】
前記設備点群において、各設備点間距離が所定の閾値未満である前記設備点群をセグメントして設備点集合体として識別する設備点集合体識別手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の地物検出装置。
【請求項5】
設備の設備名ごとに、前記設備の特徴を示す設備特徴条件を記憶する記憶手段と、
前記設備点集合体識別手段により識別された設備点集合体ごとに設備特徴条件を抽出し、抽出した設備特徴条件と、前記記憶手段に記憶された設備特徴条件とを比較することにより、前記設備点集合体の前記設備名を特定する設備特定手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の地物検出装置。
【請求項6】
前記設備の設備名ごとに記憶された前記設備徴条件は、前記移動体の進行方向を一致させて記憶され、
前記設備特定手段は、
前記設備点集合体識別手段により識別された設備点集合体ごとに、前記移動体の進行方向に合わせて設備特徴条件を抽出する
ことを特徴とする請求項5記載の地物検出装置。
【請求項7】
移動体の周辺の地物に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記地物の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記地物を検出する地物検出装置が実行する地物検出プログラムであって、
前記移動体の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、前記設定した仮想平面間に存在する前記点群データを前記仮想平面に投影する点群データ投影ステップと、
前記投影された仮想平面における単位面積当たりの前記点群データの密度を点群密度として算出する点群密度算出ステップと、
前記点群密度が所定の点群閾値以上である前記点群データを壁点群として削除し、前記壁点群削除後の前記点群データを設備点群として検出する検出ステップと、
を前記地物検出装置に実行させることを特徴とする地物検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切に地物を検出する地物検出装置および地物検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や鉄道等の移動体に、レーザーパルスを発射するレーザー取得装置を搭載して、移動体の前方または後方の地物の3次元座標(点群データ)を習得できるようになってきている。
【0003】
そこで、レーザー取得装置により取得された3次元座標(点群データ)を活用して壁面やトンネルなどに設置されている設備を自動検出し、設備点検に役立たせることが切望されていた。
【0004】
特許文献1には、切断平面に沿い、かつ切断平面に直交した奥行き方向に予め設定した幅を有した断面近傍空間を格子状に分割して複数の部分空間を設定し、各部分空間ごとに、所定の条件を満たすエッジ見当領域を切断平面内にて探索し、エッジ見当領域に属する点群の切断平面内での分布に沿った方向線をエッジとして求め、このエッジを進行方向に追尾してつなげることでトンネルの断面形状を検出するデータ解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、エッジ見当領域に属する点群の切断平面内での分布に沿った方向線をエッジとして求め、このエッジを進行方向に追尾してつなげることでトンネルの断面形状を検出するため、例えば壁面のように上方が開放されている、すなわち移動体の進行方向に対する切断平面上で連続していない場合、エッジを求めることができず壁面を検出することが困難であった。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、トンネルの表面に設備が設置されている場合、トンネルの表面として検出してしまう場合があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、適切に地物を検出する地物検出装置および地物検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するため、本発明に係る地物検出装置の第1の特徴は、
移動体の周辺の地物に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記地物の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から、前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記地物を検出する地物検出装置であって、
前記移動体の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、前記設定した仮想平面間に存在する前記点群データを前記仮想平面に投影する点群データ投影手段と、
前記投影された仮想平面における単位面積当たりの前記点群データの密度を点群密度として算出する点群密度算出手段と、
前記点群密度が所定の点群閾値以上である前記点群データを壁点群として削除し、前記壁点群削除後の前記点群データを設備点群として検出する検出手段と、
を備えたことにある。
【0010】
本発明に係る地物検出装置の第2の特徴は、
前記検出手段は、
前記点群密度が所定の点群閾値以上である前記点群データを壁候補点群とし、
前記仮想平面上であって前記レーザー光の照射点近傍の起点から前記点群データまでを結ぶ直線が前記壁候補点群と交差した場合に、前記壁候補点群と交差した前記点群データと前記壁候補点群とを前記壁点群として削除し、
前記直線が前記壁候補点群と交差しない場合に、前記壁候補点群と交差しない前記点群データを前記設備点群として検出することにある。
【0011】
本発明に係る地物検出装置の第3の特徴は、
前記移動体の左右方向の中心線上であって、地表面から所定の距離だけ離れた位置を前記起点とすることにある。
【0012】
本発明に係る地物検出装置の第4の特徴は、
前記設備点群において、各設備点間距離が所定の閾値未満である前記設備点群をセグメントして設備点集合体として識別する設備点集合体識別手段と、をさらに備えたことにある。
【0013】
本発明に係る地物検出装置の第5の特徴は、
設備の設備名ごとに、前記設備の特徴を示す設備特徴条件を記憶する記憶手段と、
前記設備点集合体識別手段により識別された設備点集合体ごとに設備特徴条件を抽出し、抽出した設備特徴条件と、前記記憶手段に記憶された設備特徴条件とを比較することにより、前記設備点集合体の前記設備名を特定する設備特定手段と、をさらに備えたことにある。
【0014】
本発明に係る地物検出装置の第6の特徴は、
前記設備の設備名ごとに記憶された前記設備特徴条件は、前記移動体の進行方向を一致させて記憶され、
前記設備特定手段は、
前記設備点集合体識別手段により識別された設備点集合体ごとに、前記移動体の進行方向に合わせて設備特徴条件を抽出することにある。
【0015】
本発明に係る地物検出プログラムの第1の特徴は、
移動体の周辺の地物に対して照射したレーザー光の反射光に基づいて前記地物の3次元座標を点群データとして生成する点群データ生成装置から前記点群データを取得し、前記取得した点群データに基づいて前記地物を検出する地物検出装置が実行する地物検出プログラムであって、
前記移動体の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、前記設定した仮想平面間に存在する前記点群データを前記仮想平面に投影する点群データ投影ステップと、
前記投影された仮想平面における単位面積当たりの前記点群データの密度を点群密度として算出する点群密度算出ステップと、
前記点群密度が所定の点群閾値以上である前記点群データを壁点群として削除し、前記壁点群削除後の前記点群データを設備点群として検出する検出ステップと、
を前記地物検出装置に実行させることにある。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る地物検出装置および地物検出プログラムによれば、適切に地物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態である地物検出システムの概略構成を示した概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える点群データ生成装置による点群データの生成を模式的に説明した説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置の点群データ投影手段による投影を模式的に説明した説明図である。
【
図4】台車がトンネル内に敷設されたレール上を走行した場合において、本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置の点群データ投影手段による投影の前後の点群データを示した図である。(a)は、投影前の点群データを示しており、(b)は、投影後の点群データを示している。
【
図5】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置1の検出手段による壁点群と設備点群の検出を説明した説明図である。
【
図6】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置の設備点集合体識別手段による設備点群集合体の識別を説明した説明図である。(a)は、壁点群と、設備点群とを示した図であり、(b)は、壁点群を削除し、設備点群のみを示した図である。
【
図7A】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置による処理内容を示したフローチャートである。
【
図7B】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置による処理内容を示したフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置による設備名特定処理の処理内容を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一若しくは同等の部位や構成要素には、同一若しくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0019】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
以下、本発明の一実施形態である地物検出装置を備えた地物検出システムについて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態である地物検出システムの概略構成を示した概略構成図である。
【0022】
図1に示すように、地物検出システム100は、地物検出装置1と、点群データ生成装置2と、台車(移動体)3と、モニタ5とを備えている。
【0023】
点群データ生成装置2は、レール4に沿って移動する台車3に搭載されている。台車3が移動中に、点群データ生成装置2は台車3の周辺の地物に対してレーザー光を照射する。そして、点群データ生成装置2は、照射したレーザー光の反射光に基づいて地物の3次元座標を点群データとして生成する。詳細は後述する。なお、地物とは、例えば、トンネル、信号機、標識、樹木など地上にある全ての物体をいう。
【0024】
地物検出装置1は、点群データ生成装置2から点群データを取得し、取得した点群データに基づいて地物を検出する。
【0025】
モニタ5は、地物検出装置1により検出された地物を表示する画面など各種画面を表示する。
【0026】
<点群データ生成装置2による点群データの生成>
図2は、本発明の一実施形態である地物検出システム100が備える点群データ生成装置2による点群データの生成を模式的に説明した説明図である。
【0027】
図1,2に示すように、点群データ生成装置2は、レーザースキャナ21と、GPS(Global Positioning System)22と、IMU(inertial measurement unit)23と、データ収集手段24と、データ一時記憶部25とを備えている。
【0028】
レーザースキャナ21は、台車3の後方に設けられており、回転しながら周囲360度にレーザー光を照射する。照射するレーザー光の到達距離は80m~100mの範囲であり、例えば、360度の範囲を200Hz周期でレーザー光を発射する。そして、レーザースキャナ21は、発射したレーザー光の反射光を受光し、受光した反射光に基づいて受光した測定時刻と地物までの角度と距離とを示すレーザデータ(Time,θ,L)を取得する。
【0029】
GPS22は、人工衛星から発射される信号を用いてGPSデータ(位置座標)を取得する。
【0030】
IMU23は、点群データ生成装置2の姿勢を検出することができる。これらのIMU23で取得した姿勢はGPSデータに対応させてPOS(Position and Orientation System)データとしてデータ収集手段24に供給される。すなわち、POSデータは、GPS22からのGPSデータ(位置座標)と検出した姿勢とを組み合わせた、基準となるIMU23の位置姿勢(測定時刻、位置座標、傾き)を示すデータ(Time,xi,yi,zi,Roll,Pitch,Yaw)を含んでいる。ziは、グランドレベルからのIMU23が取り付けられている標高値となる。
【0031】
IMU23を基準としたレーザースキャナ21の位置座標は、(Δx,Δy,Δz)で示すことできる。
【0032】
データ収集手段24は、IMU23から取得したPOSデータと、レーザースキャナ21から取得したレーザデータとに基づいて、地物の位置を示す3次元座標の集まりを点群データ(X,Y,Z)として生成する。
【0033】
データ一時記憶部25は、データ収集手段24により生成された点群データ(X,Y,Z)と、台車3の進行方向D、速度Vの移動データ(D,V)とを関連付けて一時的に記憶する。記憶された点群データと移動データとは、地物検出装置1に供給される。ここでは、データ一時記憶部25に記憶された点群データと移動データとは、地物検出装置1と点群データ生成装置2とが接続された際に、データ一時記憶部25から地物検出装置1へと供給される例について説明するがこれに限らない。例えば、無線ネットワークを介してリアルタイムで地物検出装置1へと供給されるようにしてもよい。
【0034】
<地物検出装置1の構成>
図1に戻り、地物検出装置1は、点群データ取得手段101と、点群データ記憶部102と、点群データ投影手段103と、点群密度算出手段104と、検出手段105と、設備点集合体識別手段106と、設備特徴条件記憶部108と、設備特定手段109と、設備データ記憶部110と、表示制御手段111とを有している。
【0035】
点群データ取得手段101は、点群データ生成装置2のデータ一時記憶部25から供給される点群データと移動データとを取得し、取得した点群データと移動データとを点群データ記憶部102に記憶する。
【0036】
点群データ記憶部102は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、点群データ(X,Y,Z)と移動データ(D,V)とが記憶されている。
【0037】
点群データ投影手段103は、台車3の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、設定した仮想平面間に存在する点群データを仮想平面に投影する。
【0038】
図3は、点群データ投影手段103による投影を模式的に説明した説明図である。ここでは、説明のため簡素化して、測定点211,212,213の座標を示す3点の点データからなる点群データを3次元空間にプロットした図を示している。
【0039】
図3に示すように、台車3の進行方向に対して垂直となるように仮想平面が間隔Mごとに連続的に設けられている。ここでは、仮想平面201,202を図示している。
【0040】
設定した仮想平面201と仮想平面202との間に存在する点群データである測定点211,212,213の点データが仮想平面201上に投影されて、投影測定点211A,212A,213Aの点データとなる。
【0041】
図4は、台車3がトンネル内に敷設されたレール4上を進行方向に沿って走行した場合において、点群データ投影手段103による投影の前後の点群データを示した図である。(a)は、投影前の点群データを示しており、(b)は、投影後の点群データを示している。
【0042】
図4(a)においては、進行方向に垂直な仮想平面201が設けられており、さらに仮想平面201からMだけ進行方向後方の位置に仮想平面202が設けられている。
【0043】
図4(a)では、トンネル壁面の点群データ301や、トンネル内壁に設けられた設備の点群データ302などが含まれている。
【0044】
これらの点群データが、仮想平面201上に投影されると、
図4(b)に示すように、点群の密度が高い部分と低い部分とが現れる。具体的には、トンネル壁面の点群データ301は、進行方向に沿って連続的にプロットされているので、仮想平面201上に投影されると、点群データ301に対応する投影点401では点群データの密度が高くなる。
【0045】
その一方、設備の点群データ302は、進行方向に沿って非連続でプロットされているので、仮想平面201上に投影されると、点群データ302に対応する投影点402では投影点401と比較すると、点群データの密度が低くなる。
【0046】
この点群データの密度の違いを利用することにより、トンネルや壁面などを示す点群データと、設備を示す点群データとを分離することができる。
【0047】
点群密度算出手段104は、投影された仮想平面における単位面積当たりの点群データの密度を点群密度として算出する。ここでは、仮想平面201における点群密度を算出するが、全ての投影された仮想平面について点群密度を算出する。
【0048】
検出手段105は、点群密度算出手段104により算出された点群密度が所定の点群閾値Th1以上である点群データを壁候補点群とする。壁候補点群とは、トンネルや壁などを示す点群データの候補のことである。
【0049】
そして、検出手段105は、仮想平面上の起点から点データまでを結ぶ直線が壁候補点群と交差した場合に、この交差した点データと壁候補点群とを壁点群として検出する。その一方、仮想平面上であってレーザー光の照射点近傍の起点から点データまでを結ぶ直線が壁候補点群と交差しない場合に、壁候補点群と交差しない点データを設備点群として検出する。
【0050】
図5は、検出手段105による壁点群と設備点群の検出を説明した説明図である。
【0051】
図5に示すように、台車3の左右方向の中心線S上であって、地表面Gから所定の距離Nだけ離れた位置を起点Rとする。
【0052】
そして、起点Rから点群データそれぞれの点データ(例えば、P点)までを直線で結んだとき、この直線が壁候補点群501と交差したか否かを判定する。例えば、起点Rと点Pとの距離が、起点Rから点Qまでの距離より長い場合には、直線が壁候補点群501と交差すると判定できる。ここで、点Qは壁候補点群501上であって、点Rから最も近い点である。
【0053】
起点Rから結んだ直線が壁候補点群501と交差した点データについては、壁面に設けられた凹部であると推測できるので、この点データを壁候補点群501と合わせて壁点群として検出する。
【0054】
その一方、起点Rから結んだ直線が壁候補点群501と交差しない点データについては、壁面より内側に設けられた設備であると推測できるので、この点データを設備点群として検出する。
【0055】
このように、点データそれぞれについて起点Rまでの直線が壁候補点群501と交差したか否かを判定することにより、点群データを壁点群と設備点群とに分けることができる。
【0056】
設備点集合体識別手段106は、設備点群において、各設備点間距離が所定の閾値未満である設備点群をセグメントして設備点集合体として識別する。
【0057】
なお、ここでは、検出手段105は、点群密度算出手段104により算出された点群密度が所定の点群閾値Th1以上である点群データを壁候補点群とし、仮想平面上の起点から点データまでを結ぶ直線が壁候補点群と交差した場合に、この交差した点データと壁候補点群とを壁点群として検出したが、予め壁面に凹部がないことが分かっている場合などには、これらの処理を簡略化してもよい。具体的には、検出手段105は、点群密度が所定の点群閾値以上である点群データを壁点群として削除し、壁点群削除後の点群データを設備点群として検出するようにしてもよい。
【0058】
図6は、設備点集合体識別手段106による設備点群集合体の識別を説明した説明図である。(a)は、壁点群601と、設備点群602とを示した図であり、(b)は、壁点群601を削除し、設備点群602のみを示した図である。
【0059】
図6(a)に示すように、壁点群601と、設備点群602とが現れている。
【0060】
そして、
図6(a)から、壁点群601を削除すると、
図6(b)に示すように、設備点群602が残る。
【0061】
設備点集合体識別手段106は、設備点群602に含まれる点群データ間のそれぞれの距離を算出する。そして、設備点集合体識別手段106は、各設備点間距離が所定の閾値Th2未満である点群データを1つのセグメントとして分割し、分割した1つのセグメントを設備点集合体として識別する。設備集合体とは、ある一つの設備を示す設備点群データの集合のことをいう。例えば、設備点群データのある点データP1について、最も近接する点データP2との距離が閾値Th2以上である場合、点データP1と点データP2とはそれぞれ構成する設備の端部であると推測できるので、点データP1と点データP2とは異なる設備集合体としてセグメントする。また、設備点群データのある点データP1と点データP3との距離が閾値Th2未満であり、点データP3と点データP4との距離が閾値Th2未満である場合、点データP1と点データP3と点データP4とは、同じ設備を構成していると推測できるので、点データP1と点データP3と点データP4とは、同じ設備集合体としてセグメントする。
【0062】
このように、各設備点間距離が所定の閾値Th2未満である設備点群をセグメントして設備点集合体として識別することにより、
図6(b)に示すように、設備点群602を、設備点集合体602aと設備点集合体602bとにセグメントすることができる。
【0063】
設備特徴条件記憶部108は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、信号機、勾配標、ATS地上子などの設備名ごとに、台車3の進行方向を一致させて設備の特徴を示す設備特徴条件を記憶している。例えば、信号機の設備特徴条件として、(1)全体の形状が柱状であること、(2)柱状全体の高さが所定の高さ範囲内であること、(3)柱状として連続性があること、(4)グランドレベルから所定の位置に添架物があること、(5)添架物が灯箱の形状を有していること、(6)柱状物全体の重心位置と灯箱とが所定の位置関係で設けられていること、などが記憶されている。
【0064】
設備特定手段109は、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体ごとに台車3の進行方向に合わせて設備特徴条件を抽出する。例えば、(1)全体の形状が柱状であること、(2)柱状全体の高さが所定の高さ範囲内であること、(3)柱状として連続性があること、(4)グランドレベルから所定の位置に添架物があること、(5)添架物が灯箱の形状を有していること、(6)柱状物全体の重心位置と灯箱とが所定の位置関係で設けられていること、などを設備特徴条件として抽出する。
【0065】
そして、設備特定手段109は、抽出した設備特徴条件と、設備特徴条件記憶部108に記憶された設備特徴条件とを比較することにより、設備点集合体の設備名を特定する。例えば、抽出した設備特徴条件が、設備特徴条件記憶部108に記憶された信号機の設備特徴条件の(1)~(6)を具備する場合、設備特定手段109は、この設備点集合体は信号機であると特定する。
【0066】
なお、設備特徴条件記憶部108に台車3の進行方向に合わせて設備特徴条件を記憶し、設備特定手段109が台車3の進行方向に合わせて設備特徴条件を抽出することで、上記の設備を特定しやすくする。それぞれの設備の特定について詳細は後述する。
【0067】
設備データ記憶部110は、例えば、ハードディスクドライブなどで構成され、設備特定手段109により特定された説明名と点群データとを関連付けて、設備データとして記憶する。
【0068】
表示制御手段111は、設備データ記憶部110に記憶された設備データに基づいて、モニタ5上に点群データを表示させる。
【0069】
<地物検出装置1の作用>
図7A,Bは、本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置1による処理内容を示したフローチャートである。
【0070】
図A,Bに示すように、地物検出装置1は、図示しない入力装置から地物検出が要求されると(ステップS101;YES)、点群データ投影手段103は、台車3の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定する(ステップS103)。
【0071】
そして、点群データ投影手段103は、設定した仮想平面間に存在する点群データを仮想平面に投影する(ステップS105)。
【0072】
点群密度算出手段104は、投影された仮想平面における単位面積当たりの点群データの密度を点群密度として算出する(ステップS107)。
【0073】
検出手段105は、点群密度算出手段104により算出された点群密度が所定の点群閾値Th1以上か否かを判定する(ステップS109)。
【0074】
ステップS109において、点群密度が所定の点群閾値Th1未満(NO)と判定された点群については、設備点群として設定する(ステップS117)。
【0075】
一方、ステップS109において、点群密度が所定の点群閾値Th1以上(YES)と判定された点群については、壁候補点群として設定する(ステップS111)。
【0076】
そして、検出手段105は、壁候補点群のそれぞれの点データについて、仮想平面上の起点から点データまでを結ぶ直線が壁候補点群と交差するか否かを判定する(ステップS113)。
【0077】
ステップS113において、仮想平面上の起点から点データまでを結ぶ直線が壁候補点群と交差しないと判定された場合(NO)、検出手段105は、その点データを設備点群として設定する(ステップS117)。
【0078】
一方、ステップS113において、仮想平面上の起点から点データまでを結ぶ直線が壁候補点群と交差すると判定された場合(YES)、検出手段105は、その点データを壁点群として設定する(ステップS115)。
【0079】
次に、設備点集合体識別手段106は、設備点群において、各設備点データ間の距離が所定の閾値Th2未満か否かを判定する(ステップS119)。
【0080】
ステップS119において、各設備点データ間の距離が所定の閾値Th2未満と判定された場合(YES)、設備点集合体識別手段106は、所定の閾値Th2未満と判定された設備点データを設備点集合体として設定する(ステップS121)。
【0081】
そして、設備特定手段109は、設備点集合体の設備名を特定する設備名特定処理を実行し(ステップS123)、特定された説明名と点群データとを関連付けて、設備データとして設備データ記憶部110に記憶させる(ステップS125)。この設備名特定処理の処理内容の詳細は後述する。
【0082】
<設備名特定処理>
図8は、本発明の一実施形態である地物検出システムが備える地物検出装置1による設備名特定処理の処理内容を示したフローチャートである。
【0083】
図8に示すように、設備特定手段109は、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体の設備特徴条件が、設備特徴条件記憶部108に記憶されたATS(Automatic Train Stop)地上子の設備特徴条件に一致するか否かを判定する(ステップS201)。ATS(Automatic Train Stop)地上子は、通常は線路上に設けられ、信号の現示及び線路の条件に応じ、自動的に車両を減速させる、又は停止させる装置の一種である。線路上に設けられ、鉄道車両と接触しないように高さが低い形状を有しているため、設備特徴条件記憶部108に記憶された設備特徴条件には、平面性を有していること、そして、平面の奥行きおよび幅は所定の大きさ以内であることが含まれる。
【0084】
ステップS201において、ATS地上子に一致すると判定された場合(YES)、設備特定手段109は、その設備集合体をATS地上子と特定する(ステップS203)。
【0085】
ステップS201において、ATS地上子に一致しないと判定された場合(NO)、設備特定手段109は、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体のうち、柱状物の形状を有する設備集合体を抽出する(ステップS205)。
【0086】
そして、設備特定手段109は、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体の設備特徴条件が、設備特徴条件記憶部108に記憶された電化柱の設備特徴条件に一致するか否かを判定する(ステップS207)。
【0087】
ステップS207において、電化柱の設備特徴条件に一致すると判定された場合(YES)、設備特定手段109は、その設備集合体を電化柱と特定する(ステップS209)。
【0088】
ステップS207において、電化柱の設備特徴条件に一致しないと判定された場合(NO)、設備特定手段109は、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体の設備特徴条件が、設備特徴条件記憶部108に記憶された信号機の設備特徴条件に一致するか否かを判定する(ステップS211)。
【0089】
ステップS211において、信号機の設備特徴条件に一致すると判定された場合(YES)、設備特定手段109は、その設備集合体を信号機と特定する(ステップS213)。
【0090】
ステップS211において、信号機の設備特徴条件に一致しないと判定された場合(NO)、設備特定手段109は、処理を終了する。この場合にも、後述の他のステップの処理により、その他の設備と特定される。
【0091】
ステップS209において電化柱と特定された場合、またはステップS213において信号機と特定された場合、さらに、その電化柱または信号機が特発付属式の設備特徴条件に一致するか否かを判定する(ステップS215)。特発付属式とは、特殊信号発光機として本体に付属された形状を有するものである。
【0092】
ステップS215において、特発付属式の設備特徴条件に一致すると判定された場合(YES)、設備特定手段109は、その設備集合体を特発付属式であると特定する(ステップS217)。
【0093】
ステップS211において、特発付属式の設備特徴条件に一致しないと判定された場合(NO)、設備特定手段109は、処理を終了する。
【0094】
また、設備特定手段109は、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体の設備特徴条件が、設備特徴条件記憶部108に記憶された勾配標の設備特徴条件に一致するか否かを判定する(ステップS221)。勾配標の設備特徴条件は、例えば、(1)グランドレベルからの上端の高さが所定の高さ未満であること、(2)設備集合体の中心部と主要部との距離が所定の範囲内であること、(3)主要部から設備集合体の中心部へと向かうベクトルの方向と、台車3の進行方向のベクトルとの角度が所定の角度範囲内であること、が設定されている。
【0095】
ステップS221において、勾配標の設備特徴条件に一致すると判定された場合(YES)、設備特定手段109は、その設備集合体を勾配標と特定する(ステップS223)。
【0096】
ステップS221において、勾配標の設備特徴条件に一致しないと判定された場合(NO)、設備特定手段109は、処理を終了する。
【0097】
また、同様に、設備特定手段109は、ステップS225~S251に示すように、設備点集合体識別手段106により識別された設備点集合体ごとに設備特徴条件を抽出し、抽出した設備特徴条件と、設備特徴条件記憶部108に記憶された設備特徴条件とを比較することにより、設備点集合体の設備名を特定する。なお、特発自立式とは、特殊信号発光機として自立型の形状を有するものである。停目とは、停止位置目標のことである。
【0098】
以上のように、本発明の一実施形態である地物検出システム100が備える地物検出装置1によれば、台車(移動体)3の進行方向に垂直な仮想平面を所定間隔ごとに設定し、設定した仮想平面間に存在する点群データを仮想平面に投影する点群データ投影手段103と、投影された仮想平面における単位面積当たりの点群データの密度を点群密度として算出する点群密度算出手段104と、点群密度が所定の点群閾値以上である点群データを壁点群として削除し、壁点群削除後の点群データを設備点群として検出する検出手段105とを備えている。
【0099】
そのため、例えば壁面のように上方が開放されている、すなわち台車3移動体の進行方向に対する切断平面上で連続していない箇所がある場合であっても、壁面を検出することが可能となる。また、トンネルの表面に設備が設置されている場合であっても、トンネルの壁面とトンネル壁面に設けられた設備とをそれぞれ検出することができる。これにより、適切に地物を検出することができる。
【0100】
なお、上述した実施形態は、コンピュータにインストールした地物検出プログラムを実行させることにより実現することもできる。
【符号の説明】
【0101】
1 地物検出装置
2 点群データ生成装置
3 台車(移動体)
4 レール
5 モニタ
21 レーザースキャナ
22 GPS
23 IMU
24 データ収集手段
25 データ一時記憶部
100 地物検出システム
101 点群データ取得手段
102 点群データ記憶部
103 点群データ投影手段
104 点群密度算出手段
105 検出手段
106 設備点集合体識別手段
108 設備特徴条件記憶部
109 設備特定手段
110 設備データ記憶部
111 表示制御手段