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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119477
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】送液デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
A61B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022402
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】宮久 優子
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM43
4C160NN04
(57)【要約】
【課題】留置した管腔臓器内への体液の流入速度を調整できる送液デバイスを提供する。
【解決手段】管腔臓器2を連通し、一方側から管腔臓器2内に留置される他方側に体液を流す送液デバイス1は、一方側に体液の流入部を有する筒状の本体部10と、本体部10の他方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第1の弁部13と、第1の弁部13よりも本体部10内の一方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第2の弁部14と、第2の弁部14よりも本体部10内の一方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第3の弁部15と、を備える。第1の弁部13と第2の弁部14の間に形成される第1貯留部17の容積は、第2の弁部14と第3の弁部15の間に形成される第2貯留部18の容積よりも小さい。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔臓器を連通し、一方側から前記管腔臓器内に留置される他方側に体液を流す送液デバイスであって、
一方側に前記体液の流入部を有する筒状の本体部と、
前記本体部の他方側に設けられ、一方側の前記体液の圧力で開口する第1の弁部と、
前記第1の弁部よりも前記本体部内の一方側に設けられ、一方側の前記体液の圧力で開口する第2の弁部と、
前記第2の弁部よりも前記本体部内の一方側に設けられ、一方側の前記体液の圧力で開口する第3の弁部と、を備え、
前記第1の弁部と前記第2の弁部の間に形成される第1貯留部の容積は、前記第2の弁部と前記第3の弁部の間に形成される第2貯留部の容積よりも小さい
送液デバイス。
【請求項2】
前記本体部の外周に設けられ、前記本体部が貫通した前記管腔臓器の壁に係止される第1係止部と、
前記第1係止部よりも一方側の位置で前記本体部の外周に設けられ、前記第1係止部とで前記壁を挟みこんで前記本体部を軸方向に位置決めする第2係止部と、をさらに備え、
前記第2の弁部は、前記第1係止部と前記第2係止部の間に配置されている
請求項1に記載の送液デバイス。
【請求項3】
前記第3の弁部は、前記第2係止部よりも一方側の位置に配置されている
請求項2に記載の送液デバイス。
【請求項4】
前記本体部は、前記第3の弁部よりも一方側の周壁に前記体液の流入を補助する流入補助部を有する
請求項3に記載の送液デバイス。
【請求項5】
一方側が腹腔内に留置され、他方側が腹腔臓器内に留置され、
前記腹腔内の体液を前記腹腔臓器に還流させる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送液デバイス。
【請求項6】
2つの管腔臓器を連通して留置され、一方側の第1の管腔臓器から他方側の第2の管腔臓器に前記体液を流す請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の送液デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食道、胃、十二指腸、大腸、膵臓、胆道、胆嚢等の腫瘍、周囲のリンパ節、血管等の検査や治療を、超音波内視鏡(EUS:Endoscopic Ultrasonography)を用いて経口的に行う手技が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、超音波内視鏡下で行われるドレナージ術に適用されるステントとして、逆流を防止して管腔臓器に体液を一方向に流すことができる構成が開示されている。特許文献1のステントは、管腔臓器の内壁を貫通して管腔臓器に留置される本体部と、本体部における体液の逆流を防止する弁部を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2021/044837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のステントは、ステントを介した体液の逆流を弁部で防止できる一方、留置した管腔臓器内への体液の流入速度を調整することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、留置した管腔臓器内への体液の流入速度を調整できる送液デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、管腔臓器を連通し、一方側から管腔臓器内に留置される他方側に体液を流す送液デバイスである。送液デバイスは、一方側に体液の流入部を有する筒状の本体部と、本体部の他方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第1の弁部と、第1の弁部よりも本体部内の一方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第2の弁部と、第2の弁部よりも本体部内の一方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第3の弁部と、を備える。第1の弁部と第2の弁部の間に形成される第1貯留部の容積は、第2の弁部と第3の弁部の間に形成される第2貯留部の容積よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、留置した管腔臓器内への体液の流入速度を調整できる送液デバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の送液デバイスの構成例を示す図である。
図2】送液デバイスの留置状態の一例を示す概略図である。
図3】留置状態における送液デバイスの他方側を部分的に示す図である。
図4】送液デバイスの他方側の弁部を示す図である。
図5】送液デバイスの本体部の横断面を示す図である。
図6】(a)は送液デバイスの留置状態の別例を示す概略図であり、(b)は留置状態の別例における送液デバイスの他方側を部分的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る送液デバイスの構成例について説明する。本実施形態では、送液デバイスの一例として、腹腔内に貯留された体液を腹腔臓器に還流する送液デバイスについて説明する。
【0011】
ここで、図面における各部の形状、寸法等は模式的に示したもので、実際の形状や寸法等を示すものではない。図面において、送液デバイスの軸方向Axを必要に応じて矢印で示す。また、軸方向Axと略直交する方向を径方向と定義する。なお、必要に応じて、図面において送液デバイスの一方側を符号Bで示し、他方側を符号Fで示す。
【0012】
図1は送液デバイス1の構成例を示す図である。図2は送液デバイス1の留置状態の一例を示す概略図である。図3は、留置状態における送液デバイスの他方側を部分的に示す図である。図4は、送液デバイスの他方側の弁部を示す図である。図5は、送液デバイス1の本体部10の横断面(軸方向と直交する平面での断面)を示す図である。
【0013】
送液デバイス1は、全体形状が筒状のデバイスである。送液デバイス1は、腹腔に過剰に貯留され、白血球やタンパク質等の有用な成分を含む腹水(体液)を腹腔臓器2(例えば、胃)に還流させるために使用される。図2図3に示すように、送液デバイス1は、腹腔臓器2の壁2aに形成された開口2bに挿入されて留置される。送液デバイス1の一方側は、体液の流れ方向の上流側であり、腹腔3内に配設される。送液デバイス1の他方側は、体液の流れ方向の下流側であり、腹腔臓器2内に配設される。
腹腔臓器2としては、例えば、胃、十二指腸、小腸、大腸などの消化器、消化管が挙げられるが、一例であってこれに限られるものではない。
【0014】
図1に示すように、送液デバイス1は、軸方向Axの一方側と他方側が連通する筒状の本体部10と、本体部10の外周に形成された第1係止部20および第2係止部30を備える。図2図3の留置状態において、本体部10の内部空間は、一方側から他方側に向けて体液が通過可能な流路を形成する。なお、本体部10の軸方向Axおよび径方向の寸法は、患者の体に必要以上の負荷をかけずに、腹腔3内に貯留された体液を腹腔臓器2内に導くことができる範囲で適宜決定される。
【0015】
本体部10は、筒状の骨格部11と、骨格部11に固定された被膜部12とを有している。また、本体部10には、軸方向Axの他方側に第1の弁部13が設けられ、軸方向Axの一方側の端部が開口している。本体部10の一方側の側壁部には、本体部10への体液の流入を補助するために、被膜部12を内外に貫通する複数の流入補助孔16aが設けられている。これにより、本体部10には、一方側の開口16(流入部)と流入補助孔16aから体液が流入する。流入補助孔16aを設けた場合、患者の寝返り等によって開口16が閉塞した場合でも本体部10への体液の流入が可能となる。なお、流入補助孔16aは本体部10に必ずしも設けられていなくてもよい。
【0016】
本実施形態での骨格部11は、第1の弁部13の先端部分(後述する平坦部13b)を除く本体部10に配設されている。
骨格部11は、拡張状態の形状が記憶されたいわゆる自己拡張型の構成であって、径方向内側に収縮した収縮状態から径方向外側に拡張する拡張状態へと拡縮可能である。送液デバイス1は、図示は省略するが、径方向内側に収縮された状態(不図示)でシースに収納され、超音波内視鏡(EUS:Endoscopic Ultrasonography)を介して患者の体内に導入される。
【0017】
骨格部11は、一例として、金属素線からなる線材をフェンス状に編み込んで構成されている。骨格部11の線材の材料としては、例えば、Ni-Ti合金、ステンレス鋼、チタン合金などに代表される公知の金属又は金属合金等が挙げられる。なお、骨格部11は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されていてもよい。
【0018】
また、骨格部11の線材にはX線造影性を有する合金材料を用いてもよく、あるいはX線造影性を有する合金材料で形成されたマーカ片(不図示)を線材に適宜取り付けてもよい。これらの場合、送液デバイス1の位置を体外から確認できるようになる。
【0019】
骨格部11を構成する材料としてNi-Ti合金を用いる場合、骨格部11を拡張状態の形状に整えた後、所定の熱処理を施すことにより、拡張状態の形状を骨格部11に記憶させることができる。
【0020】
なお、骨格部11の構成は、上記に限定されるものではない。例えば、金属素線を他の編み方で格子状または螺旋状に編み込んで骨格部11を形成してもよい。あるいは、上記の各種金属からなる薄肉円筒体をレーザーカットし、金属細線がジグザグに折り返されながら螺旋状に巻回されるパターン等の骨格部11を形成してもよい。
【0021】
被膜部12は、上述の流路を形成する筒状の可撓性の膜体であって、骨格部11の隙間部分を閉塞するように骨格部11に取り付けられている。本実施形態では、図5に示すように、被膜部12は、骨格部11の外周側に取り付けられている。骨格部11に対する被膜部12の固定方法は、例えば、ディッピングによる被膜の形成、糸による縫着、接着、溶着、テープ等による貼着等のいずれでもよい。
【0022】
被膜部12は、腹腔臓器2内で腹腔臓器の消化液(例えば胃液)にさらされる環境下で使用されるため、耐酸性および生体適合性を有する材料で形成される。被膜部12の材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン樹脂などが挙げられる。超高分子量ポリエチレンは、分子量が100~700万のポリエチレンである。
なお、留置される腹腔臓器2の種類や状態によってpH値が高い場合や、留置期間が比較的短い場合等には、被膜部12は必ずしも耐酸性を有していなくてもよい。
【0023】
送液デバイス1では、本体部10が被膜部12の膜体によって連続的に覆われている。これにより、留置時に腹腔臓器2の壁2aの開口2bに臨み、腹腔臓器2の壁2aを通過する部位(例えば、第1係止部20と第2係止部30の間の領域)と、その下流側で腹腔臓器2内に配設される部位(第1係止部20から第1の弁部13までの領域)は、いずれも耐酸性および生体適合性を有する膜体で流路が一体に構成される。
【0024】
なお、被膜部12は、送液デバイス1の部位ごとに膜体の物性を異ならせてもよい。例えば、腹腔臓器2の壁2aを通過する部位とその下流側の部位(腹腔臓器2内に配設される部位)には、耐酸性を有する膜体を配設し、これら以外の部位には耐酸性を有しない膜体を配設してもよい。
【0025】
第1の弁部13は逆流防止弁であって、一方側から他方側に体液を流すとともに、他方側からの体液の逆流を防止する機能を担う。第1の弁部13は、全体として一方側の流路断面積よりも他方側の流路断面積が小さい先細り形状に形成されている。第1の弁部13は、一方側から他方側に向けて順にテーパー部13aと、弾性変形可能な平坦部13bとを有する。また、平坦部13bの他方側には流出口13cが形成されている。
【0026】
テーパー部13aは、軸方向Axに直交する第1方向D1の寸法がほぼ一定であり、軸方向Axおよび第1方向D1に対して略直交する第2方向D2の寸法が一方側から他方側に向かうにつれて狭くなる形状に形成されている。つまり、テーパー部13aでは、一方側から他方側に向けて流路断面積が徐々に小さくなる。なお、第1方向D1、第2方向D2は図4に示す。
【0027】
また、第1の弁部13のテーパー部13aには、流出口13cに向けて延びる一対の延出部11a,11aが配置されている。一対の延出部11a,11aは、骨格部11を構成する金属素線の一部からなり、本体部10の管軸を挟んで向かい合うように配置され、本体部10の径方向に対向する2つの山部の高さが、他の山部の高さよりも高くなっている。
【0028】
また、平坦部13bは、第1方向D1及び第2方向D2の寸法が軸方向Axに沿って保持され、第2方向D2では膜体がほぼ密着する扁平状に形成された開閉部位である。また、平坦部13bの他方側には、腹腔臓器2内に体液を流出させる流出口13cが形成されている。なお、平坦部13bの第1方向D1の寸法は、例えば、軸方向Axに沿って変化してもよい。
【0029】
平坦部13bは、第1の弁部13の一方側で体液の内圧が所定未満のときには、第1方向D1に直線状に延びるとともに、第2方向D2において膜体が密着する。これにより、第1の弁部13の一方側での体液の内圧が所定未満のときの平坦部13bは、流出口13cが閉塞された状態に維持され、体液を流しにくくなる。
【0030】
一方、平坦部13bは、一方側から第1の弁部13に流入する体液の内圧が所定以上になると、膜体が体液の内圧で押し広げられて第2方向D2に離間する。これにより、第1の弁部13の一方側での体液の内圧が所定以上のときの平坦部13bは、流出口13cが開口した状態となり、他方側に体液を流す。
【0031】
以上のように、第1の弁部13は、流出口13cが開口した状態で当該流出口13cから腹腔臓器2内への体液の排出を許容する一方で、流出口13cが閉塞された状態で当該流出口13cを介して消化液を含む体液が腹腔臓器2から送液デバイス1に逆流することを抑制する。なお、流出口13cは、体液を排出するときに例えば楕円形状や矩形状に開口するが、流出口13cの開口形状は体液が通過可能な形状であれば特に限定されるものではない。
【0032】
第1の弁部13は、生体適合性を有するとともに、弾性変形可能な薄膜材料で形成される。第1の弁部13の材料としては、例えば、シリコン樹脂や、PTFE等のフッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン樹脂などが挙げられる。
【0033】
第1の弁部13をシリコン樹脂で形成する場合、ディッピングにより本体部10の他方側に第1の弁部13を形成できる。また、第1の弁部13は、被膜部12の膜体によって本体部10と一体に形成されてもよい。
【0034】
第1係止部20は、本体部10の外周に環状に設けられ、第1の弁部13から一方側に軸方向に間隔を空けて配置されている。第1係止部20は、留置時に腹腔臓器2の内側に配置され、送液デバイス1に対して一方側へ変位させる外力が作用したときに、腹腔臓器2の壁2aの内面に引っかかることで送液デバイス1を腹腔臓器2から抜け止めして腹腔3への逸脱を抑制する機能を担う。
【0035】
第1係止部20は、骨格部21を有し、他方側から一方側に向かうにつれて金属骨格が外周側に広がって突出する形状をなしている。骨格部21は、例えば、本体部10の骨格部11とは別体で形成され、縫着やかしめ等によって本体部10に取り付けられる。また、骨格部21には、骨格部21の隙間部分を閉塞するように薄膜のカバー22が取り付けられている。
【0036】
第2係止部30は、第1係止部20と同様に本体部10の外周に環状に設けられ、第1係止部20から一方側に軸方向に間隔を空けて配置されている。第1係止部20と第2係止部30の間隔は、第1係止部20と第2係止部30の間に腹腔臓器2の壁2aが入り込める寸法となっている。
【0037】
第2係止部30は、留置時に腹腔臓器2の外側に配置され、第1係止部20とともに腹腔臓器2の壁2aを挟み込んで送液デバイス1の軸方向Axの位置ずれ(マイグレーション)を抑制する機能を担う。また、第2係止部30は、送液デバイス1に対して他方側へ変位させる外力が作用したときに、腹腔臓器2の壁2aの外面に引っかかることで送液デバイス1の腹腔臓器2内への逸脱を抑制する機能も担う。
【0038】
第2係止部30は、骨格部31と、骨格部31の隙間部分を閉塞する薄膜のカバー32とを有する。第2係止部30は、第1係止部20と同様に他方側から一方側に向かうにつれて金属骨格が外周側に広がって突出する形状をなしている。
なお、第1係止部20と第2係止部30の骨格部21,31の形状やカバー22,32の有無は適宜変更することができる。
【0039】
また、本体部10の内側には、第2の弁部14、第3の弁部15がそれぞれ設けられている。第2の弁部14、第3の弁部15は、いずれも第1の弁部13と同様の構成の逆流防止弁であって、一方側から他方側に体液を流すとともに、他方側からの体液の逆流を防止する機能を担う。そのため、第2の弁部14、第3の弁部15に関し、第1の弁部13と重複する説明はいずれも省略する。
【0040】
第2の弁部14、第3の弁部15は、骨格部11とは独立してディッピングや溶着などにより製造され、接着や溶着等によって本体部10の内周に取り付けられる。第2の弁部14、第3の弁部15の材料としては、例えば、シリコン樹脂や、PTFE等のフッ素樹脂、超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン樹脂などが挙げられる。なお、第2の弁部14、第3の弁部15の材料や寸法などの仕様は、第1の弁部13と同様であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。
【0041】
第2の弁部14は、本体部10の内側において、第1の弁部13および第1係止部20よりも軸方向Axの一方側で、第2係止部30よりも軸方向Axの他方側の位置に設けられている。第2の弁部14の一方側の端部は、本体部10の内周面と液密に固定され、第2の弁部14のテーパー部14a、平坦部14bは他方側に向けて配置されている。
【0042】
第2の弁部14は、第1係止部20と第2係止部30の間に配置されている。これにより、本体部10において腹腔臓器2の壁2aに挟まれる部位が第2の弁部14で補強され、腹腔臓器2の壁2aが本体部10を内側に押す力に対する反力が大きくなる。そのため、本体部10で腹腔臓器2の壁2aをより確実に拡張させることができる。
【0043】
また、本体部10において、第1の弁部13と第2の弁部14の間には、第2の弁部14を通過した体液を貯留する第1貯留部17が形成される。第2の弁部14は、一方側での体液の内圧が所定以上になると、平坦部14bの流出口14cが開口した状態となり、他方側の第1貯留部17に体液を流す。
【0044】
第1貯留部17の体液は、第1の弁部13を内側から押圧するだけではなく、第2の弁部14のテーパー部14aと平坦部14bを外側から押圧する。第2の弁部14が開口した状態で第1貯留部17の内圧が高くなると、第1貯留部17の体液による外側からの押圧と第2の弁部14の復元力で第2の弁部14には閉方向の力が作用する。これにより、第1貯留部17の内圧が高くなると第2の弁部14の開口量が小さくなり、第1貯留部17の内圧が低い場合と比べて、第2の弁部14を通過する体液の量が少なくなる。
【0045】
第3の弁部15は、本体部10の内側において、第2の弁部14および第2係止部30よりも軸方向Axの一方側で、開口16および流入補助孔16aよりも軸方向Axの他方側の位置に設けられている。
【0046】
第3の弁部15の一方側の端部は、本体部10の内周面と液密に固定され、第3の弁部15のテーパー部15a、平坦部15bは他方側に向けて配置されている。第3の弁部15の一方側の端部が本体部10の内周面を覆うことで、流入補助孔16aの形成された周壁部との境界が補強される。これにより、本体部10において、被膜部12の面積が少なく相対的に強度の低い部位を第3の弁部15で補強できる。
【0047】
また、本体部10において、第2の弁部14と第3の弁部15の間には、第3の弁部15を通過した体液を貯留する第2貯留部18が形成される。第3の弁部15は、一方側での体液の内圧が所定以上になると、平坦部15bの流出口15cが開口した状態となり、他方側の第2貯留部18に体液を流す。
【0048】
第2貯留部18の体液は、第2の弁部14を内側から押圧するだけではなく、第3の弁部15のテーパー部15aと平坦部15bを外側から押圧する。第3の弁部15が開口した状態で第2貯留部18の内圧が高くなると、第2貯留部18の体液による外側からの押圧と第3の弁部15の復元力で第3の弁部15には閉方向の力が作用する。これにより、第2貯留部18の内圧が高くなると第3の弁部15の開口量が小さくなり、第2貯留部18の内圧が低い場合と比べて、第3の弁部15を通過する体液の量が少なくなる。
【0049】
ここで、第1貯留部17の容積は、第2貯留部18の容積よりも小さい。例えば、第1貯留部17の容積は、第2貯留部18の容積の1/2程度に設定されるが、これに限定されるものではない。
【0050】
第1貯留部17の容積は第2貯留部18の容積よりも小さいので、第1貯留部17は第2貯留部18と比べて少量の体液で内圧が高くなる。そのため、第1貯留部17に過剰な体液が流れ込むと、第1貯留部17の体液による外側からの押圧で第2の弁部14が閉じる。第2の弁部14の閉じた状態は、第1貯留部17の体液が第1の弁部13から排出され、第1貯留部17の内圧が第2貯留部18の内圧より低くなるまで継続する。
【0051】
一方で、第2貯留部18の容積は第1貯留部17の容積よりも大きいので、第2貯留部18の内圧が所定値になるまでの所要時間は、第1貯留部17の内圧が所定値になるまでの所要時間と比べて長くなる。したがって、第2の弁部14が閉じてから第2の弁部14が開くまでに一定の時間がかかるため、第2の弁部14が間欠的に開閉するようになる。
以上のようにして、第1貯留部17と第2貯留部18の内圧の変化で第2の弁部14が開閉し、送液デバイス1は他方側の腹腔臓器2への体液の流入速度を調整できる。
【0052】
なお、仮に第1の弁部13で逆流が生じた場合には、第1貯留部17は逆流物を一時的に貯留する。しかし、第1貯留部17の容積は相対的に小さいため、送液デバイス1に入り込む逆流物は少量となり、また第1貯留部17から他方側に再び排出することも容易となる。
【0053】
次に、送液デバイス1を腹腔臓器2に留置する手順を説明する。送液デバイス1を留置する手技は、例えば経内視鏡的に行われるが、一例であってこれに限られるものではない。
まず、送液デバイス1を挿入するために、例えば、超音波内視鏡を用いて切開や穿刺等により腹腔臓器2の壁2aに開口2bが形成される。腹腔臓器2の開口2bの大きさは、送液デバイス1の本体部10の寸法に応じて適宜調整される。
【0054】
そして、上記の開口2bに対して、径方向内側に収縮された送液デバイス1を筒状のシース内に収容したカテーテル(不図示)が挿通される。その後、軸方向Axにおいて送液デバイス1の第1係止部20と第2係止部30の間に腹腔臓器2の壁2aが位置する状態で、カテーテルのシースを引き抜くように移動させる。すると、シースから送液デバイス1が放出される。このとき、送液デバイス1の他方側は腹腔臓器2内に配設され、送液デバイス1の一方側は腹腔3内に配設される。
【0055】
送液デバイス1は、シースから放出されることで径方向外側に自己拡張する。これにより、拡張した本体部10は腹腔臓器2の開口2bを押し広げるようにして壁2aに密着し、腹腔臓器2と送液デバイス1の隙間は塞がれる。なお、送液デバイス1の内側に留置用のカテーテルとは異なる拡張用カテーテル(不図示)を挿通し、拡張用カテーテルの膨張によって送液デバイス1を径方向外側に拡張させてもよい。
【0056】
また、送液デバイス1の第1係止部20は腹腔臓器2の内側で開口よりも径方向に拡がるように拡張し、第2係止部30は腹腔臓器2の外側で開口よりも径方向に拡がるように拡張する。これにより、腹腔臓器2の壁2aは第1係止部20と第2係止部30で内外から挟みこまれた状態となる。そのため、例えば、腹腔臓器2のぜん動や患者の寝返りなどの姿勢変化による外力が送液デバイス1に作用しても、腹腔臓器2に対して送液デバイス1が軸方向Axに位置ずれしにくい。
【0057】
以上のようにして、他方側が腹腔臓器2内に配設され、一方側が腹腔3に配設された状態で送液デバイス1を患者の体内に留置できる。
体液で膨張した腹腔3の内圧よりも腹腔臓器2内の圧力が小さくなる場合、本体部10の一方側の開口16と流入補助孔16aから体液が本体部10内に流入する。本体部10に流入した体液は、第3の弁部15、第2貯留部18、第2の弁部14、第1貯留部17および第1の弁部13を順に通過して腹腔臓器2内に排出される。
【0058】
以下、本実施形態の送液デバイス1の効果を述べる。
送液デバイス1は、腹腔臓器2(管腔臓器)を連通し、一方側から腹腔臓器2内に留置される他方側に体液を流す。送液デバイス1は、開口16、流入補助孔16a(体液の流入部)を一方側に有する筒状の本体部10と、本体部10の他方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第1の弁部13と、第1の弁部13よりも本体部10内の一方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第2の弁部14と、第2の弁部14よりも本体部10内の一方側に設けられ、一方側の体液の圧力で開口する第3の弁部15と、を備える。
送液デバイス1は、腹腔3内に貯留される体液を腹腔臓器2内に流出させるので、腹腔3の体液は腹腔臓器2の消化作用で体内に吸収される過程を経て還流される。したがって、送液デバイス1によれば、腹腔3の体液を血管内に直接還流する場合と比べて心不全や血栓の形成などの重篤な合併症を発症するリスクを大幅に抑制できる。
また、第1の弁部13と第2の弁部14の間に形成される第1貯留部17の容積は、第2の弁部14と第3の弁部15の間に形成される第2貯留部18の容積よりも小さい。そのため、第1貯留部17と第2貯留部18の内圧の変化で第2の弁部14が開閉し、他方側の腹腔臓器2への体液の流入速度が調整される。したがって、送液デバイス1によれば、腹腔3の体液が過剰に腹腔臓器2内に流入することを抑制できる。
【0059】
また、送液デバイス1は、本体部10の外周に設けられ、本体部10が貫通した腹腔臓器2の壁2aに係止される第1係止部20と、第1係止部20よりも一方側の位置で本体部10の外周に設けられ、第1係止部20とで壁2aを挟みこんで本体部10を軸方向に位置決めする第2係止部30と、をさらに備える。第2の弁部14は、第1係止部20と第2係止部30の間に配置される。
これにより、本体部10において腹腔臓器2の壁2aに挟まれる部位が第2の弁部14で補強され、腹腔臓器2の壁2aが本体部10を内側に押す力に対する反力が大きくなるので、本体部10で腹腔臓器2の壁2aをより確実に拡張させることができる。
【0060】
また、第3の弁部15は、第2係止部30よりも一方側の位置に配置されている。そして、本体部は、第3の弁部15よりも一方側の周壁に体液の流入を補助する流入補助孔16a(流入補助部)を有する。これにより、開口16が閉塞した場合でも流入補助孔16aから本体部10への体液の流入を確保できる。また、流入補助孔16aによって相対的に強度の低い部位を、第3の弁部15で補強できる。
【0061】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0062】
上記実施形態では、腹腔内に貯留された体液を腹腔臓器に還流する送液デバイス1を説明した。しかし、本発明の送液デバイス1の用途は上記に限定されない。例えば、送液デバイス1は、2つの管腔臓器を連通して留置され、一方側の第1の管腔臓器から他方側の第2の管腔臓器に体液を流すものであってもよい。
【0063】
図6(a)は、送液デバイス1の留置状態の別例を示す概略図であり、図6(b)は留置状態の別例における送液デバイス1の他方側を部分的に示す図である。図6では、胆のうドレナージ術に適用される送液デバイス1の例を示している。
【0064】
図6に示すように、送液デバイス1は、一方側の胆のう4と他方側の十二指腸5を連通して留置され、胆のう4に貯留された胆汁を十二指腸5に流す。送液デバイス1の本体部10は胆のう4の壁4aと十二指腸5の壁5aをそれぞれ連通する。開口16および流入補助孔16aを有する本体部10の一方側と、第2係止部30が胆のう4内に配設される。また、第1の弁部13および第2の弁部14と、第1係止部20が十二指腸5内に配設される。そして、第1係止部20と第2係止部30によって胆のう4の壁4aと十二指腸5の壁5aが挟み込まれた状態で送液デバイス1が留置される。
図6の送液デバイス1によれば、胆のう4の胆汁を十二指腸5に直接流すことができるとともに、十二指腸5から胆のう4への体液の逆流を防ぐことができる。また、図6の送液デバイス1によれば、第1貯留部17と第2貯留部18の内圧の変化で第2の弁部14が開閉し、十二指腸5内への胆汁の流入速度を調整することもできる。
【0065】
また、上記実施形態では、被膜部12として、骨格部11の外周側に取り付けられているものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、例えば、骨格部11の内周側に被膜部12が取り付けられていてもよい。
【0066】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0067】
1…送液デバイス、2…腹腔臓器、2a…壁、2b…開口、3…腹腔、4…胆のう、4a…壁、5…十二指腸、5a…壁、10…本体部、11…骨格部、11a…延出部、12…被膜部、13…第1の弁部、13a…テーパー部、13b…平坦部、13c…流出口、14…第2の弁部、14a…テーパー部、14b…平坦部、14c…流出口、15…第3の弁部、15a…テーパー部、15b…平坦部、15c…流出口、16…開口(流入部)、16a…流入補助孔(流入補助部)、17…第1貯留部、18…第2貯留部、20…第1係止部、21…骨格部、22…カバー、30…第2係止部、31…骨格部、32…カバー

図1
図2
図3
図4
図5
図6