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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119663
(43)【公開日】2023-08-29
(54)【発明の名称】環境設定槽
(51)【国際特許分類】
   B01L 7/00 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
B01L7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022022638
(22)【出願日】2022-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜地 健次
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AD03
(57)【要約】
【課題】槽外部および槽内部の一方から他方に挿通される挿通部材にかかる応力を低減することができる環境設定槽を提供する。
【解決手段】環境設定槽(1)は、壁面(2L、2R)と、前記壁面に設けられる第1開口部(3L、3R)と、前記第1開口部を覆うカバー部材(4L、4R)と、を有する。前記カバー部材は、前記カバー部材に設けられる第2開口部(5L、5R)の開口面積を調節可能なように構成される調節機構を有する。前記第2開口部の最小開口面積は、前記第1開口部の開口面積よりも小さい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面と、
前記壁面に設けられる第1開口部と、
前記第1開口部を覆うカバー部材と、
を有し、
前記カバー部材は、前記カバー部材に設けられる第2開口部の開口面積を調節可能なように構成される調節機構を有し、
前記第2開口部の最小開口面積は、前記第1開口部の開口面積よりも小さい、環境設定槽。
【請求項2】
前記第1開口部は、互いに対向する一対の前記壁面それぞれに設けられる、請求項1に記載の環境設定槽。
【請求項3】
前記調節機構は、絞り機構である、請求項1または請求項2に記載の環境設定槽。
【請求項4】
前記絞り機構は、円形絞り機構である、請求項3に記載の環境設定槽。
【請求項5】
前記絞り機構は、複数の絞り羽根を有し、
複数の前記絞り羽根それぞれに弾性部材が設けられる、請求項3または請求項4に記載の環境設定槽。
【請求項6】
前記絞り羽根の前記絞り機構中央位置を臨む外縁部に前記弾性部材が設けられる、請求項5に記載の環境設定槽。
【請求項7】
前記調節機構は、前記第2開口部を締めるように構成される絞り紐を有する、請求項1または請求項2に記載の環境設定槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、槽内の環境を設定することができる環境設定槽に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の周波数特性は、ネットワークアナライザ等の周波数特性測定装置によって測定される(例えば特許文献1参照)。測定対象物と周波数特性測定装置とは同軸ケーブルを介して接続される。
【0003】
測定対象物の周波数特性に関する温度特性が測定される場合、測定対象物は恒温槽の内部に配置され、周波数特性測定装置は恒温槽の外部に配置され、同軸ケーブルは恒温槽の槽外部および槽内部の一方から他方に挿通される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-34407号公報(段落0015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
数GHzとなる高周波域での電気的特性の測定では、同軸ケーブルにかかる応力が大きいと、測定の正確性及び再現性に悪影響が及ぶ。したがって、恒温槽では、槽外部および槽内部の一方から他方に挿通される挿通部材にかかる応力を低減できることが望ましい。
【0006】
なお、恒温槽以外の環境設定槽においても同様の課題が生じる場合がある。例えば、測定対象物の周波数特性に関する湿度特性が測定される場合、恒湿槽が用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されている環境設定槽は、壁面と、前記壁面に設けられる第1開口部と、前記第1開口部を覆うカバー部材と、を有する。前記カバー部材は、前記カバー部材に設けられる第2開口部の開口面積を調節可能なように構成される調節機構を有する。前記第2開口部の最小開口面積は、前記第1開口部の開口面積よりも小さい。
【発明の効果】
【0008】
本明細書中に開示されている環境設定槽によれば、槽外部および槽内部の一方から他方に挿通される挿通部材にかかる応力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る恒温槽を模式的に示す正面図である。
図2図2は、一実施形態に係る恒温槽を模式的に示す右側面図である。
図3図3は、一実施形態に係る恒温槽を模式的に示す左側面図である。
図4図4は、一実施形態に係る恒温槽の内部構造を模式的に示す右側面図である。
図5図5は、カバー部材の第1構成例を模式的に示す図である。
図6図6は、カバー部材の第1構成例を模式的に示す図である。
図7図7は、絞り羽根を示す図である。
図8図8は、カバー部材の第2構成例を模式的に示す図である。
図9図9は、カバー部材の第2構成例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施形態に係る恒温槽1(以下、「恒温槽1」と称す)を模式的に示す正面図である。図2は、恒温槽1を模式的に示す右側面図である。図3は、恒温槽1を模式的に示す左側面図である。図4は、恒温槽1の内部構造を模式的に示す右側面図である。
【0011】
恒温槽1は、壁面2L及び2Rを有する。壁面2Lは、恒温槽1の左側面である。壁面2Rは、恒温槽1の右側面である。
【0012】
恒温槽1は、第1開口部3L及び3Rを有する。第1開口部3Lは、壁面2Lに設けられる。第1開口部壁面3Rは、壁面2Rに設けられる。第1開口部壁面3L及び3Rは、恒温槽1において左右対称に配置される。すなわち、第1開口部壁面3Lは、壁面2L及び2Rの法線方向からみると、第1開口部壁面3Rと一致する。
【0013】
恒温槽1は、カバー部材4L及び4Rを有する。カバー部材4L及び4Rは、耐熱部材によって構成される。カバー部材4Lは、第1開口部3Lを覆う。カバー部材4Rは、第1開口部3Rを覆う。
【0014】
カバー部材4Lは、カバー部材4Lに設けられる第2開口部5Lの開口面積を調節可能なように構成される調節機構を有する。第2開口部5Lの最小開口面積は、第1開口部3Lの開口面積よりも小さい。
【0015】
カバー部材4Rは、カバー部材4Rに設けられる第2開口部5Rの開口面積を調節可能なように構成される調節機構を有する。第2開口部5Rの最小開口面積は、第1開口部3Rの開口面積よりも小さい。
【0016】
恒温槽1は、扉11及び取っ手12を有する。扉11は、恒温槽1の正面に設けられる。扉11は、左開きの扉である。扉11の右端部に、取っ手12が設けられる。
【0017】
恒温槽1は、表示部13及び操作部14を有する。表示部13及び操作部14は、恒温槽1の正面かつ扉11より上方に設けられる。表示部13は、槽内部の温度を表示する。操作部14は、槽内部の温度を設定するために用いられる。操作部14は、回転式操作子である。操作部14が時計回り方向に操作されると、槽内の設定温度が上昇する。一方、操作部14が反時計回り方向に操作されると、槽内の設定温度が下降する。
【0018】
恒温槽1の槽内部には、棚板15が設けられる。棚板15には、例えば測定対象物等が載せられる。
【0019】
槽外部および槽内部の一方から他方に例えば同軸ケーブル等の挿通部材が挿通され、槽内部において例えば測定対象物等のセッティングが実施されているときには、恒温槽1の第2開口部5L及び5Rを拡げておくことで挿通部材にかかる応力を低減することができる。そして、上記のセッティングが完了すれば、恒温槽1の第2開口部5L及び5Rを狭めることで槽内部の密閉度を向上させることができる。これにより、槽内部の温度が設定温度から大きくずれることなく、挿通部材にかかる応力を低減することが可能となる。このため、例えば恒温槽1を用いて実施される測定の正確性及び再現性が向上する。
【0020】
また、恒温槽1では第1開口部3L及び3Rが、互いに対向する一対の壁面2L及び2Rそれぞれに設けられる。したがって、壁面2L及び2Rの法線方向に対称に2つの挿通部材を挿通することができる。これにより、例えば恒温槽1を用いて実施される測定の正確性がより一層向上する。
【0021】
図5は、カバー部材4Rの第1構成例を模式的に示す図である。図5では、第2開口部5Rの開口面積が最大開口面積になっている。図6は、カバー部材4Rの第1構成例を模式的に示す図である。図6では、第2開口部5Rの開口面積が最小開口面積になっている。図7は、絞り羽根42を示す図である。
【0022】
第1構成例に係るカバー部材4Rの調節機構は、絞り機構である。絞り機構は、例えばカメラのレンズの絞りとして用いられる公知の機構である。カバー部材4Rは、環状体41と、複数の絞り羽根42と、を有する。複数の絞り羽根42は、環状体41の内環部に設けられる。複数の絞り羽根42は、リンク等の部材によって繋がっている。第1構成例に係るカバー部材4Rの調節機構を絞り機構とすることで、第2開口部5Rを再現性良く狭めることができる。
【0023】
第1構成例に係るカバー部材4Rの調節機構が一般的な絞り機構である場合、第2開口部5Rの形状は、絞り羽根42の個数に対応する多角形となる。一方、第1構成例に係るカバー部材4Rの調節機構が円形絞り機構である場合、第2開口部5Rの形状は、ほぼ円形となる。したがって、第1構成例に係るカバー部材4Rの調節機構を円形絞り機構とすることで、挿通部材の断面形状が円形である場合に、恒温槽1の槽内部の密閉度をより一層向上させることができる。
【0024】
複数の絞り羽根42それぞれについて、図7に示すように絞り羽根42にゴムなどの弾性部材43が設けられてもよい。弾性部材43は、挿通部材に接触することでシール材として機能する。つまり、絞り羽根42にシール材が設けられてもよい。弾性部材43が設けられることによって、恒温槽1の槽内部の密閉度をより一層向上させることができる。
【0025】
より詳細には、複数の絞り羽根42それぞれについて、図7に示すように絞り羽根42の絞り機構中央位置6(図5及び図6参照)を臨む外縁部にゴムなどの弾性部材43が設けられてもよい。これにより、絞り羽根42と挿通部材との接触箇所に弾性部材43が配置されることになるため、恒温槽1の槽内部の密閉度を効率的により一層向上させることができる。
【0026】
なお、図5及び図6は、第2開口部5Rの最大開口面積と最小開口面積とに大きな差があるような図になっているが、実際には第2開口部5Rの最大開口面積が挿通部材の断面積よりも僅かに大きいようにし、第2開口部5Rの最小開口面積が挿通部材の断面積とほぼ一致するようにすればよい。
【0027】
第1構成例に係るカバー部材4Lは、第1構成例に係るカバー部材4Rと同一形状であるため詳細な説明を省略する。
【0028】
図8は、カバー部材4Rの第2構成例を模式的に示す図である。図8では、第2開口部5Rの開口面積が最大開口面積になっている。図9は、カバー部材4Rの第2構成例を模式的に示す図である。図9では、第2開口部5Rの開口面積が最小開口面積になっている。
【0029】
第2構成例に係るカバー部材4Rの調節機構は、第2開口部5Rを締めるように構成される絞り紐46を有する。第2構成例に係るカバー部材4Rでは、環状体44の内環部に膜体45が設けられる。膜体45には第2開口部5Rにそって筒部が設けられ、当該筒部に絞り紐46が通っている。すなわち、第2構成例に係るカバー部材4Rの調節機構は、巾着を模した機構である。
【0030】
第2構成例に係るカバー部材4Rは、上述した第1構成例に係るカバー部材4Rと比較して、調節機構の低コスト化を図ることができる。
【0031】
なお、図8及び図9は、第2開口部5Rの最大開口面積と最小開口面積とに大きな差があるような図になっているが、実際には第2開口部5Rの最大開口面積が挿通部材の断面積よりも僅かに大きいようにし、第2開口部5Rの最小開口面積が挿通部材の断面積とほぼ一致するようにすればよい。
【0032】
第2構成例に係るカバー部材4Lは、第2構成例に係るカバー部材4Rと同一形状であるため詳細な説明を省略する。
【0033】
上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本明細書に開示されている発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0034】
例えば、上述した実施形態では、槽内の温度を設定することができる恒温槽について説明したが、本明細書に開示されている発明は、恒温槽以外の環境設定槽にも適用可能である。恒温槽以外の環境設定槽としては、例えば槽内の温度を設定することができる恒湿槽を挙げることができる。
【0035】
以上説明した環境設定槽(1)は、壁面(2L、2R)と、前記壁面に設けられる第1開口部(3L、3R)と、前記第1開口部を覆うカバー部材(4L、4R)と、を有し、前記カバー部材は、前記カバー部材に設けられる第2開口部(5L、5R)の開口面積を調節可能なように構成される調節機構を有し、前記第2開口部の最小開口面積は、前記第1開口部の開口面積よりも小さい構成(第1の構成)である。
【0036】
上記第1の構成の環境設定槽は、槽外部および槽内部の一方から他方に挿通部材が挿通され、槽内部において例えば測定対象物等のセッティングが実施されているときには、第2開口部を拡げておくことで挿通部材にかかる応力を低減することができる。そして、上記のセッティングが完了すれば、第2開口部を狭めることで槽内部の密閉度を向上させることができる。
【0037】
上記第1の構成の環境設定槽において、前記第1開口部は、互いに対向する一対の前記壁面それぞれに設けられる構成(第2の構成)であってもよい。
【0038】
上記第2の構成の環境設定槽では、壁面の法線方向に対称に2つの挿通部材を挿通することができる。これにより、例えば環境設定槽を用いて実施される測定の正確性を向上させることができる。
【0039】
上記第1または第2の構成の環境設定槽において、前記調節機構は、絞り機構である構成(第3の構成)であってもよい。
【0040】
上記第3の構成の環境設定槽は、第2開口部を再現性良く狭めることができる。
【0041】
上記第3の構成の環境設定槽において、前記絞り機構は、円形絞り機構である構成(第4の構成)であってもよい。
【0042】
上記第4の構成の環境設定槽は、挿通部材の断面形状が円形である場合に、槽内部の密閉度をより一層向上させることができる。
【0043】
上記第3または第4の構成の環境設定槽において、前記絞り機構は、複数の絞り羽根(42)を有し、複数の前記絞り羽根それぞれに弾性部材(43)が設けられる構成(第5構成)であってもよい。
【0044】
上記第5の構成の環境設定槽は、槽内部の密閉度をより一層向上させることができる。
【0045】
上記第5の構成の環境設定槽において、前記絞り羽根の前記絞り機構中央位置(6)を臨む外縁部に前記弾性部材が設けられる構成(第6構成)であってもよい。
【0046】
上記第6の構成の環境設定槽は、槽内部の密閉度を効率的により一層向上させることができる。
【0047】
上記第1または第2の構成の環境設定槽において、前記調節機構は、前記第2開口部を締めるように構成される絞り紐(46)を有する構成(第7構成)であってもよい。
【0048】
上記第7の構成の環境設定槽は、調節機構の低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 一実施形態に係る恒温槽
2L、2R 壁面
3L、3R 第1開口部
4L、4R カバー部材
5L、5R 第2開口部
6 絞り機構中央位置
11 扉
12 取っ手
13 表示部
14 操作部
41、44 環状体
42 絞り羽根
43 弾性部材
45 膜体
46 絞り紐
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9