(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119496
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】水分散体、表面処理剤、処理繊維および処理フィラー
(51)【国際特許分類】
C08L 23/26 20060101AFI20230821BHJP
D06M 15/21 20060101ALI20230821BHJP
C08F 8/46 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08L23/26
D06M15/21
C08F8/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022437
(22)【出願日】2022-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】金谷 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】村田 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 庸祐
(72)【発明者】
【氏名】川辺 邦昭
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4L033
【Fターム(参考)】
4J002BB211
4J002GH02
4J002GK01
4J002HA07
4J100AA02Q
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4J100BC55H
4J100CA01
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4J100HA51
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4J100HC30
4J100HC36
4J100HE17
4J100JA01
4J100JA11
4L033AB04
4L033AC15
4L033CA12
(57)【要約】
【課題】比較的低黄度の水分散体、表面処理剤、処理繊維および処理フィラーを提供すること。
【解決手段】水分散体は、ポリプロピレン系ワックスが酸により変性されてなる酸変性ポリプロピレン系ワックスと、酸変性ポリプロピレン系ワックスを分散させる水とを含有する。酸は、不飽和ジカルボン酸類を含有する。酸変性ポリプロピレン系ワックスは、プロピレンに由来する構造単位を、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、80質量%以上の割合で含有する。酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量が、5000以上50000以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価が、1mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの色相APHAが、500以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系ワックスが酸により変性されてなる酸変性ポリプロピレン系ワックスと、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスを分散させる水とを含有し、
前記酸は、不飽和ジカルボン酸類を含有し、
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスは、プロピレンに由来する構造単位を、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、80質量%以上の割合で含有し、
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量が、5000以上50000以下であり、
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価が、1mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの色相APHAが、500以下である、水分散体。
【請求項2】
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの灰分が、100ppm以下である、請求項1に記載の水分散体。
【請求項3】
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスのリン含有量が、10ppm以下である、請求項1または2に記載の水分散体。
【請求項4】
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスのカルシウム含有量が、10ppm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水分散体。
【請求項5】
前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの遊離酸含有量が、200ppm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の水分散体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の水分散体を含む、表面処理剤。
【請求項7】
繊維と、前記繊維の少なくとも一部を被覆する請求項6に記載の表面処理剤の乾燥物とを備える、処理繊維。
【請求項8】
フィラーと、前記フィラーの少なくとも一部を被覆する請求項6に記載の表面処理剤の乾燥物とを備える、処理フィラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水分散体、表面処理剤、処理繊維および処理フィラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維処理剤として、ポリプロピレン系樹脂の水分散体が知られている。より具体的には、例えば、以下の無機繊維用集束剤が、知られている。この無機繊維用集束剤は、ポリプロピレン系樹脂(A)またはその塩を含む水性エマルションからなる。ポリプロピレン系樹脂(A)は、数平均分子量500~20000の低分子量ポリプロピレン系樹脂(B)を、不飽和ジカルボン酸(C)で変性することにより得られる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ポリプロピレン系樹脂の水分散体には、用途に応じて、低黄度であることが、要求される。しかし、上記の無機繊維用集束剤は、比較的高黄度であるという不具合がある。
【0005】
本発明は、比較的低黄度の水分散体、表面処理剤、処理繊維および処理フィラーである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明[1]は、ポリプロピレン系ワックスが酸により変性されてなる酸変性ポリプロピレン系ワックスと、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスを分散させる水とを含有し、前記酸は、不飽和ジカルボン酸類を含有し、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスは、プロピレンに由来する構造単位を、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、80質量%以上の割合で含有し、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量が、5000以上50000以下であり、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価が、1mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの色相APHAが、500以下である、水分散体を、含んでいる。
【0007】
本発明[2]は、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの灰分が、100ppm以下である、上記[1]に記載の水分散体を、含んでいる。
【0008】
本発明[3]は、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスのリン含有量が、10ppm以下である、上記[1]または[2]に記載の水分散体を、含んでいる。
【0009】
本発明[4]は、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスのカルシウム含有量が、10ppm以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の水分散体を、含んでいる。
【0010】
本発明[5]は、前記酸変性ポリプロピレン系ワックスの遊離酸含有量が、200ppm以下である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の水分散体を、含んでいる。
【0011】
本発明[6]は、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の水分散体を含む、表面処理剤を、含んでいる。
【0012】
本発明[7]は、繊維と、前記繊維の少なくとも一部を被覆する上記[6]に記載の表面処理剤の乾燥物とを備える、処理繊維を、含んでいる。
【0013】
本発明[8]は、フィラーと、前記フィラーの少なくとも一部を被覆する上記[6]に記載の表面処理剤の乾燥物とを備える、処理フィラーを、含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水分散体は、比較的低黄度である。
【0015】
本発明の表面処理剤は、上記の水分散体を含むため、比較的低黄度である。
【0016】
本発明の処理繊維および処理フィラーは、上記の水分散体の乾燥物を含んでいるため、比較的低黄度である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.水分散体
本発明の水分散体は、酸変性ポリプロピレン系ワックスと、酸変性ポリプロピレン系ワックスを分散させる水とを、含有している。
【0018】
酸変性ポリプロピレン系ワックスは、後述するように、未変性ポリプロピレン系ワックスが酸により変性されてなる。つまり、酸変性ポリプロピレン系ワックスは、未変性ポリプロピレン系ワックスの酸変性体である。
【0019】
なお、未変性ポリプロピレン系ワックスを、単に、ポリプロピレン系ワックスと称する場合がある。
【0020】
ポリプロピレン系ワックスは、比較的低分子量のポリプロピレン系樹脂である。比較的低分子量のポリプロピレン系樹脂は、例えば、比較的高分子量のポリプロピレン系樹脂(原料ポリプロピレン系樹脂)を短鎖分解化(後述)することによって、得られる。
【0021】
なお、比較的低分子量のポリプロピレン系樹脂を、単に、低分子量ポリプロピレン樹脂と称する場合がある。また、比較的高分子量のポリプロピレン系樹脂を、単に、高分子量ポリプロピレン樹脂と称する場合がある。
【0022】
以下、高分子量ポリプロピレン系樹脂(原料ポリプロピレン系樹脂)、低分子量ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系ワックス)および、酸変性ポリプロピレン系ワックスについて、詳述する。
【0023】
(1)高分子量ポリプロピレン系樹脂(原料ポリプロピレン系樹脂)
高分子量ポリプロピレン系樹脂は、比較的高分子量のポリプロピレン系樹脂である。比較的高分子量とは、重量平均分子量(ポリプロピレン換算分子量)が50000を超過することを示す。高分子量ポリプロピレン系樹脂は、低分子量ポリプロピレン系樹脂を製造するための原料ポリプロピレン系樹脂である。
【0024】
より具体的には、高分子量ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを含有するオレフィン成分の高分子量重合体である。オレフィン成分は、必須成分として、プロピレンを含有する。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂において、オレフィン成分は、任意成分として、プロピレン以外のオレフィンを含有できる。プロピレン以外のオレフィンとしては、例えば、エチレン、および、炭素数4以上のα-オレフィンが挙げられる。炭素数4以上のα-オレフィンとしては、例えば、炭素数4以上20以下α-オレフィンが挙げられ、より具体的には、1-ブレン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンおよび1-ドデセンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用される。また、オレフィン成分は、さらに、任意成分として、ビニル化合物を含有できる。ビニル化合物としては、例えば、不飽和モノカルボン酸および不飽和モノカルボン酸アルキルエステルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用される。
【0025】
高分子量ポリプロピレン系樹脂において、オレフィン成分は、好ましくは、プロピレンからなるか、プロピレンおよびエチレンからなるか、プロピレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンからなる。オレフィン成分は、より好ましくは、プロピレンからなるか、プロピレンおよびエチレンからなる。オレフィン成分は、さらに好ましくは、プロピレンおよびエチレンからなる。
【0026】
オレフィン成分の総量に対して、プロピレンの含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上である。また、オレフィン成分の総量に対して、プロピレンの含有割合が、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。
【0027】
換言すると、高分子量ポリプロピレン系樹脂の総量に対して、プロピレンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上である。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂の総量に対して、プロピレンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。なお、プロピレンに由来する構造単位の含有割合は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される(以下同様)。
【0028】
また、オレフィン成分の総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの含有割合が、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、オレフィン成分の総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0029】
換言すると、高分子量ポリプロピレン系樹脂の総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂の総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。なお、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される(以下同様)。
【0030】
高分子量ポリプロピレン系樹脂は、オレフィン成分を公知の方法で重合させることによって、得ることができる。なお、高分子量ポリプロピレン系樹脂は、市販品として入手することもできる。
【0031】
高分子量ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、50000を超過し、好ましくは、100000以上、より好ましくは、200000以上である。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、500000以下、好ましくは、400000以下である。
【0032】
高分子量ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、10000以上、好ましくは、20000以上、より好ましくは、40000以上である。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、100000以下、好ましくは、80000以下、より好ましくは、60000以下である。
【0033】
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、後述する実施例に準拠して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される(以下同様)。
【0034】
高分子量ポリプロピレン系樹脂の分散度(Mw/Mn)は、例えば、1.5以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.5以上である。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂の分散度(Mw/Mn)は、例えば、20.0以下、好ましくは、10.0以下、より好ましくは、8.0以下である。
【0035】
高分子量ポリプロピレン系樹脂のMFR(Melt flow rate)は、例えば、10g/10min以上、好ましくは、30g/10min以上、より好ましくは、40g/10min以上である。また、高分子量ポリプロピレン系樹脂のMFR(Melt flow rate)は、例えば、100g/10min以下、好ましくは、80g/10min以下、より好ましくは、60g/10min以下である。
【0036】
(2)低分子量ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系ワックス)
低分子量ポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系ワックス)は、比較的低分子量のポリプロピレン系樹脂である。比較的低分子量とは、重量平均分子量(ポリプロピレン換算分子量)が50000以下、好ましくは、20000以下であることを示す。
【0037】
より具体的には、ポリプロピレン系ワックスは、プロピレンを含有するオレフィン成分の低分子量重合体である。オレフィン成分は、必須成分として、プロピレンを含有する。また、オレフィン成分は、任意成分として、プロピレン以外のオレフィンを含有できる。プロピレン以外のオレフィンとしては、例えば、上記エチレン、および、炭素数4以上の上記α-オレフィンが挙げられる。また、オレフィン成分は、任意成分として、上記ビニル化合物を含有できる。これらは、単独使用または2種類以上併用される。
【0038】
ポリプロピレン系ワックスにおいて、オレフィン成分は、好ましくは、プロピレンからなるか、プロピレンおよびエチレンからなるか、プロピレンおよび炭素数4以上のα-オレフィンからなる。オレフィン成分は、より好ましくは、プロピレンからなるか、プロピレンおよびエチレンからなる。オレフィン成分は、さらに好ましくは、プロピレンおよびエチレンからなる。
【0039】
オレフィン成分の総量に対して、プロピレンの含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上である。また、オレフィン成分の総量に対して、プロピレンの含有割合が、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。
【0040】
換言すると、ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、プロピレンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、プロピレンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、100質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。なお、プロピレンに由来する構造単位の含有割合は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される(以下同様)。
【0041】
また、オレフィン成分の総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの含有割合が、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、オレフィン成分の総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンの含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0042】
換言すると、ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。なお、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される(以下同様)。
【0043】
また、ポリプロピレン系ワックスのオレフィン成分が、プロピレンおよびエチレンからなる場合、オレフィン成分の総量に対して、エチレンの含有割合が、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、オレフィン成分の総量に対して、エチレンの含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。
【0044】
ポリプロピレン系ワックスは、高分子量ポリプロピレン系樹脂を短鎖分解化させることによって、得ることができる。高分子量ポリプロピレン系樹脂を短鎖分解化させる方法としては、例えば、熱分解が挙げられる。
【0045】
高分子量ポリプロピレン系樹脂を熱分解する方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、高分子量ポリプロピレン系樹脂を、不活性ガス雰囲気下で、加熱する。熱分解における加熱温度は、例えば、300℃以上450℃以下である。また、熱分解における加熱時間は、例えば、5時間以上20時間以下である。なお、加熱時間は、熱分解する設備に応じて、大きく異なる。ポリプロピレン系ワックスの着色を抑制する観点から、好ましくは、加熱時間を可能な限り短時間とする。
【0046】
これにより、高分子量ポリプロピレン系樹脂の短鎖物として、ポリプロピレン系ワックスが得られる。なお、ポリプロピレン系ワックスは、市販品として入手することもできる。
【0047】
ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量(Mw)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、1500以上、好ましくは、3000以上、より好ましくは、6500以上、さらに好ましくは、8000以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量(Mw)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、20000以下、好ましくは、15000以下、より好ましくは、10000以下、さらに好ましくは、9000以下である。
【0048】
ポリプロピレン系ワックスの数平均分子量(Mn)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、500以上、好ましくは、1000以上、より好ましくは、1500以上、さらに好ましくは、1800以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの数平均分子量(Mn)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下、より好ましくは、3000以下、さらに好ましくは、2500以下である。
【0049】
ポリプロピレン系ワックスの分散度(Mw/Mn)は、例えば、1.5以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.5以上、さらに好ましくは、3.0以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの分散度(Mw/Mn)は、例えば、20.0以下、好ましくは、10.0以下、より好ましくは、8.0以下、さらに好ましくは、6.0以下である。
【0050】
ポリプロピレン系ワックスの密度は、例えば、800kg/cm3以上、好ましくは、820kg/cm3以上、より好ましくは、850kg/cm3以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの密度は、例えば、950kg/cm3以下、好ましくは、930kg/cm3以下、より好ましくは、900kg/cm3以下である。なお、密度は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0051】
ポリプロピレン系ワックスの軟化点は、例えば、100℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、140℃以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの軟化点は、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、148℃以下である。なお、軟化点は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0052】
ポリプロピレン系ワックスの180℃溶融粘度は、例えば、40mPa・s以上、好ましくは、55mPa・s以上、より好ましくは、65mPa・s以上である。また、ポリプロピレン系ワックスの180℃溶融粘度は、例えば、200mPa・s以下、好ましくは、100mPa・s以下、より好ましくは、80mPa・s以下である。なお、180℃溶融粘度は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0053】
ポリプロピレン系ワックスの色相APHAは、例えば、100以下、好ましくは、90以下、より好ましくは、70以下である。また、ポリプロピレン系ワックスの色相APHAは、通常、1以上である。なお、色相APHAは、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0054】
(3)酸変性ポリプロピレン系ワックス
酸変性ポリプロピレン系ワックスは、ポリプロピレン系ワックスを酸により変性した変性体である。
【0055】
酸は、不飽和ジカルボン酸類を含有する。酸は、好ましくは、不飽和ジカルボン酸類からなる。不飽和ジカルボン酸類としては、例えば、不飽和ジカルボン酸およびそのエステル化物が挙げられ、好ましくは、不飽和ジカルボン酸が挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、および、これらの無水物が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。不飽和ジカルボン酸として、好ましくは、マレイン酸が挙げられる。
【0056】
ポリプロピレン系ワックスを酸により変性する方法は、特に制限されないが、例えば、ポリプロピレン系ワックスと酸とを、公知の触媒の存在下で反応させる。
【0057】
触媒としては、例えば、ラジカル発生剤が挙げられる。ラジカル発生剤としては、特に制限されないが、例えば、過酸化水素、過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物およびレドックス開始剤が挙げられる。過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウムが挙げられる。過酸化物としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエートおよびラウロイルパーオキサイドが挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)および1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。触媒として、好ましくは、過酸化物が挙げられ、より好ましくは、ジ-t-ブチルパーオキサイドが挙げられる。触媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0058】
ポリプロピレン系ワックスと酸との配合割合は、酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量が後述の範囲となり、また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価が後述の範囲となるように、調整される。
【0059】
より具体的には、ポリプロピレン系ワックス100質量部に対して、酸が、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上である。酸の割合が上記下限を上回っていれば、優れた水分散性が得られる。つまり、水中における酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒径を比較的小さくできる。そのため、優れた貯蔵安定性が得られる。また、ポリプロピレン系ワックス100質量部に対して、酸が、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。酸の割合が上記上限を下回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を比較的高くできるため、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)が得られる。
【0060】
また、ポリプロピレン系ワックスと酸との総量に対して、ポリプロピレン系ワックスが、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上である。ポリプロピレン系ワックスの割合が上記下限を上回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を比較的高くできるため、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)が得られる。また、ポリプロピレン系ワックスと酸との総量に対して、ポリプロピレン系ワックスが、例えば、99質量%以下、好ましくは、97質量%以下である。ポリプロピレン系ワックスの割合が上記上限を下回っていれば、優れた水分散性が得られる。つまり、水中における酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒径を比較的小さくできる。そのため、優れた貯蔵安定性が得られる。
【0061】
また、ポリプロピレン系ワックスと酸との総量に対して、酸が、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、3質量%以上である。酸の割合が上記下限を上回っていれば、優れた水分散性が得られる。つまり、水中における酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒径を比較的小さくできる。そのため、優れた貯蔵安定性が得られる。また、ポリプロピレン系ワックスと酸との総量に対して、酸が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下である。酸の割合が上記上限を下回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を比較的高くできるため、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)が得られる。
【0062】
ポリプロピレン系ワックスと酸との反応では、溶融法が採用されていてもよく、また、溶液法が採用されていてもよい。
【0063】
溶融法では、例えば、ポリプロピレン系ワックスと酸との混合物を、触媒存在下で溶融混練する。これにより、ポリプロピレン系ワックスと酸とを反応させる。反応温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、150℃以上である。反応温度が上記下限を上回っていれば、ポリプロピレン系ワックスの溶融を比較的均一にできる。そのため、酸とポリプロピレン系ワックスとを比較的均一に反応させることができる。その結果、水分散性に優れた酸変性ポリプロピレン系ワックスが得られる。また、反応温度は、例えば、300℃以下、好ましくは、200℃以下である。反応温度が上記上限を下回っていれば、より良好に酸変性ポリプロピレン系ワックスの着色を抑制できる。また、反応時間は、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上である。反応時間が上記下限を上回っていれば、ポリプロピレン系ワックスの溶融を比較的均一にできる。そのため、酸とポリプロピレン系ワックスとを比較的均一に反応させることができる。その結果、水分散性に優れた酸変性ポリプロピレン系ワックスが得られる。また、反応時間は、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。反応時間が上記上限を下回っていれば、より良好に酸変性ポリプロピレン系ワックスの着色を抑制できる。
【0064】
溶液法では、例えば、ポリプロピレン系ワックスと酸とを、公知の有機溶剤に溶解させ、触媒存在下で加熱混合する。これにより、ポリプロピレン系ワックスと酸とを反応させる。有機溶剤としては、例えば、炭化水素類およびハロゲン化炭化水素類が挙げられる。反応温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、100℃以上である。反応温度が上記下限を上回っていれば、ポリプロピレン系ワックスの溶融を比較的均一にできる。そのため、酸とポリプロピレン系ワックスとを比較的均一に反応させることができる。その結果、水分散性に優れた酸変性ポリプロピレン系ワックスが得られる。また、反応温度は、例えば、300℃以下、好ましくは、200℃以下である。反応温度が上記上限を下回っていれば、より良好に酸変性ポリプロピレン系ワックスの着色を抑制できる。また、反応時間は、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上である。反応時間が上記下限を上回っていれば、ポリプロピレン系ワックスの溶融を比較的均一にできる。そのため、酸とポリプロピレン系ワックスとを比較的均一に反応させることができる。その結果、水分散性に優れた酸変性ポリプロピレン系ワックスが得られる。また、反応時間は、例えば、24時間以下、好ましくは、12時間以下である。反応時間が上記上限を下回っていれば、より良好に酸変性ポリプロピレン系ワックスの着色を抑制できる。
【0065】
これにより、ポリプロピレン系ワックスと、上記の酸との反応生成物として、酸変性ポリプロピレン系ワックスが得られる。
【0066】
すなわち、酸変性ポリプロピレン系ワックスは、ポリプロピレン系ワックス(オレフィン成分の重合体)と、上記の酸とを含有する原料成分の反応生成物である。換言すると、酸変性ポリプロピレン系ワックスは、オレフィン成分の重合体と酸とを含有する原料成分の反応生成物である。
【0067】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、プロピレンに由来する構造単位の含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上である。プロピレンに由来する構造単位の含有割合が上記下限を上回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を比較的高くできるため、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、プロピレンに由来する構造単位の含有割合は、例えば、99.9質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。プロピレンに由来する構造単位の含有割合が上記上限を下回っていれば、優れた水分散性が得られる。つまり、水中における酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒径を比較的小さくできる。そのため、優れた貯蔵安定性が得られる。なお、プロピレンに由来する構造単位の含有割合は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される(以下同様)。
【0068】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、0質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。チレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合が上記上限を下回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を比較的高くできるため、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)なお、エチレンおよび/または炭素数4以上のα-オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、後述する実施例に準拠して、13C-NMRにより測定される(以下同様)。
【0069】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、酸に由来する構造単位の含有割合が、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。酸に由来する構造単位の含有割合が上記下限を上回っていれば、優れた水分散性が得られる。つまり、水中における酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒径を比較的小さくできる。そのため、優れた貯蔵安定性が得られる。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、酸に由来する構造単位の含有割合が、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5質量%以下である。酸に由来する構造単位の含有割合が上記上限を下回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を比較的高くできるため、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)
【0070】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価は、1mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上、より好ましくは、20mgKOH/g以上、さらに好ましくは、30mgKOH/g以上、さらに好ましくは、40mgKOH/g以上、とりわけ好ましくは、48mgKOH/g以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価が上記下限を下回ると、水への分散性が低下するため、水中のポリプロピレン系ワックスの粒径が大きくなり、貯蔵安定性が低下する。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価は、200mgKOH/g以下、好ましくは、150mgKOH/g以下、より好ましくは、100mgKOH/g以下、さらに好ましくは、80mgKOH/g以下、とりわけ好ましくは、50mgKOH/g以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価が上記を上回ると、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点が低下するため、樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)の強度が低下する。
【0071】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量(Mw)(ポリプロピレン換算分子量)は、5000以上、好ましくは、10000以上、より好ましくは、20000以上、さらに好ましくは、25000以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量(Mw)が上記下限を下回ると、処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)の被覆率は向上するが、酸変性ポリプロピレン系ワックスが脆化するため、樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)の強度が低下する。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量(Mw)(ポリプロピレン換算分子量)は、50000以下、好ましくは、40000以下、より好ましくは、35000以下、さらに好ましくは、30000以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量(Mw)が上記上限を上回ると、処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)の被覆率が低下し、樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)の強度が低下する。
【0072】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの数平均分子量(Mn)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、2000以上、好ましくは、3500以上、より好ましくは、4000以上、さらに好ましくは、4500以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの数平均分子量(Mn)が上記下限を上回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの脆化を抑制でき、優れた強度の処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)が得られる。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの数平均分子量(Mn)(ポリプロピレン換算分子量)は、例えば、10000以下、好ましくは、7000以下、より好ましくは、6000以下、さらに好ましくは、5000以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの数平均分子量(Mn)が上記上限を下回っていれば、処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)の被覆率を向上できる。その結果、優れた強度の処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)が得られる。
【0073】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの分散度(Mw/Mn)は、例えば、1.5以上、好ましくは、2.0以上、より好ましくは、2.5以上、さらに好ましくは、3.0以上である。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの分散度(Mw/Mn)は、例えば、20.0以下、好ましくは、10.0以下、より好ましくは、8.0以下、さらに好ましくは、6.0以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの分散度(Mw/Mn)が上記上限を下回っていれば、酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒度分布が過度に広くなることを抑制でき、優れた貯蔵安定性が得られる。
【0074】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの密度は、例えば、800kg/cm3以上、好ましくは、820kg/cm3以上、より好ましくは、850kg/cm3以上である。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの密度は、例えば、980kg/cm3以下、好ましくは、950kg/cm3以下、より好ましくは、920kg/cm3以下である。なお、密度は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0075】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点は、例えば、100℃以上、好ましくは、130℃以上、より好ましくは、140℃以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点が上記下限を上回っていれば、優れた強度の樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)が得られる。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点は、例えば、170℃以下、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、142℃以下である。なお、軟化点は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0076】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの180℃溶融粘度は、例えば、300mPa・s以上、好ましくは、500mPa・s以上、より好ましくは、800mPa・s以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの180℃溶融粘度が上記下限を上回っていれば、処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)の被覆率を向上でき、また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの脆化を抑制できるため、優れた強度の処理繊維(後述)および処理フィラー(後述)が得られる。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの180℃溶融粘度は、例えば、1000mPa・s以下、好ましくは、950mPa・s以下、より好ましくは、920mPa・s以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの180℃溶融粘度が上記上限を下回っていれば、優れた水分散性が得られる。つまり、水中における酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒径を比較的小さくできる。そのため、優れた貯蔵安定性が得られる。なお、180℃溶融粘度は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0077】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの色相APHAは、低黄度の観点から、500以下、好ましくは、400以下、より好ましくは、300以下である。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの色相APHAは、通常、100以上である。なお、色相APHAは、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0078】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスの灰分は、低黄度の観点から、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、例えば、120ppm以下、好ましくは、100ppm以下、より好ましくは、80ppm以下、さらに好ましくは、50ppm以下、さらに好ましくは、30ppm以下、さらに好ましくは、20ppm以下、とりわけ好ましくは、10ppm未満である。なお、酸変性ポリプロピレン系ワックスの灰分は、通常、0ppm以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの灰分は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0079】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスのカルシウム含有量が、低黄度の観点から、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、例えば、15ppm以下、好ましくは、10ppm以下、より好ましくは、8ppm以下、さらに好ましくは、7ppm以下、さらに好ましくは、6ppm以下、さらに好ましくは、5ppm以下、とりわけ好ましくは、3ppm以下である。なお、酸変性ポリプロピレン系ワックスのカルシウム含有量は、通常、0ppm以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスのカルシウム含有量は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0080】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスのリン含有量が、低黄度の観点から、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、例えば、15ppm以下、好ましくは、10ppm以下、より好ましくは、8ppm以下、さらに好ましくは、5ppm以下、さらに好ましくは、3ppm以下、さらに好ましくは、2ppm以下、とりわけ好ましくは、1ppm未満である。なお、酸変性ポリプロピレン系ワックスのリン含有量は、通常、0ppm以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスのリン含有量は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0081】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスは、不可避的不純物として、未反応の上記酸を含む場合がある。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスは、不可避的不純物として、上記酸変性における副生成物を含む場合がある。副生成物としては、例えば、酸が挙げられ、より具体的には、例えば、シュウ酸、マロン酸およびコハク酸が挙げられる。以下において、未反応の上記酸と、副生成物である酸とを、遊離酸と総称する。
【0082】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの遊離酸含有量は、酸変性ポリプロピレン系ワックスの総量に対して、例えば、500ppm以下、好ましくは、200ppm以下、より好ましくは、180ppm以下である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの遊離酸含有量が上記上限を下回っていれば、樹脂組成物(例えば、後述する処理繊維および処理フィラー)の製造工程において、遊離酸の熱劣化に由来する色相の劣化を、抑制できる。なお、酸変性ポリプロピレン系ワックスの遊離酸含有量は、通常、0ppm以上である。酸変性ポリプロピレン系ワックスの遊離酸含有量は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0083】
(4)水分散体
酸変性ポリプロピレン系ワックスを水に分散させることにより、水分散体が得られる。酸変性ポリプロピレン系ワックスを水に分散させる方法は、特に制限されない。例えば、酸変性ポリプロピレン系ワックスと水とを、公知の方法で混合および撹拌する。
【0084】
酸変性ポリプロピレン系ワックスの配合割合は、例えば、水100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上である。また、水100質量部に対して、酸変性ポリプロピレン系ワックスの配合割合は、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0085】
また、例えば、酸変性ポリプロピレン系ワックスと水との総量に対して、酸変性ポリプロピレン系ワックスが、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上である。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスと水との総量に対して、酸変性ポリプロピレン系ワックスが、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
【0086】
また、例えば、酸変性ポリプロピレン系ワックスと水との総量に対して、水が、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上である。また、酸変性ポリプロピレン系ワックスと水との総量に対して、水が、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0087】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスと水とを混合する方法および条件は、特に制限されず、公知の混合方法が採用される。これにより、酸変性ポリプロピレン系ワックスの水分散体が得られる。
【0088】
また、水分散体は、必要に応じて、中和剤を含有できる。中和剤としては、酸変性ポリプロピレン系ワックスのカルボキシ基を中和できれば、特に制限されず、公知の中和剤を用いることができる。中和剤の配合割合および配合タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0089】
また、水分散体は、必要に応じて、乳化剤を含有できる。乳化剤としては、例えば、ノニオン乳化剤およびアニオン乳化剤が挙げられる。乳化剤の配合割合および配合タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0090】
また、水分散体は、必要に応じて、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、集束剤、帯電防止剤、潤滑剤、平滑剤、消泡剤、増粘剤、粘着付与剤、硬度付与剤、防腐剤、凍結防止剤、分散剤、顔料および染料が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。添加剤の配合割合および配合のタイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0091】
このような水分散体は、比較的低黄度である。とりわけ、上記の水分散体において、酸変成ポリオレフィン系ワックスの灰分、カルシウム含有量およびリン含有量が、比較的低減されていれば、水分散体は、より低黄度である。そのため、水分散体は、表面処理剤として好適に使用される。
【0092】
(5)表面処理剤
表面処理剤は、上記の水分散体を含んでいる。また、表面処理剤は、必要に応じて、添加剤を含有できる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、集束剤、帯電防止剤、潤滑剤、平滑剤、消泡剤、増粘剤、粘着付与剤、硬度付与剤、防腐剤、凍結防止剤、分散剤、顔料および染料が挙げられる。これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。添加剤の配合割合および配合のタイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0093】
表面処理剤は、上記の水分散体を含んでいるため、比較的低黄度である。そのため、表面処理剤は、表面処理剤(上記水分散体)の乾燥物を含む樹脂組成物の製造において、好適に用いられる。このような樹脂組成物としては、例えば、処理繊維および処理フィラーが挙げられる。
【0094】
(6)処理繊維
処理繊維は、繊維と、上記の表面処理剤の乾燥物とを備える。繊維としては、例えば、無機繊維および有機繊維が挙げられる。無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、岩石繊維およびスラッグ繊維が挙げられる。有機繊維としては、例えば、オレフィン繊維、アミド繊維およびパルプ繊維が挙げられる。これら繊維は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0095】
表面処理剤の乾燥物は、酸変性ポリプロピレン系ワックスを含む樹脂層である。乾燥物は、繊維の少なくとも一部を被覆する。乾燥物による繊維の被覆率は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0096】
処理繊維の製造方法は、特に制限されないが、繊維の表面に、表面処理剤を塗布および熱処理する。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレーコート法およびロールコート法が挙げられる。熱処理条件としては、表面処理剤および繊維に応じて、適宜設定される。例えば、熱処理温度は、100~130℃である。熱処理時間は、例えば、1~12時間である。
【0097】
このような処理繊維は、上記の水分散体の乾燥物を含んでいるため、比較的低黄度である。
【0098】
(7)処理フィラー
処理フィラーは、フィラーと、上記の表面処理剤の乾燥物とを備える。フィラーとしては、例えば、無機フィラーおよび有機フィラーが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、無機フィラーとしては、例えば、タルク、アルミナ、シリカ、クレー、硫酸バリウム、酸化チタン、カオリン、酸化カルシウム、ガラスバルーン、ベントナイト、マイカ、セリサイト、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライトおよびウィスカーが挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、オレフィン粒子、アクリル粒子、ポリスチレン粒子、メラミン粒子およびフッ素樹脂粒子が挙げられる。これらフィラーは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0099】
表面処理剤の乾燥物は、酸変性ポリプロピレン系ワックスを含む樹脂層である。乾燥物は、フィラーの少なくとも一部を被覆する。乾燥物によるフィラーの被覆率は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0100】
処理フィラーの製造方法は、特に制限されないが、フィラーの表面に、表面処理剤を塗布および熱処理する。塗布方法としては、例えば、浸漬法、スプレーコート法およびロールコート法が挙げられる。熱処理条件としては、表面処理剤およびフィラーに応じて、適宜設定される。例えば、熱処理温度は、100~130℃である。熱処理時間は、例えば、1~12時間である。
【0101】
このような処理フィラーは、上記の水分散体の乾燥物を含んでいるため、比較的低黄度である。
【実施例0102】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0103】
<原料>
1.高分子量ポリプロピレン系樹脂(原料ポリプロピレン系樹脂)
J107G(プライムポリマー社製、ポリプロピレン、MFR30g/10分)
J208(プライムポリマー社製、プロピレン・エチレン共重合体、MFR40g/10分)
【0104】
2.低分子量ポリプロピレン系樹脂(未変性ポリプロピレン系ワックス)
L-C 503NC(Lion Chemtech社製、プロピレン・エチレン共重合体)
CS-53NC(Coschem社製、プロピレン・エチレン共重合体)
【0105】
3.酸変性ポリプロピレン系ワックス
製造例1(酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)の製造)
攪拌装置、窒素導入管、コンデンサーを備えた1.5Lステンレス製熱分解装置に市販のポリプロピレン(商品名J107G、プライムポリマー社製、ポリプロピレン、MFR30g/10分)を200g入れ、系内を充分に窒素置換した。次に、窒素を流入したまま熱分解装置を380℃まで昇温し樹脂を溶融した後、攪拌を開始した。系内の樹脂温度が所定温度に達してから2.5時間加熱し熱分解を実施した。その後、熱分解装置をその後、常温まで冷却することにより、表1に示すポリプロピレン系ワックス(w1)を得た。
【0106】
ポリプロピレン系ワックス(w1)500gをガラス製反応器に仕込み、窒素雰囲気下170℃にて溶融した。次いで、無水マレイン酸26gおよびジ-t-ブチルペルオキシド5.5gを、反応器に3時間かけて連続供給した。次いで、反応器の内容物を1時間加熱反応させた。反応器の内容物を、溶融状態のまま、10mmHg真空中で0.5時間脱気処理して揮発分を除去した。その後、反応器の内容物を冷却し、表2に示す酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)を得た。
【0107】
製造例2(酸変性ポリプロピレン系ワックス(W2)の製造)
製造例1において、ポリプロピレンをJ208(商品名、プライムポリマー社製、プロピレン・エチレン共重合体、MFR40g/10分)とする以外は、製造例1と同様の方法で表1に示すポリプロピレン系ワックス(w2)を得た。
【0108】
さらに、製造例1と同様の方法でポリプロピレン系ワックス(w2)を酸変性することで、表2に示す酸変性ポリプロピレン系ワックス(W2)を得た。
【0109】
製造例3(酸変性ポリプロピレン系ワックス(W3)の製造)
製造例2において、熱分解温度を360℃、熱分解時間を3.5時間とする以外は、製造例2と同様の方法で表1に示すポリプロピレン系ワックス(w3)を得た。
【0110】
さらに、製造例1と同様の方法でポリプロピレン系ワックス(w3)を酸変性することで、表2に示す酸変性ポリプロピレン系ワックス(W3)を得た。
【0111】
製造例4(酸変性ポリプロピレン系ワックス(W4)の製造)
製造例1と同様の方法でL-C 503NC(商品名、Lion Chemtech社製、プロピレン・エチレン共重合体)を酸変性することで、表2に示す酸変性ポリプロピレン系ワックス(W4)を得た。
【0112】
製造例5(酸変性ポリプロピレン系ワックス(W5)の製造)
製造例1と同様の方法で CS-53NC(商品名、Coschem社製、プロピレン・エチレン共重合体)を酸変性することで、表2に示す酸変性ポリプロピレン系ワックス(W5)を得た。
【0113】
<物性測定>
ポリプロピレン系ワックスおよび酸変性ポリプロピレン系ワックスの物性を、以下の方法で測定した。その結果を表1および表2に示す。
【0114】
1.13C-NMR測定
ポリプロピレン系ワックスについて、エチレンに由来する構成単位の含有割合と、プロピレンに由来する構造単位の含有割合とを、13C-NMRスペクトルの解析によって求めた。
【0115】
また、酸変性ポリプロピレン系ワックスについて、エチレンに由来する構成単位の含有割合と、プロピレンに由来する構造単位の含有割合と、酸に由来する構造単位の含有割合とを、13C-NMRスペクトルの解析によって求めた。
【0116】
測定条件を下記する。
装置;AVANCEIIIcryo-500型核磁気共鳴装置、ブルカー・バイオスピン社製
測定周波数;125MHz
溶媒;オルトジクロロベンゼン/ベンゼン-d6(4/1v/v)
サンプル濃度;60mg/0.6ml
測定温度;120℃
スキャン回数;128回
繰返時間;5.5秒
パルス幅;45°
【0117】
2.GPC測定
ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量、数平均分子量および分散度と、酸変性ポリプロピレン系ワックスの重量平均分子量、数平均分子量および分散度とを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定条件を下記する。
【0118】
装置;ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
移動相;o-ジクロロベンゼン
カラム;TSKgel GMH6-HT×2、TSKgel GMH6-HTLカラム×2(いずれも東ソー社製)
流速;1.0 ml/分
試料;0.15mg/mL o-ジクロロベンゼン溶液
温度;140℃
検出器;示差屈折計
検量線;市販の単分散標準ポリスチレン(PS)
【0119】
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、汎用較正法により、ポリプロピレン換算値(PP換算値)として求めた。
【0120】
3.密度
ポリプロピレン系ワックスおよび酸変性ポリプロピレン系ワックスの密度を、JIS K 7112(1999)に準拠して測定した。
【0121】
4.軟化点
ポリプロピレン系ワックスおよび酸変性ポリプロピレン系ワックスの軟化点を、JIS K 2207(1996)に準拠して測定した。
【0122】
5.溶融粘度(180℃)
ポリプロピレン系ワックスおよび酸変性ポリプロピレン系ワックスの溶融粘度(180℃)を、ASTM D2669に準拠して測定した。
【0123】
6.色相APHA
ポリプロピレン系ワックスおよび酸変性ポリプロピレン系ワックスの色相APHAを、JIS K 0071-1(2017)に準拠して測定した。
【0124】
7.灰分
ポリプロピレン系ワックスの全灰分を、JIS K 7250-2(2006)に準拠して測定した。
【0125】
8.残留カルシウム、残留リン
ポリプロピレン系ワックス中の残留カルシウム量および残留リン量を、ICP質量分析法(ICP-MS)により測定した。測定条件を下記する。
【0126】
前処理;ポリプロピレン系ワックスを加熱しながら硫酸を加えて湿式分解した。
装置;ICP-MS/MS Agilent8900型(アジレント・テクノロジー社製)
【0127】
9.酸価
酸変性ポリプロピレン系ワックスの酸価を、JIS K 5902(2006)に準拠して測定した。
【0128】
10.遊離酸(残留マレイン酸および残留コハク酸)
酸変性ポリプロピレン系ワックスの残留マレイン酸量および残留コハク酸量を、高速液体クロマトグラフィーにより測定した。測定条件を下記する。
【0129】
装置;LC4A型(島津製作所社製)
移動相;アセトニトリル(25%)/水(75%)
カラム;ZORBAX ODS(アジレント・テクノロジー社製)
流速;1ml/分
試料;酸変性ポリプロピレン系ワックス1g、キシレン40mL、および、水20mLを、500mL三角フラスコに入れて、95℃で1時間攪拌した。次いで、フラスコを室温に冷却し、フラスコ内にメタノール200mLを加えた。その後、内容物の不溶解成分を、ろ紙(No.2)でろ過した。その後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた残渣にメタノール20mLを添加した。これを測定試料とした。
温度;25℃
検出器;SPD-2A型(島津製作所社製)
検量線;濃度既知のマレイン酸水溶液およびコハク酸水溶液を調製し検量線を作成した。
【0130】
<酸変性ポリプロピレン系ワックスの水分散体>
実施例1
内容積4Lの耐圧ホモミキサーに、水1150gおよび水酸化ナトリウム8.3g(酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)の無水マレイン酸に対して0.55当量)を入れ、180℃に加熱して5000rpmで攪拌しなから溶融状態の酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)450gをギアーポンプによって1時間で供給した。さらに1時間撹拌後、室温まで冷却し、表3に示す水分散体(EM-1、固形分濃度=30質量%)を得た。
【0131】
実施例2
実施例1において、酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)を酸変性ポリプロピレン系ワックス(W2)とする以外は、実施例1と同様の方法で水分散体を調整し、表3に示す水分散体(EM-2、固形分濃度=30質量%)を得た。
【0132】
実施例3
実施例1において、酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)を酸変性ポリプロピレン系ワックス(W3)とする以外は、実施例1と同様の方法で水分散体を調整し、表3に示す水分散体(EM-3、固形分濃度=30質量%)を得た。
【0133】
比較例1
実施例1において、酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)を酸変性ポリプロピレン系ワックス(W4)とする以外は、実施例1と同様の方法で水分散体を調整し、表3に示す水分散体(EM-4、固形分濃度=30質量%)を得た。
【0134】
比較例2
実施例1において、酸変性ポリプロピレン系ワックス(W1)を酸変性ポリプロピレン系ワックス(W5)とする以外は、実施例1と同様の方法で水分散体を調整し、表3に示す水分散体(EM-5、固形分濃度=30質量%)を得た。
【0135】
<物性測定>
酸変性ポリプロピレン系ワックスの水分散体の物性を、以下の方法で測定した。その結果を表3に示す。
【0136】
1.色相
酸変性ポリプロピレン系ワックスの水分散体を色差系にてb値を測定し以下の評点とした。
3点:0.15未満
2点:0.16以上0.30未満
1点:0.31以上
【0137】
2.ろ過性
酸変性ポリプロピレン系ワックスの水分散体(1kg)を金属メッシュ(目開き10μm,ろ過面積50cm2)でろ過した時の所要時間を測定した。評価基準を下記する。
3点:1分未満
2点:1分~1分30秒未満
1点:1分30秒以上
【0138】
3.貯蔵安定性
酸変性ポリプロピレン系ワックスの水分散体をメスシリンダー(容積200mL)に入れ、7日間経過後の外観を観察した。評価基準を下記する。
【0139】
3点:全体が均一であるか、または、酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒子が沈降して上部に透明な層が生じており、透明層の全深さに対する割合が、1%未満である。
2点:酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒子が沈降して上部に透明な層が生じており、透明層の全深さに対する割合が、1%以上5%未満である。
1点:酸変性ポリプロピレン系ワックスの粒子が沈降して上部に透明な層が生じており、透明層の全深さに対する割合が、5%以上である。
【0140】
【0141】
【0142】