(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001196
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】運転計画支援装置、運転計画支援方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
G05B23/02 301Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022171753
(22)【出願日】2022-10-26
(62)【分割の表示】P 2017244207の分割
【原出願日】2017-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山原 裕之
(72)【発明者】
【氏名】横川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 啓志
(57)【要約】
【課題】複数の運転計画の比較をより容易に行うことができる運転計画支援装置、運転計画支援方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【解決手段】実施形態の運転計画支援装置は、比較条件生成部と、運転計画作成部と、表示制御部とを持つ。比較条件生成部は、一以上の運転計画条件について、第1の運転計画の比較対象となる1つ以上の第2の運転計画を作成する際の第2運転計画条件を、前記第1の運転計画の運転計画条件である第1運転計画条件の一部又は全部を変更することによって生成する。運転計画作成部は、前記第1運転計画条件を満たす運転計画を前記第1の運転計画として作成するとともに、前記第2運転計画条件を満たす運転計画を前記第2の運転計画として作成する。表示制御部は、作成された前記第1の運転計画に関する情報と、作成された前記第2の運転計画に関する情報とを比較可能な態様で表示部に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器の運転計画を作成する際に必要となる一以上の運転計画条件について、第1の運転計画の比較対象となる1つ以上の第2の運転計画を作成する際の第2運転計画条件を、前記第1の運転計画の運転計画条件である第1運転計画条件における変更可能条件の一部又は全部を変更することによって生成する比較条件生成部と、
前記第1運転計画条件を満たす運転計画を前記第1の運転計画として作成するとともに、前記第2運転計画条件を満たす運転計画を前記第2の運転計画として作成する運転計画作成部と、
作成された前記第1の運転計画に関する情報と、作成された前記第2の運転計画に関する情報とを比較可能な態様で表示部に表示させる表示制御部と、
を備える運転計画支援装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、運転計画の作成に与える影響が大きい運転計画条件を前記運転計画に対応づけて表示させる、
請求項1に記載の運転計画支援装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、各運転計画の表示又は非表示を選択する操作の入力を受け付ける第2のユーザインタフェースを表示させ、前記第2のユーザインタフェースを介した選択操作の入力に応じて、選択された運転計画及び前記運転計画に対応づけて表示された運転計画条件の表示又は非表示を切り替える、
請求項1から2のいずれか一項に記載の運転計画支援装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、運転計画又は前記運転計画に対応づけて表示された運転計画条件の一部又は全部の表示又は非表示を選択する操作の入力を受け付ける第3のユーザインタフェースを表示させ、前記第3のユーザインタフェースを介した選択操作の入力に応じて、選択された前記運転計画又は前記運転計画条件の一部又は全部の表示又は非表示を切り替える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の運転計画支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記運転計画条件の一部又は全部に対する変更の入力を受け付ける第1のユーザインタフェースを表示させ、
前記運転計画作成部は、前記第1のユーザインタフェースを介して変更された運転計画条件に基づいて運転計画を再作成し、
前記表示制御部は、前記運転計画の表示を、再作成された運転計画に基づいて更新する、
請求項1又は4に記載の運転計画支援装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記第1のユーザインタフェースによって変更可能な運転計画条件又は前記運転計画条件に対応する運転計画が前記表示又は非表示の対象として選択された場合、前記第1のユーザインタフェースの表示又は非表示を、前記運転計画条件又は前記運転計画の表示又は非表示に合わせて切り替える、
請求項5に記載の運転計画支援装置。
【請求項7】
前記比較条件生成部は、前記第1運転計画条件に含まれる、配水池の運用上の水位の上下限を変更することによって前記第2運転計画条件を生成する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の運転計画支援装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、第1の運転計画と、一以上の第2の運転計画と、のそれぞれに含まれる各時系列データについて、横軸を時間軸としデータの値を縦軸で表すグラフを生成し、生成した各グラフを、時間軸を揃えて縦方向に並べて表示させる、
請求項1から7のいずれか一項に記載の運転計画支援装置。
【請求項9】
前記運転計画条件は、配水池に水を送水するポンプの台数、前記ポンプの吐出流量及び消費電力、前記配水池の面積、前記配水池の物理的な水位の上下限、前記配水池の運用上の水位の上下限、配水区の水需要量、消費電力の制限、前記消費電力の課金に関する条件を含み、
前記運転計画作成部は、前記運転計画条件を満たす複数の運転計画を作成し、作成した運転計画のうち電気料金が最も低い運転計画を前記第2の運転計画とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載の運転計画支援装置。
【請求項10】
前記運転計画は、前記ポンプの吐出流量及び前記配水池の水位の想定値を時系列に示し、
前記表示制御部は、縦軸方向に各ポンプの吐出流量に応じた大きさを有する前記ポンプごとの図形を、時刻ごとに積み上げて生成されるグラフを前記運転計画ごとに生成し、前記水位の上下限、前記配水池の水位及び電力単価を、生成した各グラフの時間軸に対応させて表示させる、
請求項9に記載の運転計画支援装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記運転計画ごとに生成した各グラフに、各運転計画において想定される1日の電気料金を表示させる、
請求項9又は10に記載の運転計画支援装置。
【請求項12】
対象機器の運転計画を作成する際に必要となる一以上の運転計画条件について、第1の運転計画の比較対象となる1つ以上の第2の運転計画を作成する際の第2運転計画条件を、前記第1の運転計画の運転計画条件である第1運転計画条件における変更可能条件の一部又は全部を変更することによって生成し、
前記第1運転計画条件を満たす運転計画を前記第1の運転計画として作成するとともに、前記第2運転計画条件を満たす運転計画を前記第2の運転計画として作成し、
作成された前記第1の運転計画に関する情報と、作成された前記第2の運転計画に関する情報と、を比較可能な態様で表示部に表示させる、
運転計画支援方法。
【請求項13】
対象機器の運転計画を作成する際に必要となる一以上の運転計画条件について、第1の運転計画の比較対象となる1つ以上の第2の運転計画を作成する際の第2運転計画条件を、前記第1の運転計画の運転計画条件である第1運転計画条件における変更可能条件の一部又は全部を変更することによって生成する比較条件生成ステップと、
前記第1運転計画条件を満たす運転計画を前記第1の運転計画として作成するとともに、前記第2運転計画条件を満たす運転計画を前記第2の運転計画として作成する運転計画作成ステップと、
作成された前記第1の運転計画に関する情報と、作成された前記第2の運転計画に関する情報とを比較可能な態様で表示部に表示させる表示制御ステップと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、運転計画支援装置、運転計画支援方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザによって設定された運転計画に関する諸条件(以下「運転計画条件」という。)を満たす最適なプラントの運転計画を提示する運転計画支援装置がある。例えば、上水道プラント等の送水プロセスを有するプラントでは、ポンプの運転台数や運転のタイミング等を調整することで、電気料金をより安くする運転計画が立てられる。しかしながら、従来の運転計画支援装置は、設定された運転計画条件を満たす運転計画を1つだけ提示するものが多い。そのため、複数の運転計画を比較してより良い運転計画を検討しようとした場合、ユーザは運転計画支援装置に対して多くの操作を行わなければならず、運転計画の策定に要する負荷が高くなる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-067405号公報
【特許文献2】特開2011-222002号公報
【特許文献3】特開2010-003284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、複数の運転計画の比較をより容易に行うことができる運転計画支援装置、運転計画支援方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の運転計画支援装置は、比較条件生成部と、運転計画作成部と、表示制御部とを持つ。比較条件生成部は、対象機器の運転計画を作成する際に必要となる一以上の運転計画条件について、第1の運転計画の比較対象となる1つ以上の第2の運転計画を作成する際の第2運転計画条件を、前記第1の運転計画の運転計画条件である第1運転計画条件の一部又は全部を変更することによって生成する。運転計画作成部は、前記第1運転計画条件を満たす運転計画を前記第1の運転計画として作成するとともに、前記第2運転計画条件を満たす運転計画を前記第2の運転計画として作成する。表示制御部は、作成された前記第1の運転計画に関する情報と、作成された前記第2の運転計画に関する情報とを比較可能な態様で表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の運転計画支援装置1の適用対象の具体例を示す図。
【
図2】実施形態の運転計画支援装置1の機能構成の具体例を示す図。
【
図3】実施形態における運転計画条件の具体例を示す図。
【
図4】実施形態における変更可能条件の設定例を示す図。
【
図5】実施形態における運転計画条件の設定に用いられるユーザインタフェースの具体例を示す図。
【
図6】実施形態における運転計画条件の設定に用いられるユーザインタフェースの具体例を示す図。
【
図7】実施形態における運転計画条件の設定に用いられるユーザインタフェースの具体例を示す図。
【
図8】実施形態における運転計画条件の設定に用いられるユーザインタフェースの具体例を示す図。
【
図9】実施形態の運転計画支援装置1の動作例を示すフローチャート。
【
図10】実施形態における支援情報の表示例を示す図。
【
図11】実施形態における支援情報の表示例を示す図。
【
図12】実施形態の変形例における支援情報の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の運転計画支援装置、運転計画支援方法及びコンピュータプログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の運転計画支援装置1の適用対象の具体例を示す図である。
図1は、実施形態の運転計画支援装置1の適用対象の一例として、配水区に対する配水プロセスを実現する配水システム100を示す。
図1に例示する配水システム100は、浄水場FPの浄水池CRに蓄えられた水を、配水池DRを介して配水区DDに送水する。浄水場FPは、浄化された水を浄水池CRに蓄え、浄水池CRに蓄えられた水を1以上のポンプP1~P6で配水池DRに送水する。配水池DRには、浄水場FPから送水される水のほか、一定量の水(以下「定量受水」という。)が定常的に流入する場合がある。
【0009】
実施形態の運転計画支援装置1は、このような配水システム100に関して、与えられた運転計画条件を満たす運転計画を生成する機能を有する。例えば、本実施形態では、運転計画支援装置1が浄水場FPのポンプP1~P6の運転計画を生成する例を説明するが、生成される運転計画は配水プロセスの実現に関して、所定の運転計画条件を満たすように生成されるものであればどのような運転計画であってもよい。
【0010】
図2は、実施形態の運転計画支援装置1の機能構成の具体例を示すブロック図である。運転計画支援装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。運転計画支援装置1は、プログラムの実行によって記憶部101、表示部102、入力部103、比較条件生成部104、運転計画作成部105、表示制御部106及び条件設定部107を備える装置として機能する。なお、運転計画支援装置1の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0011】
記憶部101は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部101は計画条件情報及び変更可能条件情報を記憶する。計画条件情報は運転計画条件を示す情報である。記憶部101には、ベースとなる運転計画条件(以下「基本条件」という。)を示す計画条件情報(以下「基本条件情報」という。)が予め記憶される。
【0012】
変更可能条件情報は、基本条件(第1運転計画条件の一例)を満たすように作成された運転計画に対して、比較対象となる運転計画を作成するための運転計画条件(以下「比較条件」という。)を、基本条件の変更によって生成する際の変更可能条件を示す情報である。具体的には、変更可能条件情報は、変更可能な基本条件を示す情報と、変更可能な基本条件について許容される変更の範囲とを示す情報を含む。記憶部101には、初期の変更可能条件情報が予め記憶される。
【0013】
表示部102は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。又は、表示部102は、これらの表示装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。表示部102は、運転計画策定の意思決定を支援する情報(以下「支援情報」という。)を表示する。具体的には、支援情報は、運転計画作成部105によって作成される複数の運転計画を比較可能な態様で表示する情報である。支援情報は、作成された各運転計画に加えて、各運転計画に関する補足的な情報を表示するものであってもよい。例えば、支援情報は、各運転計画の作成に用いられた運転計画条件を、それぞれの運転計画に対応づけて表示するものであってもよい。
【0014】
入力部103は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。又は、入力部103は、これらの入力装置を自装置に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部103は、自装置に対する各種情報の入力を受け付ける。例えば、入力部103は、運転計画条件の設定又は変更に関する情報の入力を受け付ける。また、例えば、入力部103は、変更可能条件の設定又は変更に関する情報の入力を受け付ける。入力部103は、入力された情報を条件設定部107に出力する。
【0015】
比較条件生成部104は、変更可能条件情報に基づいて、基本条件の一部又は全部を変更した運転計画条件(以下「比較条件」という。)を生成する。比較条件生成部104は、生成した比較条件(第2運転計画条件の一例)を示す計画条件情報(以下「比較条件情報」という。)を記憶部101に記憶させる。以下では、比較条件情報との区別のため、ベースとなる基本条件を示す計画条件情報を基本条件情報という場合がある。また、以下では、特に区別しない場合、計画条件情報は、基本条件情報及び比較条件情報を含むものとする。
【0016】
運転計画作成部105は、与えられた運転計画条件を満たす運転計画を作成する。与えられる運転計画条件が複数である場合、運転計画作成部105は複数の運転計画条件ごとに運転計画を作成する。具体的には、運転計画作成部105は、基本条件情報が示す基本条件を満たす第1の運転計画と、比較条件情報が示す比較条件を満たす第2の運転計画とを作成する。運転計画作成部105は、作成した第1及び第2の運転計画を示す運転計画情報を表示制御部106に出力する。
【0017】
具体的には、運転計画作成部105は、対象期間内における対象機器の状態を変数として、与えられた運転計画条件を定式化し、対象期間内において全ての条件式を満たす変数の値を求めることにより対象機器の運転計画を作成する。運転計画となる変数を求める方法としては、混合整数計画問題を解く方法やGA(Genetic Algorithm:遺伝的アルゴリズム)を適用して解を出す方法などが挙げられるが、他のどのような方法が用いられてもよい。例えば、許容される電力料金の上限と、求められる送水量の下限とが運転計画条件として与えられた場合、運転計画作成部105は、各ポンプの状態(稼働又は停止)を示す変数を求めることにより、対象期間内において、電力料金を許容範囲内に抑えつつ必要な送水量を実現するポンプの運転計画を作成することができる。
【0018】
表示制御部106は、運転計画作成部105から出力される運転計画情報に基づいて支援情報を生成し、生成した支援情報を表示部102に表示させる。
【0019】
条件設定部107は、ユーザの操作に応じて運転計画条件又は変更可能条件情報を生成又は変更する機能を有する。具体的には、条件設定部107は、入力部103を介して取得されたユーザの入力情報に基づいて計画条件情報又は変更可能条件情報を生成して記憶部101に記憶させる。また、条件設定部107は、入力情報に基づいて記憶部101に記憶されている計画条件情報又は変更可能条件情報を更新する。条件設定部107は、計画条件情報を更新した場合、運転計画条件が変更された旨を運転計画作成部105に通知する。また、条件設定部107は、変更可能条件情報を更新した場合、変更可能条件が変更された旨を比較条件生成部104に通知する。これらの通知に応じて、比較条件の更新、又は運転計画の再作成が行われる。
【0020】
図3は、実施形態における運転計画条件の具体例を示す図である。例えば、実施形態の配水システム100において、各ポンプの運転計画は、下記の各項目に関する運転計画条件が満たされるように作成される。
・配水池DRの底面積(配水池面積)
・配水池DRの水位の物理的上限(物理水位上限)及び下限(物理水位下限)
・配水池DRの水位の運用上の上限(運用水位上限)及び下限(運用水位下限)
・ポンプの台数
・各ポンプの吐出量、
・各ポンプの運転に要する電力(各ポンプの動力)
・システムに供給される電力の基本料金(基本電力料金)
・従量課金される電力の使用量及び単価(従量電力量/料金単価)
・使用可能な電力が制限される時間帯において使用可能な電力(制限電力)
・上記時間帯の開始時刻(制限電力開始時刻)
・上記開始時刻から制限が解除されるまでの時間(制限電力継続時間)
・運転計画の対象となる期間の終了時における配水池DRの目標水位(最終時刻目標水位)及び目標水位の許容誤差(最終時刻水位許容誤差)
・平滑運転(ポンプの稼働及び停止を切り替える頻度を少なくする運転方法)を行う場合における各ポンプの運転の優先度(平滑化優先度)
なお、
図3において「従量電力量/料金単価」は、一日の従量電力量の料金単価が1時間ごとに定義されたものである。上記の運転計画条件は一例であり、各ポンプの運転計画の作成には、他の項目に関する条件が考慮されてもよい。
【0021】
図4は、実施形態における変更可能条件の設定例を示す図である。上述のとおり、変更可能条件は、基本条件を満たすように作成される運転計画に対して、比較対象となる運転計画を、基本条件に含まれる各条件のうちの一部又は全部を変更して生成する際の制約となる条件である。そのため、基本条件に含まれる各条件のうち、どの条件を変更可能とするか、及び変更可能な条件をどの程度変更可能とするかの2つの条件で変更可能条件を表すことができる。
【0022】
図4は、
図3に示す各項目に関する条件のうち、運用水位下限を変更可能とし、運用水下限を2.0~3.5の範囲内で変更可能とする場合の変更可能条件情報の具体例を示す。例えば、このような変更可能条件情報が設定された場合、比較条件生成部104は、
図3に示す運転計画条件のうち、運用水位下限の値のみを3から2.5に変更した運転計画条件を比較条件として生成する。また、生成される比較条件は複数であってもよい。この場合、比較条件生成部104は、運用水位下限の値を、上記の範囲内で異なる値に変更した複数の運転計画条件を生成する。
【0023】
ここでは、運用水位下限を変更可能とする変更可能条件情報の具体例を示したが、変更可能とする項目は運用水位下限以外であってもよい。また、変更可能とする項目は、1つに限られず、複数の項目が変更可能と設定されてもよい。また、複数の項目が変更可能と設定された場合、比較条件の生成においては、必ずしも全ての項目について条件が変更される必要はない。例えば、運用水位上限及び運用水位下限が変更可能である場合、比較条件生成部104は、運用水位上限のみを変更した比較条件を生成してもよいし、運用水位下限のみを変更した比較条件を生成してもよいし、運用水位上限及び運用水位下限の両方を変更した比較条件を生成してもよい。
【0024】
図5、
図6、
図7及び
図8は、運転計画条件の設定に用いられるユーザインタフェースの具体例を示す図である。例えば、これらのユーザインタフェースは、条件設定部107によって提供される。
図5~
図8は、運転計画条件の設定に用いられるユーザインタフェースの一例として各条件の入力画面の具体例を示す。例えば、
図5~
図8に示す入力画面には、運転計画条件としての各値を選択するためのチェックボックス又はプルダウンメニュー、直接入力によって各値を指定するためのテキストボックスなどの入力インタフェースが、各値を指定する操作を支援する各種の表示とともに表示される。また、各入力画面には、入力値を運転計画条件として確定させるための設定ボタンB1~B4が配置される。
【0025】
例えば、
図5は配水池及びポンプに関する運転計画条件の設定に用いられる入力画面の具体例を示す。
図5は、配水池面積、運用水位上限、運用水位下限、物理水位上限、物理水位下限、ポンプの台数、各ポンプの吐出量、各ポンプの動力、平滑化優先度及び定量受水量を指定するための入力インタフェースが、配水池及び各ポンプの状態を示す表示D11~D14とともに表示された例である。この例において、テキストボックスTB101~TB113は、それぞれ、配水池面積、運用水位上限、運用水位下限、物理水位上限、物理水位下限、ポンプの台数、各ポンプの吐出量、定量受水量及び各ポンプの動力の値を入力するための入力インタフェースである。プルダウンメニューPM11~PM13は、各ポンプの平滑化優先度の値を選択するための入力インタフェースである。
【0026】
また、表示D11~D14は、実際の配水池DR及び各ポンプの現在の状態を示すものであってもよいし、その時点で入力されている各値の大きさを示すものであってもよい。例えば、表示D11は、円柱状の図形によって配水池DRの現在の水位を示す。表示D11には、各水位の入力値に応じた水面のイメージ図が表示されてもよい。また、例えば、表示D12~D14は、その太さによって各ポンプが吐出する水の流量(以下「吐出流量」という。)を示す。表示D12~D14は、各ポンプの実際の吐出流量を示すものであってもよいし、吐出流量の入力値を示すものであってもよい。
【0027】
また、入力画面には、運転計画の作成において各ポンプの運転優先度を考慮するか否かを選択するチェックボックスCB11が配置されもよい。また、この場合、チェックの有無に応じて、入力画面の表示が変更されてもよい。例えば、チェックボックスCB11がチェックされていない場合、各ポンプに関する表示が非表示にされてもよいし、各ポンプに関するテキストボックスに対する値の入力が禁止されてもよい。
【0028】
図6は、電力料金に関する運転計画条件の設定に用いられる入力画面の具体例を示す。
図6は、基本電力料金及び従量電力量/料金単価を指定するための入力インタフェースが、入力値や料金単価等の契約に基づく表示とともに表示された例である。この例において、テキストボックスTB21~TB26は、それぞれ、基本電力料金及び従量電力量の料金単価の値を入力するための入力インタフェースである。一方、表示D21には、入力値によって定まる1日の従量電力量の料金単価の推移を示すグラフや、基本電力料金、契約電力などが表示される。契約電力は、使用可能な電力の制限であり、予め電力供給事業者との契約によって定められる。例えば、表示D21には、使用可能な最大電力又は契約期間において使用可能な電力量などが契約電力として表示される。また、表示D21には、入力値によって定まる1日の電力使用量の推移を示すグラフが表示されてもよい。
【0029】
また、表示D21は、情報を表示するだけでなく、情報の入力を受け付けるように構成されてもよい。例えば、
図6は、表示D21が、電力使用量が同じ期間の開始時刻又は終了時刻の選択に応じて設定値の入力を受け付けるように構成された例である。具体的には、この場合、条件設定部107は、ある時刻(例えば0時)の選択(図中のポインタS)に応じて値(12.1)の入力を受け付け、その入力値をその時刻から次に値が入力された時刻(9時、18.82)までの期間に対応づける。このようにすれば、ユーザは0時から9時までの期間における電力使用量を、当該期間の各時刻に対して値を入力することなく、2つの入力(12.1と18.82)で設定することができる。
【0030】
図7は、電力制限に関する運転計画条件の設定に用いられる入力画面の具体例を示す。この例において、テキストボックスTB31及びTB32は、それぞれ、制限電力の値を入力するための入力インタフェースであり、時間軸T31、幅指定インタフェースS31及びS32は制限電力開始時刻及び制限電力継続時間を指定するための入力インタフェースである。例えば、ユーザは、時間軸T31上の所望の時刻に幅指定インタフェースS31及びS32を移動させるとともに、その幅を所望の時間幅に調整することによって制限時間帯の開始時刻(制限電力開始時刻)及び継続時間(制限電力継続時間)を指定する。また、ユーザは、各スライダに対応して表示されるテキストボックスへの入力により、制限時間帯における使用可能電力、及び制限時間外における使用可能電力を指定する。
図7は、6時から9時までの時間帯に100kWの制限電力を、12時から15時までの時間帯に200kWの制限電力を設定した例を示す。
【0031】
図8は、その他の運転計画条件の設定に用いられる入力画面の具体例を示す。この例において、テキストボックスTB41~TB45は、それぞれ、電力削減優先度、最終時刻目標水位、最終時刻水位許容誤差、計画対象開始時刻及び最大変更可能台数を指定するための入力インタフェースである。各テキストボックスは、直接的な値の入力に加え、値の入力を補助する他の入力インタフェースを備えてもよい。例えば、
図8に示すテキストボックスTB41は、入力可能な値の範囲内で移動可能なレンジスライダRS41を備え、レンジスライダRS41におけるスライダの位置に応じた値を入力値として取得する。
【0032】
運転計画条件の設定時において、
図5~
図8に例示したような入力画面がユーザインタフェースとして提供されることにより、ユーザはより容易に運転計画条件を設定することが可能となる。例えば、条件設定部107は、基本条件の設定時においてユーザインタフェースを提供し、ユーザインタフェースを介して取得された入力情報に基づいて基本条件情報を生成する。また、このようなユーザインタフェースは、基本条件又は比較条件の変更時において提供されてもよい。この場合、条件設定部107は、入力情報に基づいて、記憶部101に記憶されている基本条件情報又は比較条件情報を更新する。さらに、このようなユーザインタフェースは、変更可能条件の設定時又は変更時において提供されてもよい。
【0033】
図9は、実施形態の運転計画支援装置1の動作例を示すフローチャートである。ここでは、初期の基本条件情報及び初期の変更可能条件情報が記憶部101に予め記憶されているものとする。まず、比較条件生成部104が、基本条件情報及び変更可能条件情報を記憶部101から取得する。比較条件生成部104は、取得した変更可能条件情報に基づいて基本条件情報の一部又は全部を変更することにより、一以上の比較条件情報を生成する(ステップS101)。比較条件生成部104は、生成した一以上の比較条件情報を記憶部101に記憶させる。
【0034】
続いて、運転計画作成部105が、基本条件情報と、上記ステップで生成された一以上の比較条件情報とに基づいて、基本条件及び各比較条件のそれぞれについて運転計画を作成する(ステップS102)。運転計画作成部105は、作成した各運転計画を示す運転計画情報を表示制御部106に出力する。
【0035】
表示制御部106は、運転計画作成部105から出力された運転計画情報に基づいて支援情報を生成する(ステップS103)。表示制御部106は、作成した支援情報を表示部102に表示させる(ステップS104)。
【0036】
続いて、条件設定部107が、運転計画条件の変更が入力されたか否かを判定する(ステップS105)。変更は、基本条件及び比較条件のどちらに対するものであってもよい。運転計画条件の変更が入力された場合(ステップS105-YES)、条件設定部107は、記憶部101に記憶されている計画条件情報(基本条件情報又は比較条件情報)を入力情報に基づいて更新する。そして、条件設定部107は、運転計画条件を変更した旨を運転計画作成部105に通知することで、ステップS102に処理を戻す。これにより、運転計画条件の変更に応じて、運転計画の再作成が行われる。
【0037】
一方、運転計画条件の変更が入力されていない場合(ステップS105-NO)、条件設定部107は、変更可能条件の変更が入力されたか否かを判定する(ステップS106)。変更可能条件の変更が入力された場合(ステップS106-YES)、条件設定部107は、記憶部101に記憶されている変更可能条件情報を入力情報に基づいて更新する。そして、条件設定部107は、変更可能条件を変更した旨を比較条件生成部104に通知することで、ステップS101に処理を戻す。これにより、変更可能条件の変更に応じて、比較条件の再生成及び運転計画の再作成が行われる。
【0038】
一方、変更可能条件の変更が入力されていない場合(ステップS106-NO)、条件設定部107は、ステップS105に処理を戻し、運転計画条件又は変更可能条件の変更が入力されるまで、ステップS105及びS106の判定処理を繰り返し実行する。
【0039】
図10及び
図11は、実施形態における支援情報の表示例を示す図である。
図10は、運転計画条件ごとに作成される個々の運転計画の表示(以下「個別表示」という。)を、積み上げ形式の棒グラフG51によって表した例である。棒グラフG51は、積み上げられる棒の系列で各ポンプを区別し、各棒の高さで各ポンプの吐出流量を表す。表示制御部106は、作成された個々の運転計画情報に基づいて、運転計画ごとの個別表示を生成する。さらに、表示制御部106は、各運転計画の個別表示S61~S63を、棒グラフG51-1~G51-3の横軸を揃えて縦方向に並べることで、
図11の表示例のように、複数の運転計画情報を、時間を基準として比較可能な態様で表示する支援情報を生成する。
【0040】
例えば、
図11に示すように、各運転計画情報を示すグラフを、時間軸を揃えて並べて表示してもよいし、各運転計画の時刻毎のグラフが時間の経過に応じて変化するようなアニメーション表示を行ってもよい。この場合、ユーザに表示対象の時刻を指定させるために、スライダ等のユーザインタフェースをグラフの表示に合わせて表示させてもよい。
【0041】
また、
図11に示すように、支援情報の表示画面には、いずれかの運転計画情報を選択的に表示することを可能にするユーザインタフェースD61(第2のユーザインタフェースの一例)が配置されてもよい。このようなユーザインタフェースが配置されることにより、ユーザは、提示された複数の運転計画をより少数に絞り込んで比較することができる。
【0042】
なお、ここでは、運転計画の表示態様の一例として棒グラフを示したが、計画対象の機器の運転状態(例えばポンプの吐出流量)の変動を視覚的に識別することが容易にするものであれば、運転計画は他のどのような態様で表示されてもよい。
【0043】
また、対応する運転計画に関する情報であれば、各個別表示には運転計画情報以外の情報が表示されてもよい。例えば、各個別表示には、運転計画条件に含まれる諸条件のうち運転計画の作成に与える影響が大きい条件の内容が表示されてもよい。例えば、
図10の例のように、個別表示には、以下の情報が表示されてもよい。
・表示対象の運転計画のタイトルの表示D501
・電力料金単価の表示D502
・配水池DRの水位の表示D503又はD504
・配水池DRの運用水位上限の表示D505
・配水池DRの運用水位下限の表示D506
・表示されている運転計画によって想定される1日の電気料金の表示D507
・配水池DRの水位の日単位の変動を示す表示D508
・水需要量に関する表示D509
・送水流量の表示D510
【0044】
なお、後述するが、表示対象となる運転計画は過去の運転実績であってもよい。その場合、表示D501には過去実績の運転計画のタイトルが表示されてもよく、その他の表示にも過去実績を示す情報が表示されてもよい。例えば、表示D509には、水需要量の予測値が表示されてもよいし、過去の水需要量の実績値が表示されてもよい。また、表示509は、ユーザが水需要量の予測値を入力するための入力インタフェースに置き換えられてもよい。また、表示D508には、ポンプの吐出流量の計画値や過去実績などの他の情報が付加的に表示されてもよい。また、表示D508における所定日の選択に連動して、棒グラフG51及びそれに付随する各表示が選択された日の運転計画に応じて更新されてもよい。
【0045】
また、例えば、各個別表示には、それぞれの運転計画に対応する運転計画条件が表示されてもよい。さらに、各個別表示において、運転計画条件の設定値を変更可能にするユーザインタフェース(第1のユーザインタフェースの一例)が提供されてもよい。例えば、
図10の例のように、個別表示には、配水池DRの運用水位下限と、その設定値を運用水位上限から物理水位下限までの範囲内で変更可能にするレンジスライダRS51が表示されてもよい。例えば、レンジスライダRS51を介して運用水位下限の設定値が変更された場合、条件設定部107は対応する計画条件情報を変更後の値で更新し、その旨を比較条件生成部104に通知する。この通知に応じて、運転計画作成部105は変更後の運転計画条件を満たす運転計画を再作成する。そして、表示制御部106は、再作成された運転計画情報に基づいて対応する個別表示を更新する。
【0046】
その他、各個別表示には、浄水場FPと配水池DRとの間の送水量、配水池DRと配水区DDとの間の配水量などが表示されてもよい。また、各個別表示には、表示対象の運転計画又はその運転計画に対応づけて表示された運転計画条件の一部又は全部の各種情報について、表示又は非表示を選択する入力インタフェースD511(第3のユーザインタフェースの一例)が表示されてもよい。例えば、
図10において、『配水池の運用水位の上下限』のチェックボックスD512がオフされた場合、棒グラフG51における配水池水位の上下限の表示D505及びD506が非表示にされる。また、この場合、配水池水位下限を変更するレンジスライダRS51が、表示D505及びD506とともに非表示にされてもよい。また、入力インタフェースD511の表示又は非表示は、対応する運転計画の表示又は非表示に合わせて切り替えられてもよい。
【0047】
このように構成された実施形態の運転計画支援装置1によれば、ユーザは、運転計画条件を様々に変更しながら運転計画を検討することができるため、より適切な運転計画を立案することが可能になる。
【0048】
具体的には、運転計画支援装置1は、作成した運転計画を、その作成に影響を与える可能性が高いと考えられる運転計画条件とともに表示させる。これにより、ユーザは、作成された運転計画の妥当性をより容易に判断することが可能となる。
【0049】
また、運転計画支援装置1は、基準となる運転計画に対して比較対象となる運転計画を生成し、生成した運転計画を比較可能な態様で表示させる。これにより、ユーザは、基本条件の妥当性を容易に判断することが可能となる。
【0050】
また、運転計画支援装置1は、基本条件の一部又は全部を変更することによって比較条件を生成する。そのため、基本条件に基づいて作成された運転計画と、比較条件に基づいて作成された運転計画とを比較することにより、ユーザは、基本条件の改善の方向性を判断することが可能となる。
【0051】
また、運転計画支援装置1は、作成した運転計画を、その運転計画条件を変更可能にするユーザインタフェースとともに表示し、運転計画条件の変更に応じて運転計画の再作成及び支援情報の更新を行う。これにより、ユーザは、より納得がいく運転計画を策定することが可能となる。
【0052】
以下、実施形態の運転計画支援装置1の変形例について説明する。
【0053】
(第1の変形例)
運転計画支援装置1において、運転計画作成部105は、支援情報として表示部102に表示させる運転計画の数(以下「表示数」という。)よりも多い運転計画を作成してもよい。具体的には、この場合、比較条件生成部104が予め定められた表示数より多い比較条件を生成し、運転計画作成部105は生成された全ての比較条件について運転計画を作成する。表示制御部106は、作成された運転計画の中から基本条件に基づく1つの運転計画と、比較条件に基づく1以上の運転計画を選択し、選択された運転計画情報に基づいて支援情報を生成し、表示部102に表示させる。
【0054】
ここで、比較条件に基づく1以上の運転計画は、どのような方法で選択されてもよい。例えば、表示制御部106は、比較条件に基づく運転計画を、作成された運転計画の中からランダムに選択してもよいし、ユーザの選択操作に基づいて選択してもよい。また、表示制御部106は、比較条件に基づく運転計画を、作成された運転計画の内容に基づいて選択してもよい。例えば、表示制御部106は、電気料金や運用水位下限、ポンプの切り替え(稼働又は停止)の回数等に基づいて比較条件に基づく運転計画を選択してもよい。
【0055】
この場合、表示制御部106は、各値が大きい又は小さいものから順に運転計画を選択してもよいし、最大値又は最小値を持つ運転計画と平均的な値を持つ運転計画とを選択してもよい。例えば、電気料金に基づく選択の場合、表示制御部106は、電気料金が最も安い(又は高い)運転計画と、平均的な電気料金を示す運転計画とを選択してもよい。また、運用水位下限に基づく選択の場合、表示制御部106は、運用水位下限が最大(又は最低)である運転計画と、平均的な運用水位下限を示す運転計画とを選択してもよい。また、ポンプの切り替え回数に基づく選択の場合、表示制御部106は、切り替え回数が最も少ない(又は多い)運転計画と、平均的な切り替え回数を示す運転計画とを選択してもよい。
【0056】
このように運転計画支援装置1が、表示数以上の運転計画を作成し、比較条件に基づく運転計画を統計値に基づいて選択することにより、運転計画策定の意思決定により大きく貢献する支援情報をユーザに提供することができる。また、運転計画支援装置1は、予め表示数以上の運転計画を作成しておくことにより、ユーザの選択に応じて、表示内容を即座に変更することができる。
【0057】
(第2の変形例)
図3に例示した運転計画条件の各項目のうち、平滑化優先度が変更可能条件に含まれても良い。例えば、平滑化優先度に関する変更可能条件は、その値について0~1の範囲内での変更を許容するように設定されてもよい。ここで、平滑化優先度は、値が大きいほどポンプの切り替え回数が少ないことを意味する。すなわち、平滑化優先度が大きいほど、1日におけるポンプの運転台数の変化が小さく、かつ各ポンプの連続運転時間が長い運転計画が作成される。
【0058】
この場合、実施形態と同様に予め定められた表示数分だけ運転計画が作成されてもよいし、第1の変形例と同様に表示数分よりも多い数の運転計画が作成されてもよい。また、この場合、支援情報は、実施形態又は第1の変形例と同様の態様で表示されてもよいが、これらと異なる態様で表示されてもよい。例えば、運転計画は、予め定義された各種パターンに対応づけられて表示されてもよい。
【0059】
図12は、変形例における支援情報の表示例を示す図である。
図12は、選択された各運転計画が、ポンプ運転の平滑化を重視するパターン(平滑化重視パターン)、配水池DRの運用水位を重視するパターン(水位重視パターン)、及び電気料金を重視するパターン(料金重視パターン)の3つの運転計画パターンに対応づけられた表示例を示す。この場合、比較条件生成部104がこの3パターンに対応する比較条件を作成してもよいし、表示制御部106が、複数作成された運転計画の中からこれらのパターンに当てはまる運転計画を選択してもよい。このように、予め各種パターンとして定められた選択基準に応じた運転計画が比較対象として表示されることにより、ユーザは、より容易に運転計画策定の意思決定を行うことができる。
【0060】
なお、このような態様の表示においても、運転計画条件を変更するためのユーザインタフェースが表示されてもよい。例えば、
図12の例のように、運転計画パターンを選択するためのプルダウンメニューPM61~PM63が表示されてもよい。一部の運転計画条件の設定値の表示(図では運用水下限の表示)とともに、その設定値を変更するレンジスライダRS61~RS63が表示されてもよい。この場合、運転計画作成部105は、運転計画条件の変更に応じて運転計画を再作成し、表示制御部106は、再作成された運転計画に基づいて支援情報を更新する。
【0061】
(その他の変形例)
運転計画条件又は変更可能条件は、運転計画作成の都度ユーザの入力によって設定されてもよいし、過去のユーザの入力が再利用されてもよい。この場合、例えば、条件設定部107は、ユーザが入力した運転計画条件又は変更可能条件の設定値を示す設定情報を記憶部101に記憶させる。そして、条件設定部107は、次回以降の設定時に、記憶部101に蓄積された設定情報に基づいて再利用可能な設定値の候補を入力画面に表示させ、使用すべき設定値を表示された候補の中からユーザに選択させる。
【0062】
また、運転計画支援装置1は、運転計画の対象となる機器(例えばポンプ)の過去の運転履歴や、運転計画条件又は変更可能条件に関連する測定値(例えば配水池DRの水位)などを示す履歴情報を取得する履歴情報取得部(図示せず)をさらに備え、取得した履歴情報に基づいて運転計画条件又は変更可能条件の各設定値の入力候補をユーザに提供するように構成されてもよい。この場合、例えば、履歴情報取得部は、取得した履歴情報を記憶部101に記憶させる。一方、条件設定部107は、運転計画条件又は変更可能条件の設定時において、記憶部101に蓄積された履歴情報に基づいて各設定値の入力候補を生成する。例えば、設定対象が運用水位下限であって、過去の運用水位下限が2m~3mの範囲に収まっている場合、条件設定部107は、その範囲内で重複しない数値を1つ以上(例えば0.5刻みで3個)選択する。そして、条件設定部107は、選択した数値を設定値の候補として入力画面に表示させ、使用すべき設定値を表示された候補の中からユーザに選択させる。このように、運転計画条件又は変更可能条件の設定時において、過去の入力情報や履歴情報に基づく設定値の候補が提供されることにより、ユーザはより容易に運転計画条件又は変更可能条件の設定を行うことができる。
【0063】
実施形態の運転計画支援装置1は、ネットワークを介して通信可能な端末装置に支援情報を表示させるように構成されてもよい。この場合、運転計画支援装置1は、表示部102に代えて通信部を備え、表示制御部106は、生成した支援情報を、通信部を介して端末装置に送信するように構成されてもよい。このような構成によれば、運転計画支援装置1は、運転計画の策定を支援する支援情報を、ネットワークを介して提供するクラウドサーバとしても機能することが可能である。
【0064】
上記の実施形態では、運転計画支援装置1が将来の運転計画を支援する例を説明したが、運転計画支援装置1が表示する運転計画は必ずしも将来の運用を想定したものでなくてもよい。例えば、運転計画支援装置1において、基本条件は、過去実績の運転計画の作成に用いられた運転計画条件であってもよい。この場合、上記の実施形態と同様の処理によって比較対象となる運転計画を作成し、過去実績の運転計画と比較して表示することで、過去実績の運転計画に対する改善の度合いをユーザに提示することも可能である。
【0065】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、実施形態の運転計画支援装置は、一以上の運転計画条件について、基本条件に基づく運転計画(第1の運転計画)の比較対象となる運転計画(第2の運転計画)を作成する際の運転計画条件を、基本条件の一部又は全部を変更することによって生成する比較条件生成部と、基本条件を満たす運転計画を作成するとともに、比較条件を満たす運転計画を作成する運転計画作成部と、作成された各運転計画に関する情報を比較可能な態様で表示部に表示させる表示制御部と、を持つことにより、複数の運転計画の比較をより容易に行うことができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
100…配水システム、FP…浄水場、CR…浄水池、DD…配水区、DR…配水池、1…運転計画支援装置、101…記憶部、102…表示部、103…入力部、104…比較条件生成部、105…運転計画作成部、106…表示制御部、107…条件設定部、D501~D512…個別表示内の各表示、D71~D73…個別表示、TB101~TB113,TB21~TB26,TB31,TB32,TB41~TB45…テキストボックス、B1~B4…設定ボタン、CB1…チェックボックス、G51,G51-1~G51-3…棒グラフ、P1~P6…ポンプ、PM11~PM13,PM61~PM63…プルダウンメニュー、S31,S32…幅指定インタフェース、RS41,RS51,RS61~RS63…レンジスライダ、S…ポインタ、T31…時間軸