(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119492
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】携帯機器から人の掌に触感刺激を与える付属装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20230821BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G06F3/01 560
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022428
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田島 優輝
【テーマコード(参考)】
5D107
5E555
【Fターム(参考)】
5D107BB08
5D107CC01
5D107CC09
5D107CD08
5E555AA08
5E555BA06
5E555BB06
5E555BC04
5E555CA12
5E555DA02
5E555DA24
5E555DD06
5E555EA09
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】携帯機器から人の掌に触感刺激を与える付属装置等を提供する。
【解決手段】人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置であって、携帯機器から無線を介して触感データを受信する無線通信手段と、触感データを電気信号に変換する電気信号合成手段と、電気信号に応じた触感を発生させる触感デバイスとを有する。付属装置は、携帯機器と人の掌との間隙に把持されるように、人が視覚的情報を得る携帯機器のディスプレイ面に対する裏面に装着される。また、付属装置は、イヤフォンを内包可能なケースであってもよいし、携帯機器自体を保護可能なカバーケースであってもよい。触感デバイスは、電気信号に応じた振動力を発生する振動子であってもよいし、電気信号に応じた温度で発熱又は冷却するペルチェ素子であってもよいし、当該電気信号に応じた力覚を発生するモータであってもよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置であって、
携帯機器から無線を介して触感データを受信する無線通信手段と、
触感データを電気信号に変換する電気信号合成手段と、
電気信号に応じた触感を発生させる触感デバイスと
を有し、人の掌へ触感を与えることを特徴とする付属装置。
【請求項2】
携帯機器と人の掌との間隙に把持されるように、人が視覚的情報を得る携帯機器のディスプレイ面に対する裏面に装着される
ことを特徴とする請求項1に記載の付属装置。
【請求項3】
イヤフォンを内包可能なケースである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の付属装置。
【請求項4】
携帯機器自体を保護可能なカバーケースである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の付属装置。
【請求項5】
触感データは、音響データ又は振動波形データであり、
触感デバイスは、電気信号に応じた振動力を発生する振動子である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の付属装置。
【請求項6】
触感データは、温度データであり、
触感デバイスは、電気信号に応じた温度で発熱又は冷却するペルチェ素子である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の付属装置。
【請求項7】
触感データは、所定方向への力覚データであり、
触感デバイスは、電気信号に応じた力覚を発生するモータである
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の付属装置。
【請求項8】
無線通信手段は、無線を介して他の付属装置へ、触感データを転送する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の付属装置。
【請求項9】
当該付属装置は、イヤフォンを内包可能なケースであり、
触感データは、音響データであり、
無線通信手段は、無線を介してイヤフォンへ、音響データを転送する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の付属装置。
【請求項10】
人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
携帯機器から無線を介して触感データを受信し、
触感データを電気信号に変換し、
触感デバイスを用いて、電気信号に応じた触感を発生させる
ようにコンピュータに実行させて、人の掌へ触感を与える
ことを特徴とする付属装置のプログラム。
【請求項11】
人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置を用いて、人の掌へ触感を与える方法であって、
付属装置は、
携帯機器から無線を介して受信した触感データを受信し、
触感データを電気信号に変換し、
触感デバイスを用いて、当該電気信号に応じた触感を発生させる
ように実行することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疑似的な触感(Haptics)をユーザに伝達するデバイスの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザにとって、音響コンテンツを聴きながら、高い没入感を得られる技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、イヤーカップを含むヘッドフォンであって、受聴者の外耳道に向かって突出するイヤフォンを備えたものである。イヤーカップは、受聴者の耳を実質的に取り囲み、可聴下音振動及び低周波振動を受聴者の皮膚へと伝達し、振動触感応答を刺激する。イヤフォンは、受聴者の外耳道内に配置され、可聴周波数の全範囲を伝達する。これによって、ユーザは、聴覚刺激と同時に、耳周辺への触感刺激を体感することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Lederman, S.J., Klatzky, R.L. Haptic perception: A tutorial. Attention, Perception, & Psychophysics 71, 1439-1459 (2009). [online]、[令和4年1月30日検索]、インターネット<URL:https://doi.org/10.3758/APP.71.7.1439>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人の掌は、触感受容器が多く分布し、触感刺激に対する受容能力が高いと言われる(例えば非特許文献1参照)。そのために、掌に触感刺激を与えるほど、人は過敏に反応すると考えられる。
【0006】
この知見に基づいて、本願の発明者らは、スマートフォンのような携帯機器から提供されるコンテンツにおける触感刺激を、人の掌に直ぐに与えることができないか、と考えた。携帯機器は、人が掌で把持して操作可能となるように構成されている。本願の発明者らは、人が携帯機器を把持したその掌に、触感刺激を与えることができないか、と考えた。これによって、ユーザに対して、携帯機器から提供されるコンテンツに対する体験満足度を高めることができる、と考えた。
【0007】
そこで、本発明によれば、携帯機器から人の掌に触感刺激を与える付属装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置であって、
携帯機器から無線を介して触感データを受信する無線通信手段と、
触感データを電気信号に変換する電気信号合成手段と、
電気信号に応じた触感を発生させる触感デバイスと
を有し、人の掌へ触感を与えることを特徴とする。
【0009】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
携帯機器と人の掌との間隙に把持されるように、人が視覚的情報を得る携帯機器のディスプレイ面に対する裏面に装着されることも好ましい。
【0010】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
イヤフォンを内包可能なケースである
ことも好ましい。
【0011】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
携帯機器自体を保護可能なカバーケースである
ことも好ましい。
【0012】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
触感データは、音響データ又は振動波形データであり、
触感デバイスは、電気信号に応じた振動力を発生する振動子である
ことも好ましい。
【0013】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
触感データは、温度データであり、
触感デバイスは、電気信号に応じた温度で発熱又は冷却するペルチェ素子である
ことも好ましい。
【0014】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
触感データは、所定方向への力覚データであり、
触感デバイスは、電気信号に応じた力覚を発生するモータである
ことも好ましい。
【0015】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
無線通信手段は、無線を介して他の付属装置へ、触感データを転送する
ことも好ましい。
【0016】
本発明の付属装置における他の実施形態によれば、
当該付属装置は、イヤフォンを内包可能なケースであり、
触感データは、音響データであり、
無線通信手段は、無線を介してイヤフォンへ、音響データを転送する
ことも好ましい。
【0017】
本発明によれば、人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
携帯機器から無線を介して触感データを受信し、
触感データを電気信号に変換し、
触感デバイスを用いて、電気信号に応じた触感を発生させる
ようにコンピュータに実行させて、人の掌へ触感を与える
ことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、人の掌に把持される携帯機器に、外部から装着可能な付属装置を用いて、人の掌へ触感を与える方法であって、
付属装置は、
携帯機器から無線を介して受信した触感データを受信し、
触感データを電気信号に変換し、
触感デバイスを用いて、当該電気信号に応じた触感を発生させる
ように実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の付属装置、プログラム及び方法によれば、携帯機器から人の掌に触感刺激を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】携帯機器と通信する本発明の付属装置の外観図である。
【
図2】携帯機器及び付属装置をユーザが把持する外観図である。
【
図3】本発明における付属装置の機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図面を用いて、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0022】
図1は、携帯機器と通信する本発明の付属装置の外観図である。
【0023】
図1によれば、本発明の付属装置1と、ユーザが操作する携帯機器2とが表されている。
携帯機器2は、スマートフォン又は携帯端末のように、人が掌で把持して操作する情報機器である。付属装置1は、携帯機器2と、近距離無線通信(例えばBluetooth(登録商標)又は無線LAN(Local Area Network))によって通信する。
【0024】
携帯機器2の表面は、人が視覚的情報を得るディスプレイ面となる。一方で、携帯機器2の裏面は、人の掌が近接することとなる。付属装置1は、携帯機器2の裏面に装着される。
図1によれば、携帯機器2の背面に配置されたマッチャー(接続部)に、付属装置1が装着される。マッチャーは、取り外し可能となるよう、例えば磁石であってもよい。例えばiPhone(登録商標)によれば、その背面に磁力による装着部を予め備えている。
勿論、マッチャーは、携帯機器2自体に備えられたものに限られず、携帯機器2の外部ケースに備えられたものであってもよい。
【0025】
図2は、携帯機器及び付属装置をユーザが把持する外観図である。
【0026】
図2によれば、付属装置1は、携帯機器2の裏面に装着されるために、携帯機器2と人の掌との間隙に把持されるようになる。これによって、携帯機器2を把持する掌は、必然的に付属装置1と接触することとなる。
付属装置1によって励起された触感(例えば振動、温度、力覚)は、付属装置1自体に触れる掌へ伝導する。また、その触感は、マッチャーを介して携帯機器2へ伝導し、その携帯機器2に触れる掌へも伝導する。尚、触感が振動である場合、付属装置1と携帯機器2との接触面(マッチャー)が持つ機械インピーダンスよって、掌に伝わる触感刺激も変化することとなる。
【0027】
図3は、本発明における付属装置の機能構成図である。
【0028】
図3によれば、付属装置1は、人の掌に接触するものであって、無線通信部11と、電気信号合成部12と、触感デバイス13とを有する。これら機能構成部における物理的機能以外の機能については、付属装置1に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現されるものであってよい。また、これら機能構成部の処理の流れは、付属装置の触感発生方法としても理解できる。
【0029】
[無線通信部11]
無線通信部11は、携帯機器2から無線を介して、「触感データ」を受信(ダウンロード)する。触感データとしては、以下のようなものがある。
(1)音響データ又は振動波形データ
(2)温度データ
(3)所定方向への力覚データ
触感データは、触感に基づく専用データである。勿論、触感データが音響データである場合、音響コンテンツそのものであってもよい。尚、音響データと専用データとの両方を含む複合データであってもよい。
【0030】
[電気信号合成部12]
電気信号合成部12は、触感データを電気信号に変換する。
触感データを、電気信号に単に変換するだけでなく、触感を提示するべく専用の電気信号に合成する必要がある。例えば音響データの場合、周波数成分を加工して電気信号を合成したり、時系列信号のうち特定のパターンを検出して電気信号を合成したりする。例えば温度データの場合、後述するペルチェ素子に応じた電気信号に変換する必要がある。例えば力覚データの場合、後述するモータに応じた駆動信号に変換する必要がある。このような処理は、例えば、Snapdragon(登録商標)やESP32(登録商標)のようなSoC(System-on-a-chip)によって実現される。
【0031】
[触感デバイス13]
触感デバイス13は、電気信号に応じた触感を発生させる。この触感は、人の掌へ伝導される。
【0032】
触感デバイスとしては、触感データに応じて、例えば以下のような振動子、ペルチェ素子又はモータのようなものである。
<振動子>
触感データが、音響データ又は振動波形データ(例えば電圧波形)である場合、触感デバイスは、電気信号(例えば電圧信号列)に応じた振動力を発生する「振動子」であってもよい。振動子としては、具体的にはボイスコイル、スピーカ又はピエゾ素子であってもよい。
尚、音響データとしては、例えば音楽コンテンツであってもよい。また、振動波形データは、例えば特定パターンで正弦波形が現れる時系列信号であってもよい。
【0033】
<ペルチェ素子>
触感データが、温度データである場合、触感デバイスは、電気信号に応じた温度を発熱又は冷却する「ペルチェ素子」であってもよい。
尚、人は、熱さと冷たさの知覚機序(知覚受容器や伝達する神経系)が異なり、冷たさの方が高速に知覚する。即ち、コンテンツに対してリアルタイムに掌に温度を感じさせるためには、冷却を用いることが好ましい。
【0034】
<モータ>
触感データが、所定方向への力覚データである場合、触感デバイスは、当該電気信号に応じた力覚を発生する「モータ」であってもよい。この場合、力覚データは、モータの印加力又は電流値のような駆動信号であってもよい。
尚、前述した従来技術としての非特許文献1によれば、モータ等を用いて静的な力を、人の指に感じさせることができる。この技術によれば、仮想物体の重力や慣性力を、ユーザに触感的に表現することができる。複数のモータによってベルトを巻き上げ、指腹にせん断変形や圧迫変形を提示する機構を備える。重力や慣性力に応じてベルトの巻き上げ量を制御し、ユーザに触感を提示する。
【0035】
【0036】
図4(a)によれば、付属装置1としてのケースの外観を表す。ケースは、イヤフォンを内包可能なものである。
【0037】
図4(b)によれば、付属装置1としてのケースを開けた際に、イヤフォンが内包されている外観を表す。尚、ユーザビリティの観点から、付属装置1は、イヤフォンがケースに収納された時、又は、ケースから取り出された時を検出し、自動的にイヤフォンと無線通信を接続することも好ましい。
【0038】
図4(c)によれば、付属装置1としてのケースを携帯機器2に装着すると共に、ユーザはイヤフォンを耳に装着して音楽コンテンツを聴くことができる。
ケースから取り出されたイヤフォンは、携帯機器2又はケースと、無線通信(例えばBluetooth又は無線LAN)によって接続する。そして、イヤフォンは、携帯機器2又はケースから、音響データを受信し、ユーザの耳へその音声を出力する。
付属装置1としてのケースは、携帯機器2から受信した音響データを、イヤフォンへ転送する中継機能として実行されるものであってもよい。
【0039】
これによって、ユーザは、携帯機器2から提供される音楽や映像のコンテンツの体験時に、イヤフォンを装着すると共に、付属装置1が装着された携帯機器2を把持する。ユーザは、耳に対する聴覚刺激と、それに同期して掌に対する触感刺激との両方を得ることができる。
【0040】
前述した
図4によれば、付属装置1は、イヤフォンを収納可能なケースとして説明したが、携帯機器2自体を保護可能なカバーケースであってもよい。カバーケースによって、携帯機器から人の掌に触感刺激を与えることができる。
【0041】
以上、詳細に説明したように、本発明の付属装置、プログラム及び方法によれば、携帯機器から人の掌に触感刺激を与えることができる。これによって、ユーザに対して、携帯機器から提供されるコンテンツに対する体験満足度を高めることができる。
【0042】
なお、これにより、「携帯機器から提供されるコンテンツの利用を促進すること」ができることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標8「すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する」に貢献することが可能となる。
【0043】
前述した本発明における種々の実施形態によれば、当業者は、本発明の技術思想及び見地の範囲における種々の変更、修正及び省略を容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0044】
1 付属装置
11 無線通信部
12 電気信号合成部
13 触感デバイス
2 携帯機器