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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011956
(43)【公開日】2023-01-25
(54)【発明の名称】酸素生成装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/02 20210101AFI20230118BHJP
   A61M 16/10 20060101ALI20230118BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230118BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20230118BHJP
   H01M 12/08 20060101ALI20230118BHJP
【FI】
C25B15/02 302
A61M16/10 B
C25B1/04
C25B15/08 302
H01M12/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019224611
(22)【出願日】2019-12-12
(71)【出願人】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】藤本 勝志
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 正
(72)【発明者】
【氏名】本橋 輝樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
【テーマコード(参考)】
4K021
5H032
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BC07
4K021CA09
4K021DC01
5H032AA02
5H032AS01
5H032AS03
5H032AS11
5H032CC16
5H032CC21
5H032CC30
5H032HH04
5H032HH06
(57)【要約】
【課題】低コストで酸素を生成可能な酸素生成装置を提供する。
【解決手段】酸素生成装置1は、酸素還元反応により、酸素発生反応のための活物質を生成する第1電池11と、酸素発生反応により酸素を生成する第2電池12と、第1電池11により生成された電荷を充電すると共に、第2電池12が酸素を生成するときに電荷を放電して第2電池12に電荷を供給する蓄電装置13と、第1電池11と蓄電装置13とを接続する第1経路と、第2電池12と蓄電装13置とを接続する第2経路とを切り換える切換回路14と、第1経路と第2経路との間の切り換えを制御する制御装置40とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素還元反応により、酸素発生反応のための活物質を生成する第1電池と、
酸素発生反応により酸素を生成する第2電池と、
前記第1電池により生成された電荷を充電すると共に、前記第2電池が酸素を生成するときに電荷を放電して前記第2電池に電荷を供給する蓄電装置と、
前記第1電池と前記蓄電装置とを接続する第1経路と、前記第2電池と蓄電装置とを接続する第2経路とを切り換える切換回路と、
前記第1経路と前記第2経路との間の切り換えを制御する制御装置と、
を有することを特徴とする酸素生成装置。
【請求項2】
前記第1電池は、空気極である第1正極、亜鉛を含有する負極、及び負極が浸漬されるアルカリ金属水酸化物水溶液を含む電解液を有し、
前記第2電池は、前記第1正極と異なる空気極である第2正極、前記負極及び前記電解液を有し、
前記第1電池及び前記第2電池は、前記第1正極、前記第2正極、前記負極及び前記電解液により形成される3電極方式の亜鉛空気電池として一体化される、請求項1に記載の酸素生成装置。
【請求項3】
前記第2電池により生成された酸素を貯蔵する酸素貯蔵槽と、
前記酸素貯蔵槽により貯蔵された酸素量を測定する酸素量測定センサと、を更に有し、
前記制御装置は、
前記酸素量測定センサによって測定された酸素量を示す酸素量情報を取得する酸素量情報取得部と、
前記酸素量情報に対応する酸素量が所定の第1酸素しきい値よりも多いか否かを判定する酸素量判定部と、
前記酸素量が前記第1酸素しきい値よりも多いと判定されたときに、前記第1経路に切り換える期間である第1期間の単位時間当たりの比率を減少し、前記酸素量が前記第1酸素しきい値よりも少ないと判定されたときに、前記第1期間の単位時間当たりの比率を増加する酸素量調整部と、
を有する、請求項2に記載の酸素生成装置。
【請求項4】
前記第1正極に酸素を含む気体を供給する吸気装置を更に有する、請求項3に記載の酸素生成装置。
【請求項5】
前記酸素量判定部は、前記酸素量情報に対応する酸素量が所定の第2酸素しきい値よりも多いか否かを更に判定し、
前記制御装置は、前記酸素量が前記第2酸素しきい値よりも少ないと判定されたときに、前記第1正極への前記気体の供給量を増加することを示す気体供給指示を前記吸気装置に出力する酸素供給指示部を更に有する、請求項4に記載の酸素生成装置。
【請求項6】
前記第1電池及び第2電池の温度を測定する温度センサと、
前記第1電池及び第2電池を冷却する冷却装置と、を更に有し、
前記制御装置は、
前記温度センサによって測定された温度を示す温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記温度情報に対応する温度が所定の第1温度しきい値よりも高いか否かを判定する温度判定部と、
前記温度が前記第1温度しきい値よりも高いと判定されたときに、前記第1電池及び前記第2電池を冷却することを示す冷却指示を前記冷却装置に出力する酸素量冷却指示部と、
を有する、請求項3~5の何れか一項に記載の酸素生成装置。
【請求項7】
前記冷却装置は、前記亜鉛空気電池の内部に配置される排気装置を有する、請求項6に記載の酸素生成装置。
【請求項8】
前記第1電池及び第2電池の温度を測定する温度センサと、
前記第1電池及び第2電池の湿度を測定する湿度センサと、
前記電解液を循環する循環装置と、を更に有し、
前記制御装置は、
前記温度センサによって測定された温度を示す温度情報を取得する温度情報取得部と、
前記湿度センサによって測定された湿度を示す湿度情報を取得する湿度情報取得部と、
前記温度情報に対応する温度が所定の第2温度しきい値よりも高いか否かを判定する温度判定部と、
前記湿度情報に対応する湿度が所定の湿度しきい値よりも低いか否かを判定する湿度判定部と、
前記温度が前記第2温度しきい値よりも高いと判定されたとき、又は前記湿度が前記湿度しきい値よりも低いと判定されたときに、前記電解液の循環量を増加することを示す電解液循環指示を前記循環装置に出力する電解液循環指示部と、
を有する、請求項3~5の何れか一項に記載の酸素生成装置。
【請求項9】
前記電解液の残量を測定する残量検出センサと、
前記電解液を補充する補充装置と、を更に有し、
前記制御装置は、
前記残量検出センサによって測定された前記電解液の残量を示す残量情報を取得する残量情報取得部と、
前記残量情報に対応する前記電解液の残量が所定の残量しきい値よりも少ないか否かを判定する残量判定部と、
前記電解液の残量が前記残量しきい値よりも少ないと判定されたときに、前記電解液を補充することを示す電解液補充指示を前記補充装置に出力する電解液補充指示部と、
を有する、請求項3~8の何れか一項に記載の酸素生成装置。
【請求項10】
前記第2電池が生成した酸素と空気とを混合して、酸素の濃度が調整された酸素ガスを生成する酸素濃度調整装置を更に有する、請求項1~9の何れか一項に記載の酸素生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、喘息、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎等の呼吸器系器官の疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、その効果的な治療法のひとつに酸素吸入療法がある。かかる酸素吸入療法とは、酸素ガスあるいは酸素濃縮ガスを患者に吸入させるものである。その供給源として、酸素濃縮装置、液体酸素、酸素ガスボンベ等が知られているが、使用時の便利さや保守管理の容易さから、在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy, HOT)には酸素生成装置又は酸素濃縮装置が主に用いられている。
【0003】
一般的な酸素濃縮装置は、空気中に存在する約21%の酸素を分離濃縮して患者供給ガスとして患者に供給する装置であり、高濃度の酸素が得られる点から、現在では酸素より窒素を優先的に吸着しうる吸着剤を用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が主流になっている。医療向け酸素濃縮装置では一般的に酸素濃度を約90%前後に保ち、生成した酸素の流量を調整することで酸素投与量を調節している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-62235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から用いられている酸素濃縮装置ではコンプレッサーの動作や吸着筒加減圧による吸脱着工程により騒音や振動が発生しており、特に夜間において、患者が室内で使用する場合には、その騒音により十分な睡眠をとることができない場合があった。また、当該コンプレッサーによる消費電力が大きいため、更なる省電力化が望まれていた。
【0006】
本発明の発明者らは、鋭意研究により亜鉛空気電池を酸素生成装置(酸素濃縮装置)に適用することができることを見出した。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、低騒音化及び省電力化を向上することができる酸素生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る酸素生成装置は、酸素還元反応により酸素発生反応のための活物質を生成する第1電池と、酸素発生反応により酸素を生成する第2電池と、第1電池により生成された電荷を充電すると共に、第2電池が酸素を生成するときに電荷を放電して第2電池に電荷を供給する蓄電装置と、第1電池と蓄電装置とを接続する第1経路と、第2電池と蓄電装置とを接続する第2経路とを切り換える切換回路と、第1経路と第2経路との間の切り換えを制御する制御装置とを有する。
【0009】
また、本発明に係る酸素生成装置は、第1電池は、空気極である第1正極、亜鉛を含有する負極、及び負極が浸漬されるアルカリ金属水酸化物水溶液を含む電解液を有し、第2電池は、第1正極と異なる空気極である第2正極、負極及び電解液を有し、第1電池及び第2電池は、第1正極、第2正極、負極及び電解液により形成される3電極方式の亜鉛空気電池として一体化されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る酸素生成装置では、第2電池により生成された酸素を貯蔵する酸素貯蔵槽と、酸素貯蔵槽により貯蔵された酸素量を測定する酸素量測定センサと、を更に有し、制御装置は、酸素量測定センサによって測定された酸素量を示す酸素量情報を取得する酸素量情報取得部と、酸素量情報に対応する酸素量が所定の第1酸素しきい値よりも多いか否かを判定する酸素量判定部と、酸素量が第1酸素しきい値よりも多いと判定されたときに、第1経路に切り換える期間である第1期間の単位時間当たりの比率を減少し、酸素量が第1酸素しきい値よりも少ないと判定されたときに、第1期間の単位時間当たりの比率を増加する酸素量調整部とを有することが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る酸素生成装置では、第1正極に酸素を含む気体を供給する吸気装置を更に有することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る酸素生成装置では、酸素量判定部は、酸素量情報に対応する酸素量が所定の第2酸素しきい値よりも多いか否かを更に判定し、制御装置は、酸素量が第2酸素しきい値よりも少ないと判定されたときに、第1正極への気体の供給量を増加することを示す気体供給指示を吸気装置に出力する酸素供給指示部を更に有することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る酸素生成装置では、第1電池及び第2電池の温度を測定する温度センサと、第1電池及び第2電池を冷却する冷却装置と、を更に有し、制御装置は、温度センサによって測定された温度を示す温度情報を取得する温度情報取得部と、温度情報に対応する温度が所定の第1温度しきい値よりも高いか否かを判定する温度判定部と、温度が第1温度しきい値よりも高いと判定されたときに、第1電池及び第2電池を冷却することを示す冷却指示を冷却装置に出力する酸素量冷却指示部とを有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る酸素生成装置では、冷却装置は、亜鉛空気電池の内部に配置される排気装置を有することが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る酸素生成装置では、第1電池及び第2電池の温度を測定する温度センサと、第1電池及び第2電池の湿度を測定する湿度センサと、電解液を循環する循環装置と、を更に有し、制御装置は、温度センサによって測定された温度を示す温度情報を取得する温度情報取得部と、湿度センサによって測定された湿度を示す湿度情報を取得する湿度情報取得部と、温度情報に対応する温度が所定の第2温度しきい値よりも高いか否かを判定する温度判定部と、湿度情報に対応する湿度が所定の湿度しきい値よりも低いか否かを判定する湿度判定部と、温度が第2温度しきい値よりも高いと判定されたとき、又は湿度が湿度しきい値よりも低いと判定されたときに、電解液の循環量を増加することを示す電解液循環指示を循環装置に出力する電解液循環指示部とを有することが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る酸素生成装置では、電解液の残量を測定する残量検出センサと、電解液を補充する補充装置と、を更に有し、制御装置は、残量検出センサによって測定された電解液の残量を示す残量情報を取得する残量情報取得部と、残量情報に対応する電解液の残量が所定の残量しきい値よりも少ないか否かを判定する残量判定部と、電解液の残量が残量しきい値よりも少ないと判定されたときに、電解液を補充することを示す電解液補充指示を補充装置に出力する電解液補充指示部とを有することが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る酸素生成装置では、第2電池が生成した酸素と空気とを混合して、酸素の濃度が調整された酸素ガスを生成する酸素濃度調整装置を更に有することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、低騒音化及び省電力化を向上することができる酸素生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る酸素生成装置の概略を示すブロック図である。
図2】亜鉛空気電池の充放電特性を示す図である。
図3】実施形態に係る酸素生成装置のブロック図である。
図4図3に示す酸素濃度調整装置を示すブロック図である。
図5図3に示す制御装置のブロック図である。
図6図3に示す制御装置により実行される制御処理のフローチャート(その1)である。
図7図3に示す制御装置により実行される制御処理のフローチャート(その2)である。
図8図6及び7に示すS103~S123の処理を繰り返したときのRHE基準の蓄電装置の正極の電位の変化を示す図である。
図9】(a)は充電用電池の正極を示す図であり、(b)は充電用電池の負極を示す図である。
図10】(a)は使用された充電用電池の全体を示す図であり、(b)は(a)に示す充電用電池の要部を示す図であり、(c)は酸素量の測定に使用されたガスクロマトグラフィーの外観を示す図である。
図11】充電処理中の充電電池を示す図である。
図12】正極から発生する酸素量の経時変化を示す図である。
図13】(a)は充電処理を実行する前の負極を示す図であり、(b)は充電処理を実行した後の負極を示す図であり、(c)は(b)に示す負極の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る酸素生成装置について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0021】
(実施形態に係る酸素生成装置の概要)
図1は、実施形態に係る酸素生成装置の概略を示すブロック図である。
【0022】
酸素生成装置1は、3電極方式の亜鉛空気電池10と、蓄電装置13と、切換回路14と、第1DC-DC回路15と、第2DC-DC回路16と、酸素排出装置17とを有する。
【0023】
亜鉛空気電池10は、第1正極とも称される放電正極101と、第2正極とも称される充電正極102と、負極103と、電解液104とを有する。
【0024】
放電正極101は、酸素還元活性を有する触媒が配置される。放電正極101の触媒は、例えばLa0.5Ca0.5CoO3が好ましく、白金、銀、パラジウム、ロジウム、鉄、ニッケル、コバルト、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、二酸化マンガン、窒素含有カーボン、及びフタロシアニン錯体等であってもよい。放電正極101は、これら触媒を担持した表面積が大きいカーボンブラックや金属粉末等の導電性担体をバインダで結着して形成される。
【0025】
充電正極102は、水の電解反応における酸素発生過電圧が低く、耐食性の高い材料で形成される。充電正極102の材料は、ニッケル及び銅並びにニッケル合金及び銅合金等である。充電正極102は、多孔体、メッシュ、パンチングメタル、エキスパンドメタル及び不織布等の形状とする、又はめっき及び機械加工等により表面粗化した形状とすることにより、表面積が大きい形状とすることが好ましい。
【0026】
負極103は、充電正極102と同様に表面積が大きい形状を有する亜鉛により形成される。負極103は、粉状の亜鉛及び酸化亜鉛をバインダで結着して形成されてもよい。なお、負極103は、公知の添加剤が添加されてもよい。また、負極103は、アルミ、クロム、鉄、スズ、鉛等の水素よりも希の金属で形成されてもよい。
【0027】
電解液104は、水酸化カリウム、水酸化充ナトリウム及び水酸化リチウム亜鉛イオン等及びこれらを混合した水溶液系電解質を溶解したアルカリ金属水酸化物水溶液であり、亜鉛イオンを含有する。電解液104に含有される亜鉛イオンの濃度は、飽和濃度が好ましい。亜鉛イオンは、酸化亜鉛、及び硫酸亜鉛等の亜鉛化合物を水溶液系電解質に添加してもよく、負極103から水溶液系電解質に溶解させてもよい。
【0028】
亜鉛空気電池10は、酸素還元反応により、酸素発生反応のための活物質を生成する第1電池11、及び酸素発生反応により酸素を生成する第2電池12の2つの電池とを含む。3電極方式の亜鉛空気電池10は、第1電池11及び第2電池12を含む電池の一例である。第1電池11は放電正極101、負極103及び電解液104により形成される亜鉛空気電池であり、第2電池12は充電正極102、負極103及び電解液104により形成される亜鉛空気電池である。
【0029】
蓄電装置13は、例えばリチウムイオン電池等の大容量且つ充放電効率の高い蓄電池であり、切換回路14を介して亜鉛空気電池10に接続される。蓄電装置13は、亜鉛空気電池10の充放電に応じて充放電することで、亜鉛空気電池10から供給される電荷を充電すると共に、亜鉛空気電池10に電荷を放電する。
【0030】
切換回路14は、第1スイッチ141と、第2スイッチ142と、第3スイッチ143と、第4スイッチ144を有し、亜鉛空気電池10の充放電状態を切り換える。第1スイッチ141及び第2スイッチ142のそれぞれは、1極双投型のスイッチである。第1スイッチ141は第3スイッチ143を介して蓄電装置13の負極に接続され、第2スイッチ142は第4スイッチ144を介して蓄電装置13の正極に接続される。
【0031】
第1スイッチ141の一方の接点は第1DC-DC回路15を介して負極103に接続され、第1スイッチ141の他方の接点は第2DC-DC回路16を介して負極103に接続される。第2スイッチ142の一方の接点は第1DC-DC回路15を介して放電正極101に接続され、第2スイッチ142の他方の接点は第2DC-DC回路16を介して充電正極102に接続される。
【0032】
第3スイッチ143及び第4スイッチ144のそれぞれは、1極単投型のスイッチである。第3スイッチ143及び第4スイッチ144がオフするとき、亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間は絶縁され、第3スイッチ143及び第4スイッチ144がオンするとき、亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間は導通される。
【0033】
第1DC-DC回路15及び第2DC-DC回路16のそれぞれは、蓄電装置13の正極と負極との間に印加される電圧を、放電正極101及び充電正極102のそれぞれと負極103との間に印加される電圧との間で直流―直流変換する。
【0034】
酸素排出装置17は、一次酸素貯蔵槽171と、排出ファン172と、排出バルブ173とを有する。一次酸素貯蔵槽171は、充電正極102で発生する酸素を貯蔵し、排出ファン172は、排出バルブ173が開く間に一次酸素貯蔵槽171に貯蔵された酸素を不図示の酸素貯蔵層に搬送する。
【0035】
放電正極101と蓄電装置13の正極とが接続され且つ負極103と蓄電装置13の負極とが接続されて、第1電池11と蓄電装置13との間を接続する第1経路を切換回路14が形成するとき、第1電池11は、放電状態になる。第1電池11が放電状態であるとき、放電正極101において空気中の酸素を用いて以下に示す酸素還元反応が進行する。
【0036】
【化1】
【0037】
一方、第1電池11が放電状態であるとき、負極103において以下に示す酸化反応が進行して、負極103から亜鉛酸イオンが生成されて、生成された亜鉛酸イオンは、電解液104に溶解する。負極103から亜鉛酸イオンは、第1電池11が生成する酸素発生反応のための活物質の一例である。
【0038】
【化2】
【0039】
第1電池11と蓄電装置13との間を接続する第1経路を切換回路14が形成するとき、第1電池11は電荷を放電し、第1電池11が放電した電荷は、蓄電装置13に充電される。
【0040】
充電正極102と蓄電装置13の正極とが接続され且つ負極103と蓄電装置13の負極とが接続されて、第2電池12と蓄電装置13との間を接続する第2経路を切換回路14が形成するとき、第2電池12は、充電状態になる。第1電池11が充電状態であるとき、充電正極102において以下に示す酸素発生反応が進行して、充電正極102から酸素が発生する。充電正極102から発生した酸素は、酸素排出装置17の一次酸素貯蔵槽171に貯蔵される。
【0041】
【化3】
【0042】
一方、第1電池11が充電状態であるとき、負極103において以下に示す還元反応が進行して、電解液104に溶解していた亜鉛酸イオンから亜鉛が生成し、生成した亜鉛が負極103に付着する。
【0043】
【化4】
【0044】
第1電池11と蓄電装置13との間を接続する第1経路を切換回路14が形成するとき、第1電池11は電荷を放電し、第1電池11が放電した電荷は、蓄電装置13に充電される。
【0045】
図2は、亜鉛空気電池10の充放電特性を示す図である。図2において、横軸は、可逆水素電極(Reversible Hydrogen Electrode、RHE)を基準として測定された電位を示す。
【0046】
放電正極101及び充電正極102に配置される酸素の平衡電位は1.23Vであり、負極103に配置される亜鉛の平衡電位は-0.42Vである。酸素還元反応が進行するとき、放電正極101の電位が下降すると共に、負極102の電位が上昇することで、放電電正極101と負極103との間の放電電圧は、1.2V程度になる。一方、酸素発生反応が進行するとき、放電正極101の電位が上昇すると共に、負極102の電位が下降することで、放電電正極101と負極103との間の放電電圧は、2.0V程度になる。
【0047】
実施形態に係る酸素生成装置1は、亜鉛空気電池10を酸素発生部として使用すると共に、亜鉛空気電池10が充放電する電荷を蓄電装置13が充放電することで、酸素を発生するときに発生する電気エネルギーを蓄電装置13に貯蔵できる。実施形態に係る酸素生成装置1は、酸素を発生するときに発生する電荷を蓄電装置13に貯蔵することで、外部から最小限の電力の供給により酸素を発生可能となる。
【0048】
(実施形態に係る酸素生成装置の構成及び機能)
図3は、実施形態に係る酸素生成装置のブロック図である。図3において、実線は空気及び酸素を含む気体を搬送する配管を示し、破線は電解液104を搬送する配管を示し、一転鎖線は電気配線を示す。
【0049】
酸素生成装置2は、酸素生成装置1の構成要素に加えて、吸気装置18と、酸素貯蔵槽19と、酸素濃度調整装置20と、酸素濃度センサ21と、酸素流量センサ22と、供給バルブ23と、電解液貯蔵槽24と、ポンプ25とを有する。酸素生成装置2は、圧力センサ26と、温度センサ27と、湿度センサ28と、液位センサ29と、冷却装置30と、循環装置31と、制御装置40とを更に有する。亜鉛空気電池10、第1電池11、第2電池、蓄電装置13、切換回路14、第1DC-DC回路15、第2DC-DC回路16及び酸素排出装置17の構成及び機能は、図1を参照して既に説明しているので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0050】
吸気装置18は、吸気ファン181を有し、亜鉛空気電池10の放電正極101に空気を供給する。吸気ファン181は、制御装置40から吸気指示が入力されることに応じて回転して放電正極101への酸素の供給量を増加させる。吸気装置18は、加湿機構及び脱炭酸機構を有することが好ましい。吸気装置18は、加湿機構を有することで、電解液104の液量が減少することを抑制すると共に、第1電池11を相対湿度が100%である湿潤空気の雰囲気中に配置して第1電池11を亜鉛空気電池として良好に動作させることができる。なお、第2電池12は、湿潤空気の雰囲気中に配置しなくてもよい。また、吸気装置18は、脱炭酸機構を有することで、電解液104の劣化を抑制できる。
【0051】
酸素貯蔵槽19は、酸素排出装置17に配管を介して接続され、亜鉛空気電池10によって生成された酸素を貯蔵する。酸素濃度調整装置20は、酸素貯蔵槽19に貯蔵される酸素と空気とを混合して、濃度が調整された酸素ガスを生成し、濃度が調整された酸素ガスを、HOT装置を利用する患者等に提供する。
【0052】
図4は、酸素濃度調整装置20を示すブロック図である。
【0053】
酸素濃度調整装置20は、主流量調整弁201と、空気取入ポンプ202と、ミキシングバルブ203とを有する。主流量調整弁201は、例えば電磁弁であり、酸素貯蔵槽19から流入する濃度100%の酸素の流量を調整して、ミキシングバルブ203に供給する。空気取入ポンプ202は、例えば電動ポンプであり、外部から空気を取り入れて、取り入れた空気をミキシングバルブ203に供給する。
【0054】
ミキシングバルブ203は、主流量調整弁201から供給される濃度が100%の酸素と、空気取入ポンプ202から供給される空気とを混合して、任意の酸素濃度を提供することができる。例えば、ミキシングバルブ203は、主流量調整弁201から供給される濃度が100%の酸素の供給量の10%の量の空気を、濃度が100%の酸素と混合することで濃度が90%の酸素を生成する。
【0055】
酸素濃度センサ21は、例えばジルコニア式の酸素濃度計であり、患者等に提供する酸素の濃度を示す酸素濃度情報を制御装置40に出力する。酸素流量センサ22は、例えばフロート式の酸素流量計であり、患者等に提供する酸素の流量を示す酸素流量情報を制御装置40に出力する。供給バルブ23は、酸素貯蔵槽19に配管を介して接続され、制御装置40から酸素供給指示が入力されることに応じて開動作して、患者等に酸素を提供する。
【0056】
電解液貯蔵槽24は、亜鉛空気電池10の電解液104を貯蔵する貯蔵槽であり、ポンプ25が設置される。ポンプ25は、電解液104を補充することを示す電解液補充指示が入力されることに応じて電解液104を亜鉛空気電池10に補充する補充装置である。
【0057】
圧力センサ26は、例えばピエゾ素子を有する半導体式圧力センサであり、酸素貯蔵槽19の内部に配置され、酸素貯蔵槽19に貯蔵される酸素の圧力を示す貯蔵圧力情報を制御装置40に出力する。圧力センサ26は、第2電池12により生成された酸素量を測定する酸素量測定センサの一例である。また、圧力センサ26から出力される貯蔵圧力情報は、酸素量測定センサによって測定された酸素量を示す酸素量情報の一例である。
【0058】
温度センサ27は、例えば熱電対を有する接触式の温度センサであり、亜鉛空気電池10の筐体に配置され、亜鉛空気電池10を形成する第1電池11及び第2電池12の温度を測定し、測定した温度を示す温度情報を制御装置40に出力する。
【0059】
湿度センサ28は、例えば抵抗式又は容量式の湿度センサであり、亜鉛空気電池10の筐体に配置され、亜鉛空気電池10を形成する第1電池11及び第2電池12の湿度を測定し、測定した湿度を示す湿度情報を制御装置40に出力する。なお、吸気装置18が加湿機構を有する場合、湿度センサ28は省略されてもよい。湿度センサ28を省略することで、酸素生成装置1の構成を簡略化できる。
【0060】
液位センサ29は、例えば超音波式、電磁式及びレーザ式等の非接触型レベルセンサであり、亜鉛空気電池10の内部に配置され、亜鉛空気電池10に収容される電解液104の液面のレベルを示す液面レベル情報を制御装置40に出力する。液位センサ29は、電解液104の残量を測定する残量検出センサの一例である。また、液位センサ29から出力される液面レベル情報は、残量検出センサによって測定された電解液の残量を示す残量情報の一例である。
【0061】
冷却装置30は、例えば亜鉛空気電池10の内部に配置される排気装置である排気ファンを有する。亜鉛空気電池10の内部に配置される。冷却装置30は、冷却指示が制御装置40から入力されることに応じて排気ファンを回転することで、亜鉛空気電池10から排気ガスを排気することで、亜鉛空気電池10の構成要素を冷却する。循環装置31は、電解液104を補充することを示す電解液補充指示が制御装置40から入力されることに応じて、プロペラを回転することで電解液104を攪拌する。
【0062】
図5は、制御装置40のブロック図である。
【0063】
制御装置40は、通信部41と、記憶部42と、処理部50とを有する。通信部41、記憶部42及び処理部50は、バス45を介して互いに接続される。制御装置40は、第1経路と第2経路との間を切り換る切換動作を含む酸素生成装置2の種々の動作を制御する。
【0064】
通信部41は、I2C(Inter-Integrated Circuit)等の有線の通信インターフェース回路を有する。通信部41は、電気配線を介して酸素排出装置17~循環装置31と通信を行う。
【0065】
記憶部42は、例えば、半導体記憶装置を備える。記憶部42は、処理部50での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部42は、アプリケーションプログラムとして、酸素生成装置2の動作を制御する制御処理を処理部50に実行させるための制御プログラム等を記憶する。酸素生成装置2の動作を制御する制御プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部42にインストールされてもよい。また、記憶部42は、酸素生成装置2の動作を制御する制御処理で使用される種々のデータを記憶する。
【0066】
処理部50は、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を有する。処理部50は、制御装置40の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部50は、記憶部42に記憶されているプログラム(ドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部50は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行できる。
【0067】
処理部50は、切換制御部51と、酸素量情報取得部52と、酸素量判定部53と、酸素量調整部54と、酸素供給指示部55と、温度情報取得部56と、湿度情報取得部57と、温度判定部58とを有する。処理部50は、電池冷却指示部59と、電解液循環指示部60と、湿度判定部61と、残量情報取得部62と、残量判定部63と、電解液補充指示部64とを更に有する。これらの各部は、処理部50が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、ファームウェアとして制御装置40に実装されてもよい。
【0068】
(実施形態に係る制御装置による制御処理)
図6は制御装置40により実行される制御処理のフローチャート(その1)であり、図7は制御装置40により実行される制御処理のフローチャート(その2)である。図6及び7に示す制御処理は、予め記憶部42に記憶されているプログラムに基づいて、主に処理部50により制御装置40の各要素と協働して実行される。
【0069】
まず、切換制御部51は、動作開始指示を取得したか否かを判定する(S101)。動作開始指示は、例えば酸素生成装置2の筐体に配置される「開始ボタン」を、酸素生成装置2を使用する患者が押下することに応じて切換制御部51によって取得される。切換制御部51は、動作開始指示を取得したと判定する(S101-YES)まで、S101の処理を繰り返す。
【0070】
切換制御部51は、動作開始指示を取得したと判定する(S101-YES)と、第3スイッチ143及び第4スイッチ144をオンして亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間を導通することを示す導通指示を切換回路14に出力する(S102)。切換回路14は、導通指示が入力することに応じて、第3スイッチ143及び第4スイッチ144をオンして亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間を導通する。本実施形態においては、切換回路14が亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間が導通するとき、第1電池11と蓄電装置13とを接続する第1経路が第1スイッチ141及び第2スイッチ142により形成され、第1電池11は放電状態になるように第1スイッチ141及び第2スイッチ142を制御する。
【0071】
次いで、切換制御部51は、第1経路に切り換える期間である第1期間を計時する(S103)。切換制御部51は、第1期間が経過すると、第1経路から第2経路に切り換えることを示す第2経路切換指示を切換回路14に出力する(S104)。切換回路14は、第2経路切換指示が入力することに応じて、第1スイッチ141及び第2スイッチ142を切り換えて第2電池12と蓄電装置13とを接続する第2経路が形成される。第2経路が形成されるとき、第2電池12は、充電状態になり、酸素を発生する。次いで、切換制御部51は、第2経路に切り換える期間である第2期間を経時する(S105)。
【0072】
次いで、酸素量情報取得部52は、圧力センサ26によって測定された酸素貯蔵槽19に貯蔵される酸素の圧力を示す貯蔵圧力情報を取得する(S106)。次いで、酸素量判定部53は、貯蔵圧力情報に対応する酸素の圧力が所定の第1酸素しきい値よりも高いか否かを判定する(S107)。第1酸素しきい値は、酸素貯蔵槽19に貯蔵された酸素の圧力が所望の圧力に達しているか否かを判定するためのしきい値である。
【0073】
酸素量判定部53によって酸素の圧力が第1酸素しきい値よりも高いと判定される(S107-YES)と、酸素量調整部54は、第1期間の単位時間当たりの比率を減少する(S108)。酸素量調整部54は、第1期間の単位時間当たりの比率を減少すると共に、第2期間の単位時間当たりの比率を増加する。
【0074】
酸素量判定部53によって酸素の圧力が第1酸素しきい値よりも低いと判定される(S107-NO)と、酸素量調整部54は、第1期間の単位時間当たりの比率を増加する(S109)。酸素量調整部54は、第1期間の単位時間当たりの比率を増加すると共に、第2期間の単位時間当たりの比率を減少する。
【0075】
次いで、酸素量判定部53は、貯蔵圧力情報に対応する酸素の圧力が所定の第2酸素しきい値よりも高いか否かを判定する(S110)。第2酸素しきい値は、放電正極101への酸素の供給が十分か否かを判定するためのしきい値である。
【0076】
放電正極101への酸素量判定部53によって酸素の圧力が第2酸素しきい値よりも低いと判定される(S110-NO)と、酸素供給指示部55は、放電正極101に酸素を含む気体を供給することを示す気体供給指示を吸気装置18に出力する(S111)。吸気装置18は、気体供給指示が入力されることに応じて、吸気ファン181の回転を開始して放電正極101への空気の供給量を増加する。吸気装置18は、所定の回転時間が経過した後に、吸気ファン181の回転を停止する。なお、吸気装置18の吸気ファン181は、常時回転していてもよい。吸気装置18が常時回転するとき、気体供給指示が入力されることに応じて、吸気ファン181の回転速度を速くして放電正極101への空気の供給量を増加してもよい。吸気装置18は、所定の回転時間が経過した後に、吸気ファン181の回転速度を気体供給指示が入力される前の速度に戻す。
【0077】
次いで、温度情報取得部56は、温度センサ27によって測定された温度を示す温度情報を取得する(S112)。次いで、湿度情報取得部57は、湿度センサ28によって測定された湿度を示す湿度情報を取得する(S113)。
【0078】
次いで、温度判定部58は、S113の処理で取得された温度情報に対応する温度が所定の第1温度しきい値よりも高いか否かを判定する(S114)。第1温度しきい値は、亜鉛空気電池10の温度が上昇して亜鉛空気電池10が劣化することを防止するための第1のしきい値である。
【0079】
温度判定部58によって温度が第1温度しきい値よりも高いと判定された(S114-YES)とき、電池冷却指示部59は、第1電池11及び第2電池12を冷却することを示す冷却指示を冷却装置30に出力する(S115)。冷却装置30は、冷却指示が入力されることに応じて、亜鉛空気電池10から排気ガスを排気して第1電池11及び第2電池12の冷却を開始する。冷却装置30は、所定の冷却時間が経過した後に、第1電池11及び第2電池12の冷却を停止する。なお、冷却装置30の排気ファンは、常時回転していてもよい。冷却装置30が常時回転するとき、冷却指示が入力されることに応じて、排気ファンの回転速度を速くして亜鉛空気電池10から排気される排気ガスの排気量を増加してもよい。冷却装置30は、所定の冷却時間が経過した後に、排気ファンの回転速度を冷却指示が入力される前の速度に戻す。
【0080】
次いで、温度判定部58は、S112の処理で取得された温度情報に対応する温度が所定の第2温度しきい値よりも高いか否かを判定する(S116)。第2温度しきい値は、電解液104の温度が上昇して亜鉛空気電池10が劣化することを防止するための第2のしきい値である。
【0081】
温度判定部58によって温度が第2温度しきい値よりも高いと判定された(S116-YES)とき、電解液循環指示部60は、電解液104を循環することを示す電解液循環指示を循環装置31に出力する(S117)。循環装置31は、電解液循環指示が入力されることに応じて、電解液104の循環を開始する。循環装置31は、所定の循環時間が経過した後に、電解液104の循環を停止する。なお、循環装置31は、電解液104を循環していてもよい。循環装置31が電解液104を循環するとき、電解液循環指示が入力されることに応じて、電解液104の循環量を増加してもよい。循環装置31は、所定の循環時間が経過した後に、電解液104の循環量を電解液循環指示が入力される前の量に戻す。
【0082】
温度判定部58によって温度が第2温度しきい値よりも高くないと判定された(S116-NO)とき、湿度判定部61は、S113の処理で取得された湿度情報に対応する湿度が所定の湿度しきい値よりも低いか否かを判定する(S118)。湿度判定部61によって湿度が所定の湿度しきい値よりも低いと判定された(S118-YES)とき、電解液循環指示部60は、電解液104を循環することを示す電解液循環指示を循環装置31に出力する(S117)。
【0083】
次いで、残量情報取得部62は、亜鉛空気電池10に収容される電解液104の液面のレベルを示す液面レベル情報を液位センサ29から取得する(S119)。次いで、残量判定部63は、S117の処理で取得された液面レベル情報に対応する液面レベルが所定のレベルしきい値よりも低いか否かを判定する(S120)。残量判定部63によって液面レベルが所定のレベルしきい値よりも低いと判定された(S120-YES)とき、電解液補充指示部64は、電解液を補充することを示す電解液補充指示をポンプ25に出力する(S121)。ポンプ25は、電解液補充指示が入力されることに応じて、電解液貯蔵槽24から亜鉛空気電池10への電解液104の補充を開始する。ポンプ25は、所定の補充時間が経過した後に、電解液104の補充を停止する。
【0084】
次いで、切換制御部51は、動作停止指示を取得したか否かを判定する(S122)。動作停止指示は、例えば酸素生成装置2の筐体に配置される「停止ボタン」を、酸素生成装置2を使用する患者が押下することに応じて切換制御部51によって取得される。
【0085】
切換制御部51は、動作終了指示を取得していないと判定し(S122-NO)、第2期間が経過すると、第2経路から第1経路に切り換えることを示す第1経路切換指示を切換回路14に出力する(S123)。切換回路14は、第1経路切換指示が入力することに応じて、第1スイッチ141及び第2スイッチ142を切り換えて第1電池11と蓄電装置13とを接続する第1経路を形成する。次いで、処理はS103に戻る。切換制御部51によって動作終了指示を取得したと判定される(S122-YES)まで、S103~S123の処理が繰り返される。
【0086】
図8は、S103~S123の処理を繰り返したときのRHE基準の蓄電装置13の正極の電位の変化を示す図である。
【0087】
蓄電装置13の正極の電位は、図8において期間t1で示される第1電池11に接続される間は低い値を示し、図8において期間t2で示される第2電池12に接続される間は高い値を示し、いずれもほぼ一定値を維持する。
【0088】
切換制御部51は、動作終了指示を取得したと判定する(S122-YES)と、第3スイッチ143及び第4スイッチ144をオフして亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間を遮断することを示す遮断指示を切換回路14に出力する(S124)。切換回路14は、遮断指示が入力することに応じて、第3スイッチ143及び第4スイッチ144をオフして亜鉛空気電池10と蓄電装置13との間を遮断する。
【0089】
(実施形態に係る酸素生成装置の作用効果)
実施形態に係る酸素生成装置は、亜鉛空気電池を酸素発生部として使用すると共に、亜鉛空気電池が充放電する電荷を蓄電装置が充放電することで、酸素を発生するときに発生する電荷を蓄電装置に貯蔵できる。実施形態に係る酸素生成装置は、酸素を発生するときに発生する電荷を蓄電装置に貯蔵することで、外部から最小限の電力の供給により酸素を発生可能となる。またコンプレッサーを用いていないため、低騒音化を向上させることができる。
【0090】
また、実施形態に係る酸素生成装置は、酸素量測定センサによって酸素貯蔵槽に貯蔵される酸素量を測定することで、消費される酸素量に応じて生成する酸素量を調整することができる。
【0091】
また、実施形態に係る酸素生成装置は、亜鉛空気電池の正極に酸素を含む気体を供給する吸気装置を有するので、生成する酸素量が増加するときに亜鉛空気電池の正極に酸素を含む気体を供給することができる。
【0092】
例えば、実施形態に係る酸素生成装置は、酸素貯蔵槽に貯蔵される酸素量が減少したときに生成する酸素量を増加することに応じて、亜鉛空気電池の正極に酸素を含む気体を供給することができる。
【0093】
また、実施形態に係る酸素生成装置は、亜鉛空気電池の温度を測定する温度センサと、亜鉛空気電池を冷却する冷却装置を有するので、亜鉛空気電池の温度が上昇したときに亜鉛空気電池を冷却することで、亜鉛空気電池の劣化を防止できる。
【0094】
また、冷却装置が装置亜鉛空気電池の内部に配置される排気装置である排気ファンを有することで、亜鉛空気電池の冷却及び排気を排気ファンにより容易且つ簡単な構造で実現することができる。
【0095】
また、実施形態に係る酸素生成装置は、亜鉛空気電池の温度及び湿度を測定する温度センサ及び湿度センサと、電解液を循環する循環装置とを有するので、亜鉛空気電池の温度及び湿度に応じて電解液を循環することで亜鉛空気電池の劣化を防止できる。
【0096】
また、実施形態に係る酸素生成装置は、亜鉛空気電池の電解液の残量を測定する残量検出センサと、電解液を補充する補充装置を有するので、亜鉛空気電池の電解液が蒸発等により減少したときに電解液を補充できる。
【0097】
また、実施形態に係る酸素生成装置は、生成した酸素と空気とを混合して酸素の濃度が調整された酸素ガスを生成する酸素濃度調整装置を有するので、生成する酸素量よりも供給可能な酸素量を多くすることで、酸素生成時に供給される電力をより少なくできる。
【実施例0098】
第2電池12に対応する充電用電池を作製し、作製した充電用電池のファラデー効率を測定することで、亜鉛空気電池を酸素発生源として使用するときの酸素発生効率を検証した。
【0099】
図9(a)は充電用電池の正極を示す図であり、図9(b)は充電用電池の負極を示す図である。
【0100】
正極71は、触媒72と、集電体74とを有する。触媒72は、Ca2FeCoO5を含有する所定量の原料をインク状になるまで加熱攪拌して形成され、治具73を用い集電体74に塗布された。集電体74は、ニッケル板であり、一体化された触媒72、集電体74は、窒素雰囲気中で15分間に亘り350℃の温度で焼成された。焼成後に触媒72は表面に凹凸が形成された。一方、焼成後の集電体74の抵抗値は、0.08Ωであり、変化しなかった。
【0101】
負極75は、亜鉛の板状部材である。電解液は、25℃においてZnO飽和の4Mの水酸化カリウム(KOH)水溶液である。
【0102】
充電用電池のファラデー効率の測定は、以下の6個の処理を順次実行することにより実施された。
(1)内部に窒素が予め注入されたシリンジを、正極71に発生する酸素を収容可能に充電用電池に取り付ける。
(2)正極71と負極72との間に正極の電位で約0.8 vs RHEの放電電位を1分間に亘って印加する。
(3)正極71と負極72との間に1.6V又は1.7Vの放電電位を10分間に亘って印加して充電用電池を充電する充電処理を実行する。
(4)充電用電池に取り付けられたシリンジを充電用電池から取り外す。
(5)シリンジに収容された酸素及び窒素の量をガスクロマトグラフィーにより測定する。
(6)ガスクロマトグラフィーにより測定された酸素及び窒素の比率と、予めシリンジ76の内部に注入された窒素の量から、シリンジ76の内部に収容された酸素の量を演算する。
【0103】
図10(a)は使用された充電用電池の全体を示す図であり、図10(b)は図10(a)に示す充電用電池の要部を示す図であり、図10(c)は酸素量の測定に使用されたガスクロマトグラフィーの外観を示す図である。
【0104】
充電用電池70の正極70の上方には、シリンジ76が着脱可能に配置される。シリンジ76の内部には20mLの窒素が予め注入される。シリンジ76の内部に注入された窒素は、ガスクロマトグラフィー77により測定された酸素量の決定するときに、酸素の量を演算するときの基準元素として使用される。ガスクロマトグラフィー77は、検出した元素の量を直接測定できず、シリンジ76の内部に収容された酸素の量は、ガスクロマトグラフィー77により測定された酸素及び窒素の割合と、シリンジ76の内部に注入された窒素の量である20mLとから演算される。
【0105】
図11は充電処理中の充電電池70を示す図であり、図12は正極70から発生する酸素量の経時変化を示す図である。図12において、横軸は経過時間を秒単位で示し、縦軸は正極70から発生する酸素量を任意単位で示す。
【0106】
充電電池70が充電処理を実行する間、正極71から酸素77が略一定量で継続して発生することが確認された。一方、負極75では気泡発生は目視では確認されなかった。
【0107】
図13(a)は充電処理を実行する前の負極75を示す図であり、図13(b)は充電処理を実行した後の負極75を示す図であり、図13(c)は図13(b)に示す負極75の部分拡大図である。
【0108】
充電用電池70が充電処理を実行することで、負極75の表面には、デンドライトとも称される樹枝状亜鉛金属結晶が生成されたことが確認された。
【0109】
表1は、充電用電池70のファラデー効率を示す。
【0110】
【表1】
【0111】
充電用電池70のファラデー効率は、印加電圧にかかわらず90%以上の高い値となった。充電用電池70のファラデー効率が90%以上となることが示されたことで、亜鉛空気電池を酸素発生源として使用するときに高い酸素発生効率が実現可能であることが示された。
【符号の説明】
【0112】
1、2 酸素生成装置
10 亜鉛空気電池
11 第1電池
12 第2電池
13 蓄電装置
14 切換回路
15 第1DC-DC回路
16 第2DC-DC回路
17 酸素排出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13