(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119585
(43)【公開日】2023-08-28
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/38 20060101AFI20230821BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08J9/38 CES
C08J9/04 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020487
(22)【出願日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2022021909
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592150273
【氏名又は名称】東レペフ加工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186484
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 満
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA17
4F074CA21
4F074CD01
4F074CD05
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA04
4F074DA07
4F074DA08
4F074DA13
4F074DA19
4F074DA24
4F074DA33
4F074DA39
(57)【要約】
【課題】
柔軟で且つ吸水量が少ないポリオレフィン系樹脂発泡体を提供すること。
【解決手段】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られ、50%圧縮硬さが30kPa以下であり、70%圧縮硬さが80kPa以下であり、スキン層を有し、吸水量が2.0g/100cm2以下であり、連続気泡を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られ、50%圧縮硬さが30kPa以下、70%圧縮硬さが80kPa以下であり、スキン層を有し、吸水量が2.0g/100cm2以下であり、連続気泡を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
少なくとも発泡体のいずれかの面のスキン層に開いた孔径10μm以上の孔の内、孔径0.5~1.5mmの孔が8割以上であり、孔径0.5~1.5mmの孔が5~50個/25cm2開いていることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
50%繰返し圧縮永久歪みが10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
みかけ密度が10~25kg/m3であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟で且つ吸水量が少ないポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡体は電気製品や住設、自動車に様々用いられている。ポリオレフィン樹脂発泡体には独立気泡と連続気泡があり、独立気泡は吸水量が少なく保温性に優れることや衝撃吸収性を有することで、断熱材やシーリング材、パッキン等に用いられるのに対し、連続気泡は柔軟で優れた緩衝性や通気性、吸音性を有することで、マットレスや吸音フォーム材、梱包材(クッション材)に用いられる。
【0003】
周知の通り、フォーム構造における独立気泡と連続気泡とを比較すると、独立気泡は気泡間が立体格子状に隔壁で仕切られた構造であるのに対し、連続気泡は、前記独立気泡の隔壁で仕切られた一連の気泡間の当該隔壁が除去された構造であり、独立気泡より連続気泡の方が力学的に変形させ易く、独立気泡からなる発泡体においては、気泡間の隔壁のため吸水量は少ないが、面圧が高く、柔軟でなく、力学的変形がし難い。
【0004】
しかしながら、連続気泡からなる発泡体は、気泡間の隔壁がないため吸水量が多く、また気泡がつながっている影響で熱の流入・流出が多いことから結露が発生しやすく、吸水量の多さや結露水の水分により熱伝導率が増加するため、保温特性に問題があった。
【0005】
独立気泡のポリオレフィン系樹脂発泡体を柔軟化する解決方法として連続気泡化することが公知であり、そのポリオレフィン系樹脂発泡体の組成や製造方法に関し、多くの提案がなされている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-63596号公報
【特許文献2】特許第4468030号
【特許文献3】特開2013-82881号公報
【特許文献4】特許第4696074号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、独立気泡発泡体を連続気泡化したものは、柔軟になるものの、気泡がつながっており、保水するため吸水量が多くなることや、発泡倍率の低いものや厚い物では、柔軟性が不十分になる問題があった。本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、保温特性に優れ柔軟で且つ吸水量の少ないポリオレフィン系樹脂発泡体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、次の手段を採用するものである。すなわち、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は以下である。
(1)ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られ、50%圧縮硬さが30kPa以下、70%圧縮硬さが80kPa以下であり、スキン層を有し、吸水量が2.0g/100cm2以下であり、連続気泡を有することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体。
(2)少なくとも発泡体のいずれかの面のスキン層に開いた孔径10μm以上の孔の内、孔径0.5~1.5mmの孔が8割以上であり、孔径0.5~1.5mmの孔が5~50個/25cm2開いていることを特徴とする(1)記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
(3)50%繰返し圧縮永久歪みが10%以下であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
(4)みかけ密度が10~25kg/m3であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柔軟且つ吸水量の少ないポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物から得られる。
【0011】
本発明で用いるポリオレフィン系樹脂発泡体とは、ポリオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂組成物を発泡させたもののことであり、ポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン系炭化水素の単独重合体または共重合体であって、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンとブテン、ペンテン等のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等、及びこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。これらのオレフィン系樹脂には、グラフトのような化学的修飾が施されていてもよい。
【0012】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体には、樹脂組成物の50質量%を超えない範囲で、必要に応じて熱可塑性エラストマー等の他の熱可塑性樹脂、酸化防止剤、滑剤、着色剤、消臭剤、帯電防止剤、難燃剤、その他の各種添加剤を添加することができる。
【0013】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は50%圧縮硬さが30kPa以下である。もしポリオレフィン系樹脂の発泡体の50%圧縮硬さが30kPaを超えると、例えば成形品のような用途において複雑な形状での使用時に追従しなくなり好ましくない。
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は70%圧縮硬さが80kPa以下である。もしポリオレフィン系樹脂発泡体の70%圧縮硬さが80kPaを超えると使用時の形状によっては追従しなくなり好ましくない。
【0015】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、いずれかの面にスキン層を有する。さらに好ましくは両面にスキン層を有することである。スキン層とは、発泡体となる樹脂組成物の発泡時に、ポリオレフィン系樹脂発泡体の表面に成形される、発泡による孔のあいていない樹脂層のことで、ポリオレフィン系樹脂発泡体は、表面に発泡による孔のあいていない樹脂層を形成しているため、水を通さない。しかしながら、空気の通り道がなく柔軟性が不十分となる場合が多い。そこで後述する通り、いずれかのスキン層に一定の個数孔をあけることで、吸水量を多くすることなく柔軟なポリオレフィン系樹脂発泡体を得られるため好ましい。
【0016】
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、吸水量が2.0g/100cm2以下であり、
好ましくは、吸水量が1.5g/100cm2以下である。より好ましくは、吸水量が1.0g/100cm2以下である。この吸水量は、JIS A9511(2017)「発泡プラスチック保温材6.14」の(A)拭き取らない方法に準拠した方法により測定したものをいう。吸水量が2.0g/100cm2より大きければ、例えば断熱材として使用する場合、吸水した水分により断熱性能が損なわれてしまうため好ましくない。
【0017】
ここで、断熱性能は熱伝導率を測定することで規定できる。本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体の熱伝導率は0.043W/m・K以下が好適である。さらに好ましくは0.039W/m・K以下である。熱伝導率が0.043W/m・Kを超えると例えば断熱材として利用する場合に好ましくない。
【0018】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、連続気泡を有する。独立気泡と連続気泡は、後述のとおり、発泡体の断面の気泡状態を観察することで判断ができる。本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、連続気泡を有するため、柔軟性が得られる。ここで連続気泡とは任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいていることをいう。なお、連続気泡を有する発泡体を「連続気泡体」、独立気泡のみの発泡体を「独立気泡体」と呼ぶ場合がある。本発明の発泡体は独立気泡発泡体を加工して連続気泡発泡体を得ることが望ましい。
【0019】
発泡体を得る方法は、発泡剤を用いる方法やビーズ発泡法、押出法等の従来公知の方法を用いることができる。発泡剤を用いる方法は、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。このシートは、例えば、熱風、赤外線、メタルバス、オイルバス、ソルトバス等により、熱分解型発泡剤の分解温度以上で且つ樹脂の融点以上の温度に加熱し、発泡剤の分解ガスによって樹脂を発泡させ、ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る方法である。ビーズ発泡法は、ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性粒子を得、この発泡性粒子を加熱発泡させることにより予備発泡粒子とし、得られた予備発泡粒子を金型に充填した後、加熱発泡させることによりポリオレフィン系樹脂発泡体を得る方法である。また、押出法は、押出機内で溶融したポリオレフィン系樹脂に発泡剤を圧入し、得られた溶融物を押出機の端部に設置されたダイから押出すと同時に発泡させることによりポリオレフィン系樹脂発泡体を得る方法である。
【0020】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、少なくとも発泡体のいずれかの面のスキン層に開いた孔径10μm以上の孔の内、孔径0.5~1.5mmの孔が8割以上であり、孔径0.5~1.5mmの孔が5~50個/25cm2開いていることが好ましい。孔径は、長径と短径の平均値である。孔径は0.8mm~1.2mmであることが適度な通気量となり好ましい。孔の個数が5個/25cm2未満だと発泡体から空気が抜けにくく柔軟性が損なわれるため好ましくない。また50個/25cm2を超えると孔部分での吸水量が多くなりやすいことや機械的強度が低下するため好ましくない。孔は孔径が同一であることが好ましく、一定間隔であることが好ましい。また、孔間の距離が10~40mmであることが好ましい。孔間の距離が10mm未満だと吸水量が多くなり、40mmを超えると発泡体から空気が抜けにくい。また、各孔の深さは厚さ方向に半分以上であることが好ましく、貫通していてもよい。
【0021】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、テンシロン万能試験機を用いて、後述のとおり測定される、50%繰り返し圧縮永久歪みが10%以下であることが好ましい。例えば、シール材として使用する場合、50%繰り返し圧縮永久歪みが10%を超えると耐久性が弱く、長期的な使用において気密性や水密性が低下する恐れがあり、またポリオレフィン系樹脂発泡体シートに局所的に圧力が加わった場合、部分的に凹みが生じ外観性が低下する恐れがある。
【0022】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は見かけ密度が10~25kg/m3であることが好ましい。ここでの見かけ密度は、JIS K 6767に準じた方法で測定した値である。見かけ密度が25kg/m3を超えると連続気泡化による柔軟化が困難になる場合があるため好ましくない。また、見かけ密度が10kg/m3未満だと機械的強度に優れない場合があるため好ましくはない。柔軟性の観点から見かけ密度はより好ましくは10~25kg/m3、さらに好ましくは15~25kg/m3である。
【0023】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、架橋されていても無くても良いが、気泡径が細かく、耐熱性が高くなるため架橋されたものが好適に用いられる。架橋方法は、電子線による架橋、過酸化物による架橋などの従来公知の方法を用いることができる。
【0024】
ここで架橋はゲル分率を測定することで規定できる。本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体のゲル分率は10~40%が好適に用いられる。更に好ましくは15~35%である。ゲル分率が10%未満の場合は、気泡径が大きく耐熱性が低く好ましくない。40%を超える場合は、柔軟性が損なわれる恐れがあり、好ましくない。
【0025】
以上のようにして得られた発泡体(いわゆる独立気泡体)は、ロール速度の異なる二本ロールの前に無数の小さい針を設けたロールを配置して、該独立気泡体の表面に無数の小孔を開け圧縮変形を加えることによって気泡膜は破壊され、気泡が連通化されて、いわゆる連続気泡体が得られる。二本のロール間を複数回通してもよい。ここで、圧縮変形を加えるロール間の隙間は発泡体厚さの0.1~20%が好適に用いられる。更に好ましくは0.1~10%である。二本のロール間の隙間が0.1%未満の場合は発泡体が切断される恐れがあり好ましくなく、20%を超える場合は柔軟性が低くなる恐れがあるため好ましくない。
【0026】
二本のロール速度差は10~35%が好適に用いられ、好ましくは15~30%、さらに好ましくは20~30%である。速度差が5%未満だとせん断が弱く連通化せずに柔軟にならない恐れがあり、35%を超えると生産機への負荷が大きく安定生産に向かない恐れがある。
【0027】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、該発泡体単体(長尺一枚物)で用いてもよいが、使用用途に合わせ任意の長さや形状に加工したり、任意の特性を付与したりすることができる。たとえば適宜の厚さの発泡体を複数枚、接着や融着等の各種手段で積層したものを使用することもできる。耐熱性や難燃性等の特性が要求される時は、耐熱性や難燃性に優れた素材(発泡体や不織布など)を要求特性に応じて、本発明の発泡体に積層して用いることもできる。
【実施例0028】
以下の方法によって、物性を評価した。
【0029】
(圧縮硬さ)
圧縮硬さの測定は以下の方法で行った。底面積が約2500mm2、厚さ約10mmのポリオレフィン系樹脂発泡体試験片を室温(20℃)環境下において、テンシロン万能試験機((株)エー・アンド・デイ社製RTG-1250)で測定した。圧縮速度は、10mm/minとし、測定した応力から50%、70%圧縮時の圧縮硬さを算出した。
50%時圧縮硬さ(kPa)=50%時の応力(N)/底面積(cm2)×10
70%時圧縮硬さ(kPa)=70%時の応力(N)/底面積(cm2)×10
そして3サンプルの測定値の平均を圧縮硬さとした。
【0030】
(吸水量測定方法)
吸水量の測定は以下の方法で行った。JIS A9511「発泡プラスチック保温材」に準じ吸水量を測定した。具体的にはポリオレフィン系樹脂発泡体試料から厚さ約25mm、以下の場合はそのまま、それより大きい場合は厚さ約25mmにスライスして幅約100mm、長さ約100mmの試験片を3個切り出し、寸法を0.1mmの単位で測定する。試験片を23±3℃の清水の入った容器の水面下50mmに完全に埋没するように浸せきし、10秒間経過後に試験片を取り出し、鉛直から30°傾斜した網目寸法が約3mmの金網に載せて30秒間放置させた後、質量を0.01gの単位で測定し、これを基準質量とする。次に、再び清水に浸せきし、24時間吸水させた後、基準質量測定のときと同じ方法で質量を測定し、表面積100cm2当たりに算出した。
吸水量(g/cm2)=(最終吸水後の質量(g)-基準質量(g))/全表面積(cm2)×100
そして3サンプルの測定値の平均を吸水量とした。
【0031】
(連続気泡)
気泡状態の測定は以下の方法で行った。厚さ方向のポリオレフィン系樹脂発泡体断面をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス社製 VHX-2000)で観察し、気泡膜の任意に選択した10個の気泡膜の半数以上に孔があいている場合に連続気泡を有するとした。
【0032】
(孔の個数・孔径)
孔の個数・孔径の測定は以下の方法で行った。幅50mm、長さ50mmのポリオレフィン系樹脂発泡体試験片のスキン層をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス社製 VHX-2000)で観察し、測定した。孔径は長径と短径を測定し、その平均値とした。また、平均孔径は3つの孔の孔径の平均値とした。
【0033】
(50%繰返し圧縮永久歪み)
50%繰返し圧縮永久歪みの測定は以下の方法で行った。底面積が約25cm2のポリオレフィン系樹脂発泡体試験片を室温(20℃)環境下において、テンシロン万能試験機((株)エー・アンド・デイ社製RTG-1250)で測定した。測定条件として、移動距離は試料片厚さの50%、圧縮速度は10mm/min、保持時間は0Nの時に4分、繰返し回数500回とした。500回測定後24時間放置した厚さを測定後の厚さとし、50%繰返し圧縮永久歪みを算出した。
50%繰返し圧縮永久歪み(%)=(初期厚さ-測定後の厚さ)/初期厚さ×100
(みかけ密度)
見かけ密度は、JIS K6767(1999)「発泡プラスチック-ポリエチレン-試験方法」に基づいて測定されたものである。例えば、ポリオレフィン系樹脂発泡体を15cm3以上になるようなサンプルサイズ(例えば、10cm角)に打ち抜き、厚み、質量を測定する。サンプルの面積(10cm角の場合は100cm2)とその厚みから体積を算出し、以下の式により見かけ密度を算出した。
みかけ密度(kg/m3)=サンプル重量(kg)/{サンプル厚み(m)×サンプル面積(m2)}
そして5サンプルの測定により得られた値から上下限値を除いた3点の平均値を、見掛け密度とした。
【0034】
(結露性)
結露性は、ステンレス製の円筒形容器内(内径15cmφ、厚さ1mm、高さ20cm)に氷水を半分入れ密閉し、容器全体にポリオレフィン系樹脂発泡体を厚さ20mmとなるように貼り付け、高温高湿槽(エスペック(株)恒温器PH(H)-301)内40℃/80%環境下で2時間放置後のポリオレフィン系樹脂発泡体表面の結露発生有無を確認した。
【0035】
(保温特性)
保温特性は、23℃/50%環境下において、熱伝導率測定計(京都電子工業(株)QTM-500)を用い吸水試験後の熱伝導率を測定した。測定条件として、JIS A9511「発泡プラスチック保温材」に準じ吸水量を測定した後のポリオレフィン系樹脂発泡体試験片試料2枚の表面の水分を拭き取り、2枚の試験片の間に測定用のプローブを挿入し、熱伝導率を測定した。測定値は3サンプル値の平均とし、0.043W/m・K以下であれば保温特性があるとした。
【0036】
(復元性)
復元性は、底面積が約2500mm2(ただし、10cm×10cmに収まるような形状とする)、厚さ約10mmのポリオレフィン系樹脂発泡体試験片を、四隅に丸穴をあけた10cm×10cm×5mm厚さの2枚の鉄板で挟み込み、2枚の鉄板の穴部を通すように六角ボルトを4か所入れ、蝶ナットを締めることで試験片を90%圧縮し、24時間室温(20℃)で放置した。圧縮解放し24時間経過後の厚みが元厚みの95%以上であった場合、柔軟で復元性に優れるとした。
【0037】
(実施例1)シート1
ポリオレフィン系樹脂発泡体として東レ株式会社製トーレペフ 50100 AY0B(独立気泡 密度20kg/m3)の長尺シートを用い、千鳥状に20mm間隔で針を設けたロール上に通して発泡体に孔をあけ、その後、間隙を0.1mmとした2本のロール間に通して発泡体に圧縮変形を加えて気泡膜を破壊、連続気泡化したポリオレフィン系発泡体の長尺シートを得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認し、この時の平均孔径は、1.14mmであった。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが8.1kPa、70%圧縮硬さが19.2kPa、吸水量が0.45g/100cm2、その際の熱伝導率が0.036W/m・Kであった。結露発生もなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元し、全ての特性を満たした。
【0038】
(実施例2)シート2
実施例1において、孔の個数を32個/25cm2になる以外は実施例1と同じ条件で連続気泡体を得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認し、この時の平均孔径は、1.01mmであった。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが7.9kPa、70%圧縮硬さが18.5kPa、吸水量が1.05g/100cm2、その際の熱伝導率が0.042W/m・Kであった。結露発生もなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元し、全ての特性を満たした。
【0039】
(実施例3)シート3
実施例1において、平均孔径が0.52mmになる以外は実施例1と同じ条件で連続気泡体を得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認した。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが9.5kPa、70%圧縮硬さが21.2kPa、吸水量が0.45g/100cm2、その際の熱伝導率が0.035W/m・Kであった。結露発生もなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元し、全ての特性を満たした。
【0040】
(実施例4)シート4
実施例1において、平均孔径が1.48mmになる以外は実施例1と同じ条件で連続気泡体を得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認した。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが8.2kPa、70%圧縮硬さが18.9kPa、吸水量が1.23g/100cm2、その際の熱伝導率が0.043W/m・Kであった。結露発生もなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元し、全ての特性を満たした。
【0041】
(実施例5)シート5
ポリオレフィン系樹脂発泡体として東レ株式会社製トーレペフ 50100 AY0B(独立気泡 密度20kg/m3)の長尺シートを用い、片面のスキン層をスライス加工で取り除いた。次に千鳥状に20mm間隔で針を設けたロール上に通して発泡体に孔をあけ、その後、間隙を0.1mmとした2本のロール間に通して発泡体に圧縮変形を加えて気泡膜を破壊、連続気泡化したポリオレフィン系発泡体の長尺シートを得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認し、この時の平均孔径は、1.07mmであった。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが9.5kPa、70%圧縮硬さが20.5kPa、吸水量が1.42g/100cm2、その際の熱伝導率が0.042W/m・Kであった。結露発生もなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元し、全ての特性を満たした。
【0042】
(比較例1)シート6
市販されているポリオレフィン系樹脂発泡体として東レ株式会社製トーレペフ 50100 AY0B(独立気泡 密度20kg/m3)の長尺シートを用いた。独立気泡発泡体は50%圧縮硬さが74.7kPa、70%圧縮硬さが157.2kPa、吸水量が0.45g/100cm2、吸水試験後の熱伝導率は0.036W/m・K、結露発生は無かった。独立気泡のため柔軟ではなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元せずへたりを生じたため、全ての特性を満たすことはできなかった。
【0043】
(比較例2)シート7
実施例1において、孔の個数を240個/25cm2になる以外は実施例1と同じ条件で連続気泡体を得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認し、この時の平均孔径は、0.91mmであった。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが7.0kPa、70%圧縮硬さが15.3kPa、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元した。しかし、吸水量が2.11g/100cm2、その際の熱伝導率が0.050W/m・Kで結露も発生したため、全ての特性を満たすことができなかった。
【0044】
(比較例3)シート8
ポリオレフィン系樹脂発泡体として東レ株式会社製トーレペフ 50100 AY0B(独立気泡 密度20kg/m3)の長尺シートを用い、両面のスキン層をスライス加工で取り除いた。次に千鳥状に20mm間隔で針を設けたロール上に通して発泡体に孔をあけ、その後、間隙を0.1mmとした2本のロール間に通して発泡体に圧縮変形を加えて気泡膜を破壊、連続気泡化したポリオレフィン系発泡体の長尺シートを得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認し、この時の平均孔径は、1.03mmであった。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが9.0kPa、70%圧縮硬さが21.1kPa、吸水量が1.68g/100cm2、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元したが、吸水後の熱伝導率が0.055W/m・Kで、結露が発生したため、全ての特性を満たせなかった。
【0045】
(比較例4)シート9
ポリオレフィン系樹脂発泡体として東レ株式会社製トーレペフ 40080 AY00(独立気泡 密度28kg/m3)の長尺シートを用い、千鳥状に20mm間隔で針を設けたロール上に通して発泡体に孔をあけ、その後、間隙を0.1mmとした2本のロール間に通して発泡体に圧縮変形を加えて気泡膜を破壊、連続気泡化したポリオレフィン系発泡体の長尺シートを得た。得られた発泡体は任意に選んだ連続する10個の気泡膜の半数以上に孔があいており、連続気泡体であることを確認し、この時の平均孔径は、1.01mmであった。得られた連続気泡体は50%圧縮硬さが74.3kPa、70%圧縮硬さが160.1kPaと柔軟ではなかった。吸水量は0.19g/100cm2、吸水後の熱伝導率が0.041W/m・K、結露発生もなかったが、90%圧縮解放後の厚みが95%以上復元せず、へたりを生じたため、全ての特性を満たせなかった。
【0046】
(比較例5)シート10
市販されているポリオレフィン系樹脂発泡体として東レ株式会社製トーレペフ 30100 AG00(独立気泡 密度33kg/m3)の長尺シートを用いた。独立気泡発泡体は50%圧縮硬さが107.4kPa、70%圧縮硬さが232.8kPa、吸水量が0.17g/100cm2、吸水試験後の熱伝導率は0.036W/m・K、結露発生は無かった。独立気泡のため柔軟ではなく、90%圧縮解放後の厚みも95%以上復元せずへたりを生じたため、全ての特性を満たすことはできなかった。
【0047】
以上のように、本発明によれば、柔軟性に優れた吸水性の少ないポリオレフィン系樹脂発泡体を得られる。本発明によって製造されたポリオレフィン系樹脂発泡体は、保温材用途だけでなく、自動車内装材や梱包・輸送時の緩衝材等の各種用途に有用である。