(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119562
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230821BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 201G
H01G4/30 513
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208367
(22)【出願日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0020315
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、ヨー ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヒュン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チュン イェオル
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、クワン イェウン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ソ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ウー キュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082GG12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】積層型電子部品の曲げ強度を改善する。
【解決手段】積層型電子部品は、複数の内部電極121,122及び複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110と、本体に配置されて複数の内部電極と接続される電極層132a、132b及び電極層上に配置される導電性樹脂層133a、133bを含む外部電極200、300と、を含む。電極層は、アイランド領域を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部電極及び前記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体と、
前記本体に配置されて前記複数の内部電極と接続される電極層及び前記電極層上に配置される導電性樹脂層を含む外部電極と、を含み、
前記電極層はアイランド領域を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記電極層は銅を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記外部電極が備えられる本体の表面のうち、電極層が形成された領域の割合は50%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記本体と前記電極層との間に、下地電極層をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記下地電極層はニッケルを含む、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記電極層は前記下地電極層をカバーし、且つ前記アイランド領域は前記下地電極層の表面の一部を露出させる、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記下地電極層の表面のうち、前記電極層が形成された領域の割合は50%以上である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記アイランド領域の平均直径は0.3~1μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記電極層の平均厚さは0.3~1μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記下地電極層の平均厚さは2~20μmである、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記導電性樹脂層は導電性金属粒子を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記導電性金属粒子は錫である、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記導電性金属粒子の平均粒径は0.3~1μmである、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記導電性樹脂層の平均厚さは2~30μmである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記電極層と前記導電性樹脂層との間に、銅-錫合金層をさらに含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記銅-錫合金層の平均厚さは2~30μmである、請求項15に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層型セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、MLCC)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話など、様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層型セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。最近、電子装置の部品が小型化するにつれて、積層型セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に対する要求が増加している。
【0004】
このような流れに伴い、積層型セラミックキャパシタのサイズが徐々に小さくなっており、小規模で高容量を実現するために、同一体積における誘電体の有効体積率が高くなるにつれて、相対的に電極の厚さがさらに薄くなっている。
【0005】
ところで、積層型セラミックキャパシタの場合、基板の変形や振動による曲げクラックが発生する可能性がある。このとき、積層型セラミックキャパシタにおいて、積層体の表面に金属外部電極が具現された製品は表面に割れが発生することがあり、このような割れは、水分による絶縁抵抗の低下や、内部電極の短絡など、信頼性低下の要因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明のいくつかの目的の一つは、積層型電子部品の曲げ強度を改善することである。
【0007】
また、本発明のさらに他のいくつかの目的の一つは、外部環境による熱的及び機械的ストレスを減少させることにより、基板の変更などによる曲げクラックの発生を予防することである。
【0008】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、
複数の内部電極及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層を含む本体と、
上記本体に配置されて上記複数の内部電極と接続される電極層及び上記電極層上に配置される導電性樹脂層を含む外部電極と、を含み、
上記電極層は、アイランド領域を含む、積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果の一つは、曲げ強度が改善された積層型電子部品を提供することである。
【0011】
また、本発明のさらに他の様々な効果の一つは、外部環境による熱的及び機械的ストレスを減少させることにより、基板の変更などによる曲げクラックの発生を防止した積層型電子部品を提供することである。
【0012】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の作製のために、誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)されることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
そして、図面において、本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示している。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、X方向は第1方向又は長さ方向、Y方向は第2方向又は幅方向、Z方向は第3方向、厚さ方向又は積層方向と理解することができるが、これに制限されるものではない。
【0017】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図4は、本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
【0018】
以下では、
図1~
図4を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む本体110と、上記本体に配置されて上記複数の内部電極と接続される電極層132a、132b及び上記電極層上に配置される導電性樹脂層133a、133bを含む外部電極200、300と、を含む。
【0020】
本体110は、複数の内部電極121、122及び上記複数の内部電極の間に配置された誘電体層111を含む。上記本体において、誘電体層111及び内部電極121、122は交互に積層されている。
【0021】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0022】
本体110は、厚さ方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、長さ方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、幅方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0023】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。上記チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3又はBa(Ti1-yZry)O3等が挙げられる。
【0025】
上記誘電体層111を形成する材料としては、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などを添加することができる。
【0026】
内部電極121、122は、誘電体層111と厚さ方向(Z方向)に交互に配置されることができる。内部電極は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0027】
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0028】
すなわち、第1及び第2内部電極121、122は、それぞれ本体の長さ方向(X方向)の両端面である第3面3及び第4面4に交番して露出し、第1及び第2外部電極200、300にそれぞれ露出することができる。第1内部電極121は、第2外部電極300とは連結されず、第1外部電極200と連結される。また、第2内部電極122は、第1外部電極200とは連結されず、第2外部電極300と連結される。したがって、第1内部電極121は第4面4において一定距離離隔して形成され、第2内部電極122は第3面3において一定距離離隔して形成される。
【0029】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。第1及び第2内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、例えば、パラジウム(Pd)、パラジウム-銀(Pd-Ag)合金等の貴金属材料、ニッケル(Ni)及び銅(Cu)のうち一つ以上の物質からなる導電性ペーストを用いて形成することができる。
【0030】
上記導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法等を使用することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0031】
一方、内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要がない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、内部電極121、122の平均厚さteは100nm~1.5μmの範囲であってもよい。
【0032】
上述した内部電極121、122の平均厚さteの測定方法については特に限定しない。但し、一例として、内部電極121、122の平均厚さteは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0033】
例えば、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122について、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0034】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0035】
また、上記容量形成部Aは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されてもよい。
【0036】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0037】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0038】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であってもよい。
【0039】
また、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115とを含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向Yの両側面に配置されてもよい。
【0040】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0041】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。あるいは、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0042】
外部電極200、300は本体110に配置され、内部電極121、122と連結される。
図2に示すように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極200、300を含むことができる。
【0043】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極200、300を有する構造について説明しているが、外部電極200、300の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0044】
本発明による積層型電子部品100において、外部電極200、300は、
図2に示すように、上記本体に配置されて上記複数の内部電極と接続される電極層132a、132bと、上記電極層上に配置される導電性樹脂層133a、133bと、を含む。
【0045】
一般的に、曲げ強度を向上させるために、導電性金属粒子を含む樹脂を用いて積層型電子部品の外部電極を形成する。これにより、外部環境による熱的及び機械的ストレスを樹脂の延性により減少させることができ、基板の変更などによる曲げクラックを予防することができる。
【0046】
ところで、外部電極に用いられる樹脂の場合、通常、高い水分透過度により耐湿信頼性が弱くなるおそれがある。これを防止するために、従来は、本体の内部電極上に、外部電極としてニッケル(Ni)外部電極を配置し、このようなニッケル外部電極上にニッケル(Ni)-錫(Sn)合金層と錫(Sn)金属粒子を含む導電性樹脂層が順に存在する外部電極が開発された。
【0047】
しかし、このような従来技術の場合、外部電極における電気的連結性を確保するために、導電性樹脂層に含まれる錫(Sn)と下地のニッケル(Ni)が合金を形成しなければならない。ところが、ニッケル(Ni)-錫(Sn)合金を形成するためには、400℃以上での高温熱処理が必須であり、このような高温熱処理の場合、積層型電子部品の素体に熱膨張によるクラックを誘発すると同時に、生産性を低下させるという欠点がある。
【0048】
そこで、本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を行った結果、上記電極層132a、132bがアイランド領域を含むように構成することにより、導電性樹脂層133a、133bに含まれる導電性金属粒子と、下地の電極層131a、131bとの電気的連結性を400℃以下(又は、400℃未満)の温度での硬化処理によって確保可能であることを見出した。
【0049】
すなわち、上記外部電極に含まれる電極層132a、132bは、
図2に示すように、上記電極層の下部に備えられる層(例えば、下地電極層131a、131b)をカバーし、且つ下部に備えられる層の表面の一部を露出させるように備えられる。
【0050】
このとき、本発明の一実施形態によると、電極層132a、132bは導電性金属として、銅(Cu)を含むことができる。電極層内に含まれる導電性金属として、銅(Cu)を用いることにより、400℃以下の低い硬化温度で錫(Sn)及びエポキシ樹脂と電気的連結性を実現することができる。さらに、銅(Cu)は、下地電極層131a、131b内に含まれる導電性金属(例えば、ニッケル(Ni)に比べて塑性変形特性が大きいため、熱的及び機械的ストレスを減少させることができる。
【0051】
上述した電極層132a、132bは、銅(Cu)のような導電性金属を含む材料を電解めっき、無電解めっき、スパッタリング、スプレー方式などの様々な方法を活用して実現することができる。一例として、
図2のように、電極層132a、132bがアイランド領域を含むように形成させるためには、溶媒に分散された銅ナノ粒子(Cu nano-particles)を使用してソルゲル(sol-gel)法、スプレーコーティング法、又はディッピング(dipping)法により塗布した後、溶媒を除去して銅アイランド(Cu island)層を形成することができる。このように、ナノ粒子を使用して電極層132a、132bを形成すると、表面積が広くなる効果があり、これにより、導電性樹脂層133a、133bとの接触面積が大きくなることができる。したがって、このようなナノ粒子を使用すると、表面エネルギーが高くて導電性樹脂層内の錫金属とよく反応し、金属間化合物を形成するため、界面接着力の向上に有利である。例えば、1005サイズの頭面を基準(500×500μm
2)に、500nmのCuナノ粒子(nano-particle)塗布(コーティング)する場合、頭面の表面に50%以上のナノ粒子(nano-particle)が分布すると、既存のCu外部電極を塗布したときよりも接合する表面積が増加する効果が得られる。さらに、頭面の表面に70%以上の粒子が分布すると、樹脂層と接触可能な表面積がreferenceに比べて(Cu外部電極の単一層)40%増加する。
【0052】
本発明の一実施形態によると、上記外部電極が備えられる本体の表面のうち、電極層が形成された領域の割合は、50%以上(又は、50%以上100%未満、より好ましくは50%以上70%以下)であってもよい。上記外部電極が備えられる本体の表面のうち、電極層が形成された領域の割合が50%未満であると、下部のNi及び上部の樹脂電極との接触面積が減少するため、ESRが増加するという問題が生じる可能性がある。あるいは、上記外部電極が備えられる本体の表面のうち、電極層が形成された領域の割合が70%を超えると、コーティング作業を数回繰り返さなければならないため、作業性が低下するおそれがあり、分散安定性の低い高濃度のCuナノ粒子(nano-particle)溶液を使用しなければならないという問題が生じる可能性がある。
【0053】
このとき、上述した上記外部電極が備えられる本体の表面のうち、電極層が形成された領域の割合に対する一つの測定方法としては、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning) Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0054】
例えば、
図2に示すように、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された外部電極200、300に対して、外部電極が備えられる本体の表面の長さ全体のうち、電極層が形成された領域の長さ比率を測定することにより求めることができる。
【0055】
また、本発明の一実施形態によると、上述した本体110と電極層132a、132bとの間に、下地電極層131a、131bをさらに含むことができる。このとき、上記下地電極層131a、131bは導電性金属として、例えば、ニッケル(Ni)を含むことができる。
【0056】
このように、電極層132a、132bに含まれる導電性金属として銅(Cu)を使用し、下地電極層131a、131bに含まれる導電性金属としてニッケル(Ni)を使用することにより、クラックの発生を予防して曲げ強度を改善することができ、熱的及び機械的ストレスによる欠陥の発生を最小化することができる。
【0057】
したがって、上述した下地電極層131a、131bが備えられる場合であって、上記電極層132a、132bは、
図2に示すように、下部に備えられる上記下地電極層131a、131bをカバーし、且つ上記アイランド領域は、上記下地電極層の表面の一部を露出させるように備えられることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、上記下地電極層131a、131bは、積層型電子部品を製造するための未焼成の積層体の両端面に導電性金属(例えば、Ni)を含む導電性ペーストを塗工した後、これを一体に焼成することにより得ることができる。
【0059】
本発明の一実施形態によると、上述した下地電極層131a、131bが備えられる場合であって、上記下地電極層131a、131bの表面のうち、上記電極層132a、132bが形成された領域の割合は50%以上(又は、50%以上100%未満、より好ましくは50%以上70%以下)であってもよい。上記下地電極層131a、131bの表面のうち、上記電極層132a、132bが形成された領域の割合が50%未満であると、下部のNi及び上部の樹脂電極との接触面積が減少するため、ESRが増加するという問題が生じる可能性がある。上記下地電極層131a、131bの表面のうち、上記電極層132a、132bが形成された領域の割合が70%を超えると、コーティング作業を数回繰り返さなければならないため、作業性が低下し、分散安定性の低い高濃度のCuナノ粒子(nano-particle)溶液を使用しなければならないという問題が生じる可能性がある。
【0060】
このとき、上述の上記下地電極層131a、131bの表面のうち、上記電極層132a、132bが形成された領域の割合に対する一つの測定方法としては、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0061】
例えば、
図2のように、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出された外部電極200、300に対して、下地電極層131a、131bの表面の長さ全体のうち、上記電極層132a、132bが形成された領域の長さ比率を測定することにより求めることができる。
【0062】
また、本発明の一実施形態によると、上記アイランドの平均直径は0.3~1μmであってもよい。上記アイランドの平均直径が0.3μm未満であると、エポキシ硬化温度でCuナノ粒子(nano-particle)が容易に凝集し、接触面積の減少によるESRが増加するという問題が生じる可能性がある。一方、上記アイランドの平均直径が1μmを超えると、接触性を確保するために硬化温度を高くしなければならないという問題が生じる可能性がある。
【0063】
このとき、上記アイランドの平均直径に対する一つの測定方法としては、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0064】
例えば、
図2のように、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出される任意の10個のアイランドに対して測定された各アイランドの最大直径に対する平均値を求めることで測定可能である。
【0065】
さらに、本発明の一実施形態によると、上記電極層の平均厚さは0.3~1μmであってもよい。上記電極層の平均厚さが0.3μm未満であると、400℃以下の硬化温度でESR増加の問題が生じる可能性がある。一方、上記電極層の平均厚さが1μmを超えると、硬化温度を高くしなければならないという問題が生じる可能性がある。
【0066】
また、本発明の一実施形態によると、上記下地電極層の平均厚さは2~20μmであってもよい。上記下地電極層の平均厚さが2μm未満であると、内部電極との接触性に問題が生じる可能性がある。一方、上記下地電極層の平均厚さが20μmを超えると、有効体積が減少するという問題が生じる可能性がある。
【0067】
上述した電極層の平均厚さ及び下地電極層の平均厚さに対する測定方法は、特に限定されない。但し、一例として、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンすることで測定可能である。
【0068】
例えば、
図2のように、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出される任意の等間隔である10個の地点で電極層に対する各厚さの平均値を求めるか、又は任意の等間隔である10個の地点で下地電極層に対する各厚さの平均値を求めることで測定可能である。
【0069】
本発明の一実施形態によると、上記導電性樹脂層133a、133bは導電性金属粒子を含むことができ、上記導電性金属粒子は錫(Sn)であってもよい。導電性樹脂層133a、133bに錫金属粒子と樹脂を使用することにより、曲げ応力に対する耐性のあるチップを作製することができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、上記導電性樹脂層133a、133bは、上述した下地電極層131a、131b上に、上述した電極層132a、132bを順次に形成した後、導電性金属粒子として錫を含む樹脂ペーストを塗工した後、これを400℃以下(又は、400℃未満)の温度で硬化処理することにより形成することができる。
【0071】
本発明の一実施形態によると、上記導電性樹脂層内に含まれる上記導電性金属粒子の平均粒径は0.3~1μmであってもよい。上記導電性金属粒子の平均粒径が0.3μm未満であると、金属粒子同士が容易に凝集して接触面積が低くなるという問題が生じる可能性がある。一方、上記導電性金属粒子の平均粒径が1μmを超えると、高い硬化温度が要求されるという問題が生じる可能性がある。
【0072】
上記導電性樹脂層内に含まれる上記導電性金属粒子の平均粒径に対する一つの測定方法としては、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。
【0073】
例えば、
図2のように、本体110のY方向(幅方向)の中央部で切断したX及びZ方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンしたイメージから抽出される導電性樹脂層内に含まれる任意の10個の導電性金属粒子に対する各最大粒径の平均値を求めることで測定可能である。
【0074】
また、本発明の一実施形態によると、上記導電性樹脂層の平均厚さは2~30μmであってもよい。上記導電性樹脂層の平均厚さが2μm未満であると、固着強度及び曲げ強度に問題が生じる可能性がある。上記導電性樹脂層の平均厚さが30μmを超えると、チップサイズが増加し、有効体積制限の問題が生じる可能性がある。上記導電性樹脂層の平均厚さに対する測定方法は特に限定されない。但し、一例として、上述した電極層の平均厚さ及び下地電極層の平均厚さの測定方法と同様の測定方法で測定可能である。
【0075】
また、本発明の一実施形態によると、上記電極層132a、132bと上記導電性樹脂層133a、133bとの間に、銅-錫合金層151a、151bをさらに含むことができる。ニッケル外部電極131a、131bと、錫及び樹脂を含む導電性樹脂層133a、133bとの間に銅を含む電極層132a、132bを挿入することにより、後述する銅-錫合金層151a、151bを形成することができる。このように、銅-錫合金層151a、151bを形成させることにより、樹脂の高い水分透過度による耐湿信頼性の劣化現象を改善することができる。
【0076】
本発明の一実施形態によると、上記銅-錫合金層の平均厚さは2~30μmであってもよい。上記銅-錫合金層の平均厚さが2μm未満であると、固着強度及び曲げ強度に問題が生じる可能性がある。上記銅-錫合金層の平均厚さが30μmを超えると、チップサイズが増加し、有効体積制限の問題が生じる可能性がある。
【0077】
このとき、上記銅-錫合金層の平均厚さに対する測定方法については特に限定しない。但し、一例として、上述した導電性樹脂層の平均厚さの測定方法と同様の方法で測定可能である。
【0078】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0079】
したがって、製造誤差、外部電極サイズ等を考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下であり、幅が0.22mm以下である場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大サイズを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大サイズを意味することができる。
【0080】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定するものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【符号の説明】
【0081】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112:上部カバー部
113:下部カバー部
121、122:内部電極
131a、131b:下地電極層
132a、132b:電極層
133a、133b:導電性樹脂層
141a、142a:導電性金属粒子
151a、151b:銅-錫合金層
200、300:外部電極