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特開2023-119555道路点検データ出力装置並びに出力方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119555
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】道路点検データ出力装置並びに出力方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20230821BHJP
   E01C 23/01 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G08G1/00 J
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181624
(22)【出願日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2022022181
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520100550
【氏名又は名称】株式会社スマートシティ技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000233653
【氏名又は名称】ニチレキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003074
【氏名又は名称】弁理士法人須磨特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薛 凱
(72)【発明者】
【氏名】趙 博宇
(72)【発明者】
【氏名】謝 帆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 成則
(72)【発明者】
【氏名】那珂 通大
(72)【発明者】
【氏名】硲 真悠
【テーマコード(参考)】
2D053
5H181
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AA34
2D053AB03
2D053AD01
2D053FA02
5H181AA20
5H181BB05
5H181CC04
5H181DD02
5H181EE11
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181MA48
5H181MC02
5H181MC16
(57)【要約】
【課題】 任意の対象路線についての可能な限り最新の道路点検データを帳票形式で提供することを可能にする道路点検データ出力装置並びに出力方法、コンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】 記憶部に道路点検データとを対応付けて記憶されている道路セグメントを長さ及び幅をもった図形として電子地図上に表示させる手段と、前記セグメントを選択するセグメント選択信号を受け付ける手段と、受け付けたセグメント選択信号に基づいて対応する道路点検データを前記記憶部から読み出して対象道路の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段を有している道路点検データ出力装置及び出力方法並びにそれらを実現するコンピュータプログラムを提供することによって解決する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶部と制御部とを有し、
前記記憶部は、道路をその延長方向に沿って区分する複数のセグメントと、各セグメントに対応する道路部分について得られている道路点検データと、前記道路点検データが取得された日時とを対応付けて記憶しており、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている複数の前記セグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力する手段と、
前記セグメント表示地図信号に含まれる前記セグメントのいずれか一つ又はまとめて複数を選択するセグメント選択信号を、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで受け付ける手段と、
受け付けた前記セグメント選択信号に基づいて、選択されたセグメントに対応する道路点検データであって、取得日時が最新の道路点検データを、前記記憶部から読み出す手段と、
読み出した前記道路点検データを、選択された複数のセグメントから構成される前記対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段を有している、道路点検データ出力装置。
【請求項2】
前記制御部が、さらに、
前記対象路線を構成する選択された複数のセグメントのうち、前記対象路線の延長方向に沿ったいずれか一方端のセグメントを起点セグメント、また他方端を終点セグメントとして、それぞれ記憶する手段を有しており、
前記帳票データとして出力する手段が、読み出した前記道路点検データを、前記起点セグメントから前記終点セグメントに向かう順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段である、請求項1記載の道路点検データ出力装置。
【請求項3】
前記制御部が、さらに、
前記起点セグメントの前記終点セグメントとは反対側の端部位置を起点として、前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を求める手段を有しており、
前記帳票データとして出力する手段が、前記距離を、読み出した前記道路点検データとともに、前記起点セグメントから前記終点セグメントに向かう順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段である、請求項2記載の道路点検データ出力装置。
【請求項4】
前記帳票データとして出力する手段が、前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を、外部入力に基づいて修正して出力する手段を備えている、請求項3記載の道路点検データ出力装置。
【請求項5】
前記道路点検データが、ひび割れ、ポットホール、振動分析結果、又は段差についてのデータ及び/又は評価結果を含んでいる、請求項1~4のいずれかに記載の道路点検データ出力装置。
【請求項6】
前記セグメント表示地図信号を出力する手段が、さらに、前記記憶部に記憶されている各々のセグメントに対応する道路点検データに基づいて、各セグメントの表示態様を異ならせる手段を備えている、請求項5記載の道路点検データ出力装置。
【請求項7】
道路をその延長方向に沿って区分する複数のセグメントであって、記憶部に記憶されているセグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力するステップと、
前記セグメント表示地図信号に含まれる前記セグメントのいずれか一つ又はまとめて複数を選択するセグメント選択信号を、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで受け付けるステップと、
受け付けた前記セグメント選択信号に基づいて、選択された各セグメントに対応する道路点検データであって、取得日時が最新の道路点検データを前記記憶部から読み出すステップと、
読み出した前記道路点検データを、選択された複数のセグメントから構成される前記対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力するステップ、を有している道路点検データ出力方法。
【請求項8】
前記対象路線を構成する選択されたセグメントのうち、前記対象路線の延長方向に沿ったいずれか一方端のセグメントを起点セグメント、他方端を終点セグメントとして、それぞれ記憶するステップを有し、
帳票データとして出力する前記ステップが、読み出した前記道路点検データを、選択された複数のセグメントから構成される前記対象路線の前記起点セグメントから前記終点セグメントに向かう順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力するステップである、請求項7記載の道路点検データ出力方法。
【請求項9】
前記起点セグメントの前記終点セグメントとは反対側の端部位置を起点として、前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を求めるステップを有し、
帳票データとして出力する前記ステップが、求めた前記距離を、選択されたセグメントに対応する道路点検データとともに、前記起点セグメントから前記終点セグメントに向かう順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力するステップである、請求項8記載の道路点検データ出力方法。
【請求項10】
前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を修正する外部入力を受け付けるステップと、
受け付けた前記外部入力に基づいて、帳票データとして出力する前記距離を修正するステップ、を有している、請求項9記載の道路点検データ出力方法。
【請求項11】
前記道路点検データが、ひび割れ、ポットホール、振動分析結果、又は段差についてのデータ及び/又は評価結果を含んでいる、請求項7~10のいずれかに記載の道路点検データ出力方法。
【請求項12】
セグメント表示地図信号を出力する前記ステップが、記憶部に記憶されている各セグメントを、長さ及び幅をもった図形であって、記憶部に記憶されている各セグメントに対応する道路点検データに基づいて表示態様の異なる図形として表示させるセグメント表示地図信号を出力するステップである、請求項11記載の道路点検データ出力方法。
【請求項13】
コンピュータに、請求項7~10のいずれかに記載の道路点検データ出力方法を実行させるためのコンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路点検データを帳票形式で出力する道路点検データ出力装置と出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路は重要な社会インフラであり、その維持・修繕は社会生活を支える上で欠かせないものである。道路には、国道、都道府県道、市町村道などの区別に応じて、それぞれ道路管理者が定められており、道路管理者は、管理対象とする路線ごとに取りまとめられた道路の現況を示す各種データに基づいて、維持・修繕計画の策定や、予想される費用の算出などを行っている(例えば、特許文献1)。
【0003】
これら路線ごとに取りまとめられる各種データの一つとして道路点検データがある。道路点検データは、各種測定装置を搭載した路面性状測定用の専用車両などが実際に対象道路上を走行し、様々な角度から対象道路の損傷の状態や舗装面の劣化の進行状況などを調べることによって得られるデータである。道路点検データは道路の状態を最も端的に表すデータであるが、交通に供されている道路の状態は日々変化するから、道路管理者が維持・修繕計画の策定時に用いる道路点検データは、可能な限り最新のデータであることが望ましい。しかし、専用の測定車両を用いて路線単位で行われる定期点検は、通常、数年に一回程度であるので、定期点検で得られる道路点検データを前提とする限り、対象とする路線についての維持・修繕計画の策定時に、必ずしも現況を正確に反映した道路点検データを使用することができるわけではない。
【0004】
一方、道路管理者は、管理対象としている道路上において、適正に道路交通が確保されているか、不法行為等が行われていないか等を確認するため、日々、パトロール車を巡回させ、管理区域内の監察を行っている。近年、このパトロール車にGPS機能のあるスマートフォンを搭載させ、スマートフォンに装備されている加速度センサーのデータや撮影された画像データなどを解析することによって、巡回監察と同時に、舗装路面のひび割れや凹凸の程度などのデータを取得することが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
このようなパトロール車によれば、スマートフォンを搭載してパトロール車を走行させるだけで道路点検データを取得することができるので、各種測定装置を搭載した専用車両を走行させる場合に比べて、簡単かつ安価に道路点検データを取得することができるという利点がある。しかし、パトロール車は、管理区域内にある管理対象道路の巡回監察が主たる業務であるので、維持・修繕計画が策定される路線とは関わりなく、広範な管理区域内を縦横に走行しており、パトロール車を走行させて得られた道路点検データがそのまま路線の維持・修繕計画の策定に使用できることは極めて稀である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-35104号公報
【特許文献2】特許第6725855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑み為されたもので、必要時に、新たに路面性状測定用の専用車両などを走行させることなく、任意の対象路線についての可能な限り最新の道路点検データを帳票形式で提供することを可能にする道路点検データ出力装置並びに出力方法、さらにはそれらを実現するためのコンピュータプログラムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、鋭意研究と試行錯誤を重ねた結果、本発明者らは、一台のパトロール車が一回のパトロールで走行する走行ルートが維持・修繕計画を策定しようとしている対象路線と一致する可能性は極めて低いものの、複数台のパトロール車が、日時を違えて走行した様々な走行ルートを全て集めれば、対象とする路線が起点から終点まですっぽりと包含される蓋然性が極めて高いのではないかとの着想を得た。そして、パトロール車が取得した道路点検データが、通常、道路を延長方向に沿って区分したセグメント単位でデータベース化されている点に着目し、複数台のパトロール車が日時を違えて縦横に走行することによって得た多数の道路点検データから、対象とする路線を構成するセグメントの道路点検データを選び出し、対象とする路線の起点から終点に向かって並べることで、新たに専用車両やパトロール車を対象とする路線上を走行させることなく、任意の路線についての可能な限り最新の道路点検データを収集できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、
記憶部と制御部とを有し、
前記記憶部は、道路をその延長方向に沿って区分する複数のセグメントと、各セグメントに対応する道路部分について得られている道路点検データと、前記道路点検データが取得された日時とを対応付けて記憶しており、
前記制御部は、
前記記憶部に記憶されている複数の前記セグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力する手段と、
前記セグメント表示地図信号に含まれる前記セグメントのいずれか一つ又はまとめて複数を選択するセグメント選択信号を、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで受け付ける手段と、
受け付けた前記セグメント選択信号に基づいて、選択されたセグメントに対応する道路点検データであって、取得日時が最新の道路点検データを、前記記憶部から読み出す手段と、
読み出した前記道路点検データを、選択された複数のセグメントから構成される前記対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段を有している、
道路点検データ出力装置を提供することによって解決するものである。
【0010】
また、本発明は、
道路をその延長方向に沿って区分する複数のセグメントであって、記憶部に記憶されているセグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力するステップと、
前記セグメント表示地図信号に含まれる前記セグメントのいずれか一つ又はまとめて複数を選択するセグメント選択信号を、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで受け付けるステップと、
受け付けた前記セグメント選択信号に基づいて、選択された各セグメントに対応する道路点検データであって、取得日時が最新の道路点検データを前記記憶部から読み出すステップと、
読み出した前記道路点検データを、選択された複数のセグメントから構成される前記対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力するステップ、
を有している道路点検データ出力方法を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0011】
さらに本発明は、コンピュータに、本発明に係る道路点検データ出力方法を実行させるための手順を記載したコンピュータプログラムを提供することによって、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、必要時、新たに路面性状測定用の専用車両やパトロール車に対象とする路線を走行させることなく、任意の路線についての可能な限り最新の道路点検データを道路延長方向順に並べた帳票データとして提供することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る道路点検データ出力装置の構成の一例を示す図である。
図2】パトロール車の走行ルートの一例を示す図である。
図3】パトロール車の走行ルートの他の一例を示す図である。
図4】国道XXのルートを示す図である。
図5】記憶部が記憶しているセグメントを表示した電子地図の一例を示す図である。
図6】電子地図上で一つのセグメントが選択された状態を示す図である。
図7】電子地図上で複数のセグメントが選択された状態を示す図である。
図8】国道XXを構成する全セグメントが選択された状態を示す図である。
図9】パトロール車の走行ルートのさらに他の一例を示す図である。
図10】記憶部が記憶しているセグメントを一部車線別に表示した電子地図の一例を示す図である。
図11】電子地図上で車線別に表示されたセグメントが選択された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明に係る道路点検データ出力装置の構成を示す図である。図1において、1は記憶部、2は制御部、3は道路点検データ出力装置であり、基本的に記憶部1と制御部2とによって本発明に係る道路点検データ出力装置3は構成されている。本例において、記憶部1と制御部2は、それぞれサーバであり、インターネット等のネットワーク4を介して相互に随時接続される。記憶部1と制御部2を構成するサーバはクラウドサーバであっても良い。また、記憶部1と制御部2とはネットワーク4を介さずに直接接続されていても良い。
【0015】
5は利用者端末であり、5aはその表示装置、5bはその入出力装置である。利用者端末5はネットワーク4を介して制御部2と随時接続できるようになっている。図1には利用者端末5は一つしか描かれていないけれども、利用者端末5の数は一つに限られず、ネットワーク4には利用者端末5が二つ以上接続されていても良い。
【0016】
6a、6b、6cはパトロール車である。パトロール車6a、6b、6cにはそれぞれスマートフォン又は道路点検データを取得するためのその他の機材が搭載されており、さらに、ネットワーク4を介して記憶部1及び/又は制御部2と随時接続可能な端末装置(図示せず)が搭載されている。パトロール車6a、6b、6cに搭載されている端末装置は、日々のパトロールでスマートフォン又はその他の機材が取得した道路点検データを、そのまま若しくは適宜解析、加工して、ネットワーク4を通じて、記憶部1又は制御部2に送信し、記憶部1はこれを記憶する。
【0017】
このような端末装置は、パトロール車6a、6b、6cの各々に搭載されていることが望ましいが、パトロール車6a、6b、6cが所属する道路管理事務所などに設置されていても良い。前記端末装置が道路管理事務所に設置されている場合には、パトロール車6a、6b、6cは、所属する道路管理事務所などに帰還した時点で、自身に搭載したスマートフォン又はその他の機材によって取得した道路点検データを道路管理事務所に設置された端末装置に出力する。端末装置に出力された道路点検データは、そのまま若しくは適宜解析、加工されて、ネットワーク4を通じて記憶部1又は制御部2に送信され、記憶部1に記憶されることになる。なお、図1には、パトロール車6a、6b、6cは3台しか描かれていないけれども、パトロール車の台数は3台に限られず、4台以上であっても良いことは勿論である。
【0018】
なお、記憶部1及び/又は制御部2は、ネットワーク4を介して、図示しない道路性状測定用の専用車両と随時接続されても良く、道路性状測定用の専用車両から取得した道路点検データを受信し、記憶部1に記憶するように構成されていても良い。以下、記憶部1及び制御部2について、順次説明する。
【0019】
<A:記憶部について>
記憶部1は、道路をその延長方向に沿って区分する複数のセグメントと、複数の前記セグメントの各々に対応する道路部分について得られている道路点検データとを対応付けて記憶する記憶部である。
【0020】
道路をその延長方向に沿って区分する複数のセグメントとは、例えば、道路をその延長方向に沿って、任意の長さに区分した複数の部分を意味する。各セグメントは、通常、その位置情報によって特定される。セグメントの位置情報とは、地図上で若しくは現場にて各セグメントの位置を特定するに足る情報を意味している。例えば、セグメントを、道路の延長方向に長さを有するとともに、道路の横断方向にも幅をもった矩形として定義するときには、その矩形の2つの対頂点の緯度及び経度の情報をその矩形セグメントの位置を特定する位置情報とすることができる。また、前記矩形の道路横断方向の中心点をつなげた中心線と前記矩形の道路延長方向両端部との交点の緯度及び経度の情報を位置情報としても良い。また、セグメントが道路延長方向に沿った長さだけを持ち、道路横断方向に幅を持たない線状セグメントである場合には、その両端部の緯度及び経度をそのセグメントについての位置情報としても良い。さらに、セグメントが直線状でない場合には、その曲折の大きさやその位置についての情報を、セグメントについての位置情報に含めても良い。
【0021】
セグメントの道路延長方向の長さには特段の制限はないが、維持・修繕の際に施工単位とされる道路の延長方向長さを勘案すると、個々のセグメントの道路延長方向の長さは、5m若しくは10m単位で、10~100m程度とするのが良い。複数のセグメントの道路延長方向の長さは各セグメントで必ずしも同じである必要はなく、実際の道路の状況に合わせてセグメント毎に適宜の長さに区分されるのが好ましい。
【0022】
上述したようなセグメントの具体例としては、例えば、OpenStreetMapが公開しているウエイ及び/又は当該ウエイを道路延長方向に適宜の長さに分割若しくは統合したもの、日本デジタル道路地図協会が定義するノード間を連結するリンク及び/又は当該リンクを道路延長方向に適宜の長さに分割若しくは統合したもの、GoogleMapが定義するウエイ及び/又は当該ウエイを道路延長方向に適宜の長さに分割若しくは統合したものなどが挙げられる。さらには、距離標(キロポスト)を基準に設定されたセグメントであっても良い。
【0023】
このように本発明におけるセグメントの定義は限定されず、各セグメントについての位置情報も地図上で若しくは現場にて各セグメントの位置を特定することができるものである限り任意である。ただし、後述するとおり、制御部2は電子地図上の対応する位置に各セグメントを表示させるセグメント表示地図信号を出力する手段を有しているので、セグメントの定義やその位置情報は、制御部2からの出力によってセグメントが表示される電子地図が使用しているウエイ又はリンク等の定義やその位置情報についての取り決めと原則的に一致しているのが望ましい。
【0024】
記憶部1には、上述したセグメントと、そのセグメントに対応する道路部分について得られている道路点検データとが互いに対応付けられて記憶されている。記憶部1に記憶されるセグメントと、当該セグメントに対応する道路部分について得られている道路点検データとの対応付けの態様は問わない。例えば、セグメントIDを介してセグメントと道路点検データとが対応付けられていても良いし、各セグメントの位置情報を介してセグメントと道路点検データとが対応付けられていても良い。なお、好適な一態様においては、記憶部1には、各セグメントに対応する道路部分についての道路点検データが得られた日時に関する情報も記憶される。
【0025】
以下、図と表を用いて、記憶部1に記憶されているデータの一例を具体的に説明する。
【0026】
図2は、或る日時に、パトロール車6aが走行したルートを地図上に示した図である。図2において、Aはパトロール車6aが所属する道路管理事務所である。この日、パトロール車6aは、図2に示すとおり、道路管理事務所Aを出発し、黒塗りで示す経路に沿って、市道ZZ、国道XX、県道YYと走行し、再び市道ZZに戻って、さらに走行を続けている。なお、図中、α-β間は、国道XXと県道YYとの重用区間であるが、路線名としては国道XXを優先して表示している。このようなパトロール車6aの走行に対応して記憶部1に記憶されるデータは、例えば、表1に示すようなものである。
【0027】
【表1】
【0028】
表1には、パトロール車6aが走行した路線名と、走行ルートを構成するセグメントと、各セグメントに対応する道路部分について得られた道路点検データとが、互いに対応付けられて、パトロール車6aの走行順に、セグメント単位で記載されている。表1に示すとおり、パトロール車6aが最初に走行した市道ZZの区間はセグメントID:ZZ2020からZZ2022までの3つのセグメントから構成され、国道XXの区間はセグメントID:XX1001からXX1006までの6つのセグメントから構成され、そして県道YYの区間はセグメントID:YY1033からYY1036の4つのセグメントから構成されている。
【0029】
走行ルートを構成する各セグメントは、セグメントIDとその位置情報(緯度、経度)とで特定されている。表1に示す例においては、位置情報として、緯度、経度の値が用いられているが、電子地図上や現場でセグメントの位置を特定することができる限り、他の位置情報を用いても良い。表1の例においては、各セグメントは線状のセグメントとして定義されており、このような線状のセグメントは、通常、始点及び終点の2点の位置情報で特定される。必要な場合には、緯度、経度といった二次元の位置情報に、高さ情報を加えた三次元の位置情報でセグメントの位置を特定しても良い。
【0030】
表1のセグメントIDの右に記載されている緯度、経度は、当該セグメントの走行ルート終点側端部の緯度、経度である。例えば、表1の上から5行目に位置しているセグメントID:XX1002の右に記載されている緯度、経度は、ID:XX1002のセグメントの走行ルート終点側端部の緯度、経度である。その下の6行目に位置しているセグメントID:XX1003の右に記載されている緯度、経度についても同様である。ただし、隣接するセグメント同士は接しているので、XX1002のセグメントの走行ルート終点側端部の緯度、経度は、続くXX1003のセグメントの走行ルート始点側端部の緯度、経度でもある。したがって、表1には各セグメントの走行ルート始点側端部の緯度、経度については特段の欄を設けて記載されていないけれども、一つのセグメントIDについてその走行ルート始点側端部の緯度、経度を知りたければ、その一つ上の行に位置しているセグメントIDの右側に記載された緯度、経度をみれば良い。したがって、表1には各セグメントを始点及び終点の2点の位置情報で特定する情報が含まれており、これが対応する道路部分について得られた道路点検データとともに記憶部1に記憶されている。
【0031】
因みに、例えば国道XXが、上り車線と下り車線とからなる片側一車線道路である場合には、上り車線を道路延長方向に沿って区分した上り車線セグメントと、下り車線を道路延長方向に沿って区分した下り車線セグメントとを区別して、それぞれのセグメントを始点及び終点の2点の位置情報で特定しても良い。さらには、例えば国道XXが片側二車線の道路である場合には、上り車線セグメントと下り車線セグメントの区別に加えて、路側帯側の車線かセンターライン側の車線かといった走行車線別に区別したセグメントとして、それぞれのセグメントを始点及び終点の2点の位置情報で特定するようにしても良い。国道XXが片側三車線以上の道路である場合にも同様であり、また、県道YYや市道ZZ等についても同様である。
【0032】
なお、表1には、各セグメントの位置情報として、始点と終点の位置情報(緯度、経度)しか示されていないけれども、セグメントが直線状ではなく、曲折した部分を有する場合には、その曲折の位置や大きさについての情報を位置情報として記憶部1が記憶する情報に含めても良い。さらに、前述したとおり、各セグメントの位置情報には高さ方向の位置情報を含めても良い。また、表1においては、各セグメントIDの右には、各セグメントの走行ルート終点側端部の緯度、経度が示されているけれども、これは走行ルート始点側の緯度、経度であっても良く、さらには、各セグメントIDの右に、走行ルートの始点側端部と終点側端部の双方の緯度、経度を示すようにしても良い。
【0033】
このような各セグメントのIDと位置情報は、パトロール車6aに搭載されているスマートフォン、パトロール車6aに搭載されている端末装置又はパトロール車6aが所属する道路管理事務所Aに設置されている端末装置、さらには記憶部1及び制御部2のうちのいずれか一つが有していれば良いが、二つ以上で共有されているのが好ましい。パトロール車6aに搭載されているスマートフォンに装備されているGPSからの信号と、各セグメントの位置情報とがあれば、パトロール車6aに搭載されているスマートフォンはもとより、パトロール車6aに搭載されている端末装置又はパトロール車6aが所属する道路管理事務所Aに設置されている端末装置、さらには記憶部1又は制御部2のいずれにおいても、パトロール車6aが各走行時点においてどのセグメントを走行しているか、若しくは走行していたかを知ることができる。
【0034】
パトロール車6aが各走行時点においてどのセグメントを走行しているか、若しくは走行していたかについての情報と、各時点で得られた道路点検データとを対応付けることによって、パトロール車6aの走行によって得られた道路点検データと、その道路点検データが得られた道路部分が属するセグメントとを対応付けることができる。このような対応付けは、パトロール車6aに搭載されているスマートフォンが行っても良いし、パトロール車6aに搭載されている端末装置又はパトロール車6aが所属する道路管理事務所Aに設置された端末装置が行っても良く、或いは記憶部1及び/又は制御部2が行っても良い。
【0035】
表1において、緯度、経度の右に記載されている「距離自(m)」及び「距離至(m)」は、各セグメントに対応する道路区間において、パトロール車6aが実際に走行した走行距離を、道路点検データの計測を開始した地点からの累積距離として示す数値である。また、「区間長(m)」は、各セグメントに対応する道路区間において、パトロール車6aが実際に走行した距離である。
【0036】
例えば、この日、パトロール車6aは、道路管理事務所Aから出発して、市道ZZのID:ZZ2020のセグメントに入ると直ちに道路点検データの計測を開始し、100m走行して次のセグメントに入ったので、ID:ZZ2020のセグメントの「距離自(m)」は「0」、「距離至(m)」は「100」、「区間長(m)」は「100」である。パトロール車6aは続いてセグメントID:ZZ2021に対応する道路区間を75m走行して次のセグメントに入ったので、ZZ2021のセグメントの「距離自(m)」は「100」、「距離至(m)」は「175」、「区間長(m)」は「75」と表示されている。因みに、パトロール車6aの実際の走行距離は、例えば、パトロール車6aに搭載されているスマートフォンのGPS機能を用いて計測することができる。
【0037】
表1において、道路点検データの欄に記載された「ひび割れ」、「ポットホール」、「表面粗さ(mm/m)」、「段差(cm)」は、パトロール車6aの走行によって取得される道路点検データの種類を表している。「ひび割れ」や「ポットホール」に関しては、パトロール車6aに搭載されたスマートフォンなどに装備されているカメラによって撮影された路面の画像を解析することによって、その程度を判定し、必要に応じて数値化して出力することができる。表1に示した例においては、判定された「ひび割れ」及び「ポットホール」の程度が、軽度から重度まで3つのランクに分けて、それぞれの欄の下に、「1」、「2」、「3」の数字で表示されている。
【0038】
また、「表面粗さ(mm/m)」、「段差(cm)」に関しては、パトロール車6aに搭載されたスマートフォンなどに装備されている加速度計によって計測された加速度データを解析して求めることができる。表1に示した例においては、求められた「表面粗さ」及び「段差」の数値がレベル分けされた数値範囲のどれに該当するものであるのかが表示されている。
【0039】
これらの道路点検データが、表1における同じ行の左側にIDと緯度、経度が記載されているセグメントに対応する道路部分について得られたものであることはいうまでもない。なお、各セグメントに対応する一つの道路区間内で判定若しくは解析された道路点検データにバラツキがある場合には、最も程度が重い判定又は解析結果をもって当該セグメントに対応する道路部分についての判定若しくは解析結果を代表させるのが良い。或いは、判定又は解析結果の最頻値や平均値を当該セグメントに対応する道路部分についての判定若しくは解析結果としても良い。
【0040】
「ひび割れ」、「ポットホール」、「表面粗さ(mm/m)」、「段差(cm)」の右側には、それら道路点検データを取得した日時が記載されている。例えば、表1において、国道XXのID:XX1005のセグメントについての記載された道路点検データは「2110191543」、すなわち、2021年10月19日15時43分に取得されたデータである。
【0041】
なお、表1には、道路点検データとして、「ひび割れ」、「ポットホール」、「表面粗さ(mm/m)」、「段差(cm)」しか示されていないけれども、パトロール車6aの走行によって得られる道路点検データや、記憶部1が記憶する道路点検データは、これら4つの道路点検データに限られるものではない。パトロール車6aの走行によって得られる道路点検データや、記憶部1が記憶する道路点検データには、これら4つの道路点検データ以外の道路点検データが含まれていても良いことは勿論であり、また、これら4つの道路点検データのうち、1つ又は2つ以上が含まれていなくても良い。また、パトロール車6aの走行によって得られる道路点検データや、記憶部1が記憶する道路点検データには、必要に応じて現場の静止画像や動画などの画像データが含まれていても良い。なお、表1の備考欄に記載されている「重用」は、国道XXと県道YYとが同じ区間を走行し、セグメントが重なっていることを表すものである。
【0042】
このように、表1には、パトロール車6aが、或る日時に走行した走行ルートと、その走行ルートを構成するセグメント及びその位置情報と、各セグメントに対応する道路部分について得られた道路点検データ、並びに当該道路点検データの取得日時とが互いに対応づけて含まれており、このような内容の情報が記憶部1には記憶されることになる。
【0043】
なお、表1に例示されるような内容の情報が記憶部1に記憶されるプロセスに特段の制限はない。パトロール車6aに搭載されているスマートフォン又は当該スマートフォンが随時接続されるその他の端末装置から適宜送信されてくる情報が既に表1に例示されるような内容の情報を含んでいる場合には、記憶部1は送信されてきた情報を記憶すれば良い。また、パトロール車6aに搭載されているスマートフォン又は当該スマートフォンが随時接続されるその他の端末装置から送信されてくる情報に不足する情報がある場合には、記憶部1及び/又は制御部2は、自身を含め、他のサーバや端末機器から必要な情報を取得して、表1に例示されるような内容の情報とした上で、記憶部1に記憶すれば良い。
【0044】
図3は、パトロール車による走行ルートの他の一例を示す図であり、或る日時に、パトロール車6bが走行したルートを地図上に示した図である。図3に示すとおり、パトロール車6bは、図外左側の地域から、黒塗りで示す経路に沿って、県道YY、国道XX、市道ZYを走行し、図外右側へと走行を続けている。なお、α-β間は国道XXと県道YYとの重用区間であるが、走行した路線名としては国道XXを優先して表示している。このようなパトロール車6bの走行に対応して記憶部1に記憶されるデータは、例えば、表2に示すようなものである。
【0045】
【表2】
【0046】
表1におけると同様に、表2には、パトロール車6bが走行した路線名と、走行ルートを構成するセグメントと、各セグメントに対応する道路部分について得られた道路点検データとが、互いに対応付けられて、パトロール車6bの走行順に、セグメント単位で並べられている。パトロール車6bが図内で最初に走行した県道YYの区間はセグメントID:YY1023からYY1030までの8つのセグメントから構成され、国道XXの区間はセグメントID:XX1005からXX1011までの7つのセグメントから構成され、そして市道ZYの区間はセグメントID:ZY1015他のセグメントから構成されている。
【0047】
セグメントのID、緯度、経度、その他のセグメントに関する情報は先に表1について説明したと同じであり、道路点検データについても同様である。ただし、表2においては、「ひび割れ」、「ポットホール」、「表面粗さ(mm/m)」、「段差(cm)」の右側に記載されたデータ取得日時は、パトロール車6bが各セグメントを走行して道路点検データを取得した日時であり、例えば、国道XXのID:XX1005のセグメントについての道路点検データは「2108021010」、すなわち、2021年8月2日10時10分に取得されたデータである。なお、表2の備考欄に記載されている「重用」は、表1におけると同様に、国道XXと県道YYとが同じ区間を走行し、セグメントが重なっていることを表すものである。
【0048】
このように、表2には、パトロール車6bが、或る日時に走行した走行ルートと、その走行ルートを構成するセグメント及びその位置情報と、各セグメントに対応する道路部分について得られた道路点検データ、並びに当該道路点検データの取得日時とが互いに対応づけて含まれている。表2に例示されるような内容の情報が、先に表1に基づいて述べた情報や、パトロール車6a、6bが異なる日時及び/又は走行ルートで取得した同様の情報や、その他のパトロール車が異なる日時及び/又は走行ルートで取得した同様の多数の情報とともに、記憶部1には記憶されることになる。
【0049】
なお、パトロール車6bに搭載されているスマートフォンに装備されているGPSからの信号と、前述した各セグメントの位置情報とに基づいて、パトロール車6bが各走行時点においてどのセグメントを走行しているか若しくは走行していたかを知ることができること、そして、各時点においてパトロール車6bが走行していたセグメントと、各時点で得られた道路点検データとを対応付けることによって、パトロール車6bの走行によって得られた道路点検データと、その道路点検データが得られた道路部分が属するセグメントとを対応付けることができることは、先にパトロール車6aの場合を例に説明したとおりである。また、このような対応付けを、パトロール車6bに搭載されているスマートフォンが行っても良いし、その他の端末装置が行っても良いし、場合によっては、記憶部1及び/又は制御部2が行っても良いことも前述したとおりである。さらに、先に表1に例示されるような内容の情報について述べたと同様に、表2に例示されるような内容の情報が記憶部1に記憶されるプロセスには特段の制限はない。
【0050】
なお、記憶部1に記憶される道路点検データには、パトロール車以外の車両が取得した道路点検データや画像、地域住民から寄せられた道路状況に関する情報などが含まれていても良い。それらの情報も、それらが得られたセグメントについての位置情報と対応付けて記憶部1に記憶される。
【0051】
このように記憶部1が記憶する道路点検データとセグメントについての位置情報を含む情報は一つのデータベースを構成している。このようなデータベースは、例えば、スマートフォンを搭載したパトロール車6a、6b、6cを任意のルートで、日々、自在に走行させ、得られた道路点検データを、その道路点検データが得られた道路部分がカバーされるセグメント情報、さらには、その道路点検データが得られた日時に関する情報とともに、記憶部1に送信し、記憶部1がこれを記憶することによって新たに構築することができる。また、同様の作業を継続することによって、データの蓄積量を増大させて日々更新していくことができる。なお、上記データベースとしては、既存のものがあればそれを利用しても良い。ただし、既存のデータベースを利用する場合であっても、その既存のデータベースは、日々、新たなデータが蓄積され、更新されていくものであるのが望ましい。
【0052】
<B:制御部について>
制御部2は、記憶部1に記憶されているデータに基づいて、対象とする任意の路線について、その維持・修繕計画の策定に必要とされる道路点検データを帳票形式で出力する機能を備えている。
【0053】
例えば、維持・修繕計画を策定しようとする路線が図4に示す国道XXであったとする。国道XXは、図4にハッチングを付して示すとおり、市道ZZとの交差点を起点とし、一部、県道YYとの重用区間を経て、市道ZYとの交差点を終点とする路線である。
【0054】
この路線についての道路点検データを帳票形式で出力しようとする場合、利用者は、図1に示す利用者端末5を操作して、制御部2にアクセスし、制御部2が提供する道路点検データ出力システムにログインする。ログインする際の利用者の認証の要否やその認証方法は問わない。
【0055】
<B-1:セグメントの表示>
ログイン後、利用者が利用者端末5を介して適宜対象路線名を入力するか開始ボタンを押すなどして前記道路点検データ出力システムをスタートさせると、制御部2は、記憶部1に記憶されている複数のセグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力する。例えば、記憶部1に記憶されているセグメントが表1及び表2に示すセグメントであるとすると、制御部2は、表1及び表2に示すセグメントを、長さ及び幅をもった図形として電子地図上に表示させるセグメント表示地図信号を出力することになる。記憶部1が記憶しているセグメントが表1及び表2に示したセグメント以外にも存在する場合には、それらを含めて電子地図上に表示させるセグメント表示地図信号が出力されることはいうまでもない。
【0056】
制御部2から出力されたセグメント表示地図信号は、ネットワーク4を介して利用者端末5に送信され、これを受信した利用者端末5の表示装置5aには、複数のセグメントが表示された電子地図が表示される。利用者端末5の表示装置5aに表示される電子地図の一例を図5に示す。
【0057】
先に表1及び表2を例に説明したセグメントは、始点と終点の位置情報(緯度、経度)で特定される線状のセグメントであるが、図5においては、各セグメントは、対応する電子地図上での長さと、各セグメントの始点と終点とを結ぶ直線をその直線を挟んで左右均等に拡大した幅とを持った矩形の図形として電子地図上に表示されている。国道XXを構成する各セグメントにはセグメントIDを付してあるが、便宜上、「XX」の部分は省略してある。
【0058】
セグメントを表示する図5に示すような図形は一例であって、電子地図上に表示されるセグメントを表す図形は、長さと幅をもった任意の形状を有する図形であって良い。例えば、セグメントを表す矩形の幅は図5に示すものよりも狭くても良いし、広くても良い。また、矩形の両端は丸みを帯びていても良いし、鋭角に尖っていても良い。さらに、各矩形は適宜の色彩を有していても良いし、矩形でなくても良く、断続する線分状の図形であっても良い。ただし、後述するとおり、利用者端末5の表示装置5aに表示された電子地図上でセグメントを選択する便宜上、セグメントは、たとえセグメントが線状セグメントである場合であっても、電子地図上での対応する長さに加えて一定程度の幅を持っている図形として電子地図上に表示されるのが望ましい。
【0059】
また、図5においては、各セグメントの間には、交差点部分も含めて、若干の間隔が設けられているが、これはセグメント間の分かれ目を見易くするために便宜上設けられているものであり、図形間の間隔は必須のものではない。複数のセグメントは連続しているので、電子地図上に表示するセグメントを表す図形も、間隔をあけずに連続していても良いことは勿論である。
【0060】
このように、制御部2は、記憶部1に記憶されている複数のセグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力する手段を備えている。また、道路点検データ出力方法としての側面からいえば、制御部2が備える前記手段によって実行されるステップが、記憶部1に記憶されているセグメントを、長さ及び幅をもった図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力するステップに相当する。
【0061】
制御部2が出力するセグメント表示地図信号によって、表示装置5aにセグメントを表示した電子地図を表示させるに際しては、記憶部1に記憶されている各セグメントについての道路点検データに基づいて各セグメントの表示態様を異ならせるようにしても良い。例えば、「ひび割れ」に関していえば、表1及び表2に示すとおり、その程度は軽度から重度へと順に「1」、「2」、「3」の数字で評価され、その評価結果が記憶部1に記憶されているが、これを反映して、電子地図上で「ひび割れ」の程度が最も軽い「1」と評価されているセグメントは例えば緑色、中程度の「2」と評価されているセグメントは黄色、そして、最も重い「3」と評価されているセグメントは赤色といった具合に色分けして表示することができる。これにより、利用者端末5の利用者は、表示装置5aに表示された電子地図上に表示される各セグメントの色の分布をみることで、おおよそどの辺りの道路においてひび割れが進行しているのかを一目で把握することができる。「ポットホール」、「表面粗さ」、「段差」、若しくはその他の道路点検データについても同様である。
【0062】
なお、道路点検データに基づいて異ならせるセグメントの表示態様はセグメントの色だけに限られない。各セグメントを表す図形の幅や形を記憶部1に記憶されている当該セグメントに対応する道路部分についての道路点検データに基づいて異ならせるようにしても良い。
【0063】
また、利用者端末5の表示装置5aの表示画面上に、セグメントの表示形態に反映させることが可能な道路点検データの種類を表示しておき、利用者端末5の利用者がそのいずれかを選択することによって、その選択された道路点検データの違いが電子地図上に表示されるセグメントの表示形態の違いに反映されるようにしても良い。セグメントの表示形態に反映させることが可能な道路点検データの種類を表示装置5aの表示画面上に表示させるには、制御部2が出力するセグメント表示地図信号にそのための信号を含めておけば良い。
【0064】
利用者端末5の利用者が、表示装置5aに表示された道路点検データの中からセグメントの表示態様に反映させる道路点検データを適宜選択すると、その選択信号は制御部2へと送信される。これを受信した制御部2は、記憶部1に記憶されている道路点検データの中から各セグメントについての選択された道路点検データを読み出し、読み出した道路点検データの違いを反映した表示態様として各セグメントを表示するセグメント表示地図信号を出力し、利用者端末5に送信する。例えば、利用者が「ポットホール」を選択すると、表示装置5aに表示される電子地図上でのセグメントの表示態様の違いは「ホットホール」についての各セグメントの評価結果を反映したものとなり、「表面粗さ」を選択すると、表示装置5aに表示される電子地図上でのセグメントの表示態様の違いは「表面粗さ」についての各セグメントの評価結果を反映したものとなる。
【0065】
このように、制御部2が備えるセグメント表示地図信号を出力する手段は、さらに、記憶部1記憶されている各々のセグメントに対応する道路点検データに基づいて、各セグメントの表示態様を異ならせる手段を備えている。これを道路点検データ出力方法という側面からいえば、制御部2が実行するステップは、記憶部1記憶されている各セグメントを、長さ及び幅をもった図形として、かつ、記憶部1に記憶されている対応する道路点検データに基づいて、表示態様の異なる図形として、電子地図上の対応する位置に表示させるセグメント表示地図信号を出力するステップであるということができる。
【0066】
なお、図5に示す例では、各道路について、道路の幅方向には一つのセグメントしか表示されていないけれども、各道路を構成するセグメントが、上り車線/下り車線別、又は走行車線別に区別されている場合には、制御部2は、車線別のセグメントが電子地図上で区別できるように、例えば、各セグメントを表す図形の電子地図上での表示位置や表示形態を異ならせる信号をセグメント表示地図信号に含めて出力するのが良い。ただし、電子地図上に区別可能な状態で車線ごとのセグメントを表示することが困難である場合には、電子地図上には道路の幅方向に一つのセグメントを表示し、電子地図上でそのセグメントが選択されたときに、そのセグメント表示に含まれている車線別のセグメントリストを利用者端末5の表示装置5aに表示して、利用者の選択に委ねるようにしても良い。このような態様も制御部2によって実現することができる。
【0067】
図5に示す電子地図には、対象とする国道XXが起点から終点まで含まれているが、表示装置5aに表示された電子地図に対象とする路線が含まれていない場合には、利用者は、利用者端末5を介して、表示される電子地図を適宜スクロールしたり、拡大、縮小したりして対象とする路線の一部又は全部を表示装置5a中に表示させることができる。表示装置5aに表示される電子地図のスクロールや拡大、縮小要求は、利用者端末5から制御部2へと送信され、これを受信した制御部2は要求に対応したセグメント表示地図信号を出力し、利用者端末5に向けて送信する。
【0068】
<B-2:セグメントの選択>
表示装置5aに表示された電子地図に、維持・修繕計画を策定しようとする路線の一部又は全部が含まれている場合、利用者端末5の利用者は、表示装置5aに表示されている電子地図上で対象とする路線を構成するセグメントを順次選択していけば良い。対象とする路線は、通常、連続する複数のセグメントから構成されているので、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで複数のセグメントを順次選択していくことによって対象とする路線が特定される。セグメントの選択は、例えば、表示されている電子地図上で個々のセグメントをクリックすることによって行うことができる。利用者が、利用者端末5の表示装置5aに表示されているいずれかのセグメントをクリックすると、その信号は当該セグメントの選択信号となってネットワーク4を介して制御部2へと送信される。制御部2はこれを受信し、どのセグメントが選択されたかを記憶する。
【0069】
この選択されたセグメントは、表示装置5aの表示画面に表示されているセグメントであるので、制御部2が出力したセグメント表示地図信号に含まれているセグメントである。したがって、制御部2は、自身が出力したセグメント表示地図信号に含まれるセグメントのいずれか一つを選択するセグメント選択信号を受け付ける手段を有していることになる。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、セグメント表示地図信号に含まれるセグメントのいずれか一つを選択するセグメント選択信号を受け付けるステップが制御部2によって実行されるということになる。
【0070】
対象とする路線を構成するセグメントの選択は、起点とするセグメントから始めて、終点とするセグメントで終了するのが望ましい。この場合には、制御部2は、利用者端末5の表示装置5a上で最初に選択されたセグメントを起点セグメントとして記憶し、最後に選択されたセグメントを終点セグメントとして記憶する。最後に選択されたセグメントであることの指定は、利用者が、例えば、表示装置5aの表示画面上に表示された「選択終了」ボタンをクリックすることで行うことができる。「選択終了」ボタンがクリックされると、制御部2は、そのクリックの直前に選択されたセグメントが最後に選択されたセグメントであると判断し、当該セグメントを終点セグメントとして記憶する。表示装置5aの表示画面上に「選択終了」ボタンを表示させることは、制御部2が利用者端末5に送信するセグメント表示地図信号に必要な命令を含めることによって行うことができる。
【0071】
なお、「選択終了」ボタンがクリックされ、そのクリック信号を制御部2が受信した時点で、もしもセグメント選択信号を受け付けた複数のセグメントをつなぐ経路上に不連続部分、すなわち、選択されていないセグメントが存在するときには、制御部2は、受信した「選択終了」ボタンのクリック信号を無効にするとともに、例えば、「セグメントの選択に漏れがあります」といったメッセージを利用者端末5の表示装置5aに表示させる。このようなメッセージを表示装置5aに表示させることによって、利用者端末5の利用者に漏れのないセグメントの選択を促すことができる。「選択終了」ボタンがクリックされた時点で不連続部分が存在しないときには、制御部2はセグメントの選択が終了したと判断し、次のステップへと進むことになる。
【0072】
対象とする路線を構成するセグメントの選択の順序は、必ずしも起点とするセグメントから始めて終点とするセグメントで終了する必要はなく、ランダムであっても良い。この場合には、制御部2は、利用者端末5の表示装置5a上に、「起点セグメント」及び/又は「終点セグメント」の選択ボタンを表示させ、セグメントの選択時に併せて利用者に「起点セグメント」又は「終点セグメント」の指定を行わせれば良い。或いは、制御部2は、一つのセグメントの選択信号を受信すると、その選択されたセグメントが「起点セグメント」であるのか「終点セグメント」であるのか、そのどちらでもないのかを指定することができるダイアログボックスを利用者端末5の表示端末5a上に表示させるようにしても良い。「起点セグメント」及び/又は「終点セグメント」の指定信号も、セグメントの選択信号と同様に制御部2に送信され、制御部2はこれを受け付ける。
【0073】
対象とする路線を構成するセグメントの選択がランダムに行われる場合にも、制御部2は、利用者端末5の表示装置5a上に「選択終了」ボタンを表示させるのが良い。利用者端末5の利用者は、必要なセグメントの選択が完了したと思われる時点で、「選択終了」ボタンをクリックすることで、制御部2にセグメントの選択が終了したことを伝えることができる。制御部2は、「選択終了」ボタンのクリック信号を受信した時点で、セグメント選択信号を受け付けた複数のセグメントをつなぐ経路上に不連続部分が存在するか否かを確認する。不連続部分が存在しない場合には、制御部2は利用者によるセグメントの選択が終了したと判断し、次のステップへと進む。一方、不連続部分が存在するときには、受信した「選択終了」ボタンのクリック信号を無効にするとともに、先に述べたと同様に、例えば「セグメントの選択に漏れがあります」といったメッセージを利用者端末5の表示装置5aに表示させ、利用者端末5の利用者に漏れのないセグメントの選択を促すのが良い。
【0074】
セグメント選択信号を受け付けた制御部2は、そのセグメントが選択されたことを明示するために、この選択されたセグメントを未だ選択されていないセグメントと区別して表示する信号を含んだセグメント表示地図信号を出力し、利用者端末5に送信する。選択されたセグメントを未選択セグメントから区別して表示する方法としては、例えば、表示の反転、色彩の変更、点滅、セグメントを表示する図形の変更(例えば幅の変更、形状の変更)などが挙げられる。
【0075】
図6は、対象とする路線である国道XXについて、その起点を含むID:XX1001のセグメントが「起点セグメント」として選択され、その選択を反映して、ID:XX1001のセグメントが反転表示されている状態を示している。なお、この例では、国道XXの起点を含むセグメントが「起点セグメント」として選択されているが、道路の起点と「起点セグメント」とは必ずしも一致していなくても良い。これは道路の終点と「終点セグメント」とについても同様である。
【0076】
セグメントは一つずつ選択されるのが原則であるが、まとめて複数を選択できるようにしても良い。例えば、図6において、ID:XX1001のセグメントが選択されている状態で、次にID:XX1004のセグメントを選択すると、XX1001のセグメントからXX1004のセグメントに至る経路は、図6に示す電子地図上に表示されている一群のセグメントに関しては一つしか存在しないので、制御部2は、これをID:XX1002からXX1004までの3つのセグメントをまとめて選択する信号であると判断し、これを受け付けることができる。この受付に際しては、制御部2は「複数選択しますか?」といったメッセージを利用者端末5の表示装置5aに表示させて、利用者に確認を求めるようにしても良い。このようにして、XX1002からXX1004までの3つのセグメントがまとめて選択されると、これら選択された3つのセグメントは図7に示すとおり反転表示される。
【0077】
先に選択されたセグメントから次に選択された隣接していないセグメントに至る経路が、電子地図上に表示されている一群のセグメントに関して複数存在する場合には、制御部2は、その選択を単独のセグメントの選択信号であると判断して受け付けることができる。或いは、制御部2は、例えば「経路を構成するセグメントを選択してください」というメッセージを利用者端末5の表示装置5aに表示させ、先に選択されたセグメントから次に選択されたセグメントまでの経路の特定を求めるようにしても良い。
【0078】
一方、先に選択されたセグメントから次に選択された隣接していないセグメントに至る経路が、電子地図上に表示されている一群のセグメントに関して一つも存在しない場合には、制御部2は、その選択信号を無効にするとともに、例えば「その選択は無効です」といったメッセージを利用者端末5の表示装置5aに表示して、利用者にセグメントの選択に誤りがないかどうかの確認を促すことができる。
【0079】
また、対象とされる可能性の高い路線について、その路線を構成する連続する複数のセグメントについての情報を、予め、記憶部1及び/又は制御部2若しくは他の端末装置に記憶させておいても良い。利用者端末5において或る路線が対象路線として選択されたときに、制御部2は、路線とその路線を構成する連続する複数のセグメントについての情報であって、自身又は記憶部1又はその他の端末装置が記憶している情報に基づいて、選択された路線を構成する複数のセグメントを特定し、利用者端末5における対象路線の選択を、その路線を構成する複数のセグメントをまとめて選択する選択信号であるとして受け付ける。制御部2によってその選択信号が受け付けられた複数のセグメントは、利用者端末5の表示装置5aに表示される電子地図上で、例えば反転して表示するなどして、選択されたセグメントであることが明示される。
【0080】
このように制御部2は、自身が出力したセグメント表示地図信号に含まれるセグメントの複数をまとめて選択するセグメント選択信号を受け付ける手段を有していることになる。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、制御部2によって、セグメント表示地図信号に含まれるセグメントの複数をまとめて選択するセグメント選択信号を受け付けるステップが実行されるということになる。なお、上述した一つずつのセグメントの選択と、まとめて複数のセグメントの選択とは、適宜組み合わせて行って良いことは勿論である。以上のようにして、対象とする路線を構成する複数のセグメントの選択は、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで行われ、制御部2はこれを受け付ける。
【0081】
選択したセグメントについての選択の撤回も勿論可能である。例えば、選択したセグメントを再度クリックすると、その信号は制御部2に送信され、制御部2は、当該クリックによって選択されたセグメントが以前に選択され、既に選択されたセグメントとして記憶されているセグメントと同じセグメントである場合には、当該クリックを先の選択の撤回信号であると判断し、記憶している選択済セグメントの中から当該セグメントを削除する。選択したセグメントの撤回が可能であることは、「起点セグメント」又は「終点セグメント」として選択されたセグメントについても同様である。
【0082】
以上説明したセグメントの選択や、選択の撤回の仕方や手順はあくまでも例示である。セグメントの選択や選択撤回の仕方や手順には特段の制限はなく、適宜の仕方で行うことができる。
【0083】
図8は、以上のようにして対象とする路線である国道XXについて、ID:XX1001のセグメントが「起点セグメント」、ID:XX1011のセグメントが「終点セグメント」として選択され、その間のセグメントも全て選択されて、対象とする路線を構成するすべてのセグメントが選択された状態を示している。図8に示すとおり、選択されたセグメントは反転表示され、その他のセグメントは反転表示されていない。
【0084】
このように「選択終了」ボタンがクリックされた時点で、「起点セグメント」と「終点セグメント」とが選択され、それら両者間のセグメントも漏れなく選択されていると判断されると、制御部2は、対象路線を構成するセグメントの選択が完了したと判断し、利用者端末5の表示装置5aに「帳票出力」ボタンを表示させる。「選択終了」ボタンが利用者端末5の表示装置5a上に表示されず、「選択終了」ボタンのクリック信号を待つことができない場合には、制御部2は、「起点セグメント」と「終点セグメント」とが選択され、それら両者間のセグメントも漏れなく選択されているときに、セグメントの選択が完了したと判断し、「帳票出力」ボタンを表示装置5aに表示させれば良い。或いは、「帳票出力」ボタンを表示装置5aに表示させるに先立って、「セグメントの選択を終了しますか?」といったメッセージを利用者端末5の表示装置5aに表示して、利用者による確認を待っても良い。
【0085】
以上のとおり、制御部2は、前記セグメント表示地図信号に含まれる前記セグメントのいずれか一つ又はまとめて複数を選択するセグメント選択信号を受け付ける手段を備えており、このセグメント選択信号を受け付ける手段は、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまでセグメント選択信号を受け付ける。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、前記セグメント表示地図信号に含まれる前記セグメントのいずれか一つ又はまとめて複数を選択するセグメント選択信号を、選択された複数のセグメントが連続した複数のセグメントからなる対象路線を構成するまで受け付けるステップということになる。
【0086】
<B-3:帳票データの出力>
制御部2は、対象路線を構成するセグメントの選択が完了したと判断したときに、「帳票出力」ボタンに代えて、制御部2が出力することができる何種類かの帳票形式をリストアップした「帳票出力メニュー画面」を利用者端末5の表示装置5aに表示させても良い。「帳票出力メニュー画面」が表示される場合には、利用者端末5の利用者は自身の目的に合致した形式の帳票を選択することができるので便利である。また、この「帳票出力メニュー画面」に「編集」ボタンを設けておき、利用者が帳票出力される項目や順序を適宜編集、変更して、独自のフォーマットで帳票出力できるようにしても良い。利用者が設定した独自の帳票のフォーマットは、適宜の名前を付けて制御部2に送信することで制御部2及び/又は記憶部1に記憶させることができる。制御部2及び/又は記憶部1に記憶させた帳票のフォーマットは、同じ利用者の次回利用時に、制御部2及び/又は記憶部1から読み出して、その名前を「帳票出力メニュー画面」に表示させることができる。
【0087】
利用者端末5の表示装置5aの画面上で「帳票出力」ボタンがクリックされるか、「帳票出力メニュー画面」上で出力する帳票のフォーマットが指定されると、その信号は帳票出力要求信号としてネットワーク4を介して制御部2に送信される。これを受けた制御部2は、選択されているセグメントに対応する道路点検データを記憶部1から読み出し、選択された複数のセグメントから構成される対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する。
【0088】
すなわち、制御部2は、受け付けた前記セグメント選択信号に基づいて、選択されたセグメントに対応する道路点検データを、記憶部1から読み出す手段を有している。さらに、制御部2は、記憶部1から読み出した道路点検データを、選択されたセグメントから構成される対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段を有している。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、制御部2によって、受け付けたセグメント選択信号に基づいて、選択された各セグメントに対応する道路点検データを記憶部1から読み出すステップと、読み出した道路点検データを、選択されたセグメントから構成される対象路線の延長方向順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力するステップが実行されるということになる。
【0089】
出力された帳票データは、出力要求のあった利用者端末5に送信される。出力される帳票データの一例を表3に示す。なお、表3に示す帳票データは、あくまでも例であり、制御部2が出力する帳票データが表3に示されるものに限られる訳ではない。
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示すとおり、制御部2から出力される帳票データは、対象路線とされる国道XXを構成するセグメントとして利用者端末5の表示装置5aの画面上で選択されたセグメントと、選択された各セグメントに対応する道路点検データとを、「起点セグメント」として指定されたXX1001のセグメントから「終点セグメント」として指定されたXX1011へと向かう順に、セグメント単位で並べたものである。なお、表3にはセグメントIDも併せて示しているが、これは不要であれば帳票出力データに含めなくても良い。
【0092】
セグメント単位で並べる順序は、表3に示す帳票データでは「起点セグメント」から「終点セグメント」へと向かう方向順であるが、この順序は逆であっても良く、対象路線とされる道路の延長方向順であればいずれの順序であっても良い。因みに、この方向順は、利用者が利用者端末5からネットワーク4を介して制御部2に信号を送ることによって、適宜指定、変更が可能である。
【0093】
表3に示す帳票データは、基本的に、先に表1及び表2に示したパトロール車6a、6bの走行によって得られた道路点検データの中から国道XXを構成するセグメントに対応する道路点検データと抜き出して、「起点セグメント」から「終点セグメント」に向かう順に、セグメント単位で並べたものである。ただし、ID:XX1005のセグメントとID:XX1006のセグメントについては、表1及び表2に示すとおり、記憶部1にはパトロール車6aが取得した道路点検データと、パトロール車6bが取得した道路点検データの2つの道路点検データが記憶されているが、表3には、表1に記載されている道路点検データが出力されている。これは帳票データとして出力する道路点検データを記憶部1から読み出すに際し、制御部2が記憶部1に記憶されている各セグメントについての道路点検データが取得された日時を参照して、最新の道路点検データを選択して読み出したからである。
【0094】
すなわち、ID:XX1005とXX1006のセグメントについて、パトロール車6aが取得した道路点検データは、表1に「2110191543」及び「2110191544」と記載されているとおり、2021年10月19日の15時43分と15時44分に取得されたデータである。一方、ID:XX1005とXX1006のセグメントについて、パトロール車6bが取得した道路点検データは、表2に「2108021010」及び「2108021011」と記載されているとおり、2021年8月2日の10時10分と10時11分に取得されたデータである。
【0095】
両者を比べると、表1に記載されているパトロール車6aが取得した道路点検データの方が最新であるので、制御部2は、ID:XX1005とXX1006のセグメントについては、出力する帳票データとして、表1に記載されている方のデータを選択して読み出し、これを帳票データとして出力するのである。同じセグメントについて、記憶部1に3以上の道路点検データが記憶されている場合にも、制御部2は、それぞれの道路点検データの取得日時を参照し、最新の道路点検データを記憶部1から読み出して、これを帳票データとして出力する。なお、ID:XX1005及びXX1006以外のセグメントについては、パトロール車6a又は6bが取得した表1又は表2に示す道路点検データしか記憶部1には記憶されていないので、これら表1又は表2に示す道路点検データが最新の道路点検データということになる。
【0096】
このように、制御部2は、選択されたセグメントに対応する道路点検データの中で、取得日時が最も新しい道路点検データを、最新の道路点検データとして記憶部1から読み出す手段を有している。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、制御部2は、選択されたセグメントに対応する道路点検データの中で、取得日時が最も新しい道路点検データを、最新の道路点検データとして選択して読み出すステップを実行する機能を備えているということになる。
【0097】
<B-4:累積距離の表示とその修正>
表3に示す帳票データにおいて、記載された「区間長(m)」は、記憶部1に記憶されている各セグメントの「区間長(m)」と基本的に同じものであり、各セグメント通過時にそれぞれのパトロール車が実際に走行した距離である。
【0098】
一方、表3に記載されている「距離自(m)」及び「距離至(m)」は、「起点セグメント」として選択されたセグメントの「終点セグメント」とは反対側の端部位置を起点(距離0m)とした累積距離である。すなわち、前記起点から、各セグメントの起点側の端部位置までの距離が「距離自(m)」であり、前記起点から、各セグメントの起点側とは反対側の端部位置までの距離が「距離至(m)」である。
【0099】
このような「距離自(m)」及び「距離至(m)」の値は、対象路線を構成する選択されたセグメントについての「区間長(m)」を加算していくことによって、容易に求めることができる。「距離自(m)」及び「距離至(m)」を求める作業は制御部2によって実行され、求められた「距離自(m)」及び「距離至(m)」のデータは、出力する帳票データに含められる。
【0100】
つまり、制御部2は、対象路線の「起点セグメント」の「終点セグメント」とは反対側の端部位置を起点として、前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を求める手段を有しているとともに、求めた距離を、選択されたセグメントに対応する道路点検データとともに、「起点セグメント」から「終点セグメント」に向かう順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力する手段を有している。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、「起点セグメント」の「終点セグメント」とは反対側の端部位置を起点として、前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を求めるステップと、求めた前記距離を、選択されたセグメントに対応する道路点検データとともに、「起点セグメント」から「終点セグメント」に向かう順にセグメント単位で並べた帳票データとして出力するステップが制御部2によって実行されるということになる。
【0101】
上述したとおり、制御部2が出力する帳票データに含まれる「区間長(m)」は、各パトロール車が各セグメントを通過する際に実際に走行した距離であり、対象路線の延長距離はその積算値である。したがって、制御部2が記憶部1から読み出したデータをそのまま帳票データとして出力すると、対象路線の延長距離が、道路管理者が把握している対象路線の延長距離と一致しない場合が有り得る。
【0102】
例えば、表3の帳票データでいえば、「起点セグメント」の起点側の端部位置から県道YYとの重用区間に至るまでの延長は、セグメントID:XX1004の「距離至(m)」の欄に「372」と記載されているとおり、パトロール車の実走行距離の積算値では「372m」である。これに対し、道路管理者が把握している国道XXの起点から県道YYとの重用区間までの延長が「370m」であったとすると、両者の間には2mの差があることになる。このようなとき、利用者端末5の利用者は、出力する帳票データにおける対象路線の延長を道路管理者が把握している対象路線の延長と一致するように修正することができる。
【0103】
すなわち、利用者端末5の利用者は、表示装置5aに表示されている帳票データ上で、例えば、「編集」ボタンをクリックした後、修正したいセグメントID:XX1004の「距離至(m)」の欄をクリックして反転させ、表示されている「372」という数値を希望する数値「370」に変更すれば良い。修正後、「送信」ボタン若しくは「編集完了」ボタンをクリックすると、修正した内容は、帳票データの修正要求信号とともに、制御部2に送信される。
【0104】
制御部2は、受信した修正要求信号と修正内容とに基づいて、帳票データを修正し、修正した帳票データを出力して利用者端末5へ送信する。表4に修正した帳票データを示す。
【0105】
【表4】
【0106】
表4にみられるとおり、修正された帳票データにおいては、XX1004の「距離至(m)」の数値が「372」から「370」に修正され、この修正に伴い、XX1004の「距離至(m)」の数値を含め、太枠で囲まれた部分の数値が修正されている。なお、上記の説明では、利用者端末5の利用者による修正箇所は、特定のセグメントの「距離至(m)」欄の数値であったが、「距離自(m)」欄の数値であっても良く、「区間長(m)」欄の数値であっても良い。
【0107】
このように、制御部2は、好適な一態様において、帳票データとして出力する手段として、対象路線の起点から、選択された各セグメントの起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの起点側とは反対側の端部位置までの距離を利用者端末5からの入力、すなわち、外部入力に基づいて修正して出力する手段を備えている。これを道路点検データ出力方法としての側面からいえば、制御部2は、好適な一態様において、必要時、「起点セグメント」の起点側の端部位置から、選択された各セグメントの前記起点側の端部位置までの距離及び/又は前記起点から、選択された各セグメントの前記起点側とは反対側の端部位置までの距離を修正する外部入力を受け付けるステップを実行し、さらに、受け付けた前記外部入力に基づいて、帳票データとして出力する前記距離を修正するステップを実行する機能を備えている。
【0108】
<B-5:車線別セグメントの選択>
図9は、パトロール車による走行ルートの他の一例を示す図であり、或る日時に、パトロール車6cが走行したルートを地図上に示した図である。図9に示すとおり、パトロール車6cは、図外左側の地域から、黒塗りで示す経路に沿って、県道YY、国道XX、市道ZZを走行し、道路管理事務所Aに帰還している。このようなパトロール車6cの走行に対応して記憶部1に記憶されるデータは、例えば、表5に示すようなものである。
【0109】
【表5】
【0110】
表1、表2におけると同様に、表5には、パトロール車6cが走行した路線名と、走行ルートを構成するセグメントのID及び位置情報と、各セグメントに対応する道路部分について得られた道路点検データとが、互いに対応付けられて、パトロール車6cの走行順に、セグメント単位で並べられている。パトロール車6cが図内で最初に走行した県道YYの区間はセグメントID:YY1023からYY1030までの8つのセグメントから構成され、国道XXの区間はセグメントID:XX2004からXX2001までの4つのセグメントから構成され、そして市道ZZの区間はセグメントID:ZZ2022からZZ2020の3つのセグメントから構成されている。
【0111】
なお、国道XXを構成するセグメントID:XX2004からXX2001までの4つのセグメントは、国道XXを終点から起点に向けて走行する上り車線を構成するセグメントであり、表1に示した国道XXを起点から終点に向けて走行する下り車線を構成するセグメント(XX1001からXX1004)とはセグメントとして区別されている。なお、市道ZZは道路幅が比較的狭いので、上り車線、下り車線の区別は設けられていない。
【0112】
セグメントのID、緯度、経度、その他のセグメントに関する情報は先に表1及び表2について説明したと同じであり、道路点検データについても同様である。ただし、表5においては、「ひび割れ」、「ポットホール」、「表面粗さ(mm/m)」、「段差(cm)」の右側に記載されたデータ取得日時は、パトロール車6cが各セグメントを走行して道路点検データを取得した日時であり、例えば、国道XXのID:XX2001のセグメントについての道路点検データは「2108101221」、すなわち、2021年8月10日12時21分に取得されたデータである。
【0113】
表5に示すようなデータが、表1及び表2に示すデータとともに記憶部1に記憶されている場合、制御部2は、利用者端末5の表示装置5aに表示させる電子地図上で上り車線セグメントと下り車線セグメントが区別できるように、必要な信号を出力するセグメント表示地図信号に含めることができる。
【0114】
図10は、上り車線セグメントと下り車線セグメントとを電子地図上で区別する場合の一例を示す図である。図10に示す例では、下りセグメントXX1001と上りセグメントXX2001とは、先に図5に示したセグメントを表す矩形を道路の延長方向に沿って2分割した幅の狭い矩形として表示されている。下りセグメント1002と上りセグメント2002、下りセグメント1003と上りセグメント2003、下りセグメント1004と上りセグメント2004とについても同様である。
【0115】
セグメントID:XX1001を「起点セグメント」、XX1011を「終点セグメント」として、国道XXを構成するセグメントを選択する場合、利用者端末5の利用者は、「起点セグメント」の起点側の端部位置から県道YYとの重用区間に至るまでの部分については、表示装置5aに表示された電子地図上で下り車線セグメントに相当する側の矩形、すなわち、道路延長方向に2分割された矩形の左側の部分を選択すれば良い。選択された下り車線セグメントは、選択されたことを明示すべく、図11に示すようにその表示を反転させる。
【0116】
因みに、表示装置5aに表示させる電子地図上で下り車線セグメントと上り車線セグメントとを選択可能に区別して表示することが困難である場合には、両者を表示上は区別せず、例えば、先に図5に示したような一つのセグメントとして表示しておき、利用者が電子地図上でそのセグメントを選択したときに、制御部2が、そのセグメントが対象路線の上り車線セグメントに該当するか、下り車線セグメントに該当するかを判別して選択すれば良い。
【0117】
すなわち、制御部2は、選択されたセグメントで構成される対象路線が、対象路線の起点側を「起点セグメント」、終点側を「終点セグメント」としている場合には、対象路線は国道XXの下り車線であると判断し、今の例でいえば、ID:XX1001から1004までのセグメントを選択すれば良い。一方、選択されたセグメントで構成される対象路線が、対象路線の終点側を「起点セグメント」、起点側を「終点セグメント」としている場合には、制御部2は、対象路線は国道XXの上り車線であると判断し、今の例でいえば、ID:XX2004から2001までのセグメントを選択すれば良い。
【0118】
なお、上述したような本発明に係る道路点検データ出力方法は、1又は複数のコンピュータを上述した制御部2として動作させ、記載した各種ステップを実行させることによって実現できる。したがって、本発明は、一側面において、1又は複数のコンピュータに本発明に係る道路点検データ出力方法を実行させる手順を記載したコンピュータプログラムに係るものでもある。
【産業上の利用可能性】
【0119】
以上説明したとおり、本発明によれば、任意の路線について、最新の道路点検データを随時帳票形式で出力し、道路管理者等に提供することが可能となる。本発明が道路管理者等の負担軽減に資することは多大であり、その産業上の利用可能性は大きい。
【符号の説明】
【0120】
1 記憶部
2 制御部
3 道路点検データ出力装置
4 ネットワーク
5 利用者端末
5a 表示装置
5b 入出力装置
6a、6b、6c パトロール車
A 道路管理事務所
α 重用区間始点
β 重用区間終点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11