(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119480
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/38 20060101AFI20230821BHJP
G01N 21/61 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G01M3/38 J
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022408
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
【テーマコード(参考)】
2G059
2G067
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059DD12
2G059DD13
2G059DD20
2G059EE01
2G059GG01
2G059MM14
2G059PP01
2G067AA45
2G067BB30
2G067CC04
2G067DD11
2G067DD17
2G067EE03
2G067EE14
(57)【要約】
【課題】被検査容器の受入数を制限することなく、正確な校正を行うことができる検査装置を提供すること。
【解決手段】試料バイアル瓶10を搬送経路20に沿って搬送する搬送部と、搬送中の試料バイアル瓶10に対して校正用の標準容器11が相対的に移動する状態で保持されている保持部5と、搬送中の試料バイアル瓶10のヘッドスペース又は標準容器11に対し所定波長のレーザ光を出射する半導体レーザ31と、レーザ光を受光するレーザ受光部4と、試料バイアル瓶10のヘッドスペースを透過しレーザ受光部4で受光されるレーザ光の所定波長の吸収量に基づき、試料バイアル瓶10のヘッドスペースのガス濃度を測定するガス濃度測定部と、測定されたガス濃度に基づき試料バイアル瓶10における密閉性を判定する判定部と、を備え、レーザ光が搬送経路20と保持部5とを交差するように搬送経路20と保持部5とが隣接している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉された被検査容器(10)を搬送経路に沿って搬送する搬送部(2)と、
搬送中の前記被検査容器に対して校正用の標準容器(11)が相対的に移動可能な状態で保持されている保持部(5、21b、105)と、
搬送中の前記被検査容器内の空間部又は前記標準容器に対し所定波長のレーザ光を出射するレーザ発生部(3)と、
前記レーザ光を受光するレーザ受光部(4)と、
前記被検査容器内の前記空間部を透過し前記レーザ受光部で受光される前記レーザ光の前記所定波長の吸収量に基づき、前記被検査容器内の前記空間部のガス濃度を測定するガス濃度測定部(61)と、
前記ガス濃度測定部により測定された前記ガス濃度に基づき、前記被検査容器における密閉性を判定する判定部(62)と、を備え、
前記レーザ光が前記搬送経路と前記保持部とを交差するように、前記搬送経路と前記保持部とが隣接していることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記保持部には、前記標準容器が複数保持されており、
前記複数の標準容器のうちのいずれかを選択可能なように、前記レーザ光の光路と前記標準容器との相対的な位置を切り替える切替機構(50、150、250、300)を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記切替機構は、前記レーザ光の光路に対して交差する前記標準容器を切り替えるよう、前記保持部を往復動可能な機構からなることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記切替機構は、前記被検査容器及び前記複数の標準容器に対して前記レーザ光の光路の位置を選択的に切り替えるよう、前記レーザ発生部及び前記レーザ受光部が移動可能なユニットからなることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記切替機構は、
前記レーザ光が前記被検査容器を透過する第1の透過位置と、前記レーザ光が前記標準容器を透過する第2の透過位置と、の間で前記レーザ発生部及び前記レーザ受光部が往復動可能なレーザ移動ユニット(250)と、
前記第2の透過位置において前記レーザ光の光路に対して交差する前記標準容器を切り替えるよう、前記保持部を前記搬送経路に沿うように往復動可能な保持部移動機構(300)と、を有し、
前記レーザ発生部及び前記レーザ受光部と前記標準容器とは、同期して前記第2の透過位置から前記第1の透過位置に移動し、当該移動中に校正が行われることを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉容器における密閉の完全性を検査する方法として、密閉容器内のガスの成分を高感度かつ高速に検査するヘッドスペースガス・レーザ分析方法が知られている。従来、このヘッドスペースガス・レーザ分析方法を用いた検査装置として、非特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
非特許文献1に記載の検査装置には、4つの校正用の標準バイアル瓶が恒久的に備え付けられており、当該標準バイアル瓶は、試料が入った試料バイアル瓶の搬送経路と同一経路を周回移動するようになっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ライトハウス インスツルメンツ,エルエルシー, 「プロダクトノート パルサー ヘッドスペース インスペクション システム」, [online], [令和4年1月26日検索],インターネット <URL:https://www.lighthouseinstruments.com/wp-content/uploads/2021/02/PN_Pulsar.pdf> Lighthouse Instruments, LLC, 「PRODUCT NOTE PULSAR Headspace Inspection System」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載の検査装置にあっては、試料バイアル瓶が受け入れられる搬送経路に4つの標準バイアル瓶が受け入れられているため、それら標準バイアル瓶を受け入れる分だけ試料バイアル瓶を受け入れる数が減ってしまう。高精度に検査を行うために標準バイアル瓶を増やした場合には、さらに試料バイアル瓶を受け入れる数が減ってしまい、単位時間当たりの検査数が少なくなってしまう。
【0006】
また、非特許文献1に記載の検査装置においては、標準バイアル瓶が搬送経路の外周側の壁に対し摺動しながら搬送経路を絶えず周回移動するため、標準バイアル瓶に傷や汚れがつくおそれがある。標準バイアル瓶に傷や汚れがつくと、正確な校正を行うことができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、被検査容器の受入数を制限することなく、正確な校正を行うことができる検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る検査装置は、密閉された被検査容器を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、搬送中の前記被検査容器に対して校正用の標準容器が相対的に移動可能な状態で保持されている保持部と、搬送中の前記被検査容器内の空間部又は前記標準容器に対し所定波長のレーザ光を出射するレーザ発生部と、前記レーザ光を受光するレーザ受光部と、前記被検査容器内の前記空間部を透過し前記レーザ受光部で受光される前記レーザ光の前記所定波長の吸収量に基づき、前記被検査容器内の前記空間部のガス濃度を測定するガス濃度測定部と、前記ガス濃度測定部により測定された前記ガス濃度に基づき、前記被検査容器における密閉性を判定する判定部と、を備え、前記レーザ光が前記搬送経路と前記保持部とを交差するように、前記搬送経路と前記保持部とが隣接している構成を有する。
【0009】
この構成により、本発明に係る検査装置は、被検査容器の搬送経路とは別に搬送中の被検査容器に対して校正用の標準容器が相対的に移動可能な状態で保持部に保持され、レーザ光が搬送経路と保持部とを交差するように搬送経路と保持部とが隣接している。このため、被検査容器の搬送経路に校正用の標準容器を被検査容器と一緒に投入する必要がないので、搬送経路への被検査容器の受け入れが校正用の標準容器によって制限されるといったことを防止することができる。また、校正用の標準容器が常時稼働している搬送経路に乗っていないので、校正用の標準容器が例えば搬送経路を構成する部材等に接触して校正用の標準容器に傷や汚れがつくといったことを抑制することができる。したがって、本発明に係る検査装置は、被検査容器の受入数を制限することなく、正確な校正を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る検査装置において、前記保持部には、前記標準容器が複数保持されており、前記複数の標準容器のうちのいずれかを選択可能なように、前記レーザ光の光路と前記標準容器との相対的な位置を切り替える切替機構を、さらに備える。
【0011】
この構成により、本発明に係る検査装置は、保持部に保持された複数の標準容器のうちのいずれかを選択可能なように、レーザ光の光路と標準容器との相対的な位置を切り替える切替機構を備えるので、校正に用いる標準容器を容易に切り替えることができる。
【0012】
また、本発明に係る検査装置において、前記切替機構は、前記レーザ光の光路に対して交差する前記標準容器を切り替えるよう、前記保持部を往復動可能な機構からなる。
【0013】
この構成により、本発明に係る検査装置は、切替機構が、レーザ光の光路に対して交差する標準容器を切り替えるよう保持部を往復動可能な機構からなるので、レーザ光の光路を固定して簡易な構成で校正に用いる標準容器を切り替えることができる。
【0014】
また、本発明に係る検査装置において、前記切替機構は、前記被検査容器及び前記複数の標準容器に対して前記レーザ光の光路の位置を選択的に切り替えるよう、前記レーザ発生部及び前記レーザ受光部が移動可能なユニットからなる。
【0015】
この構成により、本発明に係る検査装置は、切替機構が、被検査容器及び複数の標準容器に対してレーザ光の光路の位置を選択的に切り替えるよう、レーザ発生部及びレーザ受光部が移動可能なユニットからなるので、レーザ光の光路の位置を選択的に切り替えることによって複数の標準容器を移動させることなく校正を行うことができる。また、複数の標準容器を移動させることなく、校正に用いる標準容器を切り替えることができる。
【0016】
また、本発明に係る検査装置において、前記切替機構は、前記レーザ光が前記被検査容器を透過する第1の透過位置と、前記レーザ光が前記標準容器を透過する第2の透過位置と、の間で前記レーザ発生部及び前記レーザ受光部が往復動可能なレーザ移動ユニットと、前記第2の透過位置において前記レーザ光の光路に対して交差する前記標準容器を切り替えるよう、前記保持部を前記搬送経路に沿うように往復動可能な保持部移動機構と、を有し、前記レーザ発生部及び前記レーザ受光部と前記標準容器とは、同期して前記第2の透過位置から前記第1の透過位置に移動し、当該移動中に校正が行われる構成を有する。
【0017】
この構成により、本発明に係る検査装置は、レーザ発生部及びレーザ受光部と標準容器とが同期して第2の透過位置から第1の透過位置に移動し、当該移動中に校正が行われるので、順次搬送される被検査容器の間の時間を使って校正を行うことができる。これにより、被検査容器の搬送速度を落とさなくとも効率的に校正を行うことができ、単位時間当たりの検査数を多くすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被検査容器の受入数を制限することなく、正確な校正を行うことができる検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る検査装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る検査装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る検査装置の平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る検査装置の要部の拡大平面図であって、(a)は試料バイアル瓶の検査時、(b)は標準バイアル瓶による校正時の様子を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る検査装置において、試料バイアル瓶と別に標準バイアル瓶が保持部に保持されている様子を示す平面図である。
【
図6】
図6は、比較例に係る検査装置において、試料バイアル瓶及び標準バイアル瓶が搬送ディスクに保持された様子を示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る検査装置の要部の拡大平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る検査装置の変形例を示す拡大平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る検査装置の概略構成図である。
【
図10】
図10は、本発明の第3の実施形態に係る検査装置の要部の拡大平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る検査装置の変形例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1から
図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る検査装置について説明する。
【0022】
図1から
図3に示すように、本実施形態の検査装置1は、密閉された試料バイアル瓶10を被検査容器として、当該試料バイアル瓶10の密閉性を検査する検査装置である。被検査容器としては、高い密閉性が要求される容器であればバイアル瓶に限られない。
【0023】
本実施形態の検査装置1は、試料バイアル瓶10の密閉性を検査する方法として、試料バイアル瓶10内の空間部、つまり試料バイアル瓶10に封入された物質(液体、固体又は粉体等)以外の空間であるヘッドスペース10aに所定波長のレーザ光を透過させて、濃度を検出する対象のガスに吸収された透過後のレーザ光に基づきヘッドスペース10aにおけるガス濃度を測定し、測定したガス濃度に基づき試料バイアル瓶10の密閉性を検査する、ヘッドスペースガス・レーザ分析方法を用いている。本実施形態において、ヘッドスペース10aにおける濃度を測定するガスとしては、酸素を対象としている。
【0024】
検査装置1は、複数の試料バイアル瓶10を後述する搬送経路20に沿って連続的に搬送する搬送部2と、レーザ光を出射するレーザ発生部3と、レーザ光を受光するレーザ受光部4と、校正用の標準容器11を保持する保持部5と、レーザ発生部3及びレーザ受光部4に接続された制御部6と、を含んで構成されている。
【0025】
[搬送部]
搬送部2は、搬送台21と、搬送台21上で回転する円盤状の搬送ディスク22と、を備えている。搬送ディスク22は、
図1中、時計回り方向に回転するよう構成されており、外周に径方向内側に向かって半円状に切り欠かれた切欠部22aが所定間隔を空けて複数形成されている。切欠部22aには、試料バイアル瓶10が保持されるようになっている。
【0026】
搬送台21の上面には、保持部5に保持された校正用の標準容器11が後述する搬送経路20に沿って往復動可能なガイド溝21aが形成されている。ガイド溝21aは、後述する搬送経路20と平行に形成されている。これにより、ガイド溝21a内を往復動する標準容器11の軌道と搬送経路20とは平行曲線となる。なお、ガイド溝21aは、搬送台21の上面に標準容器11を往復動させるスペースが十分に確保される場合には、搬送経路20と平行でなくてもよい。
【0027】
搬送部2には、前工程から搬送部2に試料バイアル瓶10を順次供給する供給部25が接続されている。搬送部2は、供給部25から供給された試料バイアル瓶10を切欠部22aに受け入れ、受け入れた試料バイアル瓶10を切欠部22aに保持した状態で回転することにより搬送経路20に沿ってガス濃度検出領域26に搬送する。搬送経路20は、試料バイアル瓶10が搬送される経路であり、
図3中、二点鎖線で示している。
【0028】
ガス濃度検出領域26では、試料バイアル瓶10のヘッドスペース10aにおけるガス濃度を検出するためのレーザ光が照射される。また、ガス濃度検出領域26では、校正用の標準容器11に対してもレーザ光が照射されるようになっている。校正用の標準容器11には、酸素用の校正用標準物質が充填されている。
【0029】
搬送部2は、ガス濃度検出領域26を通過した試料バイアル瓶10を水分検査領域27に搬送し、水分検査領域27を通過した試料バイアル瓶10を排出領域28に搬送する。水分検査領域27には、水分検査用のレーザ発生部及びレーザ受光部を有する水分検査部15が設けられている。水分検査領域27では、試料バイアル瓶10内の水分を検出するためのレーザ光が照射される。
【0030】
搬送部2の排出領域28には、試料バイアル瓶10が排出される排出部70が接続されている。排出部70は、水分NG排出路71と、密閉性NG排出路72と、OK排出路73と、を有している。
【0031】
水分NG排出路71は、水分検査の判定結果に基づき、水分量が適正でない試料バイアル瓶10が排出される排出路である。密閉性NG排出路72は、密閉性の判定結果に基づき、密閉性が不十分である試料バイアル瓶10が排出される排出路である。OK排出路73は、水分量も適正で、かつ密閉性も確保されている試料バイアル瓶10が排出される排出路である。
【0032】
ここで、本実施形態において、供給部25から搬送部2に供給される試料バイアル瓶10は、ヘッドスペース10aがガス置換されて封止された状態である。すなわち、搬送部2に供給される試料バイアル瓶10は、ヘッドスペース10a内のガスが不活性ガスにガス置換されて封止されている。本実施形態では、ガス置換する不活性ガスとして、窒素ガスを用いた。
【0033】
[レーザ発生部]
レーザ発生部3は、所定波長のレーザ光を出射する半導体レーザ(LD:Laser Diode)31と、半導体レーザ31から出射するレーザ光の波長を所定波長に設定し、所定の光強度に調整するLDコントローラ32と、を備えている。
【0034】
半導体レーザ31は、搬送部2によって搬送される試料バイアル瓶10が周回する搬送経路20の外側、すなわち搬送ディスク22の径方向外方側に設けられたLDヘッド36に保持されている。半導体レーザ31は、搬送部2によって搬送される試料バイアル瓶10のヘッドスペース10a又は校正用の標準容器11に対し所定波長のレーザ光を出射するようになっている。半導体レーザ31から出射されたレーザ光は、コリメータレンズ30を介して試料バイアル瓶10のヘッドスペース10a又は校正用の標準容器11を透過し、集光レンズ40を介してレーザ受光部4にて受光される。
【0035】
ここで、本実施形態において、ヘッドスペースガス・レーザ分析方法を用いる際に、ヘッドスペース10aにおける濃度を測定するガスは、上述の通り酸素である。酸素固有の吸収波長帯は760nm帯である。したがって、本実施形態では、半導体レーザ31から出射するレーザ光の所定波長として、LDコントローラ32によって吸収波長帯760nmを含む近傍の波長が設定されるようになっている。
【0036】
LDコントローラ32には、加算器33を経由して、駆動電流、ランプ波発生器34により生成されたランプ波、及び、変調信号発生器35により生成された変調信号がそれぞれ印加される。つまり、本実施形態においては、高感度で安定した計測のために、半導体レーザ31の駆動電流に周波数変調した信号を重畳し検波するFMS(Frequency Modulation Spectroscopy)方式が用いられている。
【0037】
[レーザ受光部]
レーザ受光部4は、半導体レーザ31から出射されたレーザ光を受光し、その受光したレーザ光の受光強度に応じた測定信号を出力するフォトダイオード(PD:Photo Diode)によって構成されている。
【0038】
レーザ受光部4は、試料バイアル瓶10が周回する搬送経路20を挟んでLDヘッド36と反対側に配置されたPDヘッド41に保持されている。
【0039】
レーザ受光部4で受光されるレーザ光は、ヘッドスペース10a又は標準容器11を透過する際にヘッドスペース10a又は標準容器11に酸素がある場合にはその酸素に含まれる成分による吸収の影響を受ける。
【0040】
レーザ受光部4から出力された測定信号は、PD増幅器42によって増幅された後、バンドパスフィルタ43によって一定周波数帯域の信号のみが通過されて、ロックインアンプ44に入力される。
【0041】
ロックインアンプ44には、変調信号発生器35により生成された変調信号が参照信号として入力されるようになっている。これにより、ロックインアンプ44では、変調信号発生器35により生成された変調信号と同期する測定信号が抽出される。
【0042】
ロックインアンプ44を通過した測定信号は、A/Dコンバータ60によってデジタル信号に変換されて、制御部6に入力される。
【0043】
[保持部]
保持部5には、校正用の標準容器11が複数(本実施形態では3つ)、保持されている。各標準容器11には、それぞれ異なる酸素濃度の校正用標準物質が充填されている。保持部5に保持される標準容器11は、複数に限らず1つであってもよく、検査の精度等によって任意の数に設定される。
【0044】
保持部5は、搬送台21の上面に形成されたガイド溝21aの下方において搬送台21の内部に設けられており、例えばプレート状の部材によって構成されている。
【0045】
保持部5は、試料バイアル瓶10の搬送経路20よりも径方向外側に設けられており、かつ、レーザ光の光路L(
図4参照)と交差する位置に設けられている。つまり、本実施形態では、半導体レーザ31から出射されたレーザ光が搬送経路20と保持部5とを交差するように、搬送経路20と保持部5とが径方向に隣接している。
【0046】
保持部5には、各標準容器11を保持するための図示しない固定部が設けられており、当該固定部を介して各標準容器11が保持されている。
【0047】
保持部5は、切替機構50(
図2参照)によって、複数の標準容器11のうちのいずれかを選択可能なように、レーザ光の光路Lと各標準容器11との相対的な位置が切り替えられるようになっている。
【0048】
具体的には、切替機構50は、複数の標準容器11のうち、レーザ光の光路Lに対して交差する標準容器11を切り替えるよう、保持部5を搬送経路20に沿って往復動可能な機構からなる。切替機構50としては、例えば、ステッピングモータとラックアンドピニオン機構とを組み合わせたユニット等を用いることができる。
【0049】
このように、本実施形態では、校正用の標準容器11が試料バイアル瓶10の搬送経路20とは異なる領域で、レーザ光の光路Lに対して交差する位置と退避する位置との間で往復動する。したがって、本実施形態において、保持部5には、搬送経路20を搬送中の試料バイアル瓶10に対して校正用の標準容器11が相対的に移動する状態で保持されていることとなる。
【0050】
[制御部]
制御部6は、少なくとも、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0051】
制御部6は、試料バイアル瓶10のヘッドスペース10aを透過しレーザ受光部4で受光されるレーザ光の所定波長の吸収量に基づき、ヘッドスペース10aのガス濃度としての酸素濃度を測定するガス濃度測定部61としての機能を有する。
【0052】
具体的には、制御部6は、半導体レーザ31の駆動電流を変化させることで所定波長を掃引して得られる吸収波形を観察することにより、ヘッドスペース10aの酸素濃度と圧力とを高速で検査するようになっている。ここで、吸収波形の最大値と最小値との差分である振幅が酸素濃度に比例し、吸収波形の最大値と最小値との波長掃引時間の時間幅が圧力に比例する。
【0053】
制御部6は、試料バイアル瓶10ごとに、ガス濃度測定部61により測定された酸素濃度に基づき、試料バイアル瓶10の密閉性を判定する判定部62としての機能を有する。例えば、制御部6は、ガス濃度測定部61により測定された酸素濃度が所定の閾値以上である場合に、試料バイアル瓶10における密閉性が不十分である、すなわち試料バイアル瓶10に漏れがあると判定することができる。
【0054】
所定の閾値は、少なくとも、試料バイアル瓶10に漏れが生じるような欠陥がなくても透過により試料バイアル瓶10内に混入する酸素による影響を許容する値よりも大きな値であることが望ましい。
【0055】
制御部6には、上述した切替機構50が接続されている。制御部6は、所定のタイミングで保持部5を往復動させて、校正用の標準容器11を、レーザ光の光路Lに対して交差する位置と退避する位置との間で往復動させるよう切替機構50を制御する駆動制御部63としての機能を有する。
【0056】
具体的には、制御部6は、試料バイアル瓶10の密閉性の検査を行う場合、すなわち試料バイアル瓶10にレーザ光を照射する場合には、複数の標準容器11の全てがレーザ光の光路Lから退避した位置(
図4(a)に示す位置)となるよう、切替機構50を制御して試料バイアル瓶10の搬送方向と反対方向(
図4(a)中、反時計回り方向)に保持部5を移動させる。
【0057】
これに対し、制御部6は、標準容器11を用いて校正を行う場合には、複数の標準容器11のうち、対象の標準容器11がレーザ光の光路Lと交差する位置(
図4(b)に示す位置)となるよう、切替機構50を制御して試料バイアル瓶10の搬送方向と同方向(
図4(b)中、時計回り方向)に保持部5を移動させる。
【0058】
ここで、制御部6は、標準容器11を用いて校正を行う場合には、レーザ光の光路Lと搬送中の試料バイアル瓶10とが交差していないタイミング、すなわち先の試料バイアル瓶10と次の試料バイアル瓶10との間のタイミングで、校正用の標準容器11をレーザ光の光路Lに対して交差する位置に移動させるよう切替機構50を制御する。
【0059】
校正を行うにあたっては、複数の標準容器11のうちいずれの標準容器11を用いるかによって、試料バイアル瓶10の搬送方向と同方向への保持部5の移動量が異なる。制御部6は、各標準容器11に応じた移動量に基づき保持部5を移動させるよう切替機構50を制御する。
【0060】
制御部6は、校正が終わると、次の試料バイアル瓶10がレーザ光の光路Lと交差する位置に搬送される前に、複数の標準容器11の全てがレーザ光の光路Lから退避した位置(
図4(a)に示す位置)に戻るよう切替機構50を制御する。
【0061】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係る検査装置は、試料バイアル瓶10の搬送経路20とは別に搬送中の試料バイアル瓶10に対して校正用の標準容器11が相対的に移動可能な状態で保持部5に保持され、レーザ光が搬送経路20と保持部5とを交差するように搬送経路20と保持部5とが隣接している。
【0062】
このため、試料バイアル瓶10の搬送経路20に校正用の標準容器11を試料バイアル瓶10と一緒に投入する必要がないので、搬送経路20への試料バイアル瓶10の受け入れが校正用の標準容器11によって制限されるといったことを防止することができる。
【0063】
つまり、
図5に示すように、試料バイアル瓶の搬送経路に標準容器を受け入れ、試料バイアル瓶と標準容器とを同一経路で搬送する形態の比較例に係る検査装置にあっては、検査の精度を高めるべく校正用の標準容器を増やすと、試料バイアル瓶の受入数が制限されてしまう。
【0064】
これに対し、本実施形態に係る検査装置によれば、
図6に示すように、試料バイアル瓶10の搬送経路20に校正用の標準容器11を受け入れる必要がないので、
図5に示した比較例に係る検査装置と比較して搬送経路20に受け入れられる試料バイアル瓶10の数を増やすことができる。
【0065】
また、校正用の標準容器11が常時稼働している搬送経路20に乗っていないので、校正用の標準容器11が例えば搬送経路20を構成する部材である搬送台21の内壁等に接触して校正用の標準容器11に傷や汚れがつくといったことを抑制することができる。
【0066】
したがって、本実施形態に係る検査装置は、試料バイアル瓶10の受入数を制限することなく、正確な校正を行うことができる。
【0067】
また、本実施形態に係る検査装置は、保持部5に保持された複数の標準容器11のうちのいずれかを選択可能なように、レーザ光の光路Lと標準容器11との相対的な位置を切り替える切替機構50を備えるので、酸素濃度の異なる複数の標準容器11のうち、校正に用いる標準容器11を容易に切り替えることができる。
【0068】
また、本実施形態に係る検査装置は、切替機構50が、レーザ光の光路Lに対して交差する標準容器11を切り替えるよう保持部5を往復動可能な機構からなるので、レーザ光の光路Lを固定して簡易な構成で校正に用いる標準容器11を切り替えることができる。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、
図7を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0070】
本実施形態に係る検査装置は、第1の実施形態に係る検査装置1とは、標準容器11を保持する構成及び切替機構の構成が異なるが、他の構成は第1の実施形態と同一である。したがって、以下においては、第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
図7及び
図8に示すように、本実施形態では、校正用の各標準容器11は、搬送台21に形成された複数(本実施形態では3つ)の保持孔21bにそれぞれ保持されている。このため、本実施形態では、校正用の各標準容器11は、往復動せず、保持される位置が固定されている。この場合であっても、標準容器11に対して試料バイアル瓶10が移動することになるため、搬送経路20を搬送中の試料バイアル瓶10に対して校正用の標準容器11が相対的に移動する状態で保持されていることとなる。本実施形態における保持孔21bは、保持部を構成する。
【0072】
各保持孔21bは、各保持孔21bの中心を結ぶ線が搬送経路20と平行となるように、搬送経路20に沿って周方向に並んで等間隔に配置されている。各保持孔21bは、搬送経路20を搬送される試料バイアル瓶10の搬送間隔に収まる角度範囲内に設けられるのが好ましい。これにより、後述するように、校正のためにレーザ光の光路Lが保持孔21bと交差する位置に移動した際に、そのレーザ光の光路Lが試料バイアル瓶10と重なってしまうことを避けることができる。
【0073】
本実施形態の切替機構150は、試料バイアル瓶10及び複数の標準容器11に対してレーザ光の光路Lの位置を選択的に切り替えるよう、半導体レーザ31及びレーザ受光部4を移動可能なユニットからなる。
【0074】
具体的には、半導体レーザ31及びレーザ受光部4は、LDヘッド36(
図1参照)及びPDヘッド41(
図1参照)を介してアーム部材151に支持されている。アーム部材151は、検査ユニット本体100(
図1参照)の上面に形成されたガイド孔100aに沿って搬送経路20と平行に周方向に往復動可能に構成されている。
【0075】
ガイド孔100aは、搬送経路20と平行に周方向に延在している。アーム部材151は、例えば、ステッピングモータとラックアンドピニオン機構とを組み合わせたユニット等によって往復動するようになっている。これにより、アーム部材151は、疑似的に、搬送ディスク22の回転中心を支点に回動する。
【0076】
本実施形態において、制御部6は、試料バイアル瓶10の密閉性の検査を行う場合、すなわち試料バイアル瓶10にレーザ光を照射する場合には、複数の標準容器11からレーザ光の光路Lが退避した位置(
図7中、破線で示す位置)となるよう、切替機構150を制御して試料バイアル瓶10の搬送方向と同方向(
図7中、時計回り方向)にアーム部材151を移動させる。
【0077】
これに対し、制御部6は、標準容器11を用いて校正を行う場合には、複数の標準容器11のうち、対象の標準容器11がレーザ光の光路Lと交差する位置(
図7中、一点鎖線で示す位置)となるよう、切替機構150を制御して試料バイアル瓶10の搬送方向と反対方向(
図7中、反時計回り方向)にアーム部材151を移動させる。
【0078】
ここで、制御部6は、標準容器11を用いて校正を行う場合には、レーザ光の光路Lと搬送中の試料バイアル瓶10とが交差していないタイミング、すなわち先の試料バイアル瓶10と次の試料バイアル瓶10との間のタイミングで、レーザ光の光路Lが校正用の標準容器11に対して交差する位置となるよう切替機構150を制御する。
【0079】
校正を行うにあたっては、複数の標準容器11のうちいずれの標準容器11を用いるかによって、試料バイアル瓶10の搬送方向と反対方向へのアーム部材151の移動量が異なる。制御部6は、各標準容器11に応じた移動量に基づきアーム部材151を移動させるよう切替機構150を制御する。
【0080】
制御部6は、校正が終わると、次の試料バイアル瓶10が
図7中、破線で示す位置に搬送される前に、複数の標準容器11からレーザ光の光路Lが退避した位置、すなわち試料バイアル瓶10の密閉性の検査を行う位置に戻るよう切替機構150を制御する。
【0081】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係る検査装置は、上述の第1の実施形態の作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
【0082】
すなわち、本実施形態に係る検査装置は、切替機構150が、試料バイアル瓶10及び複数の標準容器11に対してレーザ光の光路Lの位置を選択的に切り替えるよう、半導体レーザ31及びレーザ受光部4を移動可能なユニットからなるので、レーザ光の光路Lの位置を選択的に切り替えることによって複数の標準容器11を移動させることなく校正を行うことができる。これにより、標準容器11をより保護することができ、標準容器11に汚れや傷がつかないようにすることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る検査装置は、複数の標準容器11を移動させることなく、校正に用いる標準容器11を切り替えることができる。
【0084】
[第2の実施形態の変形例]
なお、本実施形態において、切替機構150は、アーム部材151をガイド孔100aに沿って往復動可能に構成したが、これに限らず、例えば、
図8に示すように、搬送ディスク22の回転中心Oを支点に回動する構成としてもよい。
【0085】
この場合、アーム部材151は、径方向の内方側の端部が搬送ディスク22の回転中心Oを軸心とする図示しない軸部材に軸支されている。アーム部材151は、当該軸部材がステッピングモータ等によって回動されることで、搬送ディスク22の回転中心Oを支点に回動する。
【0086】
(第3の実施形態)
次に、
図9、
図10を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0087】
本実施形態に係る検査装置は、第1の実施形態に係る検査装置1とは、保持部及び切替機構の構成が異なるが、他の構成は第1の実施形態と同一である。したがって、以下においては、第1の実施形態と同一の構成については第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
図9及び
図10に示すように、本実施形態に係る検査装置1は、レーザ移動ユニット250と、保持部移動機構300と、を有している。本実施形態におけるレーザ移動ユニット250及び保持部移動機構300は、切替機構を構成する。
【0089】
[レーザ移動ユニット]
レーザ移動ユニット250は、レーザ光が試料バイアル瓶10を透過する第1の透過位置(
図10中、破線で示す位置)と、レーザ光が標準容器11を透過する第2の透過位置(
図10中、一点鎖線で示す位置)と、の間で半導体レーザ31及びレーザ受光部4を往復動可能に構成されている。
【0090】
半導体レーザ31及びレーザ受光部4は、LDヘッド36(
図1参照)及びPDヘッド41(
図1参照)を介してアーム部材251に支持されている。アーム部材251は、検査ユニット本体100(
図1参照)の上面に形成されたガイド孔100bに沿って搬送経路20と平行に周方向に往復動可能に構成されている。
【0091】
ガイド孔100bは、搬送経路20と平行に周方向に延在している。ガイド孔100bは、第2の実施形態のガイド孔100aよりも周方向の長さが短く形成されている。これは、アーム部材251の回動範囲が第2の実施形態のアーム部材151よりも小さいためである。
【0092】
アーム部材251は、例えば、ステッピングモータとラックアンドピニオン機構とを組み合わせたユニット等によって往復動するようになっている。これにより、アーム部材251は、疑似的に、搬送ディスク22の回転中心を支点に回動する。
【0093】
本実施形態において、制御部6は、試料バイアル瓶10の密閉性の検査を行う場合、すなわち試料バイアル瓶10にレーザ光を照射する場合には、半導体レーザ31及びレーザ受光部4が第1の透過位置(
図10中、破線で示す位置)となるよう、レーザ移動ユニット250を制御して試料バイアル瓶10の搬送方向と同方向(
図10中、時計回り方向)にアーム部材251を移動させる。
【0094】
制御部6は、標準容器11を用いて校正を行う場合には、半導体レーザ31及びレーザ受光部4が第2の透過位置(
図10中、一点鎖線で示す位置)となるよう、レーザ移動ユニット250を制御して試料バイアル瓶10の搬送方向と反対方向(
図10中、反時計回り方向)にアーム部材251を移動させる。
【0095】
その後、制御部6は、アーム部材251を標準容器11と同期させて第2の透過位置から第1の透過位置に移動させる。本実施形態では、この移動中に、校正が行われるようになっている。
【0096】
[保持部移動機構]
保持部移動機構300は、第2の透過位置(
図10中、一点鎖線で示す位置)においてレーザ光の光路Lに対して交差する標準容器11を切り替えるよう、保持部105を搬送経路20に沿うように往復動可能に構成されている。
【0097】
搬送台21の上面には、保持部105に保持された校正用の標準容器11が搬送経路20に沿って往復動可能なガイド溝21cが形成されている。ガイド溝21cは、第1の実施形態のガイド溝21aと形状は同一であるが、長さが異なる。具体的には、ガイド溝21cは、第1の実施形態のガイド溝21aよりも搬送方向の上流側から形成されている。これは、第1の実施形態では、半導体レーザ31及びレーザ受光部4が移動しないため第1の透過位置(
図10中、破線で示す位置)で標準容器11を切り替えるのに対して、第3の実施形態では、第1の透過位置よりも搬送方向の上流側の第2の透過位置(
図10中、一点鎖線で示す位置)で標準容器11を切り替えるからである。
【0098】
保持部105には、校正用の標準容器11が複数(本実施形態では3つ)、保持されている。保持部105は、第2の透過位置(
図10中、一点鎖線で示す位置)においてレーザ光の光路Lに対して交差する標準容器11を切り替える点で第1の実施形態の保持部5と異なるが、他の構成は第1の実施形態の保持部5と同一である。
【0099】
保持部移動機構300としては、例えば、ステッピングモータとラックアンドピニオン機構とを組み合わせたユニット等を用いることができる。
【0100】
ここで、制御部6は、標準容器11を用いて校正を行う場合には、第1の透過位置においてレーザ光の光路Lと搬送中の試料バイアル瓶10とが交差していないタイミング、すなわち先の試料バイアル瓶10と次の試料バイアル瓶10との間のタイミングで、半導体レーザ31及びレーザ受光部4が第2の透過位置となるよう保持部移動機構300を制御する。
【0101】
校正を行うにあたっては、複数の標準容器11のうちいずれの標準容器11を用いるかによって、第2の透過位置における保持部105の位置が異なる。制御部6は、第2の透過位置における標準容器11が、選択された標準容器となるよう保持部移動機構300を制御する。
【0102】
制御部6は、アーム部材251と標準容器11とが同期して、第2の透過位置から第1の透過位置に移動するよう、レーザ移動ユニット250と保持部移動機構300とを制御する。
【0103】
本実施形態では、第2の透過位置から第1の透過位置にアーム部材251と標準容器11とが同期して移動している最中に、校正が行われる。
【0104】
制御部6は、校正が終わると、次の試料バイアル瓶10が第1の透過位置に搬送される前に、標準容器11が第2の透過位置に戻るよう保持部移動機構300を制御する。
【0105】
[作用効果]
以上のように、本実施形態に係る検査装置は、上述の第1の実施形態の作用効果に加えて以下の作用効果を奏する。
【0106】
すなわち、本実施形態に係る検査装置は、半導体レーザ31及びレーザ受光部4と標準容器11とが同期して第2の透過位置から第1の透過位置に移動し、当該移動中に校正が行われるので、順次搬送される試料バイアル瓶10の間の時間を使って校正を行うことができる。これにより、試料バイアル瓶10の搬送速度を落とさなくとも効率的に校正を行うことができ、単位時間当たりの検査数を多くすることができる。
【0107】
[第3の実施形態の変形例]
なお、本実施形態において、レーザ移動ユニット250は、アーム部材251をガイド孔100bに沿って往復動可能に構成したが、これに限らず、例えば、
図11に示すように、搬送ディスク22の回転中心Oを支点に回動する構成としてもよい。
【0108】
この場合、アーム部材251は、径方向の内方側の端部が搬送ディスク22の回転中心Oを軸心とする図示しない軸部材に軸支されている。アーム部材251は、当該軸部材がステッピングモータ等によって回動されることで、搬送ディスク22の回転中心Oを支点に回動する。
【0109】
なお、上述の各実施形態においては、試料バイアル瓶10の検査を行う位置に対して全ての標準容器11を搬送方向上流側に退避した状態にて試料バイアル瓶10の検査を行うようにしたが(
図4、
図7、
図10参照)、各標準容器11間に所定距離の隙間があれば、この隙間を用いて試料バイアル瓶10の検査を行ってもよい。例えば、
図4(b)にて右端の標準容器11を用いて校正を行った後、中央の標準容器11と右端の標準容器11との間の隙間にレーザ光の光路Lが位置するように保持部5を僅かに搬送方向下流側に移動させて、この状態で試料バイアル瓶10の検査を行ってもよい。
【0110】
この場合、保持部5や切替機構等の移動動作する構成部の現在位置を、制御部6内に設けた記憶部(不図示)に記憶させるようになっており、制御部6はこの位置情報を用いて次動作の制御を行うことになる。このようにすることで、当該移動動作する構成部の動作の効率化が図れる。
【0111】
また、上述の各実施形態においては、本発明に係る検査装置を、試料バイアル瓶10の搬送経路20が円状の検査装置に用いた例について説明したが、直線状又は曲線状など、種々の形状の搬送経路を有する検査装置にも適用可能である。
【0112】
また、上述の各実施形態においては、搬送経路20の径方向の外側に標準容器11を配置した構成について説明したが、搬送経路20の径方向の内側に標準容器11を配置した構成であってもよい。
【0113】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0114】
1 検査装置
2 搬送部
3 レーザ発生部
4 レーザ受光部
5、105 保持部
6 制御部
10 試料バイアル瓶(被検査容器)
10a ヘッドスペース(空間部)
11 標準容器
20 搬送経路
21 搬送台
21a、21c ガイド溝
21b 保持孔(保持部)
22a 切欠部
26 ガス濃度検出領域
31 半導体レーザ
36 LDヘッド
41 PDヘッド
50、150 切替機構
61 ガス濃度測定部
62 判定部
63 駆動制御部
100 検査ユニット本体
100a、100b ガイド孔
151、251 アーム部材
250 レーザ移動ユニット(切替機構)
300 保持部移動機構(切替機構)
L レーザ光の光路
O 回転中心