(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119628
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20230822BHJP
F15B 15/18 20060101ALI20230822BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20230822BHJP
F16F 9/46 20060101ALI20230822BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230822BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B61F5/24 F
F15B15/18
F15B11/02 F
F16F9/46
F16F15/02 B
F16F15/023 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022588
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晋平
【テーマコード(参考)】
3H081
3H089
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC23
3H081CC27
3H081DD22
3H081DD32
3H081DD36
3H081DD37
3H081HH08
3H089BB10
3H089BB27
3H089CC01
3H089DA02
3H089DA14
3H089DB03
3H089DB33
3H089DB44
3H089DB48
3H089GG02
3H089JJ12
3J048AA02
3J048AC04
3J048BE03
3J048CB21
3J048EA36
3J069AA50
3J069EE01
3J069EE35
(57)【要約】
【課題】大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を向上できるシリンダ装置を提供する。
【解決手段】本発明のシリンダ装置Cは、伸縮ユニット1と、タンク7と、伸縮ユニット1におけるシリンダ2とタンク7との間に設けられるアクチュエータ回路Aとダンパ回路Dとを備え、アクチュエータ回路Aは、ロッド側室5とタンク7とを連通する制御通路40に設けられた推力調整部FTを有し、ダンパ回路Dは、ピストン側室6を推力調整部FTに接続する圧側減衰通路26に圧側リリーフ弁27を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて前記シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンとを有する伸縮ユニットと、
タンクと、
前記タンクから前記シリンダに液体を供給可能なポンプと、前記ロッド側室と前記タンクとを連通するとともに途中に可変リリーフ弁が設けられる調整通路と、前記ロッド側室と前記タンクとを連通するとともに途中にリリーフ弁とバイパス通路開閉弁とが直列に設けられるバイパス通路とを有して前記伸縮ユニットを伸縮駆動させ得るアクチュエータ回路と、
前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する伸側減衰通路と、前記伸側減衰通路に設けられて前記ロッド側室から前記ピストン側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁と、前記ピストン側室を前記バイパス通路の前記リリーフ弁と前記バイパス通路開閉弁との間に接続する圧側減衰通路と、前記圧側減衰通路に設けられて前記ピストン側室から前記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リリーフ弁と、前記タンクと前記ピストン側室とを連通する吸込通路と、前記吸込通路に設けられて前記タンクから前記ピストン側室へ向かう液体の流れを許容する吸込チェック弁とを含むダンパ回路とを備え、
前記可変リリーフ弁と前記バイパス通路開閉弁とは同一のソレノイドによって駆動される電磁弁であって、
前記可変リリーフ弁は、前記ソレノイドの通電時に開弁圧の調整が可能であって、
前記バイパス通路開閉弁は、前記ソレノイドの通電時に閉弁するとともに前記ソレノイドの非通電時に開弁し、
前記ポンプを駆動するアクチュエータモード時に前記バイパス通路開閉弁を閉弁させてバイパス通路を遮断し、前記ポンプを停止させるダンパモード時に前記バイパス通路開閉弁を開弁させて前記バイパス通路を開放させる
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
シリンダと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと、前記シリンダ内に移動可能に挿入されるとともに前記ロッドに連結されて前記シリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンとを有する伸縮ユニットと、
タンクと、
前記タンクから前記シリンダに液体を供給可能なポンプと、前記ロッド側室と前記タンクとを連通する制御通路と、前記制御通路に設けられた推力調整部とを有して、前記伸縮ユニットを伸縮駆動させ得るアクチュエータ回路と、
前記ロッド側室と前記ピストン側室とを連通する伸側減衰通路と、前記伸側減衰通路に設けられて前記ロッド側室から前記ピストン側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁と、前記ピストン側室を前記推力調整部に接続する圧側減衰通路と、前記圧側減衰通路に設けられて前記ピストン側室から前記タンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リリーフ弁と、前記タンクと前記ピストン側室とを連通する吸込通路と、前記吸込通路に設けられて前記タンクから前記ピストン側室へ向かう液体の流れを許容する吸込チェック弁とを含むダンパ回路とを備え、
前記推力調整部は、前記制御通路の途中に設けられた調整通路と、前記ロッド側室側の圧力が開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁と、通電により開弁圧の調整が可能な可変リリーフ弁とを有し、前記調整通路に前記ロッド側室側から順に前記リリーフ弁と前記可変リリーフ弁とが直列に配置され、
前記圧側減衰通路は、前記ピストン側室を前記調整通路の前記リリーフ弁と前記可変リリーフ弁との間に接続する
ことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項3】
前記伸側リリーフ弁の開弁圧は、前記可変リリーフ弁が前記アクチュエータモード時に採り得る最大開弁圧より高い
ことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリンダ装置は、推力を発揮し、推力を作用させる対象を駆動したり、対象の変位を助成したり、前記対象の振動を抑制したりする。たとえば、鉄道車両における車体を対象とする場合、シリンダ装置は、鉄道車両の車体と台車との間に水平に介装されて、車体の進行方向に対して左右方向の振動を抑制する目的で使用される。そして、シリンダ装置には、たとえば、積極的に推力を車体へ与えて車体の振動を抑制するアクチュエータとしても、車体の振動によって伸縮する際に減衰力を発生して車体の振動を抑制するダンパとしても機能できるものがある。
【0003】
このようなシリンダ装置は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにロッドに連結されるとともにシリンダ内を作動油が充填されたロッド側室とピストン側室とに区画するピストンと、作動油を貯留するタンクと、ロッド側室とピストン側室とを連通する第1通路に設けられた第1開閉弁と、ピストン側室とタンクとを連通する第2通路に設けられた第2開閉弁と、ロッド側室へ液体を供給するポンプと、ポンプを駆動するモータと、ロッド側室とタンクとを連通する排出通路と、排出通路に設けられた開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁と、ピストン側室からロッド側室へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路と、タンクからピストン側室へ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路とを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このように構成されたシリンダ装置は、ポンプを停止して第1開閉弁と第2開閉弁とを閉弁させるとダンパモードとなり、外力を受けて伸縮作動すると作動油がタンク、ピストン側室、ロッド側室を順番に巡ってタンクへ到達するユニフロー型のダンパとして機能する。そして、シリンダ装置は、伸縮作動時にシリンダ内から排出通路を通じてタンクへ排出される作動油の流れに可変リリーフ弁により抵抗を与えて、伸縮を妨げる減衰力を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように従来のシリンダ装置は、必要に応じてアクチュエータとしてもダンパとしても機能できるが、ダンパモードでは、ユニフロー型のダンパとして機能する。ダンパモードのシリンダ装置では、伸長作動時に縮小するロッド側室内から作動油が可変リリーフ弁を通じてタンクに排出されるとともに拡大するピストン側室には吸込通路を介してタンクから作動油が供給される。よって、ダンパモードのシリンダ装置は、伸長作動する場合、ピストンのロッド側室に臨む受圧面に可変リリーフ弁によって上昇するロッド側室内の圧力が作用し、ピストンのピストン側室に臨む受圧面にタンク圧が作用する。タンク圧を0と看做すと伸長作動時のダンパモードのシリンダ装置は、ロッド側室内の圧力にピストンのロッド側室側の受圧面積を乗じた値の減衰力を発生する。
【0007】
他方、ダンパモードのシリンダ装置が収縮作動を呈すると、縮小されるピストン側室から整流通路を通じてロッド側室へ作動油が移動するとともに、シリンダ内にロッドが侵入する体積分の作動油がシリンダ内から可変リリーフ弁を通じてタンクへ排出される。よって、ダンパモードのシリンダ装置は、収縮作動する場合、ピストンのロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面とにそれぞれ等しく可変リリーフ弁によって昇圧されたシリンダ内の圧力が作用する。ピストンのロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面積との差は、ロッドの断面積に等しいので、収縮作動時のダンパモードのシリンダ装置は、シリンダ内の圧力にロッドの断面積を乗じた値の減衰力を発生する。
【0008】
シリンダ装置は、車体の台車に対する左右方向の振動を抑制するものであるから、伸長作動時の減衰力と収縮作動時の減衰力とに偏りがあると伸縮を繰り返すうちに、台車に対して車体が減衰力の小さい方の作動方向へ偏ってしまって好ましくない。そこで、ユニフロー型のダンパとして機能するシリンダ装置は、ロッドの断面積をピストンの断面積の二分の一に設定して、伸長作動しても収縮作動してもシリンダ内でのストローク量が同じであれば等しい流量の作動油が可変リリーフ弁を通過するようにしており、伸長作動時と収縮作動時とで等しい減衰力を発生可能とされている。このように従来のシリンダ装置では、ロッド径とピストン径とに設計上の制約がある。
【0009】
ここで、シリンダ装置の作動媒体である作動油は、粘弾性を有しており、シリンダ装置の減衰係数を高くして大きな減衰力を発生させるには、油柱剛性を高くする必要がある。油柱剛性を高くするには、ピストンの受圧面積を大きくする必要があるので、シリンダ径を大きくすればよいのであるが、そうするとロッド径も大きくなって鉄道車両の他の機器との干渉する恐れがあって、シリンダ径の大径化は難しい。
【0010】
他方、伸長時にロッド側室からピストン側室へ移動する作動油の流れに伸側のリリーフ弁で抵抗を与えて伸側減衰力を発生し、収縮時にピストン側室からタンクへ移動する作動油の流れに圧側のリリーフ弁で抵抗を与えて圧側減衰力を発生するバイフロー型のダンパでは、伸側減衰力と圧側減衰力とをそれぞれ伸側のリリーフ弁と圧側のリリーフ弁で任意に設定できるので、シリンダ径の大型化を招かずに減衰係数を高くできる。しかしながら、バイフロー型のダンパでは、ピストン側室に作動油を供給すると圧側のリリーフ弁からタンクへ作動油が逃げてしまってアクチュエータとして利用することが難しい。
【0011】
このように、従来のシリンダ装置では、減衰係数を高くしようとするとシリンダ装置の大型化を招いてしまうかアクチュエータとしての利用に問題が生じるといった不具合がある。なお、このような問題は、鉄道車両用に使用されるシリンダ装置に限った話ではなく、シリンダ装置が推力を作用させる対象が鉄道車両以外の車両、構造物や機械等である場合も同様であって、減衰係数を高くしようとするとシリンダ装置の大型化を招いてしまうかアクチュエータとしての利用に問題が生じる。
【0012】
そこで、本発明は、大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を高くできるシリンダ装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のシリンダ装置は、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにロッドに連結されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンとを有する伸縮ユニットと、タンクと、タンクからシリンダに液体を供給可能なポンプと、ロッド側室とタンクとを連通するとともに途中に可変リリーフ弁が設けられる調整通路と、ロッド側室とタンクとを連通するとともに途中にリリーフ弁とバイパス通路開閉弁とが直列に設けられるバイパス通路とを有して前記伸縮ユニットを伸縮駆動させ得るアクチュエータ回路と、ロッド側室とピストン側室とを連通する伸側減衰通路と、伸側減衰通路に設けられてロッド側室からピストン側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁と、ピストン側室をバイパス通路のリリーフ弁とバイパス通路開閉弁との間に接続する圧側減衰通路と、圧側減衰通路に設けられてピストン側室からタンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リリーフ弁と、タンクとピストン側室とを連通する吸込通路と、吸込通路に設けられてタンクからピストン側室へ向かう液体の流れを許容する吸込チェック弁とを含むダンパ回路とを備え、可変リリーフ弁とバイパス通路開閉弁とは同一のソレノイドによって駆動される電磁弁であって、可変リリーフ弁は、ソレノイドの通電時に開弁圧の調整が可能であって、バイパス通路開閉弁は、ソレノイドの通電時に閉弁するとともにソレノイドの非通電時に開弁し、ポンプを駆動するアクチュエータモード時にバイパス通路開閉弁を閉弁させてバイパス通路を遮断し、ポンプを停止させるダンパモード時にバイパス通路開閉弁を開弁させてバイパス通路を開放させる。
【0014】
このように構成された本実施の形態のシリンダ装置は、アクチュエータとしてもダンパとしても機能できるとともに、ダンパとして機能する際に、伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを、ロッドの径とシリンダの径の設定によらず、伸側リリーフ弁と圧側リリーフ弁との設定によって同一の特性に設定できる。
【0015】
さらに、このように構成されたシリンダ装置は、アクチュエータ回路によってポンプから液体をシリンダへ供給し、バイパス路開閉弁で圧側減衰通路を遮断してアクチュエータとして機能できるとともに、ポンプを停止させてバイパス路開閉弁で圧側減衰通路を開放してダンパ回路を利用してダンパとして機能できる。また、このように構成されたシリンダ装置は、ダンパとして機能する場合、伸縮ユニットが伸長作動する場合には伸側リリーフ弁によって減衰力を発生し、伸縮ユニットが収縮作動する場合には圧側リリーフ弁によって減衰力を発生することができる。
【0016】
また、本発明の他のシリンダ装置は、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるロッドと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにロッドに連結されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室とに区画するピストンとを有する伸縮ユニットと、タンクと、タンクからシリンダに液体を供給可能なポンプと、ロッド側室とタンクとを連通する制御通路と、制御通路に設けられた推力調整部とを有して、伸縮ユニットを伸縮駆動させ得るアクチュエータ回路と、ロッド側室とピストン側室とを連通する伸側減衰通路と、伸側減衰通路に設けられてロッド側室からピストン側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁と、ピストン側室を推力調整部に接続する圧側減衰通路と、圧側減衰通路に設けられてピストン側室からタンクへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リリーフ弁と、タンクとピストン側室とを連通する吸込通路と、吸込通路に設けられてタンクからピストン側室へ向かう液体の流れを許容する吸込チェック弁とを含むダンパ回路とを備え、推力調整部は、制御通路の途中に設けられた調整通路と、前記ロッド側室側の圧力が開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁と、通電により開弁圧の調整が可能な可変リリーフ弁とを有し、前記調整通路に前記ロッド側室側から順に前記リリーフ弁と前記可変リリーフ弁とが直列に配置され、圧側減衰通路は、ピストン側室を調整通路のリリーフ弁と可変リリーフ弁との間に接続されている。
【0017】
このように構成された本発明の他のシリンダ装置は、アクチュエータとしてもダンパとしても機能できるとともに、ダンパとして機能する際に、伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを、ロッドの径とシリンダの径の設定によらず、伸側リリーフ弁と圧側リリーフ弁との設定によって同一の特性に設定できる。
【0018】
このように構成されたシリンダ装置は、推力調整部でアクチュエータモード時に圧側減衰通路を遮断する開閉弁を有していなくとも、ダンパモードでは圧側リリーフ弁を利用して圧側減衰力を発生可能であり、推力調整部の構成が簡素となるとともに開閉弁が不要であるから、製造コストを低減できる。
【0019】
さらに、シリンダ装置は、アクチュエータ回路が開弁圧を調整可能であって開弁圧の調整によってポンプからシリンダ内に供給される液体の圧力を調整する可変リリーフ弁を有し、伸側リリーフ弁の開弁圧は可変リリーフ弁がアクチュエータモード時に採り得る最大開弁圧より高くなるように設定されてもよい。このように構成されたシリンダ装置によれば、アクチュエータとして機能する場合、ポンプからシリンダ内に供給される液体をロッド側室からピストン側室へ逃がさないので効率よく収縮側の推力を発生できるとともにエネルギ消費も低減される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシリンダ装置によれば、大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施の形態におけるシリンダ装置の回路図である。
【
図2】シリンダ装置を鉄道車両の車体と台車との間に介装した状態を示す図である。
【
図3】第2の実施の形態におけるシリンダ装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図に示した各実施の形態に基づき、本発明を説明する。各実施の形態のシリンダ装置において、共通の符号が付された部材、部品は、同一の構成を備えている。よって、説明の重複を避けるため、一つの実施の形態のシリンダ装置の説明中で詳細に説明した構成については、他の実施の形態のシリンダ装置の説明では詳しい説明を省略する。なお、本発明のシリンダ装置の説明にあたり、各実施の形態では、鉄道車両に適用されたシリンダ装置を例にして説明しているが、本発明のシリンダ装置は、鉄道車両以外の車両、構造物や建築物、さらには機械等を対象として、当該対象の駆動や振動の抑制にも利用可能である。
【0023】
<第1の実施の形態>
以下、図に示した各実施の形態に基づき、本発明を説明する。第1の実施の形態におけるシリンダ装置Cは、
図1に示すように、伸縮ユニット1と、タンク7と、アクチュエータ回路Aと、ダンパ回路Dとを備えて構成されている。本実施の形態では、2つのシリンダ装置Cが、
図2に示すように、2つ並列して鉄道車両Tの車体Sと台車Bとの間に介装されて使用されており、車体Sの水平方向の振動を抑制するが、1つのシリンダ装置Cが車体Sと台車Bとの間に介装されて使用されてもよい。
【0024】
以下、シリンダ装置Cの各部について説明する。伸縮ユニット1は、シリンダ2と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるロッド3と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるとともにロッド3に連結されてシリンダ2内をロッド側室5とピストン側室6とに区画するピストン4とを備えている。
【0025】
また、ロッド側室5とピストン側室6には液体として作動油が充填されており、また、タンク7には、作動油のほかに気体が充填されている。液体は、作動油以外にも、水や水溶液を使用することも可能である。なお、タンク7内は、特に、気体を圧縮して充填することによって加圧状態とする必要は無いが、加圧状態としてもよい。
【0026】
シリンダ2は筒状であって、その
図1中右端は蓋19によって閉塞され、
図1中左端には環状のロッドガイド20が取り付けられている。また、ロッドガイド20の内周には、シリンダ2内に移動自在に挿入されるロッド3が移動可能に挿入されている。このロッド3は、一端をシリンダ2内に移動可能に挿入されているピストン4に連結してあり、他端をシリンダ2外へ突出させており、シリンダ2に対して軸方向に移動可能とされている。
【0027】
また、このシリンダ装置Cは、シリンダ2の外周を覆う外筒21を備えている。外筒21の
図1中左端と右端は、シリンダ2と同様に、蓋19とロッドガイド20とで閉塞されており、外筒21とシリンダ2との間の環状隙間でタンク7が形成されている。ロッド3の
図1中左端およびシリンダ2の右端を閉塞する蓋19には、図示しない取付部が設けられており、このシリンダ装置Cを鉄道車両Tにおける車体Sと台車Bとの間に介装できる。
【0028】
アクチュエータ回路Aは、シリンダ2とタンク7との間に設けられるとともに、タンク7からシリンダ2に作動油を供給可能なポンプ14を備えて、伸縮ユニット1を伸縮駆動させる回路である。アクチュエータ回路Aは、ポンプ14の駆動によって、作動油をシリンダ2内に供給して伸縮ユニット1に伸長方向と収縮方向との一方を選択して、選択した方向へ推力を伸縮ユニット1に発生させるとともに、当該推力の調整を行うことができる。
【0029】
具体的には、アクチュエータ回路Aは、
図1に示すように、シリンダ2とタンク7との間に設けられており、ロッド側室5へ作動油を供給するポンプ14と、ポンプ14を駆動するモータ15と、ロッド側室5とタンク7とを連通する制御通路40と、制御通路40に設けられた推力調整部FTと、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第1通路10と、第1通路10に設けられた第1開閉弁11と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第2通路12と、第2通路12に設けられた第2開閉弁13とを備えている。
【0030】
ポンプ14は、モータ15によって駆動されるようになっており、本実施の形態のシリンダ装置Cでは一方向のみに作動油を吐出する。ポンプ14の吐出口は、ロッド側室5とタンク7とを連通する供給通路22を通じてロッド側室5へ連通されるとともに、吸込口は供給通路22を通じてタンク7に通じている。よって、ポンプ14は、モータ15によって駆動されると、タンク7から作動油を吸込んでロッド側室5へ作動油を供給する。
【0031】
前述のようにポンプ14は、一方向のみに作動油を吐出するのみで回転方向の切換動作がないので、回転切換時に吐出量が変化するといった問題は皆無であり、安価なギアポンプ等を使用できる。さらに、ポンプ14の回転方向が常に同一方向であるので、ポンプ14を駆動する駆動源であるモータ15にあっても回転切換に対する高い応答性が要求されず、その分、モータ15も安価なものを使用できる。なお、供給通路22には、ロッド側室5からポンプ14への作動油の逆流を阻止するチェック弁23が設けられている。
【0032】
また、本実施の形態のアクチュエータ回路Aでは、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第1通路10に第1開閉弁11が設けられており、ピストン側室6とタンク7とを連通する第2通路12に第2開閉弁13が設けられている。
【0033】
第1開閉弁11は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第1通路10を開放してロッド側室5とピストン側室6とを連通する連通ポジション11bと、ロッド側室5とピストン側室6との連通を遮断する遮断ポジション11cとを備えた弁体11aと、遮断ポジション11cを採るように弁体11aを付勢するばね11dと、通電時に弁体11aをばね11dに対抗して連通ポジション11bに切り換えるソレノイド11eとを備えて構成されている。
【0034】
第2開閉弁13は、この実施の形態の場合、電磁開閉弁とされており、第2通路12を開放してピストン側室6とタンク7とを連通する連通ポジション13bと、ピストン側室6とタンク7との連通を遮断する遮断ポジション13cとを備えた弁体13aと、遮断ポジション13cを採るように弁体13aを付勢するばね13dと、通電時に弁体13aをばね13dに対抗して連通ポジション13bに切り換えるソレノイド13eとを備えて構成されている。
【0035】
推力調整部FTは、ロッド側室5とタンク7とを連通する制御通路40の途中に並列に接続される調整通路P1およびバイパス通路P2と、調整通路P1に設けられた可変リリーフ弁41と、バイパス通路P2にロッド側室5側から順に直列に設けられたリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44とを備えている。
【0036】
このように、第1の実施の形態のシリンダ装置Cでは、ロッド側室5とタンク7とが制御通路40と、制御通路40の途中に設けられた調整通路P1およびバイパス通路P2とを通じて接続されている。そして、前述した通り、調整通路P1には開弁圧を変更可能な可変リリーフ弁41が設けられ、バイパス通路P2にはリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44とが直列に設けられている。
【0037】
リリーフ弁43は、バイパス通路P2に設けられた弁体43aと、バイパス通路P2を遮断するように弁体43aを付勢するばね43bと、弁体43aよりも上流側となるロッド側室側の圧力を弁体43aに対してばね43bに対抗して開弁方向へ付勢するように作用させるパイロット通路43cとを備えて構成されている。リリーフ弁43の開弁圧は、ばね43bの弁体43aを付勢する力により予め所定の開弁圧となるように設定されている。
【0038】
そして、リリーフ弁43の下流に設けられたバイパス通路開閉弁44が開弁した状態では、弁体43aに作用するバイパス通路P2の上流のロッド側室5内の圧力がリリーフ弁43のリリーフ圧(開弁圧)を超えると、この圧力が弁体43aを押す力が、弁体43aを付勢するばね43bの力に打ち勝つようになり、弁体43aが後退してリリーフ弁43がバイパス通路P2を開放する。
【0039】
バイパス通路開閉弁44は、バイパス通路P2のリリーフ弁43よりも下流となるタンク側へ設けられた開閉可能な弁体44aと、バイパス通路P2を開放するように弁体44aを付勢するばね44bと、通電時にばね44bに対抗する推力を発生してバイパス通路P2を遮断するポジションへ弁体44aを切り換えるソレノイドSolとを備えて構成されている。このように、バイパス通路開閉弁44は、ソレノイドSolに所定値以上の電流を与えてソレノイドSolがばね44bの付勢力を上回る推力を発生するとバイパス通路P2を遮断する電磁弁となっている。
【0040】
また、バイパス通路開閉弁44は、ソレノイドSolに電流を供給しない非通電時には、弁体44aがばね44bによって付勢されてバイパス通路P2を開放するポジションをとる。つまり、ソレノイドSolの非通電時には、バイパス通路開閉弁44は開弁してバイパス通路P2を開放する。
【0041】
可変リリーフ弁41は、調整通路P1に設けられた弁体41aと、調整通路P1を遮断するように弁体41aを付勢するばね41bと、弁体41aよりも上流側となるロッド側室側の圧力を弁体41aに対してばね41bに対抗して開弁方向へ付勢するように作用させるパイロット通路41cと、通電時にばね41bに対抗する推力を発生するソレノイドSolとを備えて構成されている。可変リリーフ弁41は、ソレノイドSolに流れる電流量の調節により開弁圧の調節が可能な電磁弁となっている。なお、ソレノイドSolの推力は、弁体44aを通じて可変リリーフ弁41の弁体41aに伝達されるようになっている。より詳細には、ソレノイドSolへ所定値以上の電流を供給するとバイパス通路開閉弁44における弁体44aがバイパス通路P2を遮断するとともに可変リリーフ弁41の弁体41aに接触してソレノイドSolの推力を弁体41aに伝達する。
【0042】
そして、弁体41aに作用する制御通路40の上流のロッド側室5内の圧力が可変リリーフ弁41のリリーフ圧(開弁圧)を超えると、この圧力とソレノイドSolとが弁体41aを押す力が、弁体41aを付勢するばね41bの付勢力と弁体44aを付勢するばね44bの付勢力との合力に打ち勝つようになり、弁体41aが後退して可変リリーフ弁41が調整通路P1を開放する。
【0043】
また、可変リリーフ弁41にあっては、ソレノイドSolに供給する電流量を増大させると、ソレノイドSolが発生する推力を増大できる。よって、ソレノイドSolに供給する電流量を最大とすると可変リリーフ弁41の開弁圧が最小となり、反対に、ソレノイドSolに全く電流を供給しないと可変リリーフ弁41の開弁圧が最大となる。そして、ソレノイドSolへ供給する電流量を所定値以上にしつつ電流量を変化させると、バイパス通路開閉弁44を閉弁させた状態で可変リリーフ弁41の開弁圧を変化させ得る。このように、可変リリーフ弁41とバイパス通路開閉弁44とは、互いに1つのソレノイドSolを共有しており、同一のソレノイドSolによって駆動される電磁弁とされている。よって、ソレノイドSolの推力を可変リリーフ弁41とバイパス通路開閉弁44における各弁体41a,44aにそれぞれ作用させ得る。
【0044】
そして、ソレノイドSolの通電時には、ソレノイドSolへの電流供給量に応じて可変リリーフ弁41における開弁圧の調整が可能であるだけでなく、バイパス通路開閉弁44を閉弁させることができる。反対に、ソレノイドSolへ電流供給を行わない非通電時には、可変リリーフ弁41における開弁圧を最大としつつ、バイパス通路開閉弁44を開弁させることができる。
【0045】
なお、可変リリーフ弁41は、第1開閉弁11および第2開閉弁13の開閉状態に関わらず、伸縮ユニット1に伸縮方向の過大な入力がありロッド側室5内の圧力が開弁圧を超えると、調整通路P1を開放してロッド側室5をタンク7へ連通する。このように、伸縮ユニット1への過大入力に対し、可変リリーフ弁41は、ロッド側室5内の圧力をタンク7へ排出して、シリンダ装置Cのシステム全体を保護する。
【0046】
つづいて、ダンパ回路Dは、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する伸側減衰通路24と、伸側減衰通路24に設けられてロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁25と、ピストン側室6を推力調整部FTに接続する圧側減衰通路26と、圧側減衰通路26に設けられてピストン側室6からタンク7へ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側リリーフ弁としての第1圧側リリーフ弁27と、タンク7とピストン側室6とを連通する吸込通路28と、吸込通路28に設けられてタンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れを許容する吸込チェック弁29と、タンク7とロッド側室5とを連通する伸側吸込通路30と、伸側吸込通路30に設けられてタンク7からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側チェック弁31と、ピストン側室6とロッド側室5とを連通する圧側通路32と、圧側通路32に設けられてピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れに抵抗を与える第2圧側リリーフ弁33とを備えている。
【0047】
伸側減衰通路24は、ピストン4に設けられていて、ロッド側室5とピストン側室6とを連通している。また、伸側リリーフ弁25は、ピストン4に設けられていて、ロッド側室5内の圧力がピストン側室6内の圧力を上回り、ロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差が開弁圧に達すると開弁して、ロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。なお、伸側リリーフ弁25は、伸側減衰通路24をピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れに対しては閉弁して伸側減衰通路24を遮断する。よって、伸側減衰通路24は、伸側リリーフ弁25によって、ロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0048】
伸側リリーフ弁25の開弁圧は、アクチュエータ回路Aによって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定されている。よって、アクチュエータ回路Aにおけるポンプ14を駆動して伸縮ユニット1に収縮方向へ最大推力を発生させても、伸側リリーフ弁25は開弁せず、伸側減衰通路24を遮断した状態に維持する。
【0049】
圧側減衰通路26は、ピストン側室6を推力調整部FTに接続している。具体的には、圧側減衰通路26は、ピストン側室6をバイパス通路P2のリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44との間に接続している。よって、ピストン側室6は、バイパス通路開閉弁44が開弁状態であると、圧側減衰通路26、バイパス通路開閉弁44、バイパス通路P2および制御通路40の推力調整部FTの下流を介してタンク7に連通される。なお、バイパス通路開閉弁44が閉弁状態であると、圧側減衰通路26を介してのピストン側室6とタンク7との連通が断たれる。圧側減衰通路26がバイパス通路P2のリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44との間に接続されているので、圧側減衰通路26の下流に配置されたバイパス通路開閉弁44の開閉によって、圧側減衰通路26の遮断と連通とを切り換えできる。
【0050】
また、圧側リリーフ弁としての第1圧側リリーフ弁27は、バイパス通路開閉弁44の開弁時に、ピストン側室6内の圧力がタンク7内の圧力を上回り、ピストン側室6内の圧力とタンク7内の圧力との差が開弁圧に達すると開弁して、ピストン側室6からタンク7へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。なお、第1圧側リリーフ弁27は、圧側減衰通路26をタンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れに対しては閉弁して圧側減衰通路26を遮断する。よって、圧側減衰通路26は、第1圧側リリーフ弁27によって、ピストン側室6からタンク7へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。なお、第1圧側リリーフ弁27は、バイパス通路開閉弁44の閉弁時には圧側減衰通路26を介してのピストン側室6とタンク7との連通が断たれるため開弁することはない。
【0051】
つづいて、吸込通路28は、タンク7とピストン側室6とを連通している。また、吸込チェック弁29は、タンク7内の圧力がピストン側室6内の圧力を上回ると開弁して、然程抵抗を与えずにタンク7からピストン側室6へ向かう作動油の通過を許容する。なお、吸込チェック弁29は、吸込通路28をピストン側室6からタンク7へ向かう作動油の流れに対しては閉弁して吸込通路28を遮断する。よって、吸込通路28は、吸込チェック弁29によって、タンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0052】
さらに、伸側吸込通路30は、タンク7とロッド側室5とを連通している。また、伸側チェック弁31は、タンク7内の圧力がロッド側室5内の圧力を上回ると開弁して、然程抵抗を与えずにタンク7からロッド側室5へ向かう作動油の通過を許容する。なお、伸側チェック弁31は、伸側吸込通路30をロッド側室5からタンク7へ向かう作動油の流れに対しては閉弁して伸側吸込通路30を遮断する。よって、伸側吸込通路30は、伸側チェック弁31によって、タンク7からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0053】
また、圧側通路32は、ピストン4に設けられており、ピストン側室6とロッド側室5とを連通している。また、第2圧側リリーフ弁33は、ピストン4に設けられていて、ピストン側室6内の圧力がロッド側室5内の圧力を上回り、ピストン側室6内の圧力とロッド側室5内の圧力との差が開弁圧に達すると開弁して、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れに抵抗を与える。なお、第2圧側リリーフ弁33は、圧側通路32をロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れに対しては閉弁して圧側通路32を遮断する。よって、圧側通路32は、第2圧側リリーフ弁33によって、ピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。
【0054】
シリンダ装置Cは、以上のように構成されており、以下にシリンダ装置Cの作動を説明する。まず、アクチュエータ回路Aを利用してシリンダ装置Cをアクチュエータとして機能させるアクチュエータモードについて説明する。シリンダ装置Cに伸長方向の推力を発生させる場合、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとしてモータ15でポンプ14を駆動して、タンク7からシリンダ2内へ作動油を供給する。また、ソレノイドSolへ所定値以上の電流を与えて、バイパス通路開閉弁44を閉弁させてバイパス通路P2を遮断するとともに、可変リリーフ弁41の開弁圧をシリンダ装置Cが発揮すべき推力に応じて調整する。
【0055】
このようにすると、第1開閉弁11の開弁によって第1通路10を通じてロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれ、ロッド側室5とピストン側室6とにポンプ14から作動油が供給される。また、バイパス通路開閉弁44が閉弁するので圧側減衰通路26が遮断されるため、シリンダ2内に供給された作動油は、ピストン側室6からタンク7へは移動できない。このようにシリンダ装置Cをアクチュエータとして機能させるアクチュエータモード時には、圧側減衰通路26がバイパス通路開閉弁44によって遮断される。
【0056】
よって、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとしてモータ15でポンプ14を駆動すると、ポンプ14からシリンダ2内へ供給された作動油がシリンダ2に対してピストン4を
図1中左方へ押し出す方向へ押圧するので、シリンダ装置Cは伸長方向の推力を発生する。
【0057】
そして、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力が可変リリーフ弁41の開弁圧を上回ると、可変リリーフ弁41が開弁して作動油が調整通路P1を介してタンク7へ排出され、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力は、可変リリーフ弁41の開弁圧と等しくなる。このように可変リリーフ弁41は、開弁圧の調整によってポンプ14からシリンダ2内に供給される作動油の圧力を調整する。よって、シリンダ装置Cは、ピストン4におけるピストン側室側とロッド側室側の受圧面積差に可変リリーフ弁41の開弁圧を乗じた伸長方向の推力を発生し、可変リリーフ弁41の開弁圧の調節で推力を調整し得る。なお、この状態で、伸縮ユニット1が外力によって強制的に収縮させられても、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力が可変リリーフ弁41の開弁圧と等しくなるように制御されるので、収縮を抑制する伸長方向の推力を発生する。
【0058】
シリンダ装置Cが伸長方向の推力を発生中に、伸縮ユニット1が外力で高速で収縮してピストン側室6内が異常に高圧になった場合には、第2圧側リリーフ弁33が開弁してピストン側室6内の作動油をロッド側室5へ移動させるので、シリンダ装置Cが保護される。
【0059】
これに対して、シリンダ装置Cに収縮方向の推力を発生させる場合、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を連通ポジション13bとし、モータ15でポンプ14を駆動して、タンク7からロッド側室5へ作動油を供給する。また、ソレノイドSolへ所定値以上の電流を与えて、バイパス通路開閉弁44を閉弁させてバイパス通路P2を遮断するとともに、可変リリーフ弁41の開弁圧をシリンダ装置Cが発揮すべき推力に応じて調整する。
【0060】
このようにすることで、ピストン側室6とタンク7とが第2開閉弁13の開弁によって第2通路12を通じて連通状態におかれ、第1開閉弁11が閉弁してロッド側室5とピストン側室6との連通が断たれるため、ポンプ14から吐出された作動油はロッド側室5のみに供給される。また、バイパス通路開閉弁44が閉弁するので圧側減衰通路26が遮断されるが、第2通路12によってピストン側室6とタンク7と連通される。
【0061】
よって、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を連通ポジション13bとしてモータ15でポンプ14を駆動すると、ポンプ14からロッド側室5へ供給された作動油がシリンダ2に対してピストン4を
図1中右方へ押圧するので、シリンダ装置Cは収縮方向の推力を発生する。そして、シリンダ装置Cは、ピストン4におけるロッド側室側の受圧面積と可変リリーフ弁41の開弁圧を乗じた値からピストン4におけるピストン側室側の受圧面積とタンク7の圧力とを乗じた値を差し引きした値に等しい収縮方向の推力を発生し、可変リリーフ弁41の開弁圧の調節で推力を調整し得る。この状態で、伸縮ユニット1が外力によって強制的に伸長せられても、ロッド側室5内の圧力が可変リリーフ弁41の開弁圧と等しくなるように制御されるので、伸長を抑制する収縮方向の推力を発生する。
【0062】
なお、本実施の形態のシリンダ装置Cに収縮方向の推力を発生させる場合、前述したように、ロッド側室5とピストン側室6との連通を断った状態でロッド側室5に作動油を供給する必要がある。ここで、ダンパ回路Dにおける伸側減衰通路24は、伸側リリーフ弁25が開弁するとロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れを許容する。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cに収縮方向の推力を発生させる場合に、伸側リリーフ弁25が開弁すると作動油がロッド側室5からピストン側室6へ逃げてしまうため効率が悪くなるが、伸側リリーフ弁25の開弁圧は、アクチュエータ回路Aによって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定されている。アクチュエータモード時のシリンダ装置Cの収縮方向の最大推力は、可変リリーフ弁41が開弁圧を最大とした場合に発生される。よって、伸側リリーフ弁25は、本実施の形態のシリンダ装置Cが収縮方向の推力を発生するアクチュエータとして機能する場合に可変リリーフ弁41の開弁圧を最大にしても開弁せず、伸側減衰通路24を通じてロッド側室5からピストン側室6へ作動油が移動するのを防止する。このように、伸側リリーフ弁25の開弁圧がアクチュエータ回路Aによって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定されると、シリンダ装置Cは、アクチュエータとして収縮方向に推力を発生する場合に効率よく推力を発生でき、エネルギ消費も少なくなる。前述した通り、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、伸側リリーフ弁25は、ロッド側室5内の圧力を制御する可変リリーフ弁41が開弁圧を最大としても開弁しなければよいので、伸側リリーフ弁25の開弁圧は、可変リリーフ弁41の最大開弁圧より高ければよい。この場合、伸側リリーフ弁25の開弁圧は、可変リリーフ弁41のハードウェア上の最大開弁圧ではなく、アクチュエータモード時における可変リリーフ弁41が制御上で採り得る最大開弁圧よりも高くなっていてもよい。
【0063】
なお、前述した通り、効率の観点から、伸側リリーフ弁25の開弁圧をアクチュエータ回路Aによって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定するとよいが、前記開弁圧を前記差未満に設定してもシリンダ装置Cは、アクチュエータとして収縮方向に推力を発生できる。
【0064】
シリンダ装置Cが収縮方向の推力を発生中に、伸縮ユニット1が外力で高速で伸長してロッド側室5内が異常に高圧になった場合には、伸側リリーフ弁25が開弁してロッド側室5内の作動油をピストン側室6へ移動させるので、シリンダ装置Cが保護される。
【0065】
このように、シリンダ装置Cは、第1開閉弁11と第2開閉弁13との開閉、および可変リリーフ弁41の開弁圧の調節で伸長方向および収縮方向の何れにも可変リリーフ弁41の開弁圧の調整範囲で推力を発生できる。よって、シリンダ装置Cは、アクチュエータモードにおいて、ポンプ14を駆動させつつ第1開閉弁11、第2開閉弁13および可変リリーフ弁41を制御することでシリンダ装置Cをアクチュエータとして機能させて車体Sの振動を抑制できる。
【0066】
つづいて、ダンパ回路Dを利用してシリンダ装置Cをダンパとして機能させるダンパモードについて説明する。シリンダ装置Cをダンパモードにする場合、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとして、モータ15を駆動せずポンプ14を停止させる。また、ソレノイドSolへの通電を停止して非通電として、バイパス通路開閉弁44を開弁させてバイパス通路P2を開放する。
【0067】
この状態では、第1通路10によるロッド側室5とピストン側室6との連通が断たれるとともに、第2通路12によるピストン側室6とタンク7との連通が断たれる。そして、ソレノイドSolへの通電の停止によってバイパス通路開閉弁44が開弁するため、圧側減衰通路26を通じてピストン側室6とタンク7とが連通される。このようにシリンダ装置Cをダンパとして機能させるダンパモード時には、圧側減衰通路26がバイパス通路開閉弁44の開弁によって開放される。
【0068】
そして、シリンダ装置Cをダンパモードとした状態で伸縮ユニット1が外力によって伸長すると、シリンダ2に対してピストン4が
図1中左方へ移動してロッド側室5を縮小しつつピストン側室6を拡大させる。縮小されるロッド側室5内の作動油は、バイパス通路P2のリリーフ弁43と伸側減衰通路24の伸側リリーフ弁25との一方または両方を通過し、リリーフ弁43と伸側リリーフ弁25との一方または両方によって抵抗を受けながらタンク7或いは拡大するピストン側室6へ移動する。伸縮ユニット1の伸長作動時には、ロッド3がシリンダ2から退出するために、シリンダ2内で作動油が不足するが、吸込チェック弁29が開弁して吸込通路28を通じて不足分の作動油がタンク7からピストン側室6へ供給される。このように、シリンダ装置Cがダンパモードとなって伸縮ユニット1が伸長作動すると、ロッド側室5内の圧力がリリーフ弁43と伸側リリーフ弁25とによって上昇し、ピストン側室6内の圧力がタンク圧と等しくなる。よって、シリンダ装置Cは、ピストン4のロッド側室側の受圧面積にロッド側室5内の圧力を乗じた値からピストン4のピストン側室側の受圧面積にタンク7の圧力を乗じた値を差し引いた値に等しい減衰力を伸縮ユニット1の伸長を妨げる向きに発生する。
【0069】
さらに、シリンダ装置Cをダンパモードとした状態で伸縮ユニット1が外力によって収縮すると、シリンダ2に対してピストン4が
図1中右方へ移動してピストン側室6を縮小しつつロッド側室5を拡大させる。縮小されるピストン側室6内の作動油は、圧側通路32の第2圧側リリーフ弁33を通過して拡大されるロッド側室5へ移動する。伸縮ユニット1の収縮作動時には、ロッド3がシリンダ2内へ侵入するために、シリンダ2内で作動油が過剰となるが、第1圧側リリーフ弁27が開弁して圧側減衰通路26を通じて過剰分の作動油がピストン側室6からタンク7へ排出される。このように、シリンダ装置Cがダンパモードとなって伸縮ユニット1が収縮作動すると、ピストン側室6内の圧力が第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33によって上昇し、ロッド側室5内の圧力が減圧され、ピストン側室6内の圧力がロッド側室5内の圧力より高くなる。よって、シリンダ装置Cは、ピストン4のピストン側室側の受圧面積にピストン側室6内の圧力を乗じた値からピストン4のロッド側室側の受圧面積にロッド側室5内の圧力を乗じた値を差し引いた値に等しい減衰力を伸縮ユニット1の収縮を妨げる向きに発生する。なお、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、ダンパ回路Dが伸側吸込通路30と伸側チェック弁31とを備えているので、ダンパモードのシリンダ装置Cにおける伸縮ユニット1が収縮する際に、ロッド側室5内の圧力がタンク圧より低下すると伸側チェック弁31が開弁してタンク7から作動油がロッド側室5へ供給される。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cがダンパモードで収縮する場合に、ロッド側室5内が負圧とならずに済み、エアレーションの発生や、伸縮ユニット1の収縮から伸長への切り換わりにおいて減衰力の発生が遅れる事態を招かずに済む。
【0070】
このようにシリンダ装置Cは、ダンパモードの状態では、伸縮ユニット1が外力によって伸長或いは収縮すると、伸縮ユニット1の伸長或いは収縮を妨げる減衰力を発生する。そして、ダンパモードの状態のシリンダ装置Cは、伸縮ユニット1の伸長時にはリリーフ弁43と伸側リリーフ弁25との一方または両方によって減衰力を発生し、伸縮ユニット1の収縮時には第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33によって減衰力を発生する。したがって、ダンパモードのシリンダ装置Cの伸長作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性は、リリーフ弁43と伸側リリーフ弁25とによって設定され、ダンパモードのシリンダ装置Cの収縮作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性は、第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33によって設定されるので、伸長作動時と収縮作動時の減衰力特性をそれぞれ独立して設定できる。
【0071】
つまり、ダンパモードにおける本実施の形態のシリンダ装置Cの伸長作動時および収縮作動時の減衰力特性は、ピストン4のロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面積の設定によらず、リリーフ弁43、伸側リリーフ弁25、第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33の設定によって独立して調整できる。換言すれば、ダンパモードにおける本実施の形態のシリンダ装置Cの伸長作動時と収縮作動時との2つの減衰力特性を同一の特性にするに際して、ロッド3の断面積をピストン4の断面積の二分の一にする必要はなく、ロッド3の径とピストン4の径(シリンダ2の径)を強度上で許される範囲で任意に決定した後、リリーフ弁43、伸側リリーフ弁25、第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33の設定によって前記の2つの減衰力特性を同一の特性となるように調整すればよい。
【0072】
なお、本実施の形態のダンパ回路Dが伸側吸込通路30と伸側チェック弁31とを備えていて、ダンパモードのシリンダ装置Cにおける伸縮ユニット1が収縮作動する際に、タンク7から拡大するロッド側室5へ向かう作動油の流れを許容するので、圧側通路32および第2圧側リリーフ弁33を省略してもよい。この場合、リリーフ弁43、伸側リリーフ弁25および第1圧側リリーフ弁27の設定によって、ダンパモードにおける本実施の形態のシリンダ装置Cの伸長作動時と収縮作動時との2つの減衰力特性を同一になるように調整すればよい。
【0073】
ただし、圧側通路32および第2圧側リリーフ弁33を備える場合、ダンパモードのシリンダ装置Cにおける伸縮ユニット1が収縮作動する際に、ピストン側室6内の圧力が異常に高圧となった場合に、第2圧側リリーフ弁33が開弁してピストン側室6内の作動油をロッド側室5へ移動させてシリンダ装置Cを保護できる利点がある。
【0074】
また、本実施の形態のダンパ回路Dが圧側通路32および第2圧側リリーフ弁33を備えているため、ダンパモードのシリンダ装置Cにおける伸縮ユニット1が収縮作動する際に、圧側通路32を通じてピストン側室6からロッド側室5へ供給される作動油によってロッド側室5が負圧となる心配がなければ伸側吸込通路30と伸側チェック弁31とを省略できる。
【0075】
また、圧側通路32には、第2圧側リリーフ弁33の代わりに、通過する作動油に然程抵抗を与えないチェック弁を設けて、ダンパモードのシリンダ装置Cにおける伸縮ユニット1が収縮作動する際に、第1圧側リリーフ弁27の抵抗のみで減衰力を発生してもよい。この場合、ダンパモードのシリンダ装置Cの伸長作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性を伸側リリーフ弁25によって設定でき、ダンパモードのシリンダ装置Cの収縮作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性を第1圧側リリーフ弁27によって設定できる。したがって、ピストン4のロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面積の設定によらず、ダンパモードのシリンダ装置Cの伸長作動時と収縮作動時の減衰力特性を同一の特性に設定できる。
【0076】
以上、本実施の形態のシリンダ装置Cは、シリンダ2と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるロッド3と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるとともにロッド3に連結されてシリンダ2内をロッド側室5とピストン側室6とに区画するピストン4とを有する伸縮ユニット1と、タンク7と、タンク7からシリンダ2に作動油(液体)を供給可能なポンプ14と、ロッド側室5とタンク7とを連通する制御通路40と、制御通路40に設けられた推力調整部FTとを有して、伸縮ユニット1を伸縮駆動させ得るアクチュエータ回路Aと、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する伸側減衰通路24と、伸側減衰通路24に設けられてロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油(液体)の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁25と、ピストン側室6を推力調整部FTに接続する圧側減衰通路26と、圧側減衰通路26に設けられてピストン側室6からタンク7へ向かう作動油(液体)の流れに抵抗を与える第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27と、タンク7とピストン側室6とを連通する吸込通路28と、吸込通路28に設けられてタンク7からピストン側室6へ向かう作動油(液体)の流れを許容する吸込チェック弁29とを含むダンパ回路Dとを備えている。
【0077】
このように構成された本実施の形態のシリンダ装置Cは、アクチュエータ回路Aによってポンプ14から作動油(液体)をシリンダ2へ供給してアクチュエータとして機能できるとともに、ポンプ14を停止させてダンパ回路Dを利用してダンパとして機能できる。
【0078】
そして、本実施の形態のシリンダ装置Cは、ダンパとして機能する場合、伸縮ユニット1が伸長作動する場合には伸側リリーフ弁25を利用して減衰力を発生し、伸縮ユニット1が収縮作動する場合には第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27を利用して減衰力を発生することができる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cは、ダンパとして機能する際に、伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを、ロッド3の径とピストン4の径(シリンダ2の径)の設定によらず、伸側リリーフ弁25と第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27との設定によって同一の特性に設定できる。
【0079】
つまり、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化しても、ダンパとして機能する際に伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを同一に設定できる。シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化すれば、ピストン4の受圧面積を大きくでき、伸縮ユニット1内の作動油(液体)の油柱剛性(液柱剛性)を高めることができるため、本実施の形態のシリンダ装置Cは、減衰係数を高めてダンパとして機能する際に応答性よく高い減衰力を発生できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cによれば、大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を向上できるのである。
【0080】
また、第1の実施の形態のシリンダ装置Cでは、推力調整部FTは、制御通路40の途中に並列に設けられた調整通路P1およびバイパス通路P2と、調整通路P1に設けられた可変リリーフ弁41と、バイパス通路P2にロッド側室5側から順に直列に設けられたリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44とを有し、圧側減衰通路26は、ピストン側室6をバイパス通路P2のリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44との間に接続し、可変リリーフ弁41とバイパス通路開閉弁44とは同一のソレノイドSolによって駆動される電磁弁であって、可変リリーフ弁41は、ソレノイドSolの通電時に開弁圧の調整が可能であって、バイパス通路開閉弁44は、ソレノイドSolの通電時に閉弁するとともにソレノイドSolの非通電時に開弁し、ポンプ14を駆動するアクチュエータモード時にバイパス通路開閉弁44を閉弁させてバイパス通路P2を遮断し、ポンプ14を停止させるダンパモード時にバイパス通路開閉弁44を開弁させてバイパス通路P2を開放させる。
【0081】
このように構成された本実施の形態のシリンダ装置Cは、アクチュエータ回路Aによってポンプ14から作動油(液体)をシリンダ2へ供給し、バイパス通路開閉弁44で圧側減衰通路26を遮断してアクチュエータとして機能できるとともに、ポンプ14を停止させてバイパス通路開閉弁44で圧側減衰通路26を開放してダンパ回路Dを利用してダンパとして機能できる。
【0082】
そして、本実施の形態のシリンダ装置Cは、ダンパとして機能する場合、伸縮ユニット1が伸長作動する場合には伸側リリーフ弁25によって減衰力を発生し、伸縮ユニット1が収縮作動する場合には第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27によって減衰力を発生することができる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cは、ダンパとして機能する際に、伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを、ロッド3の径とピストン4の径(シリンダ2の径)の設定によらず、伸側リリーフ弁25と第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27との設定によって同一の特性に設定できる。
【0083】
つまり、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化しても、ダンパとして機能する際に伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを同一に設定できる。シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化すれば、ピストン4の受圧面積を大きくでき、伸縮ユニット1内の作動油(液体)の油柱剛性(液柱剛性)を高めることができるため、本実施の形態のシリンダ装置Cは、減衰係数を高めてダンパとして機能する際に応答性よく高い減衰力を発生できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cによれば、大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を向上できるのである。なお、ユニフローダンパのように、ロッド3の断面積をピストン4の断面積の二分の一に設定しても、圧側通路32と第2圧側リリーフ弁33とを設ければ、シリンダ装置Cの収縮時にピストン側室6内の圧力をロッド側室5内の圧力よりも高くすることができるため、従来のシリンダ装置よりも収縮作動時の減衰係数を高くできる。よって、圧側通路32と第2圧側リリーフ弁33とを設ければ、ロッド3の断面積やピストン4の断面積の設定の自由度が向上する。
【0084】
また、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、シリンダ装置Cのモータ15および電磁弁である各弁11,13,41,44への通電が行えない状態となると、自動的に、バイパス通路開閉弁44が圧側減衰通路26を連通させてシリンダ装置Cがダンパモードに切り換わる。よって、本実施の形態のシリンダ装置Cによれば、失陥時には自動的にダンパ回路Dを有効としてダンパモードに切り換わり、失陥時でも鉄道車両Tの車体Sの振動を抑制できる。
【0085】
そして、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、ダンパ回路Dがタンク7とロッド側室5とを連通する伸側吸込通路30と、伸側吸込通路30に設けられてタンク7からロッド側室5へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容する伸側チェック弁31とを含んでいる。このように構成されたシリンダ装置Cによれば、伸縮ユニット1が収縮作動する際に、ロッド側室5内が負圧とならずに済み、エアレーションの発生や、伸縮ユニット1の収縮から伸長への切り換わりにおいて減衰力の発生が遅れる事態を招かずに済む。
【0086】
さらに、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、アクチュエータ回路Aが開弁圧を調整可能であって、開弁圧の調整によってポンプ14からシリンダ2内に供給される作動油(液体)の圧力を調整する可変リリーフ弁41を有し、伸側リリーフ弁25の開弁圧は可変リリーフ弁41がアクチュエータモード時に採り得る最大開弁圧より高い。このように構成されたシリンダ装置Cでは、アクチュエータとして機能する場合、ポンプ14からシリンダ2内に供給される作動油(液体)をロッド側室5からピストン側室6へ逃がさないので効率よく収縮側の推力を発生できるとともにエネルギ消費も低減される。
【0087】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態におけるシリンダ装置C1は、
図3に示すように、伸縮ユニット1と、タンク7と、アクチュエータ回路A1と、ダンパ回路D1とを備えて構成されている。本実施の形態では、2つのシリンダ装置C1が、シリンダ装置Cと同様に、並列して鉄道車両Tの車体Sと台車Bとの間に介装されて使用されて車体Sの水平方向の振動を抑制するが、1つのみのシリンダ装置C1が車体Sと台車Bとの間に介装されて使用されてもよい。
【0088】
以下、シリンダ装置C1の各部について説明する。シリンダ装置C1における伸縮ユニット1は、シリンダ装置Cにおける伸縮ユニット1と同様の構成を備えている。
【0089】
アクチュエータ回路A1は、シリンダ2とタンク7との間に設けられるとともに、タンク7からシリンダ2に作動油を供給可能なポンプ14を備えて、伸縮ユニット1を伸縮駆動させる回路である。アクチュエータ回路Aは、ポンプ14の駆動によって、作動油をシリンダ2内に供給して伸長方向と収縮方向との一方を選択して、選択した方向へ推力を伸縮ユニット1に発生させるとともに、当該推力の調整を行うことができる。
【0090】
具体的には、アクチュエータ回路Aは、
図3に示すように、シリンダ2とタンク7との間に設けられており、ロッド側室5へ作動油を供給するポンプ14と、ポンプ14を駆動するモータ15と、ロッド側室5とタンク7とを連通する制御通路40と、制御通路40に設けられた推力調整部FT1と、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する第1通路10と、第1通路10に設けられた第1開閉弁11と、ピストン側室6とタンク7とを連通する第2通路12と、第2通路12に設けられた第2開閉弁13とを備えている。
【0091】
第2の実施の形態のシリンダ装置C1におけるアクチュエータ回路A1と第1の実施の形態のシリンダ装置Cにおけるアクチュエータ回路Aとは、推力調整部FT1の構成のみを異にしており、その他については同じ構成を備えている。
【0092】
第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、ロッド側室5とタンク7とが制御通路40を通じて接続されており、推力調整部FT1が制御通路40の途中に設けられている。推力調整部FT1は、制御通路40の途中に設けられた調整通路P3と、ロッド側室5側の圧力が開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁46と、通電により開弁圧の調整が可能な可変リリーフ弁46とを備え、調整通路P3にロッド側室5側から順にリリーフ弁46と可変リリーフ弁47とが直列に設けられている。
【0093】
リリーフ弁46は、調整通路P3に設けられた弁体46aと、調整通路P3を遮断するように弁体46aを付勢するばね46bと、弁体46aよりも上流側となるロッド側室5側の圧力を弁体46aに対してばね46bに対抗して開弁方向へ付勢するように作用させるパイロット通路46cとを備えて構成されている。リリーフ弁46の開弁圧は、ばね46bの弁体46aを付勢する力により予め所定の開弁圧となるように設定されている。
【0094】
可変リリーフ弁47は、調整通路P3に設けられた弁体47aと、調整通路P3を遮断するように弁体47aを付勢するばね47bと、弁体47aよりも上流側となるロッド側室5側の圧力を弁体47aに対してばね47bに対抗して開弁方向へ付勢するように作用させるパイロット通路47cと、通電時にばね47bに対抗する推力を発生するソレノイド47dとを備えて構成されている。可変リリーフ弁41は、ソレノイド47dに流れる電流量の調節により開弁圧の調節が可能な電磁弁となっている。
【0095】
そして、弁体47aに作用する調整通路P3の可変リリーフ弁47よりも上流であってリリーフ弁46の下流の圧力が可変リリーフ弁47のリリーフ圧(開弁圧)を超えると、この圧力とソレノイド47dとが弁体47aを押す力が、弁体47aを付勢するばね47bの付勢力に打ち勝つようになり、弁体47aが後退して可変リリーフ弁47が調整通路P3を開放する。
【0096】
また、可変リリーフ弁47にあっては、ソレノイド47dに供給する電流量を増大させると、ソレノイド47dが発生する推力を増大できる。よって、ソレノイド47dに供給する電流量を最大とすると可変リリーフ弁47の開弁圧が最小となり、反対に、ソレノイド47dに全く電流を供給しないと可変リリーフ弁47の開弁圧が最大となる。
【0097】
つづいて、ダンパ回路D1は、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する伸側減衰通路24と、伸側減衰通路24に設けられてロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁25と、ピストン側室6と推力調整部FT1に接続する圧側減衰通路26と、圧側減衰通路26に設けられてピストン側室6からタンク7へ向かう作動油の流れに抵抗を与える圧側リリーフ弁としての第1圧側リリーフ弁27と、タンク7とピストン側室6とを連通する吸込通路28と、吸込通路28に設けられてタンク7からピストン側室6へ向かう作動油の流れを許容する吸込チェック弁29と、タンク7とロッド側室5とを連通する伸側吸込通路30と、伸側吸込通路30に設けられてタンク7からロッド側室5へ向かう作動油の流れのみを許容する伸側チェック弁31と、ピストン側室6とロッド側室5とを連通する圧側通路32と、圧側通路32に設けられてピストン側室6からロッド側室5へ向かう作動油の流れに抵抗を与える第2圧側リリーフ弁33とを備えている。
【0098】
第2の実施の形態のシリンダ装置C1におけるダンパ回路D1と第1の実施の形態のシリンダ装置Cにおけるダンパ回路Dとは、圧側減衰通路26が推力調整部FT1における調整通路P3のリリーフ弁46と可変リリーフ弁47との間に接続されている点で異なっており、その他については同じ構成を備えている。
【0099】
なお、圧側減衰通路26は、前述したように、推力調整部FT1に接続されているが、第1の実施の形態のシリンダ装置Cとは異なり、推力調整部FT1の調整通路P3には開閉弁が設けられていないので、圧側減衰通路26とタンク7との連通が断たれることはない。
【0100】
シリンダ装置C1は、以上のように構成されており、以下にシリンダ装置C1の作動を説明する。まず、アクチュエータ回路A1を利用してシリンダ装置C1をアクチュエータとして機能させるアクチュエータモードについて説明する。シリンダ装置C1に伸長方向の推力を発生させる場合、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとしてモータ15でポンプ14を駆動して、タンク7からシリンダ2内へ作動油を供給する。また、ソレノイド47dへ供給する電流量を調整して、可変リリーフ弁47の開弁圧をシリンダ装置C1が発揮すべき推力に応じて調整する。
【0101】
このようにすると、第1開閉弁11の開弁によって第1通路10を通じてロッド側室5とピストン側室6とが連通状態におかれ、ロッド側室5とピストン側室6とにポンプ14から作動油が供給される。
【0102】
よって、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとしてモータ15でポンプ14を駆動すると、ポンプ14からシリンダ2内へ供給された作動油がシリンダ2に対してピストン4を
図1中左方へ押し出す方向へ押圧するので、シリンダ装置C1は伸長方向の推力を発生する。
【0103】
第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、圧側減衰通路26が開閉弁によって遮断されない。よって、シリンダ2内に供給された作動油は、ロッド側室5から制御通路40および推力調整部FT1を介してタンク7へ移動可能であるとともに、ピストン側室6から圧側減衰通路26、第1圧側リリーフ弁27、推力調整部FT1を介してタンク7へ移動可能である。
【0104】
そして、ロッド側室5内の圧力とロッド側室5に第1通路10によって連通されたピストン側室6内の圧力との双方がリリーフ弁46と第1圧側リリーフ弁27の開弁圧を上回り、かつ、可変リリーフ弁47が開弁すると、ロッド側室5内の作動油は制御通路40および調整通路P3を介してタンク7へ移動するとともに、ピストン側室6内の作動油は圧側減衰通路26、調整通路P3を介してタンク7へ移動する。
【0105】
つまり、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとする場合、シリンダ2とタンク7との間にリリーフ弁46と第1圧側リリーフ弁27とが並列に配置されるとともに、これらリリーフ弁46と第1圧側リリーフ弁27との下流に可変リリーフ弁47が配置される回路構成となる。
【0106】
第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとする場合、ポンプ14からシリンダ2内に作動油を供給してシリンダ2内で作動油が過剰となると、シリンダ2内から押し出された作動油は、リリーフ弁46と第1圧側リリーフ弁27との一方または両方を通過した後、必ず、可変リリーフ弁47を通過してタンク7へ移動するので、可変リリーフ弁47の開弁圧の調整によって、シリンダ2内の圧力の調整が可能である。このように、第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとする場合、リリーフ弁46、第1圧側リリーフ弁27および可変リリーフ弁47が抵抗となってシリンダ2内の圧力が上昇してシリンダ装置C1が伸長方向の推力を発生する。
【0107】
以上より、第2の実施の形態のシリンダ装置C1は、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとする場合、シリンダ装置Cと同様に、ピストン4におけるピストン側室側とロッド側室側の受圧面積差にロッド側室5の圧力を乗じた値の伸長方向の推力を発生し、可変リリーフ弁47の開弁圧の調節で推力を調整し得る。なお、この状態で、伸縮ユニット1が外力によって強制的に収縮させられても、ロッド側室5内およびピストン側室6内の圧力が可変リリーフ弁47によって制御され、収縮を抑制する伸長方向の推力を発生する。
【0108】
なお、シリンダ装置C1が伸長方向の推力を発生中に、伸縮ユニット1が外力で高速で収縮してピストン側室6内が異常に高圧になった場合には、第2圧側リリーフ弁33が開弁してピストン側室6内の作動油をロッド側室5へ移動させるので、シリンダ装置C1が保護される。
【0109】
これに対して、シリンダ装置C1に収縮方向の推力を発生させる場合、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を連通ポジション13bとし、モータ15でポンプ14を駆動して、タンク7からロッド側室5へ作動油を供給する。また、ソレノイド47dへ供給する電流量を調整して、可変リリーフ弁47の開弁圧をシリンダ装置C1が発揮すべき推力に応じて調整する。
【0110】
このようにすることで、ピストン側室6とタンク7とが第2開閉弁13の開弁によって第2通路12を通じて連通状態におかれ、第1開閉弁11が閉弁してロッド側室5とピストン側室6との連通が断たれるため、ポンプ14から吐出された作動油はロッド側室5のみに供給される。また、シリンダ装置C1では、圧側減衰通路26が開閉弁によって遮断されないが、第2通路12によってピストン側室6とタンク7と連通される状態では、シリンダ装置C1が収縮すると作動油は第2通路12のみを通過してピストン側室6からタンク7へ移動する。
【0111】
よって、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を連通ポジション13bとしてモータ15でポンプ14を駆動すると、ポンプ14からロッド側室5へ供給された作動油がシリンダ2に対してピストン4を
図1中右方へ押圧するので、シリンダ装置C1は収縮方向の推力を発生する。
【0112】
第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を連通ポジション13bとし、モータ15でポンプ14を駆動すると、ロッド側室5のみに作動油が供給される。ロッド側室5内で作動油が過剰となると、ロッド側室5から押し出された作動油は、リリーフ弁46と可変リリーフ弁47とを通過してタンク7へ移動するので、可変リリーフ弁47の開弁圧の調整によって、シリンダ2内の圧力の調整が可能である。よって、第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を連通ポジション13bとする場合、リリーフ弁46および可変リリーフ弁47が抵抗となってシリンダ2内の圧力が上昇してシリンダ装置C1が収縮方向の推力を発生する。
【0113】
以上より、第2の実施の形態のシリンダ装置C1は、第1開閉弁11を連通ポジション11bとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとする場合、シリンダ装置Cと同様に、ピストン4におけるロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面積とタンク7の圧力とを乗じた値を差し引きした値に等しい収縮方向の推力を発生し、可変リリーフ弁47の開弁圧の調節で推力を調整し得る。この状態で、伸縮ユニット1が外力によって強制的に伸長せられても、ロッド側室5内の圧力が可変リリーフ弁47によって制御されるので、伸長を抑制する収縮方向の推力を発生する。
【0114】
なお、本実施の形態のシリンダ装置C1に収縮方向の推力を発生させる場合、前述したように、ロッド側室5とピストン側室6との連通を断った状態でロッド側室5に作動油を供給する必要がある。ここで、ダンパ回路D1における伸側減衰通路24は、伸側リリーフ弁25が開弁するとロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油の流れを許容する。
【0115】
よって、本実施の形態のシリンダ装置C1に収縮方向の推力を発生させる場合に、伸側リリーフ弁25が開弁すると作動油がロッド側室5からピストン側室6へ逃げてしまうため効率が悪くなるが、伸側リリーフ弁25の開弁圧は、アクチュエータ回路A1によって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定されている。アクチュエータモード時のシリンダ装置C1の収縮方向の最大推力は、可変リリーフ弁47が開弁圧を最大とした場合に発生される。よって、伸側リリーフ弁25は、本実施の形態のシリンダ装置C1が収縮方向の推力を発生するアクチュエータとして機能する場合に可変リリーフ弁47の開弁圧を最大にしても開弁せず、伸側減衰通路24を通じてロッド側室5からピストン側室6へ作動油が移動するのを防止する。このように、伸側リリーフ弁25の開弁圧がアクチュエータ回路A1によって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定されると、シリンダ装置C1は、アクチュエータとして収縮方向に推力を発生する場合に効率よく推力を発生でき、エネルギ消費も少なくなる。前述した通り、本実施の形態のシリンダ装置C1では、伸側リリーフ弁25は、ロッド側室5内の圧力を制御する可変リリーフ弁47が開弁圧を最大としても開弁しなければよいので、伸側リリーフ弁25の開弁圧は、可変リリーフ弁47の最大開弁圧とした場合におけるリリーフ弁46と可変リリーフ弁47とで生じる圧力損失、つまり、推力調整部FT1で生じる圧力損失より高ければよい。この場合、伸側リリーフ弁25の開弁圧は、推力調整部FT1のハードウェア上の最大圧力損失ではなく、アクチュエータモード時における推力調整部FT1が制御上で採り得る最大圧力損失よりも高くなっていてもよい。
【0116】
なお、前述した通り、効率の観点から、伸側リリーフ弁25の開弁圧をアクチュエータ回路A1によって伸縮ユニット1が収縮側へ最大推力を発生する場合のロッド側室5内の圧力とピストン側室6内の圧力との差以上に設定するとよいが、前記開弁圧を前記差未満に設定してもシリンダ装置C1は、アクチュエータとして収縮方向に推力を発生できる。
【0117】
シリンダ装置C1が収縮方向の推力を発生中に、伸縮ユニット1が外力で高速で伸長してロッド側室5内が異常に高圧になった場合には、伸側リリーフ弁25が開弁してロッド側室5内の作動油をピストン側室6へ移動させるので、シリンダ装置C1が保護される。
【0118】
このように、シリンダ装置C1は、第1開閉弁11と第2開閉弁13との開閉、および可変リリーフ弁47の開弁圧の調節で伸長方向および収縮方向の何れにも調整可能な範囲内で推力を発生できる。よって、シリンダ装置C1は、アクチュエータモードにおいて、ポンプ14を駆動させつつ第1開閉弁11、第2開閉弁13および可変リリーフ弁41を制御することでシリンダ装置C1をアクチュエータとして機能させて車体Sの振動を抑制できる。
【0119】
つづいて、ダンパ回路D1を利用してシリンダ装置Cをダンパとして機能させるダンパモードについて説明する。シリンダ装置C1をダンパモードにする場合、第1開閉弁11を遮断ポジション11cとし第2開閉弁13を遮断ポジション13cとして、モータ15を駆動せずポンプ14を停止させる。また、ソレノイド47dについては通電してもよいし通電を停止してもよい。
【0120】
この状態では、第1通路10によるロッド側室5とピストン側室6との連通が断たれるとともに、第2通路12によるピストン側室6とタンク7との連通が断たれる。このようにシリンダ装置C1をダンパとして機能させるダンパモード時でも、圧側減衰通路26は、推力調整部FT1における可変リリーフ弁47を介してタンク7に連通される。
【0121】
そして、シリンダ装置C1をダンパモードとした状態で伸縮ユニット1が外力によって伸長すると、シリンダ2に対してピストン4が
図1中左方へ移動してロッド側室5を縮小しつつピストン側室6を拡大させる。縮小されるロッド側室5内の作動油は、推力調整部FT1と伸側減衰通路24の伸側リリーフ弁25との一方または両方を通過し、推力調整部FT1と伸側リリーフ弁25との一方または両方によって抵抗を受けながらタンク7或いは拡大するピストン側室6へ移動する。伸縮ユニット1の伸長作動時には、ロッド3がシリンダ2から退出するために、シリンダ2内で作動油が不足するが、吸込チェック弁29が開弁して吸込通路28を通じて不足分の作動油がタンク7からピストン側室6へ供給される。このように、シリンダ装置C1がダンパモードとなって伸縮ユニット1が伸長作動すると、ロッド側室5内の圧力が推力調整部FT1と伸側リリーフ弁25とによって上昇し、ピストン側室6内の圧力がタンク圧と等しくなる。よって、シリンダ装置C1は、ピストン4のロッド側室側の受圧面積にロッド側室5内の圧力を乗じた値からピストン4のピストン側室側の受圧面積にタンク7の圧力を乗じた値を差し引いた値に等しい減衰力を伸縮ユニット1の伸長を妨げる向きに発生する。
【0122】
さらに、シリンダ装置C1をダンパモードとした状態で伸縮ユニット1が外力によって収縮すると、シリンダ2に対してピストン4が
図1中右方へ移動してピストン側室6を縮小しつつロッド側室5を拡大させる。縮小されるピストン側室6内の作動油は、圧側通路32の第2圧側リリーフ弁33を通過して拡大されるロッド側室5へ移動する。伸縮ユニット1の収縮作動時には、ロッド3がシリンダ2内へ侵入するために、シリンダ2内で作動油が過剰となるが、第1圧側リリーフ弁27および可変リリーフ弁47が開弁して圧側減衰通路26、調整通路P3および制御通路40を通じて過剰分の作動油がピストン側室6からタンク7へ排出される。このように、シリンダ装置C1がダンパモードとなって伸縮ユニット1が収縮作動すると、ピストン側室6内の圧力が第1圧側リリーフ弁27、可変リリーフ弁47および第2圧側リリーフ弁33によって上昇し、ロッド側室5内の圧力が減圧され、ピストン側室6内の圧力がロッド側室5内の圧力より高くなる。よって、シリンダ装置C1は、ピストン4のピストン側室側の受圧面積にピストン側室6内の圧力を乗じた値からピストン4のロッド側室側の受圧面積にロッド側室5内の圧力を乗じた値を差し引いた値に等しい減衰力を伸縮ユニット1の収縮を妨げる向きに発生する。なお、本実施の形態のシリンダ装置C1では、ダンパ回路D1が伸側吸込通路30と伸側チェック弁31とを備えているので、ダンパモードのシリンダ装置C1における伸縮ユニット1が収縮する際に、ロッド側室5内の圧力がタンク圧より低下すると伸側チェック弁31が開弁してタンク7から作動油がロッド側室5へ供給される。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1がダンパモードで収縮する場合に、ロッド側室5内が負圧とならずに済み、エアレーションの発生や、伸縮ユニット1の収縮から伸長への切り換わりにおいて減衰力の発生が遅れる事態を招かずに済む。
【0123】
このようにシリンダ装置C1は、ダンパモードの状態では、伸縮ユニット1が外力によって伸長或いは収縮すると、伸縮ユニット1の伸長或いは収縮を妨げる減衰力を発生する。そして、ダンパモードの状態のシリンダ装置C1は、伸縮ユニット1の伸長時には推力調整部FT1と伸側リリーフ弁25との一方または両方によって減衰力を発生し、伸縮ユニット1の収縮時には第1圧側リリーフ弁27、可変リリーフ弁47および第2圧側リリーフ弁33によって減衰力を発生する。したがって、ダンパモードのシリンダ装置C1の伸長作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性は、推力調整部FT1におけるリリーフ弁46および可変リリーフ弁47と、伸側リリーフ弁25とによって設定され、ダンパモードのシリンダ装置C1の収縮作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性は、第1圧側リリーフ弁27および可変リリーフ弁47と、第2圧側リリーフ弁33とによって設定されるので、伸長作動時と収縮作動時の減衰力特性をそれぞれ独立して設定できる。
【0124】
つまり、ダンパモードにおける本実施の形態のシリンダ装置Cの伸長作動時および収縮作動時の減衰力特性は、ピストン4のロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面積の設定によらず、リリーフ弁46、可変リリーフ弁47、伸側リリーフ弁25、第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33の設定によって独立して調整できる。換言すれば、ダンパモードにおける本実施の形態のシリンダ装置C1の1伸長作動時と収縮作動時との2つの減衰力特性を同一の特性にするに際して、ロッド3の断面積をピストン4の断面積の二分の一にする必要はなく、ロッド3の径とピストン4の径(シリンダ2の径)を強度上で許される範囲で任意に決定した後、リリーフ弁46、可変リリーフ弁47、伸側リリーフ弁25、第1圧側リリーフ弁27および第2圧側リリーフ弁33の設定によって前記の2つの減衰力特性を同一の特性となるように調整すればよい。
【0125】
なお、本実施の形態のダンパ回路D1が伸側吸込通路30と伸側チェック弁31とを備えていて、ダンパモードのシリンダ装置C1における伸縮ユニット1が収縮作動する際に、タンク7から拡大するロッド側室5へ向かう作動油の流れを許容するので、圧側通路32および第2圧側リリーフ弁33を省略してもよい。この場合、リリーフ弁46、可変リリーフ弁47、伸側リリーフ弁25および第1圧側リリーフ弁27の設定によって、ダンパモードにおける本実施の形態のシリンダ装置C1の伸長作動時と収縮作動時との2つの減衰力特性を同一になるように調整すればよい。
【0126】
ただし、圧側通路32および第2圧側リリーフ弁33を備える場合、ダンパモードのシリンダ装置C1における伸縮ユニット1が収縮作動する際に、ピストン側室6内の圧力が異常に高圧となった場合に、第2圧側リリーフ弁33が開弁してピストン側室6内の作動油をロッド側室5へ移動させてシリンダ装置C1を保護できる利点がある。
【0127】
また、本実施の形態のダンパ回路D1が圧側通路32および第2圧側リリーフ弁33を備えているため、ダンパモードのシリンダ装置C1における伸縮ユニット1が収縮作動する際に、圧側通路32を通じてピストン側室6からロッド側室5へ供給される作動油によってロッド側室5が負圧となる心配がなければ伸側吸込通路30と伸側チェック弁31とを省略できる。
【0128】
また、圧側通路32には、第2圧側リリーフ弁33の代わりに、通過する作動油に然程抵抗を与えないチェック弁を設けて、ダンパモードのシリンダ装置C1における伸縮ユニット1が収縮作動する際に、第1圧側リリーフ弁27および可変リリーフ弁47の抵抗で減衰力を発生してもよい。この場合、ダンパモードのシリンダ装置C1の伸長作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性を伸側リリーフ弁25によって設定でき、ダンパモードのシリンダ装置Cの収縮作動時のピストン速度に対して発生する減衰力の減衰力特性を第1圧側リリーフ弁27および可変リリーフ弁47によって設定できる。したがって、ピストン4のロッド側室側の受圧面積とピストン側室側の受圧面積の設定によらず、ダンパモードのシリンダ装置C1の伸長作動時と収縮作動時の減衰力特性を同一の特性に設定できる。
【0129】
以上、本実施の形態のシリンダ装置C1は、シリンダ2と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるロッド3と、シリンダ2内に移動可能に挿入されるとともにロッド3に連結されてシリンダ2内をロッド側室5とピストン側室6とに区画するピストン4とを有する伸縮ユニット1と、タンク7と、タンク7からシリンダ2に作動油(液体)を供給可能なポンプ14と、ロッド側室5とタンク7とを連通する制御通路40と、制御通路40に設けられた推力調整部FT1とを有して、伸縮ユニット1を伸縮駆動させ得るアクチュエータ回路A1と、ロッド側室5とピストン側室6とを連通する伸側減衰通路24と、伸側減衰通路24に設けられてロッド側室5からピストン側室6へ向かう作動油(液体)の流れに抵抗を与える伸側リリーフ弁25と、ピストン側室6を推力調整部FT1に接続する圧側減衰通路26と、圧側減衰通路26に設けられてピストン側室6からタンク7へ向かう作動油(液体)の流れに抵抗を与える第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27と、タンク7とピストン側室6とを連通する吸込通路28と、吸込通路28に設けられてタンク7からピストン側室6へ向かう作動油(液体)の流れを許容する吸込チェック弁29とを含むダンパ回路D1とを備えている。
【0130】
このように構成された本実施の形態のシリンダ装置C1は、アクチュエータ回路A1によってポンプ14から作動油(液体)をシリンダ2へ供給してアクチュエータとして機能できるとともに、ポンプ14を停止させてダンパ回路D1を利用してダンパとして機能できる。
【0131】
そして、本実施の形態のシリンダ装置C1は、ダンパとして機能する場合、伸縮ユニット1が伸長作動する場合には伸側リリーフ弁25を利用して減衰力を発生し、伸縮ユニット1が収縮作動する場合には第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27を利用して減衰力を発生することができる。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1は、ダンパとして機能する際に、伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを、ロッド3の径とピストン4の径(シリンダ2の径)の設定によらず、伸側リリーフ弁25と第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27との設定によって同一の特性に設定できる。
【0132】
つまり、本実施の形態のシリンダ装置C1では、シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化しても、ダンパとして機能する際に伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを同一に設定できる。シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化すれば、ピストン4の受圧面積を大きくでき、伸縮ユニット1内の作動油(液体)の油柱剛性(液柱剛性)を高めることができるため、本実施の形態のシリンダ装置C1は、減衰係数を高めてダンパとして機能する際に応答性よく高い減衰力を発生できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1によれば、大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を向上できるのである。
【0133】
第1の実施の形態のシリンダ装置Cでは、第1圧側リリーフ弁27が設けられた圧側減衰通路26を推力調整部FTにおけるバイパス通路開閉弁44が設けられたバイパス通路P2のリリーフ弁43とバイパス通路開閉弁44との間に接続して、アクチュエータモード時にはバイパス通路開閉弁44を遮断して圧側減衰通路26を遮断していたが、第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、アクチュエータモード時にも圧側減衰通路26を開閉弁によって遮断せずに推力調整部FT1の可変リリーフ弁47の上流に接続して第1圧側リリーフ弁27をアクチュエータモードのシリンダ装置C1の推力の発生に使用している。他方、第1の実施の形態のシリンダ装置Cと第2の実施の形態のシリンダ装置C1とは、ダンパモード時には必ず第1圧側リリーフ弁27を利用して減衰力を発生する。このように、推力調整部FT,FT1は、ダンパモード時には第1圧側リリーフ弁27の利用によって減衰力を発生できる構成であればよく、アクチュエータモード時には、第1の実施の形態のシリンダ装置Cのように第1圧側リリーフ弁27が設けられた圧側減衰通路26を完全に遮断してもよいし、第2の実施の形態のシリンダ装置C1のように圧側減衰通路26を遮断せずに連通する状態としてもよい。
【0134】
つまり、第2の実施の形態の推力調整部FT1のように、推力を調整可能な可変リリーフ弁47を備えた調整通路P3を一つのみを備えている場合には、圧側減衰通路26を可変リリーフ弁47の上流に接続すればよい。また、第1の実施の形態の推力調整部FTのように、推力を調整可能な可変リリーフ弁41を備えた調整通路P1と、ダンパモード時に開くバイパス通路開閉弁44を備えてたバイパス通路P2とを備えている場合には、ダンパモード時に有効となるバイパス通路P2のバイパス通路開閉弁44の上流に圧側減衰通路26を接続すればよい。さらに、推力調整部FT,FT1は、3つ以上の並列された通路をそなえていてもよく、圧側減衰通路26を可変リリーフ弁或いは開閉弁が設けられた通路の可変リリーフ弁或いは開閉弁の上流に接続すればよい。以上のように、推力調整部FT,FT1は、アクチュエータモード時には上流であるシリンダ2内の圧力を制御してシリンダ装置C,C1の推力を調整可能であって、可変リリーフ弁或いは開閉弁が設けられてダンパモード時に連通状態となる通路を備えていればよく、圧側減衰通路26はダンパモード時に連通状態となる通路の可変リリーフ弁或いは開閉弁の上流に接続されていればよい。
【0135】
また、第2の実施の形態のシリンダ装置C1では、推力調整部FT1は、制御通路40の途中に設けられた調整通路P3と、ロッド側室5側の圧力が開弁圧に達すると開弁するリリーフ弁46と、通電により開弁圧の調整が可能な可変リリーフ弁46とを備え、調整通路P3にロッド側室5側から順にリリーフ弁46と可変リリーフ弁47とが直列に配置され、圧側減衰通路26は、ピストン側室6を調整通路P3のリリーフ弁46と可変リリーフ弁47との間に接続している。
【0136】
このように構成された本実施の形態のシリンダ装置C1は、推力調整部FT1でアクチュエータモード時に圧側減衰通路26を遮断する開閉弁を有していなくとも、ダンパモードでは第1圧側リリーフ弁27を利用して圧側減衰力を発生可能であり、推力調整部FT1の構成が簡素となるとともに開閉弁が不要であるから、シリンダ装置C1の製造コストを低減できる。
【0137】
そして、本実施の形態のシリンダ装置C1は、ダンパとして機能する場合、伸縮ユニット1が伸長作動する場合には伸側リリーフ弁25によって減衰力を発生し、伸縮ユニット1が収縮作動する場合には第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27によって減衰力を発生することができる。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1は、ダンパとして機能する際に、伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを、ロッド3の径とピストン4の径(シリンダ2の径)の設定によらず、伸側リリーフ弁25と第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)27との設定によって同一の特性に設定できる。
【0138】
つまり、本実施の形態のシリンダ装置C1では、シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化しても、ダンパとして機能する際に伸長作動時の減衰力特性と収縮作動時の減衰力特性とを同一に設定できる。シリンダ2の径を大径化する代わりにロッド3の径を強度の許す範囲で小径化すれば、ピストン4の受圧面積を大きくでき、伸縮ユニット1内の作動油(液体)の油柱剛性(液柱剛性)を高めることができるため、本実施の形態のシリンダ装置Cは、減衰係数を高めてダンパとして機能する際に応答性よく高い減衰力を発生できる。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1によれば、大型化を招かずにアクチュエータとしての機能を発揮しつつも、ダンパとして機能する際に減衰係数を向上できるのである。なお、ユニフローダンパのように、ロッド3の断面積をピストン4の断面積の二分の一に設定しても、圧側通路32と第2圧側リリーフ弁33とを設ければ、シリンダ装置C1の収縮時にピストン側室6内の圧力をロッド側室5内の圧力よりも高くすることができるため、従来のシリンダ装置よりも収縮作動時の減衰係数を高くできる。よって、圧側通路32と第2圧側リリーフ弁33とを設ければ、ロッド3の断面積やピストン4の断面積の設定の自由度が向上する。
【0139】
また、本実施の形態のシリンダ装置Cでは、シリンダ装置Cのモータ15および電磁弁である各弁11,13,47への通電が行えない状態となると、自動的に、シリンダ装置C1がダンパモードに切り換わる。よって、本実施の形態のシリンダ装置C1によれば、失陥時には自動的にダンパ回路D1を有効としてダンパモードに切り換わり、失陥時でも鉄道車両Tの車体Sの振動を抑制できる。
【0140】
そして、本実施の形態のシリンダ装置C1では、ダンパ回路D1がタンク7とロッド側室5とを連通する伸側吸込通路30と、伸側吸込通路30に設けられてタンク7からロッド側室5へ向かう作動油(液体)の流れのみを許容する伸側チェック弁31とを含んでいる。このように構成されたシリンダ装置C1によれば、伸縮ユニット1が収縮作動する際に、ロッド側室5内が負圧とならずに済み、エアレーションの発生や、伸縮ユニット1の収縮から伸長への切り換わりにおいて減衰力の発生が遅れる事態を招かずに済む。
【0141】
さらに、本実施の形態のシリンダ装置C1では、アクチュエータ回路A1が開弁圧を調整可能であって、開弁圧の調整によってシリンダ2内の圧力を調整する可変リリーフ弁47を有し、伸側リリーフ弁25の開弁圧はアクチュエータモード時に推力調整部FT1が採り得る最大圧力損失より高い。このように構成されたシリンダ装置C1では、アクチュエータとして機能する場合、ポンプ14からシリンダ2内に供給される作動油(液体)をロッド側室5からピストン側室6へ逃がさないので効率よく収縮側の推力を発生できるとともにエネルギ消費も低減される。
【0142】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0143】
1・・・伸縮ユニット、2・・・シリンダ、3・・・ロッド、4・・・ピストン、5・・・ロッド側室、6・・・ピストン側室、7・・・タンク、14・・・ポンプ、24・・・伸側減衰通路、25・・・伸側リリーフ弁、26・・・圧側減衰通路、27・・・第1圧側リリーフ弁(圧側リリーフ弁)、28・・・吸込通路、29・・・吸込チェック弁、30・・・伸側吸込通路、31・・・伸側チェック弁、40・・・制御通路、41,47・・・可変リリーフ弁、42・・・バイパス通路、43,46・・・リリーフ弁、44・・・バイパス通路開閉弁、A,A1・・・アクチュエータ回路、C,C1・・・シリンダ装置、D,D1・・・ダンパ回路、FT,FT1・・・推力調整部、P1,P3・・・調整通路、P2・・・バイパス路、Sol・・・ソレノイド