(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119624
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】誘導加熱コイル及び高周波焼入装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/36 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
H05B6/36 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022577
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】390026088
【氏名又は名称】富士電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】花木 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘子
【テーマコード(参考)】
3K059
【Fターム(参考)】
3K059AA09
3K059AB09
3K059AD03
3K059CD48
3K059CD53
(57)【要約】
【課題】本開示は、リード部において電力効率を向上させ、省電力の誘導加熱コイルを提供することができる。
【解決手段】本開示に係る誘導加熱コイルは、ワークに近接させてワークに誘導電流を励起させるコイル部と、当該コイル部に電流供給するリード部を有する誘導加熱コイルにおいて、前記リード部は、絶縁体を介して対向する第1のリード部と第2のリード部とを有し、前記第1のリード部及び前記第2のリード部の2つの対向面が曲面又は傾斜面であり、前記2つの対向面が平行である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに近接させてワークに誘導電流を励起させるコイル部と、当該コイル部に電流供給するリード部を有する誘導加熱コイルにおいて、
前記リード部は、絶縁体を介して対向する第1のリード部と第2のリード部とを有し、
前記第1のリード部及び前記第2のリード部の2つの対向面が曲面又は傾斜面であり、
前記2つの対向面が平行であることを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項2】
前記曲面が波形形状であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項3】
前記傾斜面が波形形状であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項4】
前記2つの対向面が、曲面と傾斜面との組合せ構造であることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱コイル。
【請求項5】
前記曲面と傾斜面との組合せ構造が、波形形状であることを特徴とする請求項4に記載の誘導加熱コイル。
【請求項6】
前記第1のリード部及び前記第2のリード部は、金属3D積層造形技術で作製されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導加熱コイル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の誘導加熱コイルと、高周波発振装置とを有することを特徴とする高周波焼入装置。
【請求項8】
ワークに近接させてワークに誘導電流を励起させるコイル部と、当該コイルに電流供給するリード部を有する誘導加熱コイルにおいて、
前記リード部は、絶縁体を介して対向する第1のリード部と第2のリード部とを有し、
前記第1のリード部及び前記第2のリード部の2つの対向面において、前記2つの対向面の長手方向に垂直な断面が円弧形状であり、
前記対向面の円弧形状の一部が平行であることを特徴とする誘導加熱コイル。
【請求項9】
前記第1のリード部及び前記第2のリード部は、金属3D積層造形技術で作製されることを特徴とする請求項8に記載の誘導加熱コイル。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の誘導加熱コイルと、高周波発振装置とを有することを特徴とする高周波焼入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力効率を高めた誘導加熱コイル及び高周波焼入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波焼入装置は、ワークに焼入れを行い、ワークの強度を高めるものである。高周波焼入装置は、ワークの熱容量が大きい場合、大きな電力が必要となる。
図7(a)は、特許文献1の高周波焼入装置1の全体構造を模式的に表す斜視図である。
図7(a)に示す様に、高周波焼入装置1は、誘導加熱コイル10と高周波発振装置20とを備えている。
誘導加熱コイル10は、第1のリード部3と、第2のリード部4と、コイル部2と、第1の電源リード部7と、第2の電源リード部8と、冷却剤供給口5、冷却剤排出口6とを有している。
高周波発振装置20は、商用電源52から電力(100V又は200V、50又は60Hzなどの交流電力)が供給され、その電力を焼入に適切な周波数と振幅の電力に変換するものである。
【0003】
図9は、高周波焼入装置1を模式的に表す回路図である。
図9に示す様に、高周波発振装置20は、高周波発振器53と、トランス54と、接続線21とを有している。
コイル部2には、高周波発振装置20側から高周波電力が供給される。
高周波発振器53は、商用電源52と接続され、任意の周波数の電力を発生する。高周波発振器53は、高周波の周波数の電力を発生させるが、低周波の周波数の電力を発生させてもよい。
トランス54の一次側は、高周波発振器53と接続されている。
また、トランス54の二次側は、接続線21を介して、第1の電源リード部7と、第2の電源リード部8とに接続され、任意の振幅の電力を第1の電源リード部7及び第2の電源リード部8に供給する。
つまり、高周波発振装置20は、接続線21を介して、第1の電源リード部7と、第2の電源リード部8とに接続され、任意の周波数及び任意の振幅の電力を第1の電源リード部7及び第2の電源リード部8とに供給する。
【0004】
図7(a)に示す様に、第1の電源リード部7と第2の電源リード部8とは、第1のリード部3と第2のリード部4とに、それぞれ、接続されている。
第1のリード部3と第2のリード部4とは、絶縁体9を介して対向し、それぞれ直線状に延びている。絶縁体9は、第1のリード部3と第2のリード部4とを電気的に絶縁するもので、無機材料、有機材料、空気などである。
【0005】
コイル部2は、第1のリード部3と第2のリード部4との間に配置され、第1のリード部3と第2のリード部4と電気的に接続されている。
図7(a)に示す様に、コイル部2は、コイル部2の内側に配置されたワーク(図示せず)を誘導加熱するためのコイルであり、銅又は銅合金等の良導体である。コイル部2の断面は、矩形状の中空構造を有している。コイル部2の内部には、誘導加熱時に自身の昇温を抑制する冷却剤(水、空気など)が通過する。
【0006】
第1のリード部3及び第2のリード部4は、中空の直線形状である。中空の線状部材からなる第1のリード部3及び第2のリード部4の内部には、誘導加熱時に自身の昇温を抑制する冷却剤(水、空気など)が通過する。具体的には、冷却剤供給口5から冷却剤を第1のリード部3の内部に供給し、コイル部2の内部を冷却剤が通って、第2のリード部4の内部に冷却剤が供給され、冷却剤排出口6から冷却剤が排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図7(b)は、特許文献1の第1のリード部3及び第2のリード部4の長手方向に垂直な断面を模式的に表す断面図である。
図7(b)に示す様に、第1のリード部3及び第2のリード部4の長手方向に垂直な断面は、矩形状の中空構造で構成されている。第1のリード部3及び第2のリード部4は、中空の矩形状のパイプであり、製造が容易である。特に、上記断面は、製造のし易さの観点より正方形が好ましい。
第1のリード部3と第2のリード部4とは近接して平行に配置されている。そして、第1のリード部3と第2のリード部4との間に、無機材料、有機材料、空気などである絶縁体9が配置されている。
図7(b)の場合、絶縁体9は空気である。
【0009】
図7(b)の左側の二点鎖線は、第1のリード部3の断面の各辺の外輪と内輪との中心線である。つまり、
図7(b)の左側の二点鎖線は、第1のリード部3の断面の各辺の幅の概念をなくし、第1のリード部3の断面の各辺を模式的に表す線である。第1のリード部3の二点鎖線は、正方形を構成し、4つの辺から構成される。
ここで、
図7(b)において、第1のリード部3の正方形の右上の頂点をQ1とし、他の辺の交点を時計回りにQ2、Q3、Q4とし、4つの辺を辺Q1Q2、辺Q2Q3、辺Q3Q4、辺Q4Q1と定義する。
同様に、
図7(b)の右側の第2のリード部4の二点鎖線は、正方形を構成し、4つの辺から構成される。
第2のリード部4の左上の頂点をQ5とし、他の辺の交点を反時計回りにQ6、Q7、Q8とし、4つの辺を辺Q5Q6、辺Q6Q7、辺Q7Q8、辺Q8Q5と定義する。
辺Q4Q1と辺Q2Q3とは、平行である。
辺Q1Q2と辺Q4Q1とは、垂直である。よって、辺Q1Q2の長さは、辺Q4Q1と辺Q2Q3との間の距離が、最も短い距離となる。
辺Q8Q5と辺Q6Q7とは、平行である。
辺Q5Q6と辺Q8Q5とは、垂直である。よって、辺Q5Q6の長さは、辺Q8Q5と辺Q6Q7との間の距離が、最も短い距離となる。
辺Q1Q2と辺Q5Q6とは平行であって、近接して絶縁体9を介して対向している。
図7(b)において、第1のリード部3の右辺Q1Q2と第2のリード部4の左辺Q5Q6とが近接して対向している。そして、第1のリード部3に流れる電流の向きと、第2のリード部4に流れる電流の向きとは逆向きである。
その結果、第1のリード部3及び第2のリード部4に供給される電力の周波数が高ければ高い程、又、電力が大きければ大きい程、近接効果により、
図7(b)の斜線の箇所の様に、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面において、電流密度が高くなる。そして、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面において、発熱が生じ、第1のリード部3及び第2のリード部4において、電力の効率を上げられないという改良の余地があった。
本開示は、第1のリード部3及び第2のリード部4において、電力効率を向上させ、省電力の誘導加熱コイルを提供する。
【0010】
図8(a)は、従来技術の別の高周波焼入装置1の全体構造を模式的に表す斜視図である。
図8(a)において、第1のリード部3、第2のリード部4及びコイル部2が円筒形状のパイプである点以外は、
図7(a)と同じである。
円筒形状のパイプは、製造が容易で、安価である。
図8(b)は、
図8(a)の第1のリード部3及び第2のリード部4の長手方向に垂直な断面を模式的に表す断面図である。
図8(b)の左側の二点鎖線は、第1のリード部3の断面の外輪と内輪との中心線である。つまり、第1のリード部3の二点鎖線は、第1のリード部3の断面の幅の概念をなくし、第1のリード部3の断面を模式的に表す線である。第1のリード部3の二点鎖線は、円形状を構成する。第2のリード部4の二点鎖線も第1のリード部3の二点鎖線と同様である。
図8(b)において、第1のリード部3の二点鎖線の円形状の上側の頂点をD1、円形状の下側の頂点をD2、第2のリード部4の二点鎖線の円形状の上側の頂点をD4、円形状の下側の頂点をD5と定義する。
【0011】
図8(b)において、第1のリード部3の円弧状の右辺D1D2と第2のリード部4の円弧状の左辺D4D5とが近接して、対向している。そして、第1のリード部3に流れる電流の向きと、第2のリード部4に流れる電流の向きとは逆向きである。
その結果、第1のリード部3及び第2のリード部4に供給される電力の周波数が高ければ高い程、又、電力が大きければ大きい程、近接効果により、
図8(b)の斜線の箇所の様に、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面において、電流密度が高くなる。そして、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面において、発熱が生じ、第1のリード部3及び第2のリード部4において、電力の効率を上げられないという改良の余地があった。
本開示は、第1のリード部3及び第2のリード部4において、電力効率を向上させ、省電力の誘導加熱コイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様に係る誘導加熱コイルは、
ワークに近接させてワークに誘導電流を励起させるコイル部と、当該コイル部に電流供給するリード部を有する誘加熱コイルにおいて、
前記リード部は、絶縁体を介して対向する第1のリード部と第2のリード部とを有し、
前記第1のリード部及び前記第2のリード部の2つの対向面が曲面又は傾斜面であり、
前記2つの対向面が平行である。
上記態様によれば、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面の面積を曲面又は傾斜面とすることで増加させ、電力効率を向上させた誘導加熱コイルを提供できる。
【0013】
好ましい態様は、前記曲面が波形形状である。
上記態様によれば、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面の面積を波形形状の面積とすることで増加させ、電力効率を向上させた誘導加熱コイルを提供できる。
さらに好ましい態様は、前記傾斜面が波形形状である。
上記態様によれば、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面の面積を傾斜面の波形形状の面積とすることで増加させ、電力効率を向上させた誘導加熱コイルを提供できる。
さらに好ましい態様は、前記曲面と傾斜面との組合せ構造が、波形形状である。
上記態様によれば、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面の面積を波形形状の面積とすることで増加させ、電力効率を向上させた誘導加熱コイルを提供できる。
さらに好ましい態様は、上記記載の誘導加熱コイルと、高周波発振装置とを有する高周波焼入装置を提供できる。
上記態様によれば、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面の面積を増加させて、リード部において、電力効率を向上させ、省電力の高周波焼入装置を提供できる。
本開示の一態様に係る別の誘導加熱コイルは、ワークに近接させてワークに誘導電流を励起させるコイル部と、当該コイルに電流供給するリード部を有する誘導加熱コイルにおいて、前記リード部は、絶縁体を介して対向する第1のリード部と第2のリード部とを有し、前記第1のリード部及び前記第2のリード部の2つの対向面において、前記2つの対向面の長手方向に垂直な断面が円弧形状であり、前記対向面の円弧形状の一部が平行である。
上記態様によれば、前記対向面の円弧形状の一部が平行とすることで、リード部において、電力効率を向上させ、省電力の誘導加熱コイルを提供できる。
好ましい態様は、上記記載の誘導加熱コイルと、高周波発振装置とを有する高周波焼入装置である。
上記態様によれば、前記対向面の円弧形状の一部が平行とすることで、リード部において、電力効率を向上させ、省電力の高周波焼入装置を提供できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、第1のリード部と第2のリード部とが対向する面の面積を増加させて、第1のリード部及び第2のリード部において、電力効率を向上させ、省電力の誘導加熱コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一態様である実施形態1におけるリード部を模式的に表す斜視図である。
【
図2】本開示の一態様である実施形態1におけるリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図3】本開示の一態様である実施形態2におけるリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図4】本開示の一態様である実施形態3におけるリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図5】本開示の一態様である実施形態4におけるリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図6】本開示の一態様である実施形態5におけるリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図7】従来技術の一態様の高周波焼入装置の図であり、(a)は全体構造を模式的に表す斜視図であり、(b)はリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図8】従来技術の別の態様の高周波焼入装置の図であり、(a)は全体構造を模式的に表す斜視図であり、(b)はリード部の断面を模式的に表す断面図である。
【
図9】従来技術の高周波焼入装置の概略の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
【0017】
(実施形態1)
以下、本開示の一態様を示す実施形態1の高周波焼入装置1の第1のリード部3及び第2のリード部4について図面を用いて説明する。
実施形態1の高周波焼入装置1の概略の全体構成は、従来技術の
図7、8、9とほぼ同様であるので、実施形態1の高周波焼入装置1の概略の全体構成の説明は省略する。
実施形態1において、実施形態1の第1のリード部3及び第2のリード部4の長手方向に垂直な断面形状は、従来技術の第1のリード部3及び第2のリード部4の長手方向に垂直な断面形状と異なる。
【0018】
図1は、実施形態1における第1のリード部3及び第2のリード部4を模式的に表す斜視図である。第1のリード部3及び第2のリード部4は、中空形状であって、直線状に延びている。第1のリード部3及び第2のリード部4の内部は冷却剤が通り、冷却剤により、第1のリード部3及び第2のリード部4が冷却される。
第1のリード部3と第2のリード部4との間には、無機材料、有機材料、空気などである絶縁体9が介在している。
図1において、第1のリード部3及び第2のリード部4の手前側には、コイル部2が接続されている(図示せず)。第1のリード部3及び第2のリード部4の奥側には、第1の電源リード部7及び第2の電源リード部8が、それぞれ、電気的に接続されている(図示せず)。
【0019】
図2は、実施形態1における第1のリード部3及び第2のリード部4の断面を模式的に表す断面図である。
第1のリード部3と第2のリード部4と対向する2面が、曲面と傾斜面とで構成されている。
図2の二点鎖線は、断面の外輪と内輪との中心線である。
図2を用いて、本開示について詳細に説明する。
ここで、
図2において、第1のリード部3の右上の頂点をP1とし、他の変曲点を時計回りにP1’、P1’’、P2、P3、P4と定義する。又、第2のリード部4の左上の頂点をP5とし、他の変曲点を反時計回りにP5’、P5’’、P6、P7、P8と定義する。
【0020】
第1のリード部3と第2のリード部4と対向する2辺は、第1のリード部3では、辺P1P1’、辺P1’P1’’、辺P1’’P2とから構成され、第2のリード部4では、辺P5P5’、辺P5’P5’’、辺P5’’P6とから構成される。
辺P1P1’は左側に凸形状となる円弧形状の曲線で、辺P1’P1’’は直線で、辺P1’’P2は右側に凸形状となる円弧形状の曲線である。
辺P5P5’は左側に凸形状となる円弧形状の曲線で、辺P5’P5’’は直線で、辺P5’’P5は右側に凸形状となる円弧形状の曲線である。
左側の辺P1P1’P1’’P2と右側の辺P5P5’P5’’P6とは、平行である。そして、左側の辺P1P1’P1’’P2と右側の辺P5P5’P5’’P6との間に、絶縁体9が配置されている。
辺P4P1と辺P2P3とは、平行であり、辺P8P5と辺P6P7とは、平行である。辺P3P4と辺P7P8とは、曲線である。
【0021】
図2において、P4を通り辺P4P1と垂直である線分Q1Q2の長さと、従来技術の
図7における辺Q1Q2の長さとは、同じ長さである。
左側の辺P1P1’P1’’P2の長さは、曲線と直線の組合せからなるので、線分Q1Q2の長さより長くなっている。
図2において、P8を通り辺P8P5と垂直である線分Q5Q6の長さと、従来技術の
図7における辺Q5Q6の長さとは、同じである。
右側の辺P5P5’P5’’P6の長さは、曲線と直線の組合せからなるので、線分Q5Q6の長さより長くなっている。
【0022】
第1のリード部3と第2のリード部4と対向する2面が、曲面と傾斜面との組合せで構成されているので、上記対向する2面の表面積が、従来技術である
図7の対向する2面の表面積より大きくできる。その結果、上記対向する2面の電流密度を低下することができ、省電力の第1のリード部3及び第2のリード部4を実現できる。
【0023】
上記の曲面と傾斜面との組合せの形状は、金属3D積層造形技術で作製することができる。金属3D積層造形技術は、パウダーベッド方式、デポジション方式、バインダージェッティング方式などがあり、複雑な金属の立体形状を作製できる。
尚、上記曲面の意味は、対向する2面の一部が曲面である意味を含み、曲面と傾斜面との組合せ、曲面と鉛直面(平面)との組合せの場合を含む。
尚、左側の辺P1P1’P1’’P2の形状及び右側の辺P5P5’P5’’P6の形状は、左右反転させた形状でもよい。
尚、左側の断面の曲線P1P1’P1’’P2と右側の断面の曲線P5P5’P5’’P6とは平行であり、曲線P5P5’P5’’P6は、曲線P1P1’P1’’P2の平行曲線である。平行曲線とは、各点における接線に対して垂直な方向に一定距離離れた曲線のことである。
「第1のリード部及び第2のリード部の2つの対向面が曲面又は傾斜面であり、2つの対向面が平行である」とは、「第1のリード部及び第2のリード部の長手方向に垂直な断面の2つの対向する辺において、2つの対向する辺が、平行曲線又は傾斜した平行線である」という意味である。
以下、曲線が平行であるとは、平行曲線のことである。
(実施形態2)
【0024】
以下、本開示の別の態様を示す第1のリード部3及び第2のリード部4について、
図3を用いて説明する。
実施形態1の
図2の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面と実施形態2の
図3の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面とは、形状が異なる。
図3の第1のリード部3と第2のリード部4と対向する面は、全て曲面である。
【0025】
図3は、第1のリード部3及び第2のリード部4の断面を中心線で代表させて、模式的に表した図である。
第1のリード部3及び第2のリード部4は、4つの辺から構成される。
図3において、第1のリード部3の右上の頂点をP1とし、他の辺の交点を時計回りにP2、P3、P4とし、4つの辺を辺P1P2、辺P2P3、辺P3P4、辺P4P1と定義する。又、第2のリード部4の左上の頂点をP5とし、他の辺の交点を反時計回りにP6、P7、P8とし、4つの辺を辺P5P6、辺P6P7、辺P7P8、辺P8P5と定義する。
【0026】
図3の左側の曲線P1P2及び右側の曲線P5P6は、凸部と凹部とを組合せた波形形状である。凸部とは、正方形P1P2P3P4及び正方形P5P6P7P8より外側に突出する箇所であり、凹部とは、正方形P1P2P3P4及び正方形P5P6P7P8の内側に入り込む箇所のことである。
【0027】
曲線P1P2と曲線P5P6とは平行である。
曲線P1P2と曲線P5P6との間に、絶縁体9が配置されている。
辺P2P3と辺P4P1とは平行であり、辺P6P7と辺P8P5とは平行である。
辺P3P4と辺P7P8とは直線であるが、曲線でもよい。
【0028】
図3において、辺P4P1と辺P2P3との間の距離を表す線分Q1Q2(二点鎖線)の長さと、従来技術の
図7における辺Q1Q2の長さとは、同じである。
左側の曲線P1P2の長さは、曲線からなるので、線分Q1Q2の長さより長くなっている。
辺P8P5と辺P5P6との間の距離を表す線分Q5Q6(二点鎖線)の長さと、従来技術の
図8における辺Q5Q6の長さとは、同じである。
右側の曲線P5P6の長さも、上記と同様に、辺P8P5と辺P6P7との間の距離を表す線分Q5Q6(二点鎖線)の長さより長くなっている。
【0029】
第1のリード部3と第2のリード部4の対向する2面が、曲面で構成されているので、上記対向する2面の表面積が、従来技術である
図7の対向する2面の表面積より大きくできる。その結果、上記対向する2面の電流密度を低下することができ、省電力の第1のリード部3及び第2のリード部4を実現できる。
尚、左側の曲線P1P2の形状及び右側の曲線P5P6の形状は、左右反転させた形状でもよい。
(実施形態3)
【0030】
以下、本開示の別の態様を示す第1のリード部3及び第2のリード部4について、
図4を用いて説明する。
実施形態1の
図2の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面と実施形態3の
図4の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面とは、形状が異なる。
具体的には、
図2の第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面は、曲面と斜面であったが、
図4の第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面は、全て斜面である。
【0031】
図4は、第1のリード部3及び第2のリード部4の断面を中心線で代表させて、模式的に表した図である。
辺P1P2は、辺P4P1に対して、直角ではなく、角P4P1P2が鋭角となる傾斜した直線である。
辺P5P6は、辺P8P5に対して、直角ではなく、角P8P5P6が鈍角となる傾斜した直線である。
辺P1P2と辺P5P6とは、平行である。
辺P1P2と辺P5P6との間に、絶縁体9が配置されている。
辺P4P1と辺P2P3とは平行であり、辺P8P5と辺P6P7とは平行である。
辺P3P4と辺P7P8とは直線であるが、曲線でもよい。
【0032】
図4において、辺P4P1と辺P2P3との距離を表す線分Q1Q2(二点鎖線)の長さと、従来技術の
図7における辺Q1Q2の長さとは、同じである。
左側の辺P1P2の長さは、傾斜した直線であるので、線分Q1Q2の長さより長くなっている。
右側の辺P5P6の長さも、同様に、線分Q5Q6(二点鎖線)の長さより長くなっている。
よって、第1のリード部3と第2のリード部4の対向する2面が、斜面で構成されているので、上記対向する2面の表面積が、従来技術である
図7の対向する2面の表面積より大きくできるので、上記対向する2面の電流密度を低下することができ、省電力の第1のリード部3及び第2のリード部4を実現できる。
尚、左側の辺P1P2の形状及び右側の辺P5P6の形状は、左右反転させた形状でもよい。
(実施形態4)
【0033】
以下、本開示の別の態様を示す第1のリード部3及び第2のリード部4について、
図5を用いて説明する。
実施形態1の
図2の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面と実施形態4の
図5の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面とは、形状が異なる。
具体的には、
図2の第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面は、曲面と斜面であったが、
図5の第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面は、斜面を軸として曲面を設けたものである。
【0034】
図5は、第1のリード部3及び第2のリード部4の断面を中心線で代表させて、模式的に表した図である。
辺P1P2(破線)は、辺P4P1に対して、直角ではなく、角P4P1P2が鋭角となる傾斜した直線である。
辺P5P6(破線)は、辺P8P5に対して、直角ではなく、角P8P5P6が鈍角となる傾斜した直線である。
曲線P1P2は、辺P1P2(破線)を軸として、凸部と凹部とを組合せた波形形状を傾けたものである。
曲線P5P6は、辺P5P6(破線)を軸として、凸部と凹部とを組合せた波形形状を傾けたものである。
【0035】
曲線P1P2と曲線P5P6とは、平行である。
曲線P1P2と曲線P5P6との間に、絶縁体9が配置されている。
辺P4P1と辺P2P3とは平行であり、辺P8P5と辺P6P7とは平行である。
辺P3P4と辺P7P8とは直線であるが、曲線でもよい。
【0036】
図5において、辺P4P1と辺P2P3との距離を表す線分Q1Q2(二点鎖線)の長さと、従来技術の
図7における辺Q1Q2の長さとは、同じである。
左側の曲線P1P2の長さは、傾斜した曲線であるので、線分Q1Q2の長さより長くなっている。
図5において、辺P8P5と辺P5P6との距離を表す線分Q5Q6(二点鎖線)の長さと、従来技術の
図7における辺Q5Q6の長さとは、同じである。
右側の曲線P5P6の長さも、左側と同様に、線分Q5Q6の長さより長くなっている。
【0037】
第1のリード部3と第2のリード部4と対向する2面が、斜面で構成されているので、上記対向する2面の表面積が、従来技術である
図7の対向する2面の表面積より大きくできる。その結果、上記対向する2面の電流密度を低下することができ、省電力の第1のリード部3及び第2のリード部4を実現できる。
尚、左側の辺P1P2の形状及び右側の辺P5P6の形状は、左右反転させた形状でもよい。
(実施形態5)
【0038】
以下、本開示の別の態様を示す第1のリード部3及び第2のリード部4について、
図6を用いて説明する。
実施形態1の
図2の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面と実施形態4の
図5の第1のリード部3及び第2のリード部4の断面とは、形状が異なる。
具体的には、
図2の第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面は、曲面と斜面であったが、
図6の第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する面は、ほぼ円筒の面である。
【0039】
図6は、第1のリード部3及び第2のリード部4の断面を中心線で代表させて、模式的に表した図である。
第1のリード部3の断面は、右辺C1C2と左辺C2C1とで囲まれる円に、右辺C1C2に凸部C3を有する。
第2のリード部4の断面は、左辺C4C5と右辺C5C4とで囲まれる円に、左辺C4C5に凹部C6を有する。
凸部C3と凹部C6とは平行である。
右辺C1C3C2と左辺C4C6C5との間に、絶縁体9が配置されている。
【0040】
図6において、第1のリード部3の断面である辺C1C3C2は、
図8(b)の左側の半円D1D2の長さより長くなっている。
第2のリード部4の断面である左側の辺C4C6C5の長さも、同様に、
図8(b)の右側の半円D4D5の長さより長くなっている。
【0041】
第1のリード部3と第2のリード部4の対向する2つの断面が、半円の長さより長く構成されているので、従来技術である
図8の対向する2つの半円の長さより大きくできる。その結果、第1のリード部3と第2のリード部4とが対向する2面の電流密度を低下することができ、省電力の第1のリード部3及び第2のリード部4を実現できる。
尚、左辺C1C3C2の形状及び右辺C4C6C5の形状は、左右反転させた形状でもよい。
【0042】
尚、
図2において、第1のリード部3と第2のリード部4の対向する2面を、曲面と傾斜面との組合せとしたが、曲面と鉛直面(平面)との組合せとしてもよい。
尚、
図3の左側の曲線P1P2及び右側の曲線P5P6を、凸部と凹部とを組合せた波形形状としたが、単に1つの凸部又は1つの凹部を有する曲線でもよい。
【0043】
尚、実施形態1~4に係る発明は、矛盾が生じない限り、置き換えたり、組合せたりすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 高周波焼入装置
2 コイル部
3 第1のリード部
4 第2のリード部
7 第1の電源リード部
8 第2の電源リード部
9 絶縁体
10 誘導加熱コイル
20 高周波発振装置