(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119660
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】錠剤用基材、錠剤の崩壊促進用組成物、口腔用錠剤の食感および/または食味改良用組成物ならびに錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20230822BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230822BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230822BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230822BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230822BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230822BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/26
A23L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022633
(22)【出願日】2022-02-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り FOOD Style21、9月号、Vol.25、No.9、発行者 食品化学新聞社、令和3(2021)年9月10日 発行
(71)【出願人】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000118615
【氏名又は名称】伊那食品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】木村 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 幸司
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
【Fターム(参考)】
4B018LE01
4B018MD10
4B018MD32
4B018MD35
4B018ME14
4B018MF08
4B035LC16
4B035LE05
4B035LG07
4B035LG19
4B035LG26
4B035LK09
4B035LP31
4C076AA36
4C076BB01
4C076DD38
4C076DD41
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF01
4C076GG01
(57)【要約】
【課題】 高い崩壊性や優れた食感・食味を具備する錠剤を製造できる技術を提供する。
【解決手段】 (A)吸水乾燥ファイバーおよび(B)エリスリトール顆粒を含む錠剤用基材。本発明によれば、錠剤硬度は殆ど低下させずに、高い崩壊性を備えた錠剤を製造することができる。本発明によれば、食味や食感に優れた口腔用錠剤を製造することができる。本発明によれば、原材料に吸水乾燥ファイバーおよびエリスリトール顆粒を配合するという簡便な方法により、崩壊性が高い錠剤や食感・食味に優れた錠剤を製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)および(B)を含む、錠剤用基材:
(A)単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー100質量部に5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなる吸水乾燥ファイバーであって、前記繊維状ファイバーが、無数のマイクロフィブリルの集合体であって、前記マイクロフィブリルは準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなるものである、吸水乾燥ファイバー、
(B)ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するエリスリトール顆粒;
(a)160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するエリスリトール顆粒、
(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエリスリトール顆粒。
【請求項2】
口腔用錠剤の基材である、請求項1に記載の錠剤用基材。
【請求項3】
下記(A)および(B)を有効成分とする、錠剤の崩壊促進用組成物:
(A)単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー100質量部に5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなる吸水乾燥ファイバーであって、前記繊維状ファイバーが、無数のマイクロフィブリルの集合体であって、前記マイクロフィブリルは準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなるものである、吸水乾燥ファイバー、
(B)ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するエリスリトール顆粒;
(a)160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するエリスリトール顆粒、
(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエリスリトール顆粒。
【請求項4】
下記(A)および(B)を有効成分とする、口腔用錠剤の食感および/または食味改良用組成物:
(A)単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー100質量部に5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなる吸水乾燥ファイバーであって、前記繊維状ファイバーが、無数のマイクロフィブリルの集合体であって、前記マイクロフィブリルは準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなるものである、吸水乾燥ファイバー、
(B)ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するエリスリトール顆粒;
(a)160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するエリスリトール顆粒、
(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエリスリトール顆粒。
【請求項5】
下記(ア)~(オ)から選択される1以上の用途で用いられることを特徴とする、請求項4に記載の組成物;
(ア)口腔用錠剤の口溶けを向上する用途、
(イ)口腔用錠剤の口腔内におけるもさつきを低減する用途、
(ウ)口腔用錠剤の口腔内におけるぱさつきを低減する用途、
(エ)口腔用錠剤の口腔内における歯付きを低減する用途、
(オ)口腔用錠剤の後味を向上する用途。
【請求項6】
下記(i)または(ii)の配合割合で用いられることを特徴とする、請求項4または請求項5のいずれかに記載の組成物;
(i)錠剤において前記吸水乾燥ファイバーが0.43質量%以上25.5質量%以下となる配合割合、
(ii)前記吸水乾燥ファイバー1重量部に対して、前記エリスリトール顆粒が2.73重量部以上232.94重量部以下となる配合割合。
【請求項7】
請求項1もしくは請求項2に記載の錠剤用基材または請求項3~6のいずれかに記載の組成物を含む原材料を、所定の形状に成形加工する工程を有する、錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用することを特徴とする、錠剤用基材、錠剤の崩壊促進用組成物、口腔用錠剤の食感および/または食味改良用組成物ならびに錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤は、一般に、活性成分または活性成分に賦形剤等の副材料を加えたものを、圧縮形成などの方法により、一定の形に製した固形の製品をいう。錠剤は、従来から、医薬品、菓子等の食品、入浴剤、洗浄剤等さまざまな分野で製品が製造されている。
【0003】
錠剤の多くは、使用時には液体と接触し、崩壊して活性成分を放出することにより用いられる。そこで、使用時における崩壊ないし活性成分の放出を容易にするため、錠剤には、添加物(崩壊剤)が配合される場合がある。係る崩壊剤として、本願発明者らは以前に、所定の繊維状ファイバーに所定の吸水乾燥処理を施してなる錠剤用基材を開発している(特許文献1)。当該錠剤用基材は、単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー(無数のマイクロフィブリルの集合体であって、準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなる)100質量部に対して、5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなるもの(本発明において、「吸水乾燥ファイバー」という。)である。
【0004】
一方、賦形剤は、製剤の容量や重量を増し、活性成分の使用量を調整(希釈)して、取扱いを便利にするために加える添加物である。係る賦形剤として、本願発明者らは以前に、エリスリトールの特性(砂糖に似た好ましい甘味質やゼロカロリーなど)を保持しつつ、十分な結着性を備えたエリスリトール顆粒を開発している(特許文献2)。当該エリスリトール顆粒は、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するものである;(a)160mgのエリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有する、(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6799874号公報
【特許文献2】国際公開第2018/159673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
錠剤の中には、水無しで、あるいは少量の水とともに摂取した際に、口腔内で素速く崩壊する形態の口腔内崩壊錠や、口の中で噛んで摂取する咀嚼錠(チュアブル錠)がある。これらは、より高い崩壊性や優れた食感・食味が要求される。本発明は、係る課題を解決するためになされたものであって、高い崩壊性や優れた食感・食味を具備する錠剤を製造できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、上述の吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用することにより、錠剤の崩壊に要する時間を顕著に短縮できることを見出した。また、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用することにより、錠剤の食感や食味を向上できることを見出した。そこで、これらの知見に基づいて下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る錠剤用基材は、下記(A)および(B)を含むものである:
(A)単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー100質量部に5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなる吸水乾燥ファイバーであって、前記繊維状ファイバーが、無数のマイクロフィブリルの集合体であって、前記マイクロフィブリルは準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなるものである、吸水乾燥ファイバー、
(B)ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するエリスリトール顆粒;
(a)160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するエリスリトール顆粒、
(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエリスリトール顆粒。
【0009】
(2)本発明に係る錠剤用基材は、口腔用錠剤の基材として用いることができる。
【0010】
(3)本発明に係る錠剤の崩壊促進用組成物は、下記(A)および(B)を有効成分とする:
(A)単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー100質量部に5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなる吸水乾燥ファイバーであって、前記繊維状ファイバーが、無数のマイクロフィブリルの集合体であって、前記マイクロフィブリルは準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなるものである、吸水乾燥ファイバー、
(B)ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するエリスリトール顆粒;
(a)160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するエリスリトール顆粒、
(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエリスリトール顆粒。
【0011】
(4)本発明に係る口腔用錠剤の食感および/または食味改良用組成物(以下、単に「食感・食味改良用組成物」と表記する場合がある。)は、下記(A)および(B)を有効成分とする:
(A)単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバー100質量部に5質量部以上100質量部未満の水を吸水させた後、乾燥させてなる吸水乾燥ファイバーであって、前記繊維状ファイバーが、無数のマイクロフィブリルの集合体であって、前記マイクロフィブリルは準結晶領域と結晶領域とを含むα-セルロースからなるものである、吸水乾燥ファイバー、
(B)ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有し、かつ、下記(a)または(b)の特徴を有するエリスリトール顆粒;
(a)160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するエリスリトール顆粒、
(b)1.48質量%超15.25質量%未満のヒドロキシプロピルセルロース、または、1.48質量%超10.71質量%未満のヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するエリスリトール顆粒。
【0012】
(5)本発明に係る食感・食味改良用組成物は、下記(ア)~(オ)から選択される1以上の用途で用いられるものであってもよい;
(ア)口腔用錠剤の口溶けを向上する用途、
(イ)口腔用錠剤の口腔内におけるもさつきを低減する用途、
(ウ)口腔用錠剤の口腔内におけるぱさつきを低減する用途、
(エ)口腔用錠剤の口腔内における歯付きを低減する用途、
(オ)口腔用錠剤の後味を向上する用途。
【0013】
(6)本発明に係る食感・食味改良用組成物において、吸水乾燥ファイバーおよび/またはエリスリトール顆粒は、下記(i)または(ii)の配合割合で用いられるものであってもよい;
(i)錠剤において吸水乾燥ファイバーが0.43質量%以上25.5質量%以下となる配合割合、
(ii)吸水乾燥ファイバー1重量部に対して、エリスリトール顆粒が2.73重量部以上232.94重量部以下となる配合割合。
【0014】
(7)本発明に係る錠剤の製造方法は、本発明に係る錠剤用基材、崩壊促進用組成物または食感・食味改良用組成物を含む原材料を、所定の形状に成形加工する工程を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、錠剤硬度は殆ど低下させずに、高い崩壊性を備えた錠剤を製造することができる。したがって、例えば、口腔内で素早く崩壊することが要求される口腔内崩壊錠や咀嚼錠の製造に資することができる。また、医薬品用途の錠剤であれば、体内や体表面で活性成分が薬効を奏することを容易にすることができる。また、例えば、食品用途の錠剤であれば、呈味成分が味を呈したり、栄養成分が体内に吸収されたりするのを容易にすることができる。また、例えば、洗浄剤用途の錠剤であれば、洗浄成分が洗浄効果を発揮するのを容易にすることができる。また、例えば、入浴剤用途の錠剤であれば、活性成分が温浴効果や発汗効果、香り、保湿効果などを発揮するのを容易にすることができる。
【0016】
本発明によれば、食味や食感に優れた口腔用錠剤を製造することができる。したがって、例えば、医薬品用途の口腔用錠剤であれば、服用や使用に係る抵抗感を減らし、小児においても利用しやすくすることができる。また、例えば、食品用途の口腔用錠剤であれば、美味しくすることができ、製品価値の向上に寄与することができる。
【0017】
また、本発明によれば、原材料に吸水乾燥ファイバーおよびエリスリトール顆粒を配合するという簡便な方法により、崩壊性が高い錠剤や食感・食味に優れた錠剤を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(I)は吸水乾燥ファイバーと併用して各種の糖アルコールを配合した錠剤の崩壊時間を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる崩壊時間の測定値を示す表である。
【
図2】(I)は吸水乾燥ファイバーと併用して各種の糖アルコールを配合した錠剤の食味および食感(口溶け、もさつき、ぱさつき、歯付き、後味および好み)の評価結果を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる評価点を示す表である。
【
図3】(I)は吸水乾燥ファイバー混合物と併用して各種の糖アルコールを配合した錠剤の崩壊時間を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる崩壊時間の測定値を示す表である。
【
図4】(I)は吸水乾燥ファイバー混合物と併用して各種の糖アルコールを配合した錠剤の食味および食感(口溶け、もさつき、ぱさつき、歯付き、後味および好み)の評価結果を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる評価点を示す表である。
【
図5】(I)は由来の異なる吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤の崩壊時間を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる崩壊時間の測定値を示す表である。
【
図6】由来の異なる吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤の食味および食感(口溶け、もさつき、ぱさつき、歯付き、後味および好み)の評価結果を示す棒グラフである。
【
図7】由来の異なる吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤の食味および食感(口溶け、もさつき、ぱさつき、歯付き、後味および好み)の評価に係る各パネルの採点値を示す表である。
【
図8】(I)は吸水乾燥ファイバー混合物の併用の有無における錠剤の崩壊時間の違いを示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる崩壊時間の測定値を示す表である。
【
図9】(I)は吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒との配合量を変化させた錠剤の崩壊時間を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる崩壊時間の測定値を示す表である。
【
図10】(I)は吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒との配合量を変化させた錠剤の食感(口溶け)の評価結果を示す棒グラフである。(II)は、各パネルによる評価点を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
本発明は、上記(A)の吸水乾燥ファイバーと上記(B)のエリスリトール顆粒とを含む、錠剤用基材を提供する。また、本発明は、上記(A)の吸水乾燥ファイバーと上記(B)のエリスリトール顆粒とを有効成分とする、錠剤の崩壊促進用組成物を提供する。また、本発明は、上記(A)の吸水乾燥ファイバーと上記(B)のエリスリトール顆粒とを有効成分とする、口腔用錠剤の食感および/または食味改良用組成物を提供する。
【0021】
本発明において「錠剤」とは、活性成分または活性成分に崩壊剤や賦形剤等の副材料を加えたものを原材料として、一定形状に成形加工した固形の製品をいう。なお、ここでいう「活性成分」とは、錠剤の用途に応じて本来的な作用を発揮する成分をいう。例えば、医薬品であれば、生理作用を発揮する成分をいい、飲食品であれば呈味成分ないし栄養成分をいい、洗浄剤であれば洗浄成分をいい、入浴剤であれば温浴効果や発汗効果をもたらす成分をいう。また、「錠剤用基材」とは、上記「副材料」に当たる成分、すなわち活性成分に該当しない成分の全部または一部をいう。
【0022】
「口腔用錠剤」とは、口腔内に入れる態様で用いられる錠剤をいう。口腔用錠剤としては、例えば、口腔内に入れた後、形態を保ったまま飲み込む態様で用いられるもの、唾液や少量の水で崩壊させ、成分を溶出させる態様で用いられるもの(口腔内崩壊錠)、噛み砕いて唾液で崩壊させ、成分を溶出させる態様で用いられるもの(咀嚼錠、チュアブル錠)、舌の下に入れて唾液で崩壊させ、成分を溶出させる態様で用いられるもの(舌下錠)、歯と歯茎の間に挟み唾液で崩壊させ、成分を溶出させる態様で用いられるもの(バッカル錠)などを例示することができる。
【0023】
「崩壊促進用組成物」とは、錠剤の崩壊を促進するために、錠剤に配合する物質をいう。「錠剤の崩壊を促進する」とは、錠剤が液体と接触して崩壊を開始してから、崩壊が完了するまでに要する時間(崩壊時間)を短くすることをいう。
【0024】
また、錠剤について「崩壊性が高い」とは、崩壊時間が短いことをいう。
【0025】
崩壊時間は、後述する実施例で示すように、官能試験で確認することができる。すなわち、パネルが錠剤を口に入れ、噛まずに、口腔内で溶かして喫食する。口腔内で錠剤(錠剤が崩壊して生じる残留物を含む)が消失する迄の時間を測定し、これを「崩壊時間」として評価すればよい。
【0026】
あるいは、崩壊時間は、第十七改正日本薬局方(平成28年3月7日 厚生労働省告示第64号)に記載の崩壊試験法に準じた試験を行うことにより確認することもできる。この場合は、1処方あたり6錠以上について測定を行い、崩壊時間の偏差を算出する。崩壊試験装置(NT-200、富山産業)を用いて、試験器の6本のガラス管それぞれに錠剤を1個ずつ入れ、試験器を脱イオン水、崩壊試験第1液または崩壊試験第2液に浸漬する。液温は37±2℃に保ち、30回/分にて上下運動を行い、崩壊時間を測定する。(i)錠剤の残留物をガラス管内に全く認めないとき、(ii)錠剤の残留物を認めるが、明らかに原形をとどめない軟質の物質であるとき、(iii)錠剤の残留物を認めるが、それが不溶性の剤皮であるときの(i)-(iii) のいずれかの場合に、錠剤が崩壊したと判断する。なお、崩壊試験第1液(第1液)は、胃液を模した強酸性の液体であり、当該液体中での崩壊性は、胃の中での崩壊性の指標となる。また、崩壊試験第2液(第2液)は、腸液を模した中性~弱アルカリ性の液体であり、当該液体中での崩壊性は、腸の中での崩壊性の指標となる。それらの組成を以下に示す。
<第1液>塩化ナトリウム2.0gを塩酸7.0mL及び水に溶かして1Lとする。この液は無色澄明で、そのpHは約1.2である。
<第2液>0.2mol/Lリン酸二水素カリウム水溶液250mLに0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液118mLおよび水を加えて1Lとする。この液は無色澄明で、そのpHは約6.8である。
【0027】
本発明の錠剤用基材あるいは崩壊促進用組成物を配合した錠剤と配合していない錠剤とを上述の官能試験あるいは第十七改正日本薬局方に準じた崩壊試験に供して、崩壊時間を測定して比較する。前者の方が崩壊時間が短ければ、本発明により錠剤の崩壊が促進されたと判断することができる。
【0028】
「口腔用錠剤の食感および/または食味改良用組成物」とは、口腔用錠剤の食感や食味を良くするために、錠剤に配合する物質をいう。
【0029】
本発明において、口腔用錠剤の食感や食味が改良されたか否かは、例えば、本発明の錠剤用基材あるいは食感・食味改良用組成物を配合した錠剤Xと配合していない錠剤Yとを官能試験に供して確認することができる。係る官能試験における評価項目は、後述する実施例に示すように、「口溶け」、「もさつき」、「ぱさつき」、「歯つき」、「後味」あるいは「好み」が例示される。当該試験の結果、錠剤Xの方が錠剤Yよりも「口溶けが良い」、「もさつき感がない(少ない)」、「ぱさつき感がない(少ない)」、「歯付きがない(少ない)」、「後味が良い」あるいは「好みである(総合的に好きである)」、との比較結果が得られれば、本発明により食感ないし食味が改良されたと判断することができる。
【0030】
すなわち、本発明の錠剤用基材あるいは食感・食味改良用組成物は、下記(ア)~(オ)の用途で用いることができる;
(ア)口腔用錠剤の口溶けを向上する用途、
(イ)口腔用錠剤の口腔内におけるもさつきを低減する用途、
(ウ)口腔用錠剤の口腔内におけるぱさつきを低減する用途、
(エ)口腔用錠剤の口腔内における歯付きを低減する用途、
(オ)口腔用錠剤の後味を向上する用途。
【0031】
換言すれば、本発明は、(A)吸水乾燥ファイバーと(B)エリスリトール顆粒とを有効成分とする、(ア)口腔用錠剤の口溶け向上用組成物、(イ)口腔用錠剤の口腔内におけるもさつき低減用組成物、(ウ)口腔用錠剤の口腔内におけるぱさつき低減用組成物、(エ)口腔用錠剤の口腔内における歯付き低減用組成物、ならびに(オ)口腔用錠剤の後味向上用組成物をも提供する。
【0032】
(A)の吸水乾燥ファイバーは、特許第6799874号公報に開示された「所定量の水を吸水させた後、乾燥して処理された繊維状ファイバー」である。吸水させることで繊維状ファイバーの分子内の親水性基(水酸基や若干存在するイオン基)が表面に集まる。すなわち、親水性基が外側を向くことで、繊維状ファイバーの表面の水への親和性が増大し、崩壊性が備わったものである。また、吸水乾燥ファイバーは、繊維状ファイバーから得られたものなので、錠剤に高い硬度を付与することができる。
【0033】
ここで、繊維状ファイバーは、無数のマイクロフィブリル(超微小繊維)の集合体として存在している、植物繊維(α-セルロース)である。α-セルロースには、準結晶領域と結晶領域とが含まれる。準結晶領域は、無定形のセルロースチェーンの集合体であり、柔軟性を有している。結晶領域では、マイクロフィブリルが一定方向に結合し、緻密で剛性を有している。繊維状ファイバーは、柔軟性のある準結晶領域を含むことから、吸水により分子内での親水性基が表面を向きやすくなる。
【0034】
繊維状ファイバー(マイクロフィブリルの集合体)の平均繊維長は25μm以上1000μm以下に規定される。繊維状ファイバーは、単一粒子として顕微鏡観察により確認することができ、その繊維長も顕微鏡法などの一般的な方法により測定することができる。
繊維長測定に用いる顕微鏡は、例えば、デジタルマイクロスコープ VHX-6000(キーエンス社製)を例示することができる。市販品の繊維状ファイバーについては、メーカーパンフレット記載の値を繊維長として採用できる。
【0035】
本発明においては、単一粒子の平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーの粉体を、造粒などにより二次加工して用いることもできる。この場合、二次加工により得られた粒子の平均粒子径は、1000μmより大きくなっても問題はない。打錠可能な流動性の許容する範囲で、平均粒子径を調整することが可能である。
【0036】
繊維状ファイバーとして、具体的には、小麦、ビート、パルプ、コーン、大豆、オート麦、サトウキビ、ジャガイモ、又は米に由来するファイバーが挙げられる。繊維状ファイバーは、不溶性食物繊維の含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。繊維状ファイバーにおける不溶性食物繊維の含有率は、プロスキー法などの一般的な公定法により求めることができる。
【0037】
吸水乾燥ファイバーの調製法を以下に述べる。まず、繊維状ファイバーに5質量部以上100質量部未満の水を吸水させる。加える水は特に限定されず、食品、医薬品、化粧品などの製造に通常用いられているものであればよい。また、非食品分野に使用する際には、相応な水を使用することも可能である。作業性や微生物汚染をさらに改善する目的で、アルコールなどの有機溶剤を含有させた水を用いてもよい。この場合、有機溶剤の量は、水と有機溶剤との合計量の50質量%程度までに留めることが望まれる。
【0038】
吸水させる工程は、湿式造粒工程、調湿工程などの製剤作製過程における加水でもよい。また、市販の噴霧器を用いて、所定量の水を繊維状ファイバーに噴霧するという手法でもよい。水が噴霧された繊維状ファイバーを、混合装置、流動層造粒装置等により1~30分程度均一に混合することによって、所定量の水が吸水される。あるいは、高湿度環境下に、繊維状ファイバーを1~10日程度放置することによって、吸水させることもできる。この場合には、処理する繊維状ファイバーの量、時間、処理温度や湿度によって吸水される水の量を調節することができる。さらに、流動層造粒機を用いて、所定量の水を加えつつ噴霧造粒してもよい。
【0039】
吸水によって、繊維状ファイバーは表面から膨潤して軟質化する。次に、膨潤した繊維状ファイバーを乾燥させることによって吸水乾燥ファイバーを得る。ここで、乾燥は、膨潤した繊維状ファイバーの水分値が、原料の繊維状ファイバーの水分値プラス15質量%以下で、且つ原料の繊維状ファイバーの水分値プラス加水した水の量の水分値より低い値となる状態となるまで、行う。水分値は、例えば、赤外線水分計などを使用して測定し、確認することができる。乾燥方法は、例えば流動層乾燥機等を用いて、40~130℃程度の熱風により行うことができる。あるいは、真空乾燥機、真空凍結乾燥機、棚型送風乾燥機など一般的に使用されるもの等により乾燥させてもよい。
【0040】
吸水乾燥ファイバーの水分量は、特に限定されないが、一般的に25質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。また、少なくとも1質量%の水分を含有していることが好ましい。なお、吸水乾燥ファイバーの最高水分量は、原料の繊維状ファイバーと比較すると、一般的には+15質量%程度までであり、好ましくは+7質量%程度までであり、より好ましくは+5質量%程度までである。なお、水分量は、原料の繊維状ファイバーより10%質量程度少なくなっても、効果に問題はない。
【0041】
(B)のエリスリトール顆粒は、国際公開第2018/159673号に開示された「直打法による錠剤製造に好適な物性を具備し、かつエリスリトールの特性を保持した、エリスリトールを主成分とする顆粒またはその集合体」である。
【0042】
本発明に係るエリスリトール顆粒は、細孔の多い(ポーラスな)構造を有しており、それ故に、錠剤製造時の高い成型性、結着性、製造された錠剤における高い硬度等の打錠適性を有している。
【0043】
ここで、顆粒の打錠適性を示す指標として、平均降伏圧がある。平均降伏圧は、当該顆粒を万能試験機の臼に充填し、圧縮していった場合の圧縮圧(P)の値と、当該圧縮圧における顆粒層の空隙率の逆数の自然体数(In(1/ε))の値との関係をプロットしたもの(ヘッケルプロット)を作成することにより求めることができる。平均降伏圧はヘッケルプロットの直線部分の傾きの逆数として定義され、顆粒層が塑性変形を示す段階に係る平均降伏圧が低いほど、塑性変形しやすい、すなわち打錠適性が高いことを示す。ポーラス構造を有し、打錠適性を備える本発明のエリスリトール顆粒について、平均降伏圧で示せば、以下の値を例示することができる;当該エリスリトール顆粒160mgにステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)1.6mgを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合の30~100MPaの範囲における平均降伏圧が、1400MPa前後、あるいは、1200MPa以上1600MPa以下、1000MPa以上1800MPa以下、800MPa以上2000MPa以下、600MPa以上2200MPa以下、400MPa以上2400MPa以下、200MPa以上2600MPa以下、2800MPa以下、または2941MPa以下。
【0044】
すなわち、本発明に係るエリスリトール顆粒の第1の態様は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含有するエリスリトール顆粒であって、160mgの前記エリスリトール顆粒に1.6mgのステアリン酸マグネシウムを添加してなる試料を直径8mmの臼に充填し、10mm/分の圧縮速度、0~100MPaの圧力にて圧縮した場合に、30~100MPaの範囲における平均降伏圧が2941MPa未満となる物性を有するものである。
【0045】
また、ポーラス構造を有し、打錠適性を備える本発明のエリスリトール顆粒について、結合剤の含有量で示せば、HPCであれば1.48質量%超15.25質量%未満、HPMCであれば1.48質量%超10.71質量%未満ということができる。すなわち、本発明に係るエリスリトール顆粒の第2の態様は、HPCまたはHPMCを含有するエリスリトール顆粒であって、1.48質量%超15.25質量%未満のHPC、または、1.48質量%超10.71質量%未満のHPMCを含有するものである。
【0046】
吸水乾燥ファイバーや薬効成分、食品材料などを混合せず、エリスリトール顆粒のみ、あるいはこれに滑沢剤を添加したのみで、そのまま直打法により製造した錠剤の硬度もまた、当該エリスリトール顆粒の打錠適性を示す指標となる。ポーラス構造を有し、打錠適性を備える本発明のエリスリトール顆粒について、錠剤の硬度で示せば、以下の値を例示することができる;当該エリスリトール顆粒100重量部に対してステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)を1重量部の割合で添加した後、直打法により5.0~6.0kNの打錠圧で打錠して、直径が8mmで1錠当たり200mgの錠剤に成型した場合に、当該錠剤の硬度が3.5kgf以上。
【0047】
エリスリトール(エリトリトール)は、ブドウやナシなどの果実、味噌や醤油、清酒などの発酵食品にも元来含まれている糖アルコールである。化学名は1,2,3,4-Butaneterolで四炭糖の単糖アルコールであり、甘味度はショ糖の60~80%である。エリスロース(エリトロース)の還元体であるが、工業的には発酵により得られる。粉末状のエリスリトールは、市販されているものを用いることができる。
【0048】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、セルロースの骨格にヒドロキシプロポキシル基(-OCH2CHOHCH3)が導入されてなる、セルロース誘導体である。本発明において、HPCは市販のものを用いることができ、その粘度、分子量、粒子径、モル置換度ないしヒドロキシプロポキシル基の含有量などは、エリスリトール顆粒における所望の物性や造粒方法などに応じて適宜設定することができる。市販品としては、例えば、粘度が2~2.9ミリパスカル秒(mPa・s)(20℃/2%水溶液)、分子量が約40000、メジアン径が20μmのHPC(セルニーSSL SFP;日本曹達)を例示することができる。
【0049】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、セルロースの骨格にメトキシル基(-OCH3)およびヒドロキシプロポキシル基(-OCH2CHOHCH3)が導入されてなる、セルロース誘導体である。本発明において、HPMCは市販のものを用いることができ、その粘度、分子量、粒子径、メトキシル基およびヒドロキシプロポキシル基の置換度ないし含有量などは、エリスリトール顆粒における所望の物性や造粒方法などに応じて適宜設定することができる。市販品としては、例えば、粘度が3~15mPa・s(20℃/2%水溶液)、メトキシル基の含有量が28.0~30.0質量%(乾燥重量当たり)、ヒドロキシプロポキシル基の含有量が7.0~12.0質量%(乾燥重量当たり)のHPMC(TC-5;信越化学)を例示することができる。
【0050】
エリスリトール顆粒は、例えば「エリスリトール顆粒DC」(物産フードサイエンス)が市販されており、本発明ではこれを用いることができる。また、例えば、エリスリトールの粉末を流動または攪拌しながら、当該エリスリトールの粉末にHPCおよび/またはHPMCを含有する噴霧液を噴霧した後、乾燥させる造粒工程により製造することができる。
【0051】
上記造粒工程は、流動層造粒法により行うことができるほか、攪拌造粒法、噴霧乾燥法などにより行うこともできる。ここで、流動層造粒法とは、湿式造粒の一方法であり、造粒室の下部から熱風を送り込み、原料粉粒体を空中に巻き上げることにより粒子が流動する状態になる層を形成してから、液体(噴霧液)を噴霧して、凝集または被覆により原料粉粒体を粒状物(顆粒)に成長させる方法である。流動層造粒法による造粒は、市販の造粒装置により行うことができる。
【0052】
すなわち、上記造粒工程を流動層造粒法により行う場合は、エリスリトールの粉末を熱風で攪拌しながら、当該エリスリトールの粉末にHPCおよび/またはHPMCを含有する噴霧液を噴霧した後、当該熱風により乾燥させることにより、エリスリトール顆粒を製造することができる。
【0053】
噴霧液におけるHPCおよび/またはHPMCの溶媒は、例えば、水やエタノールなどのアルコール、あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。また、噴霧液には、本発明の特徴を損なわない限りにおいて、他の結合剤や糖アルコール、香料や着色料、保存料などの食品添加物や医薬品添加物を添加して用いてもよい。ここで、他の結合剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、プルラン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。
【0054】
噴霧液におけるHPCの濃度は、例えば、2.5~30質量%、2.6~29質量%、2.7~28質量%、2.8~27質量%、2.9~26質量%、3.0~25質量%、3.1~24質量%、3.2~23質量%、3.3~22質量%、3.4~21質量%、3.5~21質量%などとすることができる。また、噴霧液におけるHPMCの濃度は、例えば、例えば、2.5~20質量%、2.6~19質量%、2.7~18質量%、2.8~17質量%、2.9~16質量%、3.0~15質量%、3.1~14質量%、3.2~13質量%、3.3~12質量%、3.4~11質量%、3.5~11質量%などとすることができる。
【0055】
また、噴霧液には、HPCまたはHPMCの他に、さらにエリスリトールを含有させてもよい。噴霧液にエリスリトールを添加することにより、硬度がより高い錠剤の製造が可能なエリスリトール顆粒を製造することができる。噴霧液におけるエリスリトールの濃度は、エリスリトールが溶解可能な最大量とすることができ、具体的には、35質量%未満とすることができる。また、エリスリトール(ERT)とHPCとの重量比は、下記(v)もしくは(w)のいずれかであることが好ましい。ERTとHPMCとの重量比は、下記(x)もしくは(y)のいずれかであることが好ましい;
(v)ERTが33重量部に対して、HPCが2.5重量部超30重量部未満、
(w)HPCが5重量部に対して、ERTが3.3重量部超35重量部未満、
(x)ERTが33重量部に対して、HPMCが2.5重量部超20重量部未満、
(y)HPMCが5重量部に対して、ERTが0重量部超35重量部未満。
【0056】
造粒工程における造粒装置は、例えば、通常流動層型造粒機や強制循環型流動層造粒機、噴流層型造粒機などのバッチ式流動層造粒機、箱型連続式流動層造粒機や円筒型連続式流動層造粒機などの連続式流動層造粒機を用いることができる。造粒装置における噴霧液のスプレーノズルの位置は、例えば、底部スプレー方式、トップスプレー方式、接線スプレー方式のいずれであってもよい。造粒条件はエリスリトールの仕込み量やエリスリトール顆粒における所望の物性などに応じて適宜設定することができるが、例えば、熱風入口温度を60~100℃、風量を0.4~0.8m3/分、噴霧液の噴霧圧力を0.1~0.3MPaとすることができる。
【0057】
エリスリトール顆粒の粒子径は、エリスリトールの粉末の粒子径よりも大きいものであればよいが、直打法による錠剤製造に使用する観点からは、メジアン径(d50)が50μm以上250μm未満であることが好ましい。
【0058】
本発明の錠剤用基材には、本発明の特徴を損なわない限りにおいて、吸水乾燥ファイバーおよびエリスリトール顆粒以外の物質を含んでいてもよい。そのような物質としては、例えば、加工特性を改良するための滑沢剤や結合剤、錠剤の食感や風味、嗜好性、保存性などを改良するための食品添加物や医薬品添加物を挙げることができる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどを挙げることができる。また、錠剤硬度および崩壊性を高めるものとして、難溶性塩類(リン酸1水素カルシウム、リン酸3カルシウム、炭酸カルシウム、2酸化ケイ素、ピロリン酸2水素カルシウムなど)を挙げることができる。
【0059】
(A)吸水乾燥ファイバーおよび(B)エリスリトール顆粒は、錠剤を製造する際に、当該錠剤の原材料に配合することにより用いる。すなわち、本発明は、本発明の錠剤用基材、崩壊促進用組成物または食感・食味改良用組成物を含有する原材料を、所定の形状に成形加工する工程を有する、錠剤の製造方法も提供する。
【0060】
原材料を所定の形状に成形加工する方法は、公知の錠剤の製法に従って行うことができる。例えば、原材料を練り合わせて延ばしたものを所定の形に打ち抜いて製造する湿製法により行ってもよく、原材料を湿式練合したものを型に入れ乾燥させる方法により行ってもよい。また、原材料を圧縮形成する打錠法により行ってもよい。打錠法には、混合した原材料をそのまま打錠する直接打錠法(直打法)と、混合した原材料を結合剤溶液や水等の適当な溶媒を用いて造粒し、顆粒にしてから打錠する「間接打錠法」とがあるが、本発明ではこれらのいずれも用いることができる。
【0061】
(A)吸水乾燥ファイバーおよび(B)エリスリトール顆粒の使用量は特に限定されない。後述する実施例に示すように、エリスリトール顆粒と併用する吸水乾燥ファイバーは、錠剤において0.43質量%という少量の配合で、崩壊時間の短縮効果を発揮することができる。また、配合量を増加させても錠剤硬度が低下しにくいため、上限量も適宜設定することができる。口溶けなど、錠剤の食感・食味を改良する目的で用いられる場合、吸水乾燥ファイバーは、例えば、錠剤において30質量%以下、29.5質量%以下、29質量%以下、28.5質量%以下、28質量%以下、27.5質量%以下、27質量%以下、26.5質量%以下、26質量%以下、25.5質量%以下、25質量%以下、24.5質量%以下、24質量%以下、23.5質量%以下、23質量%以下、22.5質量%以下、22質量%以下、21.5質量%以下、21質量%以下、20.5質量%以下、20質量%以下の配合割合を例示することができる。
【0062】
また、エリスリトール顆粒も、錠剤における配合割合の多少に関わらず、吸水乾燥ファイバーとの併用により崩壊時間の短縮効果あるいは食感・食味改良効果を発揮する。エリスリトール顆粒の具体的な配合割合としては、例えば、錠剤中において、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、100質量%未満、99質量%以下の間で適宜設定することができる。また、吸水乾燥ファイバー1重量部に対しては、エリスリトール顆粒が2重量部以上、2.5重量部以上、2.73重量部以上、250重量部以下、240重量部以下、232.94重量以下の配合割合を例示することができる。
【0063】
なお、(A)吸水乾燥ファイバーおよび(B)エリスリトール顆粒以外の錠剤を構成する原材料は、錠剤の用途に応じて適宜設定することができる。
【0064】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例0065】
<試験方法>
本実施例は、別段に記載のない限り下記(1)~(8)の方法で行った。
【0066】
(1)エリスリトール顆粒の調製
造粒装置「マルチプレックス FD-MP-01ND(パウレック)」に、微粉末状のエリスリトール(エリスリトール50M(物産フードサイエンス))を仕込み、熱風入口温度が80℃、風量が0.6m3/分、噴霧圧力が0.2MPaにて、噴霧液を噴霧しながら造粒を行い、エリスリトールを主成分とする顆粒(エリスリトール顆粒)を得た。噴霧液には、ヒドロキシプロピルセルロース(セルニーSSL SFP(日本曹達))を9質量%となるよう溶解した水溶液を用いた。得られたエリスリトール顆粒の平均粒径は246μm、含有成分はエリスリトールが97質量%およびヒドロキシプロピルセルロースが3質量%、外観は白色顆粒であった。
【0067】
(2)吸水乾燥ファイバーの調製
表1に示す各ファイバー1000gに対し、市販の霧吹器を用いて水60gを均一に噴霧した。その後、10分程度十分に混合して全量の水を粉末に吸水させて、吸水粉末を得た。この吸水粉末を90℃にて熱風乾燥し、水分値を9質量%に調整した。本処理を施したファイバーを「吸水乾燥ファイバー」とした。
【表1】
【0068】
(3)吸水乾燥ファイバー混合物の調製
オート麦ファイバーを用いて(2)に記載の方法により吸水乾燥ファイバーを調製した。この吸水乾燥ファイバー85重量部と、粉末寒天(伊那寒天S-7、伊那食品工業(株)製、平均粒径100μm)10重量部と、リン酸1水素カルシウム(太平化学産業、平均粒径5μm)5重量部とを均一に混合した。これを「吸水乾燥ファイバー混合物」とした。
【0069】
(4)錠剤の原材料
錠剤の原材料は、表2に示すものを用いた。
【表2】
【0070】
(5)錠剤の調製
各実施例にて示す配合となるように、原材料を混合して連続式単発打錠機「AUTO TAB200(市橋精機)」または「HT-18(畑鐵工所)」に仕込み、錠剤硬度が70±10Nとなるよう、3.0~17kNの打錠圧(AUTO TAB200の場合)で圧縮成型した。錠剤の形状およびサイズは、隅角平面の円形錠(直径15mm、重量1g/1錠)または碁石状(直径16mm、重量1g/1錠)とした。
【0071】
(6)錠剤硬度の測定
錠剤の硬度はロードセル式錠剤硬度計DC-30(岡田精工)により測定した。
【0072】
(7)崩壊時間の測定
5~6名の分析型パネルにより錠剤を喫食して測定した。すなわち、錠剤を口に入れ、噛まずに、口腔内で錠剤(錠剤が崩壊して生じる残留物を含む)が消失する迄の時間(秒)を測定して、これを崩壊時間とした。崩壊時間は、各パネルの測定値を合算して平均値を算出した。
【0073】
(8)食感および食味の評価
5~6名の分析型パネルにより錠剤を喫食して、食感および食味を評価した。官能試験の評価項目、評価時期および採点基準を表3に示す。表3に示すように、評価項目は「口溶け」、「もさつき」、「ぱさつき」、「歯つき」、「後味」および「好み」の6項目とした。また、採点は、表3に示す採点基準により1~7点の7段階で各パネルが採点した。相対評価の場合は、「吸水乾燥ファイバーまたは吸水乾燥ファイバー混合物を配合していない試料」を4点(比較対照)とした。採点結果は、試料ごとに全パネルによる採点値の平均を求め、小数点第2位を四捨五入して評価点とした。すなわち、いずれの評価項目も評価点が大きいほど好ましいといえる。
【表3】
【0074】
<実施例1>吸水乾燥ファイバーとの併用における糖アルコールの検討
表4に示す配合で1~3番の錠剤を調製した。吸水乾燥ファイバーは、オート麦ファイバーを用いて調製したものを用いた。1番は吸水乾燥ファイバーとマルチトールとを含む配合、2番は吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを含む配合、3番は吸水乾燥ファイバーとソルビトールとを含む配合である。エリスリトール顆粒には3質量%のヒドロキシプロピルセルロースが含まれることから、実験条件を揃えるために、1番および3番には相当量のヒドロキシプロピルセルロースを配合した。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定するとともに食味および食感を評価した。錠剤硬度の測定結果を表4の最下段に、崩壊時間の測定結果を
図1に、食味および食感の評価結果を
図2に、それぞれ示す。
【表4】
【0075】
表4の最下段に示すように、1~3番の錠剤硬度はいずれも70±10Nの範囲で、ほぼ同程度であった。そして、
図1に示すように、崩壊時間は、1番(マルチトール)が322秒、2番(エリスリトール顆粒)が91秒、3番(ソルビトール)が209秒であり、1番および3番と比較して2番が顕著に短かかった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤硬度は殆ど低下させずに、錠剤の崩壊時間を顕著に短縮できることが明らかになった。
【0076】
次に、
図2に示すように、「口溶け」は、1番(マルチトール)および3番(ソルビトール)がいずれも1.50点、2番(エリスリトール顆粒)が6.50点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤の口溶けを良くすることができることが明らかになった。
【0077】
次に、「もさつき」は、1番(マルチトール)および3番(ソルビトール)がいずれも3.00点、2番(エリスリトール顆粒)が6.00点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の口腔内におけるもさつき感を低減できることが明らかになった。
【0078】
次に、「ぱさつき」は、1番(マルチトール)が2.83点、2番(エリスリトール顆粒)が6.17点、3番(ソルビトール)が3.50点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の口腔内におけるぱさつき感を低減できることが明らかになった。
【0079】
次に、「歯付き」は、1番(マルチトール)が4.50点、2番(エリスリトール顆粒)が6.33点、3番(ソルビトール)が4.00点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の口腔内における歯付きを低減できることが明らかになった。
【0080】
次に、「後味」は、1番(マルチトール)が3.67点、2番(エリスリトール顆粒)が4.17点、3番(ソルビトール)が2.83点であり、1番および3番と比較して2番が最も高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の後味を良くすることができることが明らかになった。
【0081】
最後に、「好み」は、1番(マルチトール)は2.50点、2番(エリスリトール顆粒)が5.83点、3番(ソルビトール)が2.83点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤を総合的に好ましいものにできることが明らかになった。
【0082】
<実施例2>吸水乾燥ファイバー混合物との併用における糖アルコールの検討
表5に示す配合で1~3番の錠剤を調製した。1番は吸水乾燥ファイバー混合物とマルチトールとを含む配合、2番は吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを含む配合、3番は吸水乾燥ファイバー混合物とソルビトールとを含む配合である。エリスリトール顆粒には3質量%のヒドロキシプロピルセルロースが含まれることから、実験条件を揃えるために、1番および3番には相当量のヒドロキシプロピルセルロースを配合した。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定するとともに食味および食感を評価した。錠剤硬度の測定結果を表5の最下段に、崩壊時間の測定結果を
図3に、食味および食感の評価結果を
図4に、それぞれ示す。
【表5】
【0083】
表5の最下段に示すように、1~3番の錠剤硬度はいずれも70±10Nの範囲で、ほぼ同程度であった。そして、
図3に示すように、崩壊時間は、1番(マルチトール)が293秒、2番(エリスリトール顆粒)が91秒、3番(ソルビトール)が190秒であり、1番および3番と比較して2番が顕著に短かかった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤硬度は殆ど低下させずに、錠剤の崩壊時間を顕著に短縮できることが明らかになった。
【0084】
次に、
図4に示すように、「口溶け」は、1番(マルチトール)が1.67点、2番(エリスリトール顆粒)が6.67点、3番(ソルビトール)が2.50点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤の口溶けを良くすることができることが明らかになった。
【0085】
次に、「もさつき」は、1番(マルチトール)が2.17点、2番(エリスリトール顆粒)が5.83点、3番(ソルビトール)が1.83点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の口腔内におけるもさつき感を低減できることが明らかになった。
【0086】
次に、「ぱさつき」は、1番(マルチトール)は2.00点、2番(エリスリトール顆粒)が6.33点、3番(ソルビトール)が2.67点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の口腔内におけるぱさつき感を低減できることが明らかになった。
【0087】
次に、「歯付き」は、1番(マルチトール)は5.00点、2番(エリスリトール顆粒)が6.50点で、3番(ソルビトール)が3.67点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の口腔内における歯付きを低減できることが明らかになった。
【0088】
次に、「後味」は、1番(マルチトール)が3.83点、2番(エリスリトール顆粒)が4.67点、3番(ソルビトール)が4.00点であり、1番および3番と比較して2番が最も高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤喫食時の後味を良くすることができることが明らかになった。
【0089】
最後に、「好み」は、1番(マルチトール)は2.33点、2番(エリスリトール顆粒)が6.00点、3番(ソルビトール)が3.00点であり、1番および3番と比較して2番が顕著に高い評価点であった。この結果から、吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤を総合的に好ましいものにできることが明らかになった。
【0090】
<実施例3>吸水乾燥ファイバーの由来の検討
表6に示す配合で1~6番の錠剤を調製した。1番は吸水乾燥ファイバーを含まず、エリスリトール顆粒とステアリン酸カルシウムのみを含む配合、2~6番はエリスリトール顆粒およびステアリン酸カルシウムに加えて吸水乾燥ファイバーを含む配合である。2~6番の吸水乾燥ファイバーは、それぞれオート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製されたものである。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定するとともに食味および食感を評価した。錠剤硬度の測定結果を表6の最下段に、崩壊時間の測定結果を
図5に、食味および食感の評価結果の棒グラフを
図6に、各パネルの採点値を
図7に、それぞれ示す。
【表6】
【0091】
表6の最下段に示すように、1~6番の錠剤硬度はいずれも70±5Nの範囲で、ほぼ同程度であった。そして、
図5に示すように、崩壊時間は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも顕著に短かかった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、崩壊時間が顕著に短縮された。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤硬度は殆ど低下させずに、錠剤の崩壊時間を短縮できることが明らかになった。
【0092】
次に、
図6および
図7に示すように、「口溶け」は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも顕著に高い評価点であった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、口溶けが顕著に良かった。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤の口溶けを良くすることができることが明らかになった。
【0093】
次に、「もさつき」は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも高い評価点であった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、錠剤喫食時の口腔内におけるもさつき感が顕著に少なかった。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤喫食時の口腔内におけるもさつき感を低減できることが明らかになった。
【0094】
次に、「ぱさつき」は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも高い評価点であった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、錠剤喫食時の口腔内におけるぱさつき感が顕著に少なかった。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤喫食時の口腔内におけるぱさつき感を低減できることが明らかになった。
【0095】
次に、「歯付き」は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも高い評価点であった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、錠剤喫食時の口腔内における歯付きが少なかった。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤喫食時の口腔内における歯付きを低減できることが明らかになった。
【0096】
次に、「後味」は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも高い評価点であった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、錠剤喫食時の後味が顕著に良かった。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤の後味を良くすることができることが明らかになった。
【0097】
最後に、「好み」は、1番(吸水乾燥ファイバーを含まない)と比較して2~6番のいずれも顕著に高い評価点であった。すなわち、オート麦ファイバー、小麦ファイバー、ビートファイバー、サトウキビファイバーおよび粉末セルロースを用いて調製された吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併用した錠剤は、いずれも、顕著に好ましいものであった。この結果から、平均繊維長が25~1000μmの繊維状ファイバーを用いて調製された吸水乾燥ファイバーは、当該繊維状ファイバーの由来を問わず、エリスリトール顆粒と併用することにより、錠剤を総合的に好ましいものにできることが明らかになった。
【0098】
<実施例4>吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒との併用効果
表7に示す配合で1~2番の錠剤を調製した。1番は吸水乾燥ファイバー混合物を含まず、エリスリトール顆粒とステアリン酸カルシウムのみを含む配合、2番はエリスリトール顆粒およびステアリン酸カルシウムに加えて吸水乾燥ファイバー混合物を含む配合である。調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定した。錠剤硬度の測定結果を表7の最下段に、崩壊時間の測定結果を
図8に、それぞれ示す。
【表7】
【0099】
表7の最下段に示すように、1番および2番の錠剤硬度はいずれも70-5Nの範囲で、ほぼ同程度であった。そして、
図8に示すように、崩壊時間は、1番(吸水乾燥ファイバー混合物無し)が78秒であったのに対して、2番(吸水乾燥ファイバー混合物有り)は47秒であり、2番の方が1番よりも顕著に短かかった。この結果から、吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒とを併せて配合することにより、錠剤硬度は殆ど低下させずに、錠剤の崩壊時間を顕著に短縮できることが明らかになった。
【0100】
<実施例5>吸水乾燥ファイバーとエリスリトール顆粒との配合割合の検討
本実施例5において、「%」は、別段に記載のない限り、質量%を意味する。表8に示す配合で1~9番の錠剤を調製した。すなわち、1~9番は吸水乾燥ファイバー混合物とエリスリトール顆粒とを配合した錠剤であって、吸水乾燥ファイバー混合物の配合量が、1番および6番は0%、2~5番および7~9番はそれぞれ0.5%、1.0%、2.5%、5.0%、10%、20%および30%である。吸水混合ファイバー混合物における吸水乾燥ファイバーの配合量は85質量%であるから、錠剤中の吸水混合ファイバーの配合量は、1番および6番では0%、2~5番および7~9番ではそれぞれ0.43%、0.85%、2.13%、4.25%、8.5%、17%および25.5%である。また、錠剤中のERT顆粒の配合量は、吸水混合ファイバー1重量部に対して、1番および6番では0重量部、2~5番および7~9番ではそれぞれ232.94重量部、115.88重量部、45.65重量部、22.24重量部、10.53重量部、4.68重量部および2.73重量部である。
【表8】
【0101】
調製した錠剤について、硬度および崩壊時間を測定するとともに食感(口溶け)を評価した。錠剤硬度の測定結果を表8の最下段に、崩壊時間の測定結果を
図9に、食感(口溶け)の評価結果を
図10に、それぞれ示す。なお、1~5番と6~9番とは別個に試験を行ったため、崩壊時間および口溶けの評価結果は、分けて示す。また、崩壊時間については比較を容易にするため、1番および6番の崩壊時間をそれぞれ100%とした百分率で示す。
【0102】
表8の最下段に示すように、1~9番の錠剤硬度はいずれも70+10Nの範囲で、ほぼ同程度であった。そして、
図9に示すように、2番~5番および7番~9番の崩壊時間はいずれも100%を顕著に下回っていた。すなわち、エリスリトール顆粒とともに吸水乾燥ファイバー混合物を0.5%(吸水乾燥ファイバーを0.43%)、1.0%(吸水乾燥ファイバーを0.85%)、2.5%(吸水乾燥ファイバーを2.13%)、5.0%(吸水乾燥ファイバーを4.25%)、10.0%(吸水乾燥ファイバーを8.50%)、20.0%(吸水乾燥ファイバーを17.00%)および30.0%(吸水乾燥ファイバーを25.50%)含有する錠剤は、いずれも、崩壊時間が顕著に短かった。この結果から、エリスリトール顆粒を含有する錠剤において、吸水乾燥ファイバーの配合量は、錠剤硬度に殆ど影響しないことが明らかになった。また、エリスリトール顆粒を含有する錠剤において、吸水乾燥ファイバーはその配合量にかかわらず、少量配合することで錠剤の崩壊時間を顕著に短縮できることが明らかになった。
【0103】
また、
図10に示すように、「口溶け」は、2番~5番および7番~9番のいずれも、4点(基準となる1番および6番(吸水乾燥ファイバー混合物0%)の評価点)を上回る評価点であった。すなわち、エリスリトール顆粒とともに吸水乾燥ファイバー混合物を0.5%(吸水乾燥ファイバーを0.43%)、1.0%(吸水乾燥ファイバーを0.85%)、2.5%(吸水乾燥ファイバーを2.13%)、5.0%(吸水乾燥ファイバーを4.25%)、10.0%(吸水乾燥ファイバーを8.50%)、20.0%(吸水乾燥ファイバーを17.00%)および30.0%(吸水乾燥ファイバーを25.50%)含有する錠剤は、いずれも、口溶けが良かった。この結果から、エリスリトール顆粒を含有する錠剤において、吸水乾燥ファイバーはその配合量にかかわらず、少量配合することで錠剤の口溶けを良くすることができることが明らかになった。また、吸水乾燥ファイバーの配合量は、0.43質量%以上25.5質量%以下とすると、口溶けを顕著に良くすることができることが明らかになった。