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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119474
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】テープカッター
(51)【国際特許分類】
   B65H 35/07 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
B65H35/07 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022398
(22)【出願日】2022-02-16
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】511101139
【氏名又は名称】横田 安野
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 正判
(72)【発明者】
【氏名】横田 安野
【テーマコード(参考)】
3F062
【Fターム(参考)】
3F062BA04
3F062BC02
3F062BC06
3F062BD02
3F062BF01
3F062BG02
(57)【要約】
【課題】 テープの巻き戻しを妨げるとともに、テープを引き出すときには、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗力を生じないテープカッターを提供する。
【解決手段】 本開示によるテープカッターの本体部は、粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体を、着脱可能かつ回転可能に保持する。本体部に基端部が支持された押圧片は、弾性復元力により、環状テープ体の内周面を引き出し方向とは逆方向に押圧する。押圧片は、環状テープ体の内周面を押圧することにより環状テープ体の回転を妨げる制止部を先端部に有するとともに、内周面を押圧しつつも環状テープ体の回転を妨げない滑動部を先端部と基端部の間に有している。粘着テープを引き出さないときには、滑動部は内周面から離れ、制止部が内周面を押圧する。粘着テープを引き出すときには、滑動部が内周面に押圧され、制止部が内周面から離れる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープカッターであって、
粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体を、着脱可能かつ回転可能に保持するテープ保持体を有する本体部と、
前記本体部に支持され、前記環状テープ体から引き出された前記粘着テープを切断するテープ切断刃と、を備え、
前記テープ保持体は、自身と前記環状テープ体との間に、前記粘着テープの引き出し方向に遊びを有するように前記環状テープ体を保持し、
前記テープカッターは、
前記本体部に基端部が支持され、弾性復元力により、前記環状テープ体の内周面を前記引き出し方向とは逆方向に押圧する押圧片を、更に備え、
前記押圧片は、前記環状テープ体の前記内周面を押圧することにより前記環状テープ体の回転を妨げる制止部を先端部に有するとともに、前記内周面を押圧しつつも前記環状テープ体の回転を妨げない滑動部を前記先端部と前記基端部の間に有し、
前記粘着テープを引き出さないときには、前記滑動部は前記内周面から離れ、前記制止部が前記内周面を押圧することにより、前記環状テープ体の回転が妨げられ、
前記粘着テープを引き出すときには、前記滑動部が前記内周面に押圧され、前記制止部が前記内周面から離れることにより、前記環状テープ体は前記制止部による回転の妨げを解除される、テープカッター。
【請求項2】
前記テープ保持体は、前記環状テープ体の内径よりも外径が小さい筒状体を有しており、当該筒状体が前記環状テープ体の空洞に挿入されることにより、前記環状テープ体を保持し、
前記筒状体は、外周面から後退した凹陥部を、前記粘着テープが引き出される側とは反対側に有し、
前記押圧片の前記基端部は、前記粘着テープを引き出さないときには、前記滑動部及び前記制止部が前記凹陥部の外方に露出し、前記粘着テープを引き出すときには、前記制止部が前記凹陥部に後退するように、前記凹陥部において前記本体部に支持される、請求項1に記載のテープカッター。
【請求項3】
前記押圧片は、前記基端部から前記先端部まで延びかつ弾性を有する屈曲した板状の金属片を有し、
前記本体部は、前記筒状体の前記凹陥部において、前記筒状体の軸方向に突起する支柱を有し、
前記押圧片の前記基端部は、前記支柱に着脱可能に係止されることにより、前記本体部に着脱可能に支持される、請求項2に記載のテープカッター。
【請求項4】
前記押圧片は、前記先端部において、前記金属片から成りかつ前記環状テープ体の前記内周面を押圧する単一又は複数の尖頭部を、前記制止部として有する、請求項3に記載のテープカッター。
【請求項5】
前記押圧片は、前記先端部において、前記金属片から成りかつ前記環状テープ体の前記内周面を刃先で押圧する刃状部を、前記制止部として有する、請求項3に記載のテープカッター。
【請求項6】
前記押圧片は、前記先端部において前記金属片に固着された摩擦部材を、前記制止部として有し、
前記摩擦部材は、前記環状テープ体の前記内周面を押圧するときに、摩擦力により前記環状テープ体の回転を妨げる、請求項3に記載のテープカッター。
【請求項7】
前記押圧片は、前記先端部において前記金属片に固着された針状部材を、前記制止部として有し、
前記針状部材は、その針先が前記環状テープ体の前記内周面を押圧することにより、前記環状テープ体の回転を妨げる、請求項3に記載のテープカッター。
【請求項8】
前記押圧片は、前記基端部において切り起こされた部分を有し、
前記筒状体は、前記凹陥部を形成する壁体において、前記基端部の前記切り起こされた部分が係合する貫通孔を有する、請求項3から7のいずれかに記載のテープカッター。
【請求項9】
前記筒状体は、自身と前記環状テープ体との間における、前記引出方向に直交する径方向の遊びを減殺する突起を、自身の外周面に有する、請求項2から8のいずれかに記載のテープカッター。
【請求項10】
前記テープカッターは、前記制止部を第1制止部として、前記本体部に支持される第2制止部を更に備え、
前記第2制止部は、前記第1制止部が前記環状テープ体の前記内周面を押圧するときに、前記内周面のうち、前記第1制止部により押圧される第1部位と対向する第2部位の押圧を受けることにより、前記第1制止部と共同して前記環状テープ体の回転を妨げる、請求項1から9のいずれかに記載のテープカッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープカッターに関し、特に、切断したテープが巻き戻されることを防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のテープカッターは、切断した粘着テープが巻き戻されて粘着テープ表面に貼りついてしまい、剥がすのに苦労するという欠点を有している(特許文献1の要約書参照)。特許文献1には、この問題を解決することを目指したテープカッターが開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されるテープカッターは、テープカッターのテープ装着筒に2本の切り込みを入れてクッション取付板を形成し、クッション取付板にクッションを装着して、テープ内周とクッションとの間に適度の接触抵抗を与えるように構成することにより、巻き戻しの問題を解消しようとするものとなっている(同文献の要約書参照)。このため、テープの巻き戻しを妨げる抵抗力と同等の抵抗力が、テープを引き出す時にも作用するので、テープの引出し作業に余分な力を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-140871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、テープの巻き戻しを妨げるとともに、テープを引き出すときには、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗力を生じないテープカッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、テープカッターであって、本体部と切断刃とを備えている。本体部は、粘着テープが環状に巻かれて成る環状テープ体を、着脱可能かつ回転可能に保持するテープ保持体を有している。切断刃は、前記本体部に支持され、前記環状テープ体から引き出された前記粘着テープを切断する。前記テープ保持体は、自身と前記環状テープ体との間に、前記粘着テープの引き出し方向に遊びを有するように前記環状テープ体を保持する。前記テープカッターは、前記本体部に基端部が支持され、弾性復元力により、前記環状テープ体の内周面を前記引き出し方向とは逆方向に押圧する押圧片を、更に備えている。前記押圧片は、前記環状テープ体の前記内周面を押圧することにより前記環状テープ体の回転を妨げる制止部を先端部に有するとともに、前記内周面を押圧しつつも前記環状テープ体の回転を妨げない滑動部を前記先端部と前記基端部の間に有している。前記粘着テープを引き出さないときには、前記滑動部は前記内周面から離れ、前記制止部が前記内周面を押圧することにより、前記環状テープ体の回転が妨げられる。前記粘着テープを引き出すときには、前記滑動部が前記内周面に押圧され、前記制止部が前記内周面から離れることにより、前記環状テープ体は前記制止部による回転の妨げを解除される。
【0007】
この構成によれば、粘着テープを環状テープ体から引き出さないときには、制止部が環状テープ体の内周面を押圧することにより、環状テープ体の回転が妨げられ、粘着テープを引き出すときには、滑動部が環状テープ体の内周面に押圧され、制止部が環状テープ体の内周面から離れることにより、環状テープ体は制止部による回転の妨げを解除されるので、テープの巻き戻しが妨げられるとともに、テープを引き出すときには、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗力を受けない。なお、本体部の一部を成すテープ保持体は、例えば本体部の他の部分と一体成型された合成樹脂製であるなど、いずれも本体部の他の部分と一体を成していてもよく、逆に別体であってもよい。テープ切断刃及び押圧片も、本体部と一体を成していてもよく、逆に、本体部と別体であってもよい。
【0008】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様によるテープカッターであって、前記テープ保持体は、前記環状テープ体の内径よりも外径が小さい筒状体を有しており、当該筒状体が前記環状テープ体の空洞に挿入されることにより、前記環状テープ体を保持する。前記筒状体は、外周面から後退した凹陥部を、前記粘着テープが引き出される側とは反対側に有している。前記押圧片の前記基端部は、前記粘着テープを引き出さないときには、前記滑動部及び前記制止部が前記凹陥部の外方に露出し、前記粘着テープを引き出すときには、前記制止部が前記凹陥部に後退するように、前記凹陥部において前記本体部に支持される。
【0009】
この構成によれば、筒状体により環状テープ体が、その内周面に沿うように、かつ粘着テープの引き出し方向に遊びを持って、保持される。粘着テープを引き出すときには、筒状体が有する凹陥部に押圧片の制止部が後退することにより、環状テープ体は制止部による回転の妨げを解除される。
【0010】
本発明のうち第3の態様によるものは、第2の態様によるテープカッターであって、前記押圧片は、前記基端部から前記先端部まで延びかつ弾性を有する屈曲した板状の金属片を有している。また、前記本体部は、前記筒状体の前記凹陥部において、前記筒状体の軸方向に突起する支柱を有している。更に、前記押圧片の前記基端部は、前記支柱に着脱可能に係止されることにより、前記本体部に着脱可能に支持される。
【0011】
この構成によれば、弾性を有する屈曲した板状の金属片により、押圧片に弾性復元力が付与されるとともに、凹陥部において突起する支柱に基端部が着脱可能に係止されるという簡便な形態で、押圧片が凹陥部において本体部に着脱可能に支持される。
【0012】
本発明のうち第4の態様によるものは、第3の態様によるテープカッターであって、前記押圧片は、前記先端部において、前記金属片から成りかつ前記環状テープ体の前記内周面を押圧する単一又は複数の尖頭部を、前記制止部として有している。
この構成によれば、制止部が簡便な構造により実現される。
【0013】
本発明のうち第5の態様によるものは、第3の態様によるテープカッターであって、前記押圧片は、前記先端部において、前記金属片から成りかつ前記環状テープ体の前記内周面を刃先で押圧する刃状部を、前記制止部として有している。
この構成によれば、制止部が簡便な構造により実現される。
【0014】
本発明のうち第6の態様によるものは、第3の態様によるテープカッターであって、前記押圧片は、前記先端部において前記金属片に固着された摩擦部材を、前記制止部として有している。また、前記摩擦部材は、前記環状テープ体の前記内周面を押圧するときに、摩擦力により前記環状テープ体の回転を妨げる。
この構成によれば、制止部が簡便な構造により実現される。
【0015】
本発明のうち第7の態様によるものは、第3の態様によるテープカッターであって、前記押圧片は、前記先端部において前記金属片に固着された針状部材を、前記制止部として有している。また、前記針状部材は、その針先が前記環状テープ体の前記内周面を押圧することにより、前記環状テープ体の回転を妨げる。
この構成によれば、制止部が簡便な構造により実現される。
【0016】
本発明のうち第8の態様によるものは、第3から第7のいずれかの態様によるテープカッターであって、前記押圧片は、前記基端部において切り起こされた部分を有している。また、前記筒状体は、前記凹陥部を形成する壁体において、前記基端部の前記切り起こされた部分が係合する貫通孔を有している。
【0017】
この構成によれば、押圧片の基端部の切り起こされた部分が、凹陥部の壁体の貫通孔に係合することにより、押圧片の基端部が、本体部から外れることなく本体部に支持される。基端部の切り起こされた部分を、貫通孔を通して押し戻すことにより、係合を解除することができ、それにより押圧片を本体から取り外すことができる。
【0018】
本発明のうち第9の態様によるものは、第2から第8のいずれかの態様によるテープカッターであって、前記筒状体は、自身と前記環状テープ体との間における、前記引出方向に直交する径方向の遊びを減殺する突起を、自身の外周面に有している。
この構成によれば、筒状体の外周面に有する突起により、筒状体と環状テープ体との間における、引出方向に直交する径方向の遊びが減殺される。
【0019】
本発明のうち第10の態様による周面ものは、第1から第9のいずれかの態様によるテープカッターであって、当該テープカッターは、前記制止部を第1制止部として、前記本体部に支持される第2制止部を更に備えている。前記第2制止部は、前記第1制止部が前記環状テープ体の前記内周面を押圧するときに、前記内周面のうち、前記第1制止部により押圧される第1部位と対向する第2部位の押圧を受けることにより、前記第1制止部と共同して前記環状テープ体の回転を妨げる。
この構成によれば、粘着テープを引き出さないときには、環状テープ体の内周面のうち、第1部位が第1制止部により押圧されるのに加え、第2制止部によって第2部位が押圧されることにより、環状テープ体の回転が、より効果的に妨げられる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、テープの巻き戻しを妨げるとともに、テープを引き出すときには、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗力を生じないテープカッターが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態によるテープカッターの構成を、粘着テープを保持した状態で例示する斜視図である。
図2図1のテープカッターを展開したときの構成を、粘着テープを保持した状態で例示する斜視図である。
図3図1のテープカッターを展開したときの構成を、粘着テープを取り外した状態で例示する斜視図である。
図4図1のテープカッターが有する押圧片の様々な形態を例示する斜視図である。
図5図1のテープカッターのうち、押圧片を支持する部分を拡大して例示する部分拡大図である。
図6図1のテープカッターのうち、押圧片を支持する部分を拡大して例示する部分拡大図である。
図7図1のテープカッターについて、粘着テープを引き出さないときの状態を例示する断面図である。
図8図1のテープカッターについて、粘着テープを引き出すときの状態を例示する断面図である。
図9】本発明の別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する断面図である。
図10】本発明のさらに別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する断面図である。
図11図1のテープカッターの試作品の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態によるテープカッターの構成を、粘着テープを保持した状態で例示する斜視図である。このテープカッター101は、一例として、工業用粘着テープを保持し切断する工業用テープカッターとして構成されている。テープカッター101は、本体部1及びテープ切断刃3を有している。本体部1は、粘着テープ5が環状に巻かれた環状テープ体7を保持するテープ保持体9を有している。テープ保持体9は、着脱可能かつ回転可能に環状テープ体7を保持する。テープ切断刃3は、本体部1に支持されており、図示例では本体部1に固着されている。テープ切断刃3は、環状テープ体7から引き出された粘着テープ5を切断するのに用いられる。一例として、本体部1は一体成型による合成樹脂製であり、テープ切断刃3は金属製である。
【0023】
図2及び図3は、テープカッター101を展開したときの構成を例示する斜視図である。図2は、環状テープ体7が保持された状態を例示し、図3は、環状テープ体7が取り外された状態を例示している。図示例では、テープカッター101の本体部1は、開閉可能に構成されている。本体部1は、テープ保持体9の他に、左右の側部壁体11、及びそれらを連結する頭部壁体12を有しており、それらの連結部に沿って線状の溝13が形成されている。溝13によって肉厚が薄くなった連結部に沿って、側部壁体11は頭部壁体12に対して折り曲げたり伸ばしたりすることが可能であり、それにより、本体部1を開閉することが可能となっている。
【0024】
テープ保持体9は、筒状体を成しており、環状テープ体7の空洞に挿入されることにより、環状テープ体7を保持する。筒状のテープ保持体9は、環状テープ体7の内径よりも外径が小さく設定される。それにより、テープ保持体9は、環状テープ体7を遊びを持って保持する。
【0025】
テープ保持体9は左右に分割されており、左側分割片15は左側の側部壁体11に連結され、右側分割片17は右側の側部壁体11に連結されている。左側分割片15と右側分割片17の互いに対向する軸方向端部には、薄肉部19,21が、それぞれ形成されている。一方の薄肉部19は、左側分割片15の軸方向端部において、内周面が後退するように形成されている。他方の薄肉部21は、右側分割片17の軸方向端部において、外周面が後退するように形成されている。薄肉部19の内周面と薄肉部21の外周面とが互いに擦り合う状態で、左側分割片15と右側分割片17とが互いに接続される。それにより、互いに擦り合う周面同士の摩擦力により、左側分割片15と右側分割片17との接続状態が維持される。摩擦力を超える力を加えることにより、左側分割片15と右側分割片17とは、互いに引き離すことが可能である。このように、左側分割片15と右側分割片17は、互いに着脱可能である。薄肉部19の内周面と薄肉部21の外周面との互いに対応する部位に、凸部と凹部とを形成し、それらが係合することにより、左側分割片15と右側分割片17とが接続状態を維持するようにしても良い。
【0026】
左側分割片15と右側分割片17とを引き離したときには、図2及び図3に例示するように、本体部1は展開される。この状態で、環状テープ体7をテープ保持体9の一方の分割片、例えば左側分割片15に装着する。その後に、左側分割片15と右側分割片17とを接続することにより、環状テープ体7が脱落することなくテープ保持体9に安定して保持される。このとき、図1に例示するように、本体部1は閉じた状態となる。
【0027】
本体部1は、左右の側部壁体11にそれぞれ連結するテープ案内部材23,25を有している。テープ案内部材23,25は、左右の側部壁体11から、互いに向き合うように突出している。これらのテープ案内部材23,25は、環状テープ体7から引き出された粘着テープ5を、それらの間隙に案内する役割を果たす。粘着テープ5をテープ案内部材23とテープ案内部材25との間隙に挿入することを容易にするために、左右のテープ案内部材23の間にも、間隙が設けられる。
【0028】
テープ案内部材23,25に案内されつつ望みの長さに引き出された粘着テープ5は、本体部1の頭部に設けられたテープ切断刃3によって切断することができる。切断後に残った粘着テープ5は、その粘着面がテープ案内部材23に粘着することにより、環状テープ体7に巻き取られることを、ある程度抑えることができる。しかし、その粘着力は弱く、環状テープ体7に加えられる不測の力により、粘着テープ5は環状テープ体7に容易に巻き戻される。テープカッター101は、この巻き戻しを防ぐために押圧片27を有している。押圧片27は、本体部1の一部であるテープ保持体9に基端部31が支持されており、先端部33が自由な片持ち梁として機能する。押圧片27は、弾性を有しており、弾性復元力により、環状テープ体7の内周面を粘着テープ5の引き出し方向とは逆方向に押圧することによって、環状テープ体7の回転を妨げる。それにより、粘着テープ5の巻き戻しが妨げられる。図示例では、押圧片27は、テープ保持体9の一方の分割片である左側分割片15に、その基端部31が支持されている。
【0029】
押圧片27が動作するためには、テープ保持体9に保持される環状テープ体7は、粘着テープ5の引出方向に、ある程度の遊びを要する。このために、筒状のテープ保持体9の外径は、保持される環状テープ体7の内径よりも小さく設定されている。一方、粘着テープ5の引出方向とは直交する径方向の遊びは無用である。このため、テープ保持体9の外周面には、粘着テープ5の引出方向とは直交する径方向の環状テープ体7の遊びを減殺する一対の突起29が、軸方向に沿った線状に設けられている。
【0030】
図4は、押圧片27の様々な形態を例示する斜視図である。図4に例示する押圧片27は、弾性を有する屈曲した板状の金属片30を有している。金属片30は、押圧片27の基端部31から先端部33まで延びている。各押圧片27は、環状テープ体7の内周面を押圧することにより環状テープ体7の回転を妨げる制止部35を先端部33に有している。制止部35は、図4(a)の例では、先端部33において金属片30に固着された針状部材であり、図4(b)、(c)の例では、金属片30により先端部33に形成された複数(図4(b))又は単数(図4(c))の尖頭部であり、図4(d),(e)の例では、先端部33において金属片30に固着された摩擦部材である。制止部35としての摩擦部材は、例えば弾性を有する合成ゴム製であり、環状テープ体7の内周面を押圧するときに、摩擦力により環状テープ体7の回転を妨げる。図4(f)の例では、制止部35は、金属片30により先端部33に形成された刃状部である。制止部35としての刃状部は、環状テープ体7の内周面を刃先により押圧する。
【0031】
各押圧片27は、更に、環状テープ体7の内周面を押圧しつつも環状テープ体7の回転を妨げない滑動部37を、基端部31と先端部33の間に有している。滑動部37は、図示例では、いずれの押圧片27においても、金属片30の湾曲部によって構成されている。環状テープ体7においては、環状の芯に粘着テープ5が巻かれているのが一般的である。環状の芯には、紙製の管である紙管(しかん)が広く用いられている。図示例のいずれにおいても、制止部35は紙管との摩擦力が大きく、それに比べて、滑動部37は紙管との摩擦力が小さい。
【0032】
図4(b),(e)に例示するように、基端部31には、他の部分から切り起こされた切り起こし部39が形成されていても良い。後述するように、切り起こし部39は、押圧片27が本体部1から外れることを防止するために設けられる。図1図3に例示した押圧片27は、図4(e)に例示する形態に該当する。
【0033】
図5及び図6は、テープカッター101のうち、押圧片27を支持する部分を拡大して例示する部分拡大図である。図5は、テープ保持体9の左側分割片15を、外周側から斜めに見た図であり、図6は内周側から斜めに見た図である。図示例のように、円筒状を成すテープ保持体9の左側分割片15には、その外周面から後退した凹陥部41が設けられている。凹陥部41は、粘着テープ5が引き出される側とは反対側に設けられている。凹陥部41には、本体部1の一部を成す筒状の左側分割片15から突起した支柱43が、軸方向に延びている。図4に例示した各押圧片27は、基端部31が支柱43に着脱可能に係止されることにより、左側分割片15に着脱可能に支持される。図5及び図6には、押圧片27として、図4(f)に例示する形態に、図4(b)に例示する切り起こし部39を付加した形態を例示している。押圧片27の形状としては、制止部35が環状テープ体7の内周面(図示略)を押圧しているときの形状を例示している。
【0034】
図示例のように、凹陥部41を形成する壁体45には、押圧片27の基端部31の切り起こし部39が係合する貫通孔47が形成されている。切り起こし部39が、貫通孔47に係合することにより、押圧片27の基端部31が、左側分割片15から外れることなく、左側分割片15に支持される。切り起こし部39を、貫通孔47を通して押し戻すことにより、係合を解除することができ、それにより押圧片27を左側分割片15から取り外すことができる。
【0035】
図7は、テープカッター101について、粘着テープ5を引き出さないときの状態を例示する断面図である。図7以下の図では、図1図3と同様に、押圧片27として図4(e)の形態を例示するが、他の形態を採ることも当然可能である。上述したように、筒状のテープ保持体9の外径は環状テープ体7の内径より小さく設定され、テープ保持体9の外周面には突起29が設けられているので、環状テープ体7はテープ保持体9に対して、主として粘着テープ5の引き出し方向に遊びを有する。遊びの大きさは、テープ保持体9の外径と環状テープ体7の内径との差に相当する。粘着テープ5を引き出さないときには、環状テープ体7は、その内周面を押圧片27によって押圧されることにより、粘着テープ5の引き出し方向とは逆方向に移動した位置にある。このとき、環状テープ体7の内周面のうち、押圧片27により押圧される部位49に対向する部位51が、テープ保持体9の外周面に当接する。それにより、環状テープ体7は、引き出し方向とは逆方向に、遊びの分だけ移動した位置に止まり、それ以上移動することがない。この状態において、押圧片27の制止部35及び滑動部37のいずれも、凹陥部41の外方に露出しており、それらのうち、制止部35が環状テープ体7の内周面を押圧する。滑動部37は環状テープ体7の内周面から離れている。このため、環状テープ体7の回転が制止部35により妨げられる。
【0036】
図8は、テープカッター101について、粘着テープ5を引き出すときの状態を例示する断面図である。粘着テープ5を引き出すときには、環状テープ体7は引き出し方向に移動し、押圧片27の制止部35が、環状テープ体7の内周面の部位49により押し戻され、更に環状テープ体7の内周面の別の部位が押圧片27の滑動部37に当接し、滑動部37を押し戻す。それにより制止部35は、環状テープ体7の内周面から離れ、凹陥部41に後退する。その結果、環状テープ体7は制止部35による回転の妨げを解除される。このように、テープカッター101においては、粘着テープ5の巻き戻しが妨げられるとともに、巻き戻しを妨げる抵抗力ほどの抵抗力を受けることなく、粘着テープ5を引き出すことができる。
【0037】
図9は、本発明の別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する断面図である。このテープカッター102は、環状テープ体7の内周面の部位51に対向する制止部53が、テープ保持体9の外周面に設けられている点において、図6等に例示したテープカッター101とは異なっている。制止部53は、例えば、制止部35と同様に合成ゴム等の摩擦部材である。図示例では、制止部53は板状であり、テープ保持体9の外周面に固着されている。板状の制止部53は、一例として、押圧片27の制止部35と同様に、円筒状のテープ保持体9の軸方向に延びている。粘着テープ5を引き出さないときには、環状テープ体7の内周面のうちの部位49が制止部35により押圧されるのに加え、制止部53によって部位51が押圧されることにより、環状テープ体7の回転が、より効果的に妨げられる。
【0038】
図10は、本発明のさらに別の実施の形態によるテープカッターの構成を例示する断面図である。テープカッター101,102において、テープ保持体9は筒状であったが、筒状以外の形態を採ることも可能である。図10に例示するテープカッター103は、その一例として、筒状のテープ保持体9に代えて、棒状のテープ保持体55を有している。テープ保持体55は、一例として、本体部1の側部壁体11に立設された棒状の支持体57と、支持体57に回転自在に支持された筒状の転動体59とを有している。テープ保持体55は、テープカッター101等のテープ保持体9と同様に、環状テープ体7を粘着テープ5の引き出し方向に遊びを持って保持するように配置される。図示例では、6本のテープ保持体55が、略円周に沿うように配置されている。押圧片27は、その基端部31が、側部壁体11に立設された柱状体61に固着されている。このように構成されたテープカッター103においても、押圧片27は、テープカッター101,102の押圧片27と同様に機能する。
【0039】
図11は、本願発明者が作成したテープカッター101の試作品の写真である。本体部1は、図3に例示したように、左右の側部壁体11、頭部壁体12、テープ保持体9の左側分割片15、テープ保持体9の右側分割片17、案内部材23,25を含めて、合成樹脂の一体成型により作成した。押圧片27には、図4(e)に例示する形態を用いた。粘着テープ5の幅は約5cmである。試作品により、粘着テープ5を引き出さないときには、押圧片27の摩擦力により粘着テープ5の巻き戻しが妨げられ、粘着テープ5を引き出すときには、格別の抵抗力を受けることなく、粘着テープ5を引き出すことができることが実証された。
【符号の説明】
【0040】
1 本体部、 3 テープ切断刃、 5 粘着テープ、 7 環状テープ体、 9 テープ保持体(筒状体)、 11 側部壁体、 12 頭部壁体、 13 溝、 15 左側分割片、 17 右側分割片、 19,21 薄肉部、 23,25 テープ案内部材、 27 押圧片、 29 突起、 30 金属片、 31 基端部、 33 先端部、 35 制止部、 37 滑動部、 39 切り起こし部、 41 凹陥部、 43 支柱、 45 壁体、 47 貫通孔、 49 部位、 51 部位、 53 制止部、 55 テープ保持体、 57 支持体、 59 転動体、 61 柱状体 101,102,103、 テープカッター。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11