(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119509
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】食品組成物、及び食品組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 29/256 20160101AFI20230821BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20230821BHJP
A23L 11/00 20210101ALI20230821BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20230821BHJP
【FI】
A23L29/256
A23L11/65
A23L11/00 Z
A23C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022458
(22)【出願日】2022-02-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・ウェブサイトのアドレス (1)https://www.aohata.co.jp/products/hitokuchi/4562452231587.html 掲載日 2022年2月9日 (2)https://www.aohata.co.jp/news/release/20220209.html 掲載日 2022年2月9日 (3)https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%B2%E3%83%8F%E3%82%BF-%E3%81%B2%E3%81%A8%E3%81%8F%E3%81%A1%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC-10g%C3%974-%C3%974%E5%80%8B/dp/B09R46NXB6/ref=sr_1_1?qid=1645001636&refinements=p_n_date%3A82803051&s=food-beverage&sr=1-1 掲載日 2022年2月9日 (4)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000024209.html 掲載日 2022年2月9日 (5)https://fv1.jp/80436/ 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (6)https://www.excite.co.jp/news/article/Prtimes_2022-02-09-24209-48/ 掲載日 2022年2月9日 (7)https://straightpress.jp/20220215/644023 掲載日 2022年2月9日 (8)https://www.zaikei.co.jp/releases/1565975/ 掲載日 2022年2月9日 (9)https://www.jiji.com/jc/article?k=000000048.000024209&g=prt 掲載日 2022年2月9日 (10)https://shikiho.jp/news/7/000000048000024209 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (11)https://www.nikkei.com/article/DGXLRSP626590_Z00C22A2000000/ 掲載日 2022年2月9日 (12)https://gourmetpress.net/831799/ 掲載日 2022年2月9日 (13)https://beauty.oricon.co.jp/pressrelease/1104422/ 掲載日 2022年2月9日 (14)https://www.oricon.co.jp/pressrelease/1104364/ 掲載日 2022年2月9日 (15)http://news.jorudan.co.jp/docs/news/detail.cgi?newsid=PT000048A000024209 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (16)https://business.nifty.com/cs/catalog/business_release/catalog_prt000000048000024209_1.htm 掲載日 2022年2月9日 (17)https://ure.pia.co.jp/articles/-/1333318 掲載日 2022年2月9日 (18)https://ure.pia.co.jp/articles/-/1333323 掲載日 2022年2月9日 (19)https://news.biglobe.ne.jp/economy/0209/prt_220209_4155670558.html 掲載日 2022年2月9日 (20)https://news.infoseek.co.jp/article/prtimes_000000048_000024209/ 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (21)https://www.newscafe.ne.jp/release/prtimes2/20220209/924567.html 掲載日 2022年2月9日 (22)http://30min.jp/release/prtimes/detail/263325 掲載日 2022年2月9日 (23)https://www.foods-ch.com/news/press_1559896/ 掲載日 2022年2月9日 (24)https://www.foods-ch.com/news/prt_133087/ 掲載日 2022年2月9日 (25)https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/search/../detail.page?IMNEWS4=3076747 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (26)https://news.allabout.co.jp/articles/p/000000048.000024209/ 掲載日 2022年2月9日 (27)https://news.nicovideo.jp/watch/nw10508653 掲載日 2022年2月9日 (28)https://president.jp/ud/pressrelease/6203868d776561255c0d0000 掲載日 2022年2月9日 (29)https://www.kk-bestsellers.com/articles/-/press_release/1316944/ 掲載日 2022年2月9日 (30)https://www.mapion.co.jp/news/release/000000048.000024209/ 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (31)https://minkabu.jp/news/3201118 掲載日 2022年2月9日 (32)https://www.iza.ne.jp/kiji/pressrelease/news/220209/prl22020918100756-n1.html 掲載日 2022年2月9日 (33)https://www.sankei.com/economy/news/220209/prl2202090756-n1.html 掲載日 2022年2月9日 (34)https://medical.jiji.com/prtimes/93601 掲載日 2022年2月9日 (35)https://kurashinista.jp/pressrelease/detail/287402 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (36)https://dime.jp/company_news/detail/?pr=1044524 掲載日 2022年2月9日 (37)https://www.asahi.com/and/pressrelease/414573815/ 掲載日 2022年2月9日 (38)https://toyokeizai.net/ud/pressrelease/62038acc7765618595070000 掲載日 2022年2月9日 (39)https://yab.yomiuri.co.jp/adv/feature/release/detail/000000048000024209.html 掲載日 2022年2月9日 (40)https://jbpress.ismedia.jp/ud/pressrelease/6203868177656102980c0000 掲載日 2022年2月9日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (41)https://mainichi.jp/articles/20220209/pls/00m/020/037000c 掲載日 2022年2月9日 (42)https://news.livedoor.com/article/detail/21655344/ 掲載日 2022年2月10日 (43)https://www.mylifenews.net/food/2022/02/post-4710.html 掲載日 2022年2月10日 (44)https://mognavi.jp/product/587613 掲載日 2022年2月10日 (45)https://getnews.jp/archives/3220504 掲載日 2022年2月15日
(71)【出願人】
【識別番号】591116036
【氏名又は名称】アヲハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】松田 さとみ
(72)【発明者】
【氏名】岡田 雄治
(72)【発明者】
【氏名】谷内 善信
【テーマコード(参考)】
4B001
4B020
4B041
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC21
4B001AC22
4B001BC03
4B001BC08
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4B020LB27
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4B041LP01
4B041LP04
4B041LP17
(57)【要約】
【課題】タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えた、食品組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る食品組成物は、pH2.6以上であり、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH2.6以上であり、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質と、を含む、食品組成物。
【請求項2】
pH2.8以上であり、前記タンニン酸100質量部に対する前記タンパク質の量が133質量部以上である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項3】
pH2.8以上であり、前記タンニン酸100質量部に対する前記タンパク質の量が212質量部以上である、請求項1に記載の食品組成物。
【請求項4】
前記タンパク質が大豆タンパク質である、請求項1~3のいずれか1項に記載の食品組成物。
【請求項5】
豆乳を含むことによって前記大豆タンパク質を含む、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質とを混合し、pH2.6以上の食品組成物を得る、食品組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物、及び食品組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンニンと寒天が含まれた寒天組成物が記載されている。また、特許文献1には、タンニンが寒天によるゲル化を阻害することも記載されている。
【0003】
特許文献2には、タンニンを含むポリフェノールは、渋みが強いことが記載されており、ポリフェノールを寒天と結合させ、水不溶性にする方法が記載されている。特許文献3には、プロントシアニジンに脱脂粉乳、分離大豆蛋白、粉末寒天、又はうるち米粉を添加する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-182922号公報
【特許文献2】特開2013-021948号公報
【特許文献3】特開2001-046037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
寒天によって食品の粘性を上げたりゲル化したりすることがある。しかし、pHが低く、且つ、タンニン酸を含むと、寒天によるゲル化の機能が阻害され、食品の粘性を上げたり、ゲル化したりすることができない場合がある。
【0006】
そこで、本発明の一態様は、低pHであり、かつ、タンニン酸を含んでいても、寒天によって粘性を高めたり、ゲル化させたりし易くすることを目的とする。その結果の一態様として、低pHであり、かつ、タンニン酸を含んでいても、寒天によって粘性が高められたり、ゲル化したりした食品組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、所定の範囲のpHにおいて、寒天と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質とを、タンニン酸を含む食材に添加することにより、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
(1)pH2.6以上であり、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質と、を含む、食品組成物、
(2)pH2.8以上であり、前記タンニン酸100質量部に対する前記タンパク質の量が133質量部以上である、(1)に記載の食品組成物、
(3)pH2.8以上であり、前記タンニン酸100質量部に対する前記タンパク質の量が212質量部以上である、(1)に記載の食品組成物、
(4)前記タンパク質が大豆タンパク質である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の食品組成物、
(5)豆乳を含むことによって前記大豆タンパク質を含む、(4)に記載の食品組成物、
(6)寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質とを混合し、pH2.6以上の食品組成物を得る、食品組成物の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、低pHであり、かつ、タンニン酸を含んでいても、寒天によって粘性を高めたり、ゲル化させたりし易くすることができる。その結果の一態様として、低pHであり、かつ、タンニン酸を含んでいても、寒天によって粘性が高められたり、ゲル化したりした食品組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の特徴>
本発明の一態様である食品組成物は、pH2.6以上であり、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質(以下、「植物性タンパク質等」という)と、を含むことに特徴を有する。
【0011】
本発明の一態様によれば、植物性タンパク質等を含むことにより、低pH(pH2.6以上)であり、かつ、タンニン酸を含んでいても、寒天によって粘性を高めたり、ゲル化したりし易くなる。つまり、植物性タンパク質等を含むことで、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えることができる。その結果、植物性タンパク質等を含まない食品組成物と比較して、植物性タンパク質等を含む食品組成物は、食品組成物が低pHでありタンニン酸を含んでいても、粘性が高まり易い。よって、食品組成物の食材にpHを低下させる成分、及び、タンニン酸を含んでいても、植物性タンパク質等、及び寒天の量を調整することによって、容易に、所望の粘性の食品組成物、又は、ゲル状の食品組成物を提供することができる。
【0012】
その理由は次の通りである。つまり、タンニン酸と、植物性タンパク質等と、を含むことによって、植物性タンパク質等がタンニン酸を吸着する。これにより、本発明の一態様における食品組成物は、pH2.6以上であり、且つ、タンニン酸を含んでいても、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑え、寒天によって粘性を高めたり、ゲル化させたりし易くすることができる。
【0013】
また、本発明によれば、植物性タンパク質等及び寒天を含むことにより、タンニン酸の渋みを抑えた食品組成物を提供することができる。
【0014】
<本発明の一態様に係る好ましい食品組成物>
本発明の一態様に係る食品組成物において、食品組成物の粘性をより高め易くする観点から、pH2.8以上の場合、タンニン酸100質量部に対する植物性タンパク質等の量は133質量部以上であることが好ましく、177質量部以上であることがより好ましい。pH3.0以上の場合、106質量部以上であることが好ましく、177質量部以上であることがより好ましい。pH3.4以上の場合、53質量部以上であることが好ましく、151質量部以上であることがより好ましい。また、本発明の一態様に係る食品組成物において、食品組成物をゲル状にし易くする観点から、pH2.8以上の場合、タンニン酸100質量部に対する植物性タンパク質等の量は212質量部以上であることが好ましく、265質量部以上であることがより好ましい。pH3.0以上の場合、177質量部以上であることが好ましく、265質量部以上であることがより好ましい。pH3.4以上の場合、88質量部以上であることが好ましく、177質量部以上であることがより好ましい。また、例えば、タンニン酸100質量部に対する植物性タンパク質等の量は、2650質量部以下であってもよい。また、食品組成物の粘性をより高め易くする観点及びゲル状にし易く観点のいずれにおいても、前記pH3.0以上の場合は、pH2.8以上の好ましい範囲やより好ましい範囲を満たすことも好ましく、前記pH3.4以上の場合は、pH2.8以上及びpH3.0以上の好ましい範囲やより好ましい範囲を満たすことも好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る食品組成物において、タンニン酸の含有量に合わせて当業者が適宜、植物性タンパク質等の含有量を増やすことにより、所望の粘性の食品組成物、又は、ゲル状の食品組成物を得ることができる。例えば、食品組成物100gに対するタンニン酸の質量が200mg以下の場合、食品組成物100gに対する植物性タンパク質等の質量が、265mg以上が好ましい。また、食品組成物100gに対するタンニン酸の質量が300mg以下の場合、食品組成物100gに対する植物性タンパク質等の質量が、530mg以上が好ましい。また、食品組成物100gに対するタンニン酸の質量が600mg以下の場合、食品組成物100gに対する植物性タンパク質等の質量が、1060mg以上が好ましい。
【0016】
<植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質>
本発明の一態様に係る食品組成物は、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質を含む。植物性タンパク質等の種類は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。また、植物性タンパク質等は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
植物性タンパク質は、植物由来のタンパク質であればよく、例えば、豆由来タンパク質、種子由来タンパク質、及び穀物由来タンパク質が挙げられる。豆由来タン
パク質としては、大豆、エンドウ豆、インゲン豆等に由来するタンパク質を例示することができる。種子タンパク質としては、ゴマ、ココナッツ、ひまわり、アーモンド等に由来するタンパク質を例示することができる。穀物由来タンパク質としては、トウモロコシ、小麦、米等に由来するタンパク質を例示することができる。乳タンパク質は、動物の乳由来のタンパク質であればよく、例えば、生乳、牛乳、水牛乳、やぎ乳、羊乳、馬乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳に含まれる乳タンパク質が挙げられ、このような乳タンパク質として、ホエイタンパク質、カゼイタンパク質等が挙げられる。本発明の一態様において、植物性タンパク質等は、大豆タンパク質であることが好ましい。
【0018】
本発明の一態様に係る食品組成物は、植物性タンパク質等を、タンパク質抽出物として含んでいてもよく、植物性タンパク質等を含む食材を含んでいてもよい。タンパク質を含む食品としては、例えば、生クリーム、バター、チーズ、豆乳等が挙げられる。
【0019】
<pH>
本発明の一態様に係る食品組成物において、pH2.6以上である。pHが2.6以上であっても、本発明に一態様によれば、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えることができる。したがって、所望の粘性、又はゲル状の食品組成物を提供することができる。また、pHは、粘性を高めたり、ゲル化させたりすることをより容易にする観点から2.8以上がより好ましい。また、本発明の一態様は、低pHであっても粘性の向上、ゲル化を容易にするところにあるから、pHの上限値は特に制限されず、適宜設定可能である。例えば、酸性食品の製造の観点から、pHは4.6以下であってもよく、4.0以下が好ましい。
【0020】
本明細書において、pHは常温(25℃)でのpHを意味する。また、本明細書においてpHは、食品組成物のpHを意味しているが、後述の実施例では、食品組成物の材料を全て混ぜ合わせた後、寒天を固める操作をする前に測定したpHの値を示している。当該操作によって寒天が固まった例においても、寒天が固める前と後とにおいて同じ温度で比較する場合、pHに影響はない。したがって、食品組成物がゲルである態様においても、寒天が固まる前のpHは、最終的な食品組成物のpHを示している。pHは、当業者に公知の方法を用いて測定することが可能である。
【0021】
<寒天>
本発明の一態様に係る食品組成物は、寒天を含む。寒天は、テングサ、オゴノリ等、一般に寒天製造に使用される海藻を原料にしたものであればよく、市販されている寒天を使用すればよい。所望の粘性、又はゲルの硬さに合わせて、適宜選択することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る食品組成物において、寒天の含有量は、所望の粘性の食品組成物、又は、ゲル状の食品組成物に合わせて、適宜調整することができる。なお、前述のタンニン酸100質量部に対する植物性タンパク質等の量の好ましい範囲において、寒天の量は、食品組成物全体に対して0.2質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、また、上限値は所望の粘度及び硬さによって適宜設定すればよいが、例えば、寒天の溶解特性上、3質量%以下である。
【0023】
<タンニン酸>
本発明の一態様に係る食品組成物は、タンニン酸を含む。タンニン酸は、果実等に含まれるポリフェノールの1種であり、寒天によるゲル化を阻害する。本発明の一態様に係る食品組成物は、抽出して精製されたタンニン酸を含んでもよく、タンニン酸を含む食材を含むことにより、タンニン酸を含んでいてもよい。また、精製されたタンニン酸とタンニン酸を含む食材との両方を含んでいてもよい。
【0024】
<タンニン酸を含む食材>
本発明の一態様に係る食品組成物の製造方法において、タンニン酸を含む食材は、タンニン酸を含んでいれば、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。タンニン酸を含む食材は、例えば、茶葉、ワイン、コーヒー、果物等が挙げられる。タンニン酸を含む食材は、果物が好ましく、ラズベリー、クランベリー、渋柿、ブドウ、うめ、ブラックカラント等がより好ましい。
【0025】
<破断強度>
破断強度は、硬さを示すパラメータであり、対象の試料が破断するときの強度を示す。例えば、次の方法で測定することができる。つまり、厚さ10mmの食品組成物を測定装置に設置し、直径8.0mmのプランジャーで、圧縮率80%、測定前待機温度20℃、測定温度は室温、測定速度1.0mm/secの条件で測定して、試料が破断した時の力を破断強度とする。本明細書において、室温は約20℃である。
【0026】
<好ましい破断強度>
本発明の一態様に係る食品組成物は、破断強度が、ゲルの保形性、喫食性の観点から、0.3N以上であることが好ましく、0.4N以上であることがより好ましい。
【0027】
<添加物>
本発明の一態様に係る食品組成物は、添加物が添加されていてもよい。添加物は、本発明の効果が損なわれないものであればよく、例えば、着色料、香料、甘味料、酸味料、酢酸Ca、酵素等が挙げられる。
【0028】
<糖度>
本発明の一態様に係る食品組成物の糖度は、特に限定されず、当業者が適宜調整することができる。糖度は、例えば、タンニン酸を含む食材又は添加物等によって調整してもよい。本発明の一態様に係る食品組成物の糖度は、例えば、Bx20度以上に調整することができる。糖度は、公知の方法によって測定することができる。
【0029】
<食品組成物の製造方法>
本発明の一態様に係る食品組成物の製造方法は、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質とを混合し、pH2.6以上の食品組成物を得る。本発明の一態様に係る食品組成物の製造方法によれば、植物性タンパク質等を含むことにより、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えた、pH2.6以上の食品組成物を得ることができる。よって、植物性タンパク質等、寒天の量を調整することにより、所望の粘性の食品組成物、又は、ゲル状の食品組成物を得ることができる。食品組成物の構成については、前述した通りであるため、同じ説明は繰り返さない。
【0030】
また、本発明の一態様に係る食品組成物の製造方法によれば、寒天と、タンニン酸と、タンパク質とを混合することにより、pH2.6以上のタンニン酸の渋みを抑えた食品組成物を得ることができる。
【0031】
<混合>
混合は、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質等とを混合する。植物性タンパク質等が混合されることによって、pH2.6以上の食品組成物においてタンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えることができる。よって、混合するタンパク質及び寒天の量を調整することにより、所望の粘性の食品組成物、又は、ゲル状の食品組成物を得ることができる。混合は、公知の方法を用いて行えばよい。混合温度は、寒天を混合できる温度に適宜調整すればよい。混合するタンニン酸は、タンニン酸を含む食材であってもよく、精製されたタンニン酸であってもよい。また、精製されたタンニン酸とタンニン酸を含む食材との両方を混合してもよい。
【0032】
また、混合する工程と共に、又は、別に、pHを調整する工程を行なってもよい。例えば、所望の食材を混合したときにpHが2.6未満になるのであれば、2.6以上に調整してもよく、2.6以上であっても、食品の用途等の観点から所望のpHがより高い場合は、所望のpHに調整してもよい。pHを調整する方法は従来公知の方法を適宜採用できる。
【0033】
<他の工程>
本発明の一態様に係る食品組成物の製造方法は、混合の前又は後に他の工程を含んでもよい。他の工程は、本発明の効果が損なわれないものであればよく、例えば、食材の前処理等を行なう原料調整工程、食材又は製造された食品組成物の殺菌を行なう殺菌工程等が挙げられる。また、本発明の一態様に係る食品組成物の製造方法によれば、pH2.6以上の食品組成物に常温流通を想定した加熱殺菌を施すことができる。つまり、本発明の一態様によれば、低pHであっても、寒天による増粘、ゲル化の機能が発揮されるので、常温流通するために、一般的に食品に加えられる熱量によっても、食品の粘性、ゲル状は維持される。
【0034】
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例0035】
[実施例1:大豆タンパク質を用いた食品組成物の破断強度試験]
表1に示す濃度にように、タンニン酸、大豆タンパク(フジプロCL、タンパク含有量:90.0%、不二製油株式会社製)、クエン酸(扶桑化学工業株式会社)を混合して、残部を水とし、対照のサンプル及び食品組成物を得た。食品組成物のpHは2.8であった。その後、然るべき殺菌用の容器に充填密封し80~95℃で10~20分の加熱に相当する熱量で殺菌を行った。
【0036】
<pH>
食品組成物のpHは、pHメーター HM-30R型(東亜ディーケーケー株式会社製)によって測定した。
【0037】
その結果、食品組成物では沈殿物が検出された。これは、大豆タンパク質がタンニン酸を吸着して沈殿したものである。
【0038】
次に、対照と、食品組成物の上澄みとに、寒天(UP-37K、伊那食品工業株式会社製)を0.5質量%となるように添加した。その後、20℃で24時間静置した。その後、それぞれの破断強度を測定した。
【0039】
得られた食品組成物のタンニン酸濃度及び破断強度を測定した。
【0040】
<破断強度>
クリープメータ(株式会社山電製、RHEONERII RE2-33005C)を用いて測定した。測定条件を以下に示す。食品組成物は、測定装置に設置して測定した。
(測定条件)
測定モード:圧縮破断荷重
プランジャー直径:8.0mm
圧縮率:80%
圧縮速度:1mm/sec
測定雰囲気温度:室温(約20℃)
測定前待機温度:20℃
【0041】
以上の結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1から、寒天と、タンニン酸と、大豆タンパク質と、を含むことによって、タンニン酸濃度が減少し、破断強度が増加した。したがって、タンニン酸が大豆タンパク質によって吸着され、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑制することが示された。
【0044】
[実施例2:各条件による食品組成物の破断強度試験]
次に、タンニン酸に対する植物性タンパク質等の量の影響を確認した。使用する豆乳の量を変化させることで、大豆タンパク質の量を変化させた。表2に記載の量の低脂肪豆乳(大豆タンパク質含有量:5.3%、不二製油株式会社製)、タンニン酸及び0.5質量%の寒天(UP-37K、伊那食品工業株式会社製)を混合し、pH2.8、pH3.0、又はpH3.4の食品組成物を得た。pHは実施例1と同じ方法を用いて測定した。加えて、実施例1と同じ条件で加熱殺菌を行った。
【0045】
得られた食品組成物の破断強度を測定し、タンニン酸100質量部に対する大豆タンパク質の量を算出した。破断強度は、実施例1と同じ方法で測定し、表3に示す評価基準に基づいて物性の定性評価を行った。結果を表2に示す。また、豆乳中の大豆タンパク質の含有量に基づいて、タンニン酸100質量部に対する大豆タンパク質の含有量を算出した。結果を表4に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
表2に示すように、本発明の一態様に係る食品組成物の定性評価は、すべて2以上であった。定性評価が2以上を示した食品組成物は、粘性が高くなり、3以上を示した食品組成物はゲルを形成した。したがって、豆乳を含む試験区は、豆乳を含まない試験区と比較して、粘性が高い食品組成物となることが示された。また、豆乳の濃度を調整することによって、タンニン酸濃度が高い食品組成物であっても粘性を高められることが示された。
【0050】
[実施例3:タンニン酸を含む食材を含有する食品組成物の評価]
タンニン酸を含む食材、低脂肪豆乳(タンパク質含有量:5.3%、不二製油株式会社製)、及び寒天(UP-37K、伊那食品工業株式会社製)と砂糖(三井製糖株式会社製)を、表5に記載の分量(質量部)で混合し、食品組成物を得た。タンニン酸を含む食材として以下に記載の食材を混合した。加えて、実施例1と同じ条件で加熱殺菌を行った。
【0051】
(タンニン酸を含む食材)
冷凍クランベリー果肉(販売・製造元:Firestone Pacific Foods, Inc.)
【0052】
得られた食品組成物のタンニン酸濃度(mg/100g)、糖度(Bx)、pH、及び破断強度を測定し、さらに官能評価を行った。タンニン酸濃度、pH、及び破断強度は実施例1と同じ方法を用いて測定した。また、破断強度は、実施例2と同じ方法を用いて物性の定性評価を行った。
【0053】
<糖度>
食品組成物の糖度は、糖度計(ATAGO社製、品番:N-1E)を用いて測定した。
【0054】
<官能評価>
各試験区について、訓練されたパネルが下記の評価基準に基づいて渋みの評価を行った。評価が3であれば、好ましい結果といえる。
3:渋みがほとんど感じられない。
2:渋みが少し感じられる。
1:渋みが強く感じられる。
【0055】
【0056】
表5から、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質と、を含む食品組成物は、渋みがほとんど感じられず、タンニン酸の渋みが抑制されていた。
【0057】
実施例1~3から、pH2.6以上であり、寒天と、タンニン酸と、植物性タンパク質及び乳タンパク質のうち少なくとも1種のタンパク質と、を含むことによって、タンニン酸の持つ寒天によるゲル化の阻害機能を抑えた、食品組成物となることが示された。